JP3955094B2 - 人工生体器官の貯蔵および運搬のための装置および方法 - Google Patents

人工生体器官の貯蔵および運搬のための装置および方法 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、人工生体器官(「BAO」)を貯蔵および運搬する装置および方法に関する。本発明の装置は、BAOが適切な培養状態下に維持されるようにBAOを含むように設計されている。このことは、受容者への移植までBAOの生存性および無菌性を保証する。さらに、本発明の装置は、運搬中にBAOへのダメージを最小にするように設計されている。
発明の背景
BAOは、受容者内への移植用に設計され得る、または体外で機能するようになされ得る装置である。BAOは、生物学的活性な分子を生成する、または個体に必要な生物学的機能を提供する生細胞または組織を含む。概して、BAOはまた、栄養素の細胞への拡散を可能にし、且つ分泌された細胞生成物および廃棄物質を細胞から拡散していくことを可能にする半透膜をも含む。いくつかの場合には、膜はまた、免疫学的拒絶反応の細胞および分子エフェクターを阻止することにより、細胞を免疫単離するようにも作用し得る。免疫単離膜の使用は、アロおよび異種間の細胞を免疫抑制を用いることなく個体に移植することを可能にする。生物学的活性な分子が単離された細胞から放出される場合、分子は周囲の半透膜を通過して受容者の体内に入る。単離された細胞により代謝機能が提供される場合、代謝されるべき物質は、受容者の体内から膜を介してBAOに入り、細胞により作用される。
BAOの構築に、様々な膜が用いられてきた。概して、BAOで用いられる膜は、微孔性または限外濾過グレード膜のいずれかである。PAN/PVC、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリビニルジエン、およびポリスチレンを含む様々な膜材料が、BAO内で用いることを提案されている。代表的な膜構造は、平坦なシートを含む。平坦なシートは、2つの本質的に平面状の膜の間に生細胞の層を有してデバイスの周縁にシールが形成される、「サンドイッチ」タイプの構造に製造される。また、中空ファイバデバイスは、生細胞が管状膜の内部に設けられる場合に用いられ得る。中空ファイバBAOは、中空ファイバの管腔内に生細胞を充填しファイバの端部にシールを供給することにより段階的に形成され得る。中空ファイバBAOはまた、生細胞が細胞周りに膜を形成するポリマー溶液と共に押し出し成形される共押し出し成形プロセスにより形成され得る。
BAO内で有用な膜に共通な本来の特徴は、比較的壁が薄く多孔性であることである。これらの膜は、脆弱である傾向があり、BAOの製造およびそれに続く処理、運搬、および移植中にダメージを受け得る。
BAOは、例えば、参考のためここに援用される米国特許第4,892,538号、5,106,627号、5,156,844号、5,158,881号および5,182,111号、並びにPCT国際出願PCT/US/ 94/07015号およびWO 92/19195号に記載されている。また、PCT国際公開公報WO 93/03901号およびWO 91/00119号も参照されたい。
生細胞および半透膜に加えて、BAOはまた、他のコンポーネントも含み得る。例えば、PCT国際公開公報WO 92/19195号は、細胞の生存性を向上させるヒドロゲルマトリクスを有し且つデバイスの退避を補助するテザー(tether)を有する移植可能免疫単離生体適合性ビヒクルを開示している。PCT国際公開公報WO 91/00119は、複数の細胞含有管状膜を連結する外部サポートを有する細胞含有膜移植片を開示している。PCT国際公開公報WO 93/21902は、剛性または半剛性のサポート構造を有する移植可能デバイスを教示している。PCT国際出願US 94/07015は、細胞導入を容易にし且つ信頼性のある細胞密シールを提供するポートを有する移植可能デバイスを教示している。米国特許第5,002,661号は、マトリクス内に懸濁された生細胞を含むハウジングを有する血管内人工膵臓パーフュージョンデバイスを教示している。
移植可能BAOは、受容者に以下の2つの方法のうちの1つで導入され得る。(1)空のBAO半透膜デバイスを移植し、次いで生細胞をインサイチュ添加する。または(2)予め充満された細胞含有デバイスを移植する。多くの場合、後者の方法が望ましい。理由は、一部には、インサイチュ充満の場合、潜在的移植部位は容易にアクセス可能でないことがあり得るからである。予め充満されたデバイスの性能はまた、インビトロでも容易に特徴づけられ得る。しかし、予め充満されたデバイスの貯蔵および運搬は、多くの問題を提供する。
第1に、BAOは、一旦製造されると、BAOが移植されるときまで、細胞の生存性とデバイスの無菌性を保証するために、適切な培養状態下に維持されなければならない。実際、BAOが移植前に機能的であり無菌であることを保証するためには、デバイスは、何日間もの期間保持されテストされなければならない。十分なテストは、約17〜24日間の保持を必要とする。しかし、たとえ短期間よりもほんの少し長い期間(例えば、1週間)保持するとしても、BAOを取り囲む流体培地を定期的に補充して栄養素の新鮮な源を供給し且つカプセル化された細胞から廃棄物を除去するようにすることが必要である。さらに、流体培地は、細胞の生存性を維持するために、酸素を含む十分な溶存気体を必要とする。栄養素および他のBAOの必要要件は、カプセル化される細胞のタイプ、細胞の代謝活性、並びに細胞の数および充填密度を含む、多くの要因に依存することが認識される。
例えば、ウシ副腎クロム親和性細胞が、慢性的な痛みの治療のために、ヒトの被検体に移植するBAO内で用いられてきた。Aebischerら、"Transplantation in Humans of Encapsulated Xenogeneic Cells Without Immunosuppression"、Transplantation、vol. 58、1275-77頁(1994)。これらのBAOは、ノルエピネフリン、メット−エンカファロン、オクタペプチド、およびエピネフリンを含む、いくつかの鎮痛性化合物を分泌することが示されている。BAOは、血清を含まない培養培地中で、保持期間中インキュベートされる。鎮痛性物質の放出能力を維持するために、約12日後に培地を補充することが必要である。典型的には、補充後、BAOが無菌を維持していることを保証するために、3日間の保持が行われる。BAOは、15日目の後に出荷のために除去されて20日目以内に出荷され得る。20日目に、培地は再び補充されなければならず、無菌性をチェックするために再び3日間の保持が行われる。その結果、BAOのいずれの貯蔵システムも、BAOを供給する貯蔵培地に対する容易なアクセスを可能にする。
