JP3951795B2 - ガスケット用表面処理ステンレス鋼板およびゴム被覆ステンレス鋼板 - Google Patents

ガスケット用表面処理ステンレス鋼板およびゴム被覆ステンレス鋼板 Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車用エンジンのシリンダヘッドに組み込まれるガスケットに適した表面処理ステンレス鋼板、およびゴム被覆層の密着性に優れたゴム被覆ステンレス鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジンのガスケット材として、ゴム被覆金属板の使用が一般的になってきている。シリンダヘッド・ガスケットのゴム被覆金属板は、高温・高圧でかつ過酷な腐食雰囲気に曝されることから、耐熱・耐食性,機械的強度に優れたステンレス鋼が基材に使用されている。ステンレス鋼の表面には、シール性を付与するためにゴム被覆層が設けられているが、シリンダヘッド・ガスケットは高温・高圧の湿潤環境で使用されるため、基材のステンレス鋼からゴム被覆層が剥離し、シール性が低下しやすい。
ゴム被覆層の耐剥離性を改善するため、ゴム被覆層の形成に先立って基材のステンレス鋼に粗面化,亜鉛めっき,クロメート処理等の表面処理が施されている。なかでも、クロメート処理は、他の処理法よりもゴム被覆層の密着性向上に有効であり、反応型クロメート処理や電解クロメート処理に比較して操業性,性能共に優れている塗布型クロメート処理が採用されている(特開平3−227622号公報,特公平7−92149号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
塗布型クロメート処理によってゴム密着性に優れたステンレス鋼製ガスケットが得られるものの、環境への配慮からCrを含まない材料開発が強く望まれている。ステンレス鋼製ガスケットの前処理に関しても同様な傾向にあり、早急な対応が望まれている。しかし、ガスケット用途のステンレス鋼板に適した実用的なCrフリーの表面処理方法はこれまでのところ確立されていない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、Crフリーの有機−無機複合皮膜を基材のステンレス鋼の表面に設けることにより、長期にわたってステンレス鋼/ゴム被覆層の密着性低下がなく、環境にも悪影響を及ぼさないシール性,耐久性に優れたステンレス鋼製ガスケットを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のガスケット用表面処理ステンレス鋼板は、その目的を達成するため、ゴム被覆層を形成するステンレス鋼板表面の一部あるいは全面に、チタン化合物,フッ素化合物,ヒドロキシフェニル化合物およびフォスフォニウム塩を含む有機−無機複合皮膜が形成されていることを特徴とする。
有機−無機複合皮膜は、さらにジルコニウム化合物を含んだものでよい。このような有機−無機複合皮膜を介して、ステンレス鋼板表面にゴム被覆層を形成してガスケット用ゴム被覆ステンレス鋼板を得る。
【0005】
【作用】
ガスケットの使用環境を考慮すると、ゴム被覆層の密着性低下は、エンジン冷却水に含まれるエチレングリコールが大きく影響していると考えられる。エチレングリコールの影響は、溶解性パラメータを用いて説明できる。
例えば、ガスケット用ゴムに使用されているNBRの溶解性パラメータは8.7〜10.3であり、フッ素ゴムの溶解性パラメータは8〜10である。他方、エチレングリコールの溶解性パラメータは14.2,水の溶解性パラメータは23.4である。ゴム成分の溶解性パラメータが溶液の溶解性パラメータに近いほど相溶性が大きくなる。エチレングリコールを含む環境では、水単独の環境に比較して溶解性パラメータがゴム成分の溶解性パラメータに接近するため、ゴム被覆層へのエチレングリコールの浸透,ゴム被覆層の膨潤,水分の浸透が生じやすい。
【0006】
他方、エンジン運転中、ゴム被覆層の表面は120〜150℃程度に加熱される。加熱されたゴム被覆層は、エチレングリコールによる膨潤作用を一層受けやすくなる。このような状況では、水分がゴム被覆層に浸透・透過しやすくなっている。基材のステンレス鋼表面に形成した表面処理皮膜が浸透水との水和反応や浸透水の吸着が生じると、ゴム/ステンレス鋼界面の浸透圧が上昇し、微小な浸透圧フクレが発生しやすくなると推察される。浸透圧フクレは、剥離の起点として作用しゴム被覆層の剥離を促進させる。
