JP3960126B2 - 水処理装置及び水処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、上水道水や下水道水あるいは地下水や工場排水等の水処理装置及び水処理方法に関するものであり、更に詳しくは、例えばオゾンなどの酸化剤と紫外線照射を併用して被処理水を高度に浄化処理する水処理装置及び水処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オゾンと紫外線とを併用する水処理方法は、オゾンに紫外線を照射することによって生成するヒドロキシルラジカル等のラジカル種を用いて、被処理水の有機塩素化合物等の処理対象物質を分解する方法である。従来は例えば特開平5−192673号公報などに報告されているように、波長240〜280nm、特に254nmの紫外線が一般的に用いられてきた。
【0003】
また、さらに効率的な水処理方法として、複数の波長の紫外線を照射する方法も報告されている。図5は、例えば特開2001−137844号公報に示されたダイオキシン光分解装置を示す断面図である。図5において、91は光透過性材料からなる導水管、92は第一の紫外線照射手段、95aは第一の紫外線照射手段92よりも下流に設置されたオゾン供給ノズル、93はオゾン供給ノズル95aよりも下流に設置された第二の紫外線照射手段、94は第二の紫外線照射手段93よりも下流に設置された第三の紫外線照射手段、95はオゾン供給ノズル95aに接続されたオゾン供給手段である。導水管91の内部を流動するダイオキシンを含有する汚水に対し、第一の紫外線照射手段92は波長12nm〜172nm、第二の紫外線照射手段93は波長172nm〜254nm、第三の紫外線照射手段94は波長308nm〜380nmの紫外線をそれぞれ照射するとともに、オゾン供給手段95により発生させたオゾン含有ガスをオゾン供給ノズル95aを介して当該汚水に供給する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、オゾンが溶解した被処理水に波長254nmの紫外線を照射すると過酸化水素が生成される。この過酸化水素の濃度が高くなると、被処理水の有機化合物と反応すべきヒドロキシルラジカルが過酸化水素によって無効に消費されるため、有機化合物の分解効率が低くなるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、オゾンが溶解した被処理水に波長254nmの紫外線を照射してヒドロキシルラジカルを生成させて有機化合物を分解することに加えて、被処理水中に存在する過酸化水素に波長220nmの紫外線を照射することによって過酸化水素から新たにヒドロキシルラジカルを生成させ、このヒドロキシルラジカルを用いて有機化合物の分解効率の改善を図った水処理装置及び水処理方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる水処理装置は、被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記紫外線照射量制御手段は過酸化水素濃度が高くなると前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を増やすように制御することを特徴とするものである。
【0007】
また、被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記過酸化水素濃度検知手段はpH測定装置と過酸化水素濃度推定手段とからなり、前記過酸化水素濃度推定手段はあらかじめ定められたpHと過酸化水素濃度との関係を有し前記関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものであり、前記紫外線照射量制御手段は前記過酸化水素濃度推定手段が推定した過酸化水素濃度の推定値に基づいて前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御することを特徴とするものである。
【0008】
さらに、被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記過酸化水素濃度検知手段は過酸化水素濃度測定装置とpH測定装置と過酸化水素濃度推定手段とからなり、前記過酸化水素濃度推定手段は過酸化水素濃度の測定値とpHの測定値との関係を学習する学習手段を備え前記学習手段が学習した前記関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものであり、前記紫外線照射量制御手段は前記過酸化水素濃度推定手段が推定した過酸化水素濃度の推定値に基づいて前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御することを特徴とするものである。
