JP3813437B2 - 消化ガスの吸着貯蔵方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生物学的処理に際し発生する消化ガスを効率よく吸着・貯蔵するための方法と、そのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
下水処理場、食品工場、ビール製造工場、家畜の飼育場等で生じる有機性廃棄物を生物学的に処理すると、メタン、二酸化炭素、硫化水素等からなる消化ガスが発生する。近年、かかる消化ガスをエネルギー源として有効利用するために、例えば、活性炭等の吸着剤を収容した貯蔵槽内に、消化ガスを吸着貯蔵する消化ガスの貯蔵方法等の技術が研究されている。
【0003】
吸着剤に消化ガスが吸着するときには吸着熱が発生して吸着剤の温度上昇が起こり、一方吸着剤からガスを脱着するときには熱が奪われて吸着剤の温度低下が起こる。このため、蒸気温度変化を小さくするための熱交換システムが研究され、例えば「車載用の吸着式ガス貯蔵装置であって、吸着材を収容し、ガスを吸着貯蔵するガス貯蔵槽と、前記ガス貯蔵槽の外部に設けられた熱交換手段と、前記ガス貯蔵槽と前記熱交換手段との間で前記ガス貯蔵槽に貯蔵されたガスを循環させる循環手段と、を備えたことを特徴とする吸着式ガス貯蔵装置。」(特開2000−88195号公報)が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記技術では、効率よく熱交換させるには、大量のガスを循環させる必要があり(エンジンへ送気するガスの数十倍程度)、装置が大きくなり、また経済性がよくないという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、消化ガスを、従来より効率よく吸着させる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、消化ガスが有する水蒸気に着目した。そして、消化ガスから硫化水素を除去した後、水蒸気を除去し、メタン、二酸化炭素以外のガス成分を除去し、その後吸着貯蔵すれば、吸着効率が低下することなく、消化ガスを大量に処理することができることを見出した。さらにガス吸着時に発生する吸着熱を吸着槽に蓄えて、この熱エネルギーをガス脱着時に脱着促進用として利用することによって、少ない付加設備でエネルギー利用効率を高めることができることも見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、生物学的処理に際し発生する消化ガスを圧縮し、次いで水蒸気を除去した後、吸着剤が充填され、かつガス吸着時に該吸着剤から発生する熱を保存可能な保温材が設けられた吸着槽内で、吸着槽から連続的または間欠的に一部のガスを抜き出しながら吸着させることを特徴とする消化ガスの吸着貯蔵方法を提供する。
この方法において、水蒸気を除去した後、吸着槽の上流でメタン、二酸化炭素以外の成分を活性炭によって吸着除去することが望ましい。
この方法において、圧縮する前の消化ガスから硫化水素を除去する工程を加えて良い。
この方法において、吸着槽にヒーターを設け、吸着槽のガス脱着に際して保温材の蓄熱とヒーターによる加熱とを吸着剤に付加して良い。
この方法において、水蒸気除去は、潮解方式の除湿によって行うことが好ましい。
この方法において、吸着槽から連続的または間欠的に一部のガスを抜き出してガスを圧縮する工程に供給しつつ、消化ガスを吸着させるように構成して良い。
この方法において、除湿前に、消化ガスから二酸化炭素を除去する構成として良い。
この方法において、可搬式吸着槽を用いることも可能である。
【0008】
更に本発明は、消化ガスを圧縮するガス圧縮機と;該ガス圧縮機から供給される消化ガスから水蒸気を除去する除湿装置と;消化ガスの吸着剤が充填され、かつガス吸着時に該吸着剤から発生する熱を保存可能な保温材が設けられ、該除湿装置から供給される消化ガスを吸着する吸着槽と;吸着槽から連続的または間欠的に一部のガスを抜き出してガスを圧縮する工程に供給する返送ラインと;を含む消化ガスの吸着貯蔵装置を提供する。
この装置において、除湿装置の下流側と吸着槽の上流側の間に、メタン、二酸化炭素以外の成分を活性炭によって吸着除去する有機成分除去装置を設けることが望ましい。
