JP3955366B2 - トリフエニレン誘導体、それを含む組成物、およびそれを含む光学異方性材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶材料として有用な新規な化合物であるトリフェニレン誘導体と、それを含む組成物およびそれらより成る光学異方性材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示素子はワードプロセッサー、パーソナルコンピューター、テレビなどに広く用いられるようになり、それに関連する素材、装置などの産業活動が活発に行われている。液晶表示材料の根本をなす素材である液晶化合物についても活発な開発研究が行われ、数多くの化合物が開発されてきた。これらの化合物は、表示素子に限らず種々の用途の開発に向け利用が考えられている。従来からよく知られ、よく利用されている棒状の液晶化合物に加え、最近では円盤状の液晶化合物、いわゆるディスコティック液晶化合物が注目を浴びるようになった。
【0003】
ディスコティック液晶化合物として代表的なものは、C. Destrade らの研究報告、Mol. Cryst. Liq. Cryst. 71巻、111頁(1981年)に記載されているように、例えばベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、さらに B. Kohne らの研究報告、Angew. Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体、J. M. Lehnらの研究報告、J. Chem. Soc. Chem. Commun.,1794頁(1985年)や J. Zhang 、J. S. Moore らの研究報告、J. Am. Chem. Soc.,116巻、2655頁(1994年)に記載された種々のマクロサイクレン誘導体などが挙げられ、一般的にこれらを分子の中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその側鎖として放射状に置換した構造である。
【0004】
ディスコティック液晶相は、円板状分子の中心コアが分子間力で柱状に積み重なった柱状相(columnar phase)と、円板状分子が乱雑に凝集したディスコティックネマティック相と、カイラルディスコティックネマティック相に大別できることが知られている。しかし、W. H. de jeu著のPhysical properties of liquid crystalline materials(1980 by Gordon and Breach, Science Publishers)に記載されているように、柱状相はしばしば見出されるが、ディスコティックネマティック相は稀にしか見出されていない。
【0005】
また、本発明のトリフェニレン系ディスコティック液晶が負の複屈折を有することは、B. Mourey らの研究報告〔Mol. Cryst. Liq. Cryst.,84巻、193頁(1982年)〕で明かにされているが、この性質を光学補償シートとして応用するためには、その薄膜を構成する分子全体を室温状態で統計的に一方向に並べることが必要である。しかも、ディスコティック液晶は従来の棒状分子からなる液晶と同様に、微視的には特定の方向性をもった配向領域(ドメイン)で構成され、巨視的には光学的異方性を示さないいわゆるマルチドメインを形成するという性質があるため、多くの場合にその薄膜は光学補償シートに利用できるほどの好ましい光学的特性を示さない。
【0006】
ところで、液晶の代表的な構造である棒状の化合物において知られているように、その構造の微妙な違いで、形成される液晶相および各相間の転移温度はしばしば著しく変化する。このことは、棒状液晶化合物に限られることではなく、ディスコティック液晶化合物においても同様である。このような相転移温度の変化は化合物の混合によっても生じることが知られており、従って優れた混合物の発見もまた新規化合物の発見に劣らず重要である。必要とする液晶相、各相間の転移温度は、目的とする素子によって異なり、従って多種多様な化合物を用意することにより初めて選択の幅を広げることができ、種々の目的に対応することが可能になる。また、必要とする液晶相の状態を固定するために重合可能な官能基をその分子内に導入した化合物を提供することは、実用的な面からも非常に重要なことである。
【0007】
しかしながら、ディスコティック液晶化合物においては、未だ多くの化合物が知られるには至っておらず、優れた混合物についてもあまり知られていない。このことは特に魅力のある化合物であるトリフェニレン誘導体においても同じであり、C. Destrade ら著、J. Phsique, 40巻、4号、C3−17(1979)および C. Vauchierら著、Mol. Cryst. Liq. Cryst. 66巻、103頁(1981年)に数例記載されているのみであり、更に有用な混合物の発見が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は液晶材料として有用な新規なトリフェニレン誘導体、特に重合性の官能基を有する液晶性化合物とそれを含む組成物、及びそれらより成る光学異方性材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
我々は、この点に関して、種々のディスコティック液晶について詳細に検討し、ディスコティックネマティック液晶相または一軸性の柱状相を形成する性質を有する液晶、なかでもトリフェニレン誘導体は、合成も容易で、光学素子として利用する上で有利なモノドメイン性のディスコティックネマティック相を形成し易く、魅力のある化合物であり、とりわけ下記一般式(I)で表されるトリフェニレン系炭素骨格構造を有する化合物の薄膜が、光学異方性材料として好ましい特性をもっていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、
