JP3957250B2 - 樹脂フイルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置及び搬送方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートを搬送するための搬送装置及び搬送方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、セラミック電子部品の製造工程においては、セラミックグリーンシートに電極ペーストを印刷したり、その他の加工を行ったりする目的で、長尺のセラミックグリーンシートを搬送することが必要になる場合がある。
【0003】
そして、セラミックグリーンシートを搬送するに際しては、セラミックグリーンシートにしわやたるみが発生したり、厚みが変化したり、あるいは蛇行が生じたりしないように、セラミックグリーンシートに一定の張力をかけて搬送することが行われている。
なお、セラミックグリーンシートを搬送するにあたっては、そのまま搬送する場合に限らず、セラミックグリーンシートを樹脂フィルム(キャリアフィルム)上に保持させた状態で搬送する場合もある。
【0004】
図5は、キャリアフィルム上に保持された状態の、長尺のセラミックグリーンシート53の巻き出し、巻き取り装置を備えたセラミックグリーンシートの搬送装置の要部を示す図である。この搬送装置は、巻き出しロール51と、巻き取りロール52と、巻き出しロール51と巻き取りロール52の間に配設された、セラミックグリーンシート53の搬送方向を転換させるガイドロール64,65と、自在に変位して、セラミックグリーンシート53の張力を所定範囲に保つ機能を果たすダンサロール(ダンサロール機構)54と、搬送途中のセラミックグリーンシート53の張力を検出し、張力に応じた信号を発信する張力検出手段55と、張力検出手段55からの信号に応じて、ダンサロール54を上下方向に駆動(変位)させる駆動モータ(サーボモータ)56及びサーボモータドライバ57を介して、ダンサロール54の動作を制御することによりセラミックグリーンシートの張力を制御する張力制御手段58とを備えている。
また、このセラミックグリーンシートの搬送装置は、さらに、巻き出しロール51を駆動する駆動モータ(サーボモータ)59及びサーボモータドライバ60を介して巻き出しロール51の駆動・停止や、回転速度の制御などを行うとともに、巻き取りロール52を駆動する駆動モータ(サーボモータ)61及びサーボモータドライバ62を介して巻き取りロール52の駆動・停止や、回転速度の制御などを行うことによりセラミックグリーンシートの搬送を制御する搬送制御手段63を備えている。
【0005】
このセラミックグリーンシートの搬送装置において、セラミックグリーンシート53は、巻き出しロール51より巻き出され、張力検出手段55により張力が検出された後、ダンサロール54を経て、巻き取りロール52により巻き取られる。
また、巻き出しロール51の回転速度(搬送速度)は、サーボモータ59により制御され、サーボモータ59はサーボモータドライバ60により駆動される。また、巻き取りロール52の回転速度(搬送速度)は、サーボモータ61により制御され、サーボモータ61はサーボモータドライバ62より駆動される。
そして、ダンサロール54は、張力検出手段55からの信号に応じて、サーボモータ56により駆動され、上下方向に変位することにより、セラミックグリーンシート53の張力とバランスし、セラミックグリーンシート53の張力が所定の範囲に保たれるように構成されている。
【0006】
ところで、上記従来のセラミックグリーンシートの搬送装置では、長尺のセラミックグリーンシート53を所定量(所定長さ)搬送する場合において、巻き出しロール51と巻き取りロール52を、定められた速度カーブで、同時に一定量回転させることによりセラミックグリーンシート53を搬送し、張力制御手段58が、張力検出手段55からの検出結果に応じて、サーボモータ56,サーボモータドライバ57を介してダンサロール54を駆動することにより、セラミックグリーンシート53の張力が所定の範囲に保たれるようにしている。
【0007】
なお、この従来の搬送装置の場合、制御の方法としては、例えば、図6に示すように、巻き出しロール速度指令器から、巻き出しロール用のサーボモータを駆動するサーボモータドライバに速度指令を出力するとともに、巻き取りロール速度指令器から、巻き取りロール用のサーボモータを駆動するサーボモータドライバに速度指令を出力する一方、張力検出手段からの張力の検出信号と、張力設定手段からの張力の設定値を比較して、両者に差(偏差)がある場合には、その偏差を減らす方向に演算を行い、ダンサロール用のサーボモータを駆動するサーボモータドライバに速度指令を出力してセラミックグリーンシートの張力を一定に保つ方法などが適用されることになる。なお、この制御方法において、演算はP(比例)+I(積分)+D(微分)動作である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のセラミックグリーンシートの搬送装置の場合、セラミックグリーンシートの張力が一定で、連続して搬送されている場合には、特に問題はないが、加速完了時や減速時などにおいて、セラミックグリーンシートの張力が急激に増大、減少する場合においては、大きな張力変動が発生し、独立したダンサロールによる張力制御では、必ずしもセラミックグリーンシートの張力変化を速やかに吸収することができず、セラミックグリーンシートに蛇行が生じたりするという問題点があり、また、セラミックグリーンシートの搬送を停止させる際においては、セラミックグリーンシートの整定までに長い時間を要したりするという問題点がある。
