以下、この発明の第1の実施の形態を図1〜図33を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態によるX線CT装置の構成図である。図2は、図1のガントリの外観図である。投影データ測定系としてのガントリ(架台ともいう)1は、円錐に近似したコーンビーム状のX線束を発生するX線源3と、複数のX線検出素子を2次元状に配列してなる2次元アレイ型のX線検出器5とを収容する。前記X線源3と前記X線検出器5とは、寝台6のスライド天板に載置された被検体を挟んで対向した状態で回転リング2に装備される。前記X線検出器5としては、複数(1000チャンネル)の検出素子が、ファンビーム用の1次元的に配列された1次元アレイ型検出器を複数列(10列)積み重ねられたように配列されて構成されたもの(図51参照)で、前記回転リング2に実装される。ここで、1つの検出素子は1チャンネルに相当するものと定義する。
前記X線源3からのX線はX線フィルタ4を介して被検体に曝射される。被検体を通過したX線は前記X線検出器5で電気信号として検出される。X線制御器8は高圧発生器7にトリガ信号を供給する。この高圧発生器7はトリガ信号を受けたタイミングで前記X線源3に高電圧を印加する。これによりX線源3からはX線が曝射される。架台寝台制御器9は、前記ガントリ1の前記回転リング2の回転と、前記寝台6のスライド天板のスライドとを同期して制御する。システム全体の制御中枢としてのシステム制御器10は、被検体から見て前記X線源3が螺旋軌道を移動するいわゆる連続回転(例えばヘリカルスキャン)を実行するように、前記X線制御器8と前記架台寝台制御器9を制御する。具体的には、前記回転リング2が一定の角速度で連続回転し、前記寝台6のスライド天板が一定の速度で移動し、前記X線源3から連続的又は一定角度毎に間欠的にX線が曝射される。
前記X線検出器5からの出力信号は、チャンネル毎にデータ収集部11で増幅され、ディジタル信号に変換される。このデータ収集部11から出力される投影データは、再構成処理部12に取り込まれる。この再構成処理部12は、投影データに基づいてボクセル毎にX線吸収率を反映した逆投影データを求める。コーンビームを使用した連続回転方式のX線CT装置において、有効視野(FOV、撮影領域)は、連続回転の回転中心軸を中心として円筒形状となり、再構成処理部12は、この有効視野に複数のボクセル(3次元的に配置された画素)を規定し(図52参照)、X線検出器5からの投影データから各ボクセルの逆投影データを求める。この逆投影データに基づいて作成された3次元画像データ又は断層像データは表示装置14に送られ3次元画像又は断層像としてビジュアルに表示される。
図3(a)及び図3(b)に示すように、このX線CT装置のジオメトリは、検出器列数 M=20、各列のZ軸方向の高さ Dseg =2mm、X線検出器の厚み M×Dseg =40mm、チャンネル数 N=1000、焦点−回転中心間距離 FCD(Focus-center-Distance)=600mm、焦点−検出器間距離 FDD(Focus-Detector-Distance)=1200mm、有効視野直径 FOV(Field of View)=500mm、有効視野角(ファン角)θ=50°となっている。
図4は、前記再構成処理部12の要部構成を示すブロック図である。21は、コンボリューション処理及び逆投影処理におけるデータ選択、重み付け、センタリング処理、逆投影などの計算及び3次元再構成処理全体を制御するこの再構成処理部12の制御部本体を構成する再構成処理制御部である。コンボリューション演算部22は、前記データ収集部11で収集された投影データをコンボリューション処理し、このコンボリューション処理により得られたコンボリューションデータは第1のデータメモリ23に記憶される。
第1の逆投影部24は、前記第1のデータメモリ23に記憶されたコンボリューションデータを予め設定されたセンタリング面に逆投影(射影)処理し、この逆投影されたセンタリングデータは第2のデータメモリ25に記憶される。
第2の逆投影部26は、前記第2のデータメモリ23-2記憶されたセンタリングデータをボクセルに逆投影(3次元逆投影)処理し、この逆投影された再構成データ(画像)は画像メモリ27に記憶される。
ここで再構成についてコーンビームによる3次元再構成について、幾つかの点について考察する。再構成ボクセル列(直線)、センタリング面(平面)、検出器列(円弧)、検出器面(円筒、但しデータメモリ上のように展開して考えるときは平面である)などの座標変換を伴う関係について説明する。まず、再構成ボクセル列、検出器面、センタリング面を考える。図5に示すように、1列のボクセル列(直線)の検出器面への投影が図6に示すような曲線になることを説明する。
再構成ボクセル列、検出器面、センタリング面をZ軸方向(上方)から観察した図を、図7(a)に示す。X線検出器5のチャンネル(検出器列)は焦点FからZ軸方向において等角度の円弧上に配列されており、図のように焦点回転(ビュー)による回転角をφ、チャンネル方向の角度をθで示す。また、この焦点位置においてセンタリング面はX軸上にあり(X軸Z軸平面に含まれている)、X軸はセンタリング面のX軸であるXcp軸に一致する。再構成ボクセル列の座標を(Xv ,Yv)…(Xv はボクセルと共に変化するが、Yvは一定)で定義する。図7(b)に示すように、線分FCの長さ(焦点−回転中心間距離)をFCD、線分FV0 の長さ(焦点−ボクセル間距離)をFCD´、あるボクセルVを考えるときに線分FVをXY平面へ射影したときの(図の点線における)長さをFCD”、焦点- 検出器間距離をFDDとする。また、焦点とボクセルを通る直線を引き、XY平面上での焦点からの距離がFCDのときのZ座標をZ0 、ボクセルVのZ座標をZv とする。さらに、展開した検出器面上での座標を図7(c)のように横軸(Xdet=θ・FDD)と縦軸(Zdet)とする。
まず、再構成ボクセル列を検出器面に投影することを考える。なお、Xcpは線分FVのセンタリング面上でのX座標を示し、次の(式5)により求められる。
そこで、△FCXcpと△FVo Xv は相似なので、次に示す関係式(式6)を使用して、
となる。この(式7)がXv →θ変換、再構成ボクセル列の検出器面への投影におけるチャンネル方向の式である。
さて、線分FXcpと線分FCDとの間の関係は次に示す(式8)であるから、(式9)を得る。
従って、再構成ボクセル列の検出器面への投影における列方向の式は、次に示す(式10)となる。
(式7)から等ピッチに並んだ再構成ボクセル列を検出器面へ投影すると非線形な配列になることがわかる。従って、図中左方例えば第1ボクセルと第2ボクセルを検出器面上に投影したときの間隔(例えば2.4チャンネル分)と、図中右方例えば第511ボクセルと第512ボクセルの間隔(例えば3.5チャンネル分)とは異なり、角度θに依存して非線形な配列になる。また、(式10)からZ座標がZv で固定された直線の再構成ボクセル列を検出器面へ投影すると角度θに依存して図6のような非線形な曲線になることがわかる。ただし、再構成ボクセル列のZ座標Zv とZdet とは比例関係にある。
