JP3953379B2 - ドラムインブレーキディスクロータの表面処理方法 - Google Patents

ドラムインブレーキディスクロータの表面処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ブレーキ装置の回転制動要素として機能するブレーキディスクロータの表面処理方法に関し、特にディスク部とパーキングブレーキ用のドラム部とを併せ持つドラムインタイプのブレーキディスクロータについて車両取付状態で外側に露出することになる部位に防錆性を付与するべく化成皮膜を形成するための表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特公平1−58372号公報に記載されているように、防錆性付与のために例えばリン酸塩皮膜等の化成皮膜をロータ表面に形成したブレーキディスクロータが知られている。そして、防錆皮膜としての化成皮膜は、例えば車両の輸出に備えての保管中や航海過程でのブレーキディスクロータの錆の発生を防止しつつも、輸出国にてユーザーに引き渡された後はブレーキディスクロータ本来の制動機能に悪影響を与えないことが条件とされ、そのため上記公報記載の技術ではブレーキディスクロータ全体を処理液中に浸漬させてディピング方式で行う化成処理の際にその皮膜の膜厚が調整される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
その一方、ディスク部とパーキングブレーキ用のドラム部とを併せ持ったドラムインタイプのブレーキディスクロータの場合には、ディスク部を通常ブレーキの摺動面とし、ドラム部の内周面をパーキングブレーキの摺動面とするものであるが、ディッピング方式にて化成処理を行うとディスク部摺動面のみならずドラム部摺動面までもディスク部と同等膜厚の化成皮膜が形成されてしまうことになる。
【0004】
そして、ディスク部摺動面の化成皮膜については例えば車両がユーザーに引き渡される前の少ない制動回数で剥離して本来の制動機能を十分に発揮することができるものの、パーキングブレーキとして機能するドラム部摺動面の化成皮膜については、ドラム部摺動面とブレーキシューとが積極的に相対摺動するものではないために初期制動段階だけでは皮膜が剥離しきれず、その結果として摺動面の摩擦係数が低下して皮膜が剥離するまでの間は本来のパーキングブレーキとしての制動機能が十分に発揮できないことになる。
【0005】
このようなことから、ドラムインタイプのブレーキディスクロータの場合には、化成処理の後にドラム部摺動面に例えばホーニング加工等の二次加工を施して化成皮膜を除去しなければならず、加工工数の増加が余儀なくされることとなって好ましくない。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、とりわけディス部とパーキングブレーキ用のドラム部とを併せ持ったドラムインタイプのブレーキディスクロータに防錆を目的とした表面処理をディッピング方式にて施すにあたり、ディスク部摺動面については防錆のための必要十分な化成皮膜を形成する一方で、ドラム部摺動面については化成皮膜の生成による摩擦係数の低下ひいてはパーキングブレーキ性能への影響を与えることがないようにした処理方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、径方向に貫通した通風孔が形成された円板状のディスク部の内周側に軸心方向の一方側に向かって開口した有底円筒状のドラム部が一体成形されたドラムインタイプのブレーキディスクロータの表面に化成皮膜を電解処理により形成する方法であって、ドラム部開口側に、ドラム部の内部空間とドラム部の外部空間とをディスク部に形成された通風孔によって連通させるよう形成するマスキング部材を配置したことを特徴とする。
【0008】
より具体的には、例えば化成皮膜形成液中に、ブレーキディスクロータ側を陰陽極の一方の極としたときに他方の極として機能する電極をブレーキディスクロータの少なくともドラム部開口側と対向配置するとともに、ドラム部開口側と電極との間に両者の間を遮るように絶縁材料からなるマスキング部材を配置して、電解処理を行うものとする。
【0009】
請求項1の記載において、電解処理は例えばブレーキディスクロータ側を陰極、電極側を陽極とした電解によるリン酸塩皮膜形成処理とし、したがって化成皮膜形成液であるリン酸塩皮膜形成液としては例えばリン酸イオン、亜鉛イオンおよび硝酸イオンを含有するものを用いる。また、マスキング部材はその機能よりして電気的絶縁性に優れていることが重要であり、しかも化成皮膜形成液が酸性であるために耐酸性材料であることが同時に要求され、これらの条件を満たすものとして例えばFRP製のマスキング部材を用いる。
