JP3955227B2 - ナット回転具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、吊りボルト等のボルト部材に螺合するナット部材を、ボルト部材に沿って移動させるための、ナット回転具に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、例えば、建物の天井等にケーブル等の配設物を配設するにあたって、吊りボルトなどのボルトが用いられていた。すなわち、ケーブルラックとかボックス等の支持具が、ボルトに、そのボルトに螺合するナットを用いて取り付けられ、そして、この支持具に、前記配設物が取り付けられた。ここで、ナットを、ボルトにおける、支持具が取り付けられる所定の位置まで移動させるために、例えば、登録実用新案第3037253号公報に示されるナット回転具が用いられた。かかるナット回転具20は、図9および図10に示されるように、電気ドリル21のチャックに取り付けられて、その電気ドリル21の駆動により回転するものであった。そして、このナット回転具20は、ナット23の外周面23aに押圧されるキャップ22を備えており、このキャップ22の回転によって、ナット23を、回転させてボルト24の軸方向に移動させていた。
【0003】
また、キャップ22は、前記電気ドリル21の駆動の正逆切替えにより、回転方向が反転し、その反転により、ナット23をボルト24に対して、締める方向と緩める方向のいずれの方向にも移動させることができた。なお、キャップ22には歯22aが設けられており、その歯22aは、キャップ22の回転中心Cを通る半径方向Dに、放射状に延設されていた(図10参照)。
【0004】
ところで、前記従来のナット回転具20においては、ナット23の締付のスピーディさが要求され、キャップ22の回転によるナット23の移動は高速であるのが望ましかった。しかし、ボルト24に対して高速に回転して移動するナット23を、ボルト24の所定位置にストップさせることは難しく、その所定位置を越えてしまい勝ちであった。そこで、キャップ22の回転方向を反転させることで、ナット23を所定位置に戻していた。しかし、このナット回転具20においては、ナット23の移動速度は、締める方向にも緩める方向にもほぼ同じであって、ナット23を所定位置に戻そうとすると、さらに所定位置を通過した位置まで戻されてしまうことも多く、ナット23を所定位置に配置することが困難であった。
【0005】
この発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ナット部材を、ボルト部材の所定位置に迅速に移動させることができる、ナット回転具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るナット回転具は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係るナット回転具は、ボルト部材に螺合するナット部材を、前記ボルト部材に沿って移動させるための、ナット回転具であって、モーターを備えた回転駆動手段によって回転する回転部材を備える。この回転部材は、軸部と、その軸部から外方に延出されるとともに前記ナット部材の外周面に当接してそのナット部材を回転させる複数の羽根部とを備える。そして、前記羽根部は、弾性を有して湾曲可能であって、前記回転部材の回転方向の違いにより、前記ナット部材の回転速度が変わるように、前記ナット部材の外周面に当接する少なくとも先端側が、前記回転部材の回転中心を通る半径方向に対して傾斜して延びている。
【0007】
