JP3948267B2 - 画像表示媒体及び画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示媒体、及び画像表示装置に係り、特に、繰返し書換えが可能な画像表示媒体、及び該画像表示媒体に画像を形成する画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、繰返し書換えが可能な表示媒体として、Twisting Ball Display(2色塗分け粒子回転表示媒体)、電気泳動式表示媒体、磁気泳動式表示媒体、サーマルリライタブル表示媒体、メモリ性を有する液晶などが提案されている。
【0003】
これら繰返し書換え可能な表示媒体のうち、サーマルリライタブル表示媒体や、メモリ性を有する液晶などは、画像のメモリ性に優れているという特徴を有している。
【0004】
また、電気泳動および磁気泳動を利用した表示媒体は、電界あるいは磁界によって移動可能な着色粒子を白色液体中に分散させ、例えば、画像部は着色粒子を表示面に付着させて着色粒子の色を表示し、非画像部では着色粒子を表示面から除去して、白色液体による白を表示することで画像を形成するものである。なお、これら電気泳動および磁気泳動を利用した表示媒体では、着色粒子の移動は電界あるいは磁界の作用がないと起こらないため、表示のメモリ性を有する。
【0005】
また、Twisting Ball Displayは、半面を白に、残りの反面を黒に塗分けた球状粒子を電界の作用によって反転駆動させ、例えば、画像部は黒面を表示面側に、非画像部では白面を表示面側にするように電界を作用させて表示を行うものである。これによれば、電界の作用がない限り粒子は反転駆動を起こさないため、表示のメモリ性を有する。また、表示媒体の内部は、粒子周囲のキャビティにのみオイルが存在するが、ほとんど固体状態であるため、表示媒体のシート化なども比較的容易である。
【0006】
しかしながら、サーマルリライタブル表示媒体や、メモリ性を有する液晶などは、表示面を紙のように十分な白表示とすることができず、画像を表示した場合に画像部と非画像部のコントラストが小さいため、鮮明な表示を行うことが困難である。
【0007】
また、電気泳動および磁気泳動を利用した表示媒体では、白色液体による白表示性は優れるものの、着色粒子の色を表示する場合は、着色粒子同士の隙間に白色液体が入り込むため、表示濃度が低下してしまうことがある。このことによって、画像部と非画像部のコントラストが小さくなり、鮮明な表示を得ることが困難である。また、これらの表示媒体の中には白色液体が封入されているため、表示媒体を画像表示装置から取り外して紙のようにラフに取り扱った場合、白色液体が表示媒体から漏出するおそれがある。
【0008】
Twisting Ball Displayでは、白く塗分けられた半球面を表示側に完全に揃えた場合でも、球と球の隙間に入り込んだ光線は反射されず内部でロスしてしまうため、原理的に100%の白色表示はできず、また、キャビティ部における光吸収や光散乱の影響もあるため、白表示が灰色がかってしまうことがある。さらに、粒子の反転を完全に行うことが難しく、これによってもコントラストの低下を招いてしまい、結果的に鮮明な表示を得ることが困難である。さらに、粒子サイズは画素サイズよりも小さいサイズであることが要求されるため、高解像度表示のためには色が塗り分けられた微細な粒子を製造しなければならず、高度な製造技術を要するという問題もある。
【0009】
一方で、上記のような問題点を解決するための表示媒体として、粉体トナーなどの着色粒子を用いた表示媒体が幾つか提案されている。
【0010】
例えば、「Japan Hardcopy,'99論文集,p249−p252」、および「Japan Hardcopy,'99fall予稿集,p10−p13」に記載されている表示媒体は、透明な表示基板と、当該表示基板と微小間隙をもって対向する背面基板との間に、導電性の黒トナーと絶縁性の白色粒子とを封入した構成となっている。また、表示基板及び背面基板には電極が形成されており、各基板の内面は一方の極性の電荷(例えば、正孔)のみを輸送する電荷輸送材料でコートされている。ここで、各基板間に電圧を印加すると、導電性の黒トナーのみに正孔が注入され、黒トナーは正に帯電し、基板間に形成された電界に応じて白色粒子を押し分けながら基板間を移動する。このことにより、黒トナーを表示基板側に移動させると黒表示が行われ、一方、黒トナーを背面基板側に移動させると白色粒子による白表示が行われる。これにより、画像情報に応じて基板間に電圧を印加し、黒トナーを任意の基板側へ移動させることによって、白黒の画像表示を行うことができる。
