一方、近年、データの記録密度が高められ、かつ、非常に高いデータ転送レートを実現可能な次世代型の光記録媒体が提案されている。
このような次世代型の光記録媒体においては、高いデータ転送レートを実現するため、従来の光記録媒体に比べて、高い記録線速度で、データを記録することが要求されるが、一般に、追記型の光記録媒体においては、記録マークの形成に必要な記録パワーPwは、記録線速度の平方根に略比例するため、次世代型の光記録媒体に、データを記録する場合には、高出力の半導体レーザを用いることが必要とされる。
また、次世代型の光記録媒体においては、記録容量を高めるとともに、非常に高いデータ転送レートを実現するため、必然的に、データの記録・再生に用いるレーザビームのビームスポット径を非常に小さく絞ることが要求される。
レーザビームのビームスポット径を小さく絞るためには、レーザビームを集束するための対物レンズの開口数(NA)を0.7以上、たとえば、0.85程度まで大きくするとともに、レーザビームの波長λを450nm以下、たとえば、400nm程度まで、短くすることが必要になる。
しかしながら、780nmの波長λを有するレーザビームを発するCD用の半導体レーザや、650nmの波長λを有するレーザビームを発するDVD用の半導体レーザに比して、450nm以下の波長λを有する半導体レーザは出力が小さく、また、出力が高い半導体レーザは高価であるという問題がある。
このような問題を解決するためには、図8に示された単パルスパターンを用いることによって、記録マークを形成する際に、レーザビームによって記録層に加えられる総熱量を大きくすることが有効と考えられるが、このような場合には、記録線速度によっては、レーザビームによって記録層に加えられる総熱量が過大になり、光記録媒体のトラックに対して垂直な方向における記録マークの幅が広がって、クロストークが増大してしまうという問題があり、とくに、記録マークの長さが長いほど、クロストークの増大が顕著になるという問題があった。
以上のような問題は、複数の反応層を含む記録層に、レーザビームを照射して、照射されたレーザビームによって生じる熱により、複数の反応層を構成する元素を混合させ、記録マークを形成する追記型光記録媒体において、とくに顕著であった。
したがって、本発明は、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、追記型の光記録媒体に情報を記録することができる光記録媒体への情報記録方法を提供することを目的とするものである。
本発明の別の目的は、二層以上の反応層を含む記録層を備えた追記型の光記録媒体に、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、追記型の光記録媒体に情報を記録することができる光記録媒体への情報記録方法を提供することを目的とすることにある。
本発明の他の目的は、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、追記型の光記録媒体に情報を記録することができる光記録媒体への情報記録装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、二層以上の反応層を含む記録層を備えた追記型の光記録媒体に、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、情報を記録することができる光記録媒体への情報記録装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、情報を記録することができる追記型の光記録媒体を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、情報を記録することができる二層以上の反応層を含む記録層を備えた追記型の光記録媒体を提供することにある。
本発明のかかる目的は、基板上に設けられた記録層を有する追記型の光記録媒体に、少なくとも記録パワーおよび基底パワーを含むパルス列パターンにしたがって変調されたレーザビームを照射して、前記記録層の所定の領域に記録マークを形成し、情報を記録する方法であって、記録線速度が高いほど、記録パワーからなるパルスの数が少なく、かつ、前記基底パワーのレベルと前記記録パワーのレベルの比が高くなるように、前記基底パワーPbおよび前記記録パワーPwが、ΔPbおよびΔPwだけ高く設定されたパルス列パターン(ここに、0≦ΔPw<ΔPbである。)を用いて、レーザビームのパワーを変調し、記録マークを形成することを特徴とする光記録媒体への情報記録方法によって達成される。
本発明によれば、記録線速度が高いほど、記録パワーからなるパルスの数が少なく、かつ、基底パワーのレベルと記録パワーのレベルの比が高くなるように、基底パワーPbおよび記録パワーPwが、ΔPbおよびΔPwだけ高く設定されたパルス列パターン(ここに、0≦ΔPw<ΔPbである。)を用いて、レーザビームのパワーを変調し、記録マークを形成し、情報を記録するように構成されているから、記録線速度が高い場合には、そのパワーが記録パワーに設定されたレーザビームによって供給される熱量を増大させることが可能になり、さらに、そのパワーが基底パワーに設定されたレーザビームによって、記録パワーのレーザビームによる加熱を補うことができ、したがって、記録線速度が高い場合にも、出力が比較的低い半導体レーザを用いて、低い記録パワーのレーザビームで、情報を記録することが可能になり、その一方で、記録線速度が低い場合には、そのパワーが記録パワーに設定されたレーザビームによって過大な熱量が供給されることを防止することが可能になり、さらに、そのパワーが基底パワーに設定されたレーザビームによる補助加熱量を抑制することでき、したがって、記録線速度が低い場合に、クロストークの影響を抑制することができるように、光記録媒体に、所望のように、情報を記録することが可能になる。
また、本発明によれば、記録線速度が高いほど、基底パワーのレベルと記録パワーのレベルの比が高くなるように、基底パワーPbおよび記録パワーPwが、ΔPbおよびΔPwだけ高く設定されたパルス列パターン(ここに、0≦ΔPw<ΔPbである。)を用いて、レーザビームのパワーを変調し、記録マークを形成し、情報を記録するように構成されているから、複数の記録線速度の中から、所望の記録線速度を選択して、情報を記録可能なシステム(マルチスピード記録)において、異なる記録線速度で、情報を記録する場合に、ほぼ同じ記録パワーのレーザビームを用いて、情報を記録することが可能になる。
本発明の好ましい実施態様においては、第1の線速度VH以上の記録線速度で、情報を記録する場合に、前記パルスの数を1に設定するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、第1の線速度VH未満で、かつ、第2の線速度VLを越える記録線速度VMで、情報を記録する場合、少なくとも最短の記録マークを形成するときは、前記パルスの数を1に設定し、形成すべき記録マークの長さが長いほど、前記パルスの数を大きく、設定するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、第1の線速度VH未満で、かつ、第2の線速度VLを越える記録線速度VMで、情報を記録する場合、少なくとも最短の記録マークを形成するときは、前記パルスの数を1に設定し、記録線速度VMが低くなるほど、前記パルスの数を大きく、設定するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第2の線速度VL以下の記録線速度で、それぞれの長さを有する記録マークを形成し、情報を記録する場合に、記録マークの長さを表わす数との差が一定になるように、前記パルスの数を設定するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第1の線速度が、10m/sec以上に設定されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記光記録媒体に、450nm以下の波長を有するレーザビームを照射して、情報を記録するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、λ/NA≦640nmを満たす開口数NAを有する対物レンズおよび波長λを有するレーザビームを用い、前記対物レンズを介して、前記光記録媒体に、レーザビームを照射して、情報を記録するように構成されている。
本発明の好ましい実施態様においては、前記光記録媒体が、さらに、光透過層を備え、前記記録層が、前記基板と前記光透過層の間に形成された第一の反応層と第二の反応層を含み、前記光透過層を介して、レーザビームを照射して、前記第一の記録層に主成分として含まれている元素と、前記第二の記録層に主成分として含まれている元素とを混合させて、記録マークを形成するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第二の反応層が、前記第一の反応層に接するように、形成されている。
