JP3958495B2 - 中空糸膜モジュールの洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、浸漬型の膜分離法に用いられる中空糸膜モジュールの洗浄方法及びその洗浄方法を行う固液分離装置に関するものであり、特に少量の洗浄液で短時間に効果的なインライン薬液洗浄ができる中空糸膜モジュールの洗浄方法及びその洗浄方法を行う固液分離装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、中空糸膜モジュールを下水処理場における二次処理、三次処理、浄化槽における固液分離、産業廃水中のSS(浮遊懸濁物質)の固液分離、浄水場における河川水の直接ろ過、工業用水道水のろ過、プール水のろ過等の高汚濁性水処理用途に用いる検討が様々な形で行われている。
そして、中空糸膜モジュールには、中空糸膜の中空部から外側へ向かってろ過を行う内圧式と、中空糸膜の外側から中空部へ向かってろ過を行う外圧式とがあり、それぞれに長所があるものの、内圧式に比べて、空間当りの膜面積を大きくとり、装置の占めるスペースを少なくできる外圧式の中空膜モジュールが上記の比較的大規模の用途に向いていると考えられる。
【0003】
しかしながら、これらの用途においてはろ過の継続とともにろ過膜に目詰まりを生じ、ろ過差圧の上昇を生じた。
従来、ろ過の継続とともに生じた有機物や金属元素に由来するファウリングを取り除くためには、洗浄薬液による膜洗浄を行ってきた。洗浄薬液による膜洗浄方法は大きくは2つに分類され、中空糸膜モジュールを洗浄薬液槽に移して浸漬するいわゆる浸漬薬液洗浄方法か、もしくは洗浄薬液を通常の運転時とは逆に中空部から膜外へ透過させて洗浄を行ういわゆるインライン薬液洗浄方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】
浸漬薬液洗浄方法は、洗浄効果が大きいものの、薬品使用量が多く、モジュールを脱着し浸漬槽へ移送するか、あるいはユニットごと浸漬槽へ移送する必要があり、煩雑な作業を伴うという問題点があった。
これに対して、インライン薬液洗浄方法は、薬品使用量が少なく、浸漬薬液洗浄方法のような煩雑な作業も伴わないものの、中空糸膜モジュールにおける集水管の占める体積が大きいために、薬品を注入するだけではモジュールの集水管内全体に洗浄薬液が行き渡るまで時間がかかったり、また、洗浄薬液注入点に近い集水管付近の中空糸から洗浄薬液が膜外へ浸出するため、モジュール全体の洗浄薬液洗浄が困難であった。
また、中空糸膜の場合、平膜や管型と違い、集水管内径は200mm程度の内径があるのに対して、膜中空部は0.5mm程度以下であるために、中空糸膜内に薬液を加圧注入しにくく、注入速度が高いまま無理に加圧して、中空糸膜内まで薬液注入しようとすると、洗浄薬液注入点に近い集水管付近の中空糸膜から洗浄薬液が膜外に流出して、洗浄に必要な薬液量以上の薬液が必要となる。また、必要以上の薬液が生物反応槽(膜浸漬槽)に流れ込むために、生物処理に悪影響を及ぼす問題があった。
【0005】
本発明は、浸漬薬液洗浄方法に比べて作業の煩雑性の少ないインライン薬液洗浄方法における前記の従来の問題を解決し、少量の洗浄薬液で短時間に効果的なインライン薬液洗浄を行うことができる中空糸膜モジュールの洗浄方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記の問題点について、集水管内全体に洗浄薬液が行き渡るまでに時間がかかったり、洗浄薬液注入点に近い集水管付近の中空糸から洗浄薬液が膜外へ浸出する現象を防止する方法について種々研究した。
そして、一方の集水管へ洗浄薬液を注入するとともにもう一方の集水管から集水管内の分離透過水を吸引することが、少量の洗浄薬液で短時間に効果的なインライン薬液洗浄を行うことに極めて有効に作用することに着目して、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の手段により前記の課題を解決した。
