JP3949618B2 - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロックアップクラッチを備えたトルクコンバータを有するハイブリッド車両であって、回生時におけるロックアップクラッチの滑り率を制御可能なハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジンとモータとを動力源とし、車両の走行エネルギーの一部を前記モータにより電気エネルギーに変換して蓄電装置に蓄えて(いわゆる回生処理を行って)、燃費の向上を図るものがある。この種のハイブリッド車両としては、動力源と駆動輪との間にロックアップクラッチを備えたトルクコンバータを設けて、該ロックアップクラッチにより動力源と駆動輪間の動力の伝達効率を調整するものがある。
【0003】
上述した回生処理を行うにあたり、ロックアップクラッチをモータに締結すると、駆動輪の走行エネルギーを直接モータに伝達することができる。しかし、駆動源でのトルク変動も駆動輪に直接伝達されてしまうため、騒音や振動等が発生してしまいドライバビリティが悪化してしまう。従って、これらを抑えつつ高い回生効率が得られるようにロックアップクラッチの係合状態を制御することが重要である。
【0004】
そこで、駆動源に対して滑らせるようにロックアップクラッチの油圧を制御して回生処理を行うものが提案されている。例えば、特許文献1には、ロックアップクラッチの動作点を高速側に移動させることで、トルクコンバータによるエンジントルクを増大させて、回生電力を増加させる技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−9414号公報(段落番号0051)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エンジンの回転数によっては、回生量が増大するとエンジンに負担がかかるため、これを軽減する処理が必要となり、走行性能を確保する上で障害となる場合があるという問題がある。一方で、どの回転数でも走行性能を確保できるように、回生量を低く抑えると十分な燃費向上を図ることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、走行性能を確保しつつ燃費を向上することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、駆動源であるエンジンとモータとが直列に接続され、前記エンジンと前記モータとの少なくとも一方の駆動源からの動力を、トルクコンバータを介して車輪に伝達するハイブリッド車両の制御装置において、前記トルクコンバータはロックアップクラッチを備え、該ロックアップクラッチの滑り率が大きくなるほど前記モータにより回生する回生量を制限する制限係数を小さく設定し(例えば、実施の形態におけるステップS2)、要求される回生量に該制限係数を乗じて前記モータの回生量を算出する(例えば、実施の形態におけるステップS3)算出手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、前記要求される回生量が最大の場合にも、前記制限係数を乗じることで、前記算出されるモータの回生量を走行性能を維持可能な値に抑制することができる。従って、回生処理を行う場合の走行性能を十分に確保することが可能となる。さらに、前記制限係数は、前記ロックアップクラッチの滑り率に応じて算出されるので、ロックアップクラッチの滑り率に関わらず回生量を一定に制限する場合に比して、大幅な燃費向上を図ることが可能となる。
【0010】
また、請求項2に記載した発明は、駆動源であるエンジンとモータとが直列に接続され、前記エンジンと前記モータとの少なくとも一方の駆動源からの動力を、トルクコンバータを介して車輪に伝達するハイブリッド車両の制御装置において、前記トルクコンバータはロックアップクラッチを備え、該ロックアップクラッチの滑り率が大きくなるほど前記モータにより回生する回生量の上限値を小さく設定し(例えば、実施の形態におけるステップS4)、要求される回生量が該上限値を超えた場合に、該上限値に前記回生量を制限する(例えば、実施の形態におけるステップS5)制限手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前記要求される回生量が前記上限値を下回る値の場合には前記モータの回生量を前記要求される回生量に設定し、前記要求される回生量が前記上限値を上回る値の場合には前記モータの回生量を前記上限値に制限することができる。従って、走行性能を確保した状態で、回生量を最大限多くすることができるので、燃費をより一層向上させることが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態におけるハイブリッド車両の駆動力制御装置を図面と共に説明する。図1は本発明の実施の形態におけるハイブリッド車両の駆動力制御装置1を示す概略構成図である。
