JP3945255B2 - 光触媒複合材とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、織布等の繊維集合体の形態の、高活性で比較的低コストで製造できる光触媒複合材とその製造方法に関する。本発明はまた、この光触媒複合材から作製された環境浄化機能を持つ繊維製品にも関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化チタンをさまざまな形状、材質の基材に主に薄膜として固定化し、その光触媒作用を脱臭、抗菌、抗かび、付着汚れ分解、有害物質の分解などの環境浄化に応用する試みが精力的に行われている。
【0003】
ガラスウールやガラスクロスといったガラス繊維からなる繊維集合体は、大きな反応面積が確保でき、さらに光触媒の酸化力で分解されないので、酸化チタンの固定用基材として従来より使用されてきた。特開平7−96202 号公報には、光硬化性有機樹脂と酸化チタンの前駆体 (チタンアルコキシド、四塩化チタン、酢酸チタン等) とを溶解させた溶液にガラス繊維体を浸漬して湿式塗布した後、乾燥および焼成して有機物を除去することにより、酸化チタンの薄膜を繊維表面に形成した、液中有害物質処理用の光触媒が開示されている。
【0004】
また、チタンアルコキシドといった加水分解性の酸化チタン前駆体の溶液を基材に塗布する湿式処理を行った後、乾燥および焼成する酸化チタン薄膜の成膜法も、ゾルゲル法としてよく知られている。
【0005】
一方、酸化チタン薄膜を形成する手段として、四塩化チタンをガス状にしてタイル等の平滑な基材に蒸着させる方法が報告されている。四塩化チタンは、水と反応して加水分解を受け、加水分解生成物が縮合して酸化チタンに変化するので、この蒸着は厳密には化学蒸着である。例えば、特開2000−72575 号公報には、四塩化チタンの蒸気を用いて膜厚0.8 ミクロン以上の酸化チタン薄膜を形成した光触媒タイルが、特開平11−216367号公報には、同じくタイルなどの比較的平滑な基材上に予めシリカゲルを含む下地層を形成した後、四塩化チタンを接触させ、熱処理して酸化チタンを形成する光触媒材料の製造方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
基材、特にガラス繊維基材の表面に酸化チタンの薄膜を形成した光触媒複合材では、形成された酸化チタン薄膜に剥離やクラックが見られ、薄膜が脱落し易いため、最初から酸化チタン薄膜が部分的に欠落して、活性が低かったり、光触媒活性が次第に低下し、耐久性に劣ることが問題となっている。この酸化チタン薄膜の剥離やクラックは、成膜時に酸化チタン薄膜に不可避的に発生する応力を緩和するために生ずるものである。酸化チタンの薄膜は、有機樹脂のような柔軟性を持たないので、応力緩和により剥離やクラックが起こり易い。
【0007】
平板のような基材上の酸化チタン薄膜では、製造方法に注意すれば、応力を残したまま、健全な薄膜が維持できることがある。しかし、径の小さいガラス繊維上では、円周方向で応力が緩和しやすいので、形成された酸化チタン薄膜には、クラックや剥離、時には被膜の欠落が見られることが多い。
【0008】
特に、特開平7−96202 号公報に記載のように、有機樹脂を含有する塗布液を用いて酸化チタン薄膜を形成する場合には、成膜中に有機樹脂が熱分解により除去されるので、被膜の体積収縮が極めて大きく、発生する応力は通常より大きい。そのため、円周方向のみならず、繊維の長さ方向においてもクラックや剥離が発生しがちである。また、有機樹脂や酸化チタン前駆体の有機部分の燃焼除去には長時間の焼成が必要である。長時間の焼成は、コストがかかるだけでなく、その間に酸化チタン粒子の成長が過度に進み、光触媒活性が低下するという問題もあった。
【0009】
四塩化チタンを用いた蒸着による酸化チタン薄膜の形成(この蒸着は、上記のように、厳密には化学蒸着であるが、以下では単に蒸着という)については、従来は二次元的な平板にしか適用されておらず、ガラス繊維集合体のように三次元的空間をもつ複雑な基材への適用は考慮されていなかった。また、従来の蒸着法では高活性な酸化チタンの薄膜を安定して形成することは困難であった。
