JP3945852B2 - 自動車構造部材用継手構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる複数の中空形材を溶接して形成される構造部材用継手構造に関し、特に自動車の車体フレーム等の構造部材に適用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して車体の軽量化による燃費の向上が厳しく追求されており、車体へのアルミニウム材の適用も増加しつつある。現在の車体は、成形した鋼板製の板材を抵抗スポット溶接にてハット形状に組み立てて構成するモノコック構造であるが、軽量化のためにこれら板材をアルミニウム材に置換するための板材の成形や接合技術の開発、またアルミ押出形材を使用したスペースフレーム構造が提案されている。
【0003】
後者のスペースフレーム構造の場合、角筒状のアルミ押出形材を溶接で組み立て車体骨格を形成する方法であり、形材同士を直接あるいは結合部材を介して形材同士を接合し、車体骨格を組み上げる。図7はスペースフレーム構造の模式図を示すもので、角筒状の形材1を複数本用意し、形材1の端部を他の形材1の端部に溶接することによって、接合部2を形成し、この接合部2により形材1同士が固着されてスペースフレーム構造が形成される。得られたスペースフレーム3を覆うように、自動車用ボディ4が載置される。
【0004】
かかるスペースフレーム構造の組み立てでは、構造部材として使用されている形材の強度や剛性を十分に伝達し、スペースフレーム全体としての強度及び剛性を十分発揮させる上で、接合部の構造が重要となる。また、接合部の組立精度はスペースフレーム全体としての組立精度を維持する上で重要である。すなわち、接合部構造は、強度、剛性の確保と、組立精度の確保の双方において重要である。さらには、生産性向上の観点から溶接施工の容易なことも求められる。
【0005】
スペースフレームの接合構造には、T字型、L字型等の様々な継手構造が多用されているが、これらは、溶接による接合やボルト等による機械的接合などの接合手段がとられる。
溶接を適用する場合の一般的な継手構造を図8又は図9に示す。図8の継手構造は、中空形材5の側壁面に中空形材6の端部を当接させ、当接部周囲を溶接することにより形材同士を固着させるものであり、図9の継手構造は、中空形材5及び6の間に結合部材7を介在させ、該結合部材7と中空形材5及び6の端面同士を突き合わせ溶接するものである。いずれの継手構造でも接合部位に沿ってその全周を溶接する全周溶接が一般的に行われている。
しかし、全周溶接で行うと、どうしても接合部周辺は溶接の入熱による熱影響をうけ軟化し強度が低下するという問題がある。また、この継手構造は溶接時の位置決めが難しく、仮止め溶接が必要となり工程数が増えるばかりか、溶接による熱ひずみが不可避的に発生し、スペースフレーム構造を構築するにあたり、累積的に組立精度誤差が蓄積しやすいという問題がある。
【0006】
また、接合部の強度、剛性を確保するために、接合部に補強部材を内挿した継手構造も知られている。図10はその一例であり、中空形材8の側壁に穴を形成し、この穴を通して中空形材9の先端部9aを挿入し、穴の部分で両形材を溶接接合するもので、内挿された中空形材9の先端部9aが接合部の補強効果を持つが、中空形材8の側壁に穴を形成する必要があるという組立上の制約がある。
【0007】
さらに、特開平3−115635号公報には、中空形材の側壁から垂直にフランジ部を突出させ、そのフランジ部に他の部材を接合した継手構造が記載され、特公昭58−49666号公報には接合部材を介して鋼管の側壁に他の鋼管を垂直に溶接接合する継手構造が記載されている。
しかし、特開平3−115635号公報に記載された継手構造は、中空形材とフランジ部の接合に関して図8〜図9と同様の問題があり、またフランジ部と他の部材を波形状に溶接していくので溶接長が増加し、熱影響による強度の低下や生産性の低下が起こる。一方、特公昭58−49666号公報に記載された継手構造は、溶接箇所が増え、鋼管内部の補強ができず、また接合部外周が周囲に比べ大きくなるため組立上の制約を受けやすくなる。
【0008】