【0007】
エンジン冷却液に含まれているエチレングリコールがゴム被覆層の密着性低下に影響を及ぼしているとの前提に立って、浸透水との水和反応および浸透水の吸着が生じにくい、クロムフリーの表面処理方法を種々調査・検討した。
その結果、ステンレス鋼板の表面にチタン化合物,フッ素化合物,ヒドロキシフェニル化合物およびフォスフォニウム塩を含む難溶性の有機−無機複合皮膜を形成することが有効であることを見出し、この皮膜を介在させると、ゴム被覆層の密着性が高く、耐久性に優れたガスケット用ゴム被覆ステンレス鋼板が得られることに到達した。
【0008】
すなわち、本発明では、ゴム/ステンレス鋼界面に2種類の難溶性生成物を含む皮膜を形成すること、さらには、有機−無機複合皮膜とその上に被覆するゴム層とで架橋反応を行う成分を含有させることが有効である。
有機−無機複合皮膜は、チタン化合物,フッ素化合物,有機樹脂成分等を含む処理液をステンレス鋼板表面に塗布し乾燥することによって形成される。
上記2種類の難溶性生成物の一つは、処理液中のチタン化合物さらにはジルコニウム化合物が、同時に処理液中に含まれている有機樹脂に対して架橋作用を及ぼし、複合化して生成する有機−無機複合化合物であり、もう一つは、ステンレス鋼表面素地から処理液中の酸成分により溶出したFe等のイオンと、フッ化物から解離したフッ化物イオンとが反応したフッ化物である。
これらの反応生成物は,ゴム被覆層を透過する浸透水に対して水和作用を示し難く、ステンレス鋼/ゴム被覆層の密着性低下を防止する。
【0009】
さらに、有機−無機複合皮膜とゴム被覆層との間の結合を強化するために、有機−無機複合皮膜およびゴム被覆層の相互間で架橋反応を促進させる成分として、有機−無機複合皮膜にポリオールの一種であるヒドロキシフェニル化合物を含有させるとともに、同時に架橋反応の触媒的役割を担わせるフォスフォニウム塩を含有させる。ゴム被覆層を加熱処理等で加硫させる際、有機−無機複合皮膜中のヒドロキシフェニル化合物はゴムと有機−無機複合皮膜との架橋反応を進行させて、強固な一次結合が形成される。
この点、従来のクロメート皮膜/ゴム間の密着性が主として水素結合に拠っていることに比較し、本発明では共有結合によって有機−無機複合皮膜/ゴム被覆層の密着性を高めているので、過酷な環境下でも優れた密着性が長期にわたって維持される。
【0010】
【実施の形態】
有機−無機複合皮膜は、チタン化合物,フッ素化合物,ヒドロキシフェニル化合物およびフォスフォニウム塩を含む表面処理液を金属板に塗布,乾燥することによって形成される。
有機−無機複合皮膜は、好ましくは乾燥付着量が40〜400mg/m2となる塗布量で皮膜形成用処理液をステンレス鋼板に塗布し、乾燥することによって形成される。有機−無機複合皮膜は、40mg/m2以上の乾燥付着量で均一皮膜としてステンレス鋼板表面に形成され、十分な保護作用を発現する。しかし、400mg/m2を超える乾燥付着量では、性能が飽和し経済的でない。また加工性が低下する。
【0011】
本発明では、有機−無機複合皮膜に無機成分としてチタン化合物およびフッ素化合物を含むことが必要であり、さらにジルコニウム化合物を含むことが好ましい。
有機−無機複合皮膜形成用のクロムフリー処理液中のチタン化合物は、酸化チタン,チタン酸,チタン酸ナトリウム等のチタン酸塩、フッ化チタン酸,フッ化チタン酸ナトリウム等のフッ化チタン酸塩等の化合物により導入される。フッ素化合物は、HF,H2TiF6,H2ZrF6,H2HfF6,H2SiF6,HeGeF6,H2SnF6,HBF4等のフルオロアシッドを単独あるいは複合して配合することにより導入される。ジルコニウム化合物は、酸化ジルコニウム,ジルコニウム酸,ジルコニウム酸ナトリウム等のジルコニウム酸塩、フッ化ジルコニウム酸,フッ化ジルコニウム酸ナトリウム等のフッ化ジルコニウム酸塩等の化合物により導入される。
【0012】