〔1〕下記一般式(I)で表わされるトリフェニレン誘導体により、本発明の目的が達成できることを見出した。
一般式(I)
【0011】
【化2】
【0012】
式中、Ar1 、Ar2 、Ar3 、Ar4 、Ar5 およびAr6 はそれぞれ独立にアリール基又は芳香族複素環基を表わす。R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立に、上記置換基P1 、P2 またはP3 を含む脂肪族または芳香族カルボニルオキシ基を表わし、R21、R22、R23、R24、R25およびR26は、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、またはハロゲン原子を表わす。m1、m2、m3、m4、m5およびm6はそれぞれ独立に0または1であり、n1、n2、n3、n4、n5およびn6はそれぞれ独立に0、1または2である。R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 およびR9 はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表わす。
【0013】
〔2〕上記〔1〕記載の一般式(I)において、Ar1 、Ar2 、Ar3 、Ar、Ar5 およびAr6 が全てフェニル基であり、R11、R12、R13、R14、R15およびR16が全て同一であり、R21、R22、R23、R24、R25およびR26が全て同一であり、m1=m2=m3=m4=m5=m6であり、かつn1=n2=n3=n4=n5=n6であるところのトリフェニレン誘導体により、
【0014】
〔3〕上記〔2〕において、R11=R12=R13=R14=R15=R16=-OCO-(CH=CH)- p -(C6H4)-O-(CH2)-q -OCOCH=CH2であり、(ここにpは0又は1、qは1〜15の整数を表わす。)、m1=m2=m3=m4=m5=m6=1であり、かつn1=n2=n3=n4=n5=n6であるところのトリフェニレン誘導体により、
【0015】
〔4〕上記〔1〕〔2〕又は〔3〕に記載のトリフェニレン誘導体の少なくとも一つを含んで成る組成物により、又、〔5〕、上記〔1〕〔2〕又は〔3〕に記載のトリフェニレン誘導体または上記〔4〕に記載の組成物を含有する膜から成る光学異方性材料により、本発明の目的が達成できることを見出した。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、一般式(I)について詳細に説明する。
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6はそれぞれ独立にアリール基又は芳香族複素環基を表わす。アリール基は例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、1−アントラニル基、2−アントラニル基、9−アントラニル基等であり、芳香族複素環基は例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、4−イミダゾリル基、4−イソチアゾリル基等である。Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5およびAr6は互いに同一でも、一部又は全部異なっていてもよいが、特に好ましくは、全て同一のフェニル基であることが好ましい。
【0017】
R11、R12、R13、R14およびR16は、それぞれ独立に、上記置換基P1 、P2 またはP3 を含む脂肪族または芳香族カルボニルオキシ基を表わし、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は互いに同一でも、一部又は全部が異なっていてもよいが、全て同一である場合が好ましい。
脂肪族または芳香族カルボニルオキシ基は、好ましくは1)-OCO-(CH2) r -、2)-OCOCH=CH-Ar- 、3)-OCOAr- で表わされる。ここにrは1ないし12の整数、Arは例えば1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、3,5−ピリジニレン基、3,4−フリレン基等の2価芳香族基であり、これらのうち1,4−フェニレン基が特に好ましい。又、本脂肪族または芳香族カルボニルオキシ基は、2)-OCOCH=CH-Ar又は3)-OCOAr- が好ましい。
又、R11、R12、R13、R14およびR16は全て同一で上記置換基P1 を含む脂肪族または芳香族カルボニルオキシ基であることが好ましく、特に好ましくは -OCO-(CH=CH)- p -(C6H4)-O-(CH2)-q -OCOCH=CH2である。(ここに、pは0又は1を、qは1〜15の整数を表わし、特に2〜10の整数が好ましい。)
【0018】
R21、R22、R23、R24、R25およびR26はそれぞれ独立にアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、ベンジル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基等、ヒドロキシ基またはハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、沃素等)を表わし、好ましくはアルキル基又はアルコキシ基である。R21、R22、R23、R24、R25およびR26は互いに同一でも、一部又は全部が異なっていてもよいが、全て同一である場合が好ましい。
【0019】
m1、m2,m3、m4、m5およびm6はそれぞれ独立に0又は1であり、好ましくは全てが等しく0又は1であり、更に好ましくは全てが等しく0である。n1、n2、n3、n4、n5およびn6はそれぞれ独立に0、1又は2であり、好ましくは全てが等しく0、1又は2であり、更に好ましくは全てが等しく1である。
【0020】
