JP3947379B2 - 電気特性測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体電気インピーダンス法に基づいて、生体の電気特性を測定する電気特性測定装置に関し、特に、生体電気特性の時間変化をリアルタイムに表示することができる電気特性測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、かつて生体電気インピーダンス測定装置として、M系列符号を使用した装置を出願した(特開平10−14898号公報)。その発明では、4端子A/Dコンバートされた信号をフーリエ変換することにより、多くの周波数での生体電気インピーダンスを測定して細胞内外の水分量情報を算出している。この装置では明細書には記載していないが、信号のSN比を向上させるため、M系列信号を多数回出力させ、各信号の同期加算を行っている。
【0003】
以下、その従来技術を説明する。近年、人間や動物の身体組成を評価する目的で、生体の電気特性に関する研究が行われている。生体の電気特性は、組織又は臓器の種類によって著しく異なっており、たとえばヒトの場合、血液の電気抵抗率は150Ω・cm前後であるのに対して、骨や脂肪の電気抵抗率は1〜5kΩ・cmもある。この生体の電気特性は、生体電気インピーダンスと呼ばれ、生体の体表面に装着された複数の電極間に微小電流を流すことにより測定される。
【0004】
このようにして得られた生体電気インピーダンスから被験者の体水分分布や体脂肪率、体脂肪量を推計する方法を生体電気インピーダンス法という。(「身体組成の評価法としての生体電気インピーダンス法」,Baumgartner, R.N., etc.著、「生体電気インピーダンスとその臨床応用」,医用電子と生体工学,金井寛著,20(3)Jun 1982、「インピーダンス法による体肢の水分分布の推定とその応用」,医用電子と生体工学,波江野誠著,23(6)1985、「インピーダンス法による膀胱内尿量の長時間計測」,人間工学,口ノ町康夫等著,28(3)1992等参照)。
【0005】
生体電気インピーダンスは、生体中のイオンによって搬送される電流に対する生体の抵抗(レジスタンス)と、細胞膜、組織界面、あるいは非イオン化組織によって作り出される様々な種類の分極プロセスと関連したリアクタンスとから構成される。リアクタンスの逆数であるキャパシタンスは、電圧よりも電流に時間的遅れをもたらし、位相のずれ(フェーズシフト)を作り出すが、この値はレジスタンスに対するリアクタンスの比率の逆正接角(アークタンジェント)、すなわち、電気位相角として幾何学的に定量される。
【0006】
これら生体電気インピーダンスZ、レジスタンスR、リアクタンスX及び電気位相角φは、周波数に依存している。非常に低い周波数fLでは、細胞膜と組織界面の生体電気インピーダンスZは、電気を伝導するには高すぎる。したがって、電気は細胞外壁を通してのみ流れ、測定される生体電気インピーダンスZは純粋にレジスタンスRである。
【0007】
つぎに、周波数が増加するにつれて、電流は細胞膜を貫通するようになり、リアクタンスXが高くなって位相角φを広げることになる。生体電気インピーダンスZの大きさは、Z2=R2+X2によって定義されるベクトルの値に等しい。リアクタンスX及び位相角φが共に最大になる時の周波数を臨界周波数fCといい、伝導導体である生体の1つの電気特性値である。この臨界周波数fCを超えると、細胞膜と組織界面が容量性能力を失うようになり、これにつれてリアクタンスXが減少する。非常に高い周波数fHでは、生体電気インピーダンスZは、再び純粋にレジスタンスRと等価になる。
【0008】
図6は、人体の電気的等価回路図(等価回路モデル)である。この図において、Cmは細胞膜容量を表し、Ri及びReはそれぞれ細胞内液抵抗及び細胞外液抵抗を表している。
低い周波数fLにおいては、電流は主に細胞外スペースを流れており、インピーダンスZは細胞外液抵抗Reに等しくなる。高い周波数fHにおいては、電流は細胞膜を完全に通るようになり、細胞膜容量Cmは、実質的に短絡されているのと等価である。したがって、高い周波数fHでのインピーダンスZは、合成抵抗Ri・Re/(Ri+Re)に等しい。
【0009】
以上説明した方法により、細胞内液抵抗Riと細胞外液抵抗Reとを求めることができ、これらに基づいて、被験者の体脂肪率、脂肪重量、除脂肪重量等の体脂肪の状態や体水分分布(細胞内液量、細胞外液量及びこれらの総和たる体内水分量)を推計できる。
【0010】