これを示すのが図8及び図9であり、図8には、ボクセル列V、センタリング面C、検出器面Dとそれぞれの変数および端点と中心点の定義を示す。なお、図10には、ボクセル列Vとセンタリング面Cとを示す。このボクセル列Vに対してセンタリング面Cは平行に配置されている。図9(b)に示した直線であるボクセル列のセンタリング面への投影も、図9(c)に示すように直線になる。ボクセルのピッチとセンタリング面上の点のピッチは一定の比になっており、歪みは全く生じない。すなわち、逆投影すべきデータが、センタリング面上で直線かつ等ピッチであれば、当然そのボクセルへの逆投影も直線かつ等ピッチとなる。すなわち、ボクセルとセンタリング面との関係は単純な拡大縮小関係となる。
しかし、ボクセル列を検出器面に投影すると、図9(a)に示すように、チャンネル方向、列方向ともに非線形な歪みが発生する。しかし、Z座標Zv の異なる2本のボクセル列の投影が示すように、検出器面上の2本のボクセル列の投影像どうしの間には、上述の拡大縮小関係的な比例関係が成立している。
以上の考察をふまえて、最も単純なコーンビームの再構成法は、以下に説明するステップである。
1.X線検出器からの投影データをX線強度補正等の補正処理後、Feldkamp重みづけ処理し、データメモリに記憶させる。
2.データメモリに記憶された補正投影データを再構成関数とコンボリューション処理し、データメモリに記憶させる。
3.(式7)および(式10)に従って逆投影するボクセル列を検出器面に投影した投影曲線を計算し、逆投影するデータを選択してそのアドレスを発生させる。
4.該当するデータを読み出し、所定の重みづけ処理後、画像メモリ該当するボクセルの位置に加算する。
これを“直接逆投影法”と称する。3の処理は、予め投影曲線を計算しておきテーブルとしてデータメモリ等に記憶しておいても良い。これを“テーブル法”と称する。いずれの方法でも投影曲線は近似曲線でも良い。
また、図9における考察とは逆に、検出器面上(あるいはデータメモリ上)のピッチおよび直線がセンタリング面に投影される場合を検討する。前述の(式5)と、(式10の変形)を(式8)により解いた(式11)を次に示す。
また、センタリング面上の直線が検出器面上に投影される場合は、次の(式7の変形)及び(式11の変形)となる。
従って、(式7)及び(式10)に従った非線形歪みの代わりに、(式5)及び(式11)に従った非線形歪みが発生する。
これを示すのが図11である。図11(b)に直線で示された検出器列の全チャンネルのデータをセンタリング面に投影すると、図11(c)に示すように、上述の非線形(式4及び式8)によってXcp、Zcp方向共に歪む。Z方向の歪み及びX方向の等ピッチの配列の歪みは、共に図9の場合とは逆になる。前述のようにセンタリング面と再構成ボクセル列との間に歪みはないが、図11(a)に示すように、検出器列の全チャンネルのデータをボクセルに投影すると同様の歪みが発生する。すなわち、図11(c)に示す前述のセンタリング面への投影のZ方向の歪み及びX方向の等ピッチの配列の歪みと図11(a)に示すボクセルへの投影のZ方向の歪み及びX方向の等ピッチの配列の歪みとは、同様のもので拡大・縮小関係になっている。
そこで、センタリング面上で補間処理などによってデータのリサンプリングを行い、直線上に等ピッチでデータが並ぶように処理する。その結果が図12(a)である。センタリング面上の座標系Xcp、Zcpと再構成ボクセルの座標系Xv 、Zv の関係は、(式5)、(式6)、(式9)、(式10)を応用して、次の(式12)及び(式13)を得る。
従って、再構成ボクセルにおいてスライス位置Z=Zcpのアキシャル断面を再構成するとき、そのアキシャル断面を図12(b)に示すような正方形に内接する円形FOVと考えると、(式12)、(式13)でZv を断面内で常に定数、ボクセル列内でYv を定数とし、ボクセル単位でXv を変化させることになる。従って、(破線で示す)正方形とその内接する円形FOVの投影は、(破線で示す)台形とそれに内接する円の変形(図示せず)になる。また、ボクセル列をセンタリング面に投影した直線は、ボクセル列の位置に対応してセンタリング面内を上下に平行移動する。そこで、逆投影するボクセル列に対応するZ座標Zcpを(式13)で求め、逆投影するボクセルに対応するX座標Xcpを(式12)で求め、対応するデータを目的のボクセルに逆投影する。これを全ボクセルに全ビュー繰り返して逆投影を行う。
式で表現すると下のようになる。なお、FdpDは焦点−検出器素子間距離であり、FcpD(X,Z)は焦点−センタリング点間距離である。
ここで、(式14)は、コンボリューション処理したデータを示す式であり、(式15)は、センタリング処理したデータを示す式であり、(式16)は、ボクセルに逆投影したデータを示す式である。
となり、この(式17)は3次元再構成式(式3)と一致する。
すなわち、この発明のセンタリング面を使用した3次元再構成法(コーンビーム再構成法)のステップを以下に説明する。
1.再構成処理制御部21は、データ収集部11からの投影データData-ProjをX線強度補正などの補正処理して生データData-Rawを得て、第1のデータメモリ23に記憶させる。
2.再構成処理制御部21はコンボリューション演算部22により、第1のデータメモリ23のデータを読み出し、Feldkamp重みづけ((式14)の第1項)処理後、再構成関数Conv-Function とコンボリューションし((式14)の第2項)、第1のデータメモリ23に記憶させる。
3.再構成処理制御部21は第1の逆投影部24により、第1のデータメモリ23に記憶されたコンボリューションデータに基づいて、次の(i)あるいは(ii)のいずれか一方により(式15)のセンタリング処理を行う。
(i)(式5)及び(式11)に従って、検出器面のデータをセンタリング面に投影した投影曲線を計算し、コンボリューションデータに重み付けを行った後にセンタリング面に射影してセンタリングデータを計算し、更にセンタリング面上のセンタリングデータを図12(a)のように格子状にリサンプリングして、第2のデータメモリ25に記憶する。
(ii)(式7変形)及び(式11変形)に従って、センタリング面上で(i)でリサンプリングしたような格子状のデータの位置を検出器面に投影した投影点の位置を計算し、投影点周囲の4個(2列×2CH)の検出器素子のコンボリューションデータを重みづけ加算後に(式15)の3次元逆投影における重み付けを行ってセンタリング面に射影してセンタリングデータData-Center を計算し、第2のデータメモリ25に記憶する。