R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 はそれぞれ水素原子またはアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられるが、メチル基、エチル基などの低級アルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。)を表わし、更に好ましくは、R1 が水素原子またはメチル基、更に好ましくはR1 が水素原子であり、R2 およびR3 が水素原子が好ましく、またR4 が水素原子またはメチル基、R5 およびR6 が水素原子が好ましく、またR7 およびR8 が水素原子、R9 が水素原子または低級アルキル基が好ましい。
以下に一般式(I)で表わされる本発明の化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されることはない。
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
本発明のトリフェニレン誘導体とは、一般式(I)に示すようにトリフェニレン骨格の6個の置換位置にアリール基又は芳香族複素環基が放射状に置換した構造を有し、本発明のトリフェニレン誘導体の特徴は、他のディスコティック液晶に比べてモノドメイン性のディスコティックネマティック相を形成しやすいことである。
光学的に異方性であるためには、少なくとも光軸がある方向に傾いている必要があり、そのためには液晶の一般的性質とも言えるマルチドメインの形成を抑制してモノドメイン性の液晶相の形成が必要である。
従って、モノドメイン性のディスコティックネマティック相を形成しやすいトリフェニレン誘導体は、上記の理由で光学異方素子としての可能性が相対的に大きな化合物群であると考えられる。
【0027】
次に請求項3に記載した組成物に関して、すなわち本発明の液晶性化合物は単独で用いられるだけでなく、混合物としても有用な性質を発揮させうることを述べる。本発明における我々の目的は、冒頭に述べたごとく、有用な液晶性化合物を提供することにあるが、より具体的な目的の一つは、本発明の液晶性化合物をモノドメイン性の光学的に一軸の配向状態をとらせることにより、光学的に有意な機能を発現させ、それを光学機能素子として提供することにある。
【0028】
そのような光学機能素子としての様々な要求を、単独の液晶で全て満足することは、必ずしも容易ではない。例えば、ある特定の好ましい液晶相をとる相転移温度が高すぎて用いられる支持体の種類が限られたり、その液晶相が熱的に不安定であり耐久性が不満足であったり、光学軸の傾斜角が好ましい角度でなく最良の光学特性が得られなかったりする場合がある。そのような際に、我々は本発明の液晶性化合物、冒頭にも述べたように、似た構造にあるその他の円盤状液晶化合物、また円盤状化合物に限らず、従来の棒状ネマティック液晶性化合物あるいはコレステリック液晶性化合物を混合することによってその物性を調節できることを見出した。
【0029】
また、混合する化合物は、液晶性もしくは非液晶性の高分子化合物だけでなく、種々の低分子化合物も用いられる。高分子化合物としては例えば、ポリメチルメタアクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイミド共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、シリレート系ポリマーや種々の液晶ポリマー等が挙げられる。
【0030】
また、低分子化合物としては、重合性基を有する上記高分子物質を形成するに用いられたモノマーが好ましく用いられる。例えばエチレングリコール−1,4−ジアクリレート、エチレングリコール−1,4−ジグリシジルエーテルや市販の紫外線硬化樹脂モノマーが挙げられる。
その他、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の界面活性剤も用いられる。
【0031】
一般式(I)で表される化合物と上記の化合物との組成物における混合比は、好ましくは一般式(I)で表される化合物の含有量として重量比50%以上100%未満であり、さらに好ましくは60%以上100%未満である。
【0032】
以下、図面を用いてTN型液晶表示素子を例にとり本発明の光学異方性材料すなわち液晶表示素子用位相差膜の作用を説明する。図1、図2は、液晶セルにしきい値電圧以上の十分な電圧を印加した場合の液晶セル中を伝搬する光の偏光状態を示したものである。コントラストの視野角特性には、特に電圧印加時の光の透過率特性が大きく寄与するため、電圧印加時を例にとり説明する。
図1は、液晶セルに光が垂直に入射した場合の偏光状態を示した図である。自然光LOが偏光軸PAをもつ偏光板Aに垂直に入射したとき、偏光板PAを透過した光は、直線偏光L1となる。
【0033】
TN型液晶セルに十分な電圧を印加した時の液晶分子の配列状態を、概略的に一つの液晶分子でモデル的に示すと、概略図中LCのようになる。液晶セルLCS中の液晶分子LCの分子長軸が光の進路と平行な場合、入射面(光の進路に垂直な面内)での屈折率の差が生じないので、液晶セル中を伝搬する常光と異常光の位相差は生じずLCセルを通過した直線偏光は液晶セルを透過しても直線偏光のまま伝搬する。偏光板Bの偏光軸PBを偏光板Aの偏光軸PAと垂直に設定すると、液晶セルを透過し他直線偏光L2は偏光板Bを透過することができず、暗状態となる。
【0034】
図2は、液晶セルに光が斜めに入射した場合の光の偏光状態を示した図である。入射光の自然光LOが斜めに入射した場合、偏光板Aを透過した偏光L1はほぼ直線偏光になる(実際の場合、偏光板の特性により楕円偏光になる)。この場合、液晶の屈折率異方性により液晶セルの入射面において屈折率の差が生じ、液晶セルを透過する光L2は楕円偏光しており偏光板Bでは完全に遮断されない。このように、斜方入射においては暗状態での光の遮断が不十分となり、コントラストの大幅な低下を招き、好ましくない。