【0010】
また、マスキング部材の配置は、マスキング部材の絶縁機能によってドラム部の内周面側での化成皮膜の生成を緩慢なものとし、ドラム部摺動面側にはディスク部摺動面に比べてきわめて膜厚の小さな極薄膜の化成皮膜を生成する一方、電解処理時に発生する水素ガスを主成分とする気泡をディスク部に形成された通風孔を通して速やかにドラム部の内部空間から排出するためである。
【0011】
さらに、ディスク部摺動面に必要とされる化成皮膜の膜厚に対しドラム部摺動面の化成皮膜の極薄膜厚は例えば2μm以下とする。2μm以下であれば、ドラム部摺動面の摩擦係数の低下がほとんどなく、パーキングブレーキ性能に影響を与えることがない。
【0012】
したがって、請求項1に記載の発明では、化成皮膜形成液中においてディスクブレーキロータと電極との間に通電することで、ディスク部であるかドラム部であるかにかかわらずブレーキディスクロータの表面に防錆皮膜として化成皮膜が形成される。その際に、ドラム部の開口端面側はマスキング部材によって遮られているので、ドラム部の内周面側での化成皮膜の生成が抑制されて他の部位に比べて緩慢なものとなり、そのドラム部の内周面に生成される化成皮膜の膜厚が相対的に薄膜化される。
【0013】
そして、電解に伴ってドラム部の内周側で発生する水素ガス等の気泡は、ディスク部の通風孔を通して外部に排出される。この場合、ディスク部の外周円筒面に開口している通風孔から気泡が排出されるので、その気泡がディスク部の摺動面に再付着するおそれがなくなる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1の記載を前提として、化成皮膜形成液中でブレーキディスクロータをその軸心を回転中心として回転させながら処理を行うことを特徴とする。
【0015】
したがって、この請求項2に記載の発明では、通電と同時に少なくともブレーキディスクロータを回転させることで化成皮膜形成液の流動が起こり、ドラム部の内周側からの気泡の排出が促進される。同時に、化成皮膜生成の均一化も同時に期待できるようになる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1の記載を前提として、化成皮膜形成液中でブレーキディスロータの軸心を傾斜させた状態で処理を行うことを特徴とする。
【0017】
したがって、この請求項3に記載の発明では、処理に伴って発生する水素ガス等の気泡は上方に向かって浮上する性質があるために、ブレーキディスクロータを傾斜させることによってそのドラム部の内部空間からの気泡の排出が一段と促進される。
【0018】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、化成皮膜形成液中での電解処理によりブレーキディスクロータ全体に化成皮膜を形成したとしても、ドラム部の摺動面についてはそれ以外の部位に比べ相対的に極薄膜の化成皮膜とすることができるから、従来のように皮膜除去のためにホーニング加工等の二次加工を施す必要がなく工数の削減が図れるほか、ドラム部摺動面の化成皮膜は極薄膜であるために、そのまま残存させたとしても摩擦係数の低下やパーキングブレーキ性能に悪影響を及ぼすことがない。
【0020】
また、処理に伴ってドラム部内部で発生する水素ガス等の気泡をディスク部に予め形成されている通風孔を通して外部に排出するようにしたため、その気泡がドラム部の内部に封じ込められたままとなることがなく、ドラム部摺動面における化成皮膜の生成ひいては膜厚を均一化できるほか、ドラム部内で発生した気泡がディスク部側に回り込むことがなくなり、ディスク部摺動面の化成皮膜の生成ひいては膜厚も均一化できる効果がある。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、化成皮膜形成のための処理に際してブレーキディスクロータを回転させるようにしたため、一定位置に気泡がとどまることがなくなるとともに、化成皮膜形成液の流動によってドラム部内からの気泡の排出を促進できるようになり、ドラム部摺動面における化成皮膜の膜厚の一層の均一化が図れる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、化成皮膜形成のための処理に際してブレーキディスクロータの軸心を傾斜させるようにしたため、ドラム部内で発生した上で上方に浮上しようとする気泡が外部に排出されやすくなって、ドラム部摺動面における化成皮膜の生成ひいては膜厚を一段と均一化できるようになる。
