JP4081538B2 - 透明平行平板の干渉縞解析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長可変レーザを観察用光源とする干渉計装置において被測定体である透明平行平板あるいは光学平行平板の表面形状の位相情報を得るための干渉縞解析方法に関し、特に、平行平板の表面と裏面双方からの反射出力光によって生じる干渉縞ノイズ、および平行平板表面・裏面間で3回多重反射した出力光の光干渉によって生じる干渉縞ノイズを除去する干渉縞解析方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、波長可変レーザを光源として透明平行平板を測定する光学測定装置として、例えばK. Okada, H.Sakuta, T.Ose, and J. Tsujiuchi, "Separate measurements of surface shapes and refractive index inhomogeneity of an optical element using tunable source phase shifting interferometry," Applied Optics, vol.29 (1990) 3280-3285.(文献1)に示されているトワイマングリーン干渉計や、P.J. de Groot, "Measurement of transparent plates with wavelength-tuned phase shifting interferometry," Applied Optics, vol.39 (2000) 2658-2663.(文献2)に示されているフィゾー型干渉計装置が知られている。
【0003】
このような干渉計装置では、被測定平行平板面(測定面)と参照面を単色の平面光波で照明し、両面からの反射出力光を統合して干渉縞を形成し、CCDカメラ等の撮像装置で撮像し、得られた干渉縞画像を解析して上記被検面表面の形状(位相変化)を観察測定している。
【0004】
この測定では、測定面からの反射出力光(測定光)の他に平行平板裏面からの反射出力光、及び測定面と前記裏面の間を奇数回反射して出力する多重反射出力光が存在し、それぞれ参照面からの出力光(参照光)と統合して干渉縞を形成しノイズ信号となる。このため平行平板面の測定では、これらのノイズ信号の影響を除去する操作が必要である。
【0005】
この点に関して、前記文献1では、出力光の波長λをλ2/4Lずつ変化させる毎に撮像装置により記録した60枚の干渉縞画像を解析処理することにより、裏面からの直接反射光が作るノイズ信号を除去することに成功し、測定誤差としてλ/60(平方根自乗誤差)以下を得ている。
【0006】
また前記文献2では、出力光の波長λをλ2/8Lずつ変化させる毎に撮像装置により記録した13枚の干渉縞画像を解析処理することにより、裏面からの直接反射光が作るノイズ信号、及び多重反射出力光が作るノイズ信号の一部を除去することに成功し、測定誤差としてλ/200〜λ/50(最大最小誤差)以下を得ている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
平行平板の各点における高さhは、反射型の干渉計でよく知られている次式
h=λψ(x,y)/4π
で計算される。現在までの技術では、平行平板の最高測定精度は文献2の方法によりノイズ信号を除去することでλ/200が得られる。しかしながらこの方法で精度を達成するためには、参照面と測定面との距離Lと平行平板の光学的厚さnTの比がnT=3.5Lを満たすように距離Lを設定しなければならない。その際の距離Lの許容される設定誤差は、1.4%程度である。
【0008】
波長可変レーザを光源とする干渉測定装置では、例えば出力光の波長λをλ2/8Lずつ変化させる毎に測定を行うといった例でわかるように、距離Lは波長走査量に直接関係するパラメータで、装置毎に可能である限り値を固定して測定できることが望ましい。このようにしないと、距離を変化させる毎に撮像装置の測定時刻の変更等の調節を行う必要がある。上記のような事情から、厚さや屈折率が少しずつ異なる平行平板の資料毎に距離Lを毎回調節する事は測定器を構成する上で著しく不便である。また、平板の厚さや屈折率を測定するといった付加的な手続きも必要になる。
【0009】