図7は、従来の生体電気インピーダンス測定装置により測定されるインピーダンス軌跡Dの表示例を示す図である。このプロットは、周波数0の生体電気インピーダンスR0から周波数無限大の生体電気インピーダンスR∞までの周波数毎の生体電気インピーダンスのプロットにより形成されている。
【0011】
従来の生体電気インピーダンス測定装置では、算出した生体電気インピーダンスから最小二乗法等によるカーブフィッティングの手法を用いて、インピーダンス軌跡を求める。つぎに、得られたインピーダンス軌跡から、被験者の体の周波数0時の生体電気インピーダンスR0と、周波数無限大時の生体電気インピーダンスR∞とを算出し、算出結果から、被験者の体の細胞内液抵抗と細胞外液抵抗とを算出する。また、これらの抵抗Re,Riの変化により、体水分分布の変化を推計できる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明に関連する公知技術として特表平08−502430号公報には、人体の検査方法が記載されている。
この公知技術では、特定の周波数でのインピーダンスの時間変化をグラフとして表示するものであり、測定が全て終了した後に解析してグラフ表示するものである。
【0013】
このように、従来の生体電気インピーダンス測定装置は、測定の後に生体電気インピーダンスを解析するためのものであり、生体電気インピーダンスをリアルタイムに表示して、患者の心臓の鼓動又は呼吸の様子などを直感的に知ることを念頭においたものではない。
本発明の目的は、生体電気特性の時間変化をリアルタイムに表示することができる電気特性測定装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気特性測定装置は、測定信号を生成する信号発生手段と、生成した測定信号を被験者の体に投入した際に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記被験者の体の所定の表面部位間で発生する電位差を測定する電圧測定手段と、前記電流測定手段によって測定された電流値と前記電圧測定手段によって測定された電圧値とから生体電気特性を演算する演算手段と、前記演算手段によって演算された生体電気特性をリアルタイムに表示する表示手段と、を備える。
【0015】
また、前記表示手段は、3以上の周波数の測定信号に対する生体電気特性の軌跡を表示することで、視覚的に見やすい形態で呼吸や心拍の状態を表示することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面と対応して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態による電気特性測定装置の電気的構成を示すブロック図である。本電気特性測定装置は、キーボード1、測定処理部2、CPU(中央演算処理装置)3、表示器4、RAM5、及びROM6により構成される。
【0017】
キーボード1は、測定者が測定開始を指示するための測定開始スイッチ、被験者の身長、体重、性別及び年齢等の人体特徴項目の入力、測定間隔t等を測定目的に応じて設定/設定変更するための各種キーから構成される。キーボード1から供給される各キーの操作データは、キーコード発生回路(図示せず)でキーコード変換されてCPU3に供給される。
【0018】
測定処理部2は、被験者の体Bにプローブ電流Iaを測定信号として送出し、これにより被験者の体Bから得られる電圧電流情報をデジタル処理する。
CPU3は、装置各部を制御すると共に、測定処理部2の処理結果に基づいて人体の生体電気インピーダンス、体脂肪率、体内水分分布に関する各種物理量を算出する。本実施の形態では、測定処理部2による測定に応じて生体電気インピーダンスを算出し、インピーダンス軌跡を求める。
【0019】
表示器4は、CPU3により算出された被験者の体Bの生体電気インピーダンス、体脂肪量及び体内水分量等を表示する。本実施の形態では、CPU3からの指示に応じて、インピーダンス軌跡をリアルタイムで表示する。
RAM5は、各種データ(例えば、被験者の身長、体重、性別、細胞外液又は細胞内液量等)を一時記憶するデータ領域、及びCPU3の作業領域が設定される。ROM6は、CPU3の処理プログラムを固定的に記憶する。
【0020】
測定処理部2の詳細構成について説明する。測定処理部2は、測定信号を被験者の体Bに送出する出力処理回路と、該測定信号が被験者の体Bに流れている間に測定を行う入力処理回路とにより構成される。
