JP3959579B2 - 窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安価な原料から合成可能で、かつ各種繊維又は繊維製品に優れた柔軟性及び耐洗濯性を付与する繊維処理剤組成物の主成分として有効な窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、各種繊維又は繊維製品に柔軟性、平滑性等を付与するための処理剤として、ジメチルポリシロキサン、エポキシ基含有ポリシロキサン、アミノアルキル基含有ポリシロキサン等の各種オルガノポリシロキサンが幅広く使用されており、中でも特に良好な柔軟性を各種繊維又は繊維製品に付与することができるアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサンが最も多く用いられている。特にアミノアルキル基として、−C3H6NH2、−C3H6NHC2H4NH2などを有するオルガノポリシロキサンを主剤とする繊維処理剤(特公昭48−1480号、特公昭54−43614号、特公昭57−43673号、特開昭60−185879号、特開昭60−185880号、特開昭64−61576号公報等)が優れた柔軟性を示すため広く使用されている。
【0003】
しかし、−C3H6NH2、−C3H6NHC2H4NH2を有するオルガノポリシロキサンを用いて処理した繊維は、加熱処理、乾燥或いは経日による熱や紫外線等によるアミノ基の劣化が起こり、特に白色系乃至は淡色系繊維又は繊維製品ではその色調が黄色に変化し、柔軟性も低下するという重大な欠点を有している。
【0004】
上記の黄色化防止のため、アミノアルキル基含有オルガノポリシロキサンと有機酸無水物もしくは塩化物(特開昭57−101046号公報)、エポキシ化合物(特開昭59−179884号公報)、高級脂肪酸(特開平1−306683号公報)、カーボネート(特開平2−47371号公報)等と反応させることによりアミノアルキル基を変性させる方法が提案されている。
【0005】
しかし、これらのものについては、未変性のアミノアルキル基含有オルガノポリシロキサンに比較して黄変性の防止効果改善は認められるが、その効果はまだ不十分である上、繊維への柔軟性や平滑性を付与するという点では未変性のものよりかえって劣るという欠点があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、繊維処理剤組成物の主成分として配合した場合、繊維又は繊維製品に対する黄変性が小さく、しかも柔軟性や平滑性を付与する効果の大きい新規な窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、以下に示すように、ポリマー末端基に選択的に窒素原子含有基を導入した窒素原子含有ポリシロキサンを用いることにより、繊維表面との反応が効率よく行われ、耐久性が向上すると共に、繊維表面に吸着されていない窒素原子が少なくなるために、処理後の熱や紫外線による黄変性が小さく、繊維又は繊維製品を黄変させにくく、かつ優れた柔軟性を得ることができることを見出した。更にこの化合物は、従来の窒素原子含有ポリシロキサンの合成法、即ち、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシロキサンといったジメチルサイクリックス、窒素原子を含むジアルコキシシラン、窒素原子を含むシクロポリシロキサン等のアルカリによる平衡では選択的にポリマー末端に窒素原子含有基を導入することは不可能であったが、α,ω−ジヒドロキシジメチルシロキサンと、窒素原子含有ジアルコキシシランとをアルコールを系から除きつつ反応させることにより、窒素原子含有ジアルコキシシランが脱アルコール触媒として作用し、その結果、無触媒で容易に得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
なお、特開平9−137061号公報には、α,ω−ジヒドロキシジメチルシロキサンを原料とした、脱アルコール反応による窒素原子含有ポリシロキサンが例示されているが、この方法は燐酸ナトリウム、水酸化バリウム等の触媒を用いない系においては、反応は非常に遅いという欠点があり、また、触媒を用いた場合は触媒の中和或いは除去が必要になり工程が煩雑になるという問題があった。この発明においては平均的な構造に関する記述はあるものの、構造の詳細については何の説明も行われておらず、本発明に示されるようにポリマー末端に選択的に窒素原子含有基を有する窒素原子含有ポリシロキサンを得ようとするものではなかった。
【0009】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で示されるポリマー末端を少なくとも1個含む窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法として、下記一般式(5)で示されるオルガノポリシロキサンと下記一般式(6)で示される窒素原子含有オルガノシランとを無触媒下に副生するアルコールを除去しながら脱アルコール反応させることを特徴とする後述する一般式(I)で示される窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法を提供する。