【0023】
【発明を実施するための最良の形態】
1は本発明での処理対象となるいわゆるドラムインタイプで且つベンチレーテッド型のブレーキディスクロータ単体の構造を示しており、また図2はそのブレーキディスクロータの防錆処理を目的とした表面処理手順を、図3,4は図2における電解処理工程の詳細として本発明での前提となる基本技術をそれぞれ示している。
【0024】
図1の(A),(B)に示すように、ブレーキディスクロータ1は一般的な鋳鉄材料(例えばFC250相当)をもって形成されているとともに、車両取付時に外側に位置することになるアウタ側の摺動板2とその内側に所定距離隔てて位置することになるインナ側の摺動板3、およびそれら両者の間に放射状に配された複数の隔壁4とを有している。これらアウタ,インナ側の摺動板2,3と隔壁4とでディスク部5が形成されていて、双方の摺動板2,3と各隔壁4とで囲まれた空間がそれぞれに通風孔(ベントホール)17として機能するようになっている。そして、車両取付時には双方の摺動板2,3が図示しないキャリパに挟まれて、アウタ側の摺動板2の外側面およびインナ側の摺動板3の内側面がキャリパ側のブレーキパッドとの摺動面2a,3aとして機能することになる。
【0025】
また、ディスク部5の中央部には軸心方向の一方側に向かって開口した有底円筒状のドラム部6がアウタ側の摺動板2と一体に形成されていて、その円筒状の内周面がパーキングブレーキ用のブレーキシューとの摺動面6aとして機能することになる。同時に、上記ドラム部6の底壁面のうち最も外側の面がロードホイール取付面6bとして機能するようになっていて、周知のようにこのロードホイール取付面6bのボルト穴7には図示しないハブボルトが圧入固定されることから、ハブボルトとこれに螺合する図示外のホイールナットとをもってロードホイールがロードホイール取付面6bに締付固定されることになる。
【0026】
ここで、ディスク部5におけるアウタ側,インナ側の各摺動面2a,3aのほかドラム部6の内周面であるパーキングブレーキ用の摺動面6aを中心としてブレーキディスクロータ1の全周にはその防錆性能付与のために化成皮膜である所定膜厚のリン酸塩皮膜8として例えばリン酸亜鉛皮膜が電解処理により形成されている。
【0027】
ディスク部5におけるアウタ,インナ側の各摺動面2a,3aでは、その耐食性とユーザーに車両が引き渡されるまでのならし運転での制動力の早期回復を考慮して上記リン酸塩皮膜8の膜厚を決定する。また、ドラム部6の摺動面6aではディスク部5と比べその制動挙動が異なることから、そのリン酸塩皮膜8の膜厚tは極薄膜であることが要求され、例えばその膜厚は2μm以下、望ましくは1μm以下とする。
【0028】
リン酸塩皮膜8の形成のための電解処理に先立って、図2に示すように最初に機械加工後のブレーキディスクロータ1の各摺動面2a,3a,6aにアルカリ脱脂処理を施す。このアルカリ脱脂処理は、ケイ酸ソーダを主成分とするPH12以上のアルカリクリーナ(例えば、日本パーカライジング(株)社製の「FC4360」を濃度調整したもの)中にブレーキディスクロータ1を所定時間浸漬させて処理を行う。ただし、摺動面2a,3a,6aの汚れがひどい場合にはブラシ等にてその摺動面2a,3a,6aをこすりながら脱脂処理を行う。
【0029】
続いて、水洗いをした後、コロイド状チタンを主成分とする表面調整剤(例えば、日本パーカライジング(株)社製の「PL−EL200」を濃度調整したもの)中にブレーキディスクロータ1を浸漬させ、表面調整を行う。この処理は、次の工程である電解処理の際に結晶粒を細かくし、薄膜で且つ緻密組織の安定したリン酸塩皮膜8を生成するためである。
【0030】
電解処理は、リン酸イオン、亜鉛イオンおよび硝酸イオンを含有した化成皮膜形成液としてのリン酸塩皮膜形成液(以下、これを単に処理液という)中にブレーキディスクロータ1を浸漬させ、所定の条件下で電解処理を施して、各摺動面2a,3a,6aを中心としてブレーキディスクロータ1の表面にリン酸塩皮膜(リン酸亜鉛皮膜)8を生成させる。
【0031】
上記処理液としては、例えば日本パーカライジング(株)社製の「PB−EL950M」を濃度調整したものを使用する。
【0032】
