JP3956034B2 - オリゴアニリンユニットを有するジアミン及びポリイミド - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規なジアミンベンゼン誘導体及び該化合物を原料として合成されるポリイミドに関するものであり、更に詳しくは工業的に製造容易な導電性高分子であるアニリン誘導体を有するジアミン及び、該化合物を原料化合物の1つとして合成されたポリイミドに関するものである。本発明のジアミンを用いて合成されたポリイミドは、従来知られているポリイミド被膜に比べ低い抵抗値を有することから帯電防止被膜などに有用である。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂はテトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応によって得られる線状の高分子であり、高引っ張り強度、強靭性を持ち、優れた電気絶縁性と耐薬品性を示す上、耐熱性が優れるという特徴を持っている。
従って、耐熱性のフィルム、コーティング膜、接着剤、成型用樹脂、積層用樹脂、繊維として使用するのに好適であり、近年これらの特徴を利用して、自動車部品、特殊機械部品、電気電子材料、宇宙航空機材料等への応用が盛んになってきている。特に近年の半導体素子、或いは液晶表示素子分野においては、上記特徴を生かした絶縁膜、緩衝膜、保護膜等或いは液晶表示素子の配向膜として多用されて来ている。
【0003】
しかしながら、これらポリイミドの用途によっては、従来のポリイミドの絶縁性が高く、このために静電気を帯びやすかったり、或いは印加された電圧によりポリイミド膜中に電荷が蓄積してしまうことで素子特性上或いは素子製造上で様々な問題が生じる場合があった。
この為従来からポリイミドがもつ種々の特徴を保ちながら、より低抵抗で帯電の少ない、或いは電荷蓄積の少ないポリイミド樹脂が求められていた。ポリイミドの低抵抗化の方法としては、従来から幾つかの方法がこころみられている。例えばポリイミド中に金属粉、或いは導電性金属酸化物を混入する方法や、イオン系界面活性材を使用する方法などが挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらの方法では、例えば均一な塗膜が得られなかったり、透明性が損なわれたり、或いはイオン性不純物が多くなり電子デバイス用途には適さないなどの問題があった。
一方、低抵抗なポリマー材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等に代表されるいわゆる導電性ポリマーが挙げられる。この様な導電性ポリマーはアニリン、ピロール、チオフェン又はその誘導体をモノマー原料とし酸化剤によって化学酸化重合によって重合するか、もしくは電気化学的に重合する手法によって得ることができる。またこのような手法によって得られた導電性ポリマー材料は、一般にはルイス酸などの酸をドーピングすることによって高い導電性を示すことが知られている。このようにして得られて導電性高分子は、帯電防止剤、電磁波シールド剤などに応用する事が出来る。
【0005】
しかしながら、上記記載の方法で重合された導電性ポリマー材料は、一般に溶剤への溶解性が低いことから、有機溶剤に溶解もしくは分散したワニスを用いたフィルムはもろく機械的強度が小さく強靭な塗膜を得ることが困難であった。更に有機溶剤に溶解した導電性ポリマーであっても多くの場合ゲル化してしまいそのワニスの安定性は極めて悪いものであった。
【0006】
即ち、この様ないわゆる導電性ポリマーは、低抵抗であることから、実用上、優れた帯電防止能を有し、また電荷の蓄積等の面でも優れた性能を有する。しかしながら溶液の安定性或いは塗膜性状の面で必ずしも満足できるものではなく、この点が改善された低抵抗ポリマー材料が求められていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来のポリイミドの絶縁性が高く、このために静電気を帯びやすかったり、或いは印加された電圧によりポリイミド膜中に電荷が蓄積してしまうことで様々な問題が生じる場合があった。この為従来からポリイミドがもつ種々の特徴を保ちながら、より低抵抗で帯電の少ない、或いは電荷蓄積の少ないポリイミド樹脂が求められていた。
【0008】
即ち、本発明の目的は、耐熱性が高く、且つ低抵抗なポリイミドフィルム或いはポリイミド塗膜を形成することが出来る、ポリイミド及び該ポリイミドの原料であるジアミン誘導体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、一般式(1)
【0010】
【化3】
【0011】
(但し、式中R1〜R9はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基、スルホン酸基又は置換基を有していても良いシクロヘキシル基、ビフェニル基、ビシクロヘキシル基若しくはフェニルシクロヘキシル基であり、nは1以上の整数を示し、式中Aは単結合または−O−、−COO−、−CONH−、−NH−より選ばれる2価の有機基であり、また、R0は3価の有機基である。)で表されるジアミノベンゼン誘導体及び該ジアミノベンゼン誘導体がルイス酸と塩を形成しているジアミノベンゼン誘導体に関するものであり、