また、特開平7−80570号公報には、2つの中空形材をジョイント部品を介して接合するT字又はY字型継手構造が記載されている。この継手構造は、一方の中空形材の側壁に結合凹部を形成し、ジョイント部品の結合部をその結合凹部に外嵌して両者を仮止め結合し、ジョイント部品に形成した取付部に他方の中空形材をはめ込み、これらの3部品を溶接接合するというものであるが、中空形材の断面形状に少なくとも2条の結合凹部を形成するという制約があり、また、接合部外周が周囲に比べ大きくなるため組立上の制約を受けやすくなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、溶接による熱影響を低減して十分な接合強度と剛性を確保でき、中空形材の断面形状に特に制約がなく、溶接施工性、組立性にも優れる自動車構造部材用継手構造を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる複数の中空形材と同じくアルミニウム又はアルミニウム合金からなる結合部材により構成される自動車構造部材用継手構造であって、上記結合部材は上記中空形材の中空部に嵌合して差し込まれる複数の結合部を有し、該結合部の後端には段部が設けられ、かつ該段部は外縁に向け面取りされている。この継手構造では、結合部材は中空形材の中空部に結合部の後端の段部まで差し込まれ、面取り部と中空形材の端部の間に構成された溝部が周方向に溶接される。これらの中空形材及び結合部材は、例えば押出形材を利用できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、中空形材の中空部に結合部材の各結合部を嵌合し、中空形材の端部が段部に当接するまで差し込むことにより、複数の中空形材と結合部材の位置決めが容易にでき、溶接等による仮止めが不要で溶接前のセッティングが容易に行える。そして、結合部材の結合部同士の角度や結合部の数は自在に設定できるので、中空形材同士を任意の角度で接合したり、2以上の任意の数の中空形材を1つの結合部材で結合することが可能となる。
【0012】
また、結合部材の結合部を中空形材の中空部に内挿するので、結合部の後端に段部を形成しても中空形材外周と結合部材外周を実質的に一致させることができる。このため、余分なでっぱりをなくして、その後のスペースフレーム組立や外板接合等において設計上、作業上の制約を低減することにも寄与する。
そして、段部が外縁に向け面取りされていることから、中空形材をいっぱいに差し込むだけで、中空形材の先端と面取り部の間に溝が形成され、これを溶接の開先とすることができる。
【0013】
さらに、溶接部において中空形材側では中空形材と結合部が重複して実質的に肉厚となっており、結合部材側では肉厚を厚く形成できるので、中空形材に対する溶接の熱影響を低減できる。
また、結合部の長さを大きくして結合部材と中空部材の重複部分の長さをある程度確保すれば、熱影響により軟化が起こる範囲を重複部分内にとどめることができて一層強度や剛性の確保に有効であり、かつ熱影響による変形を防止できるとともに、外部から中空形材への衝撃や曲げ等の入力に対しても強い構造となる。
【0014】
次に、図1〜図6を参照して、本発明をより具体的に説明する。
まず、図1及び図2は2本の中空形材を結合部材を介して直線状に結合する例である。断面矩形の中空形材11、12の中空部に対し、それぞれ結合部材13の結合部14、15が差し込まれる。これらの中空形材11、12及び結合部材13はいずれも押出により成形することができる。また、ここでは結合部材13の断面内に中リブ13aを2枚設け、結合部先端にもリブ14a、15aを設けたが、これらの位置、枚数、板厚等を変化させることにより、所望の継手強度、剛性を得ることができる。
【0015】
結合部14、15の後端には段部16が設けられており、この段部16が中空形材11、12の先端に当接するまで結合部14、15を差し込むことで、位置決めが容易に行われる。また、その段部16は外縁に向け斜めに面取り(面取り部17)されている。この面取り部17と中空形材11、12の端部の間に構成される溝が溶接接合の際の開先となり、そこに溶着金属18を溶け込ませ、中空形材11、12及び結合部材13を溶接接合する。
【0016】
溶接の熱影響により材料が軟化し接合強度が低下することが懸念されるので、中空形材11、12と結合部14、15の重複長さLを、中空形材11、12の軟化範囲が重複部分を越えて広がらないような長さに設定することが望ましい。その理由を図3を参照して説明すると、例えば図3(a)に示すように、中空形材11、12が曲げ力M1,M2を受ける場合、中空形材11、12からの曲げ力を結合部14、15が直接受けることになり、その際最も大きい応力が集中するのは図3(b)に示すように結合部14、15の端部Bであるが、重複長さLを十分大きくしておけば、端部Bは溶接の熱影響による軟化部位A(図3(b)にドットで示した箇所)から離れた位置に存在することになり、この部位で伝達され得る応力がより大きくなるため、軟化の影響が継手強度の低下として表れにくい。
アルミニウム又はアルミニウム合金の場合、目安として重複長さLを約25mm以上に設定すれば、中空形材11、12の軟化範囲がほぼ重複部分内に収まる。従って、重複長さLは少なくとも約25mmとることが望ましい。