上記電解処理のための電極配置は図3,4に示すとおりとする。すなわち、液槽9の処理液M中に浸漬された被処理材であるブレーキディスクロータ1を陰極とするべくロードホイール取付面6bに電極板10を接触させる一方で、リン酸塩皮膜8の生成をディスク部5におけるアウタ,インナ側の摺動面2a,3aに集中させるために、陽極として摺動面2a,3aの平面形状とほぼ同一大きさであって且つ中抜き円板状の2枚の不溶解性の電極板11,12を用いる。なお、電極板11,12は電気絶縁性に優れていることはもちろんのこと、処理液Mが強酸性であるために同時に耐酸性を有していることが重要であり、例えばFRP製のものを用いるものとする。また、ロードホイール取付面6bに電極板10を密着させているのは、そのロードホイール取付面6bにはリン酸塩皮膜8を生成させないようにするためであるが、それをより確実なものとするために電極板10ともう一方の電極板12との間には架橋的に筒状のマスキング部材13にてマスキングを施す。
【0033】
そして、一方の電極板11をディスク部5のインナ側の摺動面3aに対し平行となるように所定距離W1だけ隔てて対向させるとともに、もう一方の電極板12を同じくディスク部5のアウタ側の摺動面2aに対し平行となるように上記と同等距離W1隔てて対向させ、先に述べたように電解処理に伴うリン酸塩皮膜8の生成を各摺動面2a,3aに集中させるために各電極板11,12に不溶解性のマスキング部材14,15にて部分的にマスキングを施す。
【0034】
同時に、ドラム部6の摺動面6aに生成されるリン酸塩皮膜8の膜厚tはディスク部5側のものに比べて極薄膜のものとするべくその皮膜生成を抑制して緩慢なものとするために、ドラム部6の開口端面6cには所定距離W2だけ隔てて先のものと同材質の円板状のマスキング部材16を対向配置する。なお、マスキング部材16は例えば図示しない板ばねや線細工ばね等を用いてドラム部6の開口部内周もしくは外周に保持させるものとする。ドラム部6の開口端面6cとマスキング部材16との間に所定距離W2の隙間Rを確保しているのは、特にドラム部6内での電解処理の進行に伴って水素ガスを主成分とする気泡が発生してこの気泡がドラム部6内の封じ込められるとその部分ではリン酸塩皮膜8の生成が阻害されてしまうためである。距離W2が大きすぎるとマスキング部材16本来の機能が不十分となることから、距離W2は5〜20mm程度に設定するものとする。
【0035】
この状態で、陰極である電極板10と陽極である電極板11,12との間に通電して、各摺動面2a,3a,6aを中心として電解処理によるリン酸塩皮膜8の生成を促進させる。すなわち、ディスク部5側の摺動面2a,3aには必要な所定膜厚のリン酸塩皮膜8を生成させ、ドラム部6側の摺動面6aには摩擦係数への影響がないようリン酸塩皮膜8の生成を制限する。リン酸塩皮膜8の膜厚は、上記処理液濃度、温度、電流値、処理時間のほか電圧や電流密度等を適宜調整することで制御する。
【0036】
上記の電解処理を終えたならば、図2に示すようにブレーキディスクロータ1を液槽9から取り出して水洗いを施す。
【0037】
こうして電解処理によるリン酸塩皮膜形成処理が施されたドラムインタイプのブレーキディスクロータ1について、性能評価としてブレーキトルク試験を行った。図5はブレーキトルク試験を行った時のトルクと摺動面6aにおけるリン酸塩皮膜8の膜厚との相関を示す図である。
【0038】
同図において、A点は従来の化成皮膜を4μmとした時のトルク値を示し、またB点は摺動面6aに何ら皮膜を形成しなかった場合のトルク値を示す。同様に、C点は先の実施の形態の電解処理により膜厚1μmのリン酸塩皮膜8を形成した場合のトルク値を、D点は膜厚0.5μmのリン酸塩皮膜8を形成した場合のトルク値をそれぞれ示す。同図から明らかなように、膜厚4μmの化成皮膜を形成したもの(A点)ではそのトルク値がそれ以外のものより低下してしまうことがわかる。これに対して、先の実施の形態の電解処理により膜厚1μmおよび0.5μmのリン酸塩皮膜8を形成したもの(C点およびD点)ではA点のようなトルクの低下が認められず、摺動面6aに全く皮膜を形成しなかった場合(B点)と同等のトルク値を維持できることがわかる。
【0039】
このように上記処理方法によれば、パーキングブレーキ用のドラム部6の摺動面6aにおけるリン酸塩皮膜8の膜厚tを極薄の膜厚としながらも、防錆性能を高めつつ且つパーキングブレーキ性能の優れたドラムインブレーキディスクロータ1を提供することが可能となる。すなわち、例えば海外に輸出される車両の輸送過程での錆の発生防止を目的としてドラム部6の摺動面6aにディスク部5の摺動面2a,3aとともにリン酸塩皮膜形成処理を施したとしても、パーキングブレーキ本来の制動機能に何ら悪影響を及ぼさないことになる。
【0040】
図6,7は図3,4の処理方法を前提とした本発明の第1の実施の形態を示す図であり、図3,4と共通する部分には同一符号を付してある。