【0011】
また、特願2000−165138号に記載された表示媒体では、図9(A)に示すように、透明な表示基板100と、この表示基板100と微小間隙をもって対向する背面基板102の間に、色および帯電特性が異なる2種類の粒子群(黒色粒子104と白色粒子106)を封入した構成となっており、これら2種類の粒子群は、それぞれ逆の極性に帯電し、基板間に電圧を印加すると、それぞれ別々の基板側に移動するようになっている。
【0012】
例えば、プラスに帯電した黒色粒子104とマイナスに帯電した白色粒子106を基板間に封入し、図9(B)に示すように、表示基板100の電極100Aにプラス電圧を印加すると、静電気力によって白色粒子106が表示基板100側へ移動し、黒色粒子104は背面基板102側へ移動して白表示が行われる。また、図9(C)に示すように、表示基板100の電極100Aにマイナス電圧を印加すると、黒色粒子104が表示基板100側へ移動し、白色粒子106は背面基板102側へ移動して黒表示が行われる。したがって、基板間に画像情報に応じて電圧を印加し、表示基板100に任意の一方の着色粒子を付着させることによって、画像表示を行うことができる。
【0013】
なお、上記のような着色粒子を用いた表示媒体(以下、粒子表示媒体という。)では、電界が作用しない限り基板間の着色粒子は移動しないため、表示のメモリ性を有することとなり、また、2種類の着色粒子(例えば、白色粒子と黒色粒子)による表示を原理的に100%切り替えることができるため、コントラストの高い鮮明な画像表示を行うことが可能である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したように、平行配置された表示基板及び背面基板にそれぞれ平行平板電極を形成し、各電極間に形成した平行電界によって粒子を駆動する従来の粒子表示媒体(図9(A)参照)では、図9に示すように、平板状の表示媒体を地面に対して平行に配置し、地面に対して垂直に電界を作用させて粒子を駆動する場合を想定している。すなわち、粒子表示媒体に用いられる粒子は、通常、重力の作用により常に鉛直下向きの力を受けることになるが、粒子表示媒体を地面に対して平行に配置して表示駆動する場合には、重力の作用による力と電界の作用による力の作用方向が同じであるため、印加電圧を制御することによって、静電気力を、基板間の空隙を移動する各粒子に作用する重力を打ち消すように作用させることが可能である。したがって、重力の影響による粒子溜まりや表示濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0015】
しかしながら、この粒子表示媒体を、図10(A)に示すように、縦置きして使用する場合、すなわち、地面に対して垂直に配置して使用する場合には、粒子に作用する重力の方向と電界により作用する静電気力の方向とが異なるため、表示駆動を繰返し行うに従い、粒子が重力の作用によって徐々に下方向(地面方向)に移動し(図10(B)参照)、表示媒体の上方に存在する粒子数が減少すると共に、粒子が表示媒体の下方に凝集して粒子溜まりが発生することになる。このことにより、徐々に表示濃度にムラが生じる等の表示特性の低下を招き、最終的には表示不能となることがある。
【0016】
上記の問題点を解決するものとして、特願2000−287786号に記載の表示媒体では、図11に示すように、隔壁204によって画素毎に1セルとして仕切られ、微小間隙をもって互いに対向して配置された表示基板200及び背面基板202には、それぞれセルに対応して電極200A、202Aが形成されており、表示基板200と背面基板202との間の中心線Lからそれぞれ適当な角度をもって傾斜するように形成されている。ここで、電圧印加手段210によって背面基板202の電極202Aに電圧が印加することで、接地された表示基板200の電極200Aとの間に電界が形成される。この電界は、電極200A、202Aが中心線Lに対して傾斜をもって配置されていることにより、基板間に封入された黒色粒子206及び白色粒子208に対して、鉛直方向上向きの成分を含む静電気力を作用させる。このことにより、印加電圧を適切に制御して、粒子が重力により鉛直下方向に落下することを防止できる。
【0017】
しかしながら、この粒子表示媒体では、対向する各基板の電極面が傾斜をもつように配置するための高度な製造技術が要求されるため、製造が困難となることがある。
【0018】
