JP3953836B2 - トノカバー装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用のトノカバーを引き出し可能に巻取り収納するトノカバー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車などの室内には、室内に入射する外光を遮るためのサンシェードや、荷室内の荷物を覆うためのトノカバーといったシート体が装備されていることが多い。また、プロジェクタ装置で画像を投射する際にはスクリーンが用いられる。これらは、非使用時に邪魔にならないように、巻取り機構を備えた収納ケース内に収納され、必要に応じて収納ケースから引き出して使用するといった、シート体巻取り装置の形態とされている。
【0003】
この種の従来のシート体巻取り装置は、一般に、シート体と、このシート体を巻き取った状態で収納する筒状の収納ケースとを有している。収納ケースの内部には、シート体の一端縁部が固着された巻取り軸が回転可能に支持されている。巻取り軸は、巻取り機構によってシート体の巻取り方向に付勢されている。また、収納ケースには、その長手方向にわたってスリット状の開口部が形成されており、シート体はこの開口部を経て、収納ケース内に巻き込まれたり、収納ケースの外部へ引き出される。シート体の他端縁部には、収納ケースの開口部の幅または長さより大きな部分を有する部材が固着されている。したがって、シート体の他端縁部は、収納ケースの内部に巻き込まれることはなく、シート体を収納ケースから引き出す際の把持部となる。
【0004】
シート体を使用する際には、シート体の把持部をつかみ、巻取り機構の付勢力に抗して収納ケースからシート体を引き出し、シート体の他端縁部に設けられた係合部を適宜位置に係合させてシート体が引き出された状態を維持する。一方、シート体を使用しないときには、係合部の係合を解除する。これにより、シート体は巻取り機構の付勢力によって巻取り軸に巻き取られ、収納ケース内に収納される。このとき、シート体の他端縁部に固着された部材が収納ケースに当接し、これによって巻取り動作が停止する。
【0005】
上述したシート体巻取り装置は、シート体の引き出しおよび巻取り操作が極めて簡単であるため、自動車用途の特にトノカバー装置に広く用いられている。
【0006】
しかし、トノカバーのように収納ケースからの引き出し量が大きい設定となる場合、引き出されたシート体を把持部まで巻き取れるようにするためには、巻取り軸に大きな付勢力を与える必要がある。そのため、シート体の使用後に係合部の係合を解除したとき、シート体が大きな力で一気に巻取り軸に巻き取られ、把持部が高速で収納ケースに衝突する。その際に、不快な衝突音を発するという問題があり、また、シート体巻取り装置の故障の原因ともなりかねない。
【0007】
こういった問題を解決するため、実開昭59−17494号には、シート体の引き出し端裏面側に、面状で大きな厚みのクッション性のシートを貼着したものが開示されている。実開平6−50995号には、図6に示すように、シート体115の引き出し部の側縁近傍裏面に、シート体115が収納ケース111内に巻き取られたときに収納ケース111と当接する、樹脂製のストッパ材120を溶着したものが開示されている。これらクッション性のシートやストッパ材は緩衝材としての機能を果たし、把持縁が収納ケースに衝突したときの衝撃を緩和するものである。
【0008】
また、実開昭59−185148号には、収納ケースの内部に、シート体の巻取りの最終段階でシート体の表面に弾性的に接触する制動装置を設けたものが開示されている。さらに、従来のシート体巻取り装置の他の例として、シート体の巻取り動作を制限するのではなく、巻取り軸の軸端部にオイルダンパを入れて巻取り力自体を緩和させるものもある。
【0009】
ところで、シート体の把持部は、前述のように、シート体が収納ケース内に巻き取られた状態でも収納ケースの外部に位置している。そのため、トノカバー装置のようにシート体を水平方向に引き出して使用する場合、収納ケースの外部に残されている把持部を自重で垂れ下がらないように支持することが、シート体の引き出し操作性および見栄えの向上のために好ましい。特開2000−289529号公報には、シート体の引き出し側の端部の両端に、収納ケースの開口部に対して係合する係合部を設け、この係合部を収納ケースの開口部に係合させてシート体の引き出し側端部の姿勢を保持することによって、シート体の巻取り状態における把持部の垂れ下がりを防止するようにしたものが開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のシート体巻取り装置には、以下に示すような問題点があった。