【0010】
シリカゲルの下地層を形成させてからTiO2を蒸着させる方法では、塗布工程が2回必要であり、手間がかかり、コスト高になる。下地層の形成にはシリカゲルと水との混合液を用いるが、水は大きな表面張力をもつため、平滑な基板とは異なり、ガラス繊維のような微細な構造をもつ基材には、均一に塗布することは難しい。そのような下地層の上に、四塩化チタンの接触と熱処理により酸化チタン薄膜を形成させても、薄膜が形成されていない部分や、平滑性が低い部分が生じ、剥離や欠落の起点となる。
【0011】
一般に、四塩化チタンの分解による酸化チタンの製造では、未反応の原料ガスに加え、塩化水素、塩素などの酸性ガスや、チタン酸化物などが発生する。これらは、製造装置内において腐食や配管詰まりなどの原因になり、安定生産を阻害すると共に、そのまま大気に開放することは環境面からも問題であった。
【0012】
本発明は、前述した諸問題を解決し、ガラス繊維等の繊維集合体の各繊維の表面を、実質的に酸化チタンからなる薄膜で被覆した光触媒複合材であって、薄膜の剥離や欠落がなく、膜強度に優れ、かつ高い光触媒機能を発揮・維持することができる光触媒複合材と、それを安全かつ安価に製造する方法を提供することを課題としてなされたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述した課題を解決するため鋭意検討した結果、フィラメント (単糸) 状のガラス繊維を紡糸 (ヤーン) 、あるいはこのヤーンをさらに織布のような繊維集合体にしてから、高純度の四塩化チタンを用いた蒸着法によって酸化チタン薄膜を繊維表面に形成すると、フィラメントの一本一本の表面が酸化チタンの膜で被覆され、剥離やクラックの実質ない酸化チタン薄膜をフィラメント表面に形成でき、高い光触媒活性を発揮できる複合材となることを見い出した
本発明は、広義には、無機繊維から構成される繊維集合体のフィラメント単位の各繊維の表面が酸化チタン系光触媒の連続膜で被覆されたことを特徴とする光触媒複合材である。
【0014】
ここで、酸化チタンの「連続膜」による被覆とは、個々のフィラメント単位の繊維の全面に膜厚がほぼ一定の酸化チタンの連続した薄膜(即ち、実質的に欠落やクラックのない薄膜)が形成されていることを意味し、SEM観察、AFM観察、STM観察などにより判定できる。なお、繊維の端部は膜の乱れを生ずることがあるので、連続膜か否かは、繊維の端部以外の部位で判断する。
【0015】
好適態様においては、無機繊維はガラス繊維であり、繊維集合体は、ヤーン、織布、不織布、またはウールであり、特に好ましくは織布である。
なお、ウールは、ガラスウール、シリカウールなどの無機ウールであるが、本明細書では単に「ウール」という。
【0016】
連続膜を構成する光触媒は、実質的に酸化チタンのみからなるものでも、或いは酸化チタンに加えて、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムの少なくとも1種を含有するものでもよく、さらにV、Zn、Ru、Rh、Pt、Ag、PdおよびCuから選ばれた少なくとも1種の金属および/または金属化合物でドープされていてもよい。また、本発明の光触媒複合材は、着色されていてもよい。
【0017】
本発明の光触媒複合材は、
好ましくは蒸留により精製した四塩化チタンを含む気体を、水蒸気の存在下で、無機繊維集合体と接触させて、各繊維の表面に酸化チタン前駆体の被膜を形成する第一工程、および、
この無機繊維集合体を焼成して、各繊維の表面に酸化チタン系光触媒の連続膜を形成する第二工程、
を含むことを特徴とする方法により製造することができる。
【0018】
この方法の好適態様においては、第一工程および/または第二工程の前に無機繊維集合体を予熱する工程をさらに含み、特に第一工程の前で予熱する場合、予熱温度は好ましくは100 〜300 ℃の範囲である。
【0019】
別の好適態様においては、第一工程および/または第二工程から発生する酸性ガスおよび/またはチタン化合物を除去する工程をさらに含む。
第二工程における焼成温度は好ましくは 250〜800 ℃である。