【0009】
そして、被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記過酸化水素濃度検知手段は過酸化水素濃度測定装置とpH測定装置と過酸化水素濃度推定手段とからなり、前記過酸化水素濃度推定手段は所定のpHと過酸化水素濃度との関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものであり、前記紫外線照射量制御手段は、過酸化水素濃度に基づいて前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御する際に過酸化水素濃度の測定値と推定値のいずれに基づくかを判断する制御基準判断手段を備え、前記制御基準判断手段は、被処理水のpHの測定値があらかじめ設定した基準値以下のときには前記過酸化水素濃度推定手段が推定した過酸化水素濃度の推定値に基づくと判断し、被処理水のpHの測定値が前記基準値を超えるときには過酸化水素濃度の測定値に基づくと判断することを特徴とするものである。
【0010】
この発明にかかる水処理方法は、被処理水の有機化合物を分解するための水処理方法において、被処理水を反応槽に流入させ、前記反応槽にオゾンを供給し、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射し、被処理水の過酸化水素濃度を検知し、過酸化水素濃度が高くなると前記反応槽内に照射する波長220nmの紫外線の照射量を増やすように制御し、前記反応槽内に照射量を制御された波長220nmの紫外線を照射することを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明が適用される水処理装置の実施の形態1を説明するための模式図である。1は被処理水を流入させる反応槽である。2は反応槽1にオゾンを供給するオゾン供給手段としての散気装置、3は散気装置2に接続されたオゾン発生器である。4及び5は紫外線ランプであり、紫外線ランプ4は反応槽1内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段を構成し、紫外線ランプ5は反応槽1内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段を構成する。6は紫外線ランプ4の電源、7は紫外線ランプ5の電源である。8aはコントローラ、9は反応槽1内に設置された過酸化水素濃度測定装置であり、コントローラ8aは紫外線ランプ4及び紫外線ランプ5から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段を構成し、過酸化水素濃度測定装置9は被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段を構成する。
【0014】
次に、動作について説明する。まず、被処理水を反応槽1に流入させ、反応槽1にオゾン発生器3にて発生させたオゾンを散気装置2から供給し、被処理水にオゾンを溶解させる。反応槽1内には紫外線ランプ4及び紫外線ランプ5が配置されており、反応槽1内の被処理水にそれぞれ波長254nmの紫外線、波長220nmの紫外線を照射するように構成されている。オゾンに波長254nmの紫外線を照射するとオゾンが分解し、被処理水の有機化合物を分解するために有効なヒドロキシルラジカルが生成されるとともに、副生成物として過酸化水素が生じる。被処理水の過酸化水素濃度は過酸化水素濃度測定装置9により測定され、測定値は信号線を介して過酸化水素濃度測定装置9からコントローラ8aに送られる。コントローラ8aは、過酸化水素濃度測定装置9から送られた過酸化水素濃度の測定値に基づいて、紫外線ランプ5により反応槽1内に照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御する。具体的には、式1により求めた電圧値Wを紫外線ランプ5の電源7に印加する。式1のk、a及びCは、被処理水を用いた事前実験などにより求められた定数である。また、印加電圧値と紫外線の照射量の関係は紫外線ランプによって決まる。このようにして照射量を制御された波長220nmの紫外線を反応槽1内に照射する。なお、ここでは、波長254nmの紫外線の照射量は仮に一定としておく。
【0015】
【数1】
Figure 0003960126
【0016】
過酸化水素に波長220nmの紫外線を照射すると過酸化水素が分解し、ヒドロキシルラジカルが生成される。これによって、オゾンの分解によって生成されたヒドロキシルラジカルが過酸化水素によって無効消費されることを低減できるだけでなく、過酸化水素の分解によって生成されたヒドロキシルラジカルを被処理水の有機化合物を分解するために利用できる。このため、被処理水の有機化合物の分解効率が向上する。
