JP3951816B2 - 電気再生式脱イオン水製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気再生式脱イオン水製造方法(以下、この方法をEDI法と称し、その脱イオン水製造装置をEDI装置と称する。)に関する。詳しくは、医薬品製造工業、半導体製造工業、食料品工業等の各種製造業、またはボイラー水や研究施設などで用いられる純水もしくは超純水等と言われる高度に脱イオン化した脱イオン水を効率的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、脱イオン水の製造方法としてはイオン交換樹脂の充填床に被処理水を流し、不純物イオンをイオン交換樹脂に吸着させて除去する方法が一般的である。しかし、この方法では、交換・吸着能力の低下したイオン交換樹脂は酸やアルカリを用いて再生する必要がある。よって、この方法ではイオン交換樹脂の面倒な再生操作が必要であり、酸やアルカリに起因する廃液が排出される問題がある。
【0003】
上記問題のない方法として、近年、EDI法が開発され、実用化されている。この方法は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを交互に配置した電気透析槽の脱塩室に陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合物を入れ、脱塩室に被処理水を流すとともに、脱塩室と交互に形成、配置された濃縮室に濃縮水を流しながら電圧を印加して電気透析を行うものである。この方法では脱イオン水を製造するとともにイオン交換樹脂の再生を行うため、別途イオン交換樹脂の再生を行う必要がない。
【0004】
しかし、EDI法においては、被処理水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の硬度成分がイオン交換膜へ付着することにより電気抵抗が上昇し、印加電圧が上昇する、または電流が低下する問題があり、更には脱塩性能の低下により生産される処理水の比抵抗が低下する問題がある。
【0005】
上記問題を解決する方法としては、EDI装置に供給する被処理水を予め逆浸透膜処理を2段行い可及的に硬度成分を除去した後、EDI法の被処理水として供給する方法(特開平2−40220号)、別途用意した酸性水生成電解槽で水を電気分解し陽極室で生成する酸性水をEDI法の濃縮室へ通水する方法(特開平10−128338号)がある。これらの方法の採用により長期脱塩性能の安定化は図られるが、その反面投資コストは増大する。
【0006】
また、アルカリ金属の、塩酸塩または硫酸塩水溶液を添加して電導度を100〜800μS/cmとした液を、EDI装置の濃縮室へ供給することにより、高純度の脱イオン水を得る方法(特開平9−24374号)も提案されているが、その性能の長期安定性は必ずしも充分ではなかった。
【0007】
本発明者らは脱塩性能の長期安定性の改善を目的として、濃縮水の電導度とマグネシウムイオン濃度の比を特定値以上にする方法(特開2001−314868号)を提案した。しかし、この方法により、脱塩性能の長期安定性については改善できるが、一価陽イオンを含む電解質の添加、または、被処理水をあらかじめ特定の逆浸透膜で処理すること等が必要であり、ユーザによっては採用できない場合があることが判明した。
【0008】
また、本発明者らは、脱イオン水の比抵抗が1〜15MΩ・cmと比較的低くても、利用目的に適うとするユーザも存在し、かかる需要に対しても適応できる脱イオン水製造システムの必要性を認識した。しかし、上記方法は、高純度の脱イオン水を製造するのには優れているが、比抵抗が1〜15MΩ・cmと比較的低い脱イオン水を製造する場合については、さらなる性能の安定化が必要であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、被処理水中の硬度成分等による脱イオン性能の低下を防止し、長期間安定に製造できる高純度の脱イオン水の製造方法の提供を目的とする。また、原水の純度、前処理装置の浄化性能に応じ、比較的水質の悪い被処理水を用いて、比抵抗の比較的低い脱イオン水を長期間安定的かつ効率的に製造できる脱イオン水の製造方法の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、陽極を備える陽極室と陰極を備える陰極室との間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に配列させ、陽極側が陰イオン交換膜で区画され陰極側が陽イオン交換膜で区画された脱塩室と、陽極側が陽イオン交換膜で区画され陰極側が陰イオン交換膜で区画された濃縮室とを形成させた電気透析槽の少なくとも脱塩室にイオン交換体を収容してなる脱イオン水製造装置を使用し、電圧を印加しながら脱塩室に被処理水を供給し、濃縮室に濃縮水を供給して被処理水中の不純物イオンを濃縮水に移動させる電気再生式脱イオン水製造方法において、