【0013】
同図に示したように、動力源であるエンジン2とモータ・ジェネレータ3とが直列に接続されている。これらの動力源と車輪W,Wの間にはロックアップクラッチ4を備えたトルクコンバータ5を介して自動変速機6が配設され、該自動変速機6は前記動力源に接続されている。また、自動変速機6と車輪W、Wの間にはデファレンシャルギア8が介装されている。トルクコンバータ5の入力側にはモータ・ジェネレータ3の回転軸が接続され、トルクコンバータ5の出力側には自動変速機6の入力軸10が接続されている。また、前記ロックアップクラッチ4の係合状態を制御するための制御油圧を供給可能なオイルポンプ12と、ECU13とが設けられている。
【0014】
トルクコンバータ5は、流体を介してトルクの伝達を行うものである。前記トルクコンバータ5は、モータ・ジェネレータ3の回転軸9に連結されたフロントカバー5aと、これに一体に設けられたポンプインペラ5bと、フロントカバー5aとポンプインペラ5bとの間でポンプインペラ5bに対向配置されたタービンランナ5cと、ポンプインペラ5bとタービンランナ5cとの間に配置されたステータ5dとを備えて構成されている。
【0015】
さらに、タービンランナ5cとフロントカバー5aとの間には、フロントカバー5aの内面に対向配置され、フロントカバー5aに係合可能なロックアップクラッチ4が備えられている。そして、フロントカバー5aおよびポンプインペラ5bにより形成される容器内に作動油が封入されている。
【0016】
ロックアップクラッチ4はフロントカバー5aに対して係合状態の制御が可能にされており、ロックアップクラッチ4の係合が解除された状態(すなわち、非係合状態)でポンプインペラ5bがフロントカバー5aと一体に回転すると作動油の螺旋流が発生し、この作動油の螺旋流がタービンランナ5cに作用して回転駆動力を発生させ、作動油を介してトルクコンバータ5の出力軸5eにトルクが伝達される。
また、ロックアップクラッチ4が直結状態にされると、フロントカバー5aからタービンランナ5cへと、作動油を介さず直接に出力軸5eに回転駆動力が伝達される。
【0017】
なお、ロックアップクラッチ4の係合度合いは、ロックアップクラッチ4の作動油圧を制御することにより可変にされており、ロックアップクラッチ4を介してフロントカバー5aからタービンランナ5cへと伝達される回転駆動力は任意に変更可能とされている。なお、ロックアップクラッチ4の作動油圧は、オイルポンプ12との間に設けられた油圧回路(図示せず)により制御可能にされている。
【0018】
変速機6は、その入力軸10と出力軸7との間に設けられ変速比を変更可能なギヤトレーン(図示せず)と、該ギヤトレーンの動力伝達ギヤを変更するためのクラッチ(図示せず)を作動させるための油圧回路(図示せず)を備えて構成されている。この変速機6の変速動作は、ECU13が、例えば運転者から入力されるシフト操作や車両の運転状態に応じて、前記油圧回路を制御し前記クラッチを駆動することにより実行される。また、オイルポンプ12は、蓄電装置(図示せず)からの電力供給により駆動される。
【0019】
また、ECU13には、図1に示したように、各種センサ21〜28が接続され、これらのセンサ21〜28により取得した情報に基づいて、車両の動力源の切り替えやロックアップクラッチ4の係合度合いを制御できるようにしている。本実施の形態においては、エンジン2の状態(気筒休止の有無、フューエルカットの有無)を検出するエンジン状態検出センサ21と、アクセルペダルの踏み込み量検出センサ22と、ブレーキの作動検出センサ23と、回生電力が充電されるバッテリの残容量(SOC)検出センサ24と、エアコン作動検出センサ25と、ロックアップクラッチ4の作動油温度を検出する作動油温度検出センサ26と、自動変速機6のギヤポジション(GP)を検出する変速段検出センサ27と、ロックアップクラッチ4のすべり率(ETR:定義は後述)を検出するすべり率検出センサ28とを備えている。本実施の形態においては、上述したセンサ21〜28により目標回生量を検索するための回生量決定情報と、フリクショントルクを検索するためのフリクショントルク情報とがECU13に入力される。
【0020】
図2は図1の駆動力制御装置による回生量の制御内容を示すフローチャートである。同図に示すように、まず、ステップS1で、目標回生量算出処理を行う。この目標回生量は、車両の走行状態に応じて得られる回生量決定情報により算出される。ここで、回生量決定情報としては、バッテリ残容量(SOC)、自動変速機のギヤポジション(GP)、エアコン作動の有無、エンジン回転数、ブレーキ作動状況などがある。
次に、ステップS2で、ロックアップクラッチの滑り率に基づいて回生リミットを算出する。図4は図2の制御で用いる滑り率と回生係数(制限係数)との関係を示すグラフ図である。この滑り率は、以下の式(1)のように定義される。