これによれば、モーターを備えた回転駆動手段によって回転する回転部材は、複数の羽根部を備えており、その羽根部が、ナット部材の外周面に当接してそのナット部材を回転させる。そして、羽根部は、弾性を有して湾曲可能であって、前記ナット部材の外周面に当接する少なくとも先端側が、回転部材の回転中心を通る半径方向に対して傾斜して延びており、回転部材の回転方向の違いにより、ナット部材の回転速度が変わるようになっている。したがって、ナット部材の回転速度が速くなる側に、回転部材の回転方向を採ることで、ナット部材を所定位置の方向に素早く送ることが可能となる。そして、このとき、ナット部材が所定位置で止まることができず、その所定位置を越えた位置まで移動してしまった場合には、回転部材の回転方向を反対にすることで、ナット部材を戻すことができる。ここにおいて、ナット部材の回転速度は遅くなり、そのナット部材はゆっくり戻るので、そのナット部材は容易に所定位置に止められる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係るナット回転具のように、請求項1に記載のナット回転具において、前記羽根部の少なくとも先端側の前記傾斜の方向とは、反対となる方向が、前記回転部材の正転方向となって、前記回転部材の前記正転方向への回転による、前記ナット部材の回転速度が、相対的に速く、前記回転部材の前記正転方向とは反対の逆転方向への回転による、前記ナット部材の回転速度が、相対的に遅くなっていてもよい。こうして、羽根部の少なくとも先端側の傾斜の方向と反対となる方向が、回転部材の正転方向となっており、この正転方向に回転部材を回転させることで、ナット部材を、その所定位置の方向に素早く送ることができる。また、このとき、ナット部材が、その所定位置を越えた位置まで移動してしまった場合には、逆転方向に回転部材を回転させれば、ナット部材はゆっくり戻り、そのナット部材は容易に所定位置に止められる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係るナット回転具のように、請求項1または2に記載のナット回転具において、前記回転駆動手段を、前記ナット回転具自身に備えてもよい。これにより、回転駆動手段を、ナット回転具とは別に設ける必要がなく、この回転駆動手段を含めたナット回転具の取扱いが容易となる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係るナット回転具のように、請求項3に記載のナット回転具において、そのナット回転具は、そのナット回転具を持つために、手で握ることができる把持部を備え、その把持部は、前記回転部材を基準にして、前記ボルト部材側とは反対側に位置しているのが望ましい。これにより、把持部を握る手が、ボルト部材から離れることとなり、その手がボルト部材に接触するのを防ぐことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係るナット回転具の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1ないし図6は、本発明に係るナット回転具の一実施の形態を示す。図中符号1は、例えば、二重天井における上側の天井Tに吊り下げられた、ボルト部材としての吊りボルトである。2は、吊りボルト1に螺合する六角ナット等のナット部材であって、このナット部材2を用いて、天井Tに配設されるケーブルを支持するためのケーブル支持具(図示せず)が取り付けられる。3は、ナット部材2を吊りボルト1に沿って移動させるためのナット回転具である。
【0013】
ここで、ナット回転具3は、図1ないし図3に示すように、本体4と、この本体4に着脱可能に取り付けられる蓋5と、回転駆動手段6と、この回転駆動手段6によって回転する回転部材7と、吊りボルト1の周面1aに当接して、回転部材7がナット部材2の外周面2aに当接するように案内する、案内部(第一の案内部8および第二の案内部9)とを備える。
【0014】