【0041】
この第1の実施の形態では、ドラム部6の開口端面6c側に所定距離W2だけ隔てて対向配置される円板状のマスキング部材26の周縁部にフランジ部を26aを曲折成形するとともに、そのマスキング部材26をインナ側の摺動板3の内周側に嵌合もしくは圧入固定して、ドラム部6の開口端面6cとマスキング部材26との間に距離W2の隙間Rを確保しつつ、その隙間Rを各通風孔17の内周側の開口端面に接続し、実質的にドラム部6の内部空間を隙間Rおよび各通風孔17を通して外部に連通させるようにしたものである。
【0042】
この第1の実施の形態によれば、電解処理に伴ってドラム部6の内部で発生した水素ガス等の気泡は同内部空間のうちの上方部分に浮上することから、それらの気泡は隙間Rからディスク部5における上方側の通風孔17を通って外部に排出される。なお、気泡の排出経路を図6に符号Fで示す。そして、先の図3,4のものと比較した場合に、図3,4ではドラム部6の内部空間で発生した気泡は上方側に浮上しつつドラム部6の開口端面6cとマスキング部材16との隙間Rから外部に排出され、その排出された気泡の一部が近接するディスク部5側の摺動面2a,3aに付着して同部位での皮膜生成を阻害する可能性があるが、上記のように電解処理に伴って発生した気泡が通風孔17から確実に排出されることになる第1の実施の形態ではそのような二次的不具合の発生を未然に防止できるようになる。
【0044】
図8,9は本発明の第2の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付してある。すなわち、この第2の実施の形態では、処理対象となるブレーキディスクロータ1と電極板10〜12およびマスキング部材26との相対位置関係は基本的に第1の実施の形態のものと同様であるが、ブレーキディスクロータ1をマスキング部材26とともに積極的に回転させるようにした点で異なっている。
【0045】
図8,9に示すように、液槽9内には固定側支持アーム18と可動側支持アーム19が所定距離隔てて対向配置されていて、可動側支持アーム19は固定側支持アーム18に対して接近離間可能となっている。固定側支持アーム18には駆動軸20と一体に形成された穴31付きで且つ皿状のキャッチャー21が、可動側支持アーム19には従動軸22と一体に形成された穴32付きで且つ円板状のプッシャー23がそれぞれに軸受24を介して回転可能に支持されている。従動軸22にはマスキング部材26が固定支持されている。キャッチャー21は図6に示したマスキング部材13を兼ねており、したがって、キャッチャー21にてブレーキディスクロータ1のドラム部6を受容しつつドラム部6の内底面側からプッシャー23を押し付けることにより、これらキャッチャー21とプッシャー23とによりブレーキディスクロータ1が挟持されるようになっている。駆動軸20にはドライブギヤ25に噛み合うドリブンギヤ27が固定されており、ドライブギヤ25がモータ28にて回転駆動されることでキャッチャー21とプッシャー23とで支持されたブレーキディスクロータ1が回転運動することになる。なお、ロードホイール取付面6bに密着配置される電極板10には駆動軸20内に配設される給電ケーブル29を介して給電される。
【0046】
この第2の実施の形態によれば、キャッチャー21とプッシャー23とで挟持されたブレーキディスクロータ1を例えば8〜30rpm程度で連続回転させながら、陰極である電極板10と陽極である電極板11,12との間に通電して、各摺動面2a,3a,6aでの電解処理によるリン酸塩皮膜8の生成を促進させる。生成すべきリン酸塩皮膜8の膜厚は先の各実施の形態の場合と同様とする。
【0047】
したがって、ブレーキディスクロータ1の回転運動に伴い液槽9内の処理液Mが流動する一方、電解処理に伴いドラム部6内で水素ガス等の気泡が発生した場合にそれらの気泡とブレーキディスクロータ1とが相対回転することから、ドラム部6の内部空間から気泡が排出されやすくなるとともに(気泡の排出経路を矢印Fで示す)、その内部空間の内隅部に気泡が滞留したままとなるようなことがない。
【0048】
図10,11は図3,4に示した基本技術の変形例を示す図であり、図3,4に示したものと共通する部分には同一符号を付してある。
【0049】
ここでは、液槽9内の処理液Mにブレーキディスクロータ1を浸漬させた上、静止状態で電解処理によるリン酸塩皮膜形成処理を施すにあたり、ブレーキディスクロータ1を電極板10〜12やマスキング部材13,16とともに所定角度傾けた状態で処理を行うようにしたものである。ブレーキディスクロータ1等を傾けているのは、電解処理に伴いドラム部6の内部空間で発生した気泡が上方側に浮上して、その内部空間の内隅部で滞留して実質的に封じ込められたままとなるのを回避するためであり、好ましくはブレーキディスクロータ1の軸心を45°程度傾けるものとする。なお、気泡等の排出経路を符号Fで示す。