【0017】
なお、図6は、外形50mm×50mm、肉厚3mmのアルミニウム合金押出形材(6N01−T5)の側壁に同一の押出形材の端面を、下記条件ですみ肉溶接したときの、溶融部中心からの距離と硬度の関係を示すグラフである。この材料の非熱影響部の硬度は約90Hvであり、中心から約25mm離れればその約90%の硬度が得られていることが分かる。
溶接条件:TIG溶接、Arガスシールド、溶化材A5356、溶化材の径2.4mm、電流値250A。
【0018】
図4は、3本の中空形材を結合部材を介して結合する例である。断面矩形の中空形材21〜23の中空部に対し、それぞれ結合部材24の結合部25〜27が差し込まれる。これらの中空形材21〜23及び結合部材24はいずれも押出により成形することができる。また、ここでは結合部材24の断面内に中リブ24aを3枚設け、結合部先端にもリブ25a〜27aを設けたが、その位置、枚数、板厚等を変化させることにより、所望の継手強度、剛性を得ることができる。
【0019】
図5も、3本の中空形材を結合部材を介して結合する例である。異形断面の中空形材31〜33の中空部に対し、それぞれ結合部材34の結合部35〜37が差し込まれる。中空形材31〜33はいずれも押出により成形することができ、結合部材34は押出ではなく鋳造により製造することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、溶接による熱影響を低減して十分な接合強度と剛性を確保でき、中空形材の断面形状に特に制約がなく、溶接施工性、組立性にも優れる自動車構造部材用継手構造を得ることができる。また、中空形材の断面形状が例えば単純な矩形であれば、結合部材を押出により簡単に作製することができる。
なお、本発明は自動車に限らずかかる継手構造が利用できる分野、例えば機械、建築等の構造部材にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る継手構造の例を説明する図である。
【図2】 同じくその組付状態を説明する図及びその溶接部の拡大説明図である。
【図3】 中空形材と結合部の重複長さと継手強度の関係を説明するもので、継手にかかる応力の説明図(a)及びその要部拡大図(b)である。
【図4】 本発明に係る継手構造の別の例を説明する図である。
【図5】 本発明に係る継手構造のさらに別の例を説明する図である。
【図6】 アルミニウム合金形材の溶接部について溶融部中心からの距離と硬度の関係を示す図である。
【図7】 自動車のスペースフレーム構造の説明図である。
【図8】 従来の継手構造の例を説明する図である。
【図9】 従来の継手構造の他の例を説明する図である。
【図10】 従来の継手構造の他のさらに他の例を説明する図(a)及びその中央部で縦に切断した断面図(b)である。
【符号の説明】
11、12、21〜23、31〜33 押出形材
13、24、34 結合部材
14、15、25〜27、35〜37 結合部
16 段部
17 面取り部
18 溶着部
Claims (2)
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなる複数の中空形材を同じくアルミニウム又はアルミニウム合金からなる結合部材を介して溶接接合した継手構造であって、上記結合部材は上記中空形材の中空部に嵌合して差し込まれる複数の結合部を有し、該結合部の後端には段部が設けられ、かつ該段部は外縁に向け面取りされ、その面取り部と中空形材の端部の間に構成された溝部が周方向に溶接されていることを特徴とする自動車構造部材用継手構造。
- 前記中空形材及び結合部材が押出形材であることを特徴とする請求項1に記載された自動車構造部材用継手構造。
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JP08595997A JP3945852B2 (ja) | 1997-03-18 | 1997-03-18 | 自動車構造部材用継手構造 |
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JP08595997A JP3945852B2 (ja) | 1997-03-18 | 1997-03-18 | 自動車構造部材用継手構造 |
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JP08595997A Expired - Lifetime JP3945852B2 (ja) | 1997-03-18 | 1997-03-18 | 自動車構造部材用継手構造 |
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