a)式1で示されるSc値が1R以上(Rは脱イオン水の目標比抵抗(単位:MΩ・cm)から単位を除外した数値で、1〜18から選択される定数。)である濃縮水を濃縮室に供給し、
b)脱塩室における被処理水の流れ方向と、濃縮室における濃縮水の流れ方向とが対向するように被処理水および濃縮水を供給し、
c)かつ、濃縮室出口の濃縮水のSc値を0.1R以上とする
ことを特徴とする電気再生式脱イオン水製造方法
Sc値=γc/Ac ・・・式1
(ただし、γc:濃縮水の電導度(μS/cm)の単位を除外した数値、Ac:濃縮水中のマグネシウムイオン濃度(ppb)の単位を除外した数値。)
を提供する。
【0011】
本発明においては、濃縮水としてSc値が1R以上であるものを濃縮室に供給すること、被処理水と濃縮水を対向流となるように供給すること、および濃縮室出口の濃縮水のSc値(電導度とマグネシウムイオン濃度との比)を、目的とする脱イオン水の比抵抗に対応した所定の範囲に保つことにより、濃縮室において水酸化マグネシウム等の硬度成分が析出するのを抑制できる。
【0012】
本発明者らは、EDI法により長期間安定して脱イオン水を製造するためには、目的とする脱イオン水の比抵抗に対し、被処理水および濃縮水の水質、すなわちSc値に下限があることを見出し、本発明にいたったものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明においては、Sc値が1R以上である濃縮水を濃縮室に供給することにより、硬度成分の析出を抑制できる。通常、排出された濃縮水は濃縮水タンクを介して再度濃縮室へ供給され、再利用されるが、このとき、濃縮水タンクと濃縮室入口との間でマグネシウムイオンを除去しSc値を1R以上とする。供給する濃縮水としては電導度にもよるが、マグネシウムイオン濃度を0.015ppm以下としたものを用いるのが好ましい。
【0014】
濃縮室に供給する濃縮水のSc値を1R以上とする手段としては、該濃縮水をソフナーまたはキレート樹脂と接触させてマグネシウムイオンを除去するのが好ましい。ここで、ソフナーとしては、Na型またはK型等の一価陽イオン交換樹脂のほか、ジルコニウム系、スズ系、アンチモン系またはチタン系のNa型無機イオン交換体が用いられる。キレート樹脂としては、ダイヤイオンCR−10(三菱化学社製)、レバチットOC−1048(バイエル社製)またはスミキレートMC−10(住友化学社製)等のイミノジ酢酸型キレート樹脂、デュオライトES−467(住友化学社製)等のアミノリン酸型のキレート樹脂が好ましく用いられる。
【0015】
また、本発明においては、脱塩室における被処理水の流れ方向と、濃縮水における濃縮水の流れ方向とが対向する(反対方向となる)ように、被処理水および濃縮水を供給する。これにより、濃縮室を構成する陰イオン交換膜表面における硬度成分の析出を抑制できるが、この理由は、以下のように説明される。
【0016】
脱塩室においては、被処理水の入口側より出口側の方が、イオン交換膜と充填した樹脂との界面で水分解が起こりやすい。これにより濃縮室を構成する陰イオン交換膜表面のpHは、被処理水の入口側より出口側の方が高くなる。一方、濃縮室における濃縮水中のマグネシウムイオン濃度は、濃縮水が濃縮室を通過する間に脱塩室から濃縮室へマグネシウムイオンが透過してくることから、濃縮室の入口側より出口側の方が高くなる。
【0017】
被処理水と濃縮水が並行流である場合は、濃縮室を構成する陰イオン交換膜の濃縮表面のpHが高い側に、マグネシウムイオン濃度の高い濃縮水が供給されることになるが、対向流である場合は、上記陰イオン交換膜の濃縮表面のpHが高い側には、マグネシウムイオン濃度の低い濃縮水が供給されることになるので、水酸化マグネシウム等の硬度成分の析出が抑制できると考えられる。
【0018】
本発明においては、式1で示される濃縮室出口の濃縮水のSc値を0.1R以上(Rは脱イオン水の目標比抵抗(単位:MΩ・cm)から単位を除外した数値で、1〜18から選択される定数。)とする。