【0011】
実開昭59−17494号や実開平6−50995号に開示された、シート体の引き出し端部に緩衝材を設けたものでは、緩衝作用は緩衝材の弾性変形を利用したものであるので、緩衝材が収納ケースに当接してからシート体が停止するまでのストロークが短く、緩衝材は実質的には収納ケースに衝突した瞬間にのみにしか作用しない。つまり、緩衝材を設けただけでは期待するほどの効果は得られない。
【0012】
また、実開昭59−185148号に開示されたように、収納ケース内に制動装置を設けたものでは、収納ケースの内部に機械的な構造物を付加するので構造が複雑になることが避けられない。また、この制動装置による制動力は、使用者が収納ケースからシート体を引き出す際にも作用するので、シート体の引き出し時の負荷が大きくなってしまう。
【0013】
さらに、オイルダンパを用いて巻取り力を緩和させたものでは、オイルの粘度に温度依存性があるため、温度によってオイルダンパの性能が変化してしまう。このことは、特にシート体巻取り装置が自動車用のトノカバーやサンシェードなどである場合のように幅広い温度環境下で使用される場合に不利となる。自動車に搭載される各種ユニットは、マイナス数十℃からプラス80℃を超えるような温度範囲での使用も考慮して設計される。したがって、オイルダンパを用いたシート体巻取り装置を自動車に装備しようとした場合、低温化でダンパが効きすぎるが、その逆に高温下ではダンパ作用が弱くなるといった現象が生じ、その調整が難しい。
【0014】
一方、特開2000−289529号公報に開示されたものは、シート体の引き出し側端部に設けられた係合部を収納ケースの開口部に係合させるものであるが、両者の係合はいわゆるスナップ嵌めによるものであるので、嵌め合い状態を適切に設定しないと、シート体の円滑な引き出し操作が阻害されてしまう。
【0015】
本発明の目的は、トノカバーの引き出し時の負荷を大きくすることなくトノカバー巻取り時の衝撃を効果的に緩和するトノカバー装置を提供することである。
【0016】
また本発明の他の目的は、水平方向に引き出されて使用されるトノカバーの、非使用状態において収納ケースの外に残っている引き出し側端部の自重による垂れ下がりが生じないトノカバー装置を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のトノカバー装置は、トノカバーと、トノカバーの幅より大きい長さで形成された開口部が形成され該開口部を介して水平方向に引き出し可能にトノカバーを巻取り収納する収納ケースと、収納ケース内に設けられ、トノカバーの巻取り側端部が固着されるとともにトノカバーの巻取り方向に付勢された巻取り軸とを有し、トノカバーの引き出し側端部には、収納ケース内に巻き取られず収納ケースの外部に残るボード固着されている、トノカバー装置において、
ボードに、トノカバーの巻取り時に収納ケースに当接し、トノカバーの巻取り動作を伴ってトノカバーの巻取り速度を減速する緩衝手段が設けられており、
緩衝手段は、
収納ケースに当接する当接部材と、
ボードに固着され当接部材を前記トノカバーの引き出し方向に進退移動可能に保持する保持部材と、
当接部材を収納ケースに向けて付勢するばねと、
を有し、
保持部材と当接部材は協働して空気室を形成しており、当接部材には、空気室の内部と緩衝手段の外部とを連絡する通気路が形成されており、
当接部材は、収納ケースに面接触する当接面を有する、
ことを特徴とする。
【0018】
上記のとおり構成された本発明のトノカバー装置では、トノカバーの引き出し側端部に緩衝手段が設けられており、トノカバーの巻取り時にはこの緩衝手段が収納ケースと当接し、トノカバーの巻取り動作を伴いながらシート体の巻取り速度が減速される。このことにより、トノカバーの巻取り時に収納ケースに加わる衝撃が緩和されるので、大きな衝突音が発生しなくなるとともに、各部材に加わる機械的な負荷も軽減される。一方、緩衝手段は、トノカバーに設けられておりトノカバーの巻取り時に収納ケースに当接することによって機能するものであり、トノカバーに直接負荷を与えるものではないので、緩衝手段がトノカバーの引き出しの妨げとなることはない。