本発明の前記目的はまた、基板上に設けられた記録層を有する追記型の光記録媒体に、少なくとも記録パワーおよび基底パワーを含むパルス列パターンにしたがって変調されたレーザビームを照射して、前記記録層の所定の領域に記録マークを形成し、情報を記録する光記録媒体への情報記録装置であって、記録線速度が高いほど、記録パワーからなるパルスの数が少なく、かつ、前記基底パワーのレベルと前記記録パワーのレベルの比が高くなるように、前記基底パワーPbおよび前記記録パワーPwが、ΔPbおよびΔPwだけ高く設定されたパルス列パターン(ここに、0≦ΔPw<ΔPbである。)を用いて、レーザビームのパワーを変調し、記録マークを形成することを特徴とする光記録媒体への情報記録装置によって達成される。
本発明の好ましい実施態様においては、第1の線速度VH以上の記録線速度で、情報を記録する場合に、前記パルスの数を1に設定するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、第1の線速度VH未満で、かつ、第2の線速度VLを越える記録線速度VMで、情報を記録する場合、少なくとも最短の記録マークを形成するときは、前記パルスの数を1に設定し、形成すべき記録マークの長さが長いほど、前記パルスの数を大きく、設定するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、第1の線速度VH未満で、かつ、第2の線速度VLを越える記録線速度VMで、情報を記録する場合、少なくとも最短の記録マークを形成するときは、前記パルスの数を1に設定し、記録線速度VMが低くなるほど、前記パルスの数を大きく、設定するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第2の線速度VL以下の記録線速度で、それぞれの長さを有する記録マークを形成し、情報を記録する場合に、記録マークの長さを表わす数との差が一定になるように、前記パルスの数を設定するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第1の線速度が、10m/sec以上に設定されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記光記録媒体に、450nm以下の波長を有するレーザビームを照射して、情報を記録するように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、λ/NA≦640nmを満たす開口数NAを有する対物レンズおよび波長λを有するレーザビームを用い、前記対物レンズを介して、前記光記録媒体に、レーザビームを照射して、情報を記録するように構成されている。
本発明の前記目的はまた、基板と前記基板上に形成された記録層を備え、少なくとも記録パワーおよび基底パワーを含むパルス列パターンにしたがって変調されたレーザビームが照射されて、前記記録層に記録マークが形成され、情報が記録されるように構成された追記型の光記録媒体であって、記録線速度が高いほど、記録パワーからなるパルスの数が少なく、かつ、前記基底パワーのレベルと前記記録パワーのレベルの比が高くなるように、前記基底パワーPbおよび前記記録パワーPwが、ΔPbおよびΔPwだけ高く設定されたパルス列パターン(ここに、0≦ΔPw<ΔPbである。)を用いて、レーザビームのパワーを変調するために必要な記録条件設定用データが記録されていることを特徴とする光記録媒体によって達成される。
本発明の好ましい実施態様においては、光記録媒体は、さらに、光透過層を備え、前記記録層が、前記基板と前記光透過層の間に形成された第一の反応層と第二の反応層を含み、前記光透過層を介して、レーザビームが照射されたときに、前記第一の記録層に主成分として含まれている元素と、前記第二の記録層に主成分として含まれている元素とが混合し、記録マークが形成されるように構成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第二の反応層が、前記第一の反応層に接するように、形成されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記光透過層が、10ないし300μmの厚さを有するように形成されている。
本発明の好ましい実施態様においては、第1の線速度VH以上の記録線速度で、情報を記録する場合に、前記パルスの数が1に設定されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、第1の線速度VH未満で、かつ、第2の線速度VLを越える記録線速度VMで、情報を記録する場合、少なくとも最短の記録マークを形成するときは、前記パルスの数が1に設定され、形成すべき記録マークの長さが長いほど、前記パルスの数が大きく、設定されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、第1の線速度VH未満で、かつ、第2の線速度VLを越える記録線速度VMで、情報を記録する場合、少なくとも最短の記録マークを形成するときは、前記パルスの数が1に設定され、記録線速度VMが低くなるほど、前記パルスの数が大きく、設定されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第2の線速度VL以下の記録線速度で、それぞれの長さを有する記録マークを形成し、情報を記録する場合に、記録マークの長さを表わす数との差が一定になるように、前記パルスの数が設定されている。
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記第1の線速度が、10m/sec以上に設定されている。
本発明によれば、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、追記型の光記録媒体に情報を記録することができる光記録媒体への情報記録方法を提供することが可能になる。
また、本発明によれば、二層以上の反応層を含む記録層を備えた追記型の光記録媒体に、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、追記型の光記録媒体に情報を記録することができる光記録媒体への情報記録方法を提供することが可能になる。
さらに、本発明によれば、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、追記型の光記録媒体に情報を記録することができる光記録媒体への情報記録装置を提供することが可能になる。
また、本発明によれば、二層以上の反応層を含む記録層を備えた追記型の光記録媒体に、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、情報を記録することができる光記録媒体への情報記録装置を提供することが可能になる。
さらに、本発明によれば、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、情報を記録することができる追記型の光記録媒体を提供することが可能になる。
また、本発明によれば、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、情報を記録することができる二層以上の反応層を含む記録層を備えた追記型の光記録媒体を提供することが可能になる。
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体の構造を示す略断面図である。
図1に示されるように、本実施態様にかかる光記録媒体10は、追記型の光記録媒体として構成され、基板11と、基板11の表面上に形成された反射層12と、反射層12の表面上に形成された第二の誘電体層13と、第二の誘電体層13の表面上に形成された記録層14と、記録層14の表面上に設けられた第一の誘電体層15と、第一の誘電体層15の表面上に形成された光透過層16を備えている。図1に示されるように、記録層14は、第二の誘電体層13の表面上に形成された第二の反応層32と、第二の反応層32の表面上に形成された第一の反応層31を含んでいる。
図1に示されるように、光記録媒体10の中央部分には、センターホール17が形成されている。
本実施態様においては、図1に示されるように、光透過層16の表面に、レーザビームL10が照射されて、光記録媒体10にデータが記録され、光記録媒体10から、データが再生されるように構成されている。
基板11は、光記録媒体10に求められる機械的強度を確保するための支持体として、機能する。
基板11を形成するための材料は、光記録媒体10の支持体として機能することができれば、とくに限定されるものではない。基板11は、たとえば、ガラス、セラミックス、樹脂などによって、形成することができる。これらのうち、成形の容易性の観点から、樹脂が好ましく使用される。このような樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、加工性などの点から、ポリカーボネート樹脂がとくに好ましい。
本実施態様においては、基板11は、約1.1mmの厚さを有している。