【0010】
【化6】
(式中、R1は窒素原子を含まない置換又は非置換の炭素数1〜20の1価有機基、R2は窒素原子を少なくとも1個含む1価有機基であり、R3は−OR1で表わされるオルガノオキシ基、pは2≦p≦2,000の正数を表わす。)
【0011】
【化7】
(式中、R1,R2,R3及びpは上記と同様の意味を示す。)
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の窒素原子含有ポリシロキサンは、下記一般式(1)で示されるポリマー末端を少なくとも1個含むものである。
【0013】
【化8】
(式中、R1は窒素原子を含まない置換又は非置換の炭素数1〜20の1価有機基、R2は窒素原子を少なくとも1個含む1価有機基であり、R3は−OR1で表わされるオルガノオキシ基、pは2≦p≦2,000の正数を表わす。)
【0014】
この場合、本発明の窒素原子含有ポリシロキサンの他方の末端は水酸基であっても、OSiR1R2R3基であってもよく、本発明のポリシロキサンとしては、下記一般式(I)で示されるものを挙げることができる。
【0015】
【化9】
(但し、Rは−OH又は−OSiR1R2R3である。)
【0016】
上記R1の有機基としては、非置換又は置換1価炭化水素基が挙げられ、炭素数1〜20、特に1〜3であるものである。本発明のオルガノポリシロキサンにおけるR1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、或いはこれらの炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基等のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化フェニル基等のハロゲン化アリール基などを挙げることができる。これらの中で、特に90モル%以上がメチル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基であることが好ましい。
【0017】
R2は窒素原子を少なくとも1個含む1価有機基であり、下記式(2),(3),(4)で示される基が例示される。
【0018】
【化10】
【0019】
式中R4は炭素数1〜6の2価炭化水素基であり、具体的にはメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基などであるが、中でもトリメチレン基が望ましい。
【0020】
R5及びR6は水素原子又は酸素原子を介在してもよい炭素数1〜50の非置換又は水酸基置換1価炭化水素基、特に非置換又は水酸基置換アルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基などの炭素数1〜8の1価炭化水素基を挙げることができるほか、COR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)で示される基、或いはCHC(OH)HCH2O(C2H4O)nR9(R9は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基等の1価炭化水素基、nは0〜10の正数である)で示される基も挙げることができる。なお、R5とR6、2個のR6は互いに同一でも異なっていてもよいが、これらの中では、水素原子及びメチル基が好ましい。
R7は−CH=,−N=,−OCH=,−ON=から選ばれる基である。
R8は水素原子もしくはメチル基である。
【0021】
なお、式(2)において、aは0〜4の整数であり、式(2)で示されるR2の具体例としては、
−C3H6NH2
−C3H6NHC2H4NH2
又は
−C3H6NHC2H4NHC2H4NH2
が挙げられる。
【0022】
また、上記具体例として示した基において、NH又はNH2の水素原子の1個又は2個がCOR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)で置換された基、或いはCHC(OH)HCH2O(C2H4O)nR9(R9は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基等の1価炭化水素基、nは0〜10の正数である)で置換された基も挙げることができる。
【0023】
また、R3は−OR1で表わされるオルガノオキシ基であり、特に炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましい。R3の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられるが、メトキシ基が最も好ましい。
【0024】
pは2≦p≦2,000の正数を表わすが、好ましくはpは10≦p≦300の正数である。
【0025】
一般式(1)で示されるポリマー末端を少なくとも1個含む窒素原子含有ポリシロキサンの例としては下記のものが例示される。