予め充満されたBAOを用いることに伴う別の問題は、それらが用いられる場所で製造されるわけではないため、BAOを移植場所まで運搬することが必要であるということである。例えば、本発明がなされる前は、BAOはしばしば、フラスコまたはポリプロピレンのスクリューキャップチューブなどの標準の実験室容器に入れて移植場所まで手で運搬されていた。BAOはカプセル化する膜が多孔性であるということに主に起因して多少脆弱であるため、標準の実験室容器に入れて運ばれる間にBAOがダメージを受けることが時々目撃されてきた。
生体器官および組織の貯蔵および運搬用に、様々な梱包システムが記載されてきた。例えば、TuboのPCT国際公開公報WO 91/18575(「Tubo」)、およびKrasnerののPCT国際公開公報WO 91/03934(「Krasner」)を参照のこと。Tuboは、培養された上皮性巻き包帯(wound dressing)の貯蔵および運搬用容器を記載している。容器は、炭酸水素ナトリウム培地中の巻き包帯をサポートする予め滅菌されたハウジングと、ハウジングに対する気密シールを有するカバーとを含む。Tuboにおいて、炭酸水素ナトリウム培地が適切なpHを維持するために10% CO2を必要とするため、気密シールは必要不可欠である。
Krasnerは、切断された肢などの生体器官の貯蔵および運搬、並びに骨移植材料の貯蔵および運搬のための容器を記載している。Krasnerにおいて、生体器官または骨移植材料は、保存溶液の貯蔵部に吊り下げられたネットまたはバスケット内に落とされる。生体器官または骨移植材料は、運搬中の容器との不当な接触を防止するように容器内に安定的に取り付けられているわけではない。
Bowmanらの米国特許第4,736,850号は、切除された静脈からの細胞を収集するキットを記載している。細胞収集キットは、切除された静脈とともに細胞収集に必要なコンポーネントをサポートする3つの内部トレイを有する梱包容器を含む。キットは、流体培地を保持する場合も切除された静脈を貯蔵する場合も短期間を越えた期間保持するようには設計されていない。さらに、切除された静脈は、運搬中の容器との不当な接触を防止するように梱包容器内に安定的に取り付けられているわけではない。
BAOの細胞含有部分を空気に曝すことは、慎重に制御されることが重要である。BAOの空気への露出が長すぎると、デバイスが乾燥し、細胞の生存性にとって有害になり得る。好適には、BAOは貯蔵および運搬装置の方位にかかわらず、装置内に安定的に取り付けられた状態で流体培地に完全に浸漬される。
実質的にBAOの完全性、無菌性、および細胞の生存性を損なうことなく、BAOを貯蔵し運搬する装置の必要性がある。
発明の要旨
本発明は、BAOの完全性、無菌性および細胞の生存性を実質的に維持する、BAOの貯蔵および運搬装置および方法を提供する。装置は、1以上のBAOを適切な量の培地内に浴する培地貯蔵容器と、好適にはBAOの方位にかかわらずBAOが液体培地中に浸漬されたままであるように、培地貯蔵容器内に培地を安定的に保持する手段と、実質的に流密シールを提供するように設計された、培地貯蔵容器をシールする手段とを含む。安定取付手段は、不当な乱れ又は培地貯蔵容器の他の部材との物理的接触により起こる、BAOに対するダメージを防止するように設計されている。
BAOが流体培地中に短期間(すなわち、約1週間)より長い間保持されるべき場合、装置は、好適には、BAO中の細胞の生存性を維持するために、培地交換手段と気体交換手段とを有する。流体交換手段は、新鮮な培地の提供および破棄物の除去を可能にし、気体交換手段は、BAO中に生細胞を維持するための培培地への酸素の導入を可能にする。
装置はまた、必要に応じて、培地貯蔵容器を取り囲む第2の容器を含む。第2の容器の使用は、培地貯蔵容器の取り扱いを最小にし、そのため、BAOの無菌性が損なわれ得る危険性を減少させる。第2の容器はまた、移植時に無菌フィールドに人工生体器官を導入することを容易にする。
【図面の簡単な説明】
図1は、好適なBAO貯蔵および運搬装置を示す。装置は、培地貯蔵容器10およびキャップ12を含む。また第2の容器100および第2のキャップ102も示されている。
図2は、第2の容器100および第2のキャップ102内に収容された培地貯蔵容器10およびキャップ12を含むBAO貯蔵および運搬装置の断面図を示す。
図3は、培地貯蔵容器10およびキャップ12の別の実施の形態を含むBAO貯蔵および運搬装置を示す。
図4は、BAOを保持する培地貯蔵容器10および安定取付手段20の上面図を示す。
図5は、出荷中のBAO貯蔵および運搬装置内での凝縮に対する、温度および時間の影響を示す。
発明の詳細な説明
本発明がより完全に理解され得るために、以下に詳細な説明を行う。
本発明は、BAOの貯蔵および運搬用装置および方法を提供する。概して、装置は、ある量の流体培地を保持する培地貯蔵容器、培地貯蔵容器内にBAOを安定的に取り付ける手段、および実質的に流密なシールを提供するように設計された培地貯蔵容器をシールする手段を含む。好適な実施の形態は、さらに、BAO中の細胞の生存性を維持する培地交換手段および気体交換手段を含む。
装置はまた、必要に応じて、培地貯蔵容器を取り囲む第2の容器を含む。好適には、第2の容器は、内部容器(培地貯蔵容器)の交換手段にアクセスする手段を有する。さらに、第2の容器は、第2の容器の内部からの水分を外部の空気と交換して第2の容器内部の湿気の過剰な蓄積を防止するようにする手段を有する。