【0035】
本発明は、この様な斜方入射におけるコントラストの低下を防ぎ、視角特性を改善しようとするものである。
図3に本発明による構成の一例を示した。偏光板Bと液晶セルとの間に、液晶セルの法線方向から傾いた光学軸をもつ光学異方性材料RFが配置されている。この光学異方性材料RFは光学軸に対して光が入射する角度が大きくなる程大きく偏光する複屈折体である。この様な構成の液晶表示素子に図2の場合と同様に光が斜方入射し液晶セルを透過した楕円偏光L2は、光学異方性材料RFを透過する時の位相遅延作用によって楕円偏光がもとの直線偏光に変調され、種々の斜方入射においても同一な透過率が得られる視角依存性のない良好な液晶表示素子が実現できた。
【0036】
本発明によって、液晶表示素子の視野角を大幅に向上できたことについては以下のように推定している。
TN−LCDの多くは、ノーマリーホワイトモードが採用されている。このモードでは、視野角を大きくすることに伴って、黒表示部からの光の透過率が著しく増大し、結果としてコントラストの急激な低下を招いていることになる。
黒表示は電圧印加時の状態であるが、この時には、TN型液晶セルは、光学軸が、セルの表面に対する法線方向から若干傾いた正の一軸性光学異方体とみなすことができる。また、中間階調の場合には、その光学軸は更にLCセルの法線方向から傾いていくものと思われる。
【0037】
液晶セルの光学軸が液晶セルの表面に対する法線方向から傾いている場合、光学軸が法線方向にある光学異方体では、その補償が不十分であることが予想される。また、液晶セルが正の一軸性光学異方体と見なせるのであれば、それを補償するためには負の一軸性光学異方体が好ましい。このような理由から本発明における、光学軸が法線方向から傾いた負の一軸性光学異方体によって大幅な視野角特性が改善されたものと推定する。
【0038】
本発明における負の一軸性とは、光学異方性を有するシートの3軸方向屈折率を、その値が小さい順にnα、nβ、nγとしたとき、nα<nβ=nγの関係を有するものである。従って光学軸方向の屈折率が最も小さいという特性を有するものである。但しnβとnγの値は厳密に等しい必要はなく、ほぼ等しければ十分である。具体的には、nβ−nγ/nβ−nα<0.2であれば実用上問題ない。また、TFT、TN型液晶セルの視野角特性を大幅に改善する条件としては、光学軸はシート面の法線方向から5度〜50度傾いていることが好ましく、10度〜40度がより好ましく、10度〜30度が最も好ましい。更に、シートの厚さをDとした時、100<(nβ−nα)×D<400nmの条件を満足することが望ましい。
【0039】
本発明の該ディスコティック液晶を用いて構成される光学異方性材料は、ディスコティック液晶のみで構成されていても良いが、一般的には、支持体上に所望の光学異方性を発現した液晶層が少なくとも一層設けられたもので、用途に応じて液晶層の上下もしくは液晶層間に保護膜もしくは支持体が存在してよい。
【0040】
また、本発明の光学異方性材料を構成する該ディスコティック液晶は、単独でも混合してもよい。特に適切な液晶の混合によって、相転移温度の調節、液晶相の光学的な構造形態の制御及び製膜性の改善などが効果的に行われることが多い。
【0041】
支持体素材は光透過率が良好であることに加えて、光学的等方性に近いことが望ましい。従って、ガラスやゼオネックス(日本ゼオン)、ARTON(日本合成ゴム)、フジタック(富士フイルム)などの商品名で売られている固有複屈折値が小さい素材から形成された支持体が好ましい。しかし、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等の固有複屈折値が大きな素材であっても、製膜時に分子配向を制御することによって光学的に当方的な支持体を形成することも可能であり、それらも好適に利用される。
【0042】
保護膜用素材としては、例えば、ポリメチルメタアクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイミド共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン、酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;及びシランカップリング剤などの有機物質を挙げることができる。また、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド及びステアリン酸メチルなどのラングミュア・プロジェット法(LB法)により形成される累積膜も用いることができる。
【0043】
また、予め支持体上に設けられた保護膜は、液晶層形成時の分子配向にしばしば大きな影響を与えることは、棒状液晶の場合にはよく知られた事実であり、無機または有機の配向膜がほとんど必ず用いられている。これは、本発明でも好ましく用いられる技術の一つであり、金属斜方蒸着膜としてはSiO斜方蒸着膜が、また有機配向膜としてはラビングされたポリイミド膜が代表的なものであるが、その他ラビングした変性ポバールやラビングしたシリル化剤で処理したガラス基板またはラビングしたゼラチン膜、ラビングしたガラス基板などが用いられる。
【0044】
基板上に塗設されたディスコティック液晶を斜めに配向させる上記以外の方法として、磁場配向や電場配向がある。この方法においてはディスコティック液晶を基板に塗設後、所望の角度に磁場あるいは電場をかけるゾーンが必要であるが、そのゾーン自体をディスコティックネマティック相が形成される温度に調整しておく必要がある。
【0045】
本発明の光学異方性材料を構成する該液晶層は、蒸着法やスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により支持体上に薄膜として形成できる。特に、本発明の該液晶では、塗布の段階で、塗布の方向に光学軸が揃う傾向がしばしば観察される。
【0046】