【0019】
トノカバー巻取り時に収納ケースに加わる衝撃を効果的に緩和するためには、緩衝手段が収納ケースに当接してからトノカバーの巻取り動作が停止するまでのトノカバーの巻取り量は5mm以上であることが好ましい。収納ケースに当接する当接部材と、トノカバーの引き出し側端部に固着されかつ当接部材を進退移動可能に保持する保持部材とを有するものを用いた構成の緩衝手段では、当接部材は収納ケースに当接した後、トノカバーの巻取り動作に伴って保持部材内に押し込まれ、この際にトノカバーの巻取り速度が減速される。
【0020】
当接部材が保持部材内に押し込まれる際の抵抗力を与えるのに、ばねや空気を利用することによって、緩衝手段の動作時の温度依存性が少なくなり、環境温度によらず安定した動作が可能となる。
【0021】
また、トノカバーの巻取りが終了した状態では、緩衝手段は巻取り軸に加わる付勢力によって収納ケースに押圧されているが、収納ケースと緩衝手段とが、互いに面接触となる当接面を有する構成とすることで、トノカバーの巻取りが終了した状態での、収納ケースに対する緩衝手段の姿勢すなわちトノカバーの引き出し側端部の姿勢が維持される。これにより、トノカバーが水平方向に引き出されて使用されるトノカバー装置においてトノカバーの引き出し側端部が自重で垂れ下がることが防止される。収納ケースに対するトノカバーの引き出し側端部の姿勢をより良好に維持するためには、収納ケースおよび緩衝手段の互いの当接面が、トノカバーの引き出し方向に対して垂直な面であることが好ましい。
【0022】
さらに、収納ケースの緩衝手段との互いの当接部の少なくとも一方に弾性体を設けることで、収納ケースと緩衝手段とが当接したときの衝撃がより緩和される。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について、本発明をトノカバー装置に適用した場合を例に挙げて、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態であるトノカバー装置を装着した自動車の後部外観斜視図である。本実施形態のトノカバー装置10は、ハッチバック形式にバックドアが開閉される自動車において、後部座席の背後からバックドアに至る荷物積載用の空間(トノー部)の上部を視覚的に遮蔽するものであり、自動車の室内に着脱可能に設けられている。
【0025】
図2に、図1に示すトノカバー装置の、自動車から取り外した状態での斜視図を示し、図3に、図2に示すトノカバー装置の断面図を示す。
【0026】
図2および図3に示すように、トノカバー装置10は、トノー部の上部を遮蔽するためのカバー材(トノカバー)15と、このカバー材15を引き出し可能に巻取り収納する収納ケース11とを有する。
【0027】
収納ケース11は、アルミの押出成形によって形成された自動車の室内幅とほぼ等しい長さを有する筒状のケース本体12と、ケース本体12の両端を塞ぐ蓋部材13とを有する。自動車の室内には蓋部材13が嵌め込まれる凹部が設けられ、この凹部に蓋部材13を嵌め込むことで収納ケース11が自動車内に装着される。また、収納ケース11の内部には、カバー材の一端縁部が固着された巻取り軸(不図示)が、その両端部をそれぞれ蓋部材13によって軸支されている。巻取り軸は、収納ケース11内に設けられた巻取り機構(不図示)により、カバー材15の巻取り方向に付勢されている。巻取り機構は、通常のトノカバー装置に用いられている機構と同様であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0028】
ケース本体12には、カバー材15の幅より大きな長さのスリット状の開口部12aが、その長手方向に沿って形成されている。カバー材15はこの開口部12aを通って、巻取り軸に巻き取られて収納ケース11内に収納され、また収納ケース11から外部へ引き出される。
【0029】
カバー材15は、塩化ビニル樹脂等からなるシートをスフ基布等で補強した、柔軟で遮光性のあるシート体である。カバー材15の他端縁(カバー材15の巻取り方向について、巻取り軸に固着された一端縁部対向する端縁)には、トノー部の後縁に沿う形状を有する樹脂製のボード16が固着されている。ボード16の厚みはケース本体12に形成された開口部12aの幅(長手方向と直角な方向での大きさ)よりも大きい。これにより、カバー材15が収納ケース11に収納された状態でも、ボード16は収納ケース11内には引き込まれない構成となっており、ボード16は、トノー部の後縁部をほぼ完全に覆うためだけでなく、収納ケース11内に収納されたカバー材15を引き出す際のつかみ代としても利用される。