一方で、上記の特願2000−165138号には、一例として、図12に示すように、表示基板300と背面基板302との間を、隔壁304で分割したセル構造とし、各セルに粒子を封入して構成された粒子表示媒体が提案されている。この粒子表示媒体では、隔壁304によって粒子が基板面と平行な方向へ不要に移動してしまうことが防止でき、結果として表示濃度ムラの発生を防止することができる。また、基板間の距離を隔壁304によって均一に保つことができるので、粒子を駆動する電界強度を一定にすることができ、表示濃度の均一化を図ることができる。
【0019】
しかしながら、この粒子表示媒体において、実際に表示駆動を繰返した場合、粒子が隔壁304に付着して凝集しやすく、隔壁304に付着して凝集した粒子は表示ノイズとなって、表示品質を劣化させてしまうことがある。
【0020】
この問題点を解決するものとして、上記の特願2000−287786号には、一例として、図13に示すように、表示基板400と背面基板402との間を、隔壁404で分割したセル構造とし、各セルに粒子を封入すると共に、各セルに対応して表示基板400及び背面基板402に形成した電極400A、402Aについて、電極間の距離が電極端部よりも電極中央部の方が大きくなるように、背面基板402の電極402Aの両端部を屈曲させて構成された粒子表示媒体が提案されている。この粒子表示媒体では、背面基板402の電極402Aを屈曲して傾斜させることにより、印加電圧によって電極400A、402A間に発生する電界の向きを湾曲させることで、基板間に封入された粒子に対して、電極中央部方向の成分を含む静電気力を作用させることができる。このことにより、粒子が電極周囲に設けられた隔壁404に付着して凝集することを防止することができる。
【0021】
しかしながら、この粒子表示媒体では、電極面が傾斜をもつように配置するための高度な製造技術が要求されるため、製造が困難となることがある。
【0022】
また、上述した粒子表示媒体の他にも、各基板に電極を複数個ずつ設置し、各々の電極に印加する電圧を変化させることで、基板間に封入された粒子の挙動を制御する粒子表示媒体も提案されている(図14参照)。
【0023】
しかしながら、この表示媒体では、各電極毎に電圧の制御装置が必要となるために構成が複雑になると共に、基板に設置する電極がより微細になることで、さらに高度な製造技術が要求されるため、製造が困難となることがある。
【0024】
本発明は、上記の問題点を解決すべく成されたもので、表示媒体本体の配置状態の如何に関わらず、高品質で安定した画像表示を簡易な構成で行うことができる画像表示媒体及び当該画像表示媒体に画像を形成する画像表示装置を得ることを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、少なくとも一方が透光性を有すると共に間の空間に所定の流体が封入され又は該空間が真空に形成された一対の基板と、電界により前記基板間を移動可能に前記一対の基板間に封入され、少なくとも帯電特性の異なる複数種類の粒子群と、を有する画像表示媒体において、前記一対の基板の少なくとも一方の基板は、前記空間との間に誘電体層を有し、前記誘電体層は、前記基板を当該基板の面方向が鉛直方向と平行になるように配置した場合に、当該基板の面方向における比誘電率の大きさが、鉛直方向下側から鉛直方向上側へ段階的に小さくなるように設定されていることを特徴としている。
【0026】
請求項1に記載の発明によれば、一対の基板の少なくとも一方の基板は、空間との間に誘電体層を有し、誘電体層が、基板を当該基板の面方向が鉛直方向と平行になるように配置した場合に、当該基板の面方向における比誘電率の大きさが、鉛直方向下側から鉛直方向上側へ段階的に小さくなるように設定されている。このように前記基板上において鉛直方向上側の比誘電率が鉛直方向下側の比誘電率よりも小さくなるようにすることで、基板間に印加される電圧によって生じる電界の向きを湾曲させることができ、粒子群に対して鉛直方向上向きに作用する静電気力を発生させることができる。したがって、粒子群を表示駆動させた際に、粒子群が重力によって落下する分を補うように、基板面上の比誘電率を適当に設定することによって、粒子群の自重による落下を防止することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記誘電体層は、前記鉛直方向上側ほど比誘電率の変化を小さくなるように設定されていることを特徴としている。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば、鉛直方向上側の誘電体層の比誘電率の変化を小さく設定することで粒子が不要に上方向へ搬送されすぎず、粒子が電極面の上方向に行きすぎてセルの上部隔壁へ付着凝集することがなくなり、表示信頼性をより改善することができる。