産業界で要求される測定精度としては、エタロン用の平行板などではλ/100程度は珍しくなく、現在の方法では測定精度が十分に実現されているとは言えない。
【0010】
本発明では19枚の干渉縞画像を解析する新しい方法により、前記の問題の一つである距離Lの許容される設定誤差として、従来の10倍以上である17%を実現することを目的としている。また、前記の他の問題である最高測定精度については、λ/600を実現することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明は上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、波長λで透明な平行平面板の表面である被測定面の各位置での高さ、あるいは基板上に作成された透明な薄膜表面の各位置での高さを測定する方法において、出力光がコヒーレントでその中心波長λを時間的に変化させ得る照明光源と、該照明光源からの光束を平行光束とした後、参照面上および被測定平行平板面上に導く光学系と、前記参照面と前記被測定面との光軸上での距離Lと前記平行平板の光学的厚さnTの比が、2L≦nT≦9Lを満たすように距離Lを設定する装置と、該参照面および該被測定平行平板面からの光束の光干渉により得られた干渉縞情報を、前記出力光の中心波長λを変化させて、被測定面からの測定光と前記参照面からの参照光との位相差をπ/6ずつずらして、連続的に19画像撮像する撮像手段とを備えた干渉計装置において、該撮像して得られた19枚の干渉縞画像情報I−9(x,y),I−8(x,y),・・・,I0(x,y),I1(x,y),・・・,I9(x,y)に対して、下式(1)に基づく演算処理を施して被測定平行平板面の形状に関する位相情報ψ(x,y)を求めることを特徴と干渉縞解析方法としたものである。
式(1)
【数1】
ここで定数ar、brは以下の値とする。
【数2】
【0013】
また請求項2に係る発明は、前記干渉計装置において、前記平板の表面と裏面が完全な平行ではなく、平行光を照射した場合に両面からの出射光が作る干渉縞が200本以内で観測できる程度の傾斜角を持っているものに用いる請求項1記載の干渉縞解析方法としたものである。
【0014】
また請求項3に係る発明は、前記干渉計装置がフィゾー型干渉計であることを特徴とし、被測定面からの測定光と前記参照面からの参照光との位相差をずらして19枚の画像を撮像する手段を備えている請求項1または2記載の干渉縞解析方法としたものである。
【0015】
また請求項4に係る発明は、前記干渉計装置がミラウ型干渉計であることを特徴とし、被測定面からの測定光と参照面からの参照光との位相差をずらして19枚の画像を撮像する手段を備えている請求項1または2記載の干渉縞解析方法としたものである。
【0016】
また請求項5に係る発明は、前記干渉計装置が近赤外波長を光源とするフィゾー型干渉計であり、平行平板がシリコンウェーハであって、被測定面からの測定光と前記参照面からの参照光との位相差をずらして19枚の画像を撮像する手段を備えている請求項1または2記載の干渉縞解析方法としたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明について、透明平行平板の干渉縞解析方法の具体的な例を述べる前に、本発明によって上記課題を解決することができる原理について説明する。図1の干渉計において出力光の波長λを時間的に変化させたとき、光束の光干渉により形成され時刻tに撮像装置に記録される干渉縞強度は、次式で表される。
【数5】
ただし変調周波数は、参照面と測定面の間隔をLとして波長が単位時間にδλ変化するとして、
【数6】
で定義される。数式3中で位相値ψ1が測定面の形状を表す位相情報であり、解析法により抽出すべき情報である。また、同式中振幅skを含む項は裏面反射や多重反射により発生したノイズ項である。図2に平行平板の光学的厚さnT=3Lのときの信号およびノイズの周波数スペクトルJ(ν)を表す。
【0018】
光源波長がλ2/12L変化する毎に干渉縞画像を取り込み数式1で位相情報を解析した結果は次式で表される。
【数7】
【0019】
数式5の右辺第一項が求める位相値、第二項は誤差項である。ここで関数F は、次式で表される。
【数8】
【0020】
被測定平行平板の光学的厚さが2L<nT<9Lの範囲である時に、各厚さに対して図2の周波数スペクトルJ(ν)を求め、数式6の解析パラメータar,brを、数式5の右辺第二項誤差項を最小化するように決定する。このようにして解析パラメータar,brが数式2のように決定される。