【0026】
【化11】
【0027】
また、上記化合物において、NH又はNH2の水素原子の1個又は2個がCOR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)で置換された化合物、或いはCHC(OH)HCH2O(C2H4O)nR9(R9は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基等の1価炭化水素基、nは0〜10の正数である)で置換された化合物も挙げることができる。
【0028】
本発明の窒素原子含有ポリシロキサンは、下記一般式(5)で示される両末端水酸基封鎖オルガノポリシロキサンと、下記一般式(6)で示される窒素原子含有オルガノシランとを無触媒下に副生するアルコールを除去しながら脱アルコール反応させることにより得ることができる。
【0029】
【化12】
(式中、R1,R2,R3,pは上記と同様の意味を示す。)
【0030】
一般式(5)中、pは、上述した通り、2≦p≦2,000の正数である。pが2より小さいとシラノールが不安定であるために、(B)成分との反応と平行に縮合反応が起こり、その結果サイクリックスが副生し、また2,000を超えると一般式(6)で示される含窒素ジオルガノオキシシランとの反応性が低下する。好ましくは10≦p≦500である。R1は上述した通りであるが、特に90モル%以上がメチル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基であることが好ましい。具体的には下記式で示されるものが例示される。
【0031】
【化13】
【0032】
一般式(6)中、R1,R2,R3は一般式(1)で示されるものと同一であり、R2として、一般式(2)で示されるものの中では、(A)との反応において触媒活性の高い、R6がHのものが好ましい。R1としてはメチル基が最も好ましい。R3としては脱アルコール反応が進行し易いメトキシ基が最も好ましく、具体例としては、以下に示されるものが例示される。
【0033】
【化14】
【0034】
R2として、一般式(3)で示されるものの中では、(A)との反応において触媒活性の高い、R5及びR8が水素原子のものが好ましい。R1としてはメチル基が最も好ましい。R3としては脱アルコール反応が進行し易いメトキシ基が最も好ましく、具体例としては、以下に示されるものが例示される。
【0035】
【化15】
【0036】
R2としては、一般式(4)で示されるものの中では、(A)との反応において触媒活性の高い、R5及びR8が水素原子のものが好ましい。R1としてはメチル基が最も好ましい。R3としては脱アルコール反応が進行し易いメトキシ基が最も好ましく、具体例としては、以下に示されるものが例示される。
【0037】
【化16】
【0038】
なお、式(6)において、R2が式(2)〜(4)で示される場合、そのR5,R6は水素原子又はアルキル基、フェニル基等の炭素数1〜8の1価炭化水素基であることが好ましい。
【0039】
(A)成分と(B)成分の反応条件は、(A)成分のシラノールの反応性、(B)成分のオルガノオキシ基、特にアルコキシ基の反応性にもよるが、一般に50〜180℃の反応温度で、3〜20時間行うことが好ましい。この反応により、容易に一般式(1)で示される窒素原子含有ポリシロキサンを得ることができる。副生するアルコールが反応の進行を阻害するため、窒素通気下でアルコールを除去しながら反応させることが必要である。溶媒は特に必要ないが、(A)成分の粘度が高い場合は、トルエン、キシレン等の溶媒を用いて反応を行ってもよい。また、反応が遅い場合は、必要に応じて、トリエチルアミン、テトラメチレンエチレンジアミンのような触媒を用いることができる。
【0040】
(A)成分と(B)成分の反応のモル比(A)/(B)は、1.0を超える場合は、窒素原子を含有しないポリシロキサンが多く残ってしまうために好ましくなく、また、0.5を下回ると、原料であるジアルコキシシランが残存してしまうため、好ましくは0.5≦(A)/(B)≦1.0である必要があり、より好ましくは0.6≦(A)/(B)≦1.0である。
【0041】
0.5<(A)/(B)の反応では、生成物の一部として、片末端に窒素原子含有基、片末端にシラノール基が残った窒素原子含有ポリシロキサンが得られる。このポリシロキサンは比較的反応性に富み、繊維との結合がより強く行われ、そのため、優れた柔軟性と長期柔軟性持続性、及び耐洗濯性を得ることができるが、反面、ポリシロキサンでの保存が必要な際、保存の条件によっては経時の粘度上昇をきたすときがあるので、必要に応じて、トリメチルシラノール、N.O−(ビストリメチルシリル)アセトアミドのようなシリル化剤や、ジメチルジメトキシシランのような2官能のアルコキシシランと反応させることにより、もう一方の末端をトリメチルシリル基やジメチルメトキシシリル基といった官能性のない、もしくは比較的低い基に変換することが可能である。更に、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等のアルコール化合物又はグリコール化合物を添加することにより、粘度上昇を抑えることが可能である。