出力処理回路は、PIO(パラレル・インタフェース)71、測定信号発生器72、ローパスフィルタ(LPF)73、カップリングコンデンサ74を含む。また、入力処理回路は、カップリングコンデンサ80a,80b,90、差動増幅器81、電流/電圧(I/V)変換器91、アナログのアンチエリアシングフィルタであるLPF82,92、A/D変換器83,93、及びサンプリングメモリ(リングバッファ)84,94を含む。
【0021】
はじめに、出力処理回路に関して説明する。
測定信号発生器72は、バスライン等でPIO71を介してCPU3と接続され、その出力抵抗は、発生する信号周波数の全ての領域にわたり10kΩ以上である。測定信号発生器72は、連続測定に際して、PIO71を介してCPU3からの信号発生指示を入力し、最長線形信号(M系列:Maximal Linear Codes系列)のプローブ電流Iaを所定回数繰返し生成する。生成されたプローブ電流Iaは、LPF73に入力される。
【0022】
測定信号発生器72からのプローブ電流Iaは、LPF73及びカップリングコンデンサ74により、その高周波ノイズ成分及び直流成分が除去され、測定信号として表面電極Hcに送出され、被験者の体B(図2参照)に送出される。プローブ電流の値は、例えば500〜800μAである。
【0023】
さらに、本実施の形態では、プローブ電流Ia(測定信号)の繰返し回数は、信号発生指示1回当たり1〜256回である。この繰返し回数も測定者がキーボード1を用いて任意に設定できるようにしてもよい。繰返し回数は、多いほど精度が高くなるが、微小電流とはいえ、長時間連続して人体に流した場合、人体に悪影響を及ぼす虞があるので、1〜256回が好ましい。
【0024】
ここで、M系列信号について説明する。M系列信号は、スペクトル拡散通信方式やスペクトル拡散測距システムにおいて一般的に用いられる符号信号であって、ある長さのシフトレジスタ又は遅延素子によって生成される符号系列のうち、最長のものをいう。
長さが(2n−1)ビット(nは正の整数)のM系列信号を生成する2値のM系列信号発生器は、n段のシフトレジスタと、そのn段の状態の論理的結合をシフトレジスタの入力へ帰還する論理回路(排他的論理回路)とから構成される。あるサンプル時刻(クロック時刻)におけるM系列信号発生器の出力及び各段の状態は、直前のサンプル時刻における帰還段の出力の関数である。
【0025】
このM系列信号を用いたプローブ電流Iaは、多くの周波数成分を含むにも係わらず1m秒程度にエネルギーが分散するため、生体を損傷することなく、また、脈や呼吸の周期より十分に短い時間間隔で発生するので、これらの影響を受けることもない。また、M系列信号は、周波数スペクトルの振幅が全周波数帯域にわたって略フラットであるので、SN比の周波数特性も略フラットである。
【0026】
図2は、本実施の形態による電気特性測定装置の使用状態を模式的に示す図である。ここでは、上述した出力処理回路、後述する入力処理回路の各々と被験者の体Bとの接続について簡単に説明する。
表面電極Hcは、測定時、被験者の右の手甲部Hに導電可能に吸着方式により貼り付けられ、表面電極Lcは、右の足甲部Lに吸着方式により導電可能に貼り付けられる。それゆえ、測定信号は、被験者の右手の部分から体Bに入る。
【0027】
また、表面電極Hpは、被験者の右の手甲部Hに吸着方式により、導電可能に貼り付けられ、表面電極Lpは、右の足甲部Lに吸着方式により導電可能に貼り付けられる。
このとき、表面電極Hc,Lcを、表面電極Hp,Lpよりも人体の中心から遠い部位に貼り付ける。上記各表面電極Hp,Lp,Hc,Lcは、測定用ケーブル10によって電気特性測定装置に接続されている。
【0028】
つぎに、入力処理回路について説明する。
表面電極Hpは、被験者の右の手甲部Hに吸着方式により、導電可能に貼り付けられ、一方、表面電極Lpは、右の足甲部Lに吸着方式により導電可能に貼り付けられる。
【0029】
差動増幅器81(図1参照)は、2つの表面電極Hp,Lp間の電位(電位差)を検出する。すなわち、差動増幅器81は、測定信号が被験者の体Bに送出されると、被験者の右手足間の電圧Vpを検出し、LPF82へ入力する。この電圧Vpは、表面電極Hpと表面電極Lpとの間における被験者の体Bの生体電気インピーダンスによる電圧降下である。
【0030】
LPF82は、上記電圧Vpから高周波のノイズを除去し、A/D変換器83に供給する。LPF82のカットオフ周波数は、A/D変換器83のサンプリング周波数の半分より低い。これにより、A/D変換器83によるA/D変換処理で発生する折り返し雑音が除去される。