【0017】
ここで、被処理水の過酸化水素濃度が高い場合には波長220nmの紫外線の照射量を増やして過酸化水素からヒドロキシルラジカルを生成させる反応を促進させればよく、逆に過酸化水素濃度が低い場合には波長220nmの紫外線を照射しても過酸化水素からヒドロキシルラジカルを生成させる効果が小さいので、波長220nmの紫外線の照射量を減らして消費電力を削減してもよい。
【0018】
このように有機化合物を分解する処理が施された被処理水は、反応槽1から系外に処理水として排出される。なお、波長254nmの紫外線の照射量は仮に一定としておくと先述したが、過酸化水素濃度が高い場合に、波長220nmの紫外線の照射量を増やすために紫外線ランプ5の電源7への印加電圧値を上げる際に、波長254nmの紫外線の照射量を減らすために紫外線ランプ4の電源6への印加電圧値を下げてもかまわない。このようにすれば、電源容量の制限などがあっても波長220nmの紫外線の照射量を増やすことができる。
【0019】
第一紫外線照射手段は、オゾンを分解して効率よくヒドロキシルラジカルを生成させる観点から波長253〜255nmの紫外線を照射するものであることが望ましく、とくに波長254nmに極大強度を有する紫外線ランプであることが望ましい。第二紫外線照射手段は、過酸化水素を分解して効率よくヒドロキシルラジカルを生成させる観点から波長215〜225nmの紫外線を照射するものであることが望ましく、とくに波長220nmに極大強度を有する紫外線ランプであることが望ましい。また、1本の紫外線ランプが波長254nmと波長220nmとに極大強度を有するような場合は、第一紫外線照射手段と第二紫外線照射手段とは、その1本の紫外線ランプから構成されていてもよい。
【0020】
オゾン供給手段は、被処理水にオゾンあるいはオゾン含有気体を導入して予めオゾンを溶解させておく方法、オゾンあるいはオゾン含有気体の代わりにオゾン水を供給する方法などであってもよい。この実施の形態では、反応槽に散気装置を設置した例を示したが、エジェクタなど他の気液混合装置を用いてもよい。さらに、この実施の形態では、被処理水を連続処理する例を示したが、ポンプを用いて被処理水の一部あるいは全部を循環させる循環処理や、被処理水を反応槽内に貯留して処理する回分処理に適用してもよい。
【0021】
実施の形態2.
図2は、実施の形態2を説明するための模式図である。この実施の形態は、実施の形態1における過酸化水素濃度測定装置をpH測定装置に置換し、さらに過酸化水素濃度推定手段を設けたものである。図2において、10はpH測定装置、11bは過酸化水素濃度推定手段としてのマイクロコンピュータであり、pH測定装置10とマイクロコンピュータ11bとはこの実施の形態における過酸化水素濃度検知手段を構成する。マイクロコンピュータ11bは、pHと過酸化水素濃度の関係を表や数式などで表現されたものをあらかじめ有しており、このような関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定する。8bはコントローラであり、紫外線ランプ4及び紫外線ランプ5から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段を構成する。
【0022】
pH測定装置は、過酸化水素濃度測定装置と比較して測定時間が短いことが知られている。例えば、pH測定装置の測定時間は多くの場合10秒以内であるのに対して、過酸化水素濃度測定装置はカタラーゼ法と呼ばれる酵素反応を利用すると5〜10分の測定時間を要する。また、過酸化水素の解離定数はpHによって決まり、過酸化水素の生成量は波長254nmの紫外線の照射量から予測できるため、pHの測定値から過酸化水素濃度の推定が可能である。このようにpH測定装置は測定時間が短く応答速度が速いため、pHの測定値から過酸化水素濃度を推定すると、被処理水の過酸化水素濃度の変化に追従できる。
【0023】
このようにコントローラ8bは、pHの測定値からマイクロコンピュータ11bが推定した過酸化水素濃度の推定値に基づいて、紫外線ランプ5により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御することができる。
【0024】
したがってこの実施の形態では、被処理水の過酸化水素濃度の変化に速やかに対応して、波長220nmの紫外線の照射量を制御できるという効果を奏する。なお、実施の形態1と同様に、波長254nmの紫外線の照射量は一定であってもよく、波長220nmの紫外線の照射量を増やす際の電源容量の制限などから波長254nmの紫外線の照射量を減らしてもかまわない。
【0025】
実施の形態3.