本体4は、例えば、正面視において、台形状の中空状体からなり、向かって左側が把持部Gとなっており、本体4の下部中央付近に明けられた指入れ部G1に、指を入れるようにして、その把持部Gを手で握ることで、本体4を容易に持つことができるように形成されている。すなわち、ナット回転具3は、そのナット回転具3を持つために、手で握ることができる把持部Gを備えており、その把持部Gは、後に詳述する回転部材7を基準にして、前記吊りボルト1側とは反対側に位置している。そして、この把持部Gの内部は、後述する回転駆動手段6を構成する電池K、Kを収納する、電池収納空間10となっている。そして、この電池収納空間10の上方には、電池K、Kを出し入れするための第一の開口10aが形成されている。また、本体4の向かって右側の内部は、前記回転部材7を収納する回転部材収納空間11となっている。この回転部材収納空間11の上方には、回転部材7を出し入れするための第二の開口11aが形成され、右側方には、第二の開口11aと連続する第三の開口11bが形成されている。この第三の開口11bの高さ方向の寸法Hは、回転部材収納空間11の高さ方向の寸法と同じ寸法となっている。そして、本体4の上部正面には、後述するスイッチ操作部6bが取り付けられており、また、本体4の上部中央には、蓋5を着脱可能に取り付けるために、雄ネジ12に螺合するナット12aが埋設されている。
【0015】
蓋5は、前記本体4の電池収納空間10および回転部材収納空間11の開口10a、11aを塞ぐものである。この蓋5は、その下方から上方に向かって延びるように形成された差し込み孔5aを備えており、この差し込み孔5aに、後述する回転部材取付棒13の先端部13aが差し込まれるようになっている。そして、この蓋5は、本体4のナット12aにねじ込まれる雄ネジ12を介して、その本体4に着脱可能に取り付けられる。
【0016】
回転駆動手段6は、例えば、モーター6aと、スイッチ操作部6bと、モーター6aの電源となる電池K、Kとを備えている。スイッチ操作部6bは、モーター6aの回転方向、つまりは、回転部材7の回転方向を、正転方向E(図示実施の形態においては、右回り方向)と、その正転方向とは反対の逆転方向(図示実施の形態においては、左回り方向)とに切り替える操作と、回転停止操作とを行うためのスイッチである。また、モーター6aは、その軸6cが、前記本体4の回転部材収納空間11に下方から突き出るようにして配備されており、その軸6cには、回転部材7を取り付けるための回転部材取付棒13が固定される。この回転部材取付棒13は、その先端部13aのみが径小の円柱状に形成され、他は径大の多角形状、例えば、六角形状に形成されている。そして、この回転部材取付棒13は、その先端部13aが、蓋5の差し込み孔5aに差し込まれて、モーター6aおよび蓋体5によって回転可能に支持されている。また、電池K、Kは、本体4の電池収納空間10に直列接続されるようにして収納されており、これら電池K、Kは、蓋5を本体4から取り外すことで、取り換え交換が可能となる。なお、図示実施の形態においては、本体4の背面には、電源ケーブル(図示せず)を接続するためのケーブル接続部6dが配備されている。したがって、そのケーブル接続部6dに電源ケーブルを接続することで、モーター6aの電源に外部電源を用いることができる。
【0017】
回転部材7は、例えばゴムあるいは軟質合成樹脂等からなる。そして、回転部材7は、軸部7aと、その軸部7aから外方に延出されるとともに前記ナット部材2の外周面2aに当接してそのナット部材2を回転させる複数の羽根部7b、7bとを備えている。この羽根部7bは、弾性を有して湾曲可能であって、回転部材7の回転方向の違いにより、ナット部材2の回転速度が変わるように、ナット部材2の外周面2aに当接する少なくとも先端側が、回転部材7の回転中心Cを通る半径方向Dに対して傾斜して延びている。詳細には、羽根部7bの少なくと先端側の前記傾斜の方向とは、反対となる方向が、回転部材7の前記正転方向Eとなっている(図6参照)。そして、回転部材7の正転方向Eへの回転による、ナット部材2の回転速度が、相対的に速く、回転部材7の正転方向Eとは反対の逆転方向への回転による、ナット部材2の回転速度が、相対的に遅くなっている。
【0018】
