JP2018079590A - ロールツーロール印刷装置 - Google Patents

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JP2018079590A JP2016221970A JP2016221970A JP2018079590A JP 2018079590 A JP2018079590 A JP 2018079590A JP 2016221970 A JP2016221970 A JP 2016221970A JP 2016221970 A JP2016221970 A JP 2016221970A JP 2018079590 A JP2018079590 A JP 2018079590A
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Keita Suzuki
啓太 鈴木
誠人 池田
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【課題】基材の張力を微細に制御することによって重ね合わせ印刷のアライメント精度を向上させる。【解決手段】ロールツーロール方式にて基材にシームレスで印刷を行うロールツーロール印刷装置であって、基材Bを搬送する駆動ロールと、駆動ロールアクチュエータ76と、基材Bのパスライン長を変化させて基材Bの張力を変化させるダンサアクチュエータ84と、基材Bの張力を検出する張力検出装置78と、2段目以降の印刷ユニット3によって基材Bに重ね合わせ印刷された部分の画像を検出する画像検出装置と、基材Bの張力変動を補償する張力制御装置80と、を備える。張力制御装置80により基材Bの張力変動を補償して張力変動が抑制された定常状態をつくり出し、複数の印刷ユニット3における印刷位置の差であるアライメント誤差をダンサアクチュエータ84によって低減させてアライメント精度を向上させる。【選択図】図5

Description

本発明は、ロールツーロール印刷装置に関する。
近年、電子デバイスを印刷方式にて製造する技術が開発されている。なかでも、電子デバイスを10ミクロン以下といった高解像度で印刷する手法として、反転印刷法(リバースオフセット)が検討され、印刷機の開発が進められているこのような反転印刷システムのひとつとして、ロールツーロール方式にて基材にシームレスで反転印刷を行うロールツーロール印刷装置が提案されている。また、このようなロールツーロール印刷装置として、複数の反転印刷ユニットを備え、重ね合わせ印刷(多層印刷)を行うものも提案されている。
アライメントモデル(複数の印刷ユニット備え、重ね合わせ印刷の際の誤差を考慮するモデル)は、1つ前の印刷ユニットにおける張力変動が、次の印刷ユニットに到達する時間分遅れて影響する成分と次の印刷ユニットでの張力変動が影響する成分との双方の影響の差に依存した動きをする。そこで、複数の印刷ユニットで重ね合わせ印刷を行うロールツーロール印刷装置においては、1つ前の印刷ユニットにおける印刷位置と注目している印刷ユニットでの印刷位置の差(アライメント誤差)を抑制するための制御技術が必要となる。
さて、ロールツーロール印刷装置における実際のアライメント制御方式には、2つの駆動ロールの回転速度差をもって該当ロール間張力を制御することでアライメント制御を行うコンペンレス制御方式と、同速回転する駆動ロール間にダンサアクチュエータを入れパスライン長を操作し、該当ロール間張力を制御することでアライメント制御するコンペンセータロール方式がある。どちらの方式でも、張力変動とアライメント精度との関係をモデル化し、フィードバック制御によりアライメント制御を行うが、前段の操作の影響を打ち消すために、フィードフォワード制御により、後段ユニット操作量で相殺し、後段でのアライメント精度を維持している(例えば特許文献1〜3参照)。
特開2008−055707号公報 特開2010−094947号公報 特開2002−248743号公報
