JP3953398B2 - ウォータジェット推進機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶に用いられるウォータージェット推進機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のウォータージェット推進機として図6に示すようなものが知られている(特許文献1参照)。
このウォータジェット推進機は船体後部に装着されるものであり、流路を形成するステータ(ダクト)1と、このステータ1の内部に回転自在に配置されたインペラ2と、ステータ1内の軸受け部1aに自転自在に支持されインペラ2の後部に連結されたインペラシャフト3と、このインペラシャフト3の外周に設けられたカラー4と、このカラー4とステータ1の軸受け部1aとの間に設けられた防水シール5とを備えている。
インペラ2の前部にはドライブシャフト6が連結されており、このドライブシャフト6が図示しないエンジンで駆動されることでインペラ2が回転駆動され、水流が後方(図において右方)へ噴出されることで船体が推進される。
【0003】
【特許文献1】
実用新案登録第2548210号公報(0003段落、図2)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のジェット推進機では、カラー4の先端4aは、インペラ2の後端2aに当接しているだけであるので、カラー4の先端4aとインペラ2の後端2aとの隙間から水が侵入し、これがインペラシャフト3の表面に接触してインペラシャフト3の表面を腐食させるという課題があった。
この課題は、インペラシャフト3を腐食しにくい材料(例えばステンレス)で構成することで解決することはできるが、そうするとインペラシャフトが高価になってしまうという別の課題が生じていた。
【0005】
この発明の目的は、以上のような課題を解決し、インペラシャフトへの水の接触を防止することのできるウォータジェット推進機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載のウォータジェット推進機は、流路を形成するステータと、このステータの内部に回転自在に配置されたインペラと、前記ステータ内に自転自在に支持され前記インペラに連結されたインペラシャフトと、このインペラシャフトの外周に設けられたカラーと、このカラーとステータとの間に設けられた防水シールとを備えたウォータジェット推進機において、
前記カラーを、前記インペラと一体に構成し,
前記インペラシャフトをインペラの後部に螺合により連結し、インペラの前部にドライブシャフトをスプライン結合により連結し、インペラ内の前記インペラシャフトの前端とドライブシャフトの後端との間において、ドライブシャフト後端に対する緩衝体を設けるとともに、この緩衝体の外周部を、前記インペラシャフト螺合時にインペラシャフト側からドライブシャフト側に向けて空気が逃げる形状としたことを特徴とする。
【0007】
【作用効果】
請求項1記載のウォータジェット推進機は、流路を形成するステータと、このステータの内部に回転自在に配置されたインペラと、前記ステータ内に自転自在に支持され前記インペラに連結されたインペラシャフトと、このインペラシャフトの外周に設けられたカラーと、このカラーとステータとの間に設けられた防水シールとを備えたウォータジェット推進機において、前記カラーを、前記インペラと一体に構成してあるので、このウォータジェット推進機によれば、カラーとインペラとの間に隙間が形成されず、ここからインペラシャフトに向かって水が侵入しなくなる。
したがって、インペラシャフトの表面が腐食しなくなり(少なくとも著しく腐食しにくくなり)、結果として、必ずしもインペラシャフトを腐食しにくい材料で構成する必要がなくなる。
また、前記カラーを前記インペラと一体に構成してあるので、部品点数を削減することができるばかりでなく、インペラシャフトとインペラとの結合剛性を向上させることができる。
さらに,請求項1記載のウォータジェット推進機によれば、前記インペラシャフトをインペラの後部に螺合により連結し、インペラの前部にドライブシャフトをスプライン結合により連結してあるので、インペラシャフトとインペラとを一緒にした状態でこれをドライブシャフトから取り外すことが可能となる。
また、インペラ内の前記インペラシャフトの前端とドライブシャフトの後端との間において、ドライブシャフト後端に対する緩衝体を設けてあるので、ドライブシャフト後端に対してインペラを装着する際の衝撃が和らげられる。