図1に示されるように、基板11の表面には、交互に、グルーブ11aおよびランド11bが形成されている。基板11の表面に形成されたグルーブ11aおよび/またはランド11bは、データを記録する場合およびデータを再生する場合において、レーザビームL10のガイドトラックとして、機能する。
反射層12は、光透過層16を介して、入射したレーザビームL10を反射し、再び、光透過層16から出射させる機能を有している。
反射層12の厚さは、とくに限定されるものではないが、10nmないし300nmであることが好ましく、20nmないし200nmであることが、とくに好ましい。
反射層12を形成するための材料は、レーザビームを反射できればよく、とくに限定されるものではなく、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ag、Pt、Auなどによって、反射層12を形成することができる。これらのうち、高い反射率を有しているAl、Au、Ag、Cu、または、AgとCuとの合金などのこれらの金属の少なくとも1つを含む合金などの金属材料が、反射層12を形成するために、好ましく用いられる。
反射層12は、レーザビームL10を用いて、第一の反応層31および第二の反応層32に光記録されたデータを再生するときに、多重干渉効果によって、記録部と未記録部との反射率の差を大きくして、高い再生信号(C/N比)を得るために、設けられている。
第一の誘電体層15および第二の誘電体層13は、記録層14を保護する役割を担っている。したがって、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13により、長期間にわたって、光記録されたデータの劣化を効果的に防止することができる。また、第二の誘電体層13は、基板11などの熱変形を防止する効果があり、したがって、変形に伴うジッターの悪化を効果的に防止することが可能になる。
第一の誘電体層15および第2の誘電体層13を形成するための誘電体材料は、透明な誘電体材料であれば、とくに限定されるものではなく、たとえば、酸化物、硫化物、窒化物またはこれらの組み合わせを主成分とする誘電体材料によって、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13を形成することができる。より具体的には、基板11などの熱変形を防止し、記録層14を保護するために、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13が、Al2O3、AlN、ZnO、ZnS、GeN、GeCrN、CeO、SiO、SiO2、SiNおよびSiCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の誘電体材料を主成分として含んでいることが好ましく、ZnS・SiO2を主成分として含んでいることがより好ましい。
第一の誘電体層15と第二の誘電体層13は、互いに同じ誘電体材料によって形成されていてもよいが、異なる誘電体材料によって形成されていてもよい。さらに、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の少なくとも一方が、複数の誘電体膜からなる多層構造であってもよい。
なお、本明細書において、誘電体層が、誘電体材料を主成分として含むとは、誘電体層に含まれている誘電体材料の中で、その誘電体材料の含有率が最も大きいことをいう。また、ZnS・SiO2は、ZnSとSiO2との混合物を意味する。
第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の層厚は、とくに限定されるものではないが、3ないし200nmであることが好ましい。第一の誘電体層15あるいは第二の誘電体層13の層厚が3nm未満であると、上述した効果が得られにくくなる。一方、第一の誘電体層15あるいは第二の誘電体層13の層厚が200nmを越えると、成膜に要する時間が長くなり、光記録媒体10の生産性が低下するおそれがあり、さらに、第一の誘電体層15あるいは第二の誘電体層13のもつ応力によって、光記録媒体10にクラックが発生するおそれがある。
記録層14は、記録マークが形成されて、データが記録される層であり、第二の誘電体層13の表面上に形成された第二の反応層32と、第二の反応層32の表面上に形成された第一の反応層31を含んでいる。図1に示されるように、本実施態様においては、第一の反応層31は、光透過層16側に配置され、第二の反応層32は、基板11側に配置されている。
本実施態様においては、第一の反応層31は、Al、Si、Ge、C、Sn、Au、Zn、Cu、B、Mg、Ti、Mn、Fe、Ga、Zr、AgおよびPtよりなる群から選ばれた元素を主成分として含み、第二の反応層32は、Al、Si、Ge、C、Sn、Au、Zn、Cu、B、Mg、Ti、Mn、Fe、Ga、Zr、AgおよびPtよりなる群から選ばれた元素で、第一の反応層31に主成分として含まれている元素とは異なる元素を主成分として含んでいる。
第一の反応層31および第二の反応層32が、このような元素を主成分として含んでいる場合には、光記録媒体10の長期間の保存に対する信頼性を向上させることが可能になる。
また、これらの元素は、環境に関する負荷が小さく、地球環境を害するおそれがない。
再生信号のノイズレベルを低く抑えるためには、第一の反応層31および第二の反応層32に、主成分として含まれている元素以外の元素が添加されていることが好ましい。このような元素を添加することによって、第一の反応層31および第二の反応層32の表面平滑性を向上させて、再生信号のノイズレベルを低く抑えることが可能になるとともに、光記録媒体10の長期間の保存に対する信頼性を向上させることが可能になる。
第一の反応層31および第二の反応層32に添加される元素は、一種類である必要はなく、第一の反応層31および第二の反応層32に、二種類以上の元素を添加することもできる。
記録層14の層厚は、とくに限定されるものではないが、2nmないし40nmの厚さを有するように、記録層14を形成することが好ましく、2nmないし20nmの厚さを有するように、記録層14を形成することがより好ましい。このような厚さを有するように、記録層14を形成することによって、第一の反応層31および第二の反応層32の表面平滑性を向上させて、再生信号のノイズレベルを低く抑えることができ、また、充分に高いレベルの再生信号(C/N比)を得ることが可能になるとともに、記録感度を十分に向上させることが可能になる。
第一の反応層31および第二の反応層32のそれぞれの層厚は、とくに限定されるものではないが、再生信号のノイズレベルを低く抑えるとともに、記録感度を十分に向上させ、データを記録する前後の反射率の変化を十分に大きくするためには、第一の反応層31の層厚が、1nmないし30nmであり、第二の反応層32の層厚が、1nmないし30nmであることが好ましい。さらに、第一の反応層31の層厚と第二の反応層32の層厚との比(第一の反応層31の層厚/第二の反応層32の層厚)は、0.2ないし5.0であることが好ましい。
光透過層16は、レーザビームL10が透過する層であり、10μmないし300μmの厚さを有していることが好ましく、より好ましくは、光透過層16は、50μmないし150μmの厚さを有している。
光透過層16を形成するための材料は、とくに限定されるものではないが、塗布によって、光透過層16を形成する場合には、紫外線硬化性のアクリル樹脂やエポキシ樹脂などが好ましく用いられる。
光透過層16は、第一の誘電体層15の表面に、光透過性樹脂によって形成されたシートを、接着剤を用いて、接着することによって、形成されてもよい。
以上のような構成を有する光記録媒体10は、たとえば、以下のようにして、製造される。
まず、グルーブ11aおよびランド11bが形成された基板11の表面上に、反射層12が形成される。
反射層12は、たとえば、反射層12の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
次いで、反射層12の表面上に、第二の誘電体層13が形成される。
第二の誘電体層13は、たとえば、第二の誘電体層13の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタリング法などが挙げられる。
さらに、第二の誘電体層13の表面上に、第二の反応層32が形成される。第二の反応層32も、第二の誘電体層13と同様にして、第二の反応層32の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。
次いで、第二の反応層32の表面上に、第一の反応層31が形成される。第一の反応層31も、第一の反応層31の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって形成することができる。
さらに、第一の反応層31の表面上に、第一の誘電体層15が形成される。第一の誘電体層15もまた、第一の誘電体層15の構成元素を含む化学種を用いた気相成長法によって、形成することができる。