【0009】
本願発明は、上記問題点を解決するものであり、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシート(長尺フィルム)を搬送する際において、長尺フィルムの張力が急激に変動する場合も、これを吸収して、安定した張力を保ちながら長尺フィルムを確実に搬送することが可能な搬送装置及び搬送方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明の、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置は、
樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートである長尺フィルムを供給する巻き出しロールと、
巻き出しロールから供給された長尺フィルムを巻き取る巻き取りロールと、
巻き出しロールと巻き取りロールの間に配設され、変位して、長尺フィルムの張力を制御することができるように構成されたダンサロールと、
搬送途中の長尺フィルムの張力を検出するとともに、張力に応じた信号を発信する張力検出手段と、
巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度差を検出するとともに、回転速度差に応じた信号を発信する速度差検出手段と、
張力検出手段からの信号と速度差検出手段からの信号とを加算した制御信号にしたがってダンサロールを変位させることにより、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御する張力制御手段と
を具備し、
前記長尺フィルムを構成する前記樹脂フィルム上に保持された前記セラミックグリーンシートに導電性ペーストをスクリーン印刷する際に、前記長尺フィルムを間欠搬送するために用いられる長尺フィルムの搬送装置であって、
前記巻き出しロールと前記巻き取りロールを間欠的に回転させることにより、長尺フィルムを間欠的に搬送するように構成されており、かつ、
前記張力検出手段からの検出信号と、目標張力に差があるときには、前記ダンサロールが動作して長尺フィルムの張力変動を吸収するとともに、
長尺フィルムを搬送する際の前記巻き出しロールと、前記巻き取りロールの回転速度に差が生じた場合には、前記張力検出手段からの信号に、前記速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがって前記ダンサロールを変位させるフィードフォワード制御を行うことにより、長尺フィルムの緩みおよび張りを防止して、スクリーン印刷に供される長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御するように構成されていること
を特徴としている。
【0011】
張力検出手段からの検出信号と、目標張力(設定張力)とを比較して、両者に差(偏差)があるときには、ダンサロールが動作して長尺フィルムの張力変動を吸収するとともに、長尺フィルムを搬送する際の巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度に差が生じた場合には、張力検出手段からの信号に、速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがってダンサロールを変位させることにより、いわゆるフィードフォワード制御を行うことが可能になり、長尺フィルムの緩みや張りを事前に防止して、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御しつつ、安定した搬送を行うことが可能になる。
【0012】
なお、巻き出しロールと巻き取りロールを間欠的に回転させるようにした場合、長尺フィルムの張力に大きな変動が生じやすいが、このような場合に本願発明を適用することにより、フィードフォワード制御を行って、長尺フィルムの緩みや張りを事前に防止し、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御することが可能になるため、スクリーン印刷に供される長尺フィルムの搬送装置として特に有意義である。
【0013】
また、請求項2の樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置は、前記巻き出しロールと前記巻き取りロールのそれぞれが、外周面に吸引孔を備えており、該吸引孔から吸引することにより、長尺フィルムを外周面に吸着した状態で搬送するように構成されていること特徴としている。
【0014】
外周面に吸引孔を備えた巻き出しロールと巻き取りロールを用い、該吸引孔から吸引して、長尺フィルムを外周面に吸着した状態で搬送するようにした場合、各ロール表面での長尺フィルムの滑りが抑制、防止され、各ロールの回転速度と長尺フィルムの搬送量や張力の関係がより正確に対応することになるため、さらに確実に張力を所定範囲に制御しつつ、長尺フィルムを所定量だけ確実に搬送することが可能になる。