しかし、コンペンレス制御方式では、操作可能なアクチュエータが慣性の大きい駆動ロールであるため、微細な制御を実施するにも限界がある。一方、コンペンセートロール方式では、操作範囲に限界があるため、対応できる張力変動にも限りがあることから、実際に起り得る張力変動を抑制可能な装置設計となり、その結果、慣性が大きくなりアクチュエータ精度が劣ることになり、結果として、所望の印刷環境が整わず、アライメント精度が出ないという課題があった。
本発明は、基材の張力を微細に制御することによって重ね合わせ印刷のアライメント精度を向上させる性能を備えたロールツーロール印刷装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る印刷装置は、基材を繰り出す繰出ユニットと、該繰出ユニットから繰り出された基材に重ね合わせ印刷を行う複数の印刷ユニットと、該印刷ユニットで印刷された基材を巻き取る巻取ユニットと、を備え、ロールツーロール方式にて基材にシームレスで印刷を行うロールツーロール印刷装置であって、
基材を搬送する駆動ロールと、
該駆動ロールを駆動する駆動ロールアクチュエータと、
駆動ロールと駆動ロールとの間に配置され、基材のパスライン長を変化させて基材の張力を変化させるダンサアクチュエータと、
基材の張力を検出する張力検出装置と、
2段目以降の印刷ユニットによって基材に重ね合わせ印刷された部分の画像を検出する画像検出装置と、
該張力検出装置の検出結果および画像検出装置の検出結果に応じて駆動ロールアクチュエータとダンサアクチュエータとを制御し、基材の張力変動を補償する張力制御装置と、
を備え、
張力制御装置により基材の張力変動を補償して張力変動が抑制された定常状態をつくり出し、
複数の印刷ユニットにおける印刷位置の差であるアライメント誤差をダンサアクチュエータによって低減させてアライメント精度を向上させるというものである。
ダンサアクチュエータは物理的な摩擦抵抗を軽減するなど通が応答性に優れた構成であるから、通常のダンサよりも即応性の高い高精度な(感度の高い)アクチュエータ性能を有するものを採用することで、感度特性の差ができ、ダンサおよび該ダンサを駆動するアクチュエータといった従前の組み合わせよりも高い精度で基材の張力を制御して張力変動を抑制することが可能である。したがって、従来、一般にはアクチュエータによって駆動ロールを変位させて張力制御し、張力変動を補填するということが行われているのに対し、本態様のロールツーロール印刷装置によれば、ダンサアクチュエータを使ってさらに細かに張力制御することにより、張力変動を高精度に行うことができる。
加えて、複数ある印刷ユニットの2段目以降を用いて重ね合わせ印刷をする本態様のロールツーロール印刷装置においては、重ね合わせ印刷のズレを検出したうえで、張力変動を補償する役割を可動範囲制約のない駆動ロールに担わせ、張力変動を抑制した定常状態を作り出したうえで、ダンサアクチュエータによってアライメント精度を高める制御機構を構成していることから、基材の張力を微細に制御することによって重ね合わせ印刷のアライメント精度を向上させることが可能である。
ダンサアクチュエータは連続する2つの駆動ロールの間に配置されていてもよい。
張力制御装置は、ダンサアクチュエータにより、当該ダンサアクチュエータの後段に配置された駆動ロールの駆動ロールアクチュエータに対してフィードフォワード制御してもよい。
本発明によれば、基材の張力を微細に制御することによって重ね合わせ印刷のアライメント精度を向上させる性能を備えたロールツーロール印刷装置を提供することができる。
ロールツーロール印刷装置を構成する各装置と、基材(フィルム)の搬送経路の概要を示す図である。 ロールツーロール印刷装置における張力制御の第1の高度化手法における制御モデルを表す図である。 ロールツーロール印刷装置における張力制御の第2の高度化手法における制御モデルを表す図である。 ロールツーロール印刷装置における張力制御の第3の高度化手法における制御モデルを表す図である。 複数の印刷ユニットで重ね合わせ印刷するロールツーロール印刷装置における張力制御とアライメント制御との協調制御について説明する図である。 ロールツーロール印刷装置における張力制御の第4の高度化手法における制御モデルを表す図である。 全体最適化(ユニット間での干渉を考慮した協調制御)についての概要を示す図である。
