JP3949078B2 - 農作業機のローリング制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、農用トラクタなどの農作業機に利用するローリング制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記ローリング制御装置としては、対地作業装置を駆動ローリング自在に連結した走行機体に、走行機体の左右傾斜角度を検出する傾斜センサと、走行機体の左右傾斜方向の角速度を検出する角速度センサとを備え、両センサからの検出情報基づいて、対地作業装置の左右方向での対地傾斜姿勢が設定角度に維持されるように対地作業装置を駆動ローリングさせるよう構成したものがある特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−253005号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように傾斜センサと角速度センサとを利用したローリング制御装置は、傾斜センサのみを利用した一般的なローリング制御装置に比較して、応答性および精度の高い自動ローリング制御を行うことができるのであるが、角速度センサの他軸感度の影響で、機体旋回作動時に制御精度が低下することがあった。
【0005】
つまり、角速度センサは、その検出作動軸心がローリング軸心(機体前後方向に向かう軸心)と平行となるように取り付ける必要があるが、角速度センサ自体の取り付け誤差、走行機体の前後輪の沈下量の差、タイヤのへこみ具合の差、などが存在するために、角速度センサの検出作動軸心を完全にローリング軸心と平行に取り付けることは実際上は不可能であり、また、センサケースを正確に所定の姿勢に取り付けることができたとしても、ケース内部の素子の取付け誤差や加工誤差などがあると、走行機体のヨーイング作動やピッチング作動に対しても角速度センサが出力してしまうことになる。
【0006】
このようにセンサ取付け軸心(この場合はローリング軸心)と直交する他の軸心(この場合はヨーイング軸心とピッチング軸心)周りの回転に感応してしまう現象、いわゆる他軸感度が顕著になると、例えば、圃場での往復作業において畦際で機体をUターン旋回させる場合や、変形圃場において走行機体を圃場形状に合わせて向き変更しながら走行するような場合のように、走行機体を急激あるいは比較的急激に旋回作動したような場合に、走行機体のヨーイング作動に対応した前記他軸感度によって不要な出力が角速度センサから出力されてしまい、制御精度が悪化してしまうことになる。また、角速度センサを用いた制御においては、温度ドリフトなどの影響を回避するために角速度センサからの出力を平均する零点演算処理を行うが、上記のように他軸感度によって不要な出力がでると、取得した零点も誤ったものとなり、機体旋回の後に不要な出力による影響が無くなって正しい零点が再び取得されるようになるまでの間は精度の低いローリング制御しか実行できなくなるものであった。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、走行機体が旋回作動した際でも誤作動のないローリング制御を行うことができるとともに、旋回作動後の自動ローリング制御を精度よく行えるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0009】
請求項1に係る発明は、走行機体に対地作業装置を駆動ローリング自在に連結し、左右傾斜角度を検出する傾斜センサ、および、左右傾斜方向の角速度を検出する角速度センサからの検出情報に基づいて、対地作業装置の左右方向での対地傾斜姿勢が設定角度に維持されるように対地作業装置を駆動ローリングさせることが可能な自動ローリング制御手段を設け、機体旋回作動中は、前記傾斜センサのみの検出値に基づく自動ローリング制御を実行し、旋回終了後には、傾斜センサおよび角速度センサの検出情報に基づく自動ローリング制御を再開するように構成してある農作業機のローリング制御装置であって、旋回終了後に自動ローリング制御系における角速度センサから出力される検出情報が記憶格納され、この記憶格納された検出情報に基づいて零点算出行うように構成してあることを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、圃場内の作業走行のほとんどが直線走行であり、この時は、傾斜センサと角速度センサの両者からの検出情報に基づいて自動ローリング制御が行われる。
【0011】
ここで、角速度センサからの信号を積分することで傾斜角度を演算するとともに、その誤差を傾斜センサからの信号で補正することができる。つまり、温度等の諸条件によって角速度センサの零点はドリフトするが、例えば、角速度センサによって検出されるサンプリング出力値の複数を記憶格納し、記憶格納された所定複数のサンプリングデータを平均処理およびローパスフィルタなどを用いて平滑化処理して零点を割り出し、この零点と実検出値との差を積分処理することで傾斜角度を演算することができる。また、このようにして算出された演算傾斜角度と傾斜センサから得られる検出傾斜角度との偏差をフィードバックすることで、積分処理による誤差の集積を消去することができる。