この装置において、消化ガスから硫化水素を除去し、そのガスをガス圧縮機に供給する脱硫装置をさらに含む構成として良い。
この装置において、吸着槽に、吸着剤と保温材の少なくとも一方を加熱するヒーターを設けた構成として良い。
この装置において、除湿装置は、吸湿性化合物にガスを接触させて除湿する潮解方式の除湿装置が好ましい。
この装置において、除湿装置の上流側に、消化ガス中の二酸化炭素を除去してメタンガス濃度を高めるメタン濃縮装置を設けた構成として良い。
この装置において、吸着槽を可搬式構造とすることも可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】
通常の燃料用ガスからメタンやエタンを吸着貯蔵する技術は知られていたが、かかる技術を消化ガスにそのまま応用しても、吸着貯蔵効率は向上しなかった。通常の燃料用ガスには水蒸気がほとんど含まれていないため、燃料用ガスから水蒸気を除去するという技術思想は存在しなかった。しかるところ、本発明は、消化ガスから水蒸気を除去することによって消化ガスの吸着効率を向上させることを可能にしたものであるが、消化ガスから水蒸気を除去することによって消化ガスの吸着効率が向上することは、当業者といえども全く想到し得ないことであった。
【0010】
本発明において、消化ガスは、下水処理場、食品工場、ビール製造工場、家畜の飼育場等で生じる廃棄物を生物学的に処理したものであれば、廃棄物の内容、生物学的処理の方法等に特に制限はない。消化ガスの組成は、一般にメタンを主成分とし、二酸化炭素、水素、窒素、硫化水素等からなる。
【0011】
図1は、本発明の消化ガスの吸着貯蔵装置の一実施形態を示すものである。この吸着貯蔵装置は、消化ガスを圧縮するガス圧縮機1と、ガス圧縮機1から供給される消化ガスから水蒸気を除去する除湿装置2と、消化ガスの吸着剤が充填され、かつガス吸着時に吸着剤から発生する熱を保存可能な保温材が設けられ、除湿装置2から供給される消化ガスを吸着する吸着槽3とを備えて構成されている。より好ましい形態において、本発明の消化ガスの吸着貯蔵装置は、除湿装置2の下流側と吸着槽3の上流側の間に、メタン、二酸化炭素以外の成分を活性炭によって吸着除去する有機成分除去装置が設けられている。ガス圧縮機1、除湿装置2及び吸着タンク3は、ライン6及び7で直列に接続されている。吸着槽3の出口側のライン8は、何れかのガス利用設備に貯蔵ガスを供給するためのものである。ライン8は、途中で分岐して延び、ガス圧縮機の入口側のライン5に接続されて返送ライン9になっている。この返送ライン9は、吸着槽1から連続的または間欠的に一部のガスを抜き出してガス圧縮機1に供給するためのものである。この吸着貯蔵装置は、既存の消化ガス生産設備に接続して消化ガスを吸着貯蔵するために好適な装置を例示している。一般に、消化ガスを利用する場合には、浸食性が著しい硫化水素を除去してから使用されるので、既存の消化ガス生産設備には通常硫化水素を除去するための脱硫装置が設けられている。従って、この種の消化ガス生産設備に接続して使用する場合、図1の吸着貯蔵装置には、予め硫化水素が除去された消化ガスを供給可能である。ライン5を経てガス圧縮機1に導入される該消化ガス中の硫化水素濃度は、0.1ppmオーダーであることが好ましい。
【0012】
図1に示すように構成された吸着貯蔵装置を用いて消化ガスの吸着貯蔵を行う、本発明の吸着貯蔵方法を次に説明する。
本発明の消化ガスの吸着貯蔵方法では、まずライン5を通して供給される消化ガスをガス圧縮機1に導入して圧縮する。ここでのガス圧縮率は特に限定されないが、好ましくは吸着槽3における消化ガスの吸着効率が向上するような圧力まで、例えば常圧〜2MPa程度にまで消化ガスを圧縮することが好ましい。ガス圧縮機1としては、例えばコンプレッサー等が挙げられる。コンプレッサーは、後工程にオイルミストが飛散しないオイルフリータイプであることが好ましい。
【0013】