最後に、第一の誘電体層15の表面上に、光透過層16が形成される。光透過層16は、たとえば、粘度調整されたアクリル系の紫外線硬化性樹脂あるいはエポキシ系の紫外線硬化性樹脂を、スピンコーティング法などによって、第一の誘電体層15の表面に塗布して、塗膜を形成し、紫外線を照射して、塗膜を硬化させることによって、形成することができる。
以上のようにして、光記録媒体10が製造される。
以上のような構成を有する光記録媒体10に、たとえば、以下のようにして、データが記録される。
まず、図1に示されるように、所定のパワーを有するレーザビームL10が、光透過層16を介して、記録層14に照射される。
図2(a)は、図1に示された光記録媒体の一部拡大略断面図であり、レーザビームL10が、記録層14に照射される前の状態を示している。
データを高い記録密度で、光記録媒体10に記録するためには、450nm以下の波長を有するレーザビームL10を、開口数NAが0.7以上の対物レンズ(図示せず)を用いて、光記録媒体10上に集束することが好ましく、λ/NA≦640nmであることがより好ましい。この場合には、第一の反応層31の表面におけるレーザビームL10のビームスポット径は0.65μm以下になる。
本実施態様においては、405nmの波長を有するレーザビームL10が、開口数が0.85の対物レンズを用いて、第一の反応層31の表面におけるレーザビームL10のビームスポット径が約0.43μmとなるように、光記録媒体10上に集束される。
その結果、レーザビームL10が照射された領域において、第一の反応層31に主成分として含まれた元素と、第二の反応層32に主成分として含まれた元素とが混合されて、図2(b)に示されるように、第一の反応層31に主成分として含まれた元素と、第二の反応層32に主成分として含まれた元素とが混合されて、混合領域Mが形成される。
第一の反応層31に主成分として含まれた元素と、第二の反応層32に主成分として含まれた元素とが混合されると、その領域の反射率が大きく変化し、したがって、こうして形成された混合領域Mの反射率は、その周囲の領域の反射率と大きく異なることになるので、混合領域Mを記録マークMとして用いて、光記録媒体10にデータを記録し、光記録媒体10からデータを再生することが可能になる。
光記録媒体10に、レーザビームL10を照射して、データを記録する場合には、記録パワーPwと基底パワーPbを含むパルス列パターンにしたがって、レーザビームL10のパワーが変調される。
図1に示された次世代型の光記録媒体10においては、高い記録線速度で、データを記録することが要求され、追記型の光記録媒体においては、記録マークを形成するのに必要な記録パワーPwが、記録線速度の平方根に略比例するため、高い記録線速度で、光記録媒体10にデータを記録するためには、パルス列パターンにおける記録パワーPwを高いレベルに設定することが要求される。
しかしながら、次世代型の光記録媒体10にデータを記録する場合に用いられる450nm以下の低波長のレーザビームを発する半導体レーザは出力が低く、また、出力の高い半導体レーザは高価であるため、高い記録線速度で、光記録媒体10にデータを記録する場合にも、記録パワーPwをできるかぎり低いレベルに設定して、データが記録できるように、レーザビームL10のパワーを変調するパルス列パターンを選択することが要求される。
本発明者の研究によれば、低い記録パワーのレーザビームを用いて、高い記録線速度で、光記録媒体10にデータを記録するためには、単パルスパターンにしたがって、レーザビームL10のパワーを変調して、記録マークMを形成するために供給される総熱量が高くすることが効果的であるが、データの記録線速度が低い場合には、単パルスパターンにしたがって、レーザビームのパワーを変調して、記録マークを形成すると、供給される総熱量が過剰になって、記録マークの幅が大きくなり、クロストークが増大し、とくに、記録マークMの長さが長くなるほど、この傾向が顕著になることが見出されている。
そこで、本実施態様においては、データの記録線速度が高いほど、記録パワーPwからなるパルス数が少ないパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調し、記録マークを形成するように構成されている。
図3は、1,7RLL変調方式を用いた場合の記録マークの長さに対するレーザビームを変調するパルス列パターンのパルス数および記録線速度の関係を示すテーブルであり、具体的には、1,7RLL変調方式を用いた場合には、図3に示されるように、記録線速度および記録マークMの長さに応じて、パルス列パターンのパルス数が選択される。
すなわち、図3に示されるように、記録線速度が低い第1の記録線速度VLで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、レーザビームL10のパワーを変調するパルス列パターンとして、基本パルス列パターンが選択され、nT信号(nは、1,7RLL変調方式においては、2ないし8の整数である)を記録するときは、(n−1)個の分割パルスを含む基本パルス列パターンが用いられる。2T信号を記録する場合には、パルス数が1となり、単パルスパターンと同じパターンになる。
これに対して、記録線速度が高い第3の記録線速度VHで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、レーザビームL10のパワーを変調するパルス列パターンとして、単パルスパターンが選択される。ここに、第1の記録線速度VLと第3の記録線速度VMの関係は、2VL≦VHであることが好ましく、4VL≦VHであると、さらに好ましい。また、第3の記録線速度VHは、10m/sec以上であることが好ましく、より好ましくは、20m/sec以上である。
一方、第1の記録線速度VLよりも高く、第2の記録線速度VHよりも低い第2の記録線速度VMで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、形成されるべき記録マークMの長さが短いときは、レーザビームL10のパワーを変調するパルス列パターンとして、単パルスパターンが選択され、形成されるべき記録マークMの長さが長いときは、レーザビームL10のパワーを変調するパルス列パターンとして、基本パルス列パターンが選択される。
さらに、第1の記録線速度VLよりも高く、第2の記録線速度VHよりも低い第2の記録線速度VMで、光記録媒体10に、同じ長さの記録マークMを形成する場合には、記録線速度VMが低くなるほど、パルス列パターンに含まれる記録パワーPwのパルス数が多くなるように、パルス列パターンが設定され、一方、第1の記録線速度VLよりも高く、第2の記録線速度VHよりも低い第2の記録線速度VMで、光記録媒体10に記録マークMを形成する場合に、記録線速度VMが同じときは、形成すべき記録マークMの長さが長いほど、パルス列パターンに含まれる記録パワーPwのパルス数が多くなるように、パルス列パターンが設定される。
本実施態様において、基本パルス列パターンとしては、図9に示されるように、(n−2)個の分割パルスを含む基本パルス列パターンだけでなく、n個または(n−1)個の分割パルスを含む基本パルス列パターンも含まれ、8/16変調方式においては、(n−2)個の分割パルスを含む基本パルス列パターンを用い、1,7RLL変調方式においては、(n−1)個の分割パルスを含む基本パルス列パターンを用いることが好ましい。
図4は、第1の記録線速度VLで、光記録媒体10にデータを記録する場合のパルス列パターンを示す図であり、図4(a)は、2T信号を記録する場合のパルス列パターンを示し、図4(b)は、3T信号ないし8T信号を形成する場合のパルス列パターンを示している。
図4(a)および図4(b)に示されるように、第1の記録線速度VLで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、記録マークMを形成するための記録パルスが、(n−1)個に分割され、レーザビームL10のパワーは、各分割パルスのピークにおいて、記録パワーPwLに、その他の期間において、基底パワーPbLに設定される。
このように、記録線速度が低い第1の記録線速度VLで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、記録マークMを形成するための記録パルスが、(n−1)個に分割され、レーザビームL10のパワーは、各分割パルスのピークにおいて、記録パワーPwLに、その他の期間において、基底パワーPbLに設定されているから、記録マークMを形成するために、供給される総熱量が過大となることが防止されるから、記録マークMの幅が広がって、クロストークが増大することを効果的に防止することができる。
記録パワーPwは、レーザビームL10の照射によって、第一の反応層31に主成分として含まれる元素と、第2の反応層32に主成分として含まれる元素が加熱されて、混合し、記録マークMが形成されるような高いレベルに設定され、一方、基底パワーPbは、基底パワーPb1のレーザビームL10が照射されても、第一の反応層31に主成分として含まれる元素と、第2の反応層32に主成分として含まれる元素が実質的に混合することがないような低いレベルに設定される。