皮膜中のチタン化合物は、有機樹脂との架橋反応によってステンレス鋼板表面に対して密着性に優れた難溶性の有機−無機複合皮膜を形成する。チタン化合物の効果は、皮膜中のTi換算付着量3mg/m2以上で顕著になり、ゴム密着耐久性および加工性が向上する。しかし、40mg/m2を超えるTi換算付着量では、チタン化合物による改善効果が飽和し、却って塗装後の加工性低下,コスト上昇等の原因になりやすい。
【0013】
フッ素化合物は、処理液中でフッ化物イオンに解離し、処理液中の酸成分とともにステンレス鋼板表面をエッチングし、ステンレス鋼素地との密着性を向上させる作用を呈する。フッ化物イオンによるエッチング作用は皮膜中のF換算付着量7mg/m2以上で顕著になって素地との密着性が向上するが、70mg/m2を超える過剰量のフッ素化合物が含まれると却って有機−無機複合皮膜が脆弱化してステンレス鋼板に対する密着性が低下する傾向が窺われる。また、フッ化物イオンは、界面のpH上昇に伴ってステンレス鋼板表面から溶出した金属イオンと反応して難溶性のフッ化鉄等のフッ化物を形成し、有機−無機複合皮膜の形成を促進させる。
チタン化合物とフッ素化合物が共存すると、チタンのフッ化物錯体が形成され、フッ化物イオンの解離が抑制される。そのため、ステンレス鋼板表面に対する過剰反応や処理液の急激な劣化も少ない。また、H2TiF6を使用する場合、チタン成分およびフッ素化合物の双方を処理液に同時導入できる。
【0014】
有機−無機複合皮膜は、さらにZr換算付着量10mg/m2以下のジルコニウム化合物を含むことができる。ジルコニウム化合物は、チタン化合物と同様な作用を呈し、有機樹脂との架橋反応によって難溶性の有機−無機複合皮膜を形成する。ジルコニウム化合物の添加によってゴム密着耐久性,加工性が向上するが、多すぎるジルコニウム化合物の添加は、処理コスト上昇の原因となるので、ジルコニウム化合物を添加する場合には上限を10mg/m2に規制する。
【0015】
処理液に使用されるヒドロキシフェニル化合物としては、ビスフェノール類あるいはトリスフェノール類が用いられる。例えば、ビスフェノールA,ビスフェノールAF,4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸,4,4'-(α-メチルベンジリデン)ビスフェノール,α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4ジイソプロピレンベンゼン,α,α,α'-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1エチル-4-イソプロピレンベンゼンなどが挙げられる。
フォスフォニウム塩としては、ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライドなどが使用できる。
フォスフォニウム塩は未加硫ゴムの炭素原子から結合している水素原子などを引き抜き、不飽和二重結合を形成させる。ヒドロキシフェニル化合物は、この不飽和二重結合部に付加することによって、三次元架橋構造を構築していく。フォスフォニウム塩およびヒドロキシフェニル化合物を有機−無機複合皮膜中に含有させることで、次に形成されるゴム被覆層との界面に相互の層間で橋架けを生じさせることが可能となり、ゴム密着性を飛躍的に向上させる。
【0016】
有機−無機複合皮膜中のヒドロキシフェニル化合物およびフォスフォニウム塩の合計量は、乾燥付着量で10〜320mg/m2であることが好ましい。10mg/m2に満たないと皮膜が不均一になり易く、密着性が低下する。320mg/m2を超えると加工時に皮膜のクラックやパウダリングが起こり易く、加工性が低下する。
皮膜形成用処理液には、ヒドロキシフェニル化合物やフォスフォニウム塩の他に、有機化合物としてフェノール樹脂,タンニン酸やポリビニルフェノール,ポリビニルアルコール,アクリル酸等の水溶性あるいは水分散性ポリマーを含ませても良い。また溶剤としては、水やアルコール類を使用でき、コロイダルシリカ,シランカップリング剤,化成処理に常用される消泡剤,界面活性剤等を適宜添加することもできる。
【0017】