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
以下の形態では、まず、[A.単層印刷用のロールツーロール印刷装置]について説明し(図1等参照)、その後に、[B.多層印刷(重ね合わせ印刷)可能なロールツーロール印刷装置]について説明する(図5等参照)。
[A.単層印刷用のロールツーロール印刷装置]
ロールツーロール印刷装置1は、繰出ユニット2、印刷ユニット3、巻取ユニット4などで構成される装置であり、ロールツーロール方式にて基材Bにシームレスで印刷を行う印刷装置である(図1参照)。ロールツーロール印刷装置1においては、まず、ロール状となっている基材Bを繰出ユニット2によって繰出し、フリーロール72、駆動ロールであるインフィードロール(以下、単に駆動ロールとも呼ぶ)85等からなる搬送装置で印刷ユニット3に搬送し、印刷を行い、その後、基材Bを巻取ユニット4まで搬送して巻き取る。
基材Bは、例えば可撓性フィルムで構成されており、印刷ユニット3においてその表面に印刷される。当初、基材Bは巻かれてロール状になっており、繰出ユニット2によって該ロールから繰り出され、所定の経路に沿って印刷工程へと送り込まれ(図1中の矢印参照)、印刷ユニット3によってインクパターンが転写されて印刷される。印刷工程を経た後は、特に図示はしていないが、乾燥工程などを経て、巻取ユニット4でロール状に巻き取られる。
印刷ユニット3における印刷は、印刷部32において、版胴ロール40、圧胴ロール60などを利用して行われる。圧胴ロール60は、圧胴アクチュエータ76によって駆動される(図1参照)。
繰出ユニット2は、あらかじめロール状に巻かれている基材Bを繰り出す装置である(図1参照)。巻取ユニット4は、印刷ユニット3により印刷された基材Bを巻き取る装置である(図1参照)。
印刷ユニット3は、ロールツーロール印刷装置1を構成する装置の一つで、基材Bにシームレスで印刷を行う装置である。
また、本実施形態のロールツーロール印刷装置1は、上述した構成に加え、フリーロール72、インフィードロール85、圧胴ロール60、版胴ロール40、張力センサ78、張力制御装置80、ダンサ82、ダンサアクチュエータ84などをさらに備えており、基材Bの繰り出しや巻き取りを行い、かつ、基材Bの張力を制御して張力変動を抑制する。
フリーロール72は、繰出ユニット2から印刷ユニット3を経て巻取ユニット4に至るまでの基材Bの経路に配置されていて、基材Bが搬送されるに伴い回転する。
インフィードロール85は基材Bに搬送力を作用させるローラー(駆動ロール)であり、モータ等で構成される駆動ロールアクチュエータによって駆動されて回転する。
張力センサ78は、所定の箇所における基材Bの張力を検出する(図1参照)。一例として、本実施形態のロールツーロール印刷装置1における張力センサ78は、繰出ユニット2中の最後段と、印刷ユニット3の印刷部32の前段にそれぞれ配置されており、当該位置における基材Bの張力を検出し、検出データを張力制御装置80へ送信する。
張力制御装置80は、例えばプログラマブルなドライブシステムによって構成される装置で、張力センサ78の検出信号を受信し、検出結果に応じてインフィードロール85とダンサアクチュエータ84を制御する(図1参照)。
ダンサ82は、基材Bに一定の荷重を作用させる装置(ダンサロール)である。本実施形態のダンサ82は、吊り下げられたウェイトに応じた所定の荷重を、ローラーを介して基材Bに作用させる(図1参照)。なお、本実施形態のロールツーロール印刷装置1で用いられているダンサ82は、可動範囲中におけるダンサ自身の位置を把握するための検出器や、ダンサ自体を駆動するためのアクチュエータ等を有していない公知の装置である。
ダンサアクチュエータ84は、ダンサ82と比較して質量および慣性が非常に小さいため感度と追従性に優れており、機敏に動作して基材Bの張力を超高精度に制御することを可能とする。本実施形態では、このダンサアクチュエータ84を単なるダンサとしてではなく張力制御用のアクチュエータとして機能させる。具体的には、所定の低周波数帯域の張力変動については該変動を打ち消すように駆動ロール85を制御し、所定の高周波数帯域の張力変動については該変動を打ち消すようにダンサアクチュエータ84を制御する。