【0015】
また、請求項3の樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置は、前記巻き取りロールが正・逆回転可能に構成されており、長尺フィルムを所定の位置に停止させるに際して、前記巻き出しロールを所定のタイミングで停止させるとともに、前記巻き出しロールを停止させた状態で、前記巻き取りロールを正・逆回転させることにより、長尺フィルムの位置決めを行うように構成されていることを特徴としている。
【0016】
巻き取りロールが正・逆回転可能であって、長尺フィルムを所定の位置に停止させるに際して、前記巻き出しロールを所定のタイミングで停止させるとともに、前記巻き出しロールを停止させた状態で、前記巻き取りロールを正・逆回転させることにより、長尺フィルムの位置決めを行うように構成された搬送装置にも本願発明を適用することが可能であり、その場合にも、フィードフォワード制御を行って、長尺フィルムの緩みや張りを事前に防止し、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御しつつ、安定した搬送を行うことが可能になる。
【0017】
また、本願発明(請求項4)の樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送方法は、
樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートである長尺フィルムを供給する巻き出しロールと、巻き出しロールから供給された長尺フィルムを巻き取る巻き取りロールとを間欠的に回転させることにより、長尺フィルムを間欠的に搬送する搬送方法であって、前記長尺フィルムを構成する樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートに導電性ペーストをスクリーン印刷する際に、前記長尺フィルムを搬送するために用いられる搬送方法であり、
巻き出しロールと巻き取りロールの間に、自在に変位して、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に保つダンサロールを配設し、
搬送途中の長尺フィルムの張力を張力検出手段により検出して張力に応じた信号を発信するとともに、巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度差を速度差検出手段により検出して回転速度差に応じた信号を発信し、
張力検出手段からの検出信号と、目標張力に差があるときには、ダンサロールを動作させて長尺フィルムの張力変動を吸収するとともに、
長尺フィルムを搬送する際の巻き出しロールと、巻き取りロールの回転速度に差が生じた場合には、張力検出手段からの信号に、速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがってダンサロールを変位させるフィードフォワード制御を行うことにより、長尺フィルムの緩みおよび張りを防止し、スクリーン印刷に供される長尺フィルムの張力を目標張力範囲に保ちながら長尺フィルムを間欠的に搬送すること
を特徴としている。
【0018】
本願発明の搬送方法は、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシート(長尺フィルム)を供給する巻き出しロールと、巻き出しロールから供給された長尺フィルムを巻き取る巻き取りロールとを間欠的に回転させることにより、長尺フィルムを間欠的に搬送する搬送方法において、張力検出手段からの検出信号と、目標張力(設定張力)とを比較して、両者に差(偏差)があるときには、ダンサロールが動作して長尺フィルムの張力変動を吸収するとともに、長尺フィルムを搬送する際の巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度に差が生じた場合には、張力検出手段からの信号に速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがってダンサロールを変位させるようにしているので、いわゆるフィードフォワード制御を行うことが可能になり、長尺フィルムの緩みや張りを事前に防止し、スクリーン印刷に供される長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御しつつ、安定した搬送を行うことが可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明が関連する発明の実施形態および本願発明の実施形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0020】
[本願発明が関連する発明の実施形態]
この本願発明が関連する発明の実施形態(関連発明の実施形態)では、キャリアフィルム上に保持された長尺のセラミックグリーンシート(長尺フィルム)を搬送する場合を例にとって説明する。
図1は本願発明が関連する発明の実施形態にかかるセラミックグリーンシートの搬送装置の要部構成を模式的に示す図である。