【0042】
従来の窒素原子含有ポリシロキサンを有機酸、無機酸、エポキシ化合物と反応させることにより変性することは通常行われており、上記方法で得られる窒素原子含有ポリシロキサンにおいても、例えば、NH又はNH2の水素原子の1個又は2個をCOR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)で置換し、或いはCHC(OH)HCH2O(C2H4O)nR9(R9は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基等の1価炭化水素基、nは0〜10の正数である)で置換するため、有機酸、無機酸、エポキシ化合物により変性することは任意である。有機酸としては、蟻酸、酢酸、無水酢酸、プロパン酸等が例示され、好ましくは酢酸、無水酢酸である。無機酸の例としては、塩酸、燐酸等が挙げられる。
【0043】
エポキシ化合物の例としては下記一般式(7)で示されるものが例示される。
【0044】
【化17】
(式中、R9は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基等の1価炭化水素基であり、nは0〜10の正数である。)
なお、R9は水素原子又はブチル基であることが好ましい。
【0045】
本発明のオルガノポリシロキサンを主成分として含有する繊維処理剤組成物としては、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ミネラルターベンなどの有機溶剤に溶解させたものとするか、或いはノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性系界面活性剤などを用いて乳化物とする。これらの乳化剤として特に限定はないが、例えば非イオン性界面活性剤としては、エトキシ化高級アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、多価アルコール脂肪酸エステル、エトキシ化多価アルコール脂肪酸エステル、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪酸アミド、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、エトキシ化ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、そのHLBは5〜20の範囲内にあることが好ましく、特に10〜16の範囲内であることが好ましい。また、アニオン性乳化剤の例としては、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩、エトキシ化高級アルコール硫酸エステル塩、エトキシ化アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、エトキシ化高級アルコールリン酸塩等が挙げられ、カチオン性乳化剤の例としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン塩酸塩、ココナットアミンアセテート、アルキルアミンアセテート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、N−アシルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニオベタイン類、N−アシルアミドプロピル−N,N’−ジメチル−N’−β−ヒドロキシプロピルアンモニオベタイン類等が例示される。また、その使用量は、オルガノポリシロキサン100重量部に対して5〜50重量部が好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。また乳化の際の水の使用量は、オルガノポリシロキサン純分濃度が10〜80重量%となるようにすればよく、好ましくは20〜60重量%となるような量である。
【0046】
上記の乳化物は従来公知の方法で得ることができ、本発明におけるオルガノポリシロキサンと界面活性剤を混合し、これをホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー、万能混合機(商品名)、ウルトラミキサー(商品名)、プラネタリーミキサー(商品名)、コンビミックス(商品名)、三本ロールミキサーなどの乳化機で乳化すればよい。
【0047】
また、本発明の繊維処理剤組成物は、その特性を阻害しない範囲で、ジメチルポリシロキサン、α,ω−ジヒドロキシジメチルシロキサン、アルコキシシラン等のケイ素化合物や、他の添加剤として、例えば、防しわ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防腐剤、防錆剤等を添加しても何ら差し支えない。
【0048】