【0020】
着色した本発明の光触媒複合材は、無機繊維集合体を着色顔料で予め着色しておく方法、或いは第二工程の後に、無機顔料を含む塗布液を繊維集合体に塗布して、繊維集合体を着色する工程をさらに含む方法、により製造できる。
【0021】
本発明はまた、上記光触媒複合材から作製された、光触媒機能による、脱臭、抗菌、抗かび、付着汚れ分解、有害物質の分解といった環境浄化機能を持つ繊維製品にも関する。ここで、繊維製品とは、最終製品のみならず、半製品あるいは素材も包含する意味である。この繊維製品は、例えば、衣類、寝装品、カーテン、テーブルクロスおよびマット、カーペット、壁装材、建築シート、テント、車内内装材、キッチン用品、および風呂用品よりなる群から選んだ用途に使用できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る光触媒複合材は、基材である繊維集合体の各繊維の表面に光触媒活性を有する酸化チタンの連続膜を形成したものである。
【0023】
基材の繊維集合体は、光触媒によって分解もしくは劣化を受けないように、無機繊維から構成する必要がある。無機繊維としては、安価で種類も豊富なガラス繊維を使用することが好ましいが、アルミナ、炭化珪素等のセラミック繊維、ならびにステンレス、銅、鋼などの金属繊維等も使用できる。以下では、無機繊維がガラス繊維である本発明の態様について説明するが、他の無機繊維である場合も原則として同様に本発明を実施できる。
【0024】
本発明で使用するガラス繊維の種類は特に制限されない。例えば、石英ガラス、高石英ガラス等のSiO2を主成分とするガラス繊維、ならびにEガラス、Tガラス、Cガラス、Sガラス、パイレックス(登録商標)等からなるガラス繊維等が使用できる。これらの中から、経済性や製造条件、さらには使用環境等から適当なガラス繊維を選べばよい。ガラス繊維 (以下、単に繊維ともいう) の平均繊維径は、限定されないが、5〜50μm程度が好ましい。繊維径の選択に関して、光触媒作用により分解しようとする処理物質が拡散性の高い気体や液体であるときは、細かいものが好ましい。逆に、付着汚れ等の場合は、繊維径の太いものを選択することが好ましい。
【0025】
ガラス繊維の繊維集合体の形態は、単糸を紡糸したヤーン (撚りがあってもなくてもよい) 、ガラスクロスと呼ばれる織布や、不織布でも良いし、単糸が無秩序に合わさったガラスウール、シリカウールのようなものでも良いが、ガラス繊維の織布、即ち、ガラスクロスが扱い易く、好ましい。ガラスクロスの織り方は、平織り、綾織り、朱子織等、どのような織り方でも差し支えない。また、ガラスクロスの打込み密度、厚さ、引張強度なども限定されないが、打込み密度については縦、横ともに10〜100 本/インチ、クロス厚みは0.01〜2.0 mm、その引張強度は5kgf/インチ (19 N/cm)以上が好ましい。
【0026】
本発明に係る光触媒複合材では、基材の繊維集合体を構成する個々のガラス繊維の表面が酸化チタンからなる光触媒の薄膜で連続的に被覆されている。酸化チタンの被膜は、少なくとも製造終了段階で、繊維の一本一本の実質的に全面に、剥離することなく、ほぼ一定の膜厚の連続膜で形成されている。被膜に剥離部分やクラック、ピンホールなどの未被覆の不連続部分があると、被膜の欠落や脱落がおこり易く、光触媒活性の低下につながるからである。
【0027】
連続膜を形成する酸化チタンは、非晶質と結晶質のいずれでもよく、これらが混合した物でも良い。結晶質の場合は、アナターゼ型、ルチル型、あるいはそれらが混在したものであってもよい。ただし、高い光触媒活性を有する複合材とするには、アナターゼ型の酸化チタンとするのが好ましい。
【0028】
酸化チタンは、金属をドープしたり、部分的に酸素欠陥構造とすることにより、可視光の吸収で光触媒活性を示すことが知られているが、本発明で光触媒として利用する酸化チタンも、このような可視光応答性を有する酸化チタンであってもよい。
【0029】