【0012】
また、畦際などでの方向転換のために走行機体が旋回作動された際には、他軸感度によって角速度センサから不要な出力が出ても、この旋回作動中は角速度センサからの検出情報が制御に利用されることはなく、傾斜センサのみの検出情報に基づく自動ローリング制御が行われる。
【0013】
そして、旋回作動が終了して直線走行に復帰すると、再び傾斜センサと角速度センサの両者からの検出情報に基づく自動ローリング制御が再開される。
【0014】
この場合、旋回作動中における角速度センサからは、他軸感度に起因する不要な検出情報が出力されることがあるが、旋回作動中に角速度センサから出力された不要な検出情報に基づいて誤った零点が割出されて利用されることが未然に回避される。そして、旋回作動が終了すると、傾斜センサおよび角速度センサの検出情報に基づく自動ローリング制御を再開するとともに、自動ローリング制御系における角速度センサから出力された検出情報が記憶格納され、この記憶格納された検出情報に基づいて正しい零点算出が行われる。
【0015】
従って、請求項1の発明によると、旋回作動中には角速度センサの他軸感度による悪影響を受けることのない自動ローリング制御を行うことができるとともに、旋回作動が終了した直後も、角速度センサの他軸感度による悪影響が残らない状態で応答性に優れた精度の高い自動ローリング制御を行うことが可能となる。
【0016】
〔請求項2に係る発明の構成、作用、および効果〕
【0017】
請求項2に係る発明は、走行機体に対地作業装置を駆動ローリング自在に連結し、左右傾斜角度を検出する傾斜センサ、および、左右傾斜方向の角速度を検出する角速度センサからの検出情報に基づいて、対地作業装置の左右方向での対地傾斜姿勢が設定角度に維持されるように対地作業装置を駆動ローリングさせる自動ローリング制御手段を設けてある農作業機のローリング制御装置であって、
前記角速度センサより出力された複数の検出値を記憶し、記憶された複数の検出値を平均処理及び平滑化処理して零点を演算し、機体の旋回が開始したときに自動ローリング制御系における角速度センサのための前記零点などの各種変数を記憶しておき、機体旋回作動中は、前記傾斜センサのみの検出値に基づく自動ローリング制御を実行し、旋回終了後には、自動ローリング制御系における角速度センサのための零点などの各種変数を機体の旋回が開始したときに記憶格納した値に戻して傾斜センサおよび角速度センサの検出情報に基づく自動ローリング制御を再開するように構成してあることを特徴とする。
【0018】
上記構成によると、圃場内の作業走行のほとんどが直線走行であり、この時は、傾斜センサと角速度センサの両者からの検出情報に基づいて自動ローリング制御が行われる。
【0019】
ここで、角速度センサからの信号を積分することで傾斜角度を演算するとともに、その誤差を傾斜センサからの信号で補正することができる。つまり、温度等の諸条件によって角速度センサの零点はドリフトするが、例えば、角速度センサによって検出されるサンプリング出力値の複数を記憶格納し、記憶格納された所定複数のサンプリングデータを平均処理およびローパスフィルタなどを用いて平滑化処理して零点を割り出し、この零点と実検出値との差を積分処理することで傾斜角度を演算することができる。また、このようにして算出された演算傾斜角度と傾斜センサから得られる検出傾斜角度との偏差をフィードバックすることで、積分処理による誤差の集積を消去することができる。
【0020】
また、畦際などでの方向転換のために走行機体が旋回作動された際には、他軸感度によって角速度センサから不要な出力が出ても、この旋回作動中は角速度センサからの検出情報が制御に利用されることはなく、傾斜センサのみの検出情報に基づく自動ローリング制御が行われる。また、旋回作動が開始された時点における角速度センサの零点、角速度ゲインなどの自動ローリング制御系の変数が記憶格納される。そして、旋回作動が終了して直線走行に復帰すると、再び傾斜センサと角速度センサの両者からの検出情報に基づく自動ローリング制御が再開される。
【0021】
この場合、旋回作動中における角速度センサからは他軸感度に起因する不要な検出情報が出力されることがあるが、旋回作動が終了した時点において、自動ローリング制御系における各種変数は旋回前の状態に置き換えられ、旋回作動中に角速度センサから出力された不要な検出情報に基づいて誤った零点が割出されて利用されることが未然に回避される。その後、角速度センサから出力された検出情報が記憶格納されて正しい零点算出が行われる。
【0022】