この実施形態のセラミックグリーンシートの搬送装置は、巻き出しロール1と、巻き取りロール2と、巻き出しロール1と巻き取りロール2の間に配設された、セラミックグリーンシート(長尺フィルム)3の搬送方向を転換させるガイドロール14,15と、ガイドロール14と15の間に配設され、変位して、セラミックグリーンシート3の張力を所定の範囲に保つ機能を果たすダンサロール(ダンサロール機構)4と、搬送途中のセラミックグリーンシート3の張力を検出し、張力に応じた信号を発信する張力検出手段5と、張力検出手段5からの信号に応じて、ダンサロール4を上下方向に駆動(変位)させる駆動モータ(サーボモータ)6及びサーボモータドライバ7を介して、ダンサロール4の動作を制御してセラミックグリーンシート3の張力を制御するとともに、巻き出しロール1を駆動する駆動モータ(サーボモータ)9及びサーボモータドライバ10を介して巻き出しロール1の駆動・停止や回転速度の制御、及び、巻き取りロール2を駆動する駆動モータ(サーボモータ)11及びサーボモータドライバ12を介して巻き取りロール2の駆動・停止や回転速度の制御を行うことにより、セラミックグリーンシートの搬送を制御する搬送・張力制御手段8を備えている。
なお、この実施形態においては、搬送・張力制御手段8が、巻き出しロール1と巻き取りロール2の回転速度差を検出し、この回転速度差に応じた信号を発信する速度差検出手段としての機能と、張力検出手段5からの信号に速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがってダンサロール4を変位させることにより、セラミックグリーンシート3の張力を目標張力範囲に制御する張力制御手段としての機能の両方の機能を果たすように構成されている。
【0021】
上記のように構成されたこの実施形態のセラミックグリーンシートの搬送装置を用いてセラミックグリーンシートを搬送する場合、まず、セラミックグリーンシート3が、巻き出しロール1により送り出され、ガイドロール14及び張力検出手段5を経て、ダンサロール(ダンサロール機構)4により張力が制御されながら、ガイドロール15を経て、巻き取りロール2により巻き取られる。
そして、搬送工程では、巻き出しロール1、巻き取りロール2の回転速度がサーボモータ9及び11で制御され、サーボモータ9及び11は、搬送・張力制御手段8からの指令を受けたサーボモータドライバ10及び12より駆動される。
【0022】
そして、同時に搬送・張力制御手段8は、張力検出手段5の出力を入力することによりダンサロール駆動用のサーボモータ6を駆動し、セラミックグリーンシート3の張力とバランスさせることにより、セラミックグリーンシート3の張力を所定の範囲に制御する。なお、ダンサロール駆動用のサーボモータ6は、搬送・張力制御手段8からの指令を受けたサーボモータドライバ7により駆動される。
【0023】
図2は、上記のような搬送・張力制御手段の構成の一例を示す図である。この搬送・張力制御手段による制御方法は、図2に示すように、張力検出手段からの検出信号と張力設定手段により設定された張力設定値とを比較して、両者に差(偏差)がある場合には、その偏差を減らす方向に比例・積分・微分した張力制御信号を生成し、ダンサロール駆動用のサーボモータドライバに速度指令を出力してセラミックグリーンシートの張力を一定に保つとともに、巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度差を演算し、回転速度差に応じた信号を、上記の速度指令に加える。そして、巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度差により張力が増加する場合には、ダンサロールに対して、張力が減少する方向への速度を加え、また、巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度差により張力が減少する場合は、ダンサロールに対して、張力が増加する方向への速度を加える。
【0024】
なお、図2では、制御信号が、比例・積分・微分の加算による制御信号である場合を例示したが、要求精度によっては、例えば、比例・積分動作のような、通常のフイードバック制御のための演算信号を用いることも可能である。
【0025】
上記のように、この実施形態のセラミックグリーンシートの搬送装置においては、張力検出手段からの検出信号と、目標張力(設定張力)とを比較して、両者に差(偏差)があるときには、ダンサロールが動作してセラミックグリーンシートの張力変動を吸収するとともに、セラミックグリーンシートを搬送する際の巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度に差にある場合には、張力検出手段からの信号に速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがってダンサロールを変位させるようにしているので、ダンサロールにより張力を制御する作用と、巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度差に起因する張力変動を事前に阻止する作用の両方の作用が奏されることになるため、搬送中のセラミックグリーンシートの張力を所定範囲内に精度よく保持することが可能になる。