図3は、実施の形態3を説明するための模式図である。この実施の形態は、実施の形態1において過酸化水素濃度測定装置に加えてpH測定装置を反応槽内に設置し、さらに過酸化水素濃度推定手段を設けたものである。図3において、11cは過酸化水素濃度推定手段としてのマイクロコンピュータであり、過酸化水素濃度測定装置9とpH測定装置10とマイクロコンピュータ11cとでこの実施の形態における過酸化水素濃度検知手段を構成する。マイクロコンピュータ11cは、過酸化水素濃度の測定値とpHの測定値との関係を学習する学習手段を備えており、学習手段が学習した関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定する。8cはコントローラであり、紫外線ランプ4及び紫外線ランプ5から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段を構成する。
【0026】
pH測定装置は過酸化水素濃度測定装置と比較して応答速度が速いため、pHの測定値から過酸化水素濃度を推定すると、被処理水の過酸化水素濃度の変化に追従できる。具体的には、被処理水の過酸化水素濃度を検知する際に過酸化水素濃度測定装置とpH測定装置とを用いて検知し、マイクロコンピュータ11cの学習手段は、過酸化水素濃度の測定値とpH測定値との関係を学習しながら、被処理水の水質に最適な過酸化水素濃度の測定値とpHの測定値との関係を適時に更新する。その関係を用いて、マイクロコンピュータ11cがpHの測定値から過酸化水素濃度を推定することによって、過酸化水素濃度の推定値の精度が高まる。
【0027】
このように、コントローラ8cはマイクロコンピュータ11cによる過酸化水素濃度の推定値に基づいて紫外線ランプ5により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御することができる。
【0028】
したがってこの実施の形態では、被処理水の過酸化水素濃度の変化に速やかに、しかも精度よく対応して、波長220nmの紫外線の照射量を制御できるという効果を奏する。
【0029】
実施の形態4.
また、この実施の形態は、実施の形態1において過酸化水素濃度測定装置に加えてpH測定装置を反応槽内に設置し、さらに過酸化水素濃度推定手段と制御基準判断手段とを設けたものである。図4において、11dは過酸化水素濃度推定手段としてのマイクロコンピュータであり、過酸化水素濃度測定装置9とpH測定装置10とマイクロコンピュータ11dとはこの実施の形態における過酸化水素濃度検知手段を構成する。8dはコントローラであり、紫外線ランプ4及び紫外線ランプ5から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段を構成する。12dは制御基準判断手段としての制御基準判断処理部であり、過酸化水素濃度に基づいて紫外線ランプ5により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御する際に過酸化水素濃度の測定値と推定値のいずれに基づくかを判断する。
【0030】
マイクロコンピュータ11dは、仮に実施の形態2のように、pHと過酸化水素濃度の関係を表や数式などで表現されたものをあらかじめ有しており、このような関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものとする。ただし、実施の形態3のような学習手段を設けていてもかまわない。
【0031】
制御基準判断処理部12dは、マイクロコンピュータ11dに内蔵されていてもよい。この制御基準判断処理部12dは、被処理水のpHの測定値があらかじめ設定した基準値以下のときにはマイクロコンピュータ11dが推定した過酸化水素濃度の推定値に基づくと判断し、被処理水のpHの測定値がその基準値を超えるときには過酸化水素濃度の測定値に基づくと判断する。この判断結果にしたがって、コントローラ8dは、過酸化水素濃度に基づいて紫外線ランプ5により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御する。
【0032】
とくに被処理水のpHが6以下と低い場合は、過酸化水素の解離反応が進まないため、過酸化水素によるヒドロキシルラジカルの無効消費が激しい。そのため、220nmの紫外線の照射量を速やかに増やし、過酸化水素を分解してヒドロキシルラジカルを生成する反応を促進させる必要がある。
【0033】
そこで、制御基準判断手段における基準値のpHを6としてあらかじめ設定しておく。このようにすれば、被処理水のpHの測定値が6以下のときには、マイクロコンピュータ11dは、過酸化水素濃度とpHとの関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定する。コントローラ8dは、過酸化水素濃度の推定値に基づいて紫外線ランプ5により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御する。
【0034】
一方、被処理水のpHの測定値が6を超えるときには、過酸化水素は水素イオンとヒドロペルオキシイオンとに解離し、過酸化水素分子としての存在量が減少しているため、過酸化水素によるヒドロキシルラジカルの無効消費は比較的少ない。そのため、過酸化水素の分解反応を促進させる必要性は低く、被処理水の過酸化水素濃度の変化に対して速やかに追従しなくてもよい。このような場合、コントローラ8dは、応答速度が遅くても正確な過酸化水素測定装置による過酸化水素濃度の測定値に基づいて紫外線ランプ5により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御する。