4.再構成処理制御部21は、(式12)及び(式13)に従って、再構成するボクセル(列)をセンタリング面に投影した投影点(直線)を計算し、逆投影するデータを例えば4個つ(2列×2CH)選択してそのアドレスを発生させる。
5.再構成処理制御部21は第2の逆投影部26により、第2のデータメモリ25から該当するセンタリングデータData-Center を読み出し、データ数が複数の場合は重みづけ加算し、2次元ファンビーム再構成におけるセンタリングデータの逆投影時と同様に、A/Bの2乗の重みづけ処理後(この正当性は(式17)にて証明済み)、画像メモリ27の該当するボクセルの位置に加算する。以上で3次元再構成ができる。なお、この3次元再構成処理の流れを図13に示す。
なお、上述した3の処理及び5の処理における検出器面上の点又はセンタリング面上の点からセンタリング面上の点又はボクセルへの逆投影(射影)データの計算では、4点Bi-Linear 補間等の線形補間やSpline補間等の非線形補間、あるいはその他の補間を使用してリサンプリングしても良いものである。さらに、補間を行わずに、例えばNearest Neighborとして、該当する投影点に最も近い点を選択して逆投影データを計算しても良い。なお、4点Bi-Linear 補間においては、1つの投影点に対して例えばj列及びj+1列とnチャンネル及びn+1チャンネルの4点Data(j,n),Data(j,n+1),Data(j+1,n),Data(j+1,n+1)が補間するデータとして計算対象となる。このとき、4点Bi-Linear 補間においては、以下の計算が行われる。
Data(j,n)×wch+Data(j,n+1)×(1−wch)…CH(j)Data(j+1,n)×wch+Data(j+1,n+1)×(1−wch)…CH(j+1)CH(j)×wro+CH(j+1)×(1−wro)…SEG(j,j+1)以上の処理を複数の投影点について順番に繰り返して処理することになる。すなわちCH(j)を計算し、次にCH(j+1)を計算し、それらの計算結果によりSEG(j,j+1)を計算する。そして次の投影点について、CH(j)を計算し、次にCH(j+1)を計算し、それらの計算結果によりSEG(j,j+1)を計算する。以下同様にして各投影点について、繰り返して補間処理が行われる。この繰り返し補間処理は時間がかかる。そこで、CH(j)とCH(j+1)とをそれぞれ並列処理し、この並列処理を連結するようにSEG(j,j+1)をパイプライン処理することにより、処理時間を短縮して、2点補間とほぼ同じ処理時間で補間処理を行うことができる。
また、センタリング列数がボクセル列数以上の場合、Nearest Neighborとして該当する投影点に最も近い点を選択して逆投影データを計算することにより、画像劣化が少なく、計算回数が4点Bi-Linear 補間に比べて約1/3になり処理時間が短縮されるという効果が得られる。
ここでは省略したが、シングルスライスCT(ファンビームCT)と同様にチャンネル方向の非線形と逆投影時の重み発生の簡便化だけを図る目的で、3の処理でのセンタリング面上でのリサンプリング処理を省略し、4の処理で逆投影するボクセルに対応するセンタリングデータに該当するような投影曲線を発生させても良い。リサンプリング処理を省略する代償として逆投影時の投影曲線が複雑になるが、トータルの補間回数が減るというメリットがある。
なお、この実施の形態及び以降の実施の形態においては、円筒型X線検出器を持つコーンビームX線CT装置について記述したが、この発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図14に示すような平面型X線検出器を持つコーンビームX線CT装置でも同様の効果が得られるものである。すなわち、図15に示すように、有効視野FOV中の直線矢印及び破線矢印で示されたボクセル列について、平面型X線検出器面への投影では、図16に示すように、傾いた直線矢印及び破線矢印になるのが、チャンネル方向(横方向)の歪み(非線形な歪みを含めて)は発生しない。さらに、列方向(縦方向)についても歪みは発生しないが、その投影線が傾斜した直線となるため、円筒型X線検出器の場合に比べて軽減されるものの、データ選択及び逆投影時の重み発生は複雑である。
そこで、仲介的にセンタリング面への逆投影(射影)するセンタリング処理を行うことによって、図17に示すように、有効視野FOV中の直線矢印及び破線矢印で示されたボクセル列の平面型X線検出器面への投影すると、ボクセル列単位での逆投影データ計算に使うセンタリング列を固定できるので、データ選択、重み発生を共に単純にすることができる。なお、逆投影時の重みについて、ボクセル単位の計算からボクセル列単位の計算に削減できることは円筒型X線検出器の場合と同様である。また、センタリング列数を増やせば、補間精度を向上する等の効果も円筒型X線検出器の場合と同様である。
ところで、補間を繰り返すと画像に生じるボケが増幅してしまう。しかし、投影曲線と重みの簡単化のために、センタリング面に一度逆投影後にボクセルへ逆投影する場合、2回の補間は避けられない。すなわち、図18に示すように1回補間の場合に、ボクセルデータDBが、検出器列をボクセルへ逆投影した(オリジナルの)データ位置(D1 ,D2 ,D3)に対して、D1とD2との間を8:1に分ける位置にあるとき、DB=(1/9)×D1+(8/9)×D2となり、データ位置D1とD2とにより確定し、D3等の他のデータの干渉が完全に排除されている。一方、図19に示すようにセンタリング面に一度逆投影する2回補間の場合には、まず、センタリング点Dc1及びDc2が、検出器列をセンタリング面へ逆投影(射影)した(オリジナルの)データ位置(D1 ,D2 ,D3)に対して、D1とD2との間を5:4に分ける位置及びD2とD3との間を2:1に分ける位置にあるとき、Dc1=(4/9)×D1+(5/9)×D2Dc2=(1/3)×D2+(2/3)×D3となり、さらに、ボクセルデータ(点)DBが、Dc1とDc2との間を3:5に分ける位置にあるとき、 DB=(5/8)×Dc1+(3/8)×Dc2 =(5/18)×D1+(17/36)×D2+(1/4)×D3となる。すなわち、実際にはボクセルデータDBは、D1とD2との間にあるにもかかわらず、2回の補間によりD3の干渉項が加わりその分だけD1及びD2の項も誤差を含むようになり、実際の画像においてボケが増幅することになる。がそこで、補間の精度を向上することにより画像に生じるボケを減少させることが必要になる。
