JP3949478B2 - 消化ガスの吸着貯蔵方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生物学的処理に際し発生する消化ガスをエネルギー源として有効に利用するための、消化ガスの貯蔵方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水処理場、食品工場、ビール製造工場、家畜の飼育場等で生じる有機性廃棄物を生物学的に処理すると、メタン、二酸化炭素、硫化水素等からなる消化ガスが発生する。近年、かかる消化ガスをエネルギー源として有効利用するために、例えば、生物学的処理に際し発生する消化ガスを吸着貯蔵する消化ガスの貯蔵方法等の技術が研究されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記技術では、消化ガスをそのまま吸着貯蔵した場合、または各ガス成分に分離してから吸着貯蔵した場合のいずれも、吸着効率が徐々に低下するため、消化ガスの大量処理には適さないという問題を有している。
【0004】
したがって、本発明は、消化ガスをエネルギー源として有効に利用できるよう、消化ガスを効率よく吸着貯蔵する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、消化ガスが有する水分に着目した。そして、消化ガスから硫化水素を除去した後、水分を除去し、その後吸着貯蔵すれば、吸着効率が低下することなく、消化ガスを大量に処理することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、生物学的処理に際し発生する消化ガスから硫化水素を除去し、硫化水素が除去された消化ガスを加圧した後、水分を除去し、次いで外気温以下で水分を吸着槽外に除去しながら吸着貯蔵することを特徴とする消化ガスの吸着貯蔵方法を提供するものである。
また、本発明は、上記消化ガスの吸着貯蔵方法において、硫化水素を除去した後、水分を除去する前に、二酸化炭素を除去することを特徴とする消化ガスの吸着貯蔵方法を提供するものである。
また、本発明は、上記消化ガスの吸着貯蔵方法において、吸着貯蔵を行う吸着槽中で吸着されていない消化ガスの一部を、水分除去を行う脱湿機に還流して水分を除去しながら吸着貯蔵を行うことを特徴とする消化ガスの吸着貯蔵方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
通常の燃料用ガスからメタンやエタンを吸着貯蔵する技術は知られていたが、かかる技術を消化ガスにそのまま応用しても、吸着貯蔵効率は向上しなかった。通常の燃料用ガスには水分がほとんど含まれていないため、燃料用ガスから水分を除去するという技術思想は存在しなかった。しかるところ、本発明は、消化ガスから水分を除去することによって消化ガスの吸着効率を向上させることを可能にしたものであるが、消化ガスから水分を除去することによって消化ガスの吸着効率が向上することは、当業者といえども全く想到し得ないことであった。
【0008】
本発明において、消化ガスは、下水処理場、食品工場、ビール製造工場、家畜の飼育場等で生じる廃棄物を生物学的に処理したものであれば、廃棄物の内容、生物学的処理の方法等に特に制限はない。消化ガスの組成は、一般にメタンを主成分とし、二酸化炭素、水素、窒素、硫化水素等からなる。
【0009】
本発明の消化ガスの吸着貯蔵方法は、まず消化ガスから硫化水素を除去する。脱硫化水素の手段としては、乾式脱硫法と湿式脱硫法がある。乾式脱硫法には成形脱硫剤式が多く使用されている。成形脱硫剤式は、鉄粉、粘土等でペレット状にした成形脱硫剤を脱硫塔内に充填し、消化ガスと接触させるものであり、取り出した使用済みの脱硫剤は処分する。湿式脱硫法には、水洗浄式、アルカリ洗浄式及び薬液再生式がある。このうち、水洗浄式は、下水処理の場合は下水処理水、その他の処理場の場合は井戸水、工業用水又は水道水と、消化ガスとを向流接触させるものである。脱硫時の温度及び圧力は、消化ガス発生状態そのままでもよく、特に制限はない。
【0010】