(1)両端に集水管があり、その両端集水管が下端で連通管を介して連通されている中空糸膜モジュールに洗浄薬液を注入して膜洗浄をするにあたり、中空糸膜モジュールが被ろ過液中に浸漬された状態で、一方の集水管の注入口から洗浄薬液を注入し、もう一方の集水管の吸引口から集水管内の分離透過水を吸引し、下端の連通管を介して集水管内の分離透過水を洗浄薬液で置換した後、前記吸引口からの集水管内の分離透過水の吸引を停止するとともに、前記注入口から集水管へ洗浄薬液を連続注入して洗浄薬液を中空糸膜から膜外へ透過させることを特徴とする中空糸膜モジュールの薬液洗浄方法。
(2)前記の分離透過水の吸引の停止は、ポンプの停止もしくはバルブの閉止によって行うことを特徴とする前記(1)記載の中空糸膜モジュールの薬液洗浄方法。
【0008】
(3)1分間あたりにおける前記吸引口から分離透過水をモジュール外へ吸引する量と集水管への洗浄薬液注入量は、モジュールの集水管容積の0.5倍以上、好ましくは1倍以上2倍以下とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の中空糸膜モジュールの薬液洗浄方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の中空糸膜モジュールの洗浄方法及び装置について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の洗浄方法の1例を示すフロー図であり、図2は組み合わせた中空糸膜モジュールを用いる他の例を示すフロー図である。また、図3は、本発明の洗浄方法を実施するために、処理槽、配管、バルブによって具体的に表した固液分離装置の概略説明図を示す。
なお、本発明を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
本発明の中空糸膜モジュール6の洗浄方法における集水管1への洗浄薬液注入や、モジュール集水管1内からの分離透過水の吸引の方法としては、水頭差を利用しても良くポンプを利用してもよいが、ここではポンプ2台(5−1、5−2)によって洗浄する場合を例にとり説明する。
本発明は、被処理液中に浸漬した状態でろ過処理を行っている膜モジュール6を薬液洗浄する際に、ろ過処理停止後、膜モジュール6を被処理液中に浸漬した状態で、集水管1の注入口2からは洗浄薬液を注入し、吸引口3からは集水管1内の分離透過水の吸引を行って、集水管1内を洗浄薬液で置換する、という手段を取る点において、最もその特徴を有するものである。
この時の分離透過水の吸引速度は、洗浄薬液の注入速度以下とし、好ましくは同程度とする。これは、吸引速度が注入速度を超えると、中空糸膜部からの吸引ろ過が始まるからであり、また、注入速度が吸引速度よりも速すぎると、集水管1付近から膜6外へ流出する洗浄薬液量が増加し、洗浄薬液の損失となるからである。
【0011】
次に、本発明の洗浄方法を、より具体的に説明するために、処理槽内に中空糸膜モジュールを設置した固液分離装置において、通常運転時から洗浄時に至る工程に関して図3を用いて説明する。なお、図3における配管やバルブは、本発明の洗浄方法を実施する上で使用される装置での1例を示すものであり、本発明は以下で説明する配管やバルブの配置に限定されるものではない。
本発明の洗浄方法は、被処理液をろ過する固液分離装置の処理工程の全体において述べれば、通常運転時(ろ過運転時)の第1工程、集水管1内の分離透過水と洗浄薬液を循環置換する第2工程、洗浄薬液を連続注入する第3工程、適当な時間だけ放置する第4工程、集水管1内と膜6内の洗浄薬液をモジュール外に排出する第5工程の、5つの工程よりなる。
【0012】
第1工程である通常運転時(ろ過運転時)は、処理槽7内の少なくとも膜モジュール浸漬場所の下方に設置しているブロアー9からの送気を散気装置8を用いて散気している被処理液中に膜モジュールを浸漬し、バルブa,e,fを開きバルブb,c,d,g,hを閉じて、ポンプ5−1及び5−2によりモジュール集水管の開口部2及び3から処理水を吸引している。