【0030】
カバー材15の引き出しを容易に行えるようにするために、ボード16の後端部には取っ手16aが一体的に設けられている。なお、ボード16が収納ケース11内に引き込まれないようにするためには、ボード16の厚みを厚くすることによってではなくボード16の幅を開口部12aの長さよりも大きくしてもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0031】
ボード16の幅方向両端部には、それぞれ係合フック17が設けられている。係合フック17は、自動車のサイドトリム等に形成された係合溝(不図示)に係合するもので、係合フック17を係合溝に係合させることで、カバー材15が引き出された状態が維持される。本実施形態では、係合フック17をボード16の幅方向外側に突出する構造として構成する一方、自動車のサイドトリムには係合フック17がスライドするためのスライドレール5(図1参照)をカバー材15の引き出し方向に沿って設け、カバー材15の引き出しおよび巻取りを円滑に行えるようにしている。
【0032】
自動車の乗員等がトノー部の遮蔽のためにトノカバー装置10を使用する際には、取っ手16aをつかんでカバー材15を収納ケース11から引き出し、係合フック17を係合溝に係合させる。トノカバー装置10の不使用時には、係合フック17と係合溝との係合を解除する。係合が解除されると、巻取り機構の付勢力で巻取り軸が回転し、これによって、係合フック17がスライドレール5をスライドしながら、カバー材15は開口部12aを経て収納ケース11内に巻取り収納される。上述したように、ボード16の厚みは開口部12aの幅より大きいので、最終的にはボード16が収納ケース11と接触して収納ケース11の外部に残され、この状態でカバー材15の巻取り動作が停止する。
【0033】
カバー材15の巻取り時にボード16と収納ケース11とが大きな力で衝突すると、不快な衝突音の発生やトノカバー装置10の損傷などの不具合が発生するが、本実施形態では、ボード16と収納ケース11との衝突を緩和するために、ボード16の裏面にダンパ20を取り付けている。ダンパ20は、ボード16が収納ケース11に接触するのに先立って接触し、カバー材15の巻取り動作に伴って圧縮されながらカバー材15の巻取り速度を徐々に減速し、ボード16と収納ケース11との衝突力を緩和する働きをする。
【0034】
ボード16が収納ケース11に衝突することによる不具合をより効果的に解消するためには、ダンパ20は、ボード16が収納ケース11に接触する直前でボード16の速度(カバー材15の巻取り速度)がほぼゼロとなるように減速することが好ましい。一方、ボード16の減速度が大きすぎると、今度はダンパ20と収納ケース11との衝突による不具合が生じるおそれがある。そこで、これらを考慮すると、ダンパ20が収納ケース11に接触してからカバー材15の巻取り動作が停止するまでの、ダンパ20の圧縮ストロークすなわちカバー材15の巻取り量は5mm以上であることが好ましく、より好ましくは20mm以上である。なお、カバー材15の巻取り速度を緩やかに減速するという観点からは、ダンパ20の圧縮ストロークの上限は特に設定されないが、圧縮ストロークが大きくなるとその分だけダンパ自身も大きくなるので、ダンパ20の圧縮ストロークは、実用に即して設定すればよい。
【0035】
ダンパ20の数は特に限定されず、収納ケース11の長さに応じて適宜の数とすることができる。また、ダンパ20の取り付け位置は、カバー材15の巻取りを円滑に行えるようにするために、カバー材15の幅方向中心に対して対称に配置することが好ましい。このことは、ダンパ20の数が1つの場合でも複数の場合でも同様である。本実施形態では、左右対称に2つのダンパ20を配置している。
【0036】
さらに本実施形態では、収納ケース11は、ケース本体12の各ダンパ20と対向する位置にそれぞれゴム等の弾性体で形成された受け部材14を接着した構成とし、カバー材15の巻取り時には、各ダンパ20はこれら受け部材14に接触する。このようにダンパ20が接触する部分を弾性体で構成することで、ダンパ20と収納ケース11との接触時に発生する衝突音を小さくすることができる。