補間精度を向上する方法としては、次に示す2つの例がある。図20は高精度な2回補間の第1の例である。検出器列をセンタリング面へ逆投影(射影)した(オリジナルの)データ位置(D1 ,D2 ,D3)と一致するように、センタリング面上でセンタリング点(Dc1,Dc4,Dc6)を設定すると共に、それらの各センタリング点の間に等ピッチで補間点(Dc2,Dc3,Dc5)を設定したことである。これにより2回補間のボケを減少させることができる。例えば、ボクセルデータDBが、Dc3とDc4との間を2:1に分ける位置にあるとき、DB=(1/3)×Dc3+(2/3)×Dc4=(1/9)×D1+(8/9)×D2となり、オリジナルのデータ位置においてD3の干渉項を完全に排除している。しかし、センタリング面上における検出器列の投影曲線は非線形な歪みを持ち、隣接するチャンネル間すなわちXcp方向に隣接したセンタリング点におけるオリジナルの検出器データが存在するZcp座標が微妙に食い違ってくるため、全部のセンタリング列でオリジナルのデータ位置に補間点(センタリング点)を設定することは困難である。
図21は、高精度の2回補間の第2の例である。等ピッチの補間点(センタリング点)の個数を計算時間とのバランスから可能なだけ多数にしたもので、オリジナルのデータ位置には必ずしも補間点は存在しなくても良い。しかし、少なくとも検出器列の個数よりセンタリング列の個数を多くしたことにより、大部分の位置において補間精度は高く、補間によるボケが生じるのは第2回目の補間位置(ボクセル)がオリジナルのデータ位置を挟む第1回目の補間点2点の間にあるとき(例えばDc9とDc10 の間)だけである。
例えば、ボクセルデータDBが、Dc8とDc9との間を1:1に分ける位置にあるとき、DB=(1/2)×Dc8+(1/2)×Dc9=(1/10)×D1+(9/10)×D2となり、オリジナルのデータ位置においてD3の干渉項を完全に排除している。また、ボクセルデータDBが、Dc9とDc10 との間を1:1に分ける位置(丁度D2に対応する位置)にあるとき、 DB=(1/2)×Dc9+(1/2)×Dc10 =(1/40)×D1+(14/15)×D2+(1/24)×D3となり、D3(この場合ではD1も該当する)の干渉項が排除されていないが、D1,D3の重み(係数)がD2に比べて小さいので、従来のボケよりは減少されており、しかもこのボケが発生する範囲は、上述したように、Dc9とDc10 との間の距離に限定される。
これをセンタリング面に応用した例を図22に示す。図22(a)は検出器列5列のセンタリング面への投影曲線であり、オリジナルのデータ位置を示す。前述の第1の実施の形態において説明したセンタリング面を使用した3次元再構成法(コーンビーム再構成法)のステップに記載されているように、このオリジナルデータからセンタリング面において格子状に配列されたセンタリングデータを作成する。格子の列(センタリング列)の数を検出器列数と同じ数の5列とした場合を、図22(b)に示す。あるボクセル列に逆投影するデータ位置を直線Sで示した。2列目のセンタリング列C2は軽い重みで補間に使用され、3列目のセンタリング列C3は重い重みで補間に使用される。この補間に使用されるデータの幅がZcp方向に広くなり、ボケが生じることが分かる。これは図19の2回補間の例に相当する。
さて、センタリング列の数を検出器列数より多くした例(10列)を図22(c)に示す。あるボクセル列に逆投影するデータ位置を上と同様に直線Sで示した。4列目のセンタリング列C4は軽い重みで補間に使用され、5列目のセンタリング列C5は重い重みで補間に使用される。この補間に使われるデータの幅がZcp方向に狭くなり、ボケを抑制できることが分かる。これは図21の高精度な2回補間の第2の例に相当する。なお、図21において補間方法は同様に距離の逆比による線形1次補間である。しかし、例に示した矢印の点(Dc8とDc9との間にDBが位置する場合)の補間精度は非常に高い。また、検出器列数に対してセンタリング列数を格段に多くして(例えば検出器列5列に対してセンタリング列50列あるいは500列)、第2回目の補間を0次補間すなわち最も近いセンタリング列を選択するNearest Neighborにしても良いものである。
ここで、この発明の要旨であるコーンビーム再構成とファンビーム再構成の切換可能にする構成について3つの例を説明する。第1の例は、発生させる投影曲線を切換える方法である。図23に示すように、再構成処理制御部21に再構成法指定部21-1及び投影曲線計算部21-2を備えた構成とし、再構成法指定部21-1により指定された(設定又は決定された)再構成法に応じて、投影曲線計算部21-2は投影曲線又は投影直線を発生させる。
このような構成で行われる再構成処理は、1.再構成法指定部21-1により、コーンビーム再構成が指定されている時には、投影曲線計算部21-2により、図5に示すようにボクセル列を検出器面に投影した図6に示す投影曲線を発生させ、その後、再構成処理制御部21は、その投影曲線に対応する逆投影データを求め(コーンビーム再構成処理(3次元再構成処理))、画像メモリ27に加算して画像を記憶させる。
2.再構成法指定部21-1により、ファンビーム再構成が指定されているときには、投影曲線計算部21-2により、図24(a)に示すように、ある検出器列の中心を通る(あるいは図24(b)に示すように複数の検出器列間に)検出器列(スライス面)に平行な投影直線を発生させ、その後、再構成処理制御部21は、その投影直線に対応する逆投影データを求め(ファンビーム再構成処理)、画像メモリ27に加算して画像を記憶させる。
このファンビーム再構成において、再構成処理制御部21は、データ選択処理及び補間重み発生処理で、以下に説明する(1)と(2)とのいずれか一方の方法を取ることができる。
(1)図25(a)に示すように、発生した直線に最も近い1つの検出器列のデータを選択し、100%重み付けする。
(2)図25(b)に示すように、発生した直線に近い複数の検出器列のデータを選択し、重み付け補間(加算)する。前者の選択した1検出器列のデータの100%重み付けを行えば、各検出器列毎に複数スライスの画像を同時に再構成することが可能である。また、後者の選択した複数の検出器列の重み付け補間を行えば、複数の検出器列のデータを束ねてファンビームと見なして再構成することができる。なお、この再構成処理のフローチャートを図26に示す。
第2の例は、コンボリューションデータの第1のデータメモリ23への書込み制御を切換える方法である。図27に示すように、再構成処理制御部21に再構成法指定部21-1及びデータ制御部21-3を備えた構成とし、再構成法指定部21-1により指定された再構成法に応じて、データ制御部21-3はコンボリューションされたデータの第1のデータメモリ23への記憶を制御する。このような構成で行われる再構成処理は、1.再構成法指定部21-1により、コーンビーム再構成が指定されている時には、データ制御部21-3により、図28に示すように、各検出器列のコンボリューションデータをそれぞれ第1のデータメモリ23の対応する領域に記憶させ、その後、再構成処理制御部21が投影曲線を計算、逆投影するデータを求め、画像メモリ27に加算して画像を記憶する。