【0021】
図3にこの解析法を採用した場合の位相値ψ1の最大最小測定誤差の計算結果を示す。この図では参照面、測定面および裏面の反射率がすべて4%であるとして計算を行った。図では比較として前記文献2で紹介した従来の解析法(13画像法)を用いた場合の誤差も同時に示す。本発明の方法により平行平板の厚さが2L<nT<9Lの範囲にある場合は、誤差の大きさはλ/60以下であり、従来法1の最高値(平方根自乗誤差でλ/60)よりも優れていることがわかる。また、図3の比較により従来法2と比べてもすべての範囲で今回の方法がより小さい誤差を与えて優れていることがわかる。
【0022】
図3の結果より被測定平行平板の光学的厚さが2.8L<nT<4.1Lの範囲である時に、最高測定精度であるλ/600を実現することが明らかである。さらに参照面と測定面との距離Lと平行平板の光学的厚さnTの比はnT=3.5Lを満たすように設定するものとして、その際の距離Lの許容される設定誤差は、ΔL/L=0.6/3.5=17%を許容できることが示される。従って、従来法2の許容誤差1.4%の12倍以上を実現している。
【0023】
図4にさらに平行平板の厚さが大きい場合にこの解析法を採用した場合の位相値ψ1の最大最小測定誤差を示す。平行平板の厚さが2L<nT<9Lの範囲にある場合の他に、14L<nT<21Lの範囲においても誤差の小さい状態で測定することが可能である。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る干渉縞解析方法について、その具体的例を図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る干渉縞解析方法を実施するためのフィゾー型干渉計装置を示すものである。なお、本実施形態においては、上述した所定の光学面をコリメータレンズのレンズ面とした場合を例にあげて説明する。
【0025】
このフィゾー型干渉計装置において、出力光の波長λを可変とし得るレーザダイオード等の単色の波長可変レーザ光源11から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ12によって平行光束とされ、基準板13の参照面1および被測定平行平板14の被測定面2に入射する。参照面1で反射された光束と被測定面2で反射された光束は互いに干渉しつつ光路を逆行し、半透鏡15を透過し、CCDカメラ16の撮像面上に被測定面2の位相情報を有する干渉縞を形成する。
【0026】
ここで得られた干渉縞画像情報は演算装置17において所定の演算処理が施され、有効かつ高精度な干渉縞解析がなされる。
【0027】
ところで、このような波長可変レーザ光源11を用いた干渉計装置においては、平行平板の裏面3からの反射光と参照面1からの反射光とで干渉縞ノイズが発生し、さらに裏面3と測定面2の間を3回、5回、奇数回反射して半透鏡15に向かう出力光は参照面1からの出力光と干渉してCCDカメラに干渉縞ノイズを発生する。
【0028】
これらのノイズは、縞強度測定の精度を低下させる原因となるものである。
そこで本実施形態においては、参照面1と測定面2との距離Lと平行平板の光学的厚さnTの比が2L<nT<9Lを満たすように距離Lを設定した場合に、これらのノイズ縞の時間的な位相変化が信号干渉縞の位相変化と異なる点に着目し、演算処理により裏面3からの反射光及び裏面3と測定面2の間を3回反射した出力光による影響を除去して位相検出をすることができる。
【0029】
ここで、上記方法において具体的数値を示す。参照面1と測定面2との距離L=3mm, 平行平板の屈折率n=1.5とするとき、上記の配置で平行平板の厚さTmmが4<T<18および28<T<42を満たす平行平板を測定することができる。その際特に厚さTmmが5.6<T<8.2、13.8<T<16.1、29.6<T<32.2、37.8<T<40.1の範囲にある場合はノイズによる測定誤差がλ/600以下となる。
【0030】