具体的には、軸部7aは、円筒状に形成されている。また、羽根部7bは、その全体が、回転部材7の回転中心Cを通る半径方向Dに対して傾斜して延びている。より具体的には、羽根部7bは、その全体が、回転部材7の回転中心Cを通る半径方向Dに対して傾斜して真直ぐ延びている。しかも、羽根部7bは、軸部7aの軸方向にも真直ぐ延びており、全体が平板状に形成されている。また、これら羽根部7b、7bは、高さ方向の寸法H1が、第三の開口11bの高さ方向の寸法Hよりもやや短い寸法で形成されている。また、軸部7aにおける、その中心部分を軸方向に貫通する貫通孔7cは、回転部材取付棒13を差し込むことができるように、上部を除くその下方部分が、回転部材取付棒13の形状に対応するような断面が多角形状、例えば、断面六角形状に形成されている(したがって、図示実施の形態においては、回転部材7の軸部7aに回転部材取付棒13を差し込んでも、回転部材取付棒13の先端部13aを除く部分の断面が六角形状になっていることから、回転部材7は、回転部材取付棒13の回転を確実に受けて回転できる。)。そして、この回転部材7は、回転部材取付棒13に取り付けられることで、前記本体4の回転部材収納空間11に回転可能に収納されている。そして、この回転部材収納空間11に収納された回転部材7は、前記第三の開口11bを通して、外部に露出している(図2および図6参照)。なお、回転部材7は、蓋5を本体4から取り外すことで、取り換え交換が可能となっている。
【0019】
第一の案内部8は、本体4の第三の開口11bの真下で、右側方に向かって突設された第一板部8aを、右側から半楕円状に窪むようにして形成された凹部からなる。また、第二の案内部9は、蓋5の右側方に向かって突設された第二板部9aと、蓋5の右側部5bとを、右側から半楕円状に窪むようにして形成された、上下に延びる凹部(図示実施の形態においては、上下に延びる溝になっている)からなり、かつ、第一の案内部8の真上に位置する。すなわち、第一の案内部8と第二の案内部9は、上下に並ぶように配備されるとともに、回転部材7を挟む両側に配備されることになる。また、第一および第二の案内部8、9は、平面視半楕円状の凹部からなるので、これら案内部8、9を前記吊りボルト1の周面1aに当接させることで、案内部8、9が、回転部材7の羽部部7b、7bの先端側を吊りボルト1に螺合するナット部材2の外周面2aに当接するように案内する。また、これら第一および第二の案内部8、9を、その最も奥側で吊りボルト1の周面1aと当接させることで、吊りボルト1のほぼ半径方向のほぼ半分を案内部8、9の凹部に入れることができる(図5および図6参照)。
【0020】
次に、以上の構成からなるナット回転具3の、使用方法について説明する。第一の案内部8および第二の案内部9を、ボルト部材としての吊りボルト1の周面1aに当接させる。これにより、回転部材7の羽根部7b、7bの先端側は、吊りボルト1に螺合するナット部材2の外周面2aに当接するように案内される。そして、スイッチ操作部6bを、回転部材7の回転方向が正転方向Eとなる正転側に操作すると、ナット部材2の外周面2aに当接するとともにモーター6aによって正転方向E(右回り方向)に回転させられる回転部材7の羽根部7b、7bの回転を受けて、ナット部材2が、回転部材7の回転方向とは逆の方向(左回り方向)に回転する。そして、このナット部材2の回転により、ナット部材2は、このナット部材2が螺合する吊りボルト1に沿って一方(上方)に移動する。このとき、このナット回転具3の第一の案内部8および第二の案内部9を、吊りボルト1の周面1aに当接させながら、ナット回転具3を、ナット部材2が吊りボルト1に沿って移動する方向(上方)に動かすことにより、吊りボルト1に沿って移動するナット部材2に、回転部材7を追従させることができる。なお、ナット部材2を吊りボルト1に沿って他方(下方)に移動させるには、スイッチ操作部6bを逆転側に操作するとよい。
【0021】