光触媒の酸化チタンには、活性化のために、珪素、亜鉛、ジルコニウムおよびアルミニウムの各酸化物の1種もしくは2種以上を含有させることができる。この場合、光触媒の構造は、各々の酸化物と酸化チタンが混在していても良いし、各々の酸化物と酸化チタンが反応して形成された複合酸化物を少なくとも部分的に含有するものでも良い。この際、母体となる酸化チタンの組織は、非晶質でも良いし、結晶質であっても良い。また、含有される金属酸化物や、場合によって生じた複合酸化物についても、その組織は非晶質でも結晶質であっても良い。
【0030】
酸化チタン中の珪素、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウムの各酸化物の含有量は、チタンに対するこれらの金属の合計量の割合 (M/Ti) が 0.1〜50at%の範囲となるようにすることが好ましい。この範囲外では高い光触媒活性が得られないことがある。M/Tiのより好ましい範囲は1〜30at%である。
【0031】
酸化チタンには、その内部および/または表面に、V、Zn、Ru、Rh、Pt、Ag、PdおよびCuのうちの少なくとも1種の金属および/または金属化合物を含有させてドープすることもできる。これらのドープ元素を含有させることにより、光触媒性能をさらに高めることができる。また、光触媒にこれらの元素自体が持つ機能、例えばZn、Ag、Cuでは抗菌性、を付与することができる。ドープ元素の金属化合物としては、例えば、金属の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、硝酸塩、ハロゲン塩等が挙げられる。
【0032】
ガラス繊維を被覆する酸化チタン薄膜の膜厚は、10 nm 〜2.0 μmの範囲が好ましい。膜厚が10 nm 未満では、十分な光触媒活性が得られない。逆に、膜厚が2.0 μmを越えると、厚みむらが多くなって不連続面を形成しやすくなり、膜にクラックが生じたり剥離を起こしやすくなる。また、分解対象物質が汚れの場合は、酸化チタンの膜厚増加に依存して、汚れが多く付着しやすい傾向にある。このため、弱い光量しか期待できない室内などの環境では、分解に長時間を要し、汚れが目立ってしまう。より好ましい膜厚範囲は20 nm 〜0.8 μmである。この範囲では、高い光触媒活性を示し、被膜割れ、剥離などの少ない良好な光触媒複合材となる。
【0033】
本発明の光触媒複合材は、意匠性付与等の目的で着色することも可能である。着色は色ガラスから成る繊維を用いる、顔料を含んだ着色塗料を用いて着色被膜を繊維上に形成させる、酸化チタン薄膜内に着色顔料を含有させるなど、多様な方法で行うことができる。着色塗料を用いる場合、繊維に先に着色被膜を形成してから、その上に酸化チタン薄膜を形成しても良く、逆に先に酸化チタン薄膜を形成してから、その上に着色被膜を形成することもできる。
【0034】
着色塗料に含有させる顔料は、有機顔料も使用可能であるが、有機物は光触媒の酸化力により分解する恐れがあるので、無機顔料を使用することが好ましい。同様の理由で、着色塗料中のバインダーも、アルミナ、シリコーン樹脂、シリカ、酸化チタンなど、難分解性物質もしくはその前駆体を使用することが好ましい。
【0035】
着色被膜の厚みは、使用する顔料の種類やその隠蔽力などによって変わるが、 0.1〜100 μm程度が好ましい。ガラス繊維それ自体は光沢があるが、酸化チタンによる被覆や、着色によって、その光沢が損なわれる場合がある。この場合、所望により、着色被膜の上に光沢のある被膜を形成しても良い。
【0036】
次に本発明に係る光触媒の製造方法について説明する。
本発明の光触媒複合材は、ガラス繊維をヤーンや織布等の繊維集合体に加工する前に、後述する蒸着法等により、一本ずつのフィラメント単位のガラス繊維の表面を酸化チタンからなる光触媒の薄膜で被覆し、その後で、被覆したガラス繊維を繊維集合体に加工することによって製造することもできる。しかし、そうすると、被覆後の加工時の取り扱い中にガラス繊維表面の酸化チタン薄膜が損傷して、脱落する可能性があり、光触媒の連続膜を安定して繊維表面に形成することが困難となる場合がある。
【0037】
そのため、本発明に係る方法では、予めヤーンや織布等の所定の形態の繊維集合体に加工されたガラス繊維を使用し、これに蒸着法により酸化チタンの薄膜を形成する。この工程順の方が、上述した逆の工程順より、簡便で、コスト的にも有利である。