したがって、例えば、セラミックグリーンシートの伸び量を検出し、一定量のセラミックグリーンシートを所定時間内で搬送するような場合、巻き取りロールの回転速度を巻き出しロールの回転速度よりも速くして、巻き出しロールから巻き出される量よりも多くの量のセラミックグリーンシートを巻き取ることが必要となるため、従来の搬送装置では、張力変動が発生することになるが、この実施形態の搬送装置においては、搬送中のセラミックグリーンシートの張力変動を大幅に低減することが可能になる。
【0026】
また、この実施形態の搬送装置の場合、セラミックグリーンシートを搬送する際に、巻き出しロールと巻き取りロールを完全に同期させて動作させる必要がなくなり、巻き出しロールと巻き取りロールの加速完了時や減速時などに発生する張力変動を効率よく防止することが可能になるとともに、停止時にセラミックグリーンシートが整定するまでに要する時間を短縮することが可能になる。
【0027】
[本願発明の実施形態]
この本願発明の実施形態のセラミックグリーンシートの搬送装置は、図3に示すように、上記関連発明の実施形態の搬送装置に、さらに、セラミックグリーンシート(長尺フィルム)3上に一定間隔に印刷された位置決めマーク(図示せず)を検出するためのセンサ20を設け、巻き出しロール1と巻き取りロール2を間欠的に回転させることにより、セラミックグリーンシート3の位置決めマークが所定の位置(例えば、導電性ペーストをスクリーン印刷機などの印刷手段21により印刷すべき所定位置P)にきたときにセラミックグリーンシート3をその位置で確実に停止させたり、搬送を再開したりすることができるように構成されている。
【0028】
また、この実施形態の搬送装置においては、巻き出しロール1と巻き取りロール2が、外周面に吸引孔(図示せず)を備えており、該吸引孔から吸引することにより、セラミックグリーンシート3を外周面に吸着した状態で搬送することができるように構成されている。
【0029】
また、この実施形態の搬送装置においては、巻き取りロール2が正・逆回転可能に構成されており、セラミックグリーンシート3を停止させて位置決めを行うに際して、巻き出しロール1を停止させた状態で、巻き取りロール2を正・逆回転させることにより、セラミックグリーンシートの位置決めを精度よく行うことができるように構成されている。
【0030】
この実施形態の搬送装置においては、セラミックグリーンシート3を搬送して、所定の位置でセラミックグリーンシート3を停止させる場合、巻き出しロール1と、巻き取りロール2を回転させてセラミックグリーンシートを一定量搬送した後、巻き出しロール1を停止させ、巻き取りロール2だけを低速で回転させてセンサ20が、セラミックグリーンシート3に印刷された位置決めマークを検出したところで巻き取りロール2の回転を停止させることにより、セラミックグリーンシート3が所定の位置で停止する(すなわち、位置決めが行われる)。
【0031】
図4(a)は、位置決めマークの位置に従ってセラミックグリーンシートの位置決めを行う際において、巻き取りロールが正方向にのみ回転する場合の、巻き出しロールと巻き取りロールのタイムチャートを示す図である。
図3及び図4(a)に示すように、巻き出しロール1を回転させてセラミックグリーンシート3を一定量搬送した後、巻き出しロール1を停止させ、巻き取りロール2だけを低速で回転させてセンサ20が位置決めマークを検出したところで巻き取りロール2の回転を停止させることにより、セラミックグリーンシートが所定の位置で停止する。
【0032】
図4(b)は位置決めマークの位置に従ってセラミックグリーンシートの位置決めを行う際において、巻き取りロールが正方向のみではなく、逆方向にも回転するように構成されている場合の、巻き出しロールと巻き取りロールのタイムチャートを示す図である。
【0033】
この場合、図3及び図4(b)に示すように、巻き出しロール1を回転させることにより、センサ20が位置決めマークを検出するまでセラミックグリーンシート3を一定量搬送した後、巻き出しロール1を停止させ、巻き取りロール2だけを低速で逆方向に回転させてセンサ20が位置決めマークを検出しなくなるまでセラミックグリーンシート3を逆方向に搬送し、その後、巻き取りロール2を再び正方向に回転させ、センサ20が位置決めマークを検出したところで、巻き取りロール2を停止させることにより、セラミックグリーンシート3が精度よく所定の位置で停止する。
【0034】
このように、巻き取りロール2のみが動作する場合であっても、巻き出しロール1が停止していることから、巻き出しロール1と巻き取りロール2の間には回転速度差が発生することになるが、この回転速度差に応じた信号が、張力検出手段からの信号に加えられるため、例えば、長尺のセラミックグリーンシートが搬送中に伸び縮みし、一定量の巻き出し、巻き取りの搬送による方法では、正確にセラミックグリーンシートの位置決めを行うことが困難であるような場合にも、高精度な位置決めを行うことができる。
【0035】
なお、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、ダンサロール(ダンサロール機構)の具体的な構成、張力検出手段や速度差検出手段の種類などに関し、発明の要旨の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0036】
【発明の効果】