【0037】
ダンパ20は、その圧縮動作によりカバー材15の巻取り速度を減速するものであるが、このようなダンパ20としては、空気室の内部から外部への空気の移動を利用するものや、ばねの圧縮を利用するものや、両者を組み合わせたもの等が好ましく挙げられる。本実施形態で用いたダンパ20は、両者を組み合わせたものであり、以下に、その構造の一例を、図3、および図2に示すダンパの分解斜視図である図4を参照して説明する。
【0038】
ダンパ20は、大きく分けて、ボード16の裏面に固着されるシリンダ部材21と、シリンダ部材21内に進退移動可能に保持されたピストン部材22と、ピストン部材22をシリンダ部材21から突出する向きに付勢するスプリング23と、ピストン部材22をシリンダ部材21に保持するためのキャップ24とを有する。
【0039】
シリンダ部材21は、ボード16に固着される部分である平板状の固着部21aと、この固着部21aに一体的に設けられた、一端が開放され他端が閉鎖された円筒状の筒部21bとを有する。そして、シリンダ部材21は、筒部21bの開放端が収納ケース11の方向を向くようにボード16に固着される。本実施形態では、ボード16とシリンダ部材21との固着はねじ止めによって行っており、固着部21aにはねじ用の複数の孔が形成されている。ボード16とシリンダ部材21との固着は、ねじ止めに限らず、スナップ嵌め、接着、溶着などによって行ってもよい。ただし、カバー材15が引き出されているとき以外は常にダンパ20に力が作用しているので、耐久性を考慮すると、ねじ止めによることが好ましい。
【0040】
ピストン部材22は、通気路22d(図5参照)が内部に形成された円筒状の部材であり、シリンダ部材21の筒部21b内にスライド可能に保持される。ピストン部材22の外径は、筒部21b内をスムーズにスライドできる大きさとされ、ピストン部材22の長さは、筒部21bの内寸長さより僅かに長い。なお、本実施形態では、ピストン部材22の長手方向中間部に、他の部分よりも厚肉に形成されて外周面に周方向溝が形成された大径部22aを有する。この大径部22aの周方向溝にOリング25を装着することで、筒部21bの内周面との間が気密にシールされ、ダンパ20の内部には、筒部21bの内壁とピストン部材22とで空気室が構成されている。
【0041】
ピストン部材22は、筒部21bに挿入される側の端面に入気口22bが形成されるとともに、その反対側の端部における周面に排気口22cが形成されており、通気路22dは、これら入気口22bと排気口22cとを連絡している。入気口22bには、微小な孔が形成されたオリフィスプレート27が嵌め込まれており、このオリフィスプレート27の孔の大きさによって、オリフィスプレート27を通過する空気の通気抵抗を調整する。オリフィスプレート27のピストン部材22への固定は、ピストン部材22内にオリフィスプレート27のための受座を形成するとともに、ゴム製のバルブ26、オリフィスプレート27、および樹脂製のワッシャ28をこの順に入気口22bから挿入し、最後に金属製のリテーナ29をねじ込むことで行っている。バルブ26、ワッシャ28、およびリテーナ29には、オリフィスプレート27を通過する空気の流れに影響を与えないようにするために、それぞれオリフィスプレート27に形成された孔の直径よりも大きな開口部が形成されている。
【0042】
ピストン部材22の大径部22aは、シリンダ部材21に挿入される側の端面がスプリング23の受座として利用されるとともに、反対側の端面がキャップ24の受座として利用される。
【0043】
スプリング23として最も好ましく用いられるのは、金属製の圧縮コイルばねである。スプリング23をコイルばねとする場合、外径がシリンダ部材21の筒部21bの内径よりも小さく、かつ、内径がピストン部材22の大径部22aより入気口22b側での外径よりも小さくなるように、線径や巻き径が設定される。スプリング23は、ピストン部材22に先立ってシリンダ部材21の筒部21b内に挿入され、大径部22aを介してピストン部材22をシリンダ部材21から突出させる向きに付勢する。
【0044】