更に、本発明は前記一般式(1)で表されるジアミノベンゼン誘導体を少なくとも1モル%以上含有するジアミンとテトラカルボン酸及びその誘導体とを反応させ、還元粘度が0.05〜5.00dl/g(温度30℃のNーメチルピロリドン中、濃度0.5g/dl)のポリイミド前駆体とし、これを閉環させたポリイミド及び該ポリイミド中のジアミノ残基が酸と塩を形成しているポリイミドに関するものである。
【0012】
即ち、導電性高分子の電気伝導向上、被膜強度向上、ワニス安定を目的に検討した結果、構造が明確なオリゴアニリンが安定した特性を示すことを利用し、更にポリイミド主鎖に対しこのオリゴアニリンをブランチさせたグラフト型ポリマーが 安定した電気的及び機械的特性を示すことが明らかとするに至った。
以下本発明についてその詳細を説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のジアミノベンゼン誘導体は合成が容易であり、ポリイミド、ポリアミドなどの原料として有用である。
本発明の一般式(1)で表されるジアミノベンゼン誘導体は及びジアミン部、オリゴアニリン部、更にそれらを連結する結合部Aにより構成され、その合成法方は、特に限定されるものではないが、例えば、以下に述べる方法により合成することができる。ジアミンの合成においては、対応する一般式(2)で示す。
【0014】
【化4】
【0015】
ジニトロ体を合成し、更に、通常の方法でニトロ基を還元してアミノ基に変換することが一般的である。
ジニトロ部
【0016】
【化5】
【0017】
とオリゴアニリン部を連結部Aを介して結合させ、その後環状置換基R1からR9を結合させる方法、又は予め置換基を有するオリゴアニリンを合成し連結部Aを介して結合させ、その後、ジニトロ部を連結部Aを介して結合させる方法をとるのが一般的である。
連結部Aは単結合、エーテル結合−O−、エステル結合−COO−、アミド結合−CONH−、2級アミン結合−NH−などがあり、これら結合基は、通常の有機合成的手法で形成させることができる。例えば、エーテル結合は対応するハロゲン誘導体と水酸基置換誘導体をアルカリ存在下で反応させたり、エステル結合では対応する酸クロリドと水酸基置換誘導体をアルカリ存在下で反応させたり、アミド結合は対応する酸クロリドとアミノ基置換誘導体をアルカリ存在下で反応させたり、2級アミン結合では対応する1級アミノ基と水酸基置換体を脱水縮合反応させたりする方法が一般的である。
【0018】
ジニトロ部形成のための原料の具体例としては、結合部A形成の為の置換基、例えばハロゲン原子、ヒドロキシル基、ハロゲン化アシル基、アミノ基で置換されたジニトロベンゼンであり、これらで置換されたジニトロベンゼンの具体例は、2,3−;2,4−;2,5−;2,6−;3,4−;3,5−ジニトロベンゼンなどが挙げられる。しかし、原料入手、ポリイミド重合の際の反応性の点から、2,4ージニトロクロロベンゼン、2,4ージニトロフェノール、2,4ージニトロ安息香酸クロリド、2,4ージニトロアニリンが最も一般的である。
【0019】
オリゴアニリン部の置換基R1からR9は一般的には水素であるが、溶剤に対する溶解性を上げるためアルキル基、アルコキシ基、シクロヘキシル基、ビフェニル基、ビシクロヘキシル基、フェニルシクロヘキシル基、スルホン酸基などが適している。例えばアルキル基としては一般的にはメチル基、エチル基、プロピル基等があるが、炭素数としては1から4が一般的であるが、炭素数20までの導入は可能である。またオリゴアニリンは上記置換基を有する芳香族アミン塩酸塩と芳香族アミンとの脱塩化アンモニウム反応によって得られる。オリゴアニリン部のnの数は1以上であるが、その導電性を考慮した場合2以上が望ましく、またその溶剤に対する溶解性を考慮した場合20以下が望ましい。
【0020】
以上、述べたような製造方法によって得られる前記一般式(1)で表される本発明のジアミノベンゼン誘導体は、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸2無水物などのテトラカルボン酸及びその誘導体との重縮合を行うことにより、側鎖導電性を示すオリゴアニリン誘導体を有するポリイミドを合成することができる。
【0021】
酸とオリゴアニリンのドープ(塩形成)に関しては、酸としてルイス酸、ブレンステッド酸等を用いることができるが、有機溶剤に溶解させたオリゴアニリンにドーピングする場合は、塩化第一鉄などのルイス酸が望ましい。またスルホン酸基を有する有機酸もドーパントとして用いることができる。
本発明のポリイミドを得る方法は特に限定されていない。具体的にはテトラカルボン酸及びその誘導体は特に限定されない。
【0022】
その具体例を挙げると、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2ービス(3、4ージカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジンなどの芳香族テトラカルボン酸及びこれらの2無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1、2、3、4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸などの脂環式テトラカルボン酸及びこれら酸2無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸及びこれら2無水物並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物などが挙げられる。