2.再構成法指定部21-1により、ファンビーム再構成が指定されている時には、データ制御部21-3により、図29(a)又は図29(b)に示すように、同じ1列のコンボリューションデータを第1のデータメモリ23の領域に多重記憶させる。その後、再構成処理制御部21が投影曲線を計算、逆投影するデータを求め、画像メモリ27に加算して画像を記憶する。
以上のように、全部あるいはある範囲の検出器列のデータを列方向に同じにすることでファンビーム再構成に切換えることができる。なお2.で第1のデータメモリ23の全ての列の領域に記憶させる1列のコンボリューションデータは、例えば図29(a)に示すように、ある検出器1列(図中第3列目)であっても良いし、また、例えば図29(b)に示すように複数の検出器列のデータ(例えば第2列目と第3列目のコンボリューションデータ)を、重み付け補間(加算)して作成したデータ(=0.4×第2列目+0.6×第3列目)であっても良い。後者の複数の検出器列の重み付け補間を行えば、複数の検出器列のデータを束ねてファンビームと見なして再構成することができる。なお、この再構成処理のフローチャートを図30に示す。
第3の例は、図31に示すように、前記再構成処理部12が、センタリング面を使用した3次元再構成処理(ゲートアレイ等による)又は直接逆投影法による再構成処理(テーブル法を使用しても良い)を行う(汎用コンピュータ等による)コーンビーム再構成ユニット12-1と、従来の技術で説明したようなファン−パラ変換再構成処理又はセンタリング軸を使用した再構成処理等のファンビーム再構成処理を行う(よく知られているゲートアレイによる)ファンビーム再構成ユニット12-2とから構成されていており、それらの再構成ユニットを切換えて使うものである。なお、この第3の例は、ハードウエア的に上述したように実現しても良いが、この再構成処理部12が汎用コンピュータからなる場合には、コーンビーム再構成処理のプログラムとファンビーム再構成処理のプログラムの2種類のプログラムを持ち、両者を選択して起動することでソフトウエア的に実現しても良い。
なお、ファンビーム再構成する場合(ファンビーム再構成ユニット12-2に切換えた場合)、センタリング軸を使用した再構成処理においては、図32に示すように(図12参照)、1つの画像(断層面)を形成するためには、センタリング面上の1列(Zcp座標が同じデータからなる)のセンタリング列(センタリング軸)Sをその画像の各ボクセル列(実質的にはピクセル列と同じ)へ逆投影すれば良い。このとき、焦点〜再構成ボクセル列の長さと焦点〜センタリング列Sの長さとの拡大縮小関係が存在し、センタリング列のうち逆投影するデータは、各ボクセル列に対して範囲(両端の位置)が異なる。
以下、前述した第1の例〜第3の例における複数の検出器列のデータを束ねてファンビームと見なして再構成する場合の、データを束ねるタイミング、束ねるデータの選択方法、束ねる枚数に関して説明する。なお、第3の例においても、X線検出器は複数の検出器列から構成された2次元アレイ型であるので、得られた各列のデータを有効に使用するために、ファンビーム再構成において列方向にデータを束ねる処理を行うことになる。
まず、データを束ねるタイミングは、第1の例の場合には、投影直線計算後の逆投影直前である。投影直線から逆投影するデータを計算するときに、例えば投影直線に近い検出器4列分のデータを、例えば(0.1, 0.33, 0.33, 0.24)というように重み付け加算すれば、4列分のデータを束ねることになる。再構成処理制御部21がデータ数及び重み付けを決定し、その重み付けは線形又は非線形のいずれでも良い。
第2及び第3の例の場合には、以下の2通りのデータを束ねるタイミングがあり、いずれを使用しても良いものである。
1.コンボリューション処理を行った後に、コンボリューションデータを重み付け加算して束ねる。
2.生データの段階で重み付け加算して束ねておき1列のデータと見なしてcos (余弦関数)の重み付けと関数とのコンボリューション演算を行って、作成したデータを第1のデータメモリ23に記憶させるなどして再構成する。ただし、第2の例ではデータ制御部21-3に、第3の例においても該当する制御部に、再構成する位置の情報(検出器列)を予め入力しておく必要がある。
次に、束ねるデータの選択方法及び束ねるデータ数は、以下の6通りがある。
1.全列のデータを使って複数データに束ねる。
全検出器列のデータを1回づつ使って複数のデータを作成する。例えば、図33(a)に示すように、全部で20列ある検出器のデータを、5列づつ重み付け加算して4つのデータを作成する。
2.中央部に位置する検出器列のデータだけを使用して複数データに束ねる。
両端に位置する検出器列は、コーン角が大きいのでデータの精度が低下する。従って、両端に位置する検出器列のデータは使用せずに、中央部に位置する検出器列のデータだけを使用して複数のデータを作成する。例えば、図33(b)に示すように、全部で20列ある検出器列のうち両端に位置する検出器列4列づつ(計8列)のデータは使用せずに、中央に位置する検出器列(第5列目から第16列目までの計12列)のデータを、4列づつ重み付け加算して3つのデータを作成する。
3.中央部の検出器列のデータだけで1つのデータを作成する。
両端に位置する検出器列のデータは使用せずに、中央部に位置する検出器列のデータだけを使用して1つのデータを作成する。例えば、図33(c)に示すように、全部で20列ある検出器列のうち両端に位置する検出器列4列づつ(計8列)は使用せずに、中央に位置する検出器列(第5列目から第16列目までの計12列)のデータを、重み付け加算して1つのデータを作成する。
4.一定間隔でデータを抜いて束ねる。
一定間隔でわざとデータを抜いて、その間の検出器列のデータを束ねて複数のデータを作成する。例えば、図33(d)に示すように、20列のデータを7列おきに1列空けて、6列づつ重み付け加算して3つのデータを作成する。
5.オーバーラップさせて束ねる。
幾つかの検出器列のデータは、複数回使用して複数のデータを作成する。例えば、図33(e)に示すように、20列の検出器列のうち両端に位置する検出器列8列×2(第1列目〜第8列目、第13列目〜第20列目)のデータ及び中央部に位置する検出器列8列(第7列目〜第14列目)のデータを重み付け加算して3つのデータを作成する。重複部(第7,8列目及び第13,14列目)がある。
6.束ねるデータ数をそれぞれ変える。
作成するデータによって使う検出器列数を変える。例えば図33(f)に示すように、20列の検出器列のうち検出器列を6,8,6列づつ重み付け加算して3つのデータを作成する。
なお、以上1、2、4、5、6を組み合わせてデータ作成しても良い。例えば、2、5、6を組み合わせて、図33(g)に示すように、両端に位置する検出器列4列づつ(計8列)のデータは使用せずに、中央部に位置する12列の検出器列のうち、4列の検出器列(第5列目〜第8列目)、8列の検出器列(第7列目〜第14列目)、4列の検出器列(第13列目〜第16列目)のデータを重み付け加算して3つのデータを作成する。重複部(第7,8列目及び第13,14列目)がある。