キャップ24は、全体としてほぼ円筒形の部材であり、シリンダ部材21の筒部21bにピストン部材22が挿入された状態で筒部21bの開放端に装着される。キャップ24の内径は、ピストン部材22の大径部22aより排気口22c側での外径よりも大きく、かつ、ピストン部材22の大径部22aの外径よりも小さい。これにより、シリンダ部材21内でのピストン部材22のスライド動作を阻害せずに、ピストン部材22の脱落を阻止することができる。キャップ24の外周面には外向きの弾性爪24aが一体に形成されており、この弾性爪24aを、シリンダ部材21の筒部21bに形成した係合穴21cに係合させることで、キャップ24がシリンダ部材21に固定される。
【0045】
次に、図4に示したダンパの動作について、図5を参照して説明する。
【0046】
図5(a)に示すように、トノカバー装置10の使用時、すなわちカバー材15が収納ケース11から引き出された状態では、ダンパ20に外力は作用しておらず、ピストン部材22はスプリング23の付勢力によってシリンダ部材21から収納ケース11側へ最も突出している。なお、ダンパ20は、この状態でピストン部材22の先端面がボード16よりも収納ケース11側に位置するようにボード16に固着されている。
【0047】
トノカバー装置10の不使用時には、前述したようにカバー材15が巻取り軸に巻き取られ、収納ケース11内に収納されていく。カバー材15がその終端(ボード16側の端)近くまで巻き取られると、図5(b)に示すように、ピストン部材22の先端面が収納ケース11の受け部材14に押圧され、ピストン部材22はスプリング23を圧縮しながらシリンダ部材21内に押し込まれていく。これにより、空気室の内圧が上昇する。空気室(筒部21b)の内圧が上昇すると、空気室内の空気はピストン部材22の入気口22bを介して通気路22dに入り、排気口22cからダンパ20の外部へ排気される。
【0048】
この際、空気室から通気路22dへの空気の移動がオリフィスプレート27で制限されるので、ピストン部材22がシリンダ部材21内に押し込まれる速度も制限される。その結果、カバー材15は、その巻取り速度が徐々に減速されながら巻き取られる。オリフィスプレート27に形成される孔の直径を十分に小さくすると、空気の移動がより制限され、カバー材15の巻取り速度をより緩やかに減速させることができる。本実施形態のようにトノカバー装置10に使用されるダンパ20の場合、オリフィスプレート27に形成される孔の好ましい直径は、0.2〜5mmである。
【0049】
最終的には、ボード16が収納ケース11と接触し、カバー材15の巻取り動作が停止する。このとき、ピストン部材22にはスプリング23の付勢力のみが作用しているが、スプリング23によるピストン部材22への付勢力は、ピストン部材22が受け部材14に押圧された状態でピストン部材22を押し戻すことのないような強さとされている。
【0050】
そして、再びトノカバー装置10を使用するためにカバー材15を収納ケース11から引き出すと、スプリング23の付勢力によってピストン部材22はシリンダ部材21から押し出される。この際、空気室の内部は減圧状態となるが、排気口22c、通気路22d、および入気口22b(オリフィスプレート27)を通って外気が空気室の内部に導入されるので、ピストン部材22はシリンダ部材21から最も突出した状態となるとともに、空気室の内圧も大気圧と等しくなり、図5(a)に示した状態に戻る。
【0051】
上述したように、カバー材15の巻取りによって収納ケース11と接触し、収納ケース11と接触しながらカバー材15の巻取り速度を減速させるダンパ20をボード16に設けることで、カバー材15の巻取り速度すなわちボード16の移動速度はダンパ20の圧縮動作中に減速される。したがって、ダンパ20が収納ケース11に接触したときの衝撃を緩和しつつ、ボード16が収納ケース11に接触する際のボード16の速度を十分に減速することができる。その結果、ボード16と収納ケース11との接触時の大きな衝突音がなくなるのはもちろんのこと、ダンパ20が収納ケース11に接触したときの衝突音も小さく、利用者にとって使用感が向上する。また、ダンパ20が収納ケース11に接触したとき、およびボード16が収納ケース11に接触したときに各部材に加わる機械的な負荷が軽減されるので、トノカバー装置10の信頼性も向上する。
【0052】