より特定すると、本発明のBAO貯蔵および運搬装置は、培地貯蔵容器10およびキャップ12を含む。典型的には、培地貯蔵容器10は、培地交換を容易にするウェル14を有する。ウェル14は、培地貯蔵容器10の底部周りに形成された樋および/または底部の低いスポットを含む、任意の適切な設計を有し得る。このようなウェルまたは低いスポットの存在は、培地貯蔵容器10が不注意で上下逆に運搬または貯蔵された場合に、BAOから気泡が直接抜けるチャネルを提供する。好適には、培地収集ウェル14は、BAOがいずれの培地交換工程中にもダメージを受けないことを保証するために、脆弱なBAO半透膜から離れた位置に載置されるべきである。
1つの実施の形態において、培地貯蔵容器10は、凸形ベース16を有する。さらに、ベース16の周囲は、培地貯蔵容器10の底部周囲にウェルまたは樋14を形成する。
培地貯蔵容器10内にBAOを安定的に取り付ける安定取付手段20は、培地貯蔵容器10の内部またはキャップ12の底部に取り付けられ得る。安定取付手段はまた、培地貯蔵容器10に適合するインサートを含む。好適には、安定取付手段20は、ベース16に取り付けられる。通常の動作条件下において、安定取付手段20は、BAOを流体培地内に浸漬された状態に保持して、BAOが、安定取付手段20以外のシステムコンポーネントと不当に接触しないようになっている。
いずれの適切な安定取付手段もが、BAOを安定的に取り付けるために用いられ得る。当業者であれば、安定取付手段20の正確な設計は、BAOの設計に応じて変化することを理解する。
上述したように、BAOは、半透膜内にカプセル化された生細胞または組織を含むデバイスである。膜は、1つの細胞コンパートメントまたは複数のコンパートメントを形成するために、キャップ、糊または熱シールなどの様々な方法でシールされ得る。さらに、BAOはまた、シールされた端部に取り付けられたテザーなどの、移植後のデバイスを取り除く手段を有し得る。
好適には、安定取付手段20は物理的にBAOの半透膜部分を圧迫しない。安定取付手段は、テザー、サポート、シールまたはコネクタなどのBAOの非膜部分でBAOに接触することが意図される。
安定取付手段20は、BAO上の実質的に非制限の流体培地の流れを提供し、そのことが、栄養素および廃棄物の自由な交換を可能にする。好適には、安定取付手段20が、BAOが培地中で自由に浮遊することを可能にする。
図1および図2に示す好適な実施の形態において、安定取付手段は、プロング20およびポスト22を含む。図示するように、プロング20およびポスト22は、培地貯蔵容器10のベース16に取り付けられている。プロング20およびポスト22は、様々なサイズのBAOを収容するために、ベース16上に位置づけられ得ることが意図される。
好適な実施の形態において、プロング20およびポスト22は、キャップに取り付けられたテザーを有するハブシール(hub-sealed)取付具で一端を覆われたBAOと係合するように設計されている。ハブシールされたBAOは、PCT/US 94/07015で教示している。ハブシールされたBAOは、BAOの非膜部分(例えば、ハブシールされたキャップ)がプロング20の外表面に突き当たるように、テザーをプロング20内に位置づけ、次いでポスト22周りにテザーを巻回することにより安定的に取り付けられる。このようにBAOは、一端でのみ安定的に取り付けられ、脆弱な半透膜部分は培地貯蔵容器10内の中央部内に自由に浮遊する。BAOはさらに、適切なクリップまたはスロット、または他の適切な手段により、保持プロング20および/またはポスト22に安定的に取り付けられ得る。
プロング20は他の設計のBAOを挟持して安定的に取り付け得るということも意図される。例えば、外部の非膜特徴(例えば、複数の細胞含有膜を連結するサポート)を有するBAOは、プロング20を非膜部分周りに取り付けることにより、培地内に安定的に取り付けられる。
さらに、安定取付手段は、1を越える位置でBAOを安定的に取り付けるように設計され得る。このことは、BAOの機能膜部分の完全性が損なわれない限り、プロング20および/またはポスト22のいずれの組み合わせを用いても達成され得る。例えば、BAOが両端に非膜部分(例えば、PCT国際公開公報WO 91/00119に記載されているように、端部サポートおよびシールキャップ)を有する場合、プロング20は、各非膜部分が異なるプロング20のスロットに挿入され得るように、整合され得る。
キャップ12は、培地貯蔵容器10に密閉状態でかぶせられるとき、実質的に流密なシールを提供する。好適な実施の形態において、キャップ12が係合するとき、培地貯蔵容器10は反転可能であり、BAOが培地内に浸漬されたままであり培地収集ウェルまたは低いスポット内に蓄積する傾向がある気泡に接触しないようになっている。このことは、運搬中に、容器が不注意により反転した場合に、BAOが乾燥しないことを保証する。好適には、キャップは、流密シールの形成を補助するライナー(例えば、シリコーンエラストマーなどの圧縮可能材料)を有する。さらに、キャップは、その一部が培地キャビティに延びてある量の培地を容器から逃がすように設計され得る。このことは、シールされたときの、培地充満された貯蔵および運搬装置内でエアーポケットの形成を最小にするように作用する。このことは、BAOが、貯蔵および運搬中に流体培地により完全に取り囲まれることを保証する。
ライナーは、シリコーン層が他の適切なポリマー(例えば、ポリプロピレンまたはフルオロエチレンプロピレン)の2つの層間に載置された層構造アプローチにより形成され得る。ライナーは、超音波溶接などの、何らかの適切な手段によりキャップに安定的に取り付けられ得る。ライナーが層構造により形成される場合、キャップと接触するライナーの内層は、超音波溶接を容易にするためにキャップと同一の材料により形成される。外層は、低摩擦で流密シールを形成するに十分な耐久性を有する、任意の適切な材料によって形成され得る。例えば、フッ化ペルフルオロエチレンポリプロピレン(FEP)、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体が、ライナーの低摩擦層に適切な材料である。FEPは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と非常に似た性質を有するが、PTFEよりもガンマ線照射滅菌中においてより安定している。
ライナーが用いられる場合、培地貯蔵容器10は外縁周りにシーリングリムを有しており、キャップ12が容器にかぶせられると、シーリングリムが圧縮可能ライナーに埋め込まれて流密シールを形成することが好ましい。