本膜モジュールを本発明法により薬液洗浄する場合、第2工程として、ブロアー9及びポンプ5−1及び5−2を停止し、バルブはa,b,e,f,hを閉じ、バルブc,d,gを開いた状態とした後、ポンプ5−1及び5−2を起動して、集水管1の注入口2からは洗浄薬液を集水管1に注入し、吸引口3からは集水管1内に残っている分離透過水の吸引を行って、集水管1内を洗浄薬液で置換する。
【0013】
この第2工程における分離透過水の吸引速度は、洗浄薬液の注入速度以下とし、好ましくは同程度とする。これは吸引速度が注入速度を超えると、中空糸膜部からの吸引ろ過が始まるからであり、また注入速度が吸引速度より速すぎると、集水管1付近から膜6外へ流出する洗浄薬液量が増加し、洗浄薬液の損失となるからである。
【0014】
また、この時の1分間あたりの注入・吸引量は、モジュールの集水管1の容積の0.5倍以上とし、好ましくは1倍以上2倍以下とする。1分間あたりの注入・吸引量が、モジュール集水管1の容積に対して0.5倍以下の場合、モジュール集水管1内を注入薬液で置換する時間が2分以上かかることとなり、それだけ薬品洗浄時間が長くなる。逆に2倍以上だと、モジュール6内で循環する薬液速度が速くなることで配管内圧力損失が大きくなり、循環置換をするのにそれだけエネルギーを必要とする。例えば集水管1の容積が2リットルのモジュールにおいては、注入・吸引速度は約2リットル/min〜4リットル/minが適当である。
【0015】
また、この第2工程において、吸引口3から吸引された分離透過水により薬液タンク内の薬液濃度が低下することが危惧される場合には、第2工程におけるバルブの状態として、バルブa,c,e,f,hを閉じ、バルブb,d,gが開いた状態とすればよい。
集水管1内の分離透過水が洗浄薬液で置換された後、第3工程として、ブロアー9及びポンプ5−1は停止され、バルブa,b,c,e,f,hは閉じられ、バルブd,gは開いた状態とした後、ポンプ5−2により洗浄薬液の連続注入を行う。連続注入時においては、そのまま洗浄薬液注入吸引だけを行ってもよいが、途中でバルブcを開き、ポンプ5−1を起動して、集水管1内の液を吸引する間欠的な循環を行ってもよい。
薬液の注入速度は、集水管置換の速度よりも小さいことが好ましい。洗浄時の1分間あたりの注入量は、通常運転時の吸引量の0.01〜2倍が好ましい。
【0016】
必要な洗浄薬液量を注入した後は、第4工程として、ポンプ5−1、5−2を停止し、そのままの状態で放置する。
適当な時間だけ放置した後、第5工程の操作としては、ブロアー9を起動し、バルブa,c,d,f,gを閉じ、バルブb,e,hを開いた状態とした後、ポンプ5−1及び5−2を起動し、集水管1内と膜6内に残る洗浄薬液を排出する。
洗浄薬液が集水管1内と膜6内から十分排出された後、第1工程の通常運転時(ろ過運転時)の状態に戻す。
【0017】
本発明の洗浄方法において洗浄薬液として使用する薬品は、中空糸膜やろ過システムを構成する部材に損傷を与えずファウリング物質を溶解あるいは酸化分解するものであれば、特に限定されることなく使用できる。その具体的な例としては、次亜塩素酸ソーダ、クロラミン、過酸化水素水、苛性ソーダ、塩酸、シュウ酸、クエン酸等を挙げることができる。
本発明の洗浄方法が使用できる中空糸膜の材質も特に限定されるものではなく、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、セルロース系等任意のものが使用できる。
【0018】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0019】
図2に示す中空糸膜モジュールを、食品工場廃液をBOD源とした排水の浸漬型膜分離活性汚泥法に約6ヶ月間使用し、膜の目詰まりが生じた試験中空糸膜モジュールを2つ(モジュールA、B)用意した。本中空糸膜モジュールにおける集水管容積は2リットルであり、膜面積は11m2 である。通常運転時の吸引量は3.1ml/minであった。なお、本中空糸膜モジュールの使用開始時における差圧は5kPaであり、約6ヶ月使用して目詰まりした後の差圧は30kPaであった。