【0038】
ガラスクロス等の繊維集合体に加工された繊維に対して酸化チタンの成膜を実施する場合、繊維交差部、具体的にはヤーンの交差部分やヤーン内部のフィラメントの交差部などの内側は繊維が接触していて、酸化チタンの薄膜が形成されないのではないかという懸念がある。溶液を使用した浸漬処理の場合にはこの懸念はあたっており、湿式法では、例えばガラスクロスの一本ずつの繊維に酸化チタンの連続膜を形成することは容易でない。
【0039】
しかし、本発明で採用する四塩化チタンを用いた蒸着法では、四塩化チタンの蒸気はごくわずかな隙間にも浸透するため、前述したガラスクロスの繊維交差部の内側のように、繊維どうしが接触している個所の内部にも酸化チタンの被膜が形成されるため、クロスに加工した後の一本ずつの繊維が酸化チタンの薄膜で完全に被覆されるようになる。従って、蒸着法では、織布等の繊維集合体に加工した後に酸化チタン薄膜を形成しても、個々の繊維を酸化チタンの連続膜で被覆することができる。
【0040】
蒸着法による酸化チタンの成膜は、第一工程で、水蒸気の存在下、四塩化チタンを含む気体をガラス繊維の集合体に接触させて、各繊維の表面に酸化チタン前駆体の被膜を形成した後、第二工程で焼成を行うことにより実施される。前述したように、四塩化チタンを含む気体は繊維集合体の三次元的な空間の内部まで侵入するので、むらなく連続被膜を形成することができる。原料としては、四塩化チタン以外にも、チタンアルコキシドやその部分加水分解物も使用可能である。しかし、沸点が136.4 ℃と低い四塩化チタンが、成膜が容易で、かつ後述するように成膜中の収縮が小さいため、繊維表面に良好な酸化チタン薄膜の連続被覆を形成できるので、性能面で有利である上、入手性や価格面からも好ましい。
【0041】
四塩化チタンを用いた蒸着では、水蒸気の存在下で四塩化チタンの一部が加水分解を受け、高粘性のチタンオキシクロライド等の酸化チタン前駆体が生成し、この前駆体が繊維表面に付着・堆積する。繊維上に堆積した前駆体は、繊維の予熱による熱で、またはその後の繊維の焼成中の熱で、低粘性化して流動し、ほぼ均一な厚みの酸化チタン前駆体の連続膜となる。その後の焼成中に、大気中の水分による加水分解がさらに進行して塩酸が脱離し、生成した加水分解物の脱水縮合を繰り返しながら、最終的に繊維表面に結晶質酸化チタンの連続膜が形成される。
【0042】
上記成膜過程では、チタンオキシクロライドを主成分とし、有機物を含有しない酸化チタン前駆体の被膜が形成される。そのため、焼成段階での被膜の体積収縮が小さく、クラックや剥離などが実質起こらない。一方、ゾルゲル湿式塗布法や、有機樹脂を含んだ溶液への浸漬による酸化チタンの成膜では、焼成中に有機物が熱分解・飛散するため、酸化チタン薄膜の体積収縮が大きく、クラックや剥離等が起こるので、酸化チタンの連続膜は形成されない。
【0043】
四塩化チタンを含む気体は、アルゴン、窒素などの不活性ガス、あるいは乾燥空気などからなるキャリアーガスを、四塩化チタンの液体を収容した容器に通してバブリングさせ、四塩化チタンを蒸発させることにより調製できる。必要に応じて、容器を加熱して、四塩化チタンの蒸発量を高めることができる。
【0044】
キャリアーガスと四塩化チタンの蒸気との混合ガスを、水蒸気の存在下、蒸着装置内で、基材のガラス繊維集合体と接触させる。水蒸気の導入は、バブリングによって四塩化チタンを蒸発させた後に行うことが好ましい。水蒸気の濃度は、モル比で混合ガスに含まれる四塩化チタン濃度の4倍量以下に維持することが好ましい。4倍量を越えると、蒸着前に気相中で四塩化チタンの加水分解・縮合が不必要に進み、チタン酸化物微粒子が多く発生し、ガラス繊維への接触が不均一になることがある。より好ましくは、水蒸気濃度は、モル比で四塩化チタン濃度の0.05倍量以上1.0 倍量以下である。水蒸気濃度をこの範囲とすることで、光触媒活性により優れた、光触媒複合材を得ることができる。水蒸気は、大気中の水蒸気だけでもよく、或いは水蒸気発生装置から水蒸気を補給してもよい。
【0045】