キャップ12の1つの実施の形態は、培地貯蔵容器10の上部に熱シールされた蓋である。熱シール装置は、周知である。ライナーが用いられる場合、ライナーはスピン結合されたオレフィン、紙、アルニミウムホイル、または当該分野で公知の同様の材料により形成され得る。本実施の形態において、ライナーは、加熱時にライナーを容器10に結合する樹脂を含む。
別の実施の形態において、キャップ12は、培地貯蔵容器10の上部において対となるねじと係合する、ねじをきった蓋である。図3に示す更なる実施の形態において、キャップ12は、凹部を有する、ねじをきった蓋であり、凹部は、キャップが容器上部において対となるねじに係合すると、培地貯蔵容器10から培地を逃がす。このことは、シールされたときの培地貯蔵容器内におけるエアーポケットの形成を最小にし、さらに、BAOが貯蔵および運搬中に流体培地により完全に囲まれることを保証する。
図1および図2に示す、貯蔵および運搬装置の好適な実施の形態は、さらに、気体交換手段50と培地交換手段30とを含む。
気体を培地と交換する能力は、BAO内で生細胞の生存性を維持することを補助する。また、密閉手段に係合する前に培地を飽和させること、または呼吸可能な(breathable)ライナーを用いることにより、十分な酸素が梱包システムに導入され得る。
図示するように、気体交換手段50は、シールされた培地貯蔵容器の外部と内部との間の気体連通を可能にする再密封可能ポートである。ポートは、キャップ、プラグ、または好適には自己シール型隔壁52などの、任意の適切な方法によっても再密封され得る。このような隔壁は、当該分野で周知である。
自己シール型隔壁を用いる実施の形態において、気体交換を可能にするために、中空の針または適切な別の手段が、隔壁52を介して培地貯蔵容器10内の培地に挿入される。針は、好適には、培地貯蔵容器10の汚染を回避し、それにより導入された気体内に汚染物質がある場合でもBAOの汚染を回避するために、微生物フィルタ(例えば、ポリプロピレンハウジング内の0.22ミクロンのPTFEフィルタ)を含む。
好適には、気体交換手段50はまた、針が培地貯蔵容器10に挿入され得る程度を限定する停止部材をも含む。停止部材は、針がBAOと接触することを防止し、それによりBAOの偶発的な穿孔を防止する。
培地交換手段30は、気体交換手段50と設計が類似である。たとえば、培地交換手段30は、培地にアクセスするための再密封可能ポートをも含み得る。好適には、培地交換手段30は、培地収集ウェル14にアクセスする。培地は、針、管、または他の適切な方法を用いて、培地貯蔵容器10から除去され得、または培地貯蔵容器10に導入され得る。
好適には、培地交換手段30は、自己シール隔壁32を含み、自己シール隔壁32は、培地収集ウェル14上方において直接整合する。培地を交換するために、針が隔壁32に挿入されて、針の開口部がウェル内に位置するようになっている。ウェル内の培地は、その後、吸引されてシステムから除去される。同様の様式で新鮮な培地が導入され得る。好適には培地交換中に、培地が適切なフィルタを通過して、培地貯蔵容器10への汚染物質の導入を防止する。培地交換が起こった後、針が除去されて隔壁32が自己シールして流密シールを形成する。
気体交換手段50および培地交換手段30が自己シール隔壁を用いる場合、好適な実施の形態は、隔壁を収容するスナップ式取付具を用いる。例えば、気体交換スナップ取付ベース58および培地交換スナップ取付ベース38は、キャップ12内の適切なポートの底部に挿入されて、スナップ式適合ベース58および38の一部分がキャップ12の上部を貫通して延びるようになっている。隔壁52および32は、その後、スナップ式適合58および38に挿入される。取付リング54および34は、スナップ式適合ベース58および38の、キャップ12の上部を貫通して延びる部分の周囲にぴったり適合する。
スナップ式適合インサート56および36は、その後、それぞれスナップ式適合ベース58および38の上部と係合する。スナップ式適合ベースおよびスナップ式適合インサートは、係合されたときに互いの方向に引かれ、それにより隔壁52および32およびキャップライナー周りの流密シールを保証するように設計されている。
気体交換手段50または培地交換手段30のいずれか又は両方のためのスナップ式適合ハウジングもまた、培地貯蔵容器10のハンドルとして作用し得る。図1に示すように、スナップ式適合インサート56は、ハンドルとして機能する。これらの取付具のコンポーネントは、機械加工、射出成形、または他の一般的技術によって製造され得る。スナップ式取付具に代わるものとして、インサートが超音波によりキャップ12に溶接され得る。
別の実施の形態において、培地は、培地貯蔵容器10に一体化される1以上の追加の容器により供給され得る。本実施の形態において、スペント培地は、培地貯蔵容器10から、培地貯蔵容器10をスペント培地貯蔵部に連結する管を介して排出される。新鮮な培地が、培地貯蔵容器10と流体連通する新鮮培地貯蔵部から導入される。最も好適には、培地交換貯蔵部は、その内容物の無菌性を損なうことなく、培地貯蔵容器10との連結が切断される。一旦切断されると、貯蔵部からの排出または再充満が適切に行われ得、その後、滅菌様式で培地貯蔵容器10に再連結される。このような工程は当該分野で公知である。
図1および図2は、さらに、培地貯蔵容器10とキャップ12とを取り囲む、第2の容器100と第2のキャップ102とを示す。第2のキャップ102は、第2の容器100と密閉状態で係合するときに、実質的に流密なシールを供給する。1つの実施の形態において、第2のキャップ102は、第2の容器100の上部とねじ係合する、ねじをきった蓋である。好適には、第2のキャップ102は、キャップ12に関して上述したように、ライナーを有する。
さらに、好適には、第2のキャップ12は、気体交換手段50と培地交換手段30とにアクセスする手段、および湿気を放出する手段を有する。これらのアクセス手段および湿気交換手段は、培地貯蔵容器10のキャップ12上の交換手段50および30と設計が類似であるが、他の任意の適切な設計を有し得る。