次に、この一実施の形態に示すナット回転具3の作用効果について説明する。このナット回転具3によれば、回転駆動手段6によって回転する回転部材7は、複数の羽根部7b、7bを備えており、その羽根部7bが、吊りボルト1に螺合するナット部材2の外周面2aに当接してそのナット部材2を回転させる。そして、羽根部7bは、弾性を有して湾曲可能であって、ナット部材2の外周面2aに当接する少なくとも先端側が、回転部材7の回転中心Cを通る半径方向Dに対して傾斜して延びており、回転部材7の回転方向の違いにより、ナット部材2の回転速度が変わるようになっている。したがって、ナット部材2の回転速度が速くなる側に、回転部材7の回転方向を採ることで(すなわち、回転部材7を正転方向Eに回転させることで)、ナット部材2を所定位置の方向に素早く送ることが可能となる。そして、このとき、ナット部材2が所定位置で止まることができず、その所定位置を越えた位置まで移動してしまった場合には、回転部材7の回転方向を反対にすることで(すなわち、回転部材7を逆転方向に回転させることで)、ナット部材2を戻すことができる。ここにおいて、ナット部材2の回転速度は遅くなり、そのナット部材2はゆっくり戻るので、そのナット部材2は容易に所定位置に止められる。このように、回転部材7における羽根部7bが、その回転部材7の回転中心Cを通る半径方向Dに対して傾斜して延びることで、ナット部材2の送りと戻りの速度を変え、そして、その速度の違いによって、ナット部材2を、吊りボルト1の所定位置に迅速に移動させることができる。
【0022】
なお、回転部材7における正転方向Eとは、ナット部材2の回転速度を相対的に速くする方向であって、図示実施の形態においては、羽根部7bの少なくとも先端側の傾斜の方向とは、反対となる方向である。そして、回転部材7における逆転方向とは、ナット部材2の回転速度を相対的に遅くする方向であって、図示実施の形態においては、羽根部7bの少なくとも先端側の傾斜の方向と同一の方向である。すなわち、回転部材7が、羽根部7bの少なくとも先端側の傾斜の方向とは反対の方向となる、正転方向Eに回転すると、ナット部材2に当接した羽根部7bが、その傾斜の方向に容易に撓み、羽根部7bにかかる負荷が小さくなり、したがって、モーター6a(回転駆動手段6)の出力が一定であっても、ナット部材2の回転速度は相対的に速くなる。そして、回転部材7が、羽根部7bの少なくとも先端側の傾斜の方向と同一の方向となる、逆転方向に回転すると、ナット部材2に当接した羽根部7bが、その傾斜の方向とは反対の方向に無理に撓み、羽根部7bにかかる負荷が大きくなり、したがって、モーター6a(回転駆動手段6)の出力が一定であっても、ナット部材2の回転速度は相対的に遅くなる。また、このことから、羽根部7bが傾斜して延びていると、羽根部7bが放射状に延びる場合と比べて、回転部材7の前記正転方向Eの回転によるナット部材2の回転速度は速くなるので、ナット部材2を所定位置の方向に素早く送ることができる。
【0023】
また、ナット回転具3は、そのナット回転具3自身に、回転駆動手段6を備えているので、この回転駆動手段6を、ナット回転具3とは別に設ける必要がない。したがって、この回転駆動手段6を含めたナット回転具3の取扱いを容易にすることができる。また、ナット回転具3の把持部Gは、回転部材7を基準にして、吊りボルト1側とは反対側に位置しているので、把持部Gを握る手が、吊りボルト1から離れることとなり、その手が吊りボルト1に接触するのを防ぐことができる。したがって、ナット回転具3の操作性を向上させることができる。
【0024】
また、ナット回転具3の第一の案内部8および第二の案内部9を、回転部材7を挟む両側で、吊りボルト1の周面1aに当接させることにより、回転部材7の羽根部7bが、吊りボルト1に螺合するナット部材2の外周面2aに確実に当接するように案内される。したがって、このナット部材2の外周面2aに当接する羽根部7bによって、ナット部材2を確実に回転させることができる。その上、羽根部7bにおける先端側が、そのナット部材2の外周面2aに当接するので、この回転部材7は、ナット部材2の、吊りボルト1に沿う移動を妨げることがない。しかも、羽根部7bは、弾性を有して湾曲可能となっているので、ナット部材2の外周面2aに確実に当接し、そのナット部材2を確実に回転させることができる。また、羽根部7bは、ナット部材2の外周面2aに当接する少なくとも先端側(特に先端側を含む全体)が、回転部材7の回転中心Cを通る半径方向Dに対して、その回転部材7の正転方向E(図示実施の形態においては、右回り方向)とは反対方向に傾斜して延びているので、回転部材7が正転方向に回転する場合に、羽根部7bの先端側がナット部材2の外周面2aに当接する際の抵抗が小さくなり、回転部材7の回転に必要な力を小さくすることができる。