一方、カバー材15が巻き取られた状態では、ダンパ20は収納ケース11に当接しているだけであり、しかも、ダンパ20と収納ケース11との間には係合構造を持っていない。つまり、ダンパ20は、カバー材15の巻取り時にはその動作を制限するが、カバー材15に直接負荷を与えるものではなくカバー材15の引き出しに際しては何ら制限を与えるものではない。したがって、巻き取られたカバー材15を収納ケース11から引き出す際の抵抗力は、巻取り機構によってのみ与えられるので、カバー材15を引き出す際の負荷が大きくなることはない。
【0053】
また、ダンパ20としては、空気の移動やスプリングといった、温度依存性の少ないものを利用しているので、環境温度によって性能が変化することが少なく、安定した性能を発揮することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、受け部材14とピストン部材22とが互いに面接触となるように、受け部材14のピストン部材22との当接面、およびピストン部材22の受け部材14との当接面は、カバー材15の引き出し方向に対して垂直な面となっている。カバー材15が巻き取られた状態では巻取り機構によりダンパ20を受け部材14に押圧する力が作用しているので、受け部材14とピストン部材22とを面接触とすることで、カバー材15が巻き取られた状態でボード16が自重で垂れ下がることはなく、見栄えが向上したものとなる。しかも、係合によってではなく単に接触しているだけでボード16の姿勢が水平方向に維持されているので、カバー材15を引き出す際の操作性が損なわれることはない。なお、ボード16の姿勢を水平方向に維持するためには、受け部材14およびピストン部材22の互いの接触面がカバー材15の引き出し方向に対して垂直である必要はない。ただし、受け部材14とピストン部材22とが接触した状態での両者の滑りを防止するという観点からは、両者の互いの接触面をカバー材15の引き出し方向に対して垂直とすることが好ましい。
【0055】
ところで、トノカバー装置10の使用態様の一つとして、カバー材15がすでに巻き取られた状態でボード16だけを上側に持ち上げることもある。この場合、ダンパ20の作用により、ボード16を離したときに、ボード16は大きな音を発することなくゆっくりと戻るので、トノカバー装置10の質感を向上させることができる。
【0056】
本実施形態では、カバー材15の巻取り時に、最終的にはボード16が収納ケース11に接触するものとして説明したが、ボード16が収納ケース11に接触せずダンパ20の作用だけでカバー材15の巻取りが停止する構成としても、同様の効果が得られる。また、本実施形態ではカバー材15の引き出し側の端部をボード16で構成しているが、カバー材15の引き出し側の端部は、カバー材15を引き出すためのつかみ代を構成し得るものであれば、棒状の構造やブロック状の構造など、任意の構造とすることができる。さらに、本実施形態では、収納ケース11は、ケース本体12とは別部材で構成された受け部材14を有する構成としているが、受け部材14をケース本体12の一部として構成してもよいし、ケース本体自身がダンパ20を受ける部分を有していれば、受け部材は特に設ける必要はない。この場合は、ダンパ20と収納ケース11との接触時の衝撃音をより小さくするために、ダンパ20の収納ケース11との接触部にゴム等の弾性体を取り付けてもよい。なお、ダンパ20に弾性体を設けた構成は、弾性体からなる受け部材14を有する場合であっても適用可能である。
【0057】
加えて、本実施形態では、シート体巻取り装置としてトノカバー装置10を例に挙げて説明したが、本発明は、乗物や建物の窓に取り付けられるサンシェードや画像投影用のスクリーンなど、巻取り機構の付勢力によって、シート体が一部を残して収納ケース内に巻取り収納される構成を有する種々のシート体巻取り装置に適用することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、トノカバーの引き出し側端部に、トノカバーの巻取り時に収納ケースに当接し、トノカバーの巻取り動作を伴ってトノカバーの巻取り速度を減速する緩衝手段を設けることで、トノカバー巻取り時の衝撃が緩和されるので、その際の大きな衝突音を防止することができるとともに、トノカバー装置の各部材の損傷も防止することもでき、その結果、使用者の使用感およびトノカバー装置の信頼性を向上させることができる。しかも、緩衝手段は、トノカバー巻取り時に収納ケースと当接することによって機能するものであり、トノカバーの引き出しに際しては抵抗力を生じるものではないので、トノカバーの引き出し時の負荷が大きくなることはない。