硫化水素を除去した後、消化ガスから水分を除去する。水分の除去は、消化ガスを加圧して行うことが好ましい。具体的には、脱硫時の圧力そのままで、又は消化ガスをコンプレッサー等で吸着貯蔵させようとする圧力に調整して水分を除去することが好ましい。水分除去の方法としては、例えば吸着材により水分を吸着させる方法、機械的に除湿する方法等が挙げられる。このうち、水分除去効率向上の観点から、機械的除湿方法が好ましく、冷凍雰囲気下で除湿する方法が特に好ましい。
【0011】
水分除去により、消化ガス中の水蒸気圧は、吸着させようとする圧力において露点10℃以下相当の9.2mmHg、特に0℃以下相当の4.6mmHgが好ましい。露点0℃以下とすることにより、消化ガスの吸着効率がさらに向上する。水蒸気圧は、除湿機に導入する消化ガスの流量によってコントロールすることができる。
【0012】
次いで、硫化水素と水分を除去した消化ガスを吸着貯蔵する。吸着貯蔵の方法に特に制限はないが、例えば吸着材が充填された吸着槽に消化ガスを通し、吸着させ、貯蔵する方法等が挙げられる。吸着材としては、例えば活性炭、人工ゼオライト、天然ゼオライト、シリカゲル、有機金属錯体(フマル酸銅、テレフタル酸銅等)が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。吸着材として活性炭等を用いる場合、通常ガス処理に用いられる比表面積1000m2/g程度、細孔径20Å以下、細孔容積0.2〜1.0ml/gが好ましい。吸着時の温度、圧力に特に制限はないが、温度は好ましくは外気温以下がよい。圧力は常圧以上、特に常圧〜2Mpaが好ましい。かかる消化ガスを吸着する一連の工程を図1に示す。
【0013】
活性炭等は、雰囲気の相対湿度が40%を超えると、急速に水分を吸収し、これが消化ガスの吸着の妨げとなる。また、任意圧力下で水分を含む消化ガスを吸着した吸着材は、大気圧開放又は減圧されて吸着物質の大部分を脱離した後も、水分をほとんど脱離しないため、その後の吸着操作の際は水分が吸着されず、吸着材の周囲に取り残され、結露の原因となる。結露した水は、吸着材の表面を覆い、吸着性を著しく低下させる。したがって、消化ガスの吸着は、水分を除去しながら行うことが好ましい。水分を除去する方法としては、吸着貯蔵を行う吸着槽中で吸着されていない消化ガスの一部を、コンプレッサー等を用いて水分除去を行う脱湿機に還流し、脱湿機で水分を除去する方法が特に好ましい。水分を除去された消化ガスは、再び吸着槽に送られ吸着される。このときの水分除去は、上記と同様に、冷凍除湿により行うことが特に好ましい。消化ガスの一部を還流して脱湿する工程を含む、消化ガスを吸着する一連の工程を図2に示す。
【0014】
吸着された消化ガスは、例えば消化ガスを発生させる消化槽の加温に用いられる。しかしこの場合、気候や消化処理される廃棄物の性質によっては、消化槽の加温に消化ガスの全発生量を必要とせず、消化ガスが余剰となるという問題がある。また、吸着された消化ガスは、パイプラインによって燃料消費地へ移送される場合がある。しかし、消化ガス発生場所からのパイプライン移送が経済的に採算がとれない場合もある。したがって、消化ガスを吸着する消化槽は、可搬式、すなわち吸着槽のガス配管や架台がシステムから着脱可能であり、吸着槽が燃料需要地の所在にかかわらず効率的に輸送できるものであることが好ましい。可搬式吸着槽は、トラック等の輸送車両によって搬送可能であれば、形状に特に制限はない。
【0015】
また、目的量の消化ガスを吸着貯蔵するために、吸着槽は、小容量のものを複数使用するか、目的量を満たす容量のものを1つ使用するか、いずれでもよい。前者の場合、吸着槽を規格品にすることによりコストダウンが可能となり、また小型であるため可搬式にしやすく、利用者によるメンテナンスの負担が軽い等の利点がある。後者の場合、設置面積が少なくてすむという利点がある。
【0016】
本発明においては、消化ガスの熱エネルギーとしての効率利用を図る観点から、吸着前に消化ガスから二酸化炭素を除去しておくことが好ましい。脱二酸化炭素は、脱硫化水素の後、水分除去の前に行うことが好ましい。
【0017】
脱二酸化炭素の手段としては、例えば活性炭、ゼオライト、金属酸化物等の二酸化炭素吸着材が充填された吸着塔に通す方法;気体分離膜を用いて真空で脱気する方法;多孔質中空糸膜を用いて分離する方法等が挙げられる。このうち、二酸化炭素を選択的に除去でき、かつコンパクトで経済的であることから、多孔質中空糸膜、特に疎水性中空糸膜を用いることが好ましい。