気体アクセス手段150および培地アクセス手段130を有する好適な実施の形態を図2に示す。図示するように、アクセス手段150および130は、スナップ式適合ハウジング内に自己シール隔壁152および132(すなわち、リング154および134並びに上部インサート156および136を含むベース158および138)を有する。
気体アクセス手段150は、気体交換手段50と整合され、培地アクセス手段130は、培地交換手段30と整合されており、針または他の適切な部材が、外部環境から第2の容器の隔壁と次いで培地貯蔵容器の隔壁とを介して挿入され、それにより培地貯蔵環境を貫通し、気体および/または培地交換を可能にするようになっている。好適な実施の形態において、培地貯蔵容器10の底部は、キーメカニズム60を有し、キーメカニズム60は、係合ベース200に適合する。キーメカニズム60は、第2のキャップ102のアクセス手段150および130がキャップ12の交換手段上方で整合されることを保証する。
さらに、キーメカニズム60は、オペレーターがキャップ12の培地交換手段30を培地貯蔵容器10のベースの培地収集ウェル14と整合させることを可能にする。このことは、培地貯蔵容器10を、設計上係合ベース200と類似のベースプレート上に載置することにより達成される。
さらに、キャップ12がねじをきった蓋である場合、キーメカニズム60はまた、培地貯蔵容器10を多く取り扱うことなく、キャップ12の取り付けまたは取り外しを容易にする。キーメカニズム60は、単に培地貯蔵容器10を係合ベース200に類似の係合ベースに適合させ、キャップ12にトルクを付与することにより、オペレーターがキャップ12を安定的に取り付けるか又は除去することを可能にする。培地貯蔵容器10の取り扱いが減少することは、汚染の可能性が減少するために望ましい。
図1および図2に示す好適な実施の形態において、貯蔵および運搬装置はさらに、設計上気体交換手段50に類似の湿気交換手段170を含む。湿気交換手段は、第2のキャップ102上に位置し、呼吸可能ライナー179が位置する孔を有する隔壁172を含む。呼吸可能ライナー179は、例えば、ナイロン0.22ミクロン多孔性膜ディスクであり得る。ナイロン膜は、ガンマ線照射などの滅菌工程に耐える能力があるため、好適である。0.22ミクロン多孔性は、微生物汚染物質が第2の容器内に入ることを防止するのに好適である。
湿気交換手段170は、凝集が第2の容器内部で形成されることを防止するために、運搬中の水分放出および圧力均等化を可能にする。湿気交換は、容器が加湿された雰囲気のインキュベータ内に貯蔵され得るために、望ましい。温度は出荷中にインキュベータ内の約37℃から室温まで低下するため、湿気交換手段170がないと、湿気は凝集して第2の容器内に残る。
図5において、凝集に対する温度損失の影響をグラフで表す。示される3回の実験の各々は、本発明の貯蔵および運搬装置に対して行われた。第2の容器は、内径0.312インチの孔を有する隔壁内の第2のキャップ上に位置するナイロン0.22ミクロン多孔性膜ディスクを含む湿気交換手段を含んでいた。各実験において装置の初期の温度は、約37℃であった。
実験1は、装置の温度が1時間で約37℃から約25℃まで急速に低下する「急冷」状態を表す。このような状態において、凝集が現れたが、時間が経つと、凝集した水分は膜ディスクを介して気化するため、第2の容器の内部は乾燥する。
実験2は、装置の温度が制御される「徐冷」状態を表す。このような状態において、膜ディスクは、凝集がテスト期間中に第2の容器内に形成されることを防止した。
実験3は、シミュレートされた動作条件(ルーチンの商業的出荷中に予想される実際の熱および時間条件)を表す。この実験の間、容器は約8時間の間シミュレートされた出荷条件に維持され、その後、容器は「急冷」状態に曝される。凝集は、シミュレートされた出荷期間中に認識可能な程度には現れなかった。「徐冷」実験の場合のように、膜ディスクが凝集が第2の容器内で形成されることを防止したと考えられる。装置が「急冷」状態に曝されて初めて、凝集が現れた。
気体アクセス手段150、培地アクセス手段130、および湿気交換手段170用のスナップ式適合ハウジングは、気体交換手段50および培地交換手段30と類似の様式で構成され得る。スナップ式適合ベース158、138および178が第2のキャップ102内の適切なポートの底部に挿入される。隔壁152、132および172はその後、それぞれスナップ式適合ベース158、138および178に挿入される。湿気交換手段170に対して、隔壁172は、呼吸可能ライナー179が挿入される孔を有する。取付リング154、134および174は、それぞれスナップ式適合ベース158、138および178周りに固定されて、スナップ式取付具を第2のキャップ102に安定的に取り付ける。最後に、スナップ式適合インサート156、136および176は、それぞれスナップ式適合ベース158、138および178の上部と係合する。スナップ式適合インサート156は針保持構成を有し、スナップ式適合インサート136は隔壁蓋139を有することが好適である。
また、キャップ12の交換手段30および50の場合のように、アクセス手段130および150および湿気交換手段170と共に用いられるスナップ式取付具は、キャップ102に超音波により溶接されたインサートと置換され得る。
一旦BAOおよび培地が初期充填されると、第2の容器100は、第1の容器10を取り扱う必要性を最小にする。次の気体および培地交換は、貯蔵および運搬装置を乱すことを最小にし且つBAOの汚染の危険性が実質的に減少した状態で、両方の容器を介して行われる。
第2の容器100は、移植先に送達されると、無菌フィールドの外で開かれ、培地貯蔵容器10が無菌フィールドに送達され得、それにより無菌フィールドへの望まれない生物学的汚染物質の導入の可能性が減少する。
第2の容器100が用いられる場合、スロットのあいた係合ベース200は、例えば超音波溶接によって、第2の容器100のベース内部に取り付けられたディスクという形態を取り得る。スロットのあいた係合ベース200は、上縁に沿っていくつかのロッキングタブ202を有する。これらのロッキングタブ202は、図1および図2に培地貯蔵容器10の底部の一連のスロットとして示すキーメカニズム60と係合する。培地貯蔵容器10が第2の容器100内に挿入されると、スロットは、ロッキングタブ202を受け取る。または、第2の容器およびスロットのあいた係合ベースは、例えば、射出成形を用いて単一ユニットとして製造され得る。