A/D変換器83は、CPU3からデジタル変換信号Sdが供給される度に、上記ノイズが除去された電圧Vpを所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換し、デジタル化された電圧Vpをサンプリング周期毎にサンプリングメモリ84へ供給する。
【0031】
つぎに、表面電極Lc(図2参照)は、被験者の右の足甲部Lに吸着方式により貼り付けられる。表面電極Lcとカップリングコンデンサ90(図1参照)との間は、同軸ケーブル(図示せず)で接続されており、同軸ケーブルのシールド部は接地されている。
【0032】
I/V変換器91は、2つの表面電極Hc,Lc間に流れる電流を検出して電圧に変換する。すなわち、I/V変換器91は、測定信号(プローブ電流Ia)が被験者の体Bに送出されると、被験者の右手足間を流れるプローブ電流Iaを検出し、電圧Vcに変換した後、LPF92へ供給する。
LPF92は、入力された電圧Vcから高周波のノイズを除去し、A/D変換器93へ供給する。LPF92のカットオフ周波数は、A/D変換器93のサンプリング周波数の半分より低い。この場合も、A/D変換器93によるA/D変換処理で発生する折り返し雑音が除去される。
【0033】
A/D変換器93は、CPU3からデジタル変換信号Sdが供給される度に、上記ノイズが除去された電圧Vcを所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換し、デジタル化された電圧Vcをサンプリング周期毎にサンプリングメモリ94へ供給する。
CPU3は、ROM6に記憶された処理プログラムに従って、出力処理回路を制御して測定信号を被験者の体Bに継続して送出すると共に、入力処理回路を制御して測定を最初は待機状態にする。その後、所定のサンプリング周期で、検出電圧Vp,Vcを所定の回数サンプリングした後に、以下に示す生体電気インピーダンス等の各種物理量の算出を行う。
【0034】
まず、サンプリングメモリ84,94に格納された、時間の関数である電圧Vp,Vcを逐次読み出してそれぞれフーリエ変換処理により、周波数の関数である電圧Vp(f),Vc(f)(fは測定周波数)に変換した後、平均化を行い周波数毎の生体電気インピーダンスZ(f)[=Vp(f)/Vc(f)]を算出する。
つぎに、CPU3は、周波数毎の生体電気インピーダンスZ(f)のプロットを行い、更に最小二乗法等の演算手法を駆使してカーブフィッティングを行うことでインピーダンス軌跡D(図4参照)を求める。
【0035】
つぎに、本実施の形態による電気特性測定装置の動作を説明する。
まず、図2を参照して、測定に先だって、2個の表面電極Hc,Hpは被験者の右の手甲部Hに、2個の表面電極Lp,Lcを被験者の右の足甲部Lにそれぞれ吸着方式により貼り付けられる。このとき、表面電極Hc,Lcは、表面電極Hp,Lpよりも人体の中心から遠い部位に貼り付けられる。
【0036】
つぎに、測定者(又は被験者自身)により、キーボード1から被験者の身長、体重、性別及び年齢等の人体特徴項目が入力されると共に、測定間隔t等が設定される。キーボード1から入力されたデータ及び設定値は、RAM5に記憶される。
つぎに、測定者(又は被験者自身)により、キーボード1の測定開始スイッチがオンされる。CPU3は、まず所定の初期設定を行った後、測定信号発生器72に信号発生指示信号を送出する。この初期設定には、上述したインピーダンス軌跡D(図4参照)における全サンプル数、A/D変換器83,93のサンプリング周期、デジタル変換信号Sdの発生タイミングを算出する処理等が含まれる。
【0037】
これにより、測定信号発生器72は、プローブ電流Ia(測定信号)を所定回数繰り返し生成し、LPF73、カップリングコンデンサ74、2重シールド線である測定用ケーブル10を介して、被験者の手甲部Hに貼り付けられた表面電極Hc(図2参照)に送出する。これにより、500〜800μA程度の測定信号が表面電極Hcから被験者の体Bを流れる。
測定信号Iaが被験者の体Bに送出されると、測定処理部2の差動増幅器81において、表面電極Hp,Lpが貼り付けられた右手足間で生じた電圧Vpが検出され、LPF82を経て、A/D変換器83へ供給される。
【0038】
一方、I/V変換器91では、表面電極Hc,Lcが貼り付けられた右手足間を流れるプローブ電流Ia(測定信号)が検出され、電圧Vcに変換された後、LPF92を経てA/D変換器93へ供給される。このとき、CPU3からは、サンプリング周期毎にA/D変換器83,93に対してデジタル変換信号Sdが供給される。