ガス圧縮機1で圧縮された消化ガスは、ライン6を通して除湿装置2に供給し、水蒸気を除去する。消化ガス中の水蒸気を除去する手段としては、例えば水蒸気を選択的に吸着可能な吸着剤を用いて除湿する手段、あるいは機械的に除湿する手段等を利用することができるが、潮解方式の除湿装置の使用が特に好ましい。潮解方式の除湿装置は、水蒸気を含む消化ガスを、潮解性の塩、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、粗製塩化ナトリウムなどと接触させ、ガス中の水蒸気を選択的に除去する。この種の潮解方式の除湿装置は、電動機を含まないので、機械的除湿に比べてランニングコストが非常に安価になる利点がある。またガスに引火する危険性がなく、可燃ガスを取り扱う防爆地域でも使用することができる。さらに、粗製塩化ナトリウムのような安全な天然物吸湿剤を用いることによって、水蒸気を吸着して潮解した塩の廃棄あるいは再利用を簡単に行うことができる。
【0014】
水蒸気除去により、消化ガス中の水蒸気圧を、吸着させようとする圧力において露点10℃以下相当の9.2mmHg、特に0℃以下相当の4.6mmHgとすることが好ましい。露点0℃以下とすることにより、消化ガスの吸着効率がさらに向上する。水蒸気圧は、除湿装置2に導入する消化ガスの流量によってコントロールすることができる。除湿装置2において水蒸気を除去した消化ガスは、ライン7を通して吸着槽3に供給される。
【0015】
より好ましい形態において、除湿装置2の下流側と吸着槽3の上流側の間に、メタン、二酸化炭素以外の成分を活性炭によって吸着除去する有機成分除去装置を設け、除湿を終えた消化ガスを有機成分除去装置に導入し、ガス中に含まれたメタン、二酸化炭素以外の有機成分を活性炭で吸着除去した後に、そのガスをライン7を経て吸着槽3に供給する。消化ガス中に含まれる「メタン、二酸化炭素以外の」有機成分としては、たとえばトルエン、オクタン、トリデカンなどの有機化合物を挙げることができる。これらの成分は、消化ガスとともに吸着槽3に供給された場合、メタンより優先的に吸着剤に吸着されてしまうため、吸着剤の吸着能力を低下させることが知られている。そこで吸着槽3に供給されるガスからこれらの成分を予め除去しておくことによって、これらの成分による吸着能力の低下を防止することができる。
【0016】
この有機成分除去装置は、除湿後の消化ガスを活性炭と接触させてトルエン、オクタン、トリデカンなどのメタン以外の有機成分を吸着除去できるものであれば良く、装置の形状は問わないが、設置や取扱いの容易さから、円筒形の圧力容器を用いることが好ましい。メタン以外の有機化合物の吸着除去に使用する活性炭は、一般に市販される各種の活性炭を使用することができ、特に「有機溶媒回収用」として販売されている活性炭を用いることが好ましい。
【0017】
吸着槽3には、吸着剤が充填されている。さらに吸着槽3の内壁側と外壁側との少なくとも一方、および/または吸着槽3の槽内には、ガス吸着時に吸着剤から生じる吸着熱を蓄熱可能な保温材が設けられている。さらに、この吸着槽3には、電気ヒーターやトレースラインのようなヒーターが設けられ、吸着槽3のガス脱着に際して保温材の蓄熱とヒーターによる加熱とを吸着剤に加える構成になっている。特に、吸着槽3の内壁に電気ヒーターやトレースラインを設け、その上から保温材で覆って保温した構成が好ましい。
【0018】
吸着剤としては、例えば活性炭、人工ゼオライト、天然ゼオライト、シリカゲル、有機金属錯体(フマル酸銅、テレフタル酸銅等)が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。吸着剤として活性炭等を用いる場合、通常ガス処理に用いられる比表面積1000m2/g程度、細孔径20Å以下、細孔容積0.2〜1.0ml/gのものが好ましい。吸着時の温度、圧力に特に制限はないが、温度は好ましくは外気温以下がよい。圧力は常圧以上、特に常圧〜2MPaが好ましい。また保温材としては、従来より周知の無機質保温材、有機質保温材を用いることができ、好ましくは発泡硬質ウレタン、ガラスウールなどが用いられる。
【0019】
ライン7を通して吸着槽3に供給された消化ガスは、吸着槽3に充填された吸着剤に吸着、貯蔵される。この吸着貯蔵の際、吸着剤は発熱し、吸着槽3内の温度が上昇する。この吸着熱の発生により、吸着剤によるガス吸着効率は若干低下するが、本発明では吸着熱エネルギーの有効利用を図るため、この吸着熱エネルギーを保温材や吸着剤自身に積極的に蓄えておき、ガス脱着時の脱着促進用熱源の一部として利用する。