【0025】
また、ナット回転具3の第一および第二の案内部8、9を、回転部材7の両側で、吊りボルト1の周面1aに当接させた状態で、そのナット回転具3を、ナット部材2が吊りボルト1に沿って移動する方向に動かすことができる。これにより、吊りボルト1に沿って移動するナット部材2に、そのナット部材2を回転させる回転部材7を追従させて、ナット部材2を確実、かつ、容易に移動させることができる。また、第一および第二の案内部8、9が平面視半楕円状の凹部からなるので、それら案内部8、9が吊りボルト1の周面1aに当接することで、吊りボルト1を容易にその中央に案内することができるとともに、ナット回転具3のがたつきを抑えて、回転部材7をナット部材2から外れにくくすることができる。しかも、第一および第二の案内部8、9が凹部からなることで、ナット回転具3の、移動させる際のがたつきを抑えることができ、吊りボルト1に沿って移動するナット部材2に、回転部材7を容易に追従させることができる。このように、案内部8、9は、吊りボルト1の周面1aに当接してこのナット回転具3のがたつき(吊りボルト1の延びる方向に対して直交する横方向のがたつき)を抑えるとともに、吊りボルト1の周面1aに当接した状態でこのナット回転具3を吊りボルト1に沿って移動させた際のナット回転具3のがたつき(吊りボルト1の延びる方向に対して直交する横方向のがたつき)を抑えることができる凹部となっている。もっとも、羽根部7bの高さ寸法H1の範囲内であれば、ナット回転具3を、ナット部材2が吊りボルト1に沿って移動する方向に動かすことなく、ナット部材2を吊りボルト1に沿って移動させることができる。
【0026】
なお、本発明に係るナット回転具3は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、回転駆動手段6は、ナット回転具3自身に備わっていなくとも、ナット回転具3とは別に設けられていてもよい。その一例として、ナット回転具3が、回転部材7と回転部材取付棒13とからなり、この回転部材取付棒13が、回転駆動手段となる電気ドリル等に取り付けられてもよい。
【0027】
また、第一の案内部8および第二の案内部9は、平面視半楕円状に窪む凹部からなる必要がなく、例えば、半円形状、四角形状あるいは長方形状その他の形状に窪む凹部であってもよい。また、第一の案内部8および第二の案内部9は、凹部以外の案内部、例えば、可撓性を有する板部に明けられた孔部であってもよい。この場合、板部に、外部と孔部とを連通させるスリットを設けて、そのスリットから吊りボルト1を孔部に通して、この孔部を吊りボルト1の周面1aに当接させる。これにより、ナット回転具3が吊りボルト1から外れにくくなり、したがって、回転部材7がナット部材2から外れにくくなる。
【0028】
また、案内部8、9は、回転部材7を挟む両側に配備されなくとも、図7に示すように、本体4に設けられた第一の案内部8だけであってもよい。このように案内部が一つだけの場合、第一の案内部8を上下に長くすることで、この第一の案内部8だけでも、ナット回転具3のがたつきを抑え、かつ、ナット回転具3の、ナット部材2が吊りボルト1に沿って移動する方向に移動させる際のがたつきを抑えることができる。また、図7に示すように、吊りボルト1の下端部にナット部材2が螺合するような場合には、このナット回転具3の上下を反対にして使用することにより、ナット部材2を移動させる際に、案内部8を吊りボルト1の周面1aに当接させることができる。もっとも、ナット回転具3は、第二の案内部9だけを配備したものであってもよい。また、ナット回転具3に、第一の案内部8および第二の案内部9に加えて他の案内部を配備してもよい。
【0029】