混合ガスとの接触により繊維集合体の個々のガラス繊維に酸化チタン前駆体が付着・堆積し、この付着・堆積は繊維の交差部の内部でも起こる。その後、酸化チタン前駆体が付着したガラス繊維集合体を焼成すると、膜の平滑化と酸化チタンへの加水分解・脱水縮合および結晶化が起こって、光触媒活性を有する酸化チタンの連続膜が各繊維表面に形成され、本発明の光触媒複合材が得られる。
【0046】
焼成は 100〜1000℃の温度範囲で行うことができるが、好ましい焼成温度は、250 ℃から800 ℃であり、この温度範囲で焼成した酸化チタンは、十分な光触媒活性を発現する。焼成温度が300 ℃から650 ℃であると、酸化チタンは微細なアナターゼ結晶となり、より高活性な光触媒複合材を製造することができる。焼成時間は、温度、薄膜の組成によって異なるが、工業的には120 分以下で行うことが好ましい。
【0047】
焼成は、基本的には大気中など酸素を含んだ雰囲気で行えばよい。通常は大気中の水蒸気で成膜に必要な加水分解は順調に進行するが、必要であれば水蒸気を供給しても良い。
【0048】
基材のガラス繊維集合体は、四塩化チタン含有気体と接触させる前に、予熱することが好ましい。予熱によって、膜厚の均一性がより向上した酸化チタンの連続膜を形成することができる。通常、予熱温度は基材を50℃から500 ℃の範囲とする温度である。50℃より低いと予熱の効果がなく、高すぎるとガラス繊維の強度が低下したり、光触媒活性が低下することもある。好ましい範囲は100 〜300 ℃である。予熱は蒸着装置内で行っても、蒸着装置に導入する前に外部で行ってもよい。
【0049】
この蒸着前の予熱に代えて又は加えて、蒸着後の焼成段階で予熱を行うことでも、膜厚の均一化の効果を得ることができる。焼成段階で予熱を行う場合には、蒸着工程を終えた基材を、焼成前に上記と同じく50〜500 ℃、より好ましくは50〜250 ℃の温度範囲に予熱する。この予熱は、焼成炉内で行うことが簡便であるが、焼成炉とは別の加熱装置で行うことももちろん可能である。
【0050】
酸化チタン連続膜の膜厚は、四塩化チタンの液体を入れた容器の加熱温度、キャリアーガスのバブリング量等により混合ガス中の四塩化チタン濃度を制御するか、および/または蒸着装置内におけるガラス繊維集合体の滞留時間 (即ち、混合ガスとの接触時間) により、所望の厚さに調整することができる。
【0051】
本発明に係る製造法では、第一工程に使用する四塩化チタンを蒸留精製することが好ましい。蒸留精製による四塩化チタンの純度は、99.9%以上が望ましく、99.999%以上がより好適である。蒸留精製し、高純度化した四塩化チタンを用いることで、高活性な光触媒複合材を安定して形成することができる。
【0052】
上述した製造方法では、四塩化チタンが水蒸気などと反応する際に、塩酸、塩素等の酸性ガス、ならびにチタンオキシクロライド、水酸化チタン、酸化チタン等のチタン酸化物や未反応の四塩化チタンを含むチタン化合物が発生する。
【0053】
本発明の好適態様においては、前記製造方法における第一および第二工程の少なくとも一つの工程から発生する酸性ガスおよび/またはチタン化合物を除去・処理する手段を設ける。酸性ガスは、装置の腐食を招くことがあり、また、大気中に放出すると環境に悪影響を及ぼすので除去するのが好ましい。未反応の四塩化チタンやチタン酸化物などは、装置内に不必要にとどまると、酸化チタンの薄膜に付着し、剥離や粉化の原因となったり、また装置内を汚染し製品製造に支障を来すことがある。
【0054】
ここで、酸性ガスの除去・処理手段は、限定されないが、アルカリ液を当該ガスに接触させる洗浄によるものが確実で好ましい。チタン化合物の除去は、水蒸気を供給し、加水分解を起こさせ微粒子としてフィルター除去する方法、吸着剤を充填した処理塔を通して吸着除去する方法などで行うことができる。これらを処理・除去することによって、安全で確実に光触媒複合材を製造することが可能となる。
【0055】