<印刷装置におけるコンペンレス方式、コンペンセータロール方式の制御について>
グラビア印刷装置などにおける一般的な印刷の制御方式は、アクチュエータを適切に調節することで調節量を変化させ、制御したい量を制御したいように動かすことを目的としている。制御対象には、非線形性が存在している。しかし、実際に制御系を構成するには、計算負荷や対象を動かす領域を考慮し、ある定常状態近傍での線形近似を行った上で、制御系の設計を行う。定常状態とは、一定操作量を各アクチュエータに与えた状態でバランスする状態を意味する。コンペンレス方式もコンペンセータロール方式も、その定常状態をベースにして、アライメント誤差を如何にして抑制するかという問題に対して、機構、発生現象を基にモデル化し、目的を果たす制御入力(アクチュエータの動かし方)を決定している。
アクチュエータを動かすことで,必然的に動く量が「変数」としている箇所である。アクチュエータを動かすことで、「変数」を動かして、結果として「制御したい量」を動かすことになる。
<ダンサアクチュエータを用いた張力制御モデル>
ダンサアクチュエータ84を用いた張力制御モデルについて説明する。
(1) 各ユニット2〜4の張力変動は、そのユニット前後の駆動ロール(圧胴ロール60、版胴ロール40)、フリーロール72の速度変化と、その前段の張力変動の影響、およびそのユニットにあるダンサの位置変化の仕方により決定される。
(1)-2 各ユニット2〜4の張力変動が、その前後の駆動ロールの速度変化に依存するため、前段の張力制御を行う目的で行う操作は、必ず後段に影響を与える。よって、その影響を後段で相殺するためにユニット間でのフィードフォワード制御が必要になる。
(2) 印刷ユニット3では、操作量が駆動ロールの速度変化とダンサアクチュエータ84への荷重指令となる。ダンサアクチュエータ84にとっては、荷重を一定にするか、位置を保持するために荷重を変化させるかは表裏一体(荷重一定にするためには位置を変えて調整しなければならなく、位置を一定にするためには、荷重を変えて調整しなければならないため、双方を同時に実現することは物理的に無理ということであり、言い換えれば、どちらか一方を選んで制御系を構成する必要があるという意味)なので、ここを位置指令とする(ダンサ位置を指令どおりに制御する)ことも可能である。
(3) 各ユニットの張力変動モデルは、ライン速度(以下に示すユニットモデル中の「r*ω*」(半径r*と角速度ω*との積)で表される)に依存して、駆動ロール(繰出ロール2R、駆動ロール85、版胴ロール40、圧胴ロール60、巻取ロール4R)やダンサアクチュエータ84を操作した影響の速さ(時定数)が変わる。また,基材Bのヤング率や設定張力によって、操作した影響の大きさ(ゲイン)が変わる。
<張力制御モデル>
ロールツーロール印刷装置1において基材Bの張力を制御する際のモデルを表す数式(数式1〜11)を示す。数式1〜4は汎用形式モデル、数式5〜6は繰出ユニット2のモデル、数式7〜8は印刷ユニット3のモデル、そして数式9〜11は巻取ユニット4のモデルをそれぞれ表す。これらは、物理式をベースに入出力関係をモデル化したものである。
なお、数式1〜11中の文字が表す内容は以下に表2として示すとおりである。
続いて、ダンサアクチュエータ84を備えた本実施形態のロールツーロール印刷装置1における張力制御の高精度化手法の内容について、具体例を3つ挙げて説明する。
<第1の高精度化手法>
図2に示す制御モデルの基本ストラテジは、駆動ロール85用の制御仕様とダンサアクチュエータ84用の制御仕様を切り分けることである。
なお、図2中の各表記の内容は以下のとおりである。
P1(s)……駆動ロールから張力への振る舞いを表す伝達関数(実制御対象)
P2(s)……ダンサアクチュエータから張力への振る舞いを表す伝達関数(実制御対象)
C1(s)……駆動ロールへの操作量を計算する制御器