上述した束ね方以外にも、X線検出器や被検体(対象)の条件によって束ね方を変えても良い。また、重み付け加算でなく、単純平均加算などでも良い。
このような構成のこの第1の実施の形態においては、例えば、以下に説明するようにしてX線撮影が行われる。
1.操作者は低線量透視下のバイオプシを行うため、スキャンモードを切り換える。
2.システム制御部10は、再構成法が「コーンビーム再構成」から「ファンビーム再構成」に切換えられると再構成処理部12に指示して、ファンビーム再構成法に切換える。
3.システム制御部10はデータ処理方法を「データ保存なし」、表示方法を「リアルタイム画像表示」に切換える旨操作者に伝える。
4.操作者は確認してスキャンを開始する。
5.システム制御部はX線制御器8 に指示してX線を照射し、データ収集部11でデータ収集し、データ束ねなどの処理を加えて再構成処理部12でファンビーム再構成する。
6.再構成処理部12で次々に再構成される画像を表示装置14のモニタに更新表示する。
7.再構成に使われなくなったデータはデータ記憶装置(ハードディスクあるいはメモリ)に保管せず、データは上書きされる。
8.4〜7の処理が繰り返され、スキャンが終了する。モニタには最後に再構成した画像を表示し続ける。
9.操作者は気胸など検査による副作用の有無を確認するため、ボリューム撮影モードに切換える。
10.システム制御部10は、再構成法が「ファンビーム再構成」から「コーンビーム再構成」に切換えられると再構成処理部12に指示して再構成法を切換える。
11.システム制御部はデータ処理方法を「データ保存あり」表示方法を「ボリューム画像表示」に切換える旨操作者に伝える。
12.操作者は確認してスキャンを開始する。
13.システム制御部はX線制御器8に指示してX線を照射し、データ収集部11でデータ収集し、再構成処理部12でコーンビーム再構成する。
14.再構成処理部12で再構成されるボリューム画像をモニタに表示する。
15.再構成に使われなくなったデータはデータ記憶装置(ハードディスクあるいはメモリ)に保管する。
16.スキャンが終了する。操作者は画像を見て検査を終了する。上記のように、再構成法に連動してデータ保管、表示画像の種類などを切り換える。あるいは表示画像枚数も、ファンビーム再構成の透視時には3枚、コーンビーム再構成時には1枚、というように切換えても良い。
このようにこの第1の実施の形態によれば、コーンビーム状のX線を使用するX線CT装置において、コーンビーム再構成及びファンビーム再構成の両方を切換えて行うことができ、その切換えに連動して、データ保管(データの記憶保存・非保存)や表示画像の種類を切換えることができる。
特に、ファンビーム再構成においては、所望の厚さ(任意の厚さ)の断層面画像を1枚又は同時に複数枚再構成することができる。
この発明の第2の実施の形態を図34〜図40を参照して説明する。この第2の実施の形態は、前述した第1の実施の形態のシステム構成と基本的に同一であり、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。なお、前述の第1の実施の形態において、画像再構成法は、マニュアル操作により技師(医師)等が指定しても良いし、また何らかの自動的に判断する手段を設けて自動的に指定するものでも良いものである。
この第2の実施の形態では、画像再構成法を自動的に切換える具体的な例としての第1〜第3の方法を示す。
再構成法を自動的に切換える第1の方法は、スライス位置によって検出器列のボクセル面への投影曲線を発生方法を切換え可能なものである。
図34は、この第2の実施の形態のX線CT装置の再構成処理制御部21の第1の方法を達成する構成を示すブロック図である。スライス位置を判定するスライス位置判定部21-4により、スライス位置の情報が再構成法指定部21-1に供給され、この再構成法指定部21-1は、この供給されたスライス位置の情報に基づいて再構成法を指定する。前記投影曲線計算部21-2は、再構成法指定部21-1により指定された再構成法に応じて、コーンビーム再構成用の投影曲線又はファンビーム再構成用の投影曲線を発生させる。
このような構成のこの第2の実施の形態の第1の方法においては、図35に示す再構成処理制御部21が行う再構成処理に基づいて画像の再構成が行われる。まず、ステップ1(ST1)の処理として、再構成するスライス位置が、X線源の回転によりコーンビームの中心軸が形成する断層面としてのMidPlane域に含まれるか否かを判断する。例えばX線検出器の検出器列の総数が20の場合、X線源とX線検出器とを真正面に対向させたときには、一般的には、MidPlaneはX線源(焦点)からのコーンビームの中心線が含まれる断層面であり、この20列のX線検出器の場合、検出器列10番目(No.10)と11番目(No.11)との間に挟まれ、そのMidPlane域は検出器列10番目(No.10)と11番目(No.11)とを含む。従って、MidPlaneを挟む上下の2スライス(No.10又はNo.11)以外のスライス位置(例えばNo.20)を再構成する場合には、スライス位置がMidPlane域に含まれないと判断し、ステップ2(ST2)の処理として、コーンビーム再構成を指定し、ステップ3(ST3)の処理として、図36(a)に示すような投影曲線を発生させ、ステップ4(ST4)の処理として、発生した投影曲線に対応する検出器列のデータを選択し、その選択されたデータに重み付け・加算を行い、逆投影データを算出してコーンビーム再構成を行う。
また、ステップ1の処理で、No.10又はNo.11のスライス位置を再構成を再構成する場合には、スライス位置がMidPlane域に含まれると判断し、ステップ5(ST5)の処理として、ファンビーム再構成を指定し、ステップ6(ST6)の処理として、焦点(X線源)位置と再構成ボクセルの位置関係で決定される投影曲線を無視して図36(b)に示すような投影直線を発生させ、ステップ7(ST7)の処理として、発生した投影直線に対応する検出器列のデータを選択し、その選択されたデータに重み付け・加算を行い、逆投影データを算出してファンビーム再構成を行う。
第1の実施の形態でも説明したように、コーンビーム再構成の処理やファンビーム再構成の処理は各種変形(束ね処理を含む)が可能であり、この第2の実施の形態では、再構成の切換えを指定するのにスライス位置により依存してスライス位置が決定されれば自動的に最適な再構成法が指定される点に特徴がある。また、上述した再構成処理では、複数のスライス位置を指定することにより、複数のスライス画像を異なる再構成法で同時に再構成することが可能となる。