ところでこのような構成とした場合において、仮に何らの方策も講じないとしたならば、インペラシャフトをインペラの後部に螺合させる際に、インペラシャフトと前記緩衝体との間にある空気(あるいはグリース)の逃げ場がなくなり、緩衝体が過度に変形してしまうという問題が生じる。
これに対し、この請求項1記載のウォータジェット推進機によれば、前記緩衝体の外周部を、前記インペラシャフト螺合時にインペラシャフト側からドライブシャフト側に向けて空気が逃げる形状としてあるので、緩衝体の過度の変形が防止されることとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るウォータジェット推進機の一実施の形態を用いた小型滑走艇の一例を示す一部切り欠き概略側面図、図2は同じく概略平面図である。
【0009】
これらの図(主として図1)に示すように、この小型滑走艇10は、鞍乗り型小型船舶であり、船体11上のシート12に乗員が座り、スロットルレバー付きの操舵ハンドル13を握って操行可能である。
船体11は、ハル14とデッキ15とを接合して内部に空間16を形成した浮体構造となっている。空間16内において、ハル14上には、エンジン20が搭載され、このエンジン20で駆動される推進手段としてのウォータジェット推進機(以下ジェットポンプともいう)30がハル14の後部に設けられている。
【0010】
ジェットポンプ30は、船底に開口した取水口17から船体後端に開口した噴流口31c2およびディフレクタ38に至る流路18内に配置されたインペラ32を有しており、インペラ32の駆動用のシャフト(ドライブシャフト)22がエンジン20の出力軸21にカプラ23を介して連結されている。したがって、エンジン20によりカプラ23およびシャフト22を介してインペラ32が回転駆動されると、取水口17から取り入れられた水が噴流口31c2からディフレクタ38を経て噴出され、これによって船体11が推進される。エンジン20の駆動回転数、すなわちジェットポンプ30による推進力は、前記操作ハンドル13のスロットルレバー13a(図2参照)の回動操作によって操作される。ディフレクタ38は、図示しない操作ワイヤーで操作ハンドル13と連係されていて、ハンドル13の操作で回動操作され、これによって船体11の進路を変更することができる。
【0011】
図3はジェットポンプ30を示す断面図である。
この図に示すように、ジェットポンプ30は、船体11の底部に設けられた取水口17(図1参照)に連通する流路18を形成するステータ(ダクト)31と、このステータ31内に配置されたインペラ32と、ステータ31内に設けられたインペラの軸受け部33と、この軸受け部33の後端を塞ぐキャップ34とを備えている。
ジェットポンプ30は、ステータ31の前部に形成されたフランジ部31dをハル14に図示しないボルトで固定することによりハル14に対して着脱可能に装着されている。
【0012】
ステータ31は、インペラ収容部31aと、軸受け収容部31bと、ノズル部31c(図1参照)とを有しており、インペラ収容部31aと軸受け収容部31bとは一体に形成されている。軸受け収容部31b内に静翼31b1を介して前記軸受け部33が一体的に形成されている。
【0013】
インペラ32は、そのボス部32aの前部が、ドライブシャフト22の後端に形成されたスプライン22bに係合しており、ドライブシャフト22と一緒に回転する。このドライブシャフト22は、その先端部が前述したように船体11に搭載されたエンジン20の出力軸21にカプラ23(図1)を介して連結されている。
一方、軸受け部33には、インペラ32のボス部32aの後部32bを支持するインペラシャフト35がボールベアリング33a、33bを介して回転可能(自転自在)に支持されている。インペラシャフト35の先端には雄ネジ35aが形成されており、この雄ネジ35aがインペラ32のボス部後部32bに形成されている雌ネジと螺合していることによって、インペラ32とインペラシャフト35とが結合されている。
したがって、インペラ32は、そのボス部32aの前部がドライブシャフト22に結合され、ボス部の後部32bがインペラシャフト35に結合されていて、これらドライブシャフト22およびインペラシャフト35と一緒に回転する。
【0014】