上述のように、本願発明(請求項1)の樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置は、張力検出手段からの検出信号と、目標張力(設定張力)とを比較して、両者に差があるときには、ダンサロールが動作して、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシート(長尺フィルム)の張力変動を吸収するとともに、長尺フィルムを搬送する際の巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度に差が生じた場合には、張力検出手段からの信号に、速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがってダンサロールを変位させるフィードフォワード制御を行うようにしているので、長尺フィルムの緩みや張りを事前に防止して、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御しつつ、安定した搬送を行うことができる。
【0037】
また、巻き出しロールと巻き取りロールを間欠的に回転させるようにした場合、長尺フィルムの張力に大きな変動が生じやすいが、本願発明によれば、フィードフォワード制御を行って、長尺フィルムの緩みや張りを事前に防止することが可能になり、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御することが可能になるため、スクリーン印刷に供される、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置として特に有意義である。
【0038】
また、請求項2の樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置のように、外周面に吸引孔を備えた巻き出しロールと巻き取りロールを用い、該吸引孔から吸引して、長尺フィルムを外周面に吸着した状態で搬送するようにした場合、各ロール表面での長尺フィルムの滑りが抑制、防止され、各ロールの回転速度と長尺フィルムの搬送量や張力の関係がより正確に対応することになるため、さらに確実に張力を目標張力範囲に制御しつつ、長尺フィルムを所定量だけ確実に搬送することが可能になる。
【0039】
また、巻き取りロールが正・逆回転可能であって、巻き取りロールを正・逆回転させて、長尺フィルムの位置決めをする場合、長尺フィルムの張力に大きな変動が生じやすくなるが、請求項3のように、かかる場合に本願発明を適用することにより、フィードフォワード制御を行って、長尺フィルムの緩みや張りを事前に防止し、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御しつつ、安定した搬送を行うことができる。
【0040】
また、本願発明(請求項4)の樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送方法は、長尺フィルムを供給する巻き出しロールと、巻き出しロールから供給された長尺フィルムを巻き取る巻き取りロールとを間欠的に回転させることにより、長尺フィルムを間欠的に搬送する搬送方法において、張力検出手段からの検出信号と、目標張力(設定張力)とを比較して、両者に差(偏差)があるときには、ダンサロールが動作して樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシート(長尺フィルム)の張力変動を吸収するとともに、長尺フィルムを搬送する際の巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度に差が生じた場合には、張力検出手段からの信号に速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがってダンサロールを変位させるフィードフォワード制御を行うようにしているので、長尺フィルムの緩みや張りを事前に防止して、スクリーン印刷に供されるセラミックグリーンシートの張力を目標張力範囲に制御しつつ、安定した搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願が関連する発明の一実施形態にかかる、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図2】 本願が関連する発明の一実施形態にかかる、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置において用いられている搬送・張力制御手段の構成の一例を示す図である。
【図3】 本願発明の実施形態にかかる、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図4】 (a)は位置決めマークの位置に従ってセラミックグリーンシートの位置決めを行う際において、巻き取りロールが正方向にのみ回転する場合の、巻き出しロールと巻き取りロールのタイムチャートを示す図であり、(b)は位置決めマークの位置に従ってセラミックグリーンシートの位置決めを行う際において、巻き取りロールが正方向のみではなく、逆方向にも回転するように構成されている場合の、巻き出しロールと巻き取りロールのタイムチャートを示す図である。