ここに、基底パワーPbLのレベルは、図4(a)および図4(b)に示されるように、再生パワーPrよりも高いレベルに設定されている。
このように、基底パワーPbLのレベルを、再生パワーPrよりも高いレベルに設定することによって、記録パワーPwLのレーザビームL10による加熱を、基底パワーPbLのレーザビームによって、補助することができ、したがって、記録パワーPwLを低いレベルに設定することが可能になる。
図5は、第3の記録線速度VHで、光記録媒体10にデータを記録する場合のパルス列パターンを示す図である。
図5に示されるように、第3の記録線速度VHで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、レーザビームL10のパワーを変調するためのパルス列パターンとして、単パルスパターンが選択され、レーザビームL10のパワーは、記録マークMを形成すべき領域において、記録パワーPwHに、その他の期間において、基底パワーPbHになるように変調される。
したがって、記録マークMを形成するために供給される総熱量を高くすることができ、したがって、記録パワーPwHを低いレベルに設定することが可能になる。
記録パワーPwHは、レーザビームL10の照射によって、第一の反応層31に主成分として含まれる元素と、第二の反応層32に主成分として含まれる元素が加熱されて、混合し、記録マークMが形成されるような高いレベルに設定され、基底パワーPbLは、基底パワーPbLのレーザビームL10が照射されても、第二の反応層31に主成分として含まれる元素と、第二の反応層32に主成分として含まれる元素が実質的に混合することがないような低いレベルに設定される。
基底パワーPbHのレベルは、再生パワーPrよりも高いレベルに設定されることが好ましい。基底パワーPbHのレベルを、再生パワーPrよりも高いレベルに設定することによって、記録パワーPwHのレーザビームL10による加熱を、基底パワーPbHのレーザビームによって、補助することができ、したがって、記録パワーPwHを低いレベルに設定することが可能になる。
図6は、第1の記録線速度VLよりも高く、第3の記録線速度VHよりも低い第2の記録線速度VMで、光記録媒体10にデータを記録する場合のパルス列パターンを示す図であり、図6(a)は2T信号ないし5T信号を形成する場合のパルス列パターンを示し、図6(b)は6T信号ないし8T信号を形成する場合のパルス列パターンを示している。
図6(a)に示されるように、第3の記録線速度VHよりも低い第2の記録線速度VMで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、2T信号ないし5T信号を記録するときには、レーザビームL10のパワーを変調するためのパルス列パターンとして、単パルスパターンが選択され、6T信号ないし8T信号を記録するときには、2個ないし4個の分割パルスを含む基本パルス列パターンが選択される。この場合、レーザビームL10のパワーは、単パルスおよび分割パルスのピークにおいて、記録パワーPwMに、その他の期間において、基底パワーPbMになるように変調される。
このように、レーザビームL10を変調するパルス列パターンを設定することによって、2T信号ないし5T信号を記録する場合には、記録マークMを形成するために、供給される総熱量が大きくなるから、記録パワーPwMのレベルを低いレベルに設定することが可能になるとともに、記録マークMを形成するために、過大な熱量が供給されることがないから、6T信号ないし8T信号を用いて、形成された長い記録マークの幅が広がって、クロストークが増大することを効果的に防止することが可能になる。
記録パワーPwMは、レーザビームL10の照射によって、第一の反応層31に主成分として含まれる元素と、第二の反応層32に主成分として含まれる元素が加熱されて、混合し、記録マークMが形成されるような高いレベルに設定され、基底パワーPbMは、基底パワーPbMのレーザビームL10が照射されても、第二の反応層31に主成分として含まれる元素と、第二の反応層32に主成分として含まれる元素が実質的に混合することがないような低いレベルに設定される。
基底パワーPbMのレベルは、再生パワーPrよりも高いレベルに設定される。基底パワーPbMのレベルを、再生パワーPrよりも高いレベルに設定することによって、記録パワーPwMのレーザビームL10による加熱を、基底パワーPbMのレーザビームによって、補助することができ、したがって、記録パワーPwMを低いレベルに設定することが可能になる。
第1の記録線速度VLで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbL、第3の記録線速度VHで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbHおよび第2の記録線速度VMで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbMは、PbL<PbM≦PbHであることが好ましく、3PbL≦PbM≦PbHであることがより好ましく、5PbL≦PbM<PbHであることが最も好ましい。
また、第1の記録線速度VLで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbLと記録パワーPwLとの比(PbL/PwL)、第3の記録線速度VHで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbHと記録パワーPwHとの比(PbH/PwH)および第2の記録線速度VMで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbMと記録パワーPwMとの比(PbM/PwM)が、(PbL/PwL)<(PbM/PwM)≦(PbH/PwH)となるように、それぞれのパルス列パターンが設定されることが好ましく、さらに好ましくは、3(PbL/PwL)≦(PbM/PwM)≦(PbH/PwH)であり、最も好ましくは、5(PbL/PwL)≦(PbM/PwM)≦(PbH/PwH)である。
レーザビームのパワーを変調するパルス列パターンの記録パワーおよび基底パワーを、このように設定することによって、複数の記録線速度の中から、所望の記録線速度を選択して、データを記録可能なシステム(マルチスピード記録)において、異なる記録線速度で、データを記録する場合に、記録パワーPwのレベルをほぼ同じレベルに設定することが可能になる。
したがって、本実施態様においては、記録パワーPwMを低いレベルに設定することができ、しかも、異なる記録線速度で、データを記録する場合に、記録パワーPwのレベルをほぼ同じレベルに設定することが可能になるから、比較的安価で、低出力の半導体レーザを使用することが可能となる。
本実施態様によれば、記録線速度が高い第3の記録線速度VHで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、レーザビームL10のパワーを変調するパルス列パターンとして、単パルスパターンが選択されるように構成されているから、記録マークMを形成するために供給される総熱量を高くすることができ、したがって、記録パワーPwHを低いレベルに設定して、光記録媒体10にデータを記録することが可能になるから、比較的安価で、低出力の半導体レーザを使用することが可能になる。
また、本実施態様によれば、記録線速度が低い第1の記録線速度VLで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、レーザビームL10のパワーを変調するパルス列パターンとして、基本パルス列パターンが選択され、nT信号(nは、1,7RLL変調方式においては、2ないし8の整数である)を記録するときは、(n−1)個の分割パルスを含む基本パルス列パターンが用いられるように構成されているから、記録マークMを形成するために、供給される総熱量が過大になって、記録マークMの幅が広がり、クロストークが増大することを効果的に防止することができる。
さらに、本実施態様によれば、第1の記録線速度VLよりも高く、第3の記録線速度VHよりも低い第2の記録線速度VMで、光記録媒体10にデータを記録する場合には、図6に示されるように、形成されるべき記録マークMの長さが短いときは、レーザビームL10のパワーを変調するパルス列パターンとして、単パルスパターンが選択され、形成されるべき記録マークMの長さが長いときは、レーザビームL10のパワーを変調するパルス列パターンとして、基本パルス列パターンが選択されるから、記録マークMを形成するために、供給される総熱量が過大になって、記録マークMの幅が広がり、クロストークが増大することを効果的に防止することが可能になるとともに、記録パワーPwMを低いレベルに設定して、光記録媒体10にデータを記録することができ、比較的安価で、低出力の半導体レーザを使用することが可能となる。