【0035】
したがって、被処理水のpHが6以下の場合、即ち、過酸化水素の解離が進んでおらず過酸化水素濃度が高いと推定される場合には、応答速度の速いpH測定装置によるpHの測定値からの過酸化水素濃度の推定値に基づいて波長220nmの紫外線照射量を制御するため、過酸化水素濃度の変化に速やかに対応できるという効果を奏する。また、被処理水のpHが6を超える場合、即ち、過酸化水素の解離が進んでおり過酸化水素濃度が低減している場合には、過酸化水素濃度測定装置の測定値に基づくため、正確に対応できるという効果を奏する。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。実施の形態1において、反応槽容積を500L、被処理水流量を50L/min、被処理水のTOC濃度を20mg/L、オゾンガス流量を25L/min、オゾンガス濃度を200g/m(N)、紫外線照射量を200Wとして、全照射量に対する波長220nm紫外線照射量の割合を変化させて水処理を行った。図5は、その結果を示すグラフである。
【0037】
このとき、図5に示したように、波長220nm紫外線照射量の割合が50%以下であると、10mg/L以上の過酸化水素が生成される。ここで、波長220nmの紫外線照射量の割合を50%以上とすると過酸化水素は速やかに分解し、ヒドロキシルラジカルを生成する。その結果、TOC分解効率は図4に示すように格段に向上する。
【0038】
【発明の効果】
この発明にかかる水処理装置は、被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記紫外線照射量制御手段は過酸化水素濃度が高くなると前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を増やすように制御することを特徴とするものなので、ヒドロキシルラジカルの過酸化水素による無効消費を低減し、被処理水の有機化合物の分解効率が向上する。
【0039】
また、被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記過酸化水素濃度検知手段はpH測定装置と過酸化水素濃度推定手段とからなり、前記過酸化水素濃度推定手段はあらかじめ定められたpHと過酸化水素濃度との関係を有し前記関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものであり、前記紫外線照射量制御手段は前記過酸化水素濃度推定手段が推定した過酸化水素濃度の推定値に基づいて前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御することを特徴とするものなので、被処理水の過酸化水素濃度の変化に速やかに対応して、波長220nmの紫外線の照射量を制御できる。
【0040】
さらに、被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記過酸化水素濃度検知手段は過酸化水素濃度測定装置とpH測定装置と過酸化水素濃度推定手段とからなり、前記過酸化水素濃度推定手段は過酸化水素濃度の測定値とpHの測定値との関係を学習する学習手段を備え前記学習手段が学習した前記関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものであり、前記紫外線照射量制御手段は前記過酸化水素濃度推定手段が推定した過酸化水素濃度の推定値に基づいて前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御することを特徴とするものなので、被処理水の過酸化水素濃度の変化に速やかかつ精度よく対応して、波長220nmの紫外線の照射量を制御できる。
【0041】
そして、被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記過酸化水素濃度検知手段は過酸化水素濃度測定装置とpH測定装置と過酸化水素濃度推定手段とからなり、前記過酸化水素濃度推定手段は所定のpHと過酸化水素濃度との関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものであり、前記紫外線照射量制御手段は、過酸化水素濃度に基づいて前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御する際に過酸化水素濃度の測定値と推定値のいずれに基づくかを判断する制御基準判断手段を備え、前記制御基準判断手段は、被処理水のpHの測定値があらかじめ設定した基準値以下のときには前記過酸化水素濃度推定手段が推定した過酸化水素濃度の推定値に基づくと判断し、被処理水のpHの測定値が前記基準値を超えるときには過酸化水素濃度の測定値に基づくと判断することを特徴とするものなので、過酸化水素濃度の変化に速やかに対応して波長220nmの紫外線の照射量を制御できる。また、被処理水のpHの測定値が前記基準値を超えるときには過酸化水素濃度の測定値に基づくと判断するため、過酸化水素濃度の変化に精度よく対応して波長220nmの紫外線の照射量を制御できる。
【0042】