(洗浄薬液)
洗浄薬液として、3000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を14リットル調製した。
【0020】
(中空糸膜モジュールの洗浄)
(1)中空糸膜モジュールA
中空糸膜モジュールAについては、洗浄薬液を注入口2から0.3リットル/minの注入速度で連続注入することにより、インライン薬液洗浄を実施した。(2)中空糸膜モジュールB
中空糸膜モジュールBについては、本発明の方法にしたがって洗浄を実施した。すなわち、モジュール6の集水管1の片側に洗浄薬液注入口2を設け、もう一方の集水管に吸引口3を設けた。つづいて、循環速度2リットル/minで中空糸膜モジュール6の集水管1内に残っていた分離透過水を洗浄薬液で循環置換した後、集水管1内からの吸引を止め、洗浄薬液注入速度を0.3リットル/minとして洗浄薬液の連続注入を開始した。連続注入中は15分毎に1分間、循環速度2リットル/minで集水管1内を注入薬液で循環した。洗浄開始から50分後に薬液注入を停止し、洗浄開始2時間後までそのまま静置した。
【0021】
このようにして、2種類の洗浄方法により薬液洗浄を行った時、それぞれの差圧の回復は第1表に示すとおりであった。従来の洗浄方法による差圧回復に比べて、本発明の洗浄方法による差圧の回復は大きく、本発明の洗浄方法により差圧はろ過開始時程度に回復した。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、少量の洗浄薬剤により短時間でインライン薬液洗浄を行うことができ、洗浄効果が大きいので洗浄後の差圧回復が著しく、洗浄後のろ過圧力が低くくてすむ。効果的なインライン薬液洗浄を行えるので作業に煩雑性がない。洗浄薬剤の損失が少なくて済む。したがって、コストが安くすむ。
また、膜を生物反応槽に浸漬した場合、薬液が生物反応槽に流れ込まないため、生物処理に悪影響を及ぼさない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄方法を説明するための簡易フロー図である。
【図2】本発明の洗浄方法で洗浄した中空糸膜モジュールの模式図である。
【図3】本発明の洗浄方法を実施するための具体的な固液分離装置の概略説明図を示す。
【符号の説明】
1 集水管
2 洗浄薬液注入口
3 集水管内液吸引口
4 洗浄薬液用タンク
5−1 ポンプ
5−2 ポンプ
6 中空糸膜モジュール
7 処理槽
8 散気装置
9 ブロアー
a,b,c,d,e,f,g,h バルブ
Claims (3)
- 両端に集水管があり、その両端集水管が下端で連通管を介して連通されている中空糸膜モジュールに洗浄薬液を注入して膜洗浄をするにあたり、中空糸膜モジュールが被ろ過液中に浸漬された状態で、一方の集水管の注入口から洗浄薬液を注入し、もう一方の集水管の吸引口から集水管内の分離透過水を吸引し、下端の連通管を介して集水管内の分離透過水を洗浄薬液で置換した後、前記吸引口からの集水管内の分離透過水の吸引を停止するとともに、前記注入口から集水管へ洗浄薬液を連続注入して洗浄薬液を中空糸膜から膜外へ透過させることを特徴とする中空糸膜モジュールの薬液洗浄方法。
- 前記の分離透過水の吸引の停止は、ポンプの停止もしくはバルブの閉止によって行うことを特徴とする請求項1記載の中空糸膜モジュールの薬液洗浄方法。
- 1分間あたりにおける前記吸引口から分離透過水をモジュール外へ吸引する量と集水管への洗浄薬液注入量は、モジュールの集水管容積の0.5倍以上、好ましくは1倍以上2倍以下とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の中空糸膜モジュールの薬液洗浄方法。
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