【0023】
これらテトラカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
本発明は、テトラカルボン酸及びその誘導体と一般式(1)で表されるジアミノベンゼン誘導体(以下、ジアミン(1)と略す)とそれ以外の一般のジアミン(以下一般ジアミンと略す)を共重合することによって側鎖に導電性を有する分子鎖を有するポリイミドとする。従って本発明のポリイミドを得るためには使用されるジアミンは、ジアミン(1)を必須成分とする。
【0024】
ジアミン(1)以外の一般ジアミンは、一般にポリイミド合成に使用される一級ジアミンであって、特に限定されるものではない。あえて具体例を挙げれば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン及びテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、更には
【0025】
【化6】
【0026】
(式中、nは1から10の整数を表す)
等のジアミノシロキサン等が挙げられる。
又、これらのジアミンの1種又は2種以上を混合して使用することもできる。本発明のポリイミドを重合する際に、使用するジアミンの総モル数に対するジアミン(1)のモル数の割合を調整することにより、撥水性などのポリイミドの表面特性を改善できる。
【0027】
テトラカルボン酸及びその誘導体とジアミン(1)及び一般ジアミンとを反応、重合させポリイミド前駆体とした後、これを閉環イミド化するが、この際用いるテトラカルボン酸及びその誘導体としてはテトラカルボン酸2無水物を用いるのが一般的である。テトラカルボン酸2無水物のモル数とジアミン(1)と一般ジアミンの総モル数との比は0.8から1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1に近いほど生成する重合体の重合度は大きくなる。
【0028】
重合度が小さすぎる場合は使用する際ポリイミド膜の強度が不十分となり、重合度が大きすぎるとポリイミド膜形成時の作業性が悪くなる場合がある。
従って本反応に於ける生成物の重合度は、ポリイミド前駆体溶液の還元粘度換算で0.05〜5.00dl/g(温度30℃のN−メチルピロリドン中、濃度0.5g/dl)とするのが好ましい。
【0029】
テトラカルボン酸2無水物と1級ジアミンとを反応、重合させる方法は、特に限定されるものではなく、一般にはN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機極性溶媒中に1級ジアミンを溶解し、その溶液中にテトラカルボン酸2無水物を添加、反応させてポリイミド前駆体を合成した後脱水閉環イミド化する方法がとられる。
【0030】
テトラカルボン酸2無水物と1級ジアミンとを反応させポリイミド前駆体とする際の反応温度は−20から150℃、好ましくは−5から100℃の任意の温度を選択することができる。
更に、このポリイミド前駆体を100から400℃で加熱脱水するか、または通常用いられているトリエチルアミン/無水酢酸などのイミド化触媒をもちいて化学的イミド化を行うことにより、ポリイミドとすることができる。
【0031】
本発明のポリイミド及び/又はポリイミド前駆体に対して、ルイス酸等酸をドーピングすることにより、より低抵抗なポリイミド膜を得ることが出来る。本発明のポリイミドにドープする方法及び用いるドーパント及びその誘導体は特に限定されるものではない。
ドーピングは一般には硫酸や塩酸などの無機酸を添加する方法、または有機酸をポリイミド前駆体に添加することで行うことができる。また、塩化第一鉄等を添加する方法もある。ドーピング濃度としてはアニリンオリゴマーの分子量によって異なるが、一般にはアニリンオリゴマー中の窒素原子1個に対して1個以下のドーパントとなる様に添加することが好ましい。
更には、塗膜を形成した後、塩酸蒸気にさらしたり、ヨウ素蒸気にさらすことによってドーピングを行うこともできる。
【0032】
本発明のポリイミドの塗膜を形成するには通常ポリイミド前駆体溶液をそのまま基材に塗布し、基材上で加熱イミド化してポリイミド塗膜を形成することができる。この際用いるポリイミド前駆体溶液は、上記重合溶液をそのまま用いてもよく、又、生成したポリイミド前駆体を大量の水、メタノールのごとき貧溶媒中に投入し、沈殿回収した後、溶媒に再溶解して用いてもよい。
【0033】
上記ポリイミド前駆体の希釈溶媒及び/又は沈殿回収したポリイミド前駆体の再溶解溶媒は、ポリイミド前駆体を溶解するものであれば特に限定されない。
それら溶媒の具体例としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。これらは、単独でも混合して使用してもよい。更に、単独では均一溶媒が得られな溶媒であっても、均一溶媒が得られる範囲でその溶媒を加えて使用してもよい。その例としてはエチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール等が挙げられる。
【0034】