有機−無機複合皮膜上に形成されるゴム被覆層には、通常使用されているNBR,水素化NBR,フッ素ゴム,シリコーンゴム,アクリルゴム,エピクロルヒドリドンゴム,EPDM,塩素化ゴム,クロロスルホン化ポリエチレン等が使用される。ゴム被覆層を形成するためには、ゴム塗料を塗布し乾燥する方法が簡便であり工業生産にも適している。
有機−無機複合皮膜に含まれるヒドロキシフェニル化合物は加硫剤、フォスフォニウム塩は加硫促進剤として働き、次工程で形成するゴム被覆層を加熱加硫する際、ゴム分子との架橋反応を促進させて、層間接着力を強化する。シリンダヘッド・ガスケットのように高温・高圧でしかも部分的に水溶液と接する環境下での使用に好適な材料であり、ゴム被覆層の密着性に優れたガスケット用表面処理ステンレス鋼板およびゴム被覆ステンレス鋼板が得られる。
【0018】
なお、基材に使用されるステンレス鋼板は、ガスケット成形後に要求される機械的特性や耐食性に優れている限り、鋼種に特段の制約が加わるものではない。有機−無機複合皮膜の形成に先立って、必要に応じてステンレス鋼板を洗浄することが好ましい。洗浄には、アルカリ系洗浄液,界面活性剤を含む洗浄液および/またはリン酸,フッ酸,硝酸,塩酸等の酸性水溶液が使用される。この洗浄によってステンレス鋼板表面から油,表面酸化物等が除去され、皮膜形成用処理液に対する親和性の高い表面に改質される。したがって、洗浄されたステンレス鋼板を処理すると、均一な有機−無機複合皮膜で被覆されたガスケット基材が得られる。
【0019】
皮膜形成用処理液の塗布にはロールコート,スプレー,浸漬等の公知の方法が採用される。塗布に際し処理液を特に加熱する必要はなく,室温の処理液をステンレス鋼板に塗布できる。処理液が塗布されたステンレス鋼板は、80〜240℃程度の温度域で乾燥される。
有機−無機複合皮膜を形成した後、ゴム塗料を塗布し加熱・乾燥することによりゴム被覆層を形成する。ゴム塗料は、ロールコート,スプレー,浸漬等で塗布されるが、予め加熱しておく必要はない。塗布されたゴム塗料の乾燥・加硫方法はゴムや加硫剤の種類によって異なるが、一般的には150〜200℃の温度域で30〜60分加熱する方法が採用される。
【0020】
【実施例】
〔本発明例1,2〕
板厚0.2mmのSUS301Hステンレス鋼板の圧延材をリン酸塩処理液で処理した後、皮膜形成用処理液を塗布し、200℃で1分乾燥することによって有機−無機複合皮膜を形成した。皮膜形成用処理液には、表1に示したクロムフリー処理液を使用した。次いで、パーオキサイド加硫の水素化NBR塗料をロールコータで有機−無機複合皮膜の上に塗布し、170℃×60分の加熱・加硫処理によって膜厚20μmまたは5μmの水素化NBR被覆層を形成した。
【0021】
〔本発明例3,4〕
本発明例1と同様にリン酸塩で処理したSUS301Hステンレス鋼板に、表1の処理液No.BあるいはCを用いて同様な条件下で有機−無機複合皮膜を形成した。次いで、ポリオール加硫フッ素ゴム塗料をロールコータで塗布し、200℃×60分の加熱・加硫処理によって膜厚20μmまたは5μmのフッ素ゴム被覆層を形成した。
【0022】
Figure 0003951795
【0023】
なお、パーオキサイド加硫の水素化NBR塗料およびポリオール加硫フッ素ゴム塗料としては、次の表2で示すものを使用した。
【0024】
Figure 0003951795
【0025】
〔従来例〕
本発明例1と同様にリン酸塩処理したステンレス鋼板に六価クロムイオン:20g/l,三価クロムイオン:20g/l,リン酸:40g/l,シリカ:80g/l,ポリメタクリル酸メチル:40g/l組成の処理液を塗布し、80℃×1分の加熱・乾燥によってCr換算付着量:40mg/m2のクロメート皮膜を形成した。次いで、シランカップリング剤を塗布し、180℃×10分の熱処理を施した後、ポリオール加硫フッ素ゴム塗料を用いてゴム被覆層を設けた。
【0026】
〔比較例1〕
本発明例3と同様にフォスフォニウム塩を含有しない処理液No.Dを用いて有機−無機複合皮膜を形成した後、ポリオール加硫フッ素ゴム塗料を塗布し、ゴム被覆層を設けた。
〔比較例2〕
比較例1と同様にヒドロキシフェニル化合物を含有しない処理液No.Eを用いて有機−無機複合皮膜を形成した後、パーオキサイド加硫の水素化NBR塗料を塗布し、ゴム被覆層を設けた。
【0027】