本発明の繊維処理剤組成物を用いて各種繊維又は繊維製品を処理する際には、この組成物の乳化物を所定の濃度に調整し、浸漬、スプレー、ロールコート等により繊維に付着させる。付着量は繊維の種類により異なり特に限定されないが、オルガノポリシロキサン付着量として0.01〜10重量%の範囲とするのが一般的である。次いで熱風吹き付け、加熱炉等で乾燥させればよい。繊維の種類によっても異なるが、乾燥は100〜150℃、2〜5分の範囲で行えばよい。
【0049】
また、本発明の繊維処理剤組成物で処理可能な繊維又は繊維製品についても特に限定はなく、綿、絹、麻、ウール、アンゴラ、モヘア等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、スパンデックス等の合成繊維に対しても全て有効である。また、その形態、形状にも制限はなく、ステープル、フィラメント、トウ、糸等の様な原材料形状に限らず、織物、編み物、詰め綿、不織布等の多様な加工形態のものも本発明の繊維処理剤組成物の処理可能な対象となる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の窒素原子含有ポリシロキサンは、各種繊維又は繊維製品に処理後の熱や紫外線による黄変性が小さく、優れた柔軟性及び耐洗濯性を付与する繊維処理剤組成物として幅広く使用されるものである。
【0051】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において粘度は全て25℃における値である。
<29Si−NMRによる構造解析>
サンプル1.5g、トルエン1.35g、ベンゼン−d60.15g、緩和試薬としてのトリス−(2,4−ペンタンジオネート)クロミウム0.04gを均一に溶解し、直径10mmのサンプルチューブに満たし、Lambda 300WB(JEOL)を用い、600〜3,000回積算することにより29Si−NMRのピークを観測した。
【0052】
[合成例1]
エステルアダプター、冷却管及び温度計を備えた500mlガラスフラスコに(A)成分としての下記平均構造式(8)で示されるα,ω−ジヒドロキシジメチルシロキサン476.5g(0.030mol)及び(B)成分としてのN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン12.4g(0.060mol)を仕込み、窒素通気下で120℃で12時間反応させた。エステルアダプターには脱メタノール反応によるメタノールの留出がみられた。反応終了後、得られた生成物(A−1)について、29Si−NMRによる構造同定を行った。その結果、原料であるN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランのピーク(−2.7ppm)は消滅しており、全てのシランが反応していた。チャートは図1に示されるようなものであり、帰属は以下のようであった。
【0053】
【化18】
【0054】
【表1】
【0055】
この分析結果と反応経路から、下記平均構造式(9)で示されるものであることが判った。揮発分、回転粘度の測定結果を表2に示す。
【0056】
【化19】
【0057】
[合成例2]
合成例1でN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランの量を6.2g(0.030mol)とした以外は合成例1と同様の操作を行った。反応終了後生成物(A−2)が得られた。得られた生成物について、29Si−NMRによる構造同定を行ったところ、下記平均構造式(10)で示されるものであることが判った。揮発分、回転粘度の測定結果を表2に示す。
【0058】
【化20】
【0059】
[合成例3]
合成例1でN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランの代わりにγ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン9.8g(0.060mol)を使用した以外は合成例1と同様の操作を行った。反応終了後、粘稠な無色透明の油状物(A−3)が得られた。得られた生成物について、29Si−NMRによる構造同定を行ったところ、下記平均構造式(11)で示されるものであることが判った。揮発分、回転粘度の測定結果を表2に示す。
【0060】
【化21】
【0061】
[合成例4]
合成例1でN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランの代わりに3−ピペラジノプロピルメチルジメトキシシラン9.9g(0.060mol)を使用し、反応条件を120℃/12時間とした以外は合成例1と同様の操作を行った。反応終了後、粘稠な無色透明の油状物(A−4)が得られた。得られた生成物について、29Si−NMRによる構造同定を行ったところ、下記平均構造式(12)で示されるものであることが判った。揮発分、回転粘度の測定結果を表2に示す。
【0062】
【化22】
【0063】
[合成例5](比較例)