この発明にかかる水処理方法は、被処理水の有機化合物を分解するための水処理方法において、被処理水を反応槽に流入させ、前記反応槽にオゾンを供給し、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射し、被処理水の過酸化水素濃度を検知し、過酸化水素濃度が高くなると前記反応槽内に照射する波長220nmの紫外線の照射量を増やすように制御し、前記反応槽内に照射量を制御された波長220nmの紫外線を照射することを特徴とするものなので、ヒドロキシルラジカルの過酸化水素による無効消費を低減し、被処理水の有機化合物の分解効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1を説明するための模式図である。
【図2】 実施の形態2を説明するための模式図である。
【図3】 実施の形態3を説明するための模式図である。
【図4】 実施の形態4を説明するための模式図である。
【図5】 実施例を説明するためのグラフである。
【図6】 従来の技術を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1 反応槽、2 散気装置、3 オゾン発生器、4 紫外線ランプ、5 紫外線ランプ、6 電源、7 電源、8a〜8c コントローラ、9 過酸化水素濃度測定装置、10 pH測定装置、11b〜11c マイクロコンピュータ、12d 制御基準判断処理部、91 導水管、92 第一の紫外線照射手段、95a オゾン供給ノズル、93 第二の紫外線照射手段、94 第三の紫外線照射手段、95 オゾン供給手段

Claims (7)

  1. 被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記紫外線照射量制御手段は過酸化水素濃度が高くなると前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を増やすように制御することを特徴とする水処理装置。
  2. 被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記過酸化水素濃度検知手段はpH測定装置と過酸化水素濃度推定手段とからなり、前記過酸化水素濃度推定手段はあらかじめ定められたpHと過酸化水素濃度との関係を有し前記関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものであり、前記紫外線照射量制御手段は前記過酸化水素濃度推定手段が推定した過酸化水素濃度の推定値に基づいて前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御することを特徴とする水処理装置。
  3. 被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記過酸化水素濃度検知手段は過酸化水素濃度測定装置とpH測定装置と過酸化水素濃度推定手段とからなり、前記過酸化水素濃度推定手段は過酸化水素濃度の測定値とpHの測定値との関係を学習する学習手段を備え前記学習手段が学習した前記関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものであり、前記紫外線照射量制御手段は前記過酸化水素濃度推定手段が推定した過酸化水素濃度の推定値に基づいて前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御することを特徴とする水処理装置。
  4. 被処理水の有機化合物を分解するための水処理装置において、被処理水を流入させる反応槽と、前記反応槽にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射する第一紫外線照射手段と、前記反応槽内に波長220nmの紫外線を照射する第二紫外線照射手段と、前記第一紫外線照射手段及び前記第二紫外線照射手段から照射される紫外線の照射量を制御する紫外線照射量制御手段と、被処理水の過酸化水素濃度を検知する過酸化水素濃度検知手段とを備え、前記過酸化水素濃度検知手段は過酸化水素濃度測定装置とpH測定装置と過酸化水素濃度推定手段とからなり、前記過酸化水素濃度推定手段は所定のpHと過酸化水素濃度との関係を用いてpHの測定値から過酸化水素濃度を推定するものであり、前記紫外線照射量制御手段は、過酸化水素濃度に基づいて前記第二紫外線照射手段により照射される波長220nmの紫外線の照射量を制御する際に過酸化水素濃度の測定値と推定値のいずれに基づくかを判断する制御基準判断手段を備え、前記制御基準判断手段は、被処理水のpHの測定値があらかじめ設定した基準値以下のときには前記過酸化水素濃度推定手段が推定した過酸化水素濃度の推定値に基づくと判断し、被処理水のpHの測定値が前記基準値を超えるときには過酸化水素濃度の測定値に基づくと判断することを特徴とする水処理装置。
  5. 前記紫外線照射量制御手段は、過酸化水素濃度が10mg/L以上のときは波長220nmの紫外線の照射量を紫外線照射量全体の50%以上に制御することを特徴とする請求項1記載の水処理装置
  6. 前記制御基準判断手段は、前記基準値を6とすることを特徴とする請求項4記載の水処理装置
  7. 被処理水の有機化合物を分解するための水処理方法において、被処理水を反応槽に流入させ、前記反応槽にオゾンを供給し、前記反応槽内に波長254nmの紫外線を照射し、被処理水の過酸化水素濃度を検知し、過酸化水素濃度が高くなると前記反応槽内に照射する波長220nmの紫外線の照射量を増やすように制御し、前記反応槽内に照射量を制御された波長220nmの紫外線を照射することを特徴とする水処理方法。
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