インペラシャフ35の外周にはカラー40が設けられているが、このカラー40は、インペラ32のボス部の後部32bを後方に延設することにより、インペラ32と一体に構成されている。カラー40の外周面はインペラシャフト35の外周面と密に接している。
カラー40とステータの軸受け部33との間には防水シール37が設けられている。したがって、軸受け部33とカラー40との間から軸受け部33内に水が侵入するということはない。
また、カラー40は、防水シール42を介してインペラ32のボス部の後部32bと一体に構成されている。したがって、カラー40とインペラ32のボス部の後部32bと間には隙間がないから、ここからインペラシャフト35の外周面に向かって水が侵入するということもない。
【0015】
インペラのボス部32a内には、インペラシャフト35の前端35bとドライブシャフト22の後端22cとの間において、ドライブシャフト後端22cに対する緩衝体50が設けられており、この緩衝体50の外周部は、インペラシャフト35をインペラのボス部32aに螺合させる際に、インペラシャフト35側からドライブシャフト22側に向けて空気が逃げる形状としてある。
具体的には、緩衝体50はゴムで構成される。
図4は緩衝体50を示す図で、(a)は船体後方から見た図、(b)は図(a)の部分切断側面図である。
図3および図4に示すように、緩衝体50は、インペラのボス部32aにおけるネジ穴32cとの嵌合部51と、インペラのボス部32aの内周面に密着する大径部53とを有しており、前記嵌合部51の外周面52から大径部53の中途部まで至る空気逃がし溝54が形成されている。
このような空気逃がし溝54が形成されていると、インペラシャフト35をインペラのボス部32aに螺合させる際に、インペラシャフトの前端35bと緩衝体50との間にある空気(あるいはグリース)が、インペラシャフト35の螺合に伴って上記空気逃がし溝54に案内され、この空気逃がし溝54の先端部54aから上記大径部53を多少変形させてドライブシャフト22側に向けて逃げることとなる。ドライブシャフト22とインペラシャフ35とはスプラインで係合されているので、上記空気(あるいはグリース)はスプラインに沿って逃げることができる。
なお、インペラシャフト35をインペラのボス部32aに螺合させた後は、緩衝体50は、その大径部53がインペラのボス部32aの内周面に密着することから、ドライブシャフト22側からインペラシャフ35側に侵入しようとする水を遮断する役割も果たす。
【0016】
図5は緩衝体の変形例を示す図で、(a)は船体後方から見た図、(b)は側面図である。
この緩衝体55は、インペラのボス部32aの内周面に密着する大径部56をリング状の薄いシールリップ状に形成し、空気(あるいはグリース)がドライブシャフト22側に向けて逃げ易いように構成したものである。このような構成によっても、インペラシャフト35をインペラのボス部32aに螺合させる際に、インペラシャフトの前端35bと緩衝体50との間にある空気(あるいはグリース)が、インペラシャフト35の螺合に伴って上記シールリップ部56を多少変形させてドライブシャフト22側に向けて逃げることとなる。また、インペラシャフト35をインペラのボス部32aに螺合させた後は、シールリップ部53がインペラのボス部32aの内周面に密着することから、ドライブシャフト22側からインペラシャフ35側に侵入しようとする水を遮断する役割も果たす。
【0017】
図3に示すように、キャップ34の前部には、前記軸受け部33の後部への挿入部(筒状部)34bが形成されているとともに、ネジ36の挿入穴34cが3つ(1つのみ図示)形成されている。筒状の挿入部34bには、Oリング34eの装着溝が形成されている。
したがって、キャップ34は、挿入部34bにOリング34eを装着してこの挿入部34bを図3に示すように軸受け部33の後部へ挿入(圧入)し、ネジ36によって軸受け部33の後部に装着される。
キャップが装着された状態では、軸受け部33への水の侵入は上記Oリング34eによって遮断される。
キャップ34の軸受け部33との当接面には、部分的な切り欠き34dが形成されており、メンテナンス時には、上記ネジ36を外し、この切り欠き34dに工具(例えばドライバ)の先を差し込んでキャップ34を容易に取り外すことができるようになっている。
【0018】
以上のようなウォータジェット推進機によれば、次のような作用効果が得られる。