培地貯蔵容器10は、BAOにダメージを与える結果となり得る培地貯蔵容器の動きを防止するために、第2の容器100にうまく適合すべきである。この良好な適合は、気体交換手段50の高さを適切に設計することにより、容易に達成され得る。
貯蔵および運搬装置の製造において、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタンベースの材料などの金属または例えばCoors Company, Boulder, Coloradoから入手可能な、シリカ若しくはアルミナベースのセラミックなどのセラミックを含む、任意の適切な材料が用いられ得る。照射(すなわち、ガンマ線照射)、化学的方法(すなわち、酸化エチレン滅菌)およびオートクレーブなどの通常の滅菌方法に耐える能力のある、任意の材料が用いられ得る。
滅菌方法がガンマ線照射である場合、選択された材料は、必要であれば、色あせまたは劣化を防止するために、ガンマ線照射に対する安定剤を含むべきである。市場入手可能なポリカーボネートポリマーは、このような安定剤を有する。このようなポリマーは、典型的には、ガンマ線滅菌に先だって着色(例えば、薄紫)される。ポリマーは、ガンマ線照射に曝されると、黄色を帯びる。しかし、適切にガンマ線により安定化されると、これらの着色されたポリカーボネートポリマーは、短期間貯蔵された後に自然な薄い色に戻る。
さらに、材料は、出荷および取り扱いの荒っぽさに耐える十分な耐久性を有するべきである。さらに、材料は、BAOに対して有害と感じられるような影響を有していないほど、生細胞にとって十分非毒性でなければならない。好適には、材料は、USPクラス6テスト済みであるべきである。
再使用可能な材料が考えられるが、好適には材料は使い捨て可能である。
また、貯蔵および運搬装置のコンポーネントの少なくともいくつかが必要に応じて透明であることも好適である。このことは、BAOの目に見える汚染の容易な発見を可能にする。目に見える汚染の例は、流体培地の濁りおよび色あせを含む。
好適には、培地貯蔵容器10および第2の容器100は、必要に応じて、ガラスまたは適切なポリマーなどの透明な材料から形成される。有用なポリマーは、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリエステル、ポリエーテルアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-コ-グリコールテレフタレート、および類似の樹脂などの、任意の耐久性のある、脆弱でない材料を含む。より好適なものは、ポリカーボネートポリマーである。なぜなら、(1)他のいくつかの適切な材料よりも耐久性があり、(2)USPクラス6グレードで入手可能であり、そして(3)熱成形可能であるからである。
本発明の容器およびキャップは、任意の適切な技術によって製造され得る。例えば、射出成形または他の熱成形方法によって形成され得る。または、機械加工により形成され得るし、超音波溶接などの接着技術を用いて組み立てられ得る。製造の好適な方法は、射出成形などの熱成形プロセスである。なぜなら、このプロセスは、複雑な形状物の製造を容易に可能にするからである。
ポリカーボネート材料から、機械加工または射出成形により製造される取付リングは、滅菌中にガンマ線照射に曝すことにより増幅される応力ラインを有する。プラスチックの強靱性を保証するために、応力ラインを除去することが望ましい。応力の不安定さを減少させるために、アニールが行われ得る。機械または成形リングを約250℃の温度に約10分間曝し、次いで熱衝撃を防止するために、ゆっくりと(数時間かけて)冷却することにより、すべての熱可塑性樹脂内で起こる応力緩和プロセスが加速する。アニールによって、内部応力は減少し、そのことが、部品の寸法および性能の安定性を向上させる。
デバイスを出荷するときに、運搬の物理的荒さを最小にするために注意をしなければならない。その結果、出荷用の第3の容器が、貯蔵および運搬装置を取り囲むために用いられ得る。
さらに、運搬中にBAOの温度を制御および監視することが望ましい。第3の出荷用容器は、New Bedford, MAのPackaging Products, Inc.から販売されているものなどの、断熱性ゲルパックなどで梱包され得る。
出荷容器自体は、断熱され得、BAOを適切な温度で取り扱うことを保証するために、反転インジケータまたは温度レコーダーを含み得る。反転インジケータを有する断熱された容器は販売されている(例えば、EuduroTherm製断熱容器、New England, Warwick, RIのSource Packaging)。任意の適切な温度プローブが用いられ得る(例えば、Data Trace, Mesa Laboratories, Inc., Wheat Ridge, CO)。
出荷容器は、耐久性があり、落下した場合の衝撃または他の出荷中の動きを吸収して、BAOをダメージから保護しなければならない。断熱の厚い層(1〜3インチ)を有する断熱された出荷容器は、出荷中の容器に対する衝撃を吸収するために有用である。
本発明をさらに以下の実施例によって説明するが、以下の実施例はいかなるようにも本発明を限定するものではない。
実施例
BAOの貯蔵および運搬用装置は、約80mlの適切な流体培地を保持する培地貯蔵容器を含んで組み立てられた。培地貯蔵容器は、培地貯蔵容器のベース中央部から離れた位置に、ウェルまたは低いスポットを有していた。培地貯蔵容器は、ステンレス鋼またはアルミニウムから機械加工した型を用いて、光学的に透明なポリカーボネート材料から射出成形により形成された。
培地貯蔵容器は、約3.78インチの外径および0.1925インチ幅のシーリング縁を有していた。培地貯蔵容器の内径は、約3.40インチであり、BAOを浸漬するために約80〜100mlの培地で充満され得る。貯蔵容器のねじは、Society of Plastics Industry Incorporatedの一部門であるPlastic Bottle Institute, Technical Committeeにより記載されているように、SP−400仕上げであった。さらに、ねじ仕上げ程度(thread finish identification)は、サイズ100であり、好適には修正されたバットレスねじであった。