再構成法を自動的に切換える第2の方法は、スライス位置によって第1のデータメモリ23へデータを記憶する制御が切換え可能なものである。図37は、X線CT装置の再構成処理制御部21の第2の方法を達成する構成を示すブロック図である。スライス位置判定部21-4によりスライス位置の情報が再構成指定部21-1に供給され、この再構成法指定部21-1は、この供給されたスライス位置の情報に基づいて再構成法を指定する。前記データ制御部21-3は、再構成法してイブ21-1により指定された再構成法に応じて、コンボリューションされたデータの第1のデータメモリ23への記憶を制御する。このような構成のこの第2の実施の形態の第2の方法においては、図38に示す再構成処理制御部21が行う再構成処理に基づいて画像の再構成が行われる。まず、ステップ11(ST11)の処理として、再構成するスライス位置が、X線源の回転によりコーンビームの中心軸が形成する断層面としてのMidPlane域に含まれるか否かを判断する。
従って、上述した第1の方法で説明したように、MidPlaneを挟む上下の2スライス(No.10又はNo.11)以外のスライス位置(例えばNo.20)を再構成する場合には、スライス位置がMidPlane域に含まれないと判断し、ステップ12(ST12)の処理として、コーンビーム再構成を指定し、ステップ13(ST13)の処理として、図39(a)に示すように、各検出器列のコンボリューションデータを第1のデータメモリ23の対応する領域にそれぞれ記憶する。 次に、ステップ14(ST14)の処理として、ボクセル列を検出器面に投影した投影曲線を算出(発生)し、ステップ15(ST15)の処理として、この投影曲線に基づいて重み付け・加算を行って逆投影データを求めて、コーンビーム逆投影を行う。
また、ステップ11の処理で、No.10又はNo.11のスライス位置を再構成を再構成する場合には、スライス位置がMidPlane域に含まれると判断し、ステップ16(ST16)の処理として、ファンビーム再構成を指定し、ステップ17(ST17)の処理として、図39(b)〜図39(d)に示すように、No.10又は(及び)No.11の検出器列のコンボリューションデータを使用して、第1のデータメモリ23に多重記憶する。なお、このとき図39(e)に示すように、第1のデータメモリ23の全ての領域をコンボリューションデータで埋める必要はなく、ボクセル列を検出器面に投影した投影曲線に関与する領域だけ、No.10又は(及び)No.11の検出器列のコンボリューションデータを使用して埋めれば、コンボリューションデータの書込み時間を短縮することができる。
次に、ステップ18(ST18)の処理として、ボクセル列を検出器面に投影した投影曲線を算出(発生)し、ステップ19(ST19)の処理として、この投影曲線に基づいて重み付け・加算を行って逆投影データを求めて、ファンビーム逆投影を行う。
なお、ステップ17の処理では、単純にNo.10を再構成するときには、図39(b)に示すようにNo.10のコンボリューションデータを第1のデータメモリ23の全ての領域に多重記憶し、単純にNo.11を再構成するときには、図39(c)に示すようにNo.11のコンボリューションデータを第1のデータメモリ23の全ての領域に多重記憶する。また、複合的に図39(d)に示すように第1のデータメモリ23の上半分にNo.10のコンボリューションデータ、下半分にNo.11のコンボリューションデータを多重記憶する。このようにすると、No.10を再構成するときとNo.11を再構成するときでデータを書き換える必要がなく、再構成処理時間を短縮することができる。
この第2の方法でも、第1の方法と同様に、コーンビーム再構成の処理やファンビーム再構成の処理は各種変形(束ね処理を含む)が可能であり、再構成の切換えを指定するのにスライス位置により依存してスライス位置が決定されれば自動的に最適な再構成法が指定される。
再構成法を自動的に切換える第3の方法は(汎用コンピュータによる場合は)、コーンビーム再構成とファンビーム再構成の2種類の再構成プログラムを記憶させ、スライス位置によって使用する再構成プログラムを切換えるものである。あるいは、コーンビーム再構成を行う汎用コンピュータと、ゲートアレイなどを用いたファンビーム再構成ユニットとの組み合わせの場合、スライス位置によって汎用コンピュータとファンビーム再構成ユニットと切換えてを動作させるものである。
この第3の方法を達成する構成の一例を図40に示す。すなわち、コーンビーム再構成ユニット12-1及びファンビーム再構成ユニット12-2を備え、さらに、スライス位置判定部21-4及び再構成法指定部21-1を備えて、スライス位置判定部21-4によりスライス位置の情報が再構成指定部21-1に供給され、この再構成指定部21-1は、この供給されたスライス位置の情報に基づいて再構成法を指定する。すると、この指定された再構成法に該当するコーンビーム再構成ユニット12-1とファンビーム再構成ユニット12-2のうちいずれか一方が起動するようになっている。
なお、この第2の実施の形態においては、MidPlaneに隣接する2スライスを再構成するときにはファンビーム再構成し、その他の時にはコーンビーム再構成する例を記述したが、ポイントはスライス位置に依存して再構成法を切換えることであり、他の再構成法でも良いし、他のスライス位置による切換えでも良い。
このようにこの第2の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態の乞うかを得ることができると共に、さらに、スライス位置に依存して自動的にファンビーム再構成法とコーンビーム再構成法とを切換えることができる。しかも、ファンビーム再構成法を選択した時には高画質のファンビーム画像(断層面画像)を得ることができる。
この発明の第3の実施の形態を図41及び図42を参照して説明する。なお、この第3の実施の形態では、連続回転方式において、高速で、連続的な(リアルタイムの)コーンビーム再構成を実現するものである。ガントリ(架台)1は連続回転スキャンを行っており、例えば1回転900ビューとする。
1.架台1の回転が360°を越えると、360°分のデータを使ってFeldkamp法によってコーンビーム再構成する。以下、N回転M−1ビューまでのデータを使って再構成し、再構成ボクセルデータVoxel(N,M-1)を再構成していたとする。
2.架台が更に回転してスキャンする。N回転目MビューのデータRaw(N,M)を収集する。
3.データRaw(N,M)を重み付け、コンボリューション処理して、N回転MビューのコンボリューションデータConv(N,M)を得る。
4.1回転前、すなわちN−1回転目MビューのコンボリューションデータConv(N-1,M)とConv(N,M)の差分を計算し、差分データSub(N,M)を得る。
5.再構成処理制御部21が、コーンビーム再構成になる図6のような投影曲線を発生させる。
6.再構成処理制御部21が、発生した投影曲線に対応した差分データSub(N,M)の選択、重み付けを行い、逆投影データBack(N,M)を得る。