従って、請求項2の発明によると、旋回作動中には角速度センサの他軸感度による悪影響を受けることのないない自動ローリング制御を行うことができるとともに、旋回作動が終了した後も、角速度センサの他軸感度による悪影響が残らない状態で応答性に優れた精度の高い自動ローリング制御を行うことが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は農作業機の一例である農用トラクタの全体を、また、図2はその後部を示しており、走行機体としてのトラクタ本機1は、操向輪としての前輪2と主推進車輪としての後輪3とで走行する4輪駆動型に構成され、機体後部に配備されたミッションケース4に、トップリンク5aと左右一対のロアーリンク5bからなる3点リンク機構5を介して、対地作業装置の一例であるロータリ型の耕耘装置6が連結されている。ミッションケース4の上部には、単動型の油圧シリンダからなるリフトシリンダ7により上下に揺動駆動される左右一対のリフトアーム8が備えられ、これら左右のリフトアーム8と左右のロアーリンク5bとが、リフトロッド9、及び複動型の油圧シリンダからなるローリングシリンダ10を介してそれぞれ連結されている。また、詳細な構造の説明は省略するが、前記前輪2の伝動系には、前輪2が直進状態から設定角度(例えば30°)以上に大きく操向されたことが検知されると、前輪駆動速度を約2倍に増速して小回り旋回状態をもたらす油圧操作制御式の前輪変速機構14が装備されている。
【0024】
図3に示すように、リフトシリンダ7に接続された電磁制御弁11が制御装置12により操作されて、リフトシリンダ7及びリフトアーム8によりロータリ耕耘装置6が昇降駆動される。また、ローリングシリンダ10に接続された電磁制御弁13が制御装置12により操作されて、ローリングシリンダ10が伸縮作動されることで耕耘装置6がローリング駆動されて、その左右傾斜角度が変更されるようになっている。
【0025】
この農用トラクタは、耕耘装置6の耕深を設定値に維持する昇降制御、トラクタ本機1に対する耕耘装置6の高さを任意に調節するポジション制御、および、水平面に対する耕耘装置6の左右方向の傾斜角度を設定角度に維持するローリング制御が可能となっている。
【0026】
耕耘装置6の後部には、耕耘跡を鎮圧整地する後カバー15が上下揺動自在かつ下方付勢状態に備えられ、この後カバー15の上下揺動角度を検出する耕深センサ16が備えられて、その検出信号が前記制御装置12に入力されている。他方、制御装置12には、ダイヤル操作式のポテンショメータからなる耕耘設定器17と自動耕深制御を入り切りするオンオフスイッチ18が接続されており、このオンオフスイッチ18を「入り」にしておくと、耕深センサ16の検出値が耕深設定器17の設定値と均衡するように電磁制御弁11が操作されて、リフトシリンダ7により耕耘装置6が自動的に昇降駆動されることで、実耕深が耕深設定器17の設定値に対応した深さに安定維持されるようになっている。
【0027】
また、制御装置12には、リフトアーム8の上下角度を検出する角度センサ19と、ポジションレバー20によって操作されるポジション設定器21が接続されており、前記オンオフスイッチ18を「切り」にして自動耕深制御を停止した状態では、ポジション制御のみが実行され、角度センサ19の検出値がポジション設定器21の設定値と均衡するまで電磁制御弁11が操作されて、リフトシリンダ7がその位置に保持される。
【0028】
なお、オンオフスイッチ18を「入り」にしての自動耕深制御中にポジションレバー20を大きく上昇方向に操作すると、耕深設定器17の設定耕深に対応する角度センサ19の検出値と、ポジション設定器21の目標値とが比較されて、ポジション設定器21の目標値の方が高い場合、ポジション制御が優先作動するようになっている。従って、自動耕深制御による耕耘作業において、畦際における機体方向転換時には、ポジションレバー20を上限にまで操作することにより、耕耘装置6を地上に持上げることができ、また、機体方向転換後にポジションレバー20を下限まで操作することで、耕深設定器17で設定されている耕深での自動耕深制御を再開することができる。
【0029】
この農用トラクタでは、耕耘装置6の水平面に対する左右方向の傾斜角度を設定角度に維持するようにローリング駆動するローリング制御手段が備えられており、制御装置12に接続したダイヤル操作式のポテンショメータからなる傾斜設定器25を調節操作することで、ロータリ耕耘装置6の左右方向の設定角度を任意に変更することができるようになっている。
【0030】