C2(s)……ダンサアクチュエータへの操作量を計算する制御器
M1(s)……P1(s)部分のモデル
この制御モデルは、C2(s)の動きをC1(s)による制御の結果付近の微調整にするための構成を検討するに適する。また、この制御モデルによれば、モデル化誤差の影響を含めて、張力変動をC2(s)系で補正することができる。
なお、この制御モデルにおける閉ループ伝達関数を数式12,13に示す。
線形近似モデルで先に説明したとおり、各ユニットの張力変動は、当該ユニットを挟む前後の駆動ロール74の影響をうける。第1の高精度化手法では、基本的に印刷ユニット3は前段側の駆動ロール85を、繰出ユニット2、巻取ユニット4では繰出ロール2R、巻取ロール4Rを操作することで張力制御を行う。つまり、1ユニット内で制御に用いる駆動ロール85は1つとして、制御自体の干渉を抑制する。なお、印刷ユニット3では、張力制御を行うために、駆動ロール85の回転速度を、ダンサアクチュエータ84では荷重(または位置)を制御する。繰出ユニット2、巻取ユニット4では、ダンサ位置制御をすることで(ダンサ位置は張力の偏りがあると変わり、それがなくなれば止まるので)間接的に張力制御を行うことになる。
印刷ユニット3においては、駆動ロール85とダンサアクチュエータ84の2つが操作量として存在する。慣性の大きい駆動ロール85で大まかな印刷ユニット3の張力フィードバック制御系を構成し、ベース(本明細書では、駆動ロール85による張力制御系(C1系)で基本的な張力制御系を構成し、ある程度の性能を出すという意味で持用いている)の安定性を補償する。この張力フィードバック制御系は,P1のモデルであるM1に基づいて設計される。P1とM1は一致していることが理想だが、現実にはズレ(「モデル化誤差」という)がある。このモデル化誤差を補償するために、ダンサアクチュエータ(図2中の記号u2を参照)を用いて、モデル化誤差に起因する制御性能のズレを補償するとともに、外乱による張力変動への影響も軽減する。
<第2の高精度化手法>
図3に示す制御モデルの基本ストラテジは、駆動ロール85用の制御仕様とダンサアクチュエータ84用の制御仕様を切り分けることである。
なお、図3中の各表記の内容は以下のとおりである。
P1(s)……駆動ロールから張力への振る舞いを表す伝達関数(実制御対象)
P2(s)……ダンサアクチュエータから張力への振る舞いを表す伝達関数(実制御対象)
C1(s)……駆動ロールへの操作量を計算する制御器
C2(s)……ダンサアクチュエータへの操作量を計算する制御器
GTr*(s) ……C1(s)で構成される閉ループ系の理想応答
この制御モデルは、C2(s)の動きをC1(s)による制御の結果付近の微調整にするための構成を検討するに適する。また、この制御モデルによれば、C1(s)系の所望の動き方からの逸脱部分を,C2(s)が補正することができる。
なお、この制御モデルにおける閉ループ伝達関数を数式14〜16に示す。
線形近似モデルで先に説明したとおり、各ユニットの張力変動は、当該ユニットを挟む前後の駆動ロール(インフィードロール85、圧胴ロール60、版胴ロール40)の影響をうける。第2の高精度化手法では、基本的に印刷ユニット3は前段側の駆動ロール85を、操作し、繰出ユニット2、巻取ユニット4では、繰出ロール2R、巻取ロール4Rを操作することで張力制御を行う。つまり、1ユニット内で制御に用いる駆動ロール74は1つとして、制御自体の干渉を抑制する。
印刷ユニット3においては、駆動ロール74とダンサアクチュエータ84の2つが操作量として存在する。慣性の大きい駆動ロール74で大まかな印刷ユニット3の張力フィードバック制御系を構成し、ベースの安定性を補償する。この張力フィードバック制御系は、P1のモデルであるM1に基づいて設計される。P1とM1は一致していることが理想だが、現実にはズレ(「モデル化誤差」という)がある。このモデル化誤差により、本来このように動いてほしいという動き方を既定した理想応答GTrと実際の動きとの間に乖離が発生する。その乖離を埋めるために、ダンサアクチュエータ(図3中の記号u2を参照)を用いて、モデル化誤差に起因する理想応答とのズレを補償するとともに、外乱による影響も緩和する。