【0021】
式(1):ETR=Ns/Ne
【0022】
ここで、Nsは入力軸10の回転数であり、Neはエンジン2の回転軸9の回転数である。
図4に示すように、ロックアップクラッチ4の滑り率が100%(直結状態)のときは、回生係数の値は1に設定されている。また、滑り率の値が大きくなるほど(エンジン2の回転軸9の回転数が相対的に小さくなるほど)、回生係数の値が小さく設定されている。
そして、ステップS3で、目標回生量に回生係数を乗じて、指示回生量を算出する処理を行い、一連の処理を終了する。これにより、指示回生量がモータ3で回生される。
【0023】
このようにすると、前記要求される回生量が最大の場合にも、前記回生係数を乗じることで、前記算出されるモータ3の回生量を走行性能を維持可能な値に抑制することができる。従って、回生処理を行う場合の走行性能を十分に確保することが可能となる。さらに、前記回生係数は、前記ロックアップクラッチ4の滑り率に応じて算出されるので、ロックアップクラッチ4の滑り率に関わらず回生量を一定に制限する場合に比して、大幅な燃費向上を図ることが可能となる。
【0024】
図3は図1の制御装置による回生量の他の制御内容を示すフローチャートである。まず、ステップS1で、図2の場合と同様に、目標回生量を算出する。次に、ステップS4で、ロックアップクラッチ4の滑り率によって回生リミットを算出する。図5は図3の制御で用いる滑り率と回生リミットとの関係を示すグラフ図である。同図に示すように、滑り率の値が大きくなるほど、回生リミットの値が小さくなるように設定されている。
そして、ステップS5で、目標回生量にリミット処理を行って、一連の処理を終了する。
【0025】
これにより、目標回生量が回生リミットを下回る値の場合には前記モータの回生量を目標回生量に設定し、前記目標回生量が回生リミットの値を上回る値の場合には前記目標回生量を前記回生リミットの値に制限することができる。従って、走行性能を確保することができるとともに、回生量を十分に取ることができるので、燃費を向上することができる。
なお、本発明の内容は、実施の形態に限られるものではなく、例えば自動変速機はAT(有段変速機)であってもCVT(無段変速機)であってもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載した発明によれば、走行性能を十分に確保しつつ、燃費向上を図ることが可能となる。
また、請求項2に記載した発明によれば、走行性能を確保しつつ、燃費をより一層向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施の形態におけるハイブリッド車両の制御装置を示す構成図である。
【図2】 図1の制御装置による回生量の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】 図1の制御装置による回生量の他の制御内容を示すフローチャートである。
【図4】 図2の制御で用いる滑り率と回生係数との関係を示すグラフ図である。
【図5】 図3の制御で用いる滑り率と回生リミットとの関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 ハイブリッド車両の制御装置
2 エンジン
3 モータ・ジェネレータ
4 ロックアップクラッチ(L/Cクラッチ)
5 トルクコンバータ
6 変速機
7 出力軸
12 オイルポンプ
13 ECU
Claims (2)
- 駆動源であるエンジンとモータとが直列に接続され、前記エンジンと前記モータとの少なくとも一方の駆動源からの動力を、トルクコンバータを介して車輪に伝達するハイブリッド車両の制御装置において、前記トルクコンバータはロックアップクラッチを備え、該ロックアップクラッチの滑り率が大きくなるほど前記モータにより回生する回生量を制限する制限係数を小さく設定し、要求される回生量に該制限係数を乗じて前記モータの回生量を算出する算出手段を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
- 駆動源であるエンジンとモータとが直列に接続され、前記エンジンと前記モータとの少なくとも一方の駆動源からの動力を、トルクコンバータを介して車輪に伝達するハイブリッド車両の制御装置において、前記トルクコンバータはロックアップクラッチを備え、該ロックアップクラッチの滑り率が大きくなるほど前記モータにより回生する回生量の上限値を小さく設定し、要求される回生量が該上限値を超えた場合に、該上限値に前記回生量を制限する制限手段を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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