従って、少なくとも片方の界面が気相と接した状態即ち一般的な塗布法により適当な支持体上に該液晶薄膜を形成し、乾燥後、カラム層形成温度範囲内の温度で、ディスコティックネマティック相または一軸性の柱状相を形成させつつ一定時間熱処理し、その後冷却することによって所望の光学特性をもつ光学異方性材料を得ることができる。
【0047】
【実施例】
以下に、本発明の新規なトリフェニレン誘導体の合成例、該液晶化合物またはそれを含む組成物から成る光学異方性材料の作成例およびその性能の評価例を記載する。
本発明の液晶化合物TP−2、TP−9、TP−25、TP−26、TP−30、TP−29の合成ルートを下記に示す。
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
【化10】
【0051】
【化11】
【0052】
【化12】
【0053】
実施例1:本発明の液晶化合物の合成
1−1:TP−2の合成
ヘキサブロモトリフェニレンの合成
攪拌器、滴下漏斗を装着した1リットル三ツ口フラスコにトリフェニレン(試薬市販品)6.0g(0.0263モル)、鉄粉0.54g(9.7ミリモル)及びニトロベンゼン240mlを加えて攪拌した。室温下、攪拌しながら臭素12ml(0.233モル)を約8分で滴下した。滴下終了後10分で、結晶の析出が見られた。室温下12時間攪拌を続けたのち、205℃で2時間攪拌した。更に、鉄粉0.54gを追添し、230℃で2時間攪拌した。室温に冷却し、ジエチルエーテル600mlを加え、析出物を濾取し、o−ジクロルベンゼンで再結晶して、ヘキサブロモトリフェニレン11.64g(収率63%)を得た。
元素分析値:H 1.00%(計算値0.86%)、C 31.58%(同30.81%)、Br 69.37%(同68.32%)。融点:500〜502℃。UVスペクトル:極大吸収波長278nm、分子吸光係数2.10×105 リットル・ mol-1・cm-1。
【0054】
p−オクチルオキシフェニルホウ酸の合成
攪拌器、滴下漏斗を装着した1リットル三ツ口フラスコにp−オクチルオキシブロモベンゼン76.0g(0.266モル)、脱水テトラヒドロフラン300mlを加えて−78℃に冷却し、1.6Mブチルリチウムヘキサン溶液175ml(0.279モル)を30分間で滴下した。滴下後、−78℃下に3時間攪拌を続けた。次いで、ホウ酸トリイソプロピル75.0g(0.399モル)を添加し、−78℃下1時間、攪拌を続けたのち、室温下で一夜放置した。濃塩酸147ml(1.72モル)を加えて、室温下1時間攪拌し、次いで、酢酸エチル/飽和食塩水で抽出、洗浄した。酢酸エチル相を分け取り、硫酸ソーダで乾燥し、減圧留去したのち酢酸エチル/アセトニトリル=2/3で再結晶し、p−オクチルオキシフェニルホウ酸31.3g(収率47%)を得た。シリカゲル薄層クロマトグラフィー:展開溶剤=ヘキサン/酢酸エチル=1/1にてRf=0.5、1スポット。
元素分析:H 9.09%(計算値9.27%)、C 68.27%(同67.22%)。FAB−Negaマススペクトル:〔M−H〕- =249
【0055】
TP−2の合成
攪拌器を装着した500ml三ツ口フラスコに、ヘキサブロモトリフェニレン5.0g(7.13ミリモル)、p−オクチルオキシフェニルホウ酸16.0g(64.2ミリモル)、トリフェニルホスフィン2.5g(9.55ミリモル)およびジエチレングリコールジメチルエーテル220mlを加えて攪拌し、攪拌しながら10%パラジウム/カーボン(水分53%)2.5gおよび炭酸ソーダ21.2g(0.2モル)を水100mlに溶解した溶液を添加した。系は2相に分離した。90℃で66時間、攪拌したのち、酢酸エチル/飽和食塩水で抽出、洗浄した。酢酸エチル相を分取し、硫酸ソーダで脱水後、減圧留去したのち、シリカゲルを固定相、ヘキサン/酢酸エチル=40/1を移動相とするフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、TP−2 5.51g(収率53%)を得た。
元素分析値:H 9.01%(計算値9.15)、C 83.89%(計算値84.25%)。紫外吸収スペクトル:極大吸収波長307nm(メチレンジクロライド)。NMRスペクトル(CDCl3):8.73ppm(s,6H)、7.21ppm(d,12H)、6.81ppm(d,12H)、3.96ppm(t.12H)、1.79ppm(m,12H)、1.47〜1.32ppm(m,72H)、0.91ppm(t,18H)。シリカゲル薄層クロマトグラフィー:展開溶剤=ヘキサン/酢酸エチル=20/1にてRf=0.6〜0.7、1スポット。
【0056】
1−2:TP−9の合成
攪拌器を装着した100ml三ツ口フラスコに、TP−2 5.14g(3.53ミリモル)メチレンジクロライド60mlを加え、次いで2.0Mの3臭化ホウ素メチレンジクロライド溶液18.2ml(0.0364モル)をゆっくり加えた。加える途中、系内は紫色に呈色し、発泡が見られたのち、しばらくしてゲル状に固まった。攪拌を強くして、ゲルを解いたのち、40℃に加温して30分間攪拌した。
室温に冷却し、400mlの水中に投入した。析出物を濾取し、酢酸エチルに溶解し、硫酸ソーダで脱水したのち減圧留去した。酢酸エチル/メチレンジクロライドで再結晶し、TP−9 2.71g(収率98%)を得た。シリカゲル薄層クロマトグラフィー:酢酸エチルを展開溶剤としてRf=0.6、1スポット。NMR(DMSO−d6):9.43ppm(s,6H、−OHに帰属)、8.73ppm(s,6H、トリフェニレン環プロトンに帰属)、7.12ppm(d,12H)、6.71ppm(d,12H)。
【0057】
1−3:TP−25の合成
4−(4−アクリロイロキシブトキシ)安息香酸の合成
特願平8−52866実施例1に記載の方法で合成した。
TP−25の合成