【0018】
疎水性中空糸膜を用いて、消化ガスから二酸化炭素を除去する原理について説明する。水中に、疎水性中空糸を2本(ガス供給用及び回収用)置く。中空糸は疎水性であるため、水はその中に入ってこない。供給用の中空糸に高濃度の消化ガス(硫化水素を除去した後のもの)を流し、回収用の中空糸内はガス濃度を低濃度に保っておく。二酸化炭素は、他のガス成分と比べて水に対する溶解性が高い。このため、二酸化炭素は、他のガス成分よりも大量に、中空糸膜の微小孔を通って水中に拡散、溶解する。そして、回収用中空糸膜に達した二酸化炭素は、逆の過程を経て回収される。中空糸膜は、多くの市販品(例えば、NOK(株)製脱気膜モジュール)があり、それらのいずれを用いてもよい。
【0019】
本発明において、疎水性中空糸膜を用いて、硫化水素を除去した消化ガスから二酸化炭素を除去するための好ましい態様を以下に示す。図4は、該態様を実施するための概略説明図である。吸収部2及び放散部3はポンプ4を介して水が循環している。硫化水素を除去した消化ガスを、吸収部2内の中空糸膜(図示しない)に送る。二酸化炭素は、吸収部2内の水中に大量に溶け込み、二酸化炭素含量の少なくなった消化ガスが排気される。水中に溶け込んだ二酸化炭素は、ポンプ4を介して放散部3に送られる。放散部3に送られた二酸化炭素は、放散部3内の中空糸膜(図示しない)に回収されて排気される。消化ガスの一部を還流して脱湿する工程及び二酸化炭素を除去する工程を含む、消化ガスを吸着する一連の工程を図3に示す。
【0020】
本発明においては、硫化水素を除去した後、二酸化炭素及び水分を除去する前に、消化ガスに含まれるメタンガスを水素に改質することもできる。改質を行うことにより、一酸化炭素と水素が効率よく製造されるため、得られた吸着貯蔵消化ガスは、燃料電池用原料として有用である。改質は、熱改質、触媒改質等の常法にしたがって行うことができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の方法は、消化ガスから水分を除去するという全く新しい消化ガスの吸着貯蔵方法であり、消化ガスを効率よく貯蔵することが可能となり、生物学的処理設備の規模に無関係に、消化ガス中の有効成分をほぼ全量利用し得ることが可能となった。水分の除去は、加圧して、冷凍除湿により行うとより効果的である。また、吸着中にも水分除去を行うこと、特に吸着槽中で吸着されていない消化ガスを脱湿機に還流して水分除去を行うと、さらに効果的である。また、水分除去の前に、消化ガス中の二酸化炭素を、特に中空糸膜を用いて除去すれば、消化ガス中の有効成分をさらに効率よく貯蔵することができる。さらに、水分等除去の前に、消化ガスに含まれるメタンガスを改質処理すると、貯蔵消化ガスは、燃料電池用原料として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 消化ガスを吸着貯蔵するための工程図である。
【図2】 消化ガスを吸着貯蔵するための工程図である。
【図3】 消化ガスを吸着貯蔵するための工程図である。
【図4】 消化ガスから二酸化炭素を除去するための、装置の一例を示した概略説明図である。
【符号の説明】
1:二酸化炭素除去装置
2:吸収部
3:放散部
4:ポンプ
Claims (3)
- 生物学的処理に際し発生する消化ガスから硫化水素を除去し、硫化水素が除去された消化ガスを加圧した後、水分を除去し、次いで外気温以下で水分を吸着槽外に除去しながら吸着貯蔵することを特徴とする消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 硫化水素を除去した後、水分を除去する前に、二酸化炭素を除去することを特徴とする請求項1に記載の消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 吸着貯蔵を行う吸着槽中で吸着されていない消化ガスの一部を、水分除去を行う脱湿機に還流して水分を除去しながら吸着貯蔵を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の消化ガスの吸着貯蔵方法。
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