【図5】 従来のセラミックグリーンシートの搬送装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図6】 従来のセラミックグリーンシートの搬送装置の搬送制御方法を示す図である。
【符号の説明】
1 巻き出しロール
2 巻き取りロール
3 セラミックグリーンシート
4 ダンサロール
5 張力検出手段
6 駆動モータ(サーボモータ)
7 サーボモータドライバ
8 搬送・張力制御手段
9,11 駆動モータ(サーボモータ)
10,12 サーボモータドライバ
14,15 ガイドロール
20 センサ
21 印刷手段
P 所定位置
Claims (4)
- 樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートである長尺フィルムを供給する巻き出しロールと、
巻き出しロールから供給された長尺フィルムを巻き取る巻き取りロールと、
巻き出しロールと巻き取りロールの間に配設され、変位して、長尺フィルムの張力を制御することができるように構成されたダンサロールと、
搬送途中の長尺フィルムの張力を検出するとともに、張力に応じた信号を発信する張力検出手段と、
巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度差を検出するとともに、回転速度差に応じた信号を発信する速度差検出手段と、
張力検出手段からの信号と速度差検出手段からの信号とを加算した制御信号にしたがってダンサロールを変位させることにより、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御する張力制御手段と
を具備し、
前記長尺フィルムを構成する樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートに導電性ペーストをスクリーン印刷する際に、前記長尺フィルムを間欠搬送するために用いられる搬送装置であって、
前記巻き出しロールと前記巻き取りロールを間欠的に回転させることにより、長尺フィルムを間欠的に搬送するように構成されており、かつ、
前記張力検出手段からの検出信号と、目標張力に差があるときには、前記ダンサロールが動作して長尺フィルムの張力変動を吸収するとともに、
長尺フィルムを搬送する際の前記巻き出しロールと、前記巻き取りロールの回転速度に差が生じた場合には、前記張力検出手段からの信号に、前記速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがって前記ダンサロールを変位させるフィードフォワード制御を行うことにより、長尺フィルムの緩みおよび張りを防止して、スクリーン印刷に供される長尺フィルムの張力を目標張力範囲に制御するように構成されていること
を特徴とする、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置。 - 前記巻き出しロールと前記巻き取りロールのそれぞれが、外周面に吸引孔を備えており、該吸引孔から吸引することにより、長尺フィルムを外周面に吸着した状態で搬送するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置。
- 前記巻き取りロールが正・逆回転可能に構成されており、長尺フィルムを所定の位置に停止させるに際して、前記巻き出しロールを所定のタイミングで停止させるとともに、前記巻き出しロールを停止させた状態で、前記巻き取りロールを正・逆回転させることにより、長尺フィルムの位置決めを行うように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送装置。
- 樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートである長尺フィルムを供給する巻き出しロールと、巻き出しロールから供給された長尺フィルムを巻き取る巻き取りロールとを間欠的に回転させることにより、長尺フィルムを間欠的に搬送する搬送方法であって、前記長尺フィルムを構成する樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートに導電性ペーストをスクリーン印刷する際に、前記長尺フィルムを搬送するために用いられる搬送方法であり、
巻き出しロールと巻き取りロールの間に、自在に変位して、長尺フィルムの張力を目標張力範囲に保つダンサロールを配設し、
搬送途中の長尺フィルムの張力を張力検出手段により検出して張力に応じた信号を発信するとともに、巻き出しロールと巻き取りロールの回転速度差を速度差検出手段により検出して回転速度差に応じた信号を発信し、
張力検出手段からの検出信号と、目標張力に差があるときには、ダンサロールを動作させて長尺フィルムの張力変動を吸収するとともに、
長尺フィルムを搬送する際の巻き出しロールと、巻き取りロールの回転速度に差が生じた場合には、張力検出手段からの信号に、速度差検出手段からの信号を加算した制御信号にしたがってダンサロールを変位させるフィードフォワード制御を行うことにより、長尺フィルムの緩みおよび張りを防止し、スクリーン印刷に供される長尺フィルムの張力を目標張力範囲に保ちながら長尺フィルムを間欠的に搬送すること
を特徴とする、樹脂フィルム上に保持されたセラミックグリーンシートの搬送方法。
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