Sc値=γc/Ac ・・・式1
Sc値は式1で定まるが、式1を構成する濃縮水の電導度rc、濃縮水のマグネシウムイオン濃度Acは、各々電導度計、マグネシウムイオン濃度計により測定できる。なお、被処理水中のマグネシウムイオンとカルシウムイオンとの比率は通常ほぼ一定であるから、簡便に入手できるカルシウムイオン濃度計を使用してカルシウムイオンの濃度を測定し、換算することによりマグネシウムイオン濃度Acを求めてもよい。
【0019】
また、濃縮水のpHが4未満である場合は、式1に水素イオン濃度の補正を加えた式2で定まるSc’値をSc値として指標にするのが好ましい。
Sc’値=γc/(Ac×(1−(C/0.004))) ・・・式1−1
ここで、式1−1において、Cは濃縮水中の水素イオン濃度(mol/L)であり、0.004以下である。
【0020】
本発明においては、濃縮室出口の濃縮水のSc値を0.1R以上に保つことにより、濃縮室を構成する陰イオン交換膜表面における硬度成分の析出を防ぎ、電圧の上昇や脱イオン水の比抵抗の低下を防止できる。Sc値は0.2R以上、特には0.4R以上とするのが好ましい。また、Sc値が高いほど、脱イオン水の製造における性能の安定性はより向上するが、そのための費用は増加する傾向にある。よって、Sc値は5R以下、特には2R以下、さらには1R以下とするのが好ましい。このように、Sc値は、0.1R以上5R以下、特には0.2R以上2R以下、さらには0.4R以上1R以下とするのが好ましい。
【0021】
あらかじめマグネシウムイオンを完全に除去した濃縮水を使用したとしても、濃縮水中のマグネシウムイオン濃度は、濃縮水が濃縮室を通過する間に増加するため、濃縮水の供給量が少ない場合等は濃縮室出口のSc値が0.1R未満になる。Sc値を0.1R以上とする方法としては、以下の方法が挙げられる。
【0022】
1)濃縮室供給水量/脱塩室供給水量(重量比)を0.7/1〜10/1とし、排出する濃縮水中のマグネシウムイオン濃度を低下させる。
【0023】
2)上記電気透析槽が、濃縮室出口と濃縮室入口とを連通する濃縮水の循環経路を備え、被処理水を脱塩室と濃縮水の循環経路に分配供給し、循環される濃縮水を濃縮室と両極室とに供給し、脱塩室から排出される脱イオン水、および両極室から排出される極液を排出される方法において、上記Sc値を0.1R以上とする手段として、被処理水の回収率((脱イオン水生成量/被処理水の供給量(重量比))×100)を90〜99.9%として濃縮水の電導度を高める。
【0024】
3)濃縮水に一価陽イオンを含む中性電解質を添加する方法。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウムまたは硫酸ナトリウム等を添加するのが好ましい。
【0025】
4)濃縮水に水素イオンを含む酸性電解質を添加する方法。例えば、塩酸または硫酸等を添加するのが好ましい。
【0026】
なかでも、1)および2)の方法は別途電解質を添加する必要がなく、ランニングコストも安価であることから、特に好ましい。なお、1)の方法においては、濃縮室供給水量/脱塩室供給水量(重量比)を1/1〜10/1とするのがより好ましい。また、1)および2)の方法においては、濃縮水の電導度を高め、槽電圧を低下させる観点から、特には濃縮室出口の濃縮水の電導度を150μS/cm以上とするのが好ましい。
【0027】
本発明によれば、比較的純度の低い被処理水、例えば式2のSd値が0.02〜7の被処理水を使用する場合であっても、以下の方法を採用することにより、一価陽イオン電解質の添加や、特定の被処理水の前処理を行わなくとも比抵抗1〜18MΩ・cmの脱イオン水を長期間安定に製造できる。
Sd値=γd/Ad ・・・式2
ただし、γdは被処理水の電導度(μS/cm)の単位を除外した数値であり、Adは被処理水のマグネシウムイオン濃度(ppb)の単位を除外した数値である。
【0028】
すなわち、この方法は、被処理水の一部を濃縮水として利用し、Sd値、被処理水の回収率η((脱イオン水生成量/被処理水供給量(重量比))×100)、濃縮室に供給する液量Vc、および脱塩室に供給する液量Vdを、式3を満たす条件で運転する方法である。
Sd×(100/(100−η))×(Vc/Vd)≧0.1R ・・・式3