以上の方法で作製した各ゴム被覆ステンレス鋼板を、次に挙げる密着性試験および加工性試験に供した。その結果を表3に示す。
〔密着性試験〕
自動車エンジン用不凍液(トヨタ純正ロングライフクーラント)を50%含む水溶液を120℃に加熱し、膜厚20μmのゴム被覆層が設けられたステンレス鋼板を浸漬した。浸漬時間が500時間に達した時点で水溶液からゴム被覆ステンレス鋼板を引き上げ、24時間後にゴム被覆層の密着試験を実施した。
密着試験では、カッターナイフにより下地のステンレス鋼に達する間隔1mm,桝目100個の碁盤目状切込みを入れ、接着テープの貼り付け・引き剥がし後にゴム被覆層の剥離状況を観察した。ゴム被覆層が剥離した桝目の個数をカウントし、剥離個数を剥離度(%)として密着性を評価した。
【0028】
〔加工性試験〕
伸びが良いゴム被覆層が形成されたステンレス鋼板を加工すると、加工変形部分の処理皮膜の状態を外観で直接観察できない。そこで、加工変形によって処理皮膜に発生するクラックやパウダリングに起因するゴム被覆層の密着性低下現象を加工性の指標とした。
膜厚5μmのゴム被覆層が形成されたステンレス鋼から切り出された試験片を、ゴム被覆層が外側になるように0t密着曲げ加工した。曲げ部外側に接着テープを貼り付け、接着テープを強制的に引き剥がした後、ゴム被覆層の剥離の有無を調査した。剥離が全く生じていないゴム被覆層を○,一部でも剥離したゴム被覆層を×としてゴム被覆ステンレス鋼板の加工性を評価した。
【0029】
Figure 0003951795
【0030】
表3の試験結果にみられるように、チタン化合物,フッ素化合物,ヒドロキシフェニル化合物およびフォスフォニウム塩を含む有機−無機複合皮膜が形成され、その上に水素化NBRゴムを被覆した本発明例1,2、およびフッ素ゴムを被覆した本発明例3,4は何れもゴム被覆層の剥離度が4%以下であり、加工性に問題がなく、従来例に示した塗布型クロメート皮膜を形成したものを凌駕する性能を呈した。優れた密着性および加工性は、有機−無機複合皮膜/ゴム被覆層間で、架橋反応が進行することにより、強固な層間密着性が発現したことに起因する。加工部においても、クラック,パウダリング等の欠陥が皮膜に発生することはなかった。
他方、有機−無機複合皮膜を形成しても、有機−無機複合皮膜にヒドロキシフェニル化合物あるいはフォスフォニウム塩が含まれない比較例1,2では、本発明例5との対比から明らかなように密着性に劣っていた。密着性は、クロメート皮膜を介してゴム被覆層を形成した従来例よりさらに低い値であった。
【0031】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のガスケット用表面処理ステンレス鋼板は、基材のステンレス鋼板の表面にチタン化合物,フッ素化合物,ヒドロキシフェニル化合物およびフォスフォニウム塩を含む有機−無機複合皮膜を形成している。この表面処理ステンレス鋼板をゴム被覆すると、架橋反応によって有機−無機複合皮膜/ゴム被覆層間で一次結合されるためゴム被覆層の密着性が高く、ガスケットの要求特性を満足するゴム被覆ステンレス鋼板が得られる。ゴム密着性は、エンジン冷却水に接触する環境下でも長期にわたって高位に維持される。しかも、有機−無機複合皮膜はバリア性が高く高温安定性にも優れているので、ステンレス鋼本来の優れた耐食性を活用しながら、シール性,耐久性に優れた自動車エンジンのシリンダヘッド・ガスケットとして使用される。

Claims (3)

  1. ステンレス鋼板表面の一部あるいは全面に、チタン化合物,フッ素化合物,ヒドロキシフェニル化合物およびフォスフォニウム塩を含む有機−無機複合皮膜が形成されていることを特徴とするガスケット用表面処理ステンレス鋼板。
  2. 有機−無機複合皮膜がさらにジルコニウム化合物を含んだものである請求項1に記載のガスケット用表面処理ステンレス鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の有機−無機複合皮膜を介して、ゴム被覆層が形成されていることを特徴とするガスケット用ゴム被覆ステンレス鋼板。
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