安定取付手段は、培地貯蔵容器の底面に直交して位置する多数のポストとプロングから形成された。ポストの高さは、ポストの上部がシール手段の底部まで延出するようなものであった。このことはさらに、BAOが貯蔵容器内で不当な動きをすることを防止した。
ポストおよびプロングは、ベースの一体化部分であり、射出成形により形成された。プロングは、適切な位置に摺動した状態で0.030インチの直径を有するBAOテザー部を掴むために、幅約0.026インチの、スロットを有するテーパ状部分を有していた。ポストおよびプロングを形成するポリカーボネート材料は、テザーがしっかり保持されて充填時に壊れないほど強靱であることを可能にした。
ポストおよびプロングは、培地貯蔵容器が5cmの活性長および/または7cmの活性長のBAOを安定して保持し得るように、容器の底部に沿って配置された。上記の場合、BAOの細胞含有膜部分は、培地貯蔵容器の中央部内にあった。本実施例で用いたBAOは、培地貯蔵容器の一端に取り付けられた圧縮可能な中空のシリコーンテザーを有し、上記テザーの外径は約0.030インチであった。
用いられたシール手段は、ねじをきった蓋という形態であり、上記蓋は、その底部が培地貯蔵容器の上部と係合していた。蓋のねじは、Closure Manufactureres Assocationの仕様に記載されているように、#100〜400、5TPIの修正されたバットレスねじであった。蓋の内側は、流密シールの形成を補助するために、圧縮可能なシリコーンエラストマー材でライニングされた。このライナーは、ポリプロピレンフィルム層とFEP層との間でシリコーンを共押し出しする方法により形成された。シリコーンは厚み0.040〜0.100インチであり、フィルムは厚み0.005〜0.010インチであった。ライナーは、超音波溶接により蓋にしっかりと取り付けられた。ライナーの内層は、蓋と同一の材料、特にポリプロピレンから形成され、超音波溶接が容易になった。ライナーの超音波溶接は、材料に対する直接の接着エネルギーにより達成された。各々直径0.375インチである6つの溶接スポットは、対称的にキャップ周りに塗布されてライナーを適切な位置にしっかりと接着された。
培地貯蔵容器は、外縁周りに高さ約0.010インチの90度ナイフエッジを有しており、ナイフエッジは流密シールの形成を補助するめに蓋のライナーの圧縮可能FEPおよびシリコーン部分に切り込んだ。培地容器の底部は、取付ベースおよび/またはベースプレートに適合するキーメカニズムを有していた。キーメカニズムは10度オフセットタブであり、培地ウェル上方における穿孔可能な隔壁の整合と培地貯蔵容器の隔壁上方における第2の容器の整合とを可能にした。
本実施例の装置は、培地交換手段と気体交換手段との両方を含んでいた。これらの交換手段は、自己シール型シリコーン隔壁から形成された。
培地は、厚み約0.125インチであり直径約0.550インチのシリコーン隔壁に針を挿入し、次いで培地を吸引且つ除去することにより交換された。新鮮な培地は、同一のシリコーン隔壁を通った別の針により導入された。貯蔵中に隔壁を覆うために、キャップ取付具が用いられた。
気体交換は、第2の隔壁に中空の針を挿入することにより行われた。針は、leur取付具で針に保持されたポリプロピレンハウジング内に、0.22ミクロンのテフロンフィルタを含んでいた。気体交換隔壁はさらに、針が培地貯蔵容器の内部に入り込み得る程度を制限する停止部材を含んでいた。より長い期間の貯蔵のために、デバイスは、針が隔壁に挿入された状態で、貯蔵インキュベータ内に載置される。デバイスが出荷される場合、針は短い出荷期間中に除去されて隔壁は自己シールして流密シールを提供する。
装置の製造に用いられた材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、およびシリコーンであり、完全に使い捨て可能であり、再使用されなかった。これらの材料は、ガンマ線照射滅菌方法に耐えることができ、出荷時の荒い取り扱いに耐えるに十分な耐久性を有し、BAOに対して有害と感じるような影響を与えないほど生細胞に対して十分非毒性であるために、選択された。上記材料は、全てUSPクラス6テスト済みであった。
装置はさらに、シールされた培地貯蔵容器を取り囲む第2の容器を含んでいた。第2の容器は、気体および培地アクセス手段を有し、両方の手段共、培地貯蔵容器の自己シール隔壁上方で整合する自己シール隔壁であった。本実施例において、第2の容器は、同様の蓋構造、培地貯蔵容器の内部にアクセスするための同様の自己シール隔壁を有しているという点で、培地貯蔵容器に類似であった。第2の容器はまた、0.312インチの直径を有する0.22ミクロンナイロン膜の湿気交換手段を有していた。培地貯蔵容器の内部にアクセスすることは、第2の容器の隔壁を、培地貯蔵容器の隔壁上方に整合させて、針が第2の容器の隔壁および第1の容器の隔壁を通って培地または気体交換を提供するようにすることにより達成された。
本実施例で用いる装置は、蓋、ライナー、隔壁、スナップ式取付具、および第2の容器のベースリングを含んで組み立てて(ねじをきった蓋は取り外される)、ガンマ線照射による滅菌のために袋に入れることにより形成された。無菌ユニットは、その後、BAOが充填される無菌フード内に載置された。
BAO充填手順
BAOの充填は、以下の手順によって行われた。
(1)ベースプレート上の取付タブが培地貯蔵容器の底部のスロット内に適合するように、ベースプレート上に培地貯蔵容器を載置した。
(2)容器の底部を湿らせるために、10mlの選択された培地が、培地貯蔵容器に添加された。
(3)図4に示すように、その後、薄い円筒形状のBAOを培地貯蔵容器の中央に載置することにより、BAOが充填された。
(4)シリコーンテザーがプロングに挿入され、その後ポスト周りに巻回された。
(5)次いで、ナイフエッジが蓋のライナーに切り込むように容器を保持するために、培地貯蔵容器が、ベースプレートを用いて、ねじをきった蓋で密にシールされた。
(6)その後、培地貯蔵容器の培地ウェル上方における培地交換手段の整合が、視覚的に確認された。