<第3の高精度化手法>
図4に示す制御モデルの基本ストラテジは、駆動ロール74用の制御仕様とダンサアクチュエータ84用の制御仕様を切り分けることである。
なお、図4中の各表記の内容は以下のとおりである。
P1(s)……駆動ロールから張力への振る舞いを表す伝達関数(実制御対象)
P2(s)……ダンサアクチュエータから張力への振る舞いを表す伝達関数(実制御対象)
C1(s)……駆動ロールへの操作量を計算する制御器
C2(s)……ダンサアクチュエータへの操作量を計算する制御器
GTr*(s) ……C1(s)で構成される閉ループ系の理想応答
この制御モデルは、C1(s)による制御の結果とC2(s)による制御の結果を双方のアクチュエータの性能違いを考慮して制御系設計に組み込む(具体的には、2入力、1出力系の多変数制御系を設計する)。C1(s)系は緩やかな制御を、C2(s)系は素早い制御が可能なように制御系設計されている(具体的には、制御系の設計指針として用いられる「評価関数」の指標を周波数空間で重みづけを行うことで、ある帯域ではC1系の効果を、ある帯域ではC2系の効果を強めるような設計をする)。この制御モデルによれば、C1(s)とC2(s)のバランスにより所望の動き方を実現することが可能である(つまり、C1で構成されるC1系とC2で構成されるC2系の周波数空間における役割分担を与えることになる)。
なお、この制御モデルにおける閉ループ伝達関数を数式17に示す。
線形近似モデルで先に説明したとおり、各ユニットの張力変動は、当該ユニットを挟む前後の駆動ロール74の影響をうける。第1の高精度化手法では、基本的に印刷ユニット3は前段側の駆動ロール85を操作し、繰出ユニット2、巻取ユニット4では、繰出ロール2R、巻取ロール4Rを操作することで張力制御を行う。つまり、1ユニット内で制御に用いる駆動ロール74は1つとして、制御自体の干渉を抑制する。
印刷ユニット3においては、駆動ロール74とダンサアクチュエータ84の2つが操作量として存在する。慣性の大きい駆動ロール74で大まかな印刷ユニット3の張力フィードバック制御系を構成し、ベースの安定性を補償する。この制御では、P1とP2の特性の違いを考慮して、系全体としてC1系で基本的な安定性を補償し、C2系では外乱抑制を行うような応答特性を持つ制御系に設計する。
また、本実施形態のロールツーロール印刷装置1は、駆動ロール74間に超高精度な張力制御が可能なダンサアクチュエータ84を配し、該ダンサアクチュエータ84自体を張力制御のアクチュエータとして(いわば、新しいダンサユニットとして)機能させる構成とすることで、張力変動を補償する役割を、その操作性能の違いに基づき駆動ロール74とダンサアクチュエータ84とに分けることを可能としている。こうした場合には、大まかな比較的粗い制御を駆動ロール74および駆動ロールアクチュエータ76にて担い、微細な比較的細かい制御を超高精度であるダンサアクチュエータ84で担うというように分担することで、それぞれの方式のみでは実現が難しい広い操作可能範囲と微細な張力制御性能を実現している。
[B.多層印刷(重ね合わせ印刷)可能なロールツーロール印刷装置]
続いて、多層印刷(重ね合わせ印刷)可能なロールツーロール印刷装置1について説明する(図5等参照)。
ロールツーロール印刷装置1は、複数(例えば1〜3段目からなる3体)の印刷ユニット3を搭載した重ね合わせ印刷が可能なシステムとして構成されている。ただし、張力制御およびアライメント制御について説明する図5においては、駆動ロール、該駆動ロールとともに配置される従動ロール、フリーロール72、ダンサアクチュエータ84などのみを示し、繰出ロール,巻取ロールなどの装置については図示を省略している。
このロールツーロール印刷装置1の2段目および3段目の印刷ユニット3には、張力センサ78とカメラ86がそれぞれ設けられている(図5参照)。張力センサ78は例えば印刷部32の前段に配置され、当該位置における基材Bの張力を検出し、検出信号を張力制御系の張力制御装置80へ送信する。カメラ86は例えば印刷部32の後に配置され、重ね合わせ印刷された部分の画像信号をアライメント制御系の張力制御装置90へ送信し、アライメント制御の基準となるアライメントマークの検出に供する。