このように上記式3が成り立つのは、被処理水の一部をそのまま濃縮水として利用し、かつ、濃縮水を循環供給することにより、排出される濃縮水の電導度が、被処理水の電導度の100/(100−η)倍に増加すること、および、排出される濃縮水のマグネシウム濃度は、被処理水のマグネシウム濃度とVc/Vd倍になることに基づく。
【0029】
例えば、Sd値が0.02(電導度:10μS/cm、マグネシウムイオン濃度:500ppb)の被処理水を使用して18MΩcmの脱イオン水を製造する場合は、0.02×(100/(100−η))×(Vc/Vd)≧0.1×18より、(100/(100−η))×(Vc/Vd)≧90となる条件で運転する。このとき、回収率ηが98%である場合はVc/Vdを1.8以上とする。
【0030】
EDIの装置およびポンプ能力から、回収率ηおよび濃縮室供給液量/脱塩室供給液量の比Vc/Vdが大きく取れない場合は、Sd値を大きくして式3を満たすようにする方法も使用できる。Sd値を大きくする方法としては、前記した濃縮水の場合と同様に、被処理水中のマグネシウムイオンを選択的に除去する、またはソフナーによりマグネシウムイオン以外のイオンとイオン交換する方法、マグネシウムイオン以外のイオンを含む電解質を被処理水に添加し、その電導度を高める方法とがあるが、前者の方法が好ましい。
【0031】
上記マグネシウムイオンを選択的に除去する方法としては、EDI装置の前段に前処理装置として、特定の特性を有する逆浸透膜を利用するのが好ましい。この逆浸透膜としては、下記式4のT値が5以上、好ましく10以上、特には50以上のものを使用するのが好ましい。ここで、T値とは、逆浸透膜の基礎物性値であり、NaCl除去率とMgCl除去率とを用いて定義されるものである。
T値=(100−NaCl除去率)/(100−MgCl除去率)・・式4
本発明では、濃縮室出口の濃縮水のSc値が0.1R以上となる条件で運転するが、少なくとも比抵抗計を用いて脱イオン水の水質を測定し、比抵抗が目標値一定となるように電流値を制御して運転するのが好ましい。これにより目標の比抵抗を有する脱イオン水を安定に製造できる。この電流値の制御は、比抵抗の目標値と脱イオン水の実測値とを比較し、実測値が目標値より低い場合には電流値を増加させ、目標値より高い場合には電流値を低下させることにより行う。この制御には、目標値に対する偏差に対しPID制御する方法が好ましく用いられる。
【0032】
また、実測値から算出されたSc値が0.1Rより低い場合は、長期安定性を損なう領域に入っているので、目標値と実測値に基づいて求めたSc値の差を安全運転の指標として信号表示し、Sc値が0.1R以上となるように調節することが好ましい。その具体的な調節方法としては、前記1)〜4)の方法により濃縮水のSc値が高くなる処理を行う方法、目標比抵抗を変更する方法が挙げられ、それらが自動的に行えるようにシステム化することもできる。
【0033】
本発明を、図1に示すEDI装置を用いて説明する。電気透析槽1において、陰イオン交換膜Aおよび陽イオン交換膜Kが、脱塩室枠D、D、D・・・Dおよび濃縮室枠C、C、C・・・Cを介して所定間隔を置いて配置され、陽極室2、濃縮室S、S・・・S、脱塩室R、R・・・Rおよび陰極室3が構成される。脱塩室R、R・・・Rには陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂が収容、充填されてなる。濃縮室にはメッシュ状等のスペーサが挿入されるか、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂のいずれか、もしくは両方が充填されていてもよい。
【0034】
陽極室2および陰極室3には、それぞれ陽極4、陰極5が設置されており、脱イオン水を製造するにあたっては両極間に電圧が印加される。これにより導管6から脱塩室R、R・・・Rへ導入される被処理水中の陰イオンが、陰イオン交換膜Aを通して陽極側の濃縮室へ透過し、被処理水中の陽イオンが陽イオン交換膜Kを通して陰極側の濃縮室へ透過する。これにより被処理水は脱イオン化され、導管7に設置した比抵抗計8で脱イオン水の比抵抗を計測しながら脱イオン水として取り出される。
【0035】
他方、濃縮室へ供給する濃縮水は、ソフナーやキレート樹脂等によるマグネシウムイオンの除去装置9を介し、導入管10を通して、被処理水の流れ方向とは逆方向に濃縮室S、S・・・Sへ導入され、透過してきた陰イオンおよび陽イオンが集められ濃縮水として導管11より排出される。このとき濃縮室出口のSc値が0.1R以上になるように制御する。この制御は導入管11に設置した電導度計12およびマグネシウムイオン濃度計13の測定値にもとづき行われる。