又、基材上にポリイミド塗膜を形成させる場合、ポリイミド膜と基材の密着性を更に向上させる目的で、得られたポリイミド溶液にカップリング剤等の添加剤を加えることはもちろん好ましい。
また、加熱イミド化させる温度は100〜400℃の任意の温度を採用できるが、特に150〜350℃の範囲が好ましい。
【0035】
一方、本発明のポリイミドが溶媒に溶解する場合には、テトラカルボン酸2無水物と一級ジアミンを反応させて得られたポリイミド前駆体を溶液中でイミド化し、ポリイミド溶液とすることができる。溶液中でポリイミド前駆体をポリイミドに転化する場合には、通常は加熱により脱水閉環させる方法が採用される。この加熱脱水による閉環温度は、150〜350℃、好ましくは120〜250℃の任意の温度を選択できる。
【0036】
又、ポリイミド前駆体をポリイミドに転化する他の方法としては、公知の脱水閉環触媒を使用して化学的に閉環することもできる。このようにして得られたポリイミド溶液はそのまま使用することもでき、又、メタノール、エタノール等の貧溶媒に沈殿させ単離した後、適当な溶媒に再溶解させて使用することもできる。再溶解させる溶媒は、得られたポリイミドを溶解させるものであれば特に限定されないが、その例としては2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトンなどが挙げられる。その他、単独ではポリイミドを溶解させない溶媒であっても溶解性を損なわない範囲であれば上記溶媒に加えてもかまわない。その例としてはエチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール等が挙げられる。
【0037】
又、基材上にポリイミド塗膜を形成させる場合、ポリイミド膜と基材の密着性を更に向上させる目的で、得られたポリイミド溶液にカップリング剤等の添加剤を加えることはもちろん好ましい。
この溶液を基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることにより基材上にポリイミド塗膜を形成させることができる。この際の温度は溶媒が蒸発すればよく、通常は80から150℃で十分である。
【0038】
また本発明のポリイミドを形成する際の塗布方法としてはディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート、刷毛塗りなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するがこれに限定されるものではない。
【0039】
【実施例】
実施例1
(4−((4−(2,4−ジアミノフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)フェニルアミンの合成
以下の様に3行程で合成した。
【0040】
【化7】
【0041】
(1) 4−((4−(フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェノールの合成200mlセパレート型4つ口フラスコにp−アミノフェノール塩酸塩14.5g(0.1mol)をp−アミノジフェニルアミン18.2g(0.1mol)を入れ窒素雰囲気下、180℃、3.5時間撹拌し反応させた。反応終了後、未反応物は100倍量の水で1時間環流し抽出される。その後目的物は20倍量の35%エタノールで1時間環流し抽出される。抽出された目的物は更にシリカゲルカラムにより精製し、銀白色粉末5.6gが得られた。IR、MASSスペクトルによって、この粉末は目的とする4−((4−(フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェノールであることが確認された。
【0042】
IR:3400cm-1(νOH)、3350cm-1(νNH)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO)、820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
MS:FD+、m/z 276(bp)
【0043】
(2) 4−((4−(2,4−ジニトロフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)フェニルアミンの合成
(1)で得られた4−((4−(フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェノール3.00g(10.56mmol)、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン2.39g(11.83mmol)、18−クラウン−6エーテル2.64g(0.01ol)、及び水酸化カリウム0.67g(0.012mol)をジオキサン50gに分散し50℃で4時間反応させた。反応終了後、溶剤を除去した後、1,2−ジクロロエタンによって抽出し、溶媒留去後粉末を得た。IR、MASSスペクトルによって、この粉末は目的とする4−((4−(2,4−ジニトロフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)フェニルアミンであることが確認された。
【0044】
IR:3350cm-1(νNH)、1550cm-1(νNO)、1370cm-1(νNO)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO)、820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