【0031】
請求項3に記載の発明は、少なくとも一方が透光性を有すると共に間の空間に所定の流体が封入され又は該空間が真空に形成された一対の基板と、電界により前記基板間を移動可能に前記一対の基板間に封入され、少なくとも帯電特性の異なる複数種類の粒子群と、を備えた画像表示媒体と、前記画像表示媒体に電界を印加する電圧印加手段と、を有する画像表示装置において、前記一対の基板の少なくとも一方の基板は、前記空間との間に誘電体層を有し、前記誘電体層は、中央部の比誘電率が周辺部の比誘電率よりも小さくなるように設定されていることを特徴としている。
【0032】
請求項4に記載の発明によれば、一対の基板の少なくとも一方の基板は、空間との間に誘電体層を有し、誘電体層は、中央部の比誘電率が周辺部の比誘電率よりも小さいことで、電圧印加手段により基板間に形成される電界を湾曲させることができ、粒子群を比誘電率が小さい方向へ移動させることができる。基板端部近傍の粒子群に基板中央部方向へ向かう静電気力を作用させることができる。これにより、基板端部近傍の粒子群はそれ以上基板の外側へ広がらず、基板の周辺部に粒子群が付着して凝集することを防止することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記誘電体層は、中央部の比誘電率の変化量が最外部より小さくなるように設定されていることを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、中央部では、前記誘電体層は、中央部の比誘電率の変化量が最外部より小さくなるように設定して、粒子に作用する画素中央方向への作用力を小さくしたため画素中央部へ粒子が偏ることがない。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る画像表示装置10の概略構成が示されている。この画像表示装置10は、粒子表示媒体12と印加電圧制御部14とを含んで構成されている。
【0035】
粒子表示媒体12は、画像が表示される側の透明な表示基板16と、当該表示基板16と対向する背面基板18が、隔壁20によって微小間隙をもって配置され、その間に着色粒子(黒色粒子)22及び白色粒子24が封入された構成となっている。表示基板16及び背面基板18には、それぞれ画素に対応した電極16A、18Aが形成されており、特に、表示基板16の各電極16Aは、透明な電極材料で形成されている。なお、表示基板16の各電極16Aは、接地されている。
【0036】
また、印加電圧制御部14は、背面基板18の各電極18Aに接続されており、図示しない画像表示指示部から伝達される画像信号に応じて、各電極18Aに所望の電圧を印加することができるようになっている。これにより、接地された表示基板16の電極16Aとの間に所望の電界を形成することができ、この電界によって黒色粒子22及び白色粒子24の各粒子が駆動され、表示基板16上に所望の像を形成するようになっている。
【0037】
なお、粒子表示媒体12は、地面に対して垂直に立てた状態(縦置き状態)で使用することを前提とし、隔壁20は、図2に示すように、垂直方向に並んだ画素列毎に設けられている。また、画素の寸法は1mm×1mmとされている。
【0038】
粒子表示媒体12の表示基板16及び背面基板18は、透明なアクリル系の樹脂プレート或いはガラスプレートをベースとし、このベースプレートに透明のITOを蒸着して電極16A、18Aを形成している。また、表示基板16及び背面基板18上には、所定の誘電体の層(誘電体層)30、32、34、36、38が形成されており、粒子表示媒体12を、水平に対して角度をもって設置した際に、基板上に形成された誘電体層は、重力の作用方向上側の比誘電率が、下側の誘電体層の比誘電率よりも小さくなるように形成されている。なお、ここでは、5つの誘電層が基板上に形成されており、それぞれの誘電体層の比誘電率は、誘電体層30が比誘電率3.5、誘電体層32が比誘電率3.8、誘電体層34が比誘電率5.0、誘電体層36が比誘電率7.5、誘電体層38が比誘電率12.5に設定されている。このことにより、黒色粒子22及び白色粒子24の各粒子が不要に上方向へ搬送されすぎず、各粒子が電極面の上方向に行きすぎて、セルの上部の隔壁20へ付着して凝集することを防ぐことができる。なお、各誘電体層の厚さは35μm、幅は200μmになっている。各誘電体層は比誘電率の異なった感光性樹脂の塗付、パターンの現像、非現像部の除去を順番に繰り返しを行なうことで形成することができる。感光性樹脂の比誘電率は、樹脂中にアルミナ磁器、酸化チタン磁器等を分散させて混入して調整する。誘電体層30〜38を形成した後、仕上げに表面コート層26としてポリカーボネート樹脂を塗布し表面を整えられている。