2,000mlの還流管、温度計を備えたフラスコにオクタメチルシクロテトラシロキサン1,586.8g(21.4mol)及び1,3,5,7−テトラ−[N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル]−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン16.0g(0.10mol)を仕込み、窒素通気下で120℃で2時間脱水を行った。次いでN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン20.6g(0.10mol)を添加し、次いで下記平均構造式(13)で示される触媒1.08g(0.0020mol)を添加し、150℃で6時間反応させることにより重合を行った。重合終了後、90℃に冷却し、エチレンクロルヒドリン3.22g(0.040mol)を添加し、90℃で2時間反応させることにより中和を行った。反応終了後、粘稠な無色透明の油状物(A−5)が得られた。得られた生成物について、29Si−NMRによる構造同定を行ったところ、下記平均構造式(14)で示されるものであることが判った。揮発分、回転粘度の測定結果を表2に示す。
【0064】
【化23】
【0065】
[合成例6]
エステルアダプター、冷却管及び温度計を備えた1,000mlガラスフラスコに(A)成分としての下記平均構造式(15)で示されるα,ω−ジヒドロキシジメチルシロキサン344.8g(0.10mol)及び(B)成分としてのN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン41.3g(0.20mol)を仕込み、窒素通気下で120℃で8時間反応させた。エステルアダプターには脱メタノール反応によるメタノールの留出がみられた。反応終了後、イソプロピルアルコール30gと下記平均構造式(16)で示されるエポキシ化合物204.4g(0.60mol)を80℃に冷却後添加し、80℃で8時間反応させた。その後、5mmHgの減圧下で120℃で2時間ストリップすることにより、粘度1,018cpの無色透明のオイル(A−6)が得られた。得られたオイルについて1H−NMR観測をしたところ、全てのエポキシ基が反応していることが確認された。29Si−NMRの構造解析の結果、下記平均構造式(17)のものであることが確認された。揮発分、回転粘度の測定結果を表2に示す。
【0066】
【化24】
【0067】
[合成例7](比較例)
1,000mlの還流管、温度計を備えたフラスコにオクタメチルシクロテトラシロキサン370.8g(5.0mol)及び1,3,5,7−テトラ−[N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル]−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン16.0g(0.25mol)を仕込み、窒素通気下で120℃で2時間脱水を行った。次いでN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン20.6g(0.10mol)を添加し、次いで上記平均構造式(13)で示される触媒0.54g(0.0010mol)を添加し、150℃で6時間反応させることにより重合を行った。重合終了後、90℃に冷却し、エチレンクロルヒドリン1.61g(0.020mol)を添加し、90℃で2時間反応させることにより中和を行った。反応終了後、イソプロピルアルコール12gと上記平均構造式(16)で示されるエポキシ化合物204.2g(0.60mol)を80℃に冷却後添加し、80℃で8時間反応させた。その後、5mmHgの減圧下で120℃で2時間ストリップすることにより、粘度1,018cpの無色透明のオイル(A−7)が得られた。得られたオイルについて1H−NMR観測をしたところ、全てのエポキシ基が反応していることが確認された。29Si−NMRの構造解析の結果、下記平均構造式(18)のものであることが確認された。揮発分、回転粘度の測定結果を表2に示す。
【0068】
【化25】
【0069】
【表2】
【0070】
[参考例1]
合成例1で合成した窒素原子含有ポリシロキサン(A−1)150gにポリオキシエチレントリデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=10モル、HLB=13.6)90gを加えて混合した後、脱イオン水150gを加えてホモミキサーにて高速で15分間高速撹拌することにより、転相及び混練を行った。更に脱イオン水610gを加えてホモミキサーにて2,000rpmで15分間撹拌を行うことによって希釈を行い、乳白色のエマルジョンを得た。
【0071】
このエマルジョンに酢酸3.0gを加え、よく撹拌後、80℃で4時間熱処理した。更にこの溶液を脱イオン水で100倍に希釈することにより、試験液を作成した。
【0072】
ポリエステル/綿混紡(50%/50%)ブロード布及び綿ブロード布を試験液に1分間浸漬した後、絞り率100%の条件でロールを用いて絞り、100℃で2分間乾燥した後更に150℃で2分間熱処理し、処理布を作成した。下記の基準によりポリエステル/綿混紡ブロード布の柔軟性、綿ブロード布の耐洗濯性及び黄変性を評価した。結果を表3に示す。