MS:FD+、m/z 442(bp)
【0045】
(3)4−((4−(ジアミノフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)フェニルアミンの合成
(2)で得られた4−((4−(ジニトロフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)フェニルアミン2.52g(5.71mmol)及びイソプロピリアルコール25gを50ml4つ口フラスコに入れ窒素で充分置換するこれに5%Pd−C0.24gを加え50℃12時間撹拌する。反応終了後、Pd−Cを濾別した後溶剤を除去し粉末を得た。IR、MASSスペクトルによって、この粉末は目的とする4−((4−(ジアミノフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)フェニルアミンであることが確認された。
【0046】
IR:3350cm-1(νNH)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO)、820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
MS:FD+、m/z 382(bp)
【0047】
実施例2
4−((4−2,4−ジアミノフェノキシ)フェニルアミノ)フェニル)(4-フェニルアミノ)フェニル)アミンの合成
以下の様に3行程で合成した。
【0048】
【化8】
【0049】
(4)4−((4−((4−フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェノールの合成
1000ccビーカーに熱水500ml、濃塩酸25mlを入れ、p−アミノジフェニルアミン2.5g(0.0014mol)及びp−ヒドロキシジフェニルアミン2.5g(0.014mol)を加え完全に溶解させる。反応溶液を15〜20℃まで冷却した後、3%過酸化水素水32mlを加えながらよくかき混ぜながら硫酸鉄(II)0.25gを加える。5分後、大量の水で薄め無水炭酸ナトリウム16gで中和し、濾過、水洗、乾燥した。反応生成物をベンゼン300mlと共に加熱溶解した後熱濾過し、冷却後石油エーテル300mlを加えると青色の針状結晶2.8g(収率:55.5%)が得られた。IR、MASSスペクトルによって、この結晶は目的とする4−((4−((4−フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェノールであることが確認された。
【0050】
IR:3400cm-1(νOH)、3350cm-1(νNH)、1320cm-1(νCN )、1220cm-1(νCO)、820cm-1(1,4ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
MS:FD+、m/z 367(bp)
【0051】
(6)(4−((4−(2,4−ジアミノフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)(4−((4−フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミンの合成
(4)の4−((4−((4−((4−(フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェノール4.00g(8.70mmol)、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン1.97g(9.75mmol)、18−クラウン−6エーテル2.64g(0.01mol)、及び水酸化カリウム 0.67g(0.012mol)をジオキサン50gに分散し50℃で4時間反応させる。反応終了後、溶剤を除去し、1,2−ジクロロエタンによって(5) の4−((4−2,4−ジニトロフェノキシ)フェニルアミノ)フェニル)(4−フェニルアミノ)フェニル)アミンを抽出し、溶媒留去後粉末を得た。この粉末は、IR、MASSスペクトルによって、目的の4−((4−2,4−ジニトロフェノキシ)フェニルアミノ)フェニル)(4−フェニルアミノ)フェニル)アミンであることが確認された。
【0052】
IR:3350cm-1(νNH)、1550cm-1(νNO)、1370cm-1(νNO)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO)、820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
MS:FD+、m/z 533(bp)
【0053】
得られたジニトロ体2.00g(3.76mmol)及びイソプロピリアルコール25gを50ml4つ口フラスコに入れ窒素で充分置換するこれに5%Pd−C0.24gを加え50℃12時間撹拌する。反応終了後、Pd−Cを濾別した後溶剤を除去し目的物の粉末を得た。IR、MASSスペクトルによって、この粉末は、目的とする(6)の(4−((4−(2,4−ジアミノフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)(4−((4−フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミンであることが確認された。