【0039】
隔壁20には、ドライフィルム型フォトレジストを使用することができ、これを背面基板18に重ねて、隔壁20を形成する部位のみ紫外線を照射して硬化させたあと、不要なレジストを除去して形成することができる。図3に、隔壁20を形成した背面基板18の模式図を示す。
【0040】
また、粒子表示媒体12に封入される粒子として、黒色粒子22には、アミノプロピルトリメトキシシラン処理したアエロジルA130の微粉末を、重量比100対0.2の割合で混合した体積平均粒径20μmのカーボン含有架橋ポリメチルメタクリレートの球状黒粒子(積水化成品工業(株)製テクポリマーMBX−20−ブラック)を用いると共に、白色粒子24には、イソプロピルトリメトキシシラン処理したチタニアの微粉末を、重量比100対0.1の割合で混合した体積平均粒径20μmの酸化チタン含有架橋ポリメチルメタクリレートの球状白粒子(積水化成品工業(株)製テクポリマーMBX−20−ホワイト)を用いている。
【0041】
また、黒色粒子22はプラスに、白色粒子24はマイナスに帯電されると共に、黒色粒子22と白色粒子24とを重量比2対1の割合で混合されている。この混合粒子を、各画素に約50μgづつ配されるように、メッシュスクリーンを通して表示基板16上に均一に振るい落とし、これに背面基板18を重ね合わせ、両基板を加圧保持して粒子表示媒体12が形成される。なお、表示基板16及び背面基板18の間隔は200μmとされている。
【0042】
ここで、比誘電率の異なる誘電体層により電界が湾曲する様子について説明する。図4(A)に示すように、表示基板30及び背面基板32の各基板上の位置によって比誘電率の異なる誘電体層34、36(なお、誘電体層34の比誘電率は、誘電体層36の比誘電率よりも小さいものとする。)を設けた場合、電極30A、32A間に電圧を印加した際に形成される電界Eの向きは、比誘電率の小さい誘電体層34の方に湾曲することになる。この電界Eにより、粒子には対向する基板面方向への静電気力F1と、F1とは垂直方向(基板面と平行な方向)で比誘電率の小さい誘電体層34の方に向かう静電気力F2とが作用することになる。すなわち、粒子は、印加された電界による静電気力F1によって基板間を移動する際に、静電気力F2によって基板面と平行な方向かつ比誘電率の小さい誘電体層34の方向にも移動させられることになる。したがって、本発明のように基板の上に設置した誘電体の比誘電率および設置位置を任意に設定することによって、前記した静電気力F2の方向を任意に設定することができ、この静電気力F2の作用によって、粒子を基板面と平行な方向にも移動制御することが可能となる。
【0043】
また、表示媒体を縦置き状態で使用する場合、例えば、図4(B)に示すように、表示基板30及び背面基板32の各基板上に、比誘電率の異なる誘電体層40、42、44を、鉛直方向上側から比誘電率の小さい順に配置することで、鉛直方向上向きに湾曲した電界Eを基板間に形成することができる。これによって、粒子は鉛直方向上向きの静電気力F2を受け、対向する基板に向かって上向きに飛翔移動を開始する。移動を開始した粒子は、対向する基板方向への静電気力F1によって加速されながら、基板間中央までは常に鉛直方向上向きの静電気力F2を受けて鉛直方向上向きに加速し、基板間の中央を通過すると逆に鉛直方向下向きの静電気力F2を受けて鉛直方向上向きの速度を低下させ、例えば、破線矢印Aで示すような軌跡をとる。すなわち、静電気力F2の作用によって、粒子を移動前の位置に比べ、対向する基板上のより高い位置に着地させることができる。このことから、静電気力F2は、誘電体層の比誘電率の大きさを変化させることで制御することができ、これによって粒子の着地位置を制御することができる。したがって、粒子を表示駆動させた際に、粒子が重力によって落下する分を補うように、電極面上の誘電体の比誘電率を適当に設定することによって、粒子の自重による落下を防止することができる。
【0044】
次に、本第1の実施形態の作用について説明する。
【0045】
本実施の形態に係る画像表示装置10では、粒子表示媒体12の表示駆動を行うにあたり、背面基板18の電極18Aに、印加電圧制御部14によって直流電圧を印加する。