7.逆投影データBack(N,M)を前回までの再構成ボクセルデータVoxel(N,M-1)に加算して今回の再構成ボクセルデータVoxel(N,M)を得る。
8.架台が回転して新しいデータを得る毎に上記2〜7の処理を繰り返すことで連続的に再構成し、再構成ボクセルデータを常に更新する。この再構成処理のフローチャートを図41に示す。
ところで、再構成処理部12が、前述の第2の実施の形態におけるスライス位置による再構成法の切換えが可能であるときには、上記5の処理は次の5-1の処理のように拡張しても良い。
5-1.再構成処理部12が、再構成スライス位置に対応した再構成法に対応した投影曲線(投影直線)を発生させる。
さらに、再構成処理部12が、前述の第1の実施の形態で説明した構成になっており、モードによる再構成法の切換えも可能なときには、上記5の処理は次の5-2の処理のように拡張しても良い。
5-2.再構成処理制御部21が、再構成指定部21-1により指定された再構成法に対応した投影曲線(投影直線)を発生させる。
この再構成処理のフローチャートを図42に示す。
このようにこの第3の実施の形態によれば、最初の再構成(1回転目)以降は、差分データが0については逆投影する必要がないので、逆投影すべきデータを削減することができ、逆投影処理時間を短縮することができる。なお、この第3の実施の形態では、1ビューずつ再構成ボクセルデータの更新を行うようになっていたが、例えば1回転に10回更新するなど、ある程度架台が回転した後ある程度のビュー数をまとめて処理し、その後画像を更新するようにしても良い。
また、再構成したボクセルデータからある断面を切り出して表示しても良いし、ボクセルデータを加工した形、例えばある方向からの最大値投影(MIP)像などを表示しても良い。
さらに、この第3の実施の形態では、コンボリューションデータの差分を取って逆投影したが、生データなど他のデータ(センタリングデータ)の差分を取って逆投影しても良いものである。
この発明の第4の実施の形態を図43〜図46を参照して説明する。前述の第3の実施の形態が1枚の断層立体画像を高速で連続的に再構成するものであったのに対して、この第4の実施の形態では、連続回転方式において複数枚の断層面画像を同時に高速で連続的に再構成するものである。
1.架台1の回転が360°を越えると、360°分の3つのデータを使用してファンビーム再構成法により3つの画像が再構成される。N回転目M−1ビューまでのデータとして再構成し、画像メモリ27の3つの領域には、図43に示すように、それぞれ再構成画像A(N,M-1)、B(N,M-1)、C(N,M-1)(これらはピクセルデータから構成されている)が記憶され、表示装置14の3つのモニタにそれぞれ表示されている。
2.架台1が更に回転してスキャンする。N回転MビューのデータをRaw(N,M)を収集する。
3.Raw(N,M)を重み付けコンボリューション処理し、画像A、B、Cに対応するコンボリューションデータ Conv-A(N,M)、 Conv-B(N,M)、Conv-C(N,M)を得る。
4.1回転前(N−1回転目)Mビューのコンボリューションデータと今回転(N回転目)Mビューのコンボリューションデータとの差分データ、すなわちConv-A(N-1,M)と Conv-A(N,M)との差分データSub-A(N,M)を計算する。同様にSub-B(N,M)、Sub-C(N,M)も計算する。
5.差分データSub-A(N,M)からファンビーム逆投影データ Back-A(N,M)を計算する。同様に Back-B(N,M)、 Back-C(N,M)を得る。
6.逆投影データ Back-A(N,M)を画像メモリ12-3A に記憶されている再構成画像A(N,M-1)に加算して(ピクセルデータからなる)再構成画像A(N,M)を得る。同様に再構成画像B(N,M)、C(N,M)も得る。
7.架台が回転して新しいデータを得る毎に2〜6の処理を繰り返すことで3枚の画像を連続的に再構成し、3枚の表示画像を常に更新する。この再構成処理のフローチャートを図44に示す。
上述した再構成処理により、高速かつ連続的な複数枚の画像のファンビーム再構成が実現できる。
また、図45に示すフローチャートのように、1回の収集に対して再構成画像A(N,M)、再構成画像B(N,M)、再構成画像C(N,M)を同時に再構成する方法としては、 Conv-A(N,M)、差分データSub-A(N,M)、ファンビーム逆投影データBack-A(N,M)、再構成画像A(N,M)というように先ず再構成画像Aについて計算して求めてしまい、この再構成画像A(N,M)についての計算が終了した後、Conv-B(N,M)から始まって再構成画像B(N,M)までを計算し、次に Conv-C(N,M)から始まって再構成画像C(N,M)までを計算しても良いものである。
なお、 Conv-A〜 Conv-Cデータの作成方法についてはその説明を省略したが、前述の第1の実施の形態で説明したように、所定の1列の検出器列のデータに基づいて、あるいは複数の検出器列のデータを重み付け加算したデータに基づいて、あるいは単純な束ね処理により得たデータに基づいて作成する。
なお、この第4の実施の形態でも、前述の第3の実施の形態と同様に、コンボリューションデータの差分を取って逆投影したが、生データなど他のデータ(センタリングデータ)の差分を取って逆投影しても良いものである。なお、この第4の実施の形態では、再構成処理部12の構成として例えば図46(a)に示す構成ように逆投影計算部31が一つでも良く、また、図46(b)に示す構成のように各データメモリエリア32-1,32-2,32-3及び各画像メモリエリア33-1,33-2,33-3に対応して複数の逆投影計算部31-1,31-2,31-3を設けて、それぞれの逆投影処理ラインが独立して動作するようにしても良い。この図46(b)に示すような構成であれば、より一層高速な処理を実現することができる。このようにこの第4の実施の形態によれば、最初の再構成(1回転目)以降は、差分データが0については逆投影する必要がないので、逆投影すべきデータを削減することができ、逆投影処理時間を短縮することができる。なお、この第4の実施の形態では、1ビューずつ再構成画像データの更新を行うようになっていたが、例えば1回転に10回更新するなど、ある程度架台が回転した後ある程度のビュー数をまとめて処理し、その後画像を更新するようにしても良い。
なお、上述した全ての実施の形態において、検出器列数N=20などを含むシステムのジオメトリ、重み付けの方法、束ねる列数、束ねたデータ数、再構成する枚数=3などは一例であり、この発明はこれに限定されるものではない。
3…X線源、5…X線検出器、12…再構成処理部、21…再構成処理制御部、21-1…再構成法指定部、21-2…投影曲線計算部、21-3…データ制御部、21-4…スライス位置判定部、22…コンボリューション演算部、23…第1のデータメモリ、24…第1の逆投影部、25…第2のデータメモリ、26…第2の逆投影部、27…画像メモリ。