張力制御系の張力制御装置は、張力センサ78が検出した張力信号に基づいて1段目〜3段目の印刷ユニット3におけるそれぞれの駆動ロールアクチュエータ76を制御し、基材Bの張力変動を補償する。アライメント制御系の張力制御装置は、カメラ86が撮像した画像を解析して重ね合わせ部分のズレを検出し、ダンサアクチュエータ84を制御して、基材Bの張力変動を補償するとともにアライメント誤差を低減させる(なお、図5においてはこれらを単に「張力制御装置80」として示している)。これら張力制御系の張力制御装置とアライメント制御系の張力制御装置は、協調制御系を構成する制御装置によって協調制御され、張力変動を補償して張力変動が抑制された定常状態をつくり出すとともに、アライメント誤差を低減させてアライメント精度を向上させるように制御を行う。
<制御モデル>
多層印刷(重ね合わせ印刷)可能なロールツーロール印刷装置1における張力制御モデルは、上述した(1)〜(3)に加えて以下の(4), (5)の特徴を有する。
(4) アライメントモデルは、1つ前(前段)の印刷ユニット3における張力変動が、各印刷ユニット3に到達する時間分遅れて影響する成分と各印刷ユニット3の張力変動が影響する成分との双方の影響の差に依存した動きをする。1つ前の印刷ユニット3における印刷位置と注目している印刷ユニット3での印刷位置の差がアライメント誤差であるため、その差を抑制するような制御を行う。
続いて、多層印刷(重ね合わせ印刷)可能なロールツーロール印刷装置1における張力制御の高精度化手法の一例を「第4の高度化手法」として説明する。
<第4の高精度化手法>
図6に示す制御モデルの基本ストラテジは、駆動ロール85用の制御仕様とダンサアクチュエータ84用の制御仕様を切り分けることである。
なお、図6中の各表記の内容は以下のとおりである。
P11(s) ……駆動ロールへの速度指令を入力とし張力変動を出力とする制御対象の実伝達関数
P12(s) ……高精度ダンサアクチュエータの荷重指令(または位置指令)を入力とし張力変動を出力とする制御対象の実伝達関数
P21(s) ……駆動ロールへの速度指令を入力としアライメント誤差を出力とする制御対象の実伝達関数
P22(s) ……高精度ダンサアクチュエータの荷重指令(または位置指令)を入力としアライメント誤差を出力とする制御対象の実伝達関数
C1(s) ……駆動ロールへの操作量を計算する制御器
C2(s) ……高精度ダンサアクチュエータへの操作量を計算する制御器
この制御モデルは、駆動ロール85用の制御仕様とダンサアクチュエータ84用の制御仕様の切り分けに適用可能である(基本ストラテジ)。この制御モデルによれば、張力制御系の張力制御装置80とアライメント制御系の張力制御装置90の干渉を考慮して、アライメント制御の安定性・目標値追従性を向上させることができる。
<制御方式の構成>
ここで、A.単層印刷用のロールツーロール印刷装置1における制御方式(個別ユニット内最適制御)と、B.多層印刷可能なロールツーロール印刷装置1における制御方式(全体最適化)について説明しておく。
(個別ユニット内最適制御)
アライメント誤差が大きいということは、大きな張力変動が前セクション(本明細書でいうセクションとは、基材Bに重ね合わせ印刷された複数層の各層をいう)か当セクションで発生していることを意味するが、大きな張力変動があったからと言って、アライメント誤差が大きくなるとは限らない。なぜならば、前セクションで発生した張力変動と同じ大きさの張力変動を伝達時間を考慮した上で敢えて作れば、アライメント誤差は発生しないことになる。その意味で,アライメント誤差の抑制には、張力制御性能の向上が不可欠である。また、上記の意味で、張力変動を犠牲にしてでもアライメント制御性能を向上させることができる。
基本的にC1系で張力制御の安定化を図るが、上記理由でアライメントを抑制することを目的としたC2系も構築することができる。アライメント誤差抑制を目的とする制御を行うと張力変動は発生するかもしれないが、高精度アライメント制御の微細調整用として操作する高精度のダンサアクチュエータ84の微動による張力変動への影響は小さいと考えられるため、高精度アライメント制御を実現することができる。