また、本実施態様によれば、第1の記録線速度VLで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbL、第3の記録線速度VHで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbHおよび第2の記録線速度VMで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbMが、好ましくは、PbL<PbM≦PbHとなるように設定され、より好ましくは、3PbL≦PbM≦PbH、さらに好ましくは、5PbL≦PbM<PbHとなるように、設定されているから、記録線速度が低く、そのパワーが記録パワーに設定されたレーザビームL10によって供給される熱量が少なくなる場合に、そのパワーが基底パワーに設定されたレーザビームによって、記録パワーのレーザビームL10によって供給される熱量の不足を補うことができ、したがって、比較的安価で、低出力の半導体レーザを用いて、所望のように、記録マークを形成し、データを記録することが可能になる。
さらに、本実施態様においては、第1の記録線速度VLで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbL、第3の記録線速度VHで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbHおよび第2の記録線速度VMで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbMが、好ましくは、PbL<PbM≦PbHとなるように設定され、より好ましくは、3PbL≦PbM≦PbH、さらに好ましくは、5PbL≦PbM<PbHとなるように、設定されるとともに、第1の記録線速度VLで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbLと記録パワーPwLとの比(PbL/PwL)、第3の記録線速度VHで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbHと記録パワーPwHとの比(PbH/PwH)および第2の記録線速度VMで、データを記録する場合に用いられるパルス列パターンの基底パワーPbMと記録パワーPwMとの比(PbM/PwM)が、好ましくは、(PbL/PwL)<(PbM/PwM)≦(PbH/PwH)となるように設定され、より好ましくは、3(PbL/PwL)≦(PbM/PwM)≦(PbH/PwH)、最も好ましくは、5(PbL/PwL)≦(PbM/PwM)≦(PbH/PwH)となるように設定されているから、複数の記録線速度の中から、所望の記録線速度を選択して、データを記録可能なシステム(マルチスピード記録)において、異なる記録線速度で、データを記録する場合に、記録パワーPwのレベルをほぼ同じレベルに設定することが可能になる。
したがって、本実施態様によれば、高い記録線速度で、光記録媒体10にデータを記録する場合にも、比較的安価で、低出力の半導体レーザを使用することが可能となる。
図7は、本発明の好ましい実施態様にかかる光記録媒体への情報記録装置のブロックダイアグラムである。
図7に示されるように、本実施態様にかかる情報記録装置50は、光記録媒体10を回転させるためのスピンドルモータ52と、光記録媒体10に、レーザビームを照射するとともに、光記録媒体10によって、反射された光を受光するヘッド53と、スピンドルモータ52およびヘッド53の動作を制御するコントローラ54と、ヘッド53に、レーザ駆動信号を供給するレーザ駆動回路55と、ヘッド53に、レンズ駆動信号を供給するレンズ駆動回路56とを備えている。
図7に示されるように、コントローラ54は、フォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58およびレーザコントロール回路59を備えている。
フォーカスサーボ追従回路57が活性化すると、回転している光記録媒体10の第一の記録層31に、レーザビームL10がフォーカスされ、トラッキングサーボ追従回路58が活性化すると、光記録媒体10のトラックに対して、レーザビームのスポットが自動追従状態となる。
図7に示されるように、フォーカスサーボ追従回路57およびトラッキングサーボ追従回路58は、それぞれ、フォーカスゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能およびトラッキングゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能を有している。
また、レーザコントロール回路59は、レーザ駆動回路55により供給されるレーザ駆動信号を生成する回路である。
本実施態様においては、上述したパルス列パターンを特定するためのデータが、データを記録する際に必要な記録線速度などの種々の記録条件を特定するためのデータとともに、記録条件設定用データとして、光記録媒体10に、ウォブルやプレピットの形で、記録されている。
したがって、レーザコントロール回路59は、データを記録するのに先立って、光記録媒体10に記録された記録条件設定用データを読み出し、読み出した記録条件設定用データに基づいて、所望のパルス列パターンを選択し、レーザ駆動信号を生成し、レーザ駆動回路55からヘッド53に出力させる。
こうして、所望の記録ストラテジにしたがって、光記録媒体10にデータが記録される。
本実施態様によれば、光記録媒体10には、レーザビームL10のパワーを変調するために用いるパルス列パターンを特定するためのデータが、データを記録する際に必要な記録線速度などの種々の記録条件を特定するためのデータとともに、記録条件設定用データとして、記録されており、光記録媒体10にデータを記録するのに先立って、レーザコントロール回路59により、記録条件設定用データが読み出され、読み出された記録条件設定用データに基づいて、所望のパルス列パターンが選択され、光記録媒体10に、レーザビームを照射するヘッド53が制御されるように構成されているから、所望の記録ストラテジにしたがって、光記録媒体10にデータを記録することが可能になる。
以下、本発明の効果をより明瞭なものとするため、実施例を掲げる。
実施例1
以下のようにして、図1に示される光記録媒体1と同様の構成を有する光記録媒体を作製した。
すなわち、まず、厚さ1.1mm、直径120mmのポリカーボネート基板をスパッタリング装置にセットし、次いで、ポリカーボネート基板上に、Ag、PdおよびCuの混合物を含み、100nmの層厚を有する反射層、ZnSとSiO2の混合物を含み、30nmの層厚を有する第二の誘電体層、Cuを主成分として含み、5nmの層厚を有する第二の記録層、Siを主成分として含み、5nmの層厚を有する第一の記録層、ZnSとSiO2の混合物を含み、25nmの層厚を有する第一の誘電体層を、順次、スパッタリング法によって、形成した。
第一の誘電体層および第二の誘電体層に含まれたZnSとSiO2の混合物中のZnSとSiO2のモル比率は、80:20であった。
さらに、第一の誘電体層上に、アクリル系紫外線硬化性樹脂を、スピンコーティング法によって、塗布して、塗布層を形成し、塗布層に紫外線を照射して、アクリル系紫外線硬化性樹脂を硬化させ、100μmの層厚を有する光透過層を形成した。
こうして作製した光記録媒体を、パルステック工業株式会社製の光記録媒体評価装置「DDU1000」(商品名)にセットし、波長が405nmの青色レーザ光を、記録用レーザ光として用い、NA(開口数)が0.85の対物レンズを用いて、レーザ光を、光透過層を介して、集光し、データを記録した。
記録信号としては、2Tないし8Tのランダム信号を用い、記録信号にかかわらず、(n−1個)の分割パルスを含む第1のパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調して、データを記録した。
第1のパルス列パターンの基底パワーPbは0.5mWに固定し、記録パワーPwを変化させて、第1の記録線速度VL、第2の記録線速度VMおよび第3の記録線速度VHで、データを記録した。
第1の記録線速度VLは、5.3m/sec(チャンネルクロック:66MHz)に設定し、第2の記録線速度VMは、10.6m/sec(チャンネルクロック:132MHz)に設定し、第3の記録線速度VHは、21.2m/sec(チャンネルクロック:263MHz)に設定した。
第1の記録線速度VLにおいては、フォーマット効率を80%とした場合のデータ転送レートは約35Mbpsであり、最短ブランク長と記録線速度との比(最短ブランク長/記録線速度)は、30.4nsecであった。また、第2記録線速度VMにおいては、フォーマット効率を80%とした場合のデータ転送レートは約70Mbpsであり、最短ブランク長と記録線速度との比(最短ブランク長/記録線速度)は、15.2nsecであった。さらに、第3記録線速度VHにおいては、フォーマット効率を80%とした場合のデータ転送レートは約140Mbpsであり、最短ブランク長と記録線速度との比(最短ブランク長/記録線速度)は、7.6nsecであった。