【0046】
背面基板18の電極18Aに正の直流電圧を印加すると、マイナスに帯電する白色粒子24が電界の作用によって背面基板18側へ移動する。逆に、プラスに帯電する黒色粒子22は電界の作用によって表示基板16側へ移動するため、表示基板16には黒色粒子22のみが均一に付着し、良好な黒表示が達成される。なお、厳密に言えば、逆極性に帯電した白色粒子24が微小量存在するため、表示基板16には若干の白色粒子24も付着するが、量が少ないため表示画像への影響はほとんどない。
【0047】
次いで、背面基板18の電極18Aに負の直流電圧を印加すると、表示基板16に付着していた黒色粒子22は背面基板18側に移動し、背面基板18に付着していた白色粒子24が表示基板16へ移動して、表示基板16には白色粒子24のみが均一に付着し、良好な白表示が達成される。なお、これも厳密に言えば、逆極性に帯電した黒色粒子22が表示基板16に若干存在するが、量が少ないため表示画像への影響はほとんどない。また、電極に印加する電圧は、粒子の飛翔する領域での電界強度が0.83V/μm以上になるように印加すれば、十分な画像コントラストが得ることができる。
【0048】
このようにして、粒子表示媒体12では、紙のような白表示と、濃度の高い黒表示を行うことができ、コントラストの高い鮮明な表示を行うことができる。
【0049】
以上のように、本実施の形態に係る画像表示装置によれば、水平方向に対して鉛直方向上向きの電界を作ることができるため、縦置き表示に関して基板を非平行に設置した場合と同様の効果を得ることができる。また、粒子の種類や基板間距離、印加電圧など系の構成に変化が生じた場合は誘電体層の厚さと比誘電率を変更することで対応することができる。
【0050】
また、粒子表示媒体においては、粒子の自重による落下を防止する効果があるとともに、鉛直方向上側の誘電体層の比誘電率の変化を小さく設定することで粒子が不要に上方向へ搬送されすぎず、粒子が電極面の上方向に行きすぎてセルの上部隔壁へ付着凝集することがなくなり、表示信頼性をより改善することができる。
【0051】
なお、前記した粒子表示媒体の各基板電極上の誘電体の比誘電率および幅および厚さなどは、本実施の形態において適当に設定したパラメータであり、使用する粒子の粒径や比重および帯電特性や、自重による落下の程度、および印加した電界によって受ける静電気力の大きさが変わるため、使用する粒子の特性によって、誘電体の比誘電率および幅および厚さなどは適宜設定する必要がある。
【0052】
また、表面基板側には誘電体層を設けず、背面基板側のみに誘電体層を構成したものについても適当な構成を選ぶことによって同様の効果を得ることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0053】
図5には、本発明の第2の実施の形態に係る画像表示装置10Aの概略構成が示されている。なお、この画像表示装置10Aにおいて、上述した第1の実施形態に係る画像表示装置10と同一構成部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
本実施の形態に係る粒子表示媒体12Aは、表示基板16及び背面基板18の電極面16A、18A上に誘電体層50、52、54を設置し、電極端部に設置した誘電体層50の比誘電率が、電極中央部に設置した誘電体層54の比誘電率よりも大きくなるように構成されている。
【0055】
ここで、比誘電率の異なる誘電体層により電界が湾曲する様子について説明する。図6に示すように、表示基板60及び背面基板62の各基板上の位置によって比誘電率の異なる誘電体層64、66を設けた場合、電極端部に設置した誘電体64の比誘電率に対して電極中央部に設置した誘電体66の比誘電率を小さくすることによって、電極端部近傍の粒子に対して、電極中央部方向へ向かう静電気力F2を作用させることができる。これにより、電極端部近傍の粒子はそれ以上電極の外側へ広がらず、電極の周囲に設けられた隔壁68に粒子が付着して凝集することを防止することができる。
【0056】