また、羽根部7bは、図8に示すように、右上がりでねじ曲がるように、軸部7aから外方に延出されるものであってよい。これにより、回転部材7が右回り方向に回転する場合には、羽根部7aがナット部材2を押し上げるようにして回転することとなり、ナット部材2を吊りボルト1に沿って容易に上方に移動させることができる。そして、回転部材7が左回り方向に回転する場合には、羽根部7aがナット部材2を押し下げるようにして回転することとなり、ナット部材2を吊りボルト1に沿って容易に下方に移動させることができる。
【0030】
また、ボルト部材は、吊りボルト1以外のボルト、例えば、アンカーボルトであってもよく、また、そのボルト部材に螺合するナット部材2は、六角ナット以外のナット、例えば、四角ナットその他のナットであってもよい。
【0031】
【発明の効果】
請求項1または2に記載されたナット回転具によれば、回転部材における羽根部が、その回転部材の回転中心を通る半径方向に対して傾斜して延びることで、ナット部材の送りと戻りの速度を変えることができ、その速度の違いによって、ナット部材を、ボルト部材の所定位置に迅速に移動させることができる。
【0032】
また、請求項3に記載されたナット回転具によれば、加えて、回転駆動手段を、ナット回転具とは別に設ける必要がなく、この回転駆動手段を含めたナット回転具の取扱いを容易にすることができる。
【0033】
また、請求項4に記載されたナット回転具によれば、加えて、把持部を握る手が、ボルト部材に接触するのを防ぐことができ、このナット回転具の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係るナット回転具の一実施の形態の、正面図である。
【図2】 同じく、ナット回転具の右側面図である。
【図3】 同じく、ナット回転具の分解正面図である。
【図4】 同じく、回転部材の斜視図である。
【図5】 同じく、図1におけるA−A矢視図である。
【図6】 同じく、図5における、一部を破断した平面図である。
【図7】 この発明に係るナット回転具の他の実施の形態の、図1相当図である。
【図8】 この発明に係るナット回転具のさらに他の実施の形態の、回転部材の正面図である。
【図9】 従来のナット回転具の、正面図である。
【図10】 同じく、拡大平面図である。
【符号の説明】
1 吊りボルト(ボルト部材) 2 ナット部材
2a 外周面 3 ナット回転具
6 回転駆動手段 6a モーター
7 回転部材
7a 軸部 7b 羽根部
C 回転中心 D 半径方向
E 正転方向 G 把持部
Claims (4)
- ボルト部材に螺合するナット部材を、前記ボルト部材に沿って移動させるための、ナット回転具であって、
モーターを備えた回転駆動手段によって回転する回転部材を備え、
前記回転部材は、軸部と、その軸部から外方に延出されるとともに前記ナット部材の外周面に当接してそのナット部材を回転させる複数の羽根部とを備え、
前記羽根部は、弾性を有して湾曲可能であって、前記回転部材の回転方向の違いにより、前記ナット部材の回転速度が変わるように、前記ナット部材の外周面に当接する少なくとも先端側が、前記回転部材の回転中心を通る半径方向に対して傾斜して延びていることを特徴とするナット回転具。 - 前記羽根部の少なくとも先端側の前記傾斜の方向とは、反対となる方向が、前記回転部材の正転方向となって、
前記回転部材の前記正転方向への回転による、前記ナット部材の回転速度が、相対的に速く、前記回転部材の前記正転方向とは反対の逆転方向への回転による、前記ナット部材の回転速度が、相対的に遅くなっていることを特徴とする請求項1に記載のナット回転具。 - 前記回転駆動手段を、前記ナット回転具自身に備えてなることを特徴とする請求項1または2に記載のナット回転具。
- 前記ナット回転具は、そのナット回転具を持つために、手で握ることができる把持部を備え、その把持部は、前記回転部材を基準にして、前記ボルト部材側とは反対側に位置していることを特徴とする請求項3に記載のナット回転具。
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