【0036】
目標とする脱イオン水の比抵抗が1〜15MΩcmである場合は、比抵抗計8、電導度計12およびマグネシウムイオン濃度計13で測定された信号を、演算部14に送り、演算部14においてPID制御を行うことにより、整流器15の電流値を制御し、脱イオン水の比抵抗を一定に保つのが好ましい。
【0037】
また、演算部14において算出されたSc値が0.1R未満である場合は、長期安定性が欠けるとの警報を出すとともに、回収率ηまたは濃縮室供給液量/脱塩室供給液量の比Vc/Vdの変更、または濃縮水入口側での一価陽イオン電解質の添加等の変更を動作させる信号を出し、Sc値が0.1R以上となるようにすることもできる。
【0038】
【実施例】
以下に本発明の実施例(例1、例2)および比較例(例3、例4)を説明する。実施例および比較例において使用した装置は、図1に図示したEDI装置である。
【0039】
強酸性陽イオン交換膜(厚さ600μm、イオン交換容量2.7ミリ当量/グラム乾燥樹脂)および強塩基性陰イオン交換膜(厚さ600μm、イオン交換容量2.1ミリ当量/グラム乾燥樹脂)を脱塩室枠(ポリプロピレン製)および濃縮室枠(ポリプロピレン製)を介して配列し、締め付け、フィルタープレス型電気透析槽とした。この電気透析槽の有効面積は507cm(横(室枠幅)13cm×縦(脱塩長)39cm)/対であり、室対数は30対とした。
【0040】
各濃縮室にはポリプロピレン製のネットを配置した。また、脱塩室には陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の混合物を、湿度40%で平衡させ、含水させたものを充填した。陽イオン交換樹脂としては、粒径が400〜600μm、イオン交換容量が4.5ミリ当量/g乾燥樹脂のスルホン酸酸型(H型)陽イオン交換樹脂(三菱化学社製、商品名:ダイヤイオンSK−1B)を用い、陰イオン交換樹脂としては、粒径が400〜600μm、イオン交換容量が3.5ミリ当量/g乾燥樹脂の4級アンモニウム塩型(OH型)陰イオン交換樹脂(三菱化学社製、商品名:ダイヤイオンSA−10A)を用いた。陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の混合比は、イオン交換容量比で50/50となるようにした。
【0041】
工業用水を砂ろ過後、逆浸透膜装置で1段処理した表1に示す水質の被処理水を脱塩室へ供給し、脱イオン水の製造試験を行った。
【0042】
【表1】
Figure 0003951816
【0043】
例1〜例4において、脱イオン水の目標比抵抗は18MΩ・cmとし、濃縮室供給水量Vc、脱塩室供給水量Vd、Vc/Vd、濃縮室出口の濃縮水の電導度rc、濃縮室出口の濃縮水のマグネシウムイオン濃度AcおよびSc値は表2に示した通りとした。例1〜3においては、被処理水と濃縮水は対向流となるように供給し、例4においては並行流となるように供給した。また、例1〜4において、被処理水の一部を濃縮水として使用し、回収率ηは95%とした。
【0044】
【表2】
Figure 0003951816
【0045】
例1〜4について、運転初期(運転開始から24時間後)、運転開始から連続2000時間後の電流密度、電圧および得られた脱イオン水の比抵抗を測定した。また、運転終了後、電気透析槽を解体して濃縮室を構成する陽イオン交換膜表面のスケール発生状況を確認した。これらの結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 0003951816
【0047】
表3の結果より、例1および例2では、電流密度および電圧ともに運転初期と2000時間経過後とで差異がなく、解体調査でも濃縮室側にスケールの発生がなく、長期間安定して運転できることがわかる。これに対し、Vc/Vdが低く、Sc値が0.1R未満である例3の場合は、電圧の上昇が顕著であり、電流密度を上げても目標とする比抵抗の脱イオン水が得られず、濃縮室側にスケールが発生していた。また、Vc/Vdは高いが、被処理水と濃縮水を並行流で供給した例4では、電圧の上昇が顕著であり、電流密度を上げても目標とする比抵抗の脱イオン水が得られず、濃縮室側にスケールが発生していた。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、高純度の脱イオン水を長期間安定に運転できる。また、被処理水の流量に対する濃縮水の流量を一定以上に保つこと、または、被処理水の一部を濃縮水に利用し、かつ、被処理水の回収率を高くすることにより、一価陽イオンを含有する電解質等の添加や、被処理水の高度な前処理を行わなくとも、安定に脱イオン水を製造できる。