(全体最適化)
前段ユニットの操作の影響が後段ユニットに影響すること、またアライメント誤差は前セクションの印刷位置と当セクションの印刷位置の差であることから、ユニット間、セクション間で前から後ろへ影響をうける。その影響量をモデルを用いて想定し、その影響をあらかじめ相殺するよう、フィードフォワード制御系を組む。具体的には、ユニット間の張力フィードフォワード制御系と、セクション間のアライメントフィードフォワード制御系の2種である。
図7に、全体最適化(ユニット間での干渉を考慮した協調制御)についての概要を示す。前述した個別ユニット内の最適制御では、外乱抑制、安定性・追従性の定量評価を行うのに対し、ユニット間での干渉を考慮した協調制御では、物理的干渉がある系をいかにして最適化するかを念頭に、前段操作量やそれによる重ね合わせ誤差伝搬を考慮したフィードフォワード制御を行う。これらを鑑み、本実施形態のロールツーロール印刷装置1においては、個別ユニットの最適化を実施するとともに、前段操作・現象が後段に伝わるのであるからそれに合わせて制御系を構成している。これを実現するには、各ユニットで発生している影響を与えうる現象を定量的に把握することが必要である。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、モデルを用いて、オンラインで予測をしながら制御を行うモデル予測制御などを適用することが可能である。
本発明は、ロールツーロール方式にて基材にシームレスで印刷を行うロールツーロール印刷装置に適用して好適である。
1…ロールツーロール印刷装置、2…繰出ユニット、3…印刷ユニット、4…巻取ユニット、40…版胴ロール、60…圧胴ロール(駆動ロール)、74…インフィードローラー(駆動ロール)、76…駆動ロールアクチュエータ、78…張力センサ(張力検出装置)、80…張力制御系の張力制御装置、84…ダンサアクチュエータ、85…インフィードロール(駆動ロール)、86…カメラ(画像検出装置)、90…アライメント制御系の張力制御装置、B…基材

Claims (3)

  1. 基材を繰り出す繰出ユニットと、該繰出ユニットから繰り出された前記基材に重ね合わせ印刷を行う複数の印刷ユニットと、該印刷ユニットにより印刷された前記基材を巻き取る巻取ユニットと、を備え、ロールツーロール方式にて前記基材にシームレスで印刷を行うロールツーロール印刷装置であって、
    前記基材を搬送する駆動ロールと、
    該駆動ロールを駆動する駆動ロールアクチュエータと、
    前記駆動ロールと駆動ロールとの間に配置され、前記基材のパスライン長を変化させて前記基材の張力を変化させるダンサアクチュエータと、
    前記基材の張力を検出する張力検出装置と、
    2段目以降の前記印刷ユニットによって前記基材に重ね合わせ印刷された部分の画像を検出する画像検出装置と、
    該張力検出装置の検出結果および前記画像検出装置の検出結果に応じて前記駆動ロールアクチュエータと前記ダンサアクチュエータとを制御し、前記基材の張力変動を補償する張力制御装置と、
    を備え、
    前記張力制御装置により前記基材の張力変動を補償して張力変動が抑制された定常状態をつくり出し、
    前記複数の印刷ユニットにおける印刷位置の差であるアライメント誤差を前記ダンサアクチュエータによって低減させてアライメント精度を向上させる、ロールツーロール印刷装置。
  2. 前記ダンサアクチュエータは連続する2つの前記駆動ロールの間に配置されている、請求項1に記載のロールツーロール印刷装置。
  3. 前記張力制御装置は、前記ダンサアクチュエータにより、当該ダンサアクチュエータの後段に配置された前記駆動ロールの前記駆動ロールアクチュエータに対してフィードフォワード制御する、請求項2に記載のロールツーロール印刷装置。
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