【0054】
IR:3350cm-1(νNH)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO)、820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
MS:FD+、m/z 473(bp)
【0055】
実施例3
(4−((4−(2,4−ジアミノフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)(4−((4−フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミンの合成。
以下の様に4行程で合成した。
【0056】
【化9】
【0057】
(7)4−((4−((ヒドロキシフェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェノールの合成
p−アミノフェノール24.1g(0.22mol)とp−フェニレンジアミン塩酸塩20.0g(0.11mol)を入れ180℃で7時間反応させた。反応終了後室温まで冷却し、濃硫酸50mlを加え24時間放置後反応物を水1500ccに分散させ、炭酸水素ナトリウムで中和した後濾過洗浄し、20%エタノール750mlから再結晶することで銀白色の目的物6.3g(収率:19.6%)が得られた。IR、MASSスペクトルによって、この結晶は、目的とする(7) の4−((4−((ヒドロキシフェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェノールであることが確認された。
【0058】
IR:3400cm-1(νOH)、3350cm-1(νNH)、1550cm-1(νNO)、1370cm-1(νNO)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO),820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)
MS:FD+、m/z 292(bp)
【0059】
(8)4−((4−((4−((4−(フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェノールの合成
p−アミノジフェニルアミン1.87g(0.01mol)及び(7)の4−((4−((ヒドロキシフェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェノール3.52g(0.012mol)をベンゼン中でチタンテトライソプロポキシドを触媒に用いて70℃,30時間反応させた。反応終了後、反応物を濾過し、20%エタノールで未反応物を除去した後、ジオキサンで再結晶し目的物1.11g(収率:24.1%)を得た。IR、MASSスペクトルによって、この結晶は、目的とする(8) の4−((4−((4−((4−(フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェノールであることが確認された。
【0060】
IR:3400cm-1(νOH)、3350cm-1(νNH)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO)、820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
MS:FD+、m/z 458(bp)
【0061】
(10)(4−((4−(2,4−ジアミノフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)(4−((4−フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミンの合成
(8)の4−((4−((4−((4−(フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミノ)フェノール4.00g(8.70mmol)、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン1.97g(9.75mmol)、18−クラウン−6エーテル2.64g(0.01mol)、及び水酸化カリウム0.67g(0.012mol)をジオキサン50gに分散し50℃で4時間反応させる。反応終了後、溶剤を除去し、1,2−ジクロロエタンによって(9)の4−((4−2,4−ジニトロフェノキシ)フェニルアミノ)フェニル)(4−フェニルアミノ)フェニル)アミン抽出した。
【0062】
得られたジニトロ体2.00g(3.76mmol)及びイソプロピリアルコール25gを50ml4つ口フラスコに入れ窒素で充分置換するこれに5%Pd−C0.24gを加え50℃12時間撹拌する。反応終了後、Pd−Cを濾別した後溶剤を除去し目的物を得た。IR、MASSスペクトルによって、このものは目的とする(10)の(4−((4−(2,4−ジアミノフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)(4−((4−フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミンであることが確認された。