【0059】
また、緩衝手段によってトノカバーの巻取り速度を減速させるのにばねの付勢力や空気の移動を利用することで、緩衝手段は、環境温度によらず安定してトノカバーの巻取り動作を減速することができる。さらに、収納ケースと緩衝手段とが、互いに面接触となる当接面を有することで、トノカバーが水平方向に引き出されて使用されるトノカバー装置においてトノカバーの引き出し側端部が自重で垂れ下がることを防止することができる。加えて、収納ケースと緩衝手段との互いの当接部の少なくとも一方に弾性体を設けることで、収納ケースと緩衝手段とが当接したときの衝撃をより緩和することができる。
【0060】
特に、トノカバーが巻き取られている状態でトノカバーの巻取り側端部のみを上側に持ち上げるような使用態様においても、持ち上げた巻取り側端部を離したときに、巻取り側端部は緩衝手段によってゆっくりと戻るので、質感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるトノカバー装置を装着した自動車の後部外観斜視図である。
【図2】図1に示すトノカバー装置の、自動車から取り外した状態での斜視図である。
【図3】図2に示すトノカバー装置の、幅方向略中央部での断面図である。
【図4】図2に示すダンパの分解斜視図である。
【図5】図2に示すダンパの動作を説明するための断面図である。
【図6】従来のシート体巻取り装置の一例の断面図である。
【符号の説明】
5 スライドレール
10 トノカバー装置
11 収納ケース
12 ケース本体
12a 開口部
13 蓋部材
14 受け部材
15 カバー材
16 ボード
16a 取っ手
17 係合フック
20 ダンパ
21 シリンダ部材
21a 固着部
21b 筒部
22 ピストン部材
22b 入気口
22c 排気口
22d 通気路
23 スプリング
24 キャップ
27 オリフィスプレート

Claims (6)

  1. シート状のトノカバーと、該トノカバーの幅より大きい長さで形成された開口部が形成され該開口部を介して水平方向に引き出し可能に前記トノカバーを巻取り収納する収納ケースと、該収納ケース内に設けられ、前記トノカバーの巻取り側端部が固着されるとともに前記トノカバーの巻取り方向に付勢された巻取り軸とを有し、前記トノカバーの引き出し側端部には、前記収納ケース内に巻き取られず前記収納ケースの外部に残るボード固着されている、トノカバー装置において、
    前記ボードに、前記トノカバーの巻取り時に前記収納ケースに当接し、前記トノカバーの巻取り動作を伴って前記トノカバーの巻取り速度を減速する緩衝手段が設けられており、
    前記緩衝手段は、
    前記収納ケースに当接する当接部材と、
    前記ボードに固着され前記当接部材を前記トノカバーの引き出し方向に進退移動可能に保持する保持部材と、
    前記当接部材を前記収納ケースに向けて付勢するばねと、
    を有し、
    前記保持部材と前記当接部材は協働して空気室を形成しており、前記当接部材には、前記空気室の内部と前記緩衝手段の外部とを連絡する通気路が形成されており、
    前記当接部材は、前記収納ケースに面接触する当接面を有する、
    ことを特徴とするトノカバー装置。
  2. 前記通気路には、通気抵抗を調整するオリフィスプレートが配置されている、請求項1に記載のトノカバー装置。
  3. 前記オリフィスプレートの孔の直径が0.2〜5mmである、請求項2に記載のトノカバー装置。
  4. 前記緩衝手段が前記収納ケースに当接してから前記トノカバーの巻取り動作が停止するまでの前記シート体の巻取り量は5mm以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のトノカバー装置。
  5. 前記収納ケースおよび前記当接部材の互いの当接面は、前記トノカバーの引き出し方向に対して垂直な面である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のトノカバー装置。
  6. 前記収納ケースの前記緩衝手段との当接部、および前記緩衝手段の前記収納ケースとの当接部の少なくとも一方に弾性体が設けられている、請求項1ないしのいずれか1項に記載のトノカバー装置。
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