攪拌器、滴下漏斗を装着した100ml三ツ口フラスコにメシルクロライド0.44g(3.84ミリモル)およびTHF3mlを加えて−10℃に冷却した。この中に4−(4−アクリロイロキシブトキシ)安息香酸1.01g(3.84ミリモル)、およびジイソプロピルエチルアミン0.55g(4.22ミリモル)をテトラヒドロフラン6mlに溶解した溶液を、冷却、攪拌しながら滴下した。30分間、−10℃にて攪拌を続けたのち、ジイソプロピルエチルアミン0.67ml(3.84ミリモル)、ジメチルアミノピリジン47mg(0.384ミリモル)を添加し、次いで、TP−9 0.30g(0.384ミリモル)をテトラヒドロフラン5mlに分散した液を添加した。添加、10分後に室温に戻し、2時間、室温下に攪拌した。酢酸エチル/飽和食塩水系で抽出、洗浄したのち、酢酸エチル相を分取し、硫酸ソーダで脱水乾燥後減圧留去した。シリカゲルを固定相、メチレンジクロライド/酢酸エチル=95/5を移動相とするフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、TP−25 0.23g(収率27%)。NMRスペクトル(CDCl3):δ=8.78ppm(s,6H)、8.18ppm(d,12H)、7.47ppm(d,12H)、7.24ppm(d,12H)、6.99ppm(d,12H)、6.42ppm(d,6H)、6.15ppm(q,6H)、5.85ppm(d,6H)、4.28ppm(t,12H)、4.11ppm(t,12H)、1.94ppm(m,24H)。
【0058】
1−4:TP−26の合成
4−(6−アクリロイロキシヘキシルオキシ)安息香酸の合成
特開平7−306317実施例1に記載の方法に従って合成した。
TP−26の合成
TP−25と同様にして合成した。収率28%。NMRスペクトル(CDCl3):δ=8.79ppm(s,6H)、8.18ppm(d,12H)、7.49ppm(d,12H)、7.24ppm(d,12H)、7.00ppm(d,12H)、6.41ppm(d,6H)、6.13ppm(q,6H)、5.84ppm(d,6H)、4.22ppm(t,12H)、4.08ppm(t,12H)、1.9〜1.5ppm(m,48H)。
【0059】
1−5:TP−30の合成
p−ヒドロキシケイ皮酸メチルの合成
攪拌器、還流冷却器を装着した2リットル三ツ口フラスコに、p−ヒドロキシケイ皮酸(試薬市販品)131g(0.798モル)およびメタノール1リットルを加えて30℃に加温溶解した。次いで、濃硫酸6.7mlを加え8時間、加熱還流した。室温に冷却後、重炭酸ソーダ26.8gを水3.7リットルに溶解した溶液の中に注ぎ込み、析出した結晶を濾取、水洗し、乾燥して、p−ヒドロキシケイ皮酸メチルの白色結晶129g(収率91%)を得た。シリカゲル薄層クロマトグラフィー:展開溶剤、ヘキサン/酢酸エチル=2/1にてRf=0.3、1スポット。
【0060】
4−(12−ヒドロキシドデシルオキシ)ケイ皮酸の合成
攪拌器、滴下漏斗を装着した200ml三ツ口フラスコにp−ヒドロキシケイ皮酸メチル12.8g(0.072モル)、炭酸カリ14.9g(0.108モル)およびN,N−ジメチルホルムアミド70mlを加えて、100℃に加熱攪拌した。12−ブロモドデカノール21.0g(0.0792モル)をN,N−ジメチルホルムアミド30mlに溶解した溶液を20分間で滴下した。100℃で1時間、攪拌を続け、熱いまま、水500ml中に注ぎ込んだ。析出した結晶を濾取し、アセトニトリルでかけ洗いし、4−(12−ヒドロキシドデシルオキシ)ケイ皮酸メチルを得た。
このものを、攪拌器、還流冷却器を装着した300ml三ツ口フラスコに入れ、メタノール200mlを加え、次いで85%水酸化カリウム9.5g(0.144モル)を水20mlに溶解した溶液を滴下した。30分間加熱還流して、エステルをケン化した。室温に冷却して析出した結晶を濾取し、これを別の500ml三ツ口フラスコに入れ、テトラヒドロフラン300mlとN,N−ジメチルホルムアミド100ml、次いで濃塩酸12.4ml(0.144モル)を添加して30分間加熱還流した。室温に冷却し、析出した結晶を濾取し、メタノールでかけ洗いし、乾燥して、4−(12−ヒドロキシドデシルオキシ)ケイ皮酸の白色結晶19.8g(収率79%)を得た。シリカゲル薄層クロマトグラフィー:ヘキサン/酢酸エチル=1/2展開にてRf=0.3、1スポット。NMRスペクトル(DMSO−d6):δ=7.62ppm(d,2H)、7.56ppm(d,1H)、6.96ppm(d,2H)、6.86ppm(d,1H)、4.34ppm(t,1H、−OHに帰属)、4.00ppm(t,2H)、3.39ppm(t,2H)、1.71〜1.28ppm(m,20H)。
【0061】
4−(12−アクリロイロキシドデシルオキシ)ケイ皮酸の合成
攪拌器、還流冷却器を装着した200ml三ツ口フラスコに4−(12−ヒドロキシドデシルオキシ)ケイ皮酸10.8g(0.031モル)、N,N−ジメチルアニリン4.51g(0.0372モル)ハイドロキノンモノメチルエーテル少量およびテトラヒドロフラン60mlを加えて室温下に攪拌した。完溶せず懸濁状態であった。アクリル酸クロライド3.01ml(0.0372モル)を室温下攪拌しながら徐々に滴下した。滴下後70℃で10分間攪拌したが完溶しなかったのでN,N−ジメチルアセトアミド50mlを追添した。70℃で30分間攪拌したのち、更にアクリル酸クロライド0.75ml(9.3ミリモル)を追添し、70℃下20分間攪拌した。室温に冷却後、希塩酸水に注ぎ込み、析出した結晶を濾取し、アセトニトリルでかけ洗いした。
このものを別の100ml三ツ口フラスコに入れ、N,N−ジメチルアセトアミド30ml、およびトリエチルアミン3ml(0.022モル)を加えて、70℃下1.5時間攪拌した。これにより、一部副生したアクリロイル基へのHCl付加体を、アクリロイル体へ戻した。室温に冷却し、希塩酸水に注ぎ込み、析出した結晶を濾取した。メタノールでかけ洗いしたのち乾燥し、4−(12−アクリロイロキシドデシルオキシ)ケイ皮酸の白色結晶10.47g(収率84%)を得た。シリカゲル薄層クロマトグラフィー:ヘキサン/酢酸エチル=1/2展開で、Rf=0.5、1スポット。