このローリング制御には、前記傾斜設定器25の他に、トラクタ本機(走行機体)1の左右傾斜角度を検出する傾斜センサ26と、トラクタ本機1の左右傾斜方向の角速度を検出する振動ジャイロ型の角速度センサ27と、ローリングシリンダ10の作動長さを検出するストロークセンサ28とが利用される。つまり、図4のブロック図に示すように、傾斜センサ26と角速度センサ27からの情報に基づいてトラクタ本機1の左右方向での傾斜角度θが演算され、トラクタ本機1がこの傾斜角度θにある時に耕耘装置5を傾斜設定器25による設定角度にするために必要なローリングシリンダ10の目標シリンダ長さL0 が割り出され、ローリングシリンダ10の長さLをこの目標シリンダ長さL0 に近づけるようにフィードバック制御がなされて、電磁制御弁13が作動されるのである。
【0031】
図5に、傾斜センサ26と角速度センサ27からの情報に基づいてトラクタ本機1の左右傾斜角度θを演算する制御ブロック図が示されている。図から判るように、ここでは、角速度センサ27からの信号を積分することで傾斜角度を演算するとともに、その誤差を傾斜センサ26からの信号で補正する形態が採用されている。
【0032】
つまり、温度等の諸条件によってドリフトする角速度センサ27の零点を時間経過に伴って更新して補正するセンサ零点補正処理がなされる。即ち、角速度センサ27によって検出されるサンプリング出力値の複数が記憶され、記憶された所定複数のサンプリングデータが平均処理されるとともに、ローパスフィルタ(LPF)を用いて平滑化処理されて零点が割り出され、この零点と実検出値との差をゲインK1 で積分分処理することで傾斜角度θが演算されるのである。また、このようにして算出された演算傾斜角度θと傾斜センサ26から得られる検出傾斜角度θrとの偏差にゲインK2 を乗じた値をフィードバックすることで、積分処理による誤差の集積を消去している。
【0033】
また、前記角速度センサ27が機体旋回作動時に他軸感度(ヨーイング軸心回りの回動への感応)による不要な出力を出して、ローリング制御に悪影響を及ぼすのを抑制するために以下のような手段が備えられている。
【0034】
〔第1例〕
【0035】
図3に示すように、前記制御装置12には、走行機体1における前輪2の操向角を検出するポテンショメータなどの角度センサ31、後輪3の回転速度を検出する回転センサ23、および、前輪2を自動増速する前輪変速機構の作動をオン・オフする前輪増速スイッチ33とが接続されており、これら角度センサ31,回転センサ32,前輪増速スイッチ33からの情報に基づいて操向機体1の旋回作動状況が認識されるようになっている。
【0036】
そして、実際に圃場に乗り入れての作業においては、図6のフローチャートに示すような傾斜角度演算制御がなされる。
【0037】
すなわち、角度センサ31によって前輪2の操向角が検出されるとともに、回転センサ32によって走行機体1の走行速度が検出され、かつ、前輪増速スイッチ33から前輪変速機構14が作動可能な状態か否かが認識され、これらの検出結果から現在の旋回作動状況が割り出される。
【0038】
割り出された旋回作動状況が、角速度センサ27から他軸感度に基づいて出される不要な出力が無視できない値になる所定の条件を満たしていれば、角速度センサ27からの検出情報を利用した上記自動ローリング制御を休止して、傾斜センサ26からの出力をそのまま機体傾斜角度θとして自動ローリング制御が実行される。また、旋回作動状況が、角速度センサ27からの不要な出力が無視できる条件に戻れば、傾斜センサ26と角速度センサ27からの検出情報を利用した元の自動ローリング制御に復帰する。
【0039】
この場合、旋回作動が終了したことが認識された時点で、角速度センサ27の零点を定めるための傾斜センサ26の検出値と、角速度センサの零点を演算するためのパラメータとなる変数その他角速度ゲインなどの自動ローリング制御系におけるパラメータとなる変数に初期値を設定して自動ローリング制御系における各種パラメータ(変数)の初期化処理が行われ、旋回作動中に角速度センサ27から出力された不要な検出情報に基づいて誤った零点が割出されて利用されることが未然に回避される。その後、角速度センサ27からの検出情報が記憶格納されて上記のような正しい零点算出が行われることになる。
【0040】
なお、エンジン始動から設定時間内では角速度センサ27の零点演算の精度が安定しないので、この条件下においても、傾斜センサ26の出力を機体傾斜角度θとしてのローリング制御が実行され、その後は、傾斜センサ26と角速度センサ27からの検出情報を利用した自動ローリング制御が行われる。
【0041】
〔第2例〕
【0042】
図7のフローチャートに示されるように、角度センサ31によって前輪2の操向角が検出されるとともに、回転センサ32によって走行機体1の走行速度が検出され、かつ、前輪増速スイッチ33から前輪変速機構14が作動可能な状態か否かが認識され、これらの検出結果から現在の旋回作動状況が割り出される。
【0043】
割り出された旋回作動状況が、角速度センサ27から他軸感度に基づいて出される不要な出力が無視できない値になる所定の条件を満たしていれば、角速度センサ27による零点の演算処理が休止されて、傾斜センサ26からの出力に基づいて機体傾斜角度θが割出され、この機体傾斜角度θに基づいて自動ローリング制御が実行される。