【0020】
消化ガスの吸着貯蔵を終えた吸着槽3から消化ガスを取り出す場合、吸着槽3内の圧力を解放する。上述した通り、このガス脱着の際には、吸着槽3に設けられた保温材や吸着剤自身に蓄えられた熱エネルギーを積極的に利用し、さらに吸着槽3に取り付けられた電気ヒーターやトレースラインから吸着貯蔵時の自然放熱で失った分の熱エネルギーを補填して消化ガスの取り出しを行う。吸着槽3から放出された消化ガスは、ライン8を通してガス利用施設に搬送される。
【0021】
吸着槽3から放出される消化ガスは、例えば消化ガスを発生させる消化槽の加温に用いられる。しかしこの場合、気候や消化処理される廃棄物の性質によっては、消化槽の加温に消化ガスの全発生量を必要とせず、消化ガスが余剰となるという問題がある。また、吸着された消化ガスは、パイプラインによって燃料消費地へ移送される場合がある。しかし、消化ガス発生場所からのパイプライン移送が経済的に採算がとれない場合もある。したがって、消化ガスを吸着する吸着槽3は、可搬式、すなわち吸着槽3のガス配管や架台がシステムから着脱可能であり、吸着槽3が燃料需要地の所在にかかわらず効率的に輸送可能とすることが好ましい。可搬式吸着槽は、トラック等の輸送車両によって搬送可能であれば、その形状は特に制限されない。
【0022】
また、目的量の消化ガスを吸着貯蔵するために、吸着槽3は、小容量のものを複数使用するか、目的量を満たす容量のものを1つ使用するか、いずれでもよい。前者の場合、吸着槽3を規格品にすることによりコストダウンが可能となり、また小型であるため可搬式にしやすく、利用者によるメンテナンスの負担が軽い等の利点がある。後者の場合、設置面積が少なくて済むという利点がある。
【0023】
吸着槽3に消化ガスを導入して消化ガスの吸着貯蔵を進めていくと、消化ガスの主成分であるメタンガスや二酸化炭素が吸着され、それ以外のガス成分、特に水蒸気が次第に濃縮され、吸着槽3内に溜まってくる。吸着槽3内に水蒸気が増えると、水蒸気が凝縮して液体となり、吸着剤表面を覆うことによって吸着剤の吸着能力が低下してしまう。その吸着効率の低下を防止するために、本発明のガス吸着貯蔵装置では、吸着槽3から連続的または間欠的に一部のガスを抜き出してガス圧縮装置1に供給する返送ライン9を設けている。吸着槽3から返送ライン9を通して、吸着槽3内の一部のガスを抜き出しながら、消化ガスの吸着貯蔵を実施することによって、吸着槽3内における水蒸気の濃縮とその凝縮が防止され、凝縮水による吸着剤の吸着効率の低下を防ぐことができる。返送ライン9を通してガス圧縮装置1に送られたガスは、ライン5を通して送られる消化ガスと混合され、圧縮後、除湿される。
【0024】
本発明においては、消化ガスの熱エネルギーとしての効率利用を図る観点から、吸着前に消化ガスから二酸化炭素を除去してメタンガスを濃縮しておくことが好ましい。メタンガス濃縮(脱二酸化炭素)は、水蒸気除去の前に行うことが好ましい。
【0025】
メタンガス濃縮の手段としては、例えば活性炭、ゼオライト、金属酸化物等の二酸化炭素吸着剤が充填された吸着塔に通す方法;気体分離膜を用いて真空で脱気する方法;多孔質中空糸膜を用いて分離する方法等が挙げられる。このうち、二酸化炭素を選択的に除去でき、かつコンパクトで経済的であることから、多孔質中空糸膜、特に疎水性中空糸膜を用いることが好ましい。
【0026】
疎水性中空糸膜を用いて、消化ガスから二酸化炭素を除去する原理について説明する。水中に、疎水性中空糸を2本(ガス供給用及び回収用)置く。中空糸は疎水性であるため、水はその中に入ってこない。供給用の中空糸に高濃度の消化ガス(硫化水素を除去した後のもの)を流し、回収用の中空糸内はガス濃度を低濃度に保っておく。二酸化炭素は、他のガス成分と比べて水に対する溶解性が高い。このため、二酸化炭素は、他のガス成分よりも大量に、中空糸膜の微小孔を通って水中に拡散、溶解する。そして、回収用中空糸膜に達した二酸化炭素は、逆の過程を経て回収される。中空糸膜は、多くの市販品(例えば、NOK(株)製脱気膜モジュール)があり、それらのいずれを用いてもよい。
【0027】