粒子表示媒体10Aの表示基板16及び背面基板18は、透明なアクリル系の樹脂プレート或いはガラスプレートをベースとし、このベースプレートに透明のITOを蒸着して電極パターン16A、18Aを形成している。表示基板16及び背面基板18上には、誘電体層50、52、54が形成されており、電極端部での誘電体層の比誘電率が、電極中央部の誘電体の比誘電率よりも大きくなるように設置されている。また、誘電体層の厚さは35μmになっており、各誘電体層は、上述した第1の実施の形態と同様に、感光性樹脂などによって形成され、比誘電率の違いは樹脂中にアルミナ磁器、酸化チタン磁器等を分散させて混入させることによって調整を行うことができる。なお、各誘電体層の比誘電率は、誘電体層50が比誘電率15.0、誘電体層52が比誘電率4.2、誘電体層54が比誘電率3.5に設定されている。また、各々の誘電体層の幅は誘電体層50が50μm、誘電体層52が100μm、誘電体層54が700μmになっている。
【0057】
隔壁20には、ドライフィルム型フォトレジストを使用することができ、これを背面基板18に重ねて、隔壁20を形成する部位のみ紫外線を照射して硬化させたあと、不要なレジストを除去して形成することができる。図7に、隔壁20を形成した背面基板18の模式図を示す。
【0058】
なお、粒子表示媒体12Aでは、1画素の寸法が1mm×1mm、各画素の間隙は0.2mmとし、各画素の間隙に幅0.2mm、高さ0.2mmの隔壁20が配され、画素単位のセル構成とされている。
【0059】
また、粒子表示媒体12Aに封入される粒子として、アミノプロピルトリメトキシシラン処理したアエロジルA130の微粉末を、重量比100対0.2の割合で混合した体積平均粒径20μmのカーボン含有架橋ポリメチルメタクリレートの球状黒粒子(積水化成品工業(株)製テクポリマーMBX−20−ブラック)と、イソプロピルトリメトキシシラン処理したチタニアの微粉末を、重量比100対0.1の割合で混合した体積平均粒径20μmの酸化チタン含有架橋ポリメチルメタクリレートの球状白粒子(積水化成品工業(株)製テクポリマーMBX−20−ホワイト)とを用いている。
【0060】
また、黒色粒子22はプラスに、白色粒子24はマイナスに帯電されると共に、黒色粒子22と白色粒子24とを重量比2対1の割合で混合されている。この混合粒子を、各画素に約1.2mgづつ配されるように、メッシュスクリーンを通して表示基板16上に均一に振るい落とし、これに背面基板18を重ね合わせ、両基板を加圧保持して粒子表示媒体12Aが形成される。なお、表示基板16及び背面基板18の間隔は200μmとされている。
【0061】
本第2の実施の形態の作用については、上述の第1の実施の形態の作用と同様であり、本第2の実施の形態に係る画像表示装置によれば、隔壁20に付着して凝集する粒子はほとんどなく、良好な繰返し表示を行うことができる。
【0062】
また、画素端部での比誘電率の変化を大きくしたため画素端部近傍の粒子に画素中央方向への力をより大きく作用させることができ、効果的に粒子の隔壁20への付着凝集を防止することができる。また、画素の中央部では、比誘電率の変化量を最外部より小さくし、粒子に作用する画素中央方向への作用力を小さくしたため画素中央部へ粒子が偏ることもない。したがって、粒子の基板面と平行な方向の移動をより細かく制御することが可能であり、画素内での濃度ムラが少ない良好な繰り返し表示を行うことができる。
【0063】
なお、表面基板16側には誘電体層を設けず、背面基板18側のみに誘電体層を構成したものについても適当な構成を選ぶことによって同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、表示基板16と背面基板18との間隙を確保する隔壁20を各画素毎、あるいは各画素列毎に設けたが、必ずしもその必要はなく、例えば、図8(A)や図8(B)に示すように、隔壁20を複数の画素毎に形成してもよく、複数の画素列毎に形成してもよい。
【0065】
以上のように、上述した各実施の形態によれば、粒子表示媒体を縦置き状態で使用する場合には、粒子が重力によって落下する分を補うように、粒子に上向きの静電気力を作用させることによって、粒子を表示駆動させた際に粒子の自重による落下を防止することができる。
【0066】
また、セルを形成した粒子表示媒体においては、電極端部近傍の粒子に電極中央部方向へ向かう静電気力を作用させることによって、電極の周囲に設けられた隔壁に粒子が付着して凝集することを防止することができ、品質の高い表示を安定して実現することができる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、一対の基板の少なくとも一方の基板がその面方向に異なる比誘電率を有することによって基板間に形成される電界の向きを湾曲させることにより、粒子群に基板面と平行な方向にも静電気力を作用させることで、表示駆動と同時に粒子群の基板面と平行な方向への移動制御を行うことができ、粒子群が特定の一部分に偏ることを防ぐことができるようにしたので、表示媒体本体の配置状態の如何に関わらず、高品質で安定した画像表示を簡易な構成で行うことができる画像表示媒体及び当該画像表示媒体に画像を形成する画像表示装置を得ることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態に係る粒子表示媒体における隔壁を示す図である。