次いで、上述の光媒体評価装置を用いて、光記録媒体に記録されたデータを再生して、再生信号のクロックジッターが最小になったときのレーザビームの記録パワーPwを求め、最適な記録パワーとした。データの再生にあたっては、レーザ光の波長を405nm、対物レンズのNA(開口数)を0.85とした。再生信号のクロックジッターは、タイムインターバルアナライザにより、再生信号の「ゆらぎ(σ)」を求め、σ/Twにより算出した。ここに、Twはクロックの1周期である。
測定結果は、表1に示されている。
実施例2
2T信号ないし5T信号を記録するときには、単パルスパターンが選択され、6T信号ないし8T信号を記録するときには、2個ないし4個の分割パルスを含む基本パルス列パターンが選択されるように構成された第2のパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調した以外は、実施例1と同様にして、光記録媒体にデータを記録し、記録されたデータを再生して、再生信号のクロックジッターが最小になったときのレーザビームの記録パワーPwを求め、最適な記録パワーとした。
測定結果は、表1に示されている。
実施例3
記録信号にかかわらず、単パルスパターンが選択されるように構成された第3のパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調した以外は、実施例1と同様にして、光記録媒体にデータを記録し、記録されたデータを再生して、再生信号のクロックジッターが最小になったときのレーザビームの記録パワーPwを求め、最適な記録パワーとした。
測定結果は、表1に示されている。
表1に示されるように、基底パワーPbを0.5mWに固定した場合には、記録線速度が高くなるほど、最適な記録パワーが高くなることが認められた。
また、いずれの記録線速度においても、最適な記録パワーは、第1のパルス列パターン、第2のパルス列パターン、第3のパルス列パターンの順に、低くなることがわかった。
ただし、使用した光ディスク評価装置のレーザビームの強度変調速度の限界から、第3の記録線速度VHでは、第1のパルス列パターンにしたがって、レーザビームを変調して、データを記録することができなかった。
実施例4
第1の記録線速度VLで、光記録媒体にデータを記録する場合に、第1のパルス列パターンの基底パワーPbを1.5mWに設定し、第2の記録線速度VMで、光記録媒体にデータを記録する場合に、第1のパルス列パターンの基底パワーPbを2.0mWに設定し、第3の記録線速度VHで、光記録媒体にデータを記録する場合に、第1のパルス列パターンの基底パワーPbを2.5mWに設定した以外は、実施例1と同様にして、光記録媒体にデータを記録し、記録されたデータを再生して、再生信号のクロックジッターが最小になったときのレーザビームの記録パワーPwを求め、最適な記録パワーとした。
測定結果は表2に示されている。
表2において、括弧内の数値は、実施例1によって、得られた最適記録パワーとの差である。
実施例5
第1の記録線速度VLで、光記録媒体にデータを記録する場合に、第2のパルス列パターンの基底パワーPbを1.5mWに設定し、第2の記録線速度VMで、光記録媒体にデータを記録する場合に、第2のパルス列パターンの基底パワーPbを2.0mWに設定し、第3の記録線速度VHで、光記録媒体にデータを記録する場合に、第2のパルス列パターンの基底パワーPbを2.5mWに設定した以外は、実施例1と同様にして、光記録媒体にデータを記録し、記録されたデータを再生して、再生信号のクロックジッターが最小になったときのレーザビームの記録パワーPwを求め、最適な記録パワーとした。
測定結果は表2に示されている。
表2において、括弧内の数値は、実施例2によって、得られた最適記録パワーとの差である。
実施例6
第1の記録線速度VLで、光記録媒体にデータを記録する場合に、第3のパルス列パターンの基底パワーPbを1.5mWに設定し、第2の記録線速度VMで、光記録媒体にデータを記録する場合に、第3のパルス列パターンの基底パワーPbを2.0mWに設定し、第3の記録線速度VHで、光記録媒体にデータを記録する場合に、第3のパルス列パターンの基底パワーPbを2.5mWに設定した以外は、実施例1と同様にして、光記録媒体にデータを記録し、記録されたデータを再生して、再生信号のクロックジッターが最小になったときのレーザビームの記録パワーPwを求め、最適な記録パワーとした。
測定結果は表2に示されている。
表2において、括弧内の数値は、実施例3によって、得られた最適記録パワーとの差である。
表2に示されるように、第1の記録線速度VLで、光記録媒体にデータを記録する場合に、パルス列パターンの基底パワーPbを1.5mWに設定し、第2の記録線速度VMで、光記録媒体にデータを記録する場合に、パルス列パターンの基底パワーPbを2.0mWに設定し、第3の記録線速度VHで、光記録媒体にデータを記録する場合に、パルス列パターンの基底パワーPbを2.5mWに設定した場合には、いずれのパルス列パターンを用いた場合でも、パルス列パターンの基底パワーPbを0.5mWに設定した場合に比して、最適な記録パワーPwの値が低下することがわかった。
また、記録線速度が高いほど、最適な記録パワーPwの低下が大きくなることが認められた。これは、記録線速度が高いほど、隣り合った記録マークから受ける熱の影響が大きく、したがって、パルス列パターンの基底パワーPbのレベルを高いレベルに設定したことによる最適な記録パワーPwの低下も、記録線速度が高いほど、大きくなるためと予測される。
実施例7
記録パワーPwを、実施例4によって得られた最適な記録パワーに設定し、実施例4と同様にして、1本のトラックに、2Tないし8Tのランダム信号を記録し、記録した信号を再生して、再生信号のクロックジッターを測定した。以下、こうして測定されたクロックジッターを、「シングルジッター」という。
さらに、同じ記録条件で、隣り合った3本のトラックに、2Tないし8Tのランダム信号を記録し、中央のトラックに記録した信号を再生して、再生信号のクロックジッターを測定した。以下、こうして測定されたクロックジッターを、「クロスジッター」という。
次いで、記録線速度ごとに、シングルジッターとクロスジッターとの差を算出した。
算出結果は表3に示されている。
実施例8
記録パワーPwを、実施例5によって得られた最適な記録パワーに設定し、実施例5と同様にして、1本のトラックに、2Tないし8Tのランダム信号を記録し、記録した信号を再生して、再生信号のシングルジッターを測定した。
さらに、同じ記録条件で、隣り合った3本のトラックに、2Tないし8Tのランダム信号を記録し、中央のトラックに記録した信号を再生して、再生信号のクロスジッターを測定した。
次いで、記録線速度ごとに、シングルジッターとクロスジッターとの差を算出した。
算出結果は表3に示されている。
実施例9
記録パワーPwを、実施例6によって得られた最適な記録パワーに設定し、実施例6と同様にして、1本のトラックに、2Tないし8Tのランダム信号を記録し、記録した信号を再生して、再生信号のシングルジッターを測定した。
さらに、同じ記録条件で、隣り合った3本のトラックに、2Tないし8Tのランダム信号を記録し、中央のトラックに記録した信号を再生して、再生信号のクロスジッターを測定した。
次いで、記録線速度ごとに、シングルジッターとクロスジッターとの差を算出した。
算出結果は表3に示されている。
表3に示されるように、第1の記録線速度VLおよび第2の記録線速度VMで、データを記録した場合には、第1のパルス列パターン、第2のパルス列パターン、第3のパルス列パターンの順に、シングルジッターとクロスジッターとの差が大きくなり、クロストークが増大することがわかった。これは、第1のパルス列パターン、第2のパルス列パターン、第3のパルス列パターンの順に、形成された記録マークの幅が広くなったためと考えられる。
また、第2の記録線速度VMで、データを記録した場合に比し、第1の記録線速度VLで、データを記録した場合には、第1のパルス列パターン、第2のパルス列パターン、第3のパルス列パターンの順に、シングルジッターとクロスジッターとの差がより大きくなることが判明した。
一方、第3の記録線速度VHで、データを記録した場合には、第2のパルス列パターンを用いた場合と第3のパルス列パターンを用いた場合とで、シングルジッターとクロスジッターとの差に変化は認められなかった。
実施例1ないし実施例9から、第1の記録線速度VLで、データを記録する場合に、第2のパルス列パターンあるいは第3のパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調するときは、クロストークが増大するから、第1の記録線速度VLで、データを記録する場合には、第1のパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調することが望ましいことがわかった。これは、第1の記録線速度VLで、データを記録する場合には、記録線速度が低いため、記録パワーPwのレベルを高くすることはもともと要求されてはおらず、記録パワーPwのレベルを高くするとクロストークが増大するからである。