【0049】
また、本発明によれば、被処理水の水質が比較的悪い場合であっても、比抵抗が比較的低い脱イオン水を、長期間安定に脱イオン水を製造できる。このとき、被処理水には高度な前処理を施す必要はなく、前処理に係る設備は不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】EDI装置の模式図。
【符号の説明】
A:陰イオン交換膜
K:陽イオン交換膜
1:電気透析槽
2:陽極室
3:陰極室
4:陽極
5:陰極
6:導管
7:導管
8:比抵抗計
9:マグネシウムイオン除去装置
、・・・S:濃縮室
、・・・R:脱塩室
、・・・D:脱塩室枠
、・・・C:濃縮室枠
10:導入管
11:導管
12:電導度計
13:Mgイオン濃度計
14:演算部
15:整流器

Claims (6)

  1. 陽極を備える陽極室と陰極を備える陰極室との間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に配列させ、陽極側が陰イオン交換膜で区画され陰極側が陽イオン交換膜で区画された脱塩室と、陽極側が陽イオン交換膜で区画され陰極側が陰イオン交換膜で区画された濃縮室とを形成させた電気透析槽の少なくとも脱塩室にイオン交換体を収容してなる脱イオン水製造装置を使用し、電圧を印加しながら脱塩室に被処理水を供給し、濃縮室に濃縮水を供給して被処理水中の不純物イオンを濃縮水に移動させる電気再生式脱イオン水製造方法において、
    a)式1で示されるSc値が1R以上(Rは脱イオン水の目標比抵抗(単位:MΩ・cm)から単位を除外した数値で、1〜18から選択される定数。)である濃縮水を濃縮室に供給し、
    b)脱塩室における被処理水の流れ方向と、濃縮室における濃縮水の流れ方向とが対向するように被処理水および濃縮水を供給し、
    c)かつ、濃縮室出口の濃縮水のSc値を0.1R以上とする
    ことを特徴とする電気再生式脱イオン水製造方法。
    Sc値=γc/Ac ・・・式1
    (ただし、γc:濃縮水の電導度(μS/cm)の単位を除外した数値、Ac:濃縮水中のマグネシウムイオン濃度(ppb)の単位を除外した数値。)
  2. 濃縮室に供給する濃縮水のSc値を1R以上とする手段として、該濃縮水をソフナーまたはキレート樹脂と接触させてマグネシウムイオンを除去する請求項1記載の電気再生式脱イオン水製造方法。
  3. 濃縮室出口の濃縮水のSc値を0.1R以上とする手段として、濃縮室供給水量/脱塩室供給水量(重量比)を0.7/1〜10/1とする請求項1または2記載の電気再生式脱イオン水製造方法。
  4. 上記電気透析槽が、濃縮室出口と濃縮室入口とを連結する濃縮水の循環経路を備えたものであり、被処理水を脱塩室と濃縮水の循環経路に分配して供給し、循環経路から取り出される濃縮水を濃縮室と両極室とに供給し、脱塩室から排出される脱イオン水、および両極室から排出される極液を排出する方法において、濃縮室出口の濃縮水のSc値を0.1R以上とする手段として、被処理水の回収率((脱イオン水生成量/被処理水の供給量(重量比))×100)を90〜99.9%とする請求項1または2記載の電気再生式脱イオン水製造方法。
  5. 濃縮室出口の濃縮水の電導度を150μS/cm以上とする請求項1〜4いずれか記載の電気再生式脱イオン水製造方法。
  6. 式2で示される被処理水のSd値が0.02〜7である場合に、被処理水の一部を濃縮水として利用し、Sd値、被処理水の回収率η((脱イオン水生成量/被処理水供給量(重量比))×100)、濃縮室に供給する液量Vc、および脱塩室に供給する液量Vdを、式3を満たす条件で運転する請求項1〜5いずれか記載の電気再生式脱イオン水製造方法。
    Sd値=γd/Ad ・・・式2
    (ただし、γd:被処理水の電導度(μS/cm)の単位を除外した数値、Ad:被処理水のマグネシウムイオン濃度(ppb)の単位を除外した数値。)
    Sd×(100/(100−η))×(Vc/Vd)≧0.1R ・・・式3
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