【0073】
[参考例2]
参考例1において窒素原子含有ポリシロキサン(A−1)を合成例2で合成した(A−2)に変え、酢酸量を1.35gとした他は参考例1と同様の操作を行い処理布を作成し、柔軟性、耐洗濯性及び黄変性を参考例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0074】
[比較例1]
参考例1において窒素原子含有ポリシロキサン(A−1)を合成例5で合成した(A−5)に変え、酢酸量を3.4gとした他は参考例1と同様の操作を行い処理布を作成し、柔軟性、耐洗濯性及び黄変性を参考例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
柔軟性の評価:
三人のパネラーが手触で評価した。○は良好、△はやや不良、×は不良とする。
耐洗濯性の評価:
同一条件で10回の洗濯を行い、処理布の水のハジキ性を初期の状態と比較した。○は良好、△はやや不良、×は不良とする。
黄変性の評価:
測色色差計(ZE2000、日本電色工業株式会社)を用いてb値を測定し、黄変度の相対評価を行った。○は黄変が殆どなく良好、△は黄変がきつく不良とする。
【0075】
【表3】
【0076】
[参考例3]
合成例6で合成した窒素原子含有ポリシロキサン(A−6)300gにポリオキシエチレントリデシルエーテル(エチレンオキサイド付加モル数=10モル、HLB=13.6)50gを加えて混合した後、脱イオン水100gを加えてホモミキサーにて高速で15分間高速撹拌することにより、転相及び混練を行った。更に脱イオン水550gを加えてホモミキサーにて2,000rpmで15分間撹拌を行うことによって希釈を行い、透明なマイクロエマルジョンを得た。更にこの溶液を脱イオン水で68倍に希釈することにより、試験液を作成した。
【0077】
このエマルジョン2.2gに脱イオン水147.8gを加えた処理液に、ポリエステル/綿混紡(50%/50%)ブロード布(柔軟性評価用)及び蛍光染料処理した綿ブロード布(黄変性評価用)をそれぞれ試験液に2分間浸漬した後、絞り率100%の条件でロールを用いて絞り、100℃で2分間乾燥した後更に150℃で2分間熱処理し、処理布を作成した。黄変性については更に200℃で2分間熱処理を行うことにより処理布を作成した。柔軟性と黄変性については上記と同様の基準により評価し、耐洗濯性については下記の基準に従い評価した。結果を表4に示す。
【0078】
[比較例2]
参考例3において窒素原子含有ポリシロキサン(A−6)を合成例7で合成した(A−7)に変えた他は参考例1と同様の操作を行い処理布を作成し、柔軟性、耐洗濯性及び黄変性を参考例3と同様にして評価した。結果を表4に示す。
耐洗濯性の評価:
同一条件で1回の洗濯を行い、柔軟性を三人のパネラーが比較することにより行った。○は良好、△はやや不良、×は不良とする。
【0079】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1で得られた化合物のNMRスペクトルである。
Claims (8)
- (A)下記一般式(5)
で示されるオルガノポリシロキサンと、(B)下記一般式(6)
で示されるオルガノシランとを無触媒下に副生するアルコールを除去しながら反応させることを特徴とする下記一般式(I)
で示される窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法。 - (A)成分と(B)成分のモル比が、
0.5<(A)のモル数/(B)のモル数≦1.0
である請求項1記載の窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法。 - 上記(A)成分と(B)成分とを脱アルコール反応させた後、有機酸、無機酸又はエポキシ化合物にて変性した請求項1又は2記載の窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法。
- R2が、下記一般式(2)
−R4(NR5CH2CH2)aNR6 2 (2)
(式中、R4は炭素数1〜6の2価炭化水素基、R5及びR6は水素原子又は酸素原子を介在してもよい炭素数1〜50の非置換又は水酸基置換1価炭化水素基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0≦a≦4の整数を表わす。)
で示される1価有機基である請求項1、2又は3記載の窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法。 - R2が、
−C3H6NH2
−C3H6NHC2H4NH2
又は
−C3H6NHC2H4NHC2H4NH2
である請求項4記載の窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法。 - R3が、OCH3である請求項1乃至5のいずれか1項記載の窒素原子含有ポリシロキサンの製造方法。
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