蒸着によるガラス繊維への酸化チタン連続膜の成膜において、四塩化チタンを含有する気体に、珪素、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウムから選ばれた少なくとも1種の元素の化合物の蒸気を混入させることにより、形成された酸化チタン薄膜に酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムの少なくとも一つが含まれる光触媒複合材を製造することができる。前記化合物としては、ハロゲン化物、アルコキシド、ならびにこれらの部分加水分解物が挙げられる。
【0056】
本発明の光触媒複合材は所望の色に着色することが可能である。着色方法は前記の通りであるが、着色塗料を用いる場合は、ガラスクロスなどの繊維集合体に直接塗布しても、酸化チタン連続被膜の上から塗布してもよい。しかし、酸化チタン連続被膜上から塗料を塗布すると、光触媒の活性点がいくらか失われ、活性が低下することがある。そのため活性を重視するなら、予め着色した後、酸化チタンの連続被膜を形成する方が好ましい。着色塗料は、ディップ法、スプレー法等適当な方法で塗布すればよいが、スプレーなどの乾式方法で塗布した方が、着色塗膜を平滑にできるので好ましい。塗布後は、乾燥あるいは必要に応じて熱処理して、塗膜を硬化させればよい。
【0057】
本発明における光触媒複合材は、例えば図1に示すような、連続型の製造装置を用いると、ロール状の繊維集合体などにも対応でき、量産化できるので好ましい。
【0058】
図1に示した製造装置では、ベルトに載せた基材のガラス繊維集合体を噴霧・蒸着装置(2) に搬入する。その前に、基材を予備加熱炉(1) に通過させ、こで予熱した後、噴霧蒸着装置(2) に送っても良い。蒸発装置(5) では、四塩化チタンの液体を入れた容器に不活性ガス等を送ってバブリングし、発生した四塩化チタンとの混合気体を、噴霧・蒸着装置(2) に供給する。その際に、ノズルを介して混合気体をスプレー状にして基材に吹付けることもできる。噴霧・蒸着装置(2) には、水蒸気の導入のために、送気装置(6) から、大気、または水蒸気発生器を組合せて一定の水分を含んだ加湿空気が送り込まれる。装置(2) 内で前記混合気体は大気または加湿空気と混合され、四塩化チタンが部分的に加水分解されながら基材の繊維集合体に接触して、基材表面に付着・堆積する。
【0059】
噴霧蒸着装置から搬出された基材は、別々の温度設定が可能な複数の加熱ゾーンから構成される焼成炉(3) に送り込まれて焼成される。この焼成炉内で基材を焼成前に予熱することができる。焼成後は、ゾーンの温度設定を下げていき、徐冷することもできる。さらに、本装置では、以上の製造工程で発生した酸性ガスおよびチタンオキシクロライド等を吸引し、装置外でこれらを除去・処理する装置(4) を備えている。
【0060】
ただし、前記装置は本発明の複合材を製造するための装置の一例であって、この装置に限定されるものではない。
本発明の光触媒複合材は、酸化チタンのバンドギャップより高いエネルギーの光照射を受けることによって、光触媒作用による環境浄化機能を発現し、多様な有害物質、付着物質などの分解、除去、無害化などに優れた効果を発揮する。
【0061】
この光触媒複合材は、大気あるいは水の浄化、脱臭、抗菌、抗かび、付着汚れの分解、有害物質の分解などの効果を発揮する繊維製品として、幅広く利用できる。
【0062】
本発明の光触媒複合材から作製された環境浄化機能を持つ繊維製品は、例えば、衣類、寝装品、カーテン、テーブルクロスおよびマット、カーペット、壁装材、建築シート、テント、車内内装材、キッチン用品 (例、キッチンカウンター、布巾など) 、風呂用品 (例、浴槽内張り、ユニットバスパネル) といった用途に使用できる。
【0063】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
本発明の光触媒複合材9種類 (試験No. 1 〜9) および比較用の複合材 (試験No.10)を以下の条件で製造した。
【0064】
No.1
厚み約10 mm の高純度シリカウール (繊維径約8.0 μm)を約100 mm角の正方形にカットし、これを試験材とした。
【0065】