(a)流路18を形成するステータ31と、このステータ31の内部に回転自在に配置されたインペラ32と、ステータ31内に自転自在に支持されインペラ32に連結されたインペラシャフト35と、このインペラシャフト35の外周に設けられたカラー40と、このカラー40とステータ31との間に設けられた防水シール37とを備え、カラー40を、インペラ32と一体に構成してあるので、カラー40とインペラ32との間には隙間が形成されず、ここからインペラシャフト35に向かって水が侵入しなくなる。
したがって、インペラシャフト35の表面が腐食しなくなり(少なくとも著しく腐食しにくくなり)、結果として、必ずしもインペラシャフトを腐食しにくい材料(例えばステンレス)で構成する必要がなくなる。
すなわち、インペラシャフ35を鉄等で構成できるので、インペラシャフ35を安価することが可能になる。
また、カラー40をインペラ32と一体に構成してあるので、部品点数を削減することができるばかりでなく、カラー40の外周面がインペラシャフト35の外周面と密に接していることにより、インペラシャフト35とインペラ32との結合剛性を向上させることができる。
(b)インペラシャフト35をインペラ32の後部に螺合により連結し、インペラ32の前部にドライブシャフト22をスプライン結合により連結してあるので、インペラシャフト35とインペラ32とを一緒にした状態でこれをドライブシャフトから取り外すことが可能となる。
この実施の形態では、ジェットポンプ30を船体11に固定しているボルトを外すことにより、ジェットポンプ30ごと後方に取り外すことができる。
また、インペラ32内のインペラシャフト35の前端35bとドライブシャフト22の後端22cとの間において、ドライブシャフト後端22cに対する緩衝体50(または55、以下同じ)を設けてあるので、ドライブシャフト後端22cに対してインペラ32を装着する際の衝撃が和らげられる。
ところでこのような構成とした場合において、仮に何らの方策も講じないとしたならば、インペラシャフト35をインペラ32の後部に螺合させる際に、インペラシャフト35と緩衝体50との間にある空気(あるいはグリース)の逃げ場がなくなり、緩衝体50が過度に変形してしまうという問題が生じる。
これに対し、この実施の形態のウォータジェット推進機によれば、緩衝体50の外周部を、インペラシャフト螺合時にインペラシャフト35側からドライブシャフト22側に向けて空気が逃げる形状としてあるので、緩衝体50の過度の変形が防止されることとなる。
【0019】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
【0020】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るウォータジェット推進機の一実施の形態を用いた小型滑走艇の一例を示す一部切り欠き概略側面図。
【図2】同じく概略平面図。
【図3】ジェットポンプ30を示す断面図。
【図4】は緩衝体50を示す図で、(a)は船体後方から見た図、(b)は図(a)の部分切断側面図。
【図5】緩衝体の変形例を示す図で、(a)は船体後方から見た図、(b)は側面図。
【図6】従来技術の説明図。
【符号の説明】
18 流路
22 ドライブシャフト
22b スプライン
22c 後端
30 ジェットポンプ(ウォータジェット推進機)
31 ステータ
32 インペラ
32a 前部
32b 後部
35 インペラシャフト
35b 前端
37 防水シール
40 カラー
50 緩衝体
Claims (1)
- 流路を形成するステータと、このステータの内部に回転自在に配置されたインペラと、前記ステータ内に自転自在に支持され前記インペラに連結されたインペラシャフトと、このインペラシャフトの外周に設けられたカラーと、このカラーとステータとの間に設けられた防水シールとを備えたウォータジェット推進機において、
前記カラーを、前記インペラと一体に構成し,
前記インペラシャフトをインペラの後部に螺合により連結し、インペラの前部にドライブシャフトをスプライン結合により連結し、インペラ内の前記インペラシャフトの前端とドライブシャフトの後端との間において、ドライブシャフト後端に対する緩衝体を設けるとともに、この緩衝体の外周部を、前記インペラシャフト螺合時にインペラシャフト側からドライブシャフト側に向けて空気が逃げる形状としたことを特徴とするウォータジェット推進機。
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