【0050】
したがって、この変形例によれば、図3,4に示したものと比べてドラム部6の内部で発生した気泡を確実に外部に排出することができ、そのドラム部6の内部空間における気泡の滞留を回避できるようになる。故に、かかる技術を図6,7の第2の実施の形態、および図8,9の第2の実施の形態にも同様に適用することができることは言うまでもない。
【0051】
なお、これまでに説明した第1〜第3の実施の形態ではいずれもベンチレーテッドタイプのブレーキディスクロータを例にとって説明したが、図3,4、図8,9および図10,11に記載の処理方法はベンチレーテッドタイプ以外のいわゆるソリッドタイプのブレーキディスクロータの表面処理にも適用可能である。また、各実施の形態では化成皮膜としてリン酸塩皮膜もしくはリン酸亜鉛皮膜について説明したが、これらの皮膜以外にも化成皮膜は例えばリン酸Mg(マンガン)皮膜、リン酸(Fe)鉄皮膜、クロメート皮膜等であってもよいし、さらにブレーキディスクロータがアルミニウム系材料製のものであればアルマイト処理であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドラムインタイプで且つベンチレーテッド型のブレーキディスクロータの構造を示す図で、(A)はその縦断面図、(B)は同図(A)の左側面図。
【図2】図1に示すブレーキディスクロータの表面処理手順を示す概略説明図。
【図3】図1に示すブレーキディスクロータに化成皮膜形成処理としてリン酸塩皮膜形成処理(電解処理)を施す際の説明図。
【図4】図3のa方向矢視図。
【図5】リン酸塩皮膜の膜厚とブレーキトルクとの関係を示すグラフ。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図3の処理方法を基本とした上で図1に示すブレーキディスクロータにリン酸塩皮膜形成処理(電解処理)を施す際の説明図。
【図7】図6のb方向矢視図。
【図8】本発明の第2の実施の形態として図1に示すブレーキディスクロータにリン酸塩皮膜形成処理(電解処理)を施す際の説明図。
【図9】図9のc方向矢視図。
【図10】本発明の第3の実施の形態として図1に示すブレーキディスクロータにリン酸塩皮膜形成処理(電解処理)を施す際の説明図。
【図11】図10のd方向矢視図。
【符号の説明】
1…ドラムインブレーキディスクロータ
2…アウタ側の摺動板
2a…アウタ側の摺動面
3…インナ側の摺動板
3a…インナ側の摺動面
4…隔壁
5…ディスク部
6…ドラム部
6a…摺動面
6c…開口端面
8…リン酸塩皮膜(化成皮膜)
9…液槽
10〜12…電極板
13…マスキング部材
16…マスキング部材
17…通風孔
21…キャッチャー
23…プッシャー
25…ドライブギヤ
27…ドリブンギヤ
28…モータ
26…マスキング部材
M…リン酸塩皮膜形成液(化成皮膜形成液)

Claims (3)

  1. 径方向に貫通した通風孔が形成された円板状のディスク部の内周側に軸心方向の一方側に向かって開口した有底円筒状のドラム部が一体成形されたドラムインタイプのブレーキディスクロータの表面に化成皮膜を電解処理により形成する方法であって、
    ドラム部開口側に、ドラム部の内部空間とドラム部の外部空間とをディスク部に形成された通風孔によって連通させるよう形成するマスキング部材を配置したことを特徴とするドラムインブレーキディスクロータの表面処理方法。
  2. 化成皮膜形成液中でブレーキディスクロータをその軸心を回転中心として回転させながら処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のドラムインブレーキディスクロータの表面処理方法。
  3. 化成皮膜形成液中でブレーキディスロータの軸心を傾斜させた状態で処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のドラムインブレーキディスクロータの表面処理方法。
JP2002213430A 2002-07-23 2002-07-23 ドラムインブレーキディスクロータの表面処理方法 Expired - Fee Related JP3953379B2 (ja)

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