NMRスペクトル(CDCl3):δ=7.73ppm(d,1H)、7.49ppm(d,2H)、6.90ppm(d,2H)、6.41ppm(q,1H)、6.32ppm(d,1H)、6.12ppm(q,1H)、5.82ppm(q,1H)、4.15ppm(t,2H)、4.02ppm(t,2H)、1.8〜1.2ppm(m,20H)。
【0062】
TP−30の合成
攪拌器を装着した100ml三ツ口フラスコに、メタンスルホニルクロライド0.30ml(3.84ミリモル)およびテトラヒドロフラン5mlを加えて−10℃に冷却した。4−(12−アクリロイロキシドデシルオキシ)ケイ皮酸1.55g(3.84ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン0.72ml(4.22ミリモル)をテトラヒドロフラン10mlに溶解した溶液を−10℃に冷却、攪拌しつつ、ゆっくりと滴下した。−10℃下に30分間攪拌を続けたのち、ジイソプロピルエチルアミン0.72ml(4.22ミリモル)およびN,N−ジメチルアミノピリジン47mg(0.384ミリモル)を添加し、次いでTP−9 0.30g(0.384ミリモル)をテトラヒドロフラン5mlに懸濁した液を添加した。添加後、室温にて2時間攪拌した。酢酸エチル/飽和食塩水で抽出、洗浄し、酢酸エチル相を分取し、無水硫酸ソーダで脱水、乾燥し、ハイドロキノンモノメチルエーテルを少量添加して減圧留去した。シリカゲルを固定相、メチレンジクロライド/酢酸エチル=20/1を移動相とするフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、更にメチレンジクロライド/酢酸エチル=5/2のち1/1を移動相とするフラッシュカラムクロマトグラフィーで更に精製した。極めて粘稠な透明液体のTP−20 0.52g(収率42%)を得た。NMRスペクトル(CDCl3):δ=8.77ppm(s,6H)、7.84ppm(d,6H)、7.55ppm(d,12H)、7.42ppm(d,12H)、7.18ppm(d,12H)、6.93ppm(d,12H)、6.51ppm(d,6H)、6.40ppm(q,6H)、6.13ppm(q,6H)、5.82ppm(q,6H)、4.17ppm(t,12H)、4.01ppm(t,12H)、1.8〜1.2ppm(m,120H)。
【0063】
1−6:TP−29の合成
4−(6−アクリロイロキシヘキシルオキシ)ケイ皮酸の合成
上記4−(12−アクリロイロキシドデシルオキシ)ケイ皮酸の合成と同様にして行なった。
TP−29の合成
上記、TP−30の合成と同様にして行なった。但し、フラッシュカラムクロマトグラフィーの移動相は、ヘキサン/酢酸エチル=2/1のち1/1。収率67%。NMRスペクトル(CDCl3):δ=8.78ppm(s,6H)、7.86ppm(d,6H)、7.57ppm(d,12H)、7.43ppm(d,12H)、7.19ppm(d,12H)、6.94ppm(d,12H)、6.53ppm(d,6H)、6.45ppm(d,6H)、6.15ppm(q,6H)、5.84ppm(d,6H)、4.19ppm(t,12H)、4.03ppm(t,12H)、1.8〜1.4ppm(m,48H)。
【0064】
実施例2(液晶化合物を含む組成物)
以下、本発明の液晶化合物を含む組成物の含率による相転移挙動の変化について説明する。
ガラス基板(サイズ25mm×25mm)上に配向膜としてポリアミック酸(日産化学(株)製SE−7210)を塗布し、180℃に焼成してポリイミド膜とした。これをラビング機によりラビングして、配向能を付与した。
次に、表1に示す割合で、本発明の液晶性化合物と他の有機化合物2種を混合し、これをメチルエチルケトンの10wt%溶液とし、上記配向膜上にスピンコーターにより1000rpmで塗布して乾燥させた。それをメトラー社製FP82HTホットステージ上で加熱しながら、その相変化挙動を偏光顕微鏡下の光学形態の変化から観察した。
その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
混合する有機化合物の構造を下記に示す。
【0067】
【化13】
【0068】
また、この表の配向化温度とは、配向膜上の組成物が塗布直後はほとんど無配向状態にあるが、ホットステージ上での加熱で、偏光顕微鏡のクロスニコル下、それまでの暗い視野が一様に明るく変化し、広範囲にモノドメインの一軸配向性を示し始める温度のことである。
表1に示すように、混合する有機化合物の組み合わせにより、ディスコティック液晶相を維持したままで、配向化温度を種々に変えられることがわかる。
実施例3(液晶性化合物を含む組成物による光学異方性材料)
以下、本発明の液晶化合物を含む組成物による光学異方性材料の作成法とその物性について説明する。
ポリエーテルサルフォンの100μm厚フィルム(住友ベークライト(株)製FS−1300、サイズ100mm×100mm)を基板とし、0.1μmのゼラチン下塗り層を設け、その上に配向膜としてポリアミック酸(日産化学(株)製SE−7210)を塗布し、180℃に焼成してポリイミド膜とした。
このポリイミド膜をラビング機によりラビングして配向能を付与した。
実施例2の表1に記載した液晶組成物LC−1、LC−8、LC−11を各々メチルエチルケトンに溶解し、10wt%の液をスピンコーターにより1000rpmで塗布し、ディスコティック液晶の無配向層を形成させた。これをフィルム状物A、B、Cとした。それらを各々所定の温度に加熱し配向させた後、急冷し、これらの光軸傾斜角度β及びΔn・dをエリプソメトリーで測定した。
測定には島津製作所製エリプソメーター(AEP−100)を透過モードにしてレタデーションの角度依存性を求め、その値から最適な3軸方向屈折率と光軸の方向を計算によって求めた。
フィルム状物A