【図3】 本発明の第1の実施の形態に係る粒子表示媒体における背面基板を示す図である。
【図4】 (A)は本発明の第1の実施の形態に係る粒子表示媒体において、比誘電率の異なる誘電体層により電界が湾曲する様子を説明するための図であり、(B)は本発明の第1の実施の形態に係る粒子表示媒体を縦置き状態で使用した場合において、粒子の移動する様子を説明するための図である。
【図5】 本発明の第2の実施の形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
【図6】 本発明の第2の実施の形態に係る粒子表示媒体において、比誘電率の異なる誘電体層により電界が湾曲する様子を説明するための図である。
【図7】 本発明の第2の実施の形態に係る粒子表示媒体における背面基板を示す図である。
【図8】 (A)及び(B)はそれぞれ、本発明の第2の実施の形態に係る粒子表示媒体における隔壁の他の例を示す図である。
【図9】 (A)は従来の粒子表示媒体の概略構成を説明するための図であり、(B)は従来の粒子表示媒体で白表示を行った状態を説明するための図であり、(C)は従来の粒子表示媒体で黒表示を行った状態を説明するための図である。
【図10】 (A)は従来の粒子表示媒体を地面に対して垂直に配置して使用した場合の説明図であり、(B)は従来の粒子表示媒体を地面に対して垂直に配置して使用した場合における粒子の移動の様子を示す図である。
【図11】 縦置き状態での粒子表示媒体の表示状況を改善する先行技術の粒子表示媒体を説明するための図である。
【図12】 従来のセルを形成した粒子表示媒体の概略構成を示す図である。
【図13】 セルを形成した粒子表示媒体の表示状況を改善する先行技術の粒子表示媒体を説明するための図である。
【図14】 縦置き状態或いはセルを形成した粒子表示媒体の表示状況を改善する別の先行技術の粒子表示媒体を説明するための図である。
【符号の説明】
10 画像表示装置
12 粒子表示媒体
14 印加電圧制御部
16 表示基板
18 背面基板
16A、18A 電極
20 隔壁
22 黒色粒子
24 白色粒子
30、32、34、36、38 誘電体層
50、52、54 誘電体層
Claims (4)
- 少なくとも一方が透光性を有すると共に間の空間に所定の流体が封入され又は該空間が真空に形成された一対の基板と、電界により前記基板間を移動可能に前記一対の基板間に封入され、少なくとも帯電特性の異なる複数種類の粒子群と、を有する画像表示媒体において、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板は、前記空間との間に誘電体層を有し、
前記誘電体層は、前記基板を当該基板の面方向が鉛直方向と平行になるように配置した場合に、当該基板の面方向における比誘電率の大きさが、鉛直方向下側から鉛直方向上側へ段階的に小さくなるように設定されていることを特徴とする画像表示媒体。 - 前記誘電体層は、前記鉛直方向上側ほど比誘電率の変化を小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の画像表示媒体。
- 少なくとも一方が透光性を有すると共に間の空間に所定の流体が封入され又は該空間が真空に形成された一対の基板と、電界により前記基板間を移動可能に前記一対の基板間に封入され、少なくとも帯電特性の異なる複数種類の粒子群と、を備えた画像表示媒体と、前記画像表示媒体に電界を印加する電圧印加手段と、を有する画像表示装置において、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板は、前記空間との間に誘電体層を有し、
前記誘電体層は、中央部の比誘電率が周辺部の比誘電率よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする画像表示装置。 - 前記誘電体層は、中央部の比誘電率の変化量が最外部より小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項3記載の画像表示装置。
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