また、実施例1ないし実施例9から、第2の記録線速度VMで、データを記録する場合には、第1のパルス列パターン、第2のパルス列パターン、第3のパルス列パターンの順に、クロストークが増大するが、第2の記録線速度VMで、データを記録する場合には、記録パワーPwのレベルを低下させることがより重要であるため、第2のパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調することが望ましいことがわかった。
さらに、実施例1ないし実施例9から、第3の記録線速度VHで、データを記録する場合には、第3のパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調したときに、記録パワーPwのレベルを最も低いレベルに設定することができ、また、第2のパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調したときと、クロストークのレベルにも差が認められないから、第3の記録線速度VHで、データを記録する場合には、第3のパルス列パターンを用いて、レーザビームのパワーを変調することが望ましいことがわかった。
本発明は、以上の実施態様および実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
たとえば、前記実施態様および前記実施例においては、光記録媒体10の記録層14が、互いに接触するように形成された第一の反応層31と第二の反応層32とによって構成されているが、光記録媒体10の記録層14は、第一の反応層31と第二の反応層32を含んでいればよく、記録層14を、互いに接触するように形成された第一の反応層31と第二の反応層32とによって構成することは必ずしも必要でない。記録層14は、3層以上の反応層を備えていてもよく、たとえば、光記録媒体10の記録層14が、2つの第一の反応層31と、2つの第一の反応層31の間に配置された第二の反応層32とによって構成されていてもよい。
また、前記実施態様および前記実施例においては、光記録媒体10は、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13を備え、記録層14が、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13の間に配置されているが、光記録媒体10が、第一の誘電体層15および第二の誘電体層13を備えていることは必ずしも必要でなく、単一の誘電体層を有していてもよいし、誘電体層を備えていなくてもよい。
さらに、前記実施態様および前記実施例においては、光記録媒体10は反射層12を備えているが、レーザ光が照射された結果、第一の反応層31に主成分として含まれた元素と、第二の反応層32に主成分として含まれた元素が混合して形成された記録マークMにおける反射光のレベルと、それ以外の領域における反射光のレベルの差が十分に大きい場合には、反射層12を省略することができる。
また、図7に示された実施態様においては、レーザビームL10のパワーを変調するために使用すべきパルス列パターンを特定するためのデータが、データを記録する際に必要な記録線速度などの種々の記録条件を特定するためのデータとともに、記録条件設定用データとして、ウォブルやプレピットの形で、光記録媒体10に記録されているが、レーザビームL10のパワーを変調するために使用すべきパルス列パターンを特定するためのデータを、データを記録する際に必要な記録線速度などの種々の記録条件を特定するためのデータとともに、記録条件設定用データを、ウォブルやプレピットの形で、光記録媒体10に記録しておくことは必ずしも必要でなく、光記録媒体10の第一の反応層31あるいは第二の反応層32に、記録条件設定用データを記録するようにしてもよい。
さらに、図7に示された実施態様においては、レーザビームL10のパワーを変調するために使用すべきパルス列パターンを特定するためのデータが、データを記録する際に必要な記録線速度などの種々の記録条件を特定するためのデータとともに、記録条件設定用データとして、光記録媒体10に、ウォブルやプレピットの形で、記録されているが、レーザビームL10のパワーを変調するために使用すべきパルス列パターンを特定するためのデータおよびデータを記録する際に必要な記録線速度などの種々の記録条件を特定するためのデータを、記録条件設定用データとして、光記録媒体10に記録しておくことは必ずしも必要でなく、レーザビームL10のパワーを変調するために使用すべきパルス列パターンを特定するためのデータのみが、記録条件設定用データとして、光記録媒体10に記録されていてもよい。
また、図7に示された実施態様においては、レーザビームL10のパワーを変調するために使用すべきパルス列パターンを特定するためのデータが、データを記録する際に必要な記録線速度などの種々の記録条件を特定するためのデータとともに、記録条件設定用データとして、光記録媒体10に、ウォブルやプレピットの形で、記録されているが、レーザビームL10のパワーを変調するために使用すべきパルス列パターンを特定するためのデータおよびデータを記録する際に必要な記録線速度などの種々の記録条件を特定するためのデータを、記録条件設定用データとして、光記録媒体10に記録しておくことは必ずしも必要でなく、情報記録装置内に、レーザビームL10のパワーを変調するために使用すべきパルス列パターンを特定するためのデータおよび記録条件を特定するためのデータを、あらかじめ格納しておき、記録条件設定用データとして、それらに基づいて、情報記録装置内にあらかじめ格納されているデータを特定することができ、間接的に、選択すべき記録ストラテジを特定可能なデータを、光記録媒体10に記録しておくようにすることもできる。
さらに、図7に示された実施態様においては、フォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58およびレーザコントロール回路59が、コントローラ54内に組み込まれているが、フォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58およびレーザコントロール回路59を、コントローラ54内に組み込むことは必ずしも必要でなく、コントローラ54とは別体に、フォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58およびレーザコントロール回路59を設けることもできるし、フォーカスサーボ追従回路57、トラッキングサーボ追従回路58およびレーザコントロール回路59の機能を果たすソフトウエアを、コントローラ54内に組み込むようにしてもよい。
また、前記実施態様においては、データの記録線速度が低くなるほど、記録マークMの幅が広がりやすく、クロストークが増大するため、データの記録線速度に基づいて、パルス列パターンを選択しているが、本発明者の研究によれば、記録マークMの幅が広がることに起因するクロストークは、トラックピッチが狭く、ビームスポット径が大きいほど、増大することが認められており、したがって、記録線速度に代えて、あるいは、記録線速度とともに、トラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)を用いて、パルス列パターンを選択するようにしてもよい。記録線速度に代えて、トラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)を用いて、パルス列パターンを選択する場合には、トラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)が相対的に大きいときは、図5に示される単パルスパターンを選択し、トラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)が相対的に小さいときは、図4に示される基本パルス列パターンを選択し、さらに、トラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)がこの中間で、小さくも、大きくもないときは、基本パルス列パターンと単パルスパターンとを併用すればよい。基本パルス列パターンと単パルスパターンとを併用する場合には、トラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)が小さいほど、パルス列パターンに含まれる記録パワーPwからなるパルスの数が多くなるように、パルス列パターンを設定し、トラックピッチTPとビームスポット径Dとの比(TP/D)が大きくなるほど、パルス列パターンに含まれる記録パワーPwからなるパルスの数が少なくなるように、パルス列パターンを設定することが好ましい。
さらに、前記実施態様および前記実施例においては、高出力の半導体レーザを用いることが要求される次世代型の光記録媒体にデータを記録する場合につき、説明を加えたが、本発明は、次世代型の光記録媒体にデータを記録する場合に限らず、次世代型の光記録媒体以外の追記型光記録媒体に、データを記録する場合に広く適用することができる。