(7)その後、BAOを内部に含んだ状態のシールされた培地貯蔵容器が、スロットを有する取付ベースの上部の第2の容器に載置されて、取付ベースのタブが培地貯蔵容器の底部のキーメカニズムのスロット内に適合するようにされた。
(8)その後、ナイフエッジ状蓋が蓋のライナーに切り込むように、第2の容器が、ねじをきった蓋で密にシールされた。
(9)その後、気体交換針および22ミクロンフィルタハウジングが、第2の容器の気体アクセス隔壁に通され、次いで培地貯蔵容器の気体交換隔壁に通された。
(10)その後、培地交換針が第2の容器の気体アクセス隔壁を通され、次いで、針の先端が培地ウェルに入るように、培地貯蔵容器の気体アクセス隔壁を通された。
(11)その後、培地の残りの70mlが、培地交換針を介して添加されて、培地貯蔵容器を充満した。
運搬および荷降ろし手順
その後、充填されたBAO含有装置が、以下の手順に従って移植先に送達された。
(1)気体交換針が培地貯蔵容器から除去された。
(2)装置が、ヒートパックと温度監視デバイスを有する、断熱された耐久性を有する第3の梱包箱に入れられた。
(3)その後、装置が、ルーチンの運搬方法によって、移植先に出荷された。
(4)移植先において、装置が出荷パッケージから除去され、無菌の充填されシールされた培地貯蔵容器が無菌外科フィールドに導入され得るように、第2の容器の蓋が取り外された。
(5)一旦無菌フィールド内部に入ると、培地貯蔵容器の蓋が取り外された。
(6)その後、BAOのテザーをポストから外してテザーをプロングから取り外すことにより、BAOが培地貯蔵容器から除去された。
移植前テスト手順
患者への移植前に、BAOは概して、機能的であり且つ無菌であることが示されなければならない。このテストは、完了するのに約17〜24日の保持期間を要する。この期間中に、細胞の生存性を維持するために培地を変更することが必要であり得る。例えば、上記のように、BAOがウシ副腎クロム親和性細胞を含む場合、約12日後に培地を補充することが必要である。培地交換後、BAOの無菌性を保証するために、短い3日間の保持が行われる。BAOはその後、15日目後20日目までの間に出荷される。20日目に、細胞が再び供給されて、更なる3日間の保持が行われる。
製品評価手順
1.無菌性テスト
BAOが充填され培地が上記のように交換された。BAOは29日間装置内に貯蔵された。その間ずっと、USP無菌評価を用いて無菌性が評価され、デバイスは無菌のままであることが判明した。
2.耐漏洩性テスト
シールされた培地貯蔵容器およびシールされた第2の容器の気密および流密シールが、評価された。気密テストは、1〜3psiの圧縮窒素を加えることにより行われ、経時的な圧力維持が評価された。デバイスは、長期間1〜3psiの圧力下において気密のままであることが判明した。流密シールは、培地を添加し、容器を反転させ、長期間容器内で培地を振ることにより評価された。デバイスは、液密のままであることが判明した。
さらに、デバイスは、ロードアイランド州から、バージニア州の場所まで一般的な運搬業者により、誰も同伴しない状態で出荷された。デバイスは返却され、液密シールが侵された証拠はなかった。
運搬中にダメージが起こらないように、垂直10〜20フィートの落下テストもまた行われた。
3.毒性テスト
製造材料の毒性が、29日間貯蔵された後に、BAOのアウトプットを鎮痛性物質に関して評価することによりテストされた。上記29日間の貯蔵は、上述のように、12日目と20日目の培地交換を含む。さらに、BAO中で用いられた細胞が、直接材料に載置されて、活性物質のアウトプットおよび細胞形態変化に関して同様に評価された。
材料は、細胞にとってもBAOにとっても非毒性であることが判明した。鎮痛性物質は、材料に曝されることによって変化しなかった。

Claims (3)

  1. 人工生体器官の貯蔵および運搬装置であって、以下:
    (a)培地貯蔵容器であって、ベース、該ベースから延びる側面、および人工生体器官を該培地貯蔵容器に安定的に取り付けるための安定取付手段を有する培地貯蔵容器であって、ここで、該人工生体器官が、半透膜によって取り囲まれる生細胞または組織を含み、ここで、該安定取付手段が、該人工生体器官への損傷を防ぐように設計され、そしてここで、該安定取付手段が、該人工生体器官の半透膜を物理的に圧迫しない、培地貯蔵容器;
    (b)該培地貯蔵容器と係合して流密シールを形成するキャップ;
    (c)該キャップを通って位置する気体交換手段;
    (d)ベースおよび該ベースから延びる側面を有し、該培地貯蔵容器が該キャップと係合したときに、該培地貯蔵容器を取り囲む能力を有する第2の容器;および
    (e)該第2の容器と係合する第2のキャップ、を備え、ここで、該人工生体器官が、流体培地中に浸され該第2の容器および該第2のキャップが該気体交換手段にアクセスするための気体アクセス手段を備え、該気体アクセス手段が該第2のキャップを通って位置する、装置。
  2. 人工生体器官の貯蔵および運搬装置であって、以下:
    (a)培地貯蔵容器であって、ベース、該ベースから延びる側面、および人工生体器官を該培地貯蔵容器に安定的に取り付けるための安定取付手段を有する培地貯蔵容器であって、ここで、該人工生体器官が、半透膜によって取り囲まれる生細胞または組織を含み、ここで、該安定取付手段が、該人工生体器官への損傷を防ぐように設計され、そしてここで、該安定取付手段が、該人工生体器官の半透膜を物理的に圧迫しない、培地貯蔵容器;
    (b)該培地貯蔵容器と係合して流密シールを形成するキャップ;
    (c)該キャップを通って位置する培地交換手段;
    (d)ベースおよび該ベースから延びる側面を有し、該培地貯蔵容器が該キャップと係合したときに、該培地貯蔵容器を取り囲む能力を有する第2の容器;および
    (e)該第2の容器と係合する第2のキャップ、を備え、ここで、該人工生体器官が、流体培地中に浸され該第2の容器および該第2のキャップが該培地交換手段にアクセスするための気体アクセス手段を備え、該培地アクセス手段が該第2のキャップを通って位置する、装置。
  3. 前記培地貯蔵容器のベース上のタブと係合する前記第2の容器のベース内に係合ベースをさらに備える、請求項1または2のいずれかに記載の装置。
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