A/D変換器83では、デジタル変換信号Sdの供給を受ける度に、電圧Vpをデジタル信号に変換し、サンプリングメモリ84へ供給する。サンプリングメモリ84は、デジタル化された電圧Vpを順次記憶する。
【0039】
一方、A/D変換器93では、デジタル変換信号Sdの供給を受ける度に、電圧Vcをデジタル信号に変換し、サンプリングメモリ94へ供給する。サンプリングメモリ94は、デジタル化された電圧Vcを順次記憶する。
CPU3は、プローブ電流Ia(測定信号)の繰返回数が、予め設定された回数に達すると、まず、サンプリングメモリ84,94に格納された、時間の関数である電圧Vp,Vcを逐次読み出す。
【0040】
つぎに、読み出された電圧Vp,Vcを各々フーリエ変換処理して周波数の関数である電圧Vp(f),Vc(f)(fは周波数)を算出する。その後、この電圧Vp(f),Vc(f)を平均化し、周波数毎の生体電気インピーダンスZ(f)[=Vp(f)/Vc(f)]を算出する。
つぎに、算出された周波数毎の上記生体電気インピーダンスZ(f)に基づいて、最小二乗法等の演算手法によりカーブフィッティングを行い、インピーダンス軌跡Dを求める。このインピーダンス軌跡Dは、表示器4に表示される。
【0041】
図3は、本実施の形態による生体電気特性測定処理のリアルタイム表示の動作を説明する図である。
本実施の形態では、上述した測定処理部2による電圧及び電流値の測定、CPU3による生体電気インピーダンス軌跡の算出、及び表示器4によるインピーダンス軌跡の表示、からなる一連の動作が連続して実行される。
【0042】
具体的には、測定処理部2は、1回目の測定後、2回目、・・・、N回目と連続して測定を行う。各測定に要する時間は例えば約3.6m秒である。CPU3は、1回目、2回目、・・・、N回目の測定結果に基づいて生体電気インピーダンス軌跡の算出を行う。1回の測定に対応する生体電気インピーダンス軌跡の算出時間は例えば約0.4m秒である。表示器4は、CPU3の処理結果に応じてインピーダンス軌跡を表示する。
【0043】
図3に示すように、各測定、算出及び表示の動作を並列処理することにより、生体電気インピーダンス軌跡を連続的に表示することができる。
図4は、本実施の形態によるインピーダンス軌跡の表示例を説明する図である。
図3に示した動作により、インピーダンス軌跡の変化から、心臓の鼓動や呼吸の様子を知ることができる。ここでは、心臓の鼓動や呼吸に応じて、インピーダンス軌跡が左方向(点線矢印)、右方向(実線矢印)にずれて動いている様子が示されている。
【0044】
図5は、本実施の形態による生体電気インピーダンスにより測定される生体電気インピーダンスR0,R∞の時間変化を説明する図である。
この図は、図4に示した周波数0時の生体電気インピーダンスR0と、周波数無限大時の生体電気インピーダンスR∞(インピーダンス軌跡Dの円弧がX軸と交わる点のX軸座標値に相当)の各時系列変化を示している。
【0045】
以上により、医療分野、特に病院の手術等の状況において、インピーダンス軌跡の時間変化から医師は患者の心臓の鼓動及び呼吸の状態を知ることができる。また、所定期間での心拍数、呼吸数等を表示することも可能である。
以上、この発明の実施の形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもよい。
【0046】
たとえば、上記実施の形態では、インピーダンス軌跡Dから、被験者の体Bの周波数0時の生体電気インピーダンスR0と、周波数無限大時の生体電気インピーダンスR∞とを算出している。本発明はこれに限定されず、たとえば、該算出結果から、被験者の体Bの細胞内液抵抗と細胞外液抵抗とを算出することもできる。また、算出された細胞内液抵抗と細胞外液抵抗、及びキーボード1から入力された被験者の身長、体重、性別及び年齢等の人体特徴データ等に基づいて、予め処理プログラムの中に組み込まれてある身体組成推定式を駆使して、被験者の体Bの体脂肪率、脂肪重量、除脂肪重量、細胞内液量、細胞外液量及びこれらの総和たる体内水分量(体液量)等の物理量を算出することもできる。
【0047】
また、上記実施の形態では、表面電極Hc及び表面電極Lcを介して被験者に送出される電流値を測定し、また、表面電極Hp及び表面電極Lpを介して所定の2ヶ所の表面部位間に生じる電圧値を測定している。他の形態として、たとえば、表面電極Hc及び表面電極Lcにより上記電流値及び電圧値を測定するように構成してもよく(いわゆる2端子法)、表面電極の数は本発明を限定するものではない。また、電極の取り付け箇所は、手や足には限定されない。