【0044】
また、旋回作動状況が、角速度センサ27から他軸感度に基づいて出される不要な出力が無視できない値になる所定の条件を満たしていることが認識されて、角速度センサ27による零点の演算処理が休止された時点における角速度センサ27の零点、角速度ゲイン、などのローリング制御系における各種パラメータが記憶格納される。
【0045】
そして、旋回作動状況が、角速度センサ27からの不要な出力が無視できる条件になれば、角速度センサ27による零点の演算処理が再開されて元の自動ローリング制御に復帰する。
【0046】
この場合、旋回作動が終了したことが認識された時点で、角速度センサ27の零点、角速度ゲイン、などのローリング制御系における各種パラメータは、記憶格納された値に置き換えられ、旋回作動中に角速度センサ27から出力された不要な検出情報に基づいて誤った零点が割出されて利用されることが未然に回避される。その後、角速度センサ27からの検出情報が記憶格納されて上記のような正しい零点算出が行われることになる。
【0047】
また、この例でも、エンジン始動から設定時間内では角速度センサ27の零点演算の精度が安定しないので、この条件下においても、角速度センサ27による零点の演算処理が休止され、その後は角速度センサ27による零点の演算処理が行われての傾斜角演算がなされる。
【0048】
本発明は、以下のような形態で実施することも可能である。
【0049】
(1)走行機体1の旋回作動状況を検出する手段としては、作動軸心を縦向きにしたヨー軸角速度センサ、加速度センサなどを別途備えて、直接的に走行機体1の旋回状況を検出することもできる。
【0050】
(2)また、GPS情報、期待に備えたCCDカメラで取得した周囲の画像情報、および、これらを組合わせて旋回作動状況を検出することも可能である。
【0051】
(3)前輪操向に連動して前輪2を増速する前輪変速機構14を備えるとともに、前輪増速が行われる際に旋回内側となる後輪3に制動をかけるオートブレーキ機能を備えた形態で実施することもできる。
【0052】
(4)本発明は、対地作業装置6に傾斜センサ26と角速度センサ27を取り付けた形態のものに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 農用トラクタ全体の斜視図
【図2】 農用トラクタの後部を示す斜視図
【図3】 制御装置全体の概略構成を示すブロック図
【図4】 ローリング制御のブロック図
【図5】 傾斜角演算用の制御ブロック図
【図6】 傾斜角演算制御のフローチャート
【図7】 他の実施形態における傾斜角演算制御のフローチャート
【符号の説明】
1 走行機体
2 前輪
3 後輪
6 対地作業装置
26 傾斜センサ
27 角速度センサ
Claims (2)
- 走行機体に対地作業装置を駆動ローリング自在に連結し、左右傾斜角度を検出する傾斜センサ、および、左右傾斜方向の角速度を検出する角速度センサからの検出情報に基づいて、対地作業装置の左右方向での対地傾斜姿勢が設定角度に維持されるように対地作業装置を駆動ローリングさせることが可能な自動ローリング制御手段を設け、機体旋回作動中は、前記傾斜センサのみの検出値に基づく自動ローリング制御を実行し、旋回終了後には、傾斜センサおよび角速度センサの検出情報に基づく自動ローリング制御を再開するように構成してある農作業機のローリング制御装置であって、
旋回終了後に自動ローリング制御系における角速度センサから出力される検出情報が記憶格納され、この記憶格納された検出情報に基づいて零点算出行うように構成してあることを特徴とする農作業機のローリング制御装置。 - 走行機体に対地作業装置を駆動ローリング自在に連結し、左右傾斜角度を検出する傾斜センサ、および、左右傾斜方向の角速度を検出する角速度センサからの検出情報に基づいて、対地作業装置の左右方向での対地傾斜姿勢が設定角度に維持されるように対地作業装置を駆動ローリングさせる自動ローリング制御手段を設けてある農作業機のローリング制御装置であって、
前記角速度センサより出力された複数の検出値を記憶し、記憶された複数の検出値を平均処理及び平滑化処理して零点を演算し、機体の旋回が開始したときに自動ローリング制御系における角速度センサのための前記零点などの各種変数を記憶しておき、機体旋回作動中は、前記傾斜センサのみの検出値に基づく自動ローリング制御を実行し、旋回終了後には、自動ローリング制御系における角速度センサのための前記零点などの各種変数を機体の旋回が開始したときに記憶格納した値に戻して傾斜センサおよび角速度センサの検出情報に基づく自動ローリング制御を再開するように構成してあることを特徴とする農作業機のローリング制御装置。
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