本発明において好適な、疎水性中空糸膜を用いて、消化ガスから二酸化炭素を除去してメタンガスを濃縮するためのメタン濃縮装置を以下に示す。図3は、メタンガス濃縮装置の一例を示す概略構成図である。吸収部12及び放散部13はポンプ14を介して水を循環供給している。消化ガスは、吸収部12内の中空糸膜(図示しない)に供給される。ガス中の二酸化炭素は、吸収部12内の水中に大量に溶け込み、二酸化炭素含量が減少してメタンガスが濃縮された消化ガスが排気される。水中に溶け込んだ二酸化炭素は、ポンプ14を介して放散部13に送られる。放散部13に送られた二酸化炭素は、放散部13内の中空糸膜(図示しない)に回収されて排気される。
【0028】
図2は、本発明の消化ガスの吸着貯蔵装置の別な実施形態を示すものである。この実施形態における装置は、消化ガス中の硫化水素を除去するための脱硫装置を備えていない消化ガス生産設備に接続して利用するために好適な、あるいは低濃度の硫化水素を含む消化ガスを利用する場合に好適な吸着貯蔵装置を例示している。この装置は、図1に示した装置と同じく、ガス圧縮装置1,除湿装置2および吸着槽3と、これらの各装置を直列に連結するライン5,6,7およびライン8、および返送ライン9を備え、これらの構成要素以外にライン5の途中に消化ガス中から硫化水素を除去する脱硫装置4を介在した構成になっている。
【0029】
脱硫装置4における脱硫化水素の手段としては、乾式脱硫法と湿式脱硫法がある。乾式脱硫法には成形脱硫剤式が多く使用されている。成形脱硫剤式は、鉄粉、粘土等でペレット状にした成形脱硫剤を脱硫塔内に充填し、消化ガスと接触させるものであり、取り出した使用済みの脱硫剤は処分する。湿式脱硫法には、水洗浄式、アルカリ洗浄式及び薬液再生式がある。このうち、水洗浄式は、下水処理の場合は下水処理水、その他の処理場の場合は井戸水、工業用水又は水道水と、消化ガスとを向流接触させるものである。脱硫時の温度及び圧力は、消化ガス発生状態そのままでもよく、特に制限はない。
【0030】
本発明においては、硫化水素を除去した後、二酸化炭素及び水蒸気を除去する前に、消化ガスに含まれるメタンガスを水素に改質することもできる。改質を行うことにより、一酸化炭素と水素が効率よく製造されるため、得られた吸着貯蔵消化ガスは、燃料電池用原料として有用である。改質は、熱改質、触媒改質等の常法にしたがって行うことができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、消化ガス中の水蒸気を除去してから消化ガスの吸着貯蔵を行うので、消化ガスを効率よく吸着貯蔵することができる。
また、本発明では、生物学的処理に際し発生する消化ガスを圧縮し、次いで水蒸気を除去した後、吸着剤が充填され、かつガス吸着時に該吸着剤から発生する熱を保存可能な保温材が設けられた吸着槽内で吸着させることによって、ガス吸着時に発生した吸着熱を吸着槽に蓄熱し、ガス脱着時にその熱を利用できるので、設備構造が単純化でき、運転に必要なエネルギーが少なくて済むので、イニシャルコストおよびランニングコストを大幅に低減できる。また、吸着槽にヒーターを設け、吸着槽のガス脱着に際して保温材の蓄熱とヒーターによる加熱とを吸着剤に付加することによって、この効果をより顕著なものにすることができる。
また除湿後にメタンと二酸化炭素以外の成分を活性炭によって吸着除去することによって、メタンよりも優先的に吸着剤に吸着され、消化ガスの吸着能力を低下させるトルエン、オクタン、トリデカンなどのメタン以外の有機成分が除去され、吸着槽の消化ガス吸着能力の低下が防止できる。
さらにまた、水蒸気除去を、潮解方式の除湿により行うことによって、ランニングコストを低減することができるとともに、可燃性ガスを取り扱う防爆地域での使用を可能にできる。
また、吸着槽から連続的または間欠的に一部のガスを抜き出してガスを圧縮する工程に供給しつつ、消化ガスを吸着させることによって、吸着槽内の水蒸気濃縮に起因する吸着効率の低下を防いで、良好な吸着性能を維持することができる。
また、除湿前に、消化ガスから二酸化炭素を除去することによって、メタンが濃縮された利用価値の高い消化ガスを供給することができる。