【0048】
また、算出する生体電気パラメータは、生体電気インピーダンス、インピーダンス軌跡、細胞外液抵抗及び細胞内液抵抗に限らず、生体電気アドミッタンス、アドミッタンス軌跡、上記生体電気インピーダンス又は生体電気アドミッタンスであってもよく、このようにすれば、体脂肪率等の測定だけでなく、各種医療制度(たとえば、透析の状態測定)への適用が期待できる。
また、上記実施の形態では、CPU3によるフーリエ変換処理により生体電気インピーダンスを算出している。本発明はこれに限定されず、時間領域で示される関数を周波数領域で示される関数に変換するような演算手法を用いるものであればよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、多周波での測定により、インピーダンス軌跡の時間変化(図4参照)を表示している。本発明はこれに限定されず、生体電気インピーダンスの時間変化をリアルタイム表示することで、心臓の鼓動、呼吸の様子を認識できるものであればよい。
以上により、本発明の電気特性測定装置は、測定信号供給手段(測定信号発生器72等)、電流測定手段(I/V変換器91等)、電圧測定手段(差動増幅器81等)、演算手段(CPU3)により実現される。
【0050】
測定信号供給手段は、測定信号を生成し、被験者の互いに隔たる所定の2箇所の表面部位に導電可能に付けた表面電極Hc,Lcを介して、測定信号を被験者に送出する。電流測定手段は、被験者に送出される測定信号の電流値を測定する。電圧測定手段は、被験者の互いに隔たる所定の2箇所の表面部位間に生じる電圧値を測定する。演算手段は、電流及び電圧測定手段により各々測定された電流値及び電圧値により、被験者の表面部位間の生体電気インピーダンスを算出する。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、インピーダンス軌跡の変化をリアルタイムで表示することができ、これにより患者の心臓の鼓動、呼吸の様子を直感的に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による電気特性測定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態による電気特性測定装置の使用状態を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態による生体電気特性測定処理のリアルタイム表示の動作を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態によるインピーダンス軌跡の表示例を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態による電気特性測定装置により測定される生体電気インピーダンスR0,R∞の時間変化を説明する図である。
【図6】人体の電気的等価回路図(等価回路モデル)である。
【図7】従来の生体電気インピーダンス測定装置により測定されるインピーダンス軌跡Dの表示例を示す図である。
【符号の説明】
1 キーボード
2 測定処理部
3 CPU
4 表示器
5 RAM
6 ROM
10 測定用ケーブル
71 PIO(パラレル・インタフェース)
72 測定信号発生器
73,82,92 LPF
74,80a,80b,90 カップリングコンデンサ
81 差動増幅器
83,93 A/D変換器
84,94 サンプリングメモリ
Hc,Lc,Hp,Lp 表面電極
Claims (1)
- 測定信号を生成する信号発生手段と、
生成した測定信号を被験者の体に投入した際に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記被験者の体の所定の表面部位間で発生する電位差を測定する電圧測定手段と、
前記電流測定手段によって測定された電流値と前記電圧測定手段によって測定された電圧値とから生体電気特性を演算する演算手段と、
前記演算手段によって演算された生体電気特性をリアルタイムに表示する表示手段と、
を備える電気特性測定装置であって、前記表示手段は、3以上の周波数の測定信号に対する生体電気特性の軌跡を表示することを特徴とする電気特性測定装置。
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