また、前記干渉計装置を近赤外波長を光源とするフィゾー型干渉計とし、平行平板がシリコンウェーハとすることにより、シリコンウェーハの内部を観察するのと同じ波長の光源を用いて、シリコン表面の形状だけを選択的に検出することができる。従来は表面観察のためには別の波長の光源を用意しなければならなかったが、光源を同一にすることで、装置の小型化が図れる。またシリコンウェーハ透過像から、測定された表面形状を引き算することにより、シリコンウェーハの内部欠陥を含め各種欠陥を検出することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の干渉縞解析方法によれば、波長可変型照明光源を用いた干渉計装置において、参照面と被測定平行平板面との距離Lと平行平板の光学的厚さnTの比を所定の範囲の値に設定し、照明波長を所定量ずつずらす毎に得られた19枚の干渉縞画像データを演算することにより、最終的に得られる干渉縞位相から平行平板の裏面および内部での多重反射から生ずるノイズ干渉縞の影響を排除することができる。これにより高精度で信頼性の高い平行平板面形状を求めることができる。
【0032】
また、請求項6に係る発明において、前記干渉計装置が近赤外波長を光源とするフィゾー型干渉計であり、平行平板がシリコンウェーハとしたものは、シリコンウェーハの内部を観察するのと同じ波長の光源を用いて、シリコン表面の形状だけを選択的に検出することができる。従来は表面観察のためには別の波長の光源を用意しなければならなかったが、光源を同一にすることで、装置の小型化が図れる。またシリコンウェーハ透過像から、測定された表面形状を引き算することにより、シリコンウェーハの内部欠陥を含め各種欠陥を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の干渉縞解析方法を実施するための干渉計装置を示す概略図である。
【図2】撮像装置に入力する干渉縞信号のある位置における周波数スペクトルを示す説明図である。
【図3】本発明の19画像干渉縞解析方法を用いて、フィゾー型干渉計で平行平板を測定した場合の測定誤差(PV値:最大最小誤差)を示すグラフである。
【図4】本発明の19画像干渉縞解析方法を用いて、フィゾー型干渉計で平行平板を測定した場合の測定誤差(PV値:最大最小誤差)を示すグラフである。
【符号の説明】
1 参照面
2 被測定面
3 平行平板裏面
11 波長可変レーザー光源
12 コリメータレンズ
13 基準板
14 平行平板
15 半透鏡
16 撮像装置
17 演算装置
Claims (5)
- 波長λで透明な平行平面板の表面である被測定面の各位置での高さ、あるいは基板上に作成された透明な薄膜表面の各位置での高さを測定する方法において、
出力光がコヒーレントでその中心波長λを時間的に変化させ得る照明光源と、
該照明光源からの光束を平行光束とした後、参照面上および被測定平行平板面上に導く光学系と、
前記参照面と前記被測定面との光軸上での距離Lと前記平行平板の光学的厚さnTの比が、2L≦nT≦9Lを満たすように距離Lを設定する装置と、
該参照面および該被測定平行平板面からの光束の光干渉により得られた干渉縞情報を、前記出力光の中心波長λをλ2/12Lずつ変化させる毎に、連続的に19画像撮像する撮像手段とを備えた干渉計装置において、
該撮像して得られた19枚の干渉縞画像情報I−9(x,y),I−8(x,y),・・・,I0(x,y),I1(x,y),・・・,I9(x,y)に対して、下式(1)に基づく演算処理を施して被測定平行平板面の形状に関する位相情報ψ(x,y)を求めることを特徴とする干渉縞解析方法。
【数1】
式(1)
ここで定数ar、brは以下の値とする。
- 前記干渉計装置において、前記平板の表面と裏面が完全な平行ではなく、平行光を照射した場合に両面からの出射光が作る干渉縞が200本以内で観測できる程度の傾斜角を持っているものに用いる請求項1記載の干渉縞解析方法。
- 前記干渉計装置がフィゾー型干渉計であることを特徴とし、被測定面からの測定光と前記参照面からの参照光との位相差をずらして19枚の画像を撮像する手段を備えている請求項1または2記載の干渉縞解析方法。
- 前記干渉計装置がミラウ型干渉計であることを特徴とし、被測定面からの測定光と参照面からの参照光との位相差をずらして19枚の画像を撮像する手段を備えている請求項1または2記載の干渉縞解析方法。
- 前記干渉計装置が近赤外波長を光源とするフィゾー型干渉計であり、平行平板がシリコンウェーハであって、被測定面からの測定光と前記参照面からの参照光との位相差をずらして19枚の画像を撮像する手段を備えている請求項1または2記載の干渉縞解析方法。
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