また、可搬式吸着槽を用いることによって、燃料需要地の所在にかかわらず効率的にガスを需要地に輸送可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の消化ガス吸着貯蔵装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】 本発明の消化ガス吸着貯蔵装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】 消化ガスから二酸化炭素を除去するメタンガス濃縮装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1:ガス圧縮装置
2:除湿装置
3:吸着槽
4:脱硫装置
9:返送ライン
Claims (15)
- 生物学的処理に際し発生する消化ガスを圧縮し、次いで水蒸気を除去した後、吸着剤が充填され、かつガス吸着時に該吸着剤から発生する熱を保存可能な保温材が設けられた吸着槽内で、吸着槽から連続的または間欠的に一部のガスを抜き出しながら吸着させることを特徴とする消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 水蒸気を除去した後、吸着槽の上流でメタン、二酸化炭素以外の成分を活性炭によって吸着除去することを特徴とする請求項1に記載の消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 圧縮する前の消化ガスから硫化水素を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 吸着槽にヒーターを設け、吸着槽のガス脱着に際して保温材の蓄熱とヒーターによる加熱とを吸着剤に加えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 水蒸気除去を、潮解方式の除湿により行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 吸着槽から連続的または間欠的に一部のガスを抜き出してガスを圧縮する工程に供給しつつ、消化ガスを吸着させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 除湿前に、消化ガスから二酸化炭素を除去することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 可搬式吸着槽を用いることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の消化ガスの吸着貯蔵方法。
- 消化ガスを圧縮するガス圧縮機と、
該ガス圧縮機から供給される消化ガスから水蒸気を除去する除湿装置と、
消化ガスの吸着剤が充填され、かつガス吸着時に該吸着剤から発生する熱を保存可能な保温材が設けられ、該除湿装置から供給される消化ガスを吸着する吸着槽と、
吸着槽から連続的または間欠的に一部のガスを抜き出してガスを圧縮する工程に供給する返送ラインとを含む消化ガスの吸着貯蔵装置。 - 除湿装置の下流側と吸着槽の上流側の間に、メタン、二酸化炭素以外の成分を活性炭によって吸着除去する有機成分除去装置を設けたことを特徴とする請求項9に記載の消化ガスの吸着貯蔵装置。
- 消化ガスから硫化水素を除去し、そのガスをガス圧縮機に供給する脱硫装置をさらに含むことを特徴とする請求項9または10に記載の消化ガスの吸着貯蔵装置。
- 吸着槽に、吸着剤と保温材の少なくとも一方を加熱するヒーターを設けたことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1項に記載の消化ガスの吸着貯蔵装置。
- 除湿装置が、吸湿性化合物にガスを接触させて除湿する潮解方式の除湿装置である請求項9ないし12のいずれか1項に記載の消化ガスの吸着貯蔵装置。
- 除湿装置の上流側に、消化ガス中の二酸化炭素を除去してメタンガス濃度を高めるメタン濃縮装置を設けたことを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1項に記載の消化ガスの吸着貯蔵装置。
- 吸着槽を可搬式構造としたことを特徴とする請求項9ないし14のいずれか1項に記載の消化ガスの吸着貯蔵装置。
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