【0063】
IR:3350cm-1(νNH)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO )、820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
MS:FD+、m/z 564(bp)
【0064】
実施例4
ポリイミドの合成
実施例3で得られた(4−((4−(2,4−ジアミノフェノキシ)フェニル)アミノ)フェニル)(4−((4−フェニルアミノ)フェニル)アミノ)フェニル)アミンの3g(0.0078mol)をNーメチルピロリドン25.22gに溶解させ、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.0.0.<2,6>]テ゛カン1.45g(0.00741mol)を添加して室温で24時間重縮合反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を調製した。
【0065】
得られたポリイミド前駆体の還元粘度は0.52dl/g(0.5w%,25℃)であった。
この溶液をガラス基板にコートし250℃/1時間加熱処理して均一なポリイミド塗膜を形成させた。得られた塗膜のIR測定を行い、アニリンオリゴマーを含有するポリイミドであることを確認した。
【0066】
IR:3350cm-1(νNH)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO)、820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
また、得られたポリイミド前駆体溶液を電極付きガラス基板上にスピンコートし80℃のホットプレート上で乾燥後、250℃/60分焼成してポリイミド膜を形成した。この塗膜上にアルミ電極を蒸着し、体積個有抵抗を測定したところ1013 Ωcm台を示した。
【0067】
比較例1
4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.0.0.<2,6>]デカン1.45g(0.0047mol)をm−フェニレンジアミン0.84g(0.0078g)添加して室温で24時間重縮合反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を調整した。得られたポリイミド前駆体の還元粘度は1.10dl/g(0.5w%,25℃)であった。この溶液をガラス基板にコートし250℃/1時間加熱処理して均一なポリイミド塗膜を形成させた。得られた塗膜のIR測定を行い、アニリンオリゴマーを含有するポリイミドであることを確認した。
【0068】
IR:3350cm-1(νNH)、1320cm-1(νCN)、1220cm-1(νCO)、820cm-1(1,4−ジ置換ベンゼン)、740cm-1(モノ置換ベンゼン)
また、得られたポリイミド前駆体溶液を電極付きガラス基板上にスピンコートし80℃のホットプレート上で乾燥後、250℃/60分焼成してポリイミド膜を形成した。この塗膜上にアルミ電極を蒸着し、体積個有抵抗を測定したところ1016Ωcm台を示した。
【0069】
実施例10
(ルイス酸ドーピングに伴う電気伝導度測定)
以下に示すジアミン化合物にルイス酸として塩化鉄をドーピングし、その電気伝導度を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
【化10】
【0071】
【表1】
【0072】
【発明の効果】
本発明のジアミノベンゼン誘導体は合成が容易であり、これを原料の一つとして耐熱性、被膜強度、塗膜性状に優れ且つ帯電防止性或いは低電荷蓄積性を有するポリイミドが得られる。このようなポリイミドは各種電子デバイス用コート剤とし有用である。
Claims (10)
- 一般式(1)中のR1〜R9はそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、且つnが1〜20までの整数である請求項1記載のジアミノベンゼン誘導体。
- 一般式(1)で表されるジアミノベンゼン誘導体が酸と塩を形成している請求項1または2記載のジアミノベンゼン誘導体。
- 下記一般式(1)
- 一般式(1)中のR1〜R9はそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、且つnが1〜20までの整数である請求項4記載のポリイミド。
- 一般式(1)で表されるジアミノベンゼン誘導体を少なくとも5モル%以上含有する請求項4又は請求項5記載のポリイミド。
- テトラカルボン酸及びその誘導体が、脂環式テトラカルボン酸及びその誘導体である請求項4乃至6のいずれかに記載のポリイミド。
- 脂環式テトラカルボン酸及びその誘導体が1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸2無水物である請求項7に記載のポリイミド。
- テトラカルボン酸及びその誘導体がヘテロ環テトラカルボン酸である請求項4乃至6記載のポリイミド。
- 一般式(1)で表されるジアミンの残基が酸と塩を形成している請求項4乃至9のいずれかに記載のポリイミド。
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