TP−28は偏光顕微鏡観察によると、約225〜234℃でディスコティックネマティック相を形成する。そこで、表面温度240℃に加熱した金属ローラーにフィルム状物Aを支持体側から10秒間接触させ、その直後、表面温度230℃に加熱した金属ローラーに支持体側から30秒間接触させる。さらに連続して、表面温度20℃に調整した金属ローラーに10秒間接触させることにより、本発明の光学異方性材料を得た。このシートを偏光顕微鏡観察したところ、モノドメインの一軸配向、すなわちディスコティックネマティック相をとっていることが観察された。さらにエリプソメトリーの測定によって、光軸傾斜角度βは10°でΔn・d=145nmであった。
フィルム状物B
TP−29は偏光顕微鏡観察によると、約142〜155℃でディスコティックネマティック相を形成する。そこで、表面温度165℃に加熱した金属ローラーにフィルム状物Aを支持体側から50秒間接触させ、その直後、表面温度20℃に調整した金属ローラーに10秒間接触させることにより、本発明の光学異方性材料を得た。このシートを偏光顕微鏡観察したところ、モノドメインの一軸配向、すなわちディスコティックネマティック相をとっていることが観察された。さらにエリプソメトリーの測定によって、光軸傾斜角度βは15°でΔn・d=131nmであった。
フィルム状物C
表1に記載したLC−11は偏光顕微鏡観察によると、約114〜131℃でディスコティックネマティック相を形成する。そこで、表面温度120℃に加熱した金属ローラーにフィルム状物Aを支持体側から30秒間接触させ、その直後、表面温度20℃に調整した金属ローラーに10秒間接触させることにより、本発明の光学異方性材料を得た。このシートを偏光顕微鏡観察したところ、モノドメインの一軸配向、すなわちディスコティックネマティック相をとっていることが観察された。さらにエリプソメトリーの測定によって、光軸傾斜角度βは30°でΔn・d=127nmであった。
実施例4(TN型液晶表示素子の視野角拡大を目的とした位相差膜としての性能評価)
TACの127μm厚フィルム(富士タック、サイズ100mm×100mm)を基板とし、0.1μmのゼラチン下塗り層を設け、その上に配向膜として変性ポバールを塗布し、この膜をラビング機によりラビングして配向能を付与した。
実施例2の表1に記載した液晶組成物LC−11をメチルエチルケトンに溶解し、10wt%の液をスピンコーターにより1000rpmで塗布し、ディスコティック液晶の無配向層を形成させた。そこでフィルム状物Cと同様の方法すなわち、表面温度120℃に加熱した金属ローラーにそのフィルム状物を支持体側から30秒間接触させ、その直後、表面温度20℃に調整した金属ローラーに10秒間接触させることにより、本発明の光学異方性材料を得た。
このシートを偏光顕微鏡観察したところ、モノドメインの一軸配向、すなわちディスコティックネマティック相をとっていることが観察された。
次に、液晶の異常光と正常光の屈折率の差と液晶セルのギャップサイズの積が440nmで、ねじれ角が90度のTN型液晶セルに、上記のフィルム状物を装着し、液晶セルに対して0−5Vの30Hz矩形波におけるコントラストの角度依存性を大塚電子製LCD−5000によって測定した。コントラスト10の位置を視野角と定義し、上下左右の視野角を求めた。また、正面から見た時のコントラスト比を測定した。ここで、上記フィルムを全く装着しないTN液晶のみの測定値を併記した。結果を下表2に示す。尚、図4において矢印は位相差膜におけるラビング方向、また、液晶セルにおけるラビング方向を表している。
【0069】
【表2】
【0070】
上表から明らかなように、本発明の光学補償シートを設けたLCDにおいては、視野角特性の著しい改善が達成されている。
【0071】
【発明の効果】
本発明の液晶化合物またはその組成物は、湿式塗布・比較的低温加熱により、容易に一般の液晶配向膜上でモノドメイン性の一軸配向状態の薄膜を形成する。
この薄膜は光学的に異方性であり、液晶表示素子と共に用いることで位相差膜としてその視野角を改善することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】液晶セルに光が垂直に入射した場合の光の偏光状態を示した図である。
【図2】液晶セルに光が斜めに入射した場合の光の偏光状態を示した図である。
【図3】光学異方性材料の液晶表示素子用位相差膜への使用例を示した図である。
【図4】実施例における視角特性を測定した時の偏光版の偏光軸、液晶セルのラビング方向、光学異方性シート配向膜のラビング方向の関係を示した図である。
【符号の説明】
TNC:TN型液晶セル
A、B:偏光板
PA、PB:偏光軸
L0:自然光
L1、L5:直線偏光
L2:液晶セルを通った後の変調光
L3、L4:楕円偏光
LC:TN型液晶セルに十分に電圧を印加した時の液晶分子の配列状態
RF1、RF2:液晶表示素子用位相差膜
BL:バックライト
Claims (5)
- 下記一般式(I)で表わされるトリフェニレン誘導体。
一般式(I)
- 請求項1において、Ar1 、Ar2 、Ar3 、Ar4 、Ar5 およびAr6 が全てフェニル基であり、R11、R12、R13、R14、R15およびR16が全て同一であり、R21、R22、R23、R24、R25およびR26が全て同一であり、m1=m2=m3=m4=m5=m6であり、かつn1=n2=n3=n4=n5=n6であるところのトリフェニレン誘導体。
- 請求項2においてR11=R12=R13=R14=R15=R16=-OCO-(CH=CH)- p -(C6H4)-O-(CH2)-q OCOCH=CH2 であり、(ここにpは0又は1、qは1〜15の整数を表わす。)、m1=m2=m3=m4=m5=m6=1であり、かつn1=n2=n3=n4=n5=n6=0であるところのトリフェニレン誘導体。
- 請求項1、2または3に記載のトリフェニレン誘導体の少なくとも一つを含んで成る組成物。
- 請求項1、2または3に記載のトリフェニレン誘導体を含有する膜から成る光学異方性材料。
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