予め蒸留精製した四塩化チタン (純度99.9999 質量%) の液体にアルゴンをバブリングし、発生した四塩化チタンを含有する混合ガスを噴霧蒸着装置に誘導した。この装置には同時に H2O/TiCl4 =3 (モル比) になるように水蒸気を含有させた空気を供給した。この装置に試験材を予熱せずに導入し、約300 秒間前記混合ガスと接触させ、蒸着を行った。その後、試験材を焼成炉内の予熱ゾーン内で3分間200 ℃で予熱した後、加熱ゾーンで500 ℃で10分間焼成することによって、本発明の光触媒複合材を作成した。
【0066】
この複合材について、走査型電子顕微鏡 (SEM) による形態観察を行ったところ、繊維フィラメントの表面はクラック、ピンホール、剥離などはなく、酸化チタンの連続膜で被覆されていることが確認された。その被膜の厚みは約300 nmであった。
【0067】
No.2
高純度シリカ繊維からなる綾織りクロス (繊維径約8.0 μm 、クロス厚み0.6 mm、大きさ約100 mm角) を試験材とし、蒸着前の試験材を200 ℃に予熱する以外は試験No.1と同様の方法で、本発明の酸化チタン薄膜による被覆を施したシリカクロスを作成した。この複合材のSEM観察を行ったところ、繊維 (フィラメント) の表面は、剥離、ピンホールなどのない、厚み約400 nmの酸化チタンの連続膜で被覆されていることが確認された。
【0068】
No.3
混合ガスとの接触時間を600 秒とする以外は試験No.2と同様の方法により、本発明の酸化チタン薄膜による被覆を施したシリカクロスを作成した。この複合材のSEM観察を行ったところ、繊維 (フィラメント) の表面は、剥離、ピンホールなどが見られず、厚み約650 nmの酸化チタンの連続膜で被覆されていることが確認された。
【0069】
No.4
噴霧蒸着室に、四塩化チタン蒸気に加えて、四塩化珪素蒸気を導入する以外は試験No.2と同様の方法で、本発明の酸化珪素を含んだ酸化チタン薄膜による被覆を施したシリカクロスを作成した。酸化珪素の含有量は、SIMS分析により金属原子比(Si/Ti) で約25%であった。繊維 (フィラメント) 表面に形成された被膜は、剥離やピンホールのない厚み約400 nmの連続膜であった。
【0070】
No.5
Eガラス繊維からなる平織りのクロス (クロス厚み0.18 mm 、打ち込み密度縦42本/インチ、横32本/インチ、大きさ約100 mm角) を試験材とし、焼成温度を450 ℃とする以外、試験No.1と同様の方法で、本発明の酸化チタン薄膜による被覆を施したガラスクロスを作成した。SEM観察による被膜の形態や厚みはNo.1と同様であった。
【0071】
No.6
Tガラス繊維からなる平織りクロス (クロス厚み0.6 mm、大きさ約100 mm角) を試験材とし、焼成温度を450 ℃とする以外、試験No.2と同様の方法で、本発明の酸化チタン薄膜による被覆を施したガラスクロスを作成した。SEM観察により被膜は連続膜であり、その厚みは350 nmであった。
【0072】
No.7
Eガラス繊維からなる糸状のヤーン (繊維径約8μm 、撚りあり、長さ20m) を試験材とし、試験No.1に記載の噴霧蒸着装置に導入し、蒸着前の試験材の予熱を200 ℃とし、接触蒸着時間約100 秒、焼成炉内での予熱1分間200 ℃、焼成5分間400 ℃とし、本発明の光触媒複合材を得た。この複合材をSEM 観察を行ったところ、ヤーンを構成する繊維 (フィラメント) の表面には剥離、ピンホールが見られず、厚み約250nm の酸化チタンの連続膜による被覆が確認された。
【0073】
No.8
純度<99%以下のため、やや黄色に着色した、未蒸留の四塩化チタンを用いる以外、試験No.6と同様の方法で酸化チタン薄膜による被覆を施したT−ガラスクロスを作成した。得られた複合材の繊維 (フィラメント) 表面には400 nm程度の厚みの酸化チタン膜が観察され、SEM観察によれば連続膜であった。
【0074】
No.9
H2O/TiCl4 =0.5(モル比) とする以外は、実施例1、試験No.2と同様の方法で、本発明の酸化チタン被覆を施したシリカクロスを作成した。SEM 観察の結果、繊維の表面にはクラック、ピンホール、剥離などはなく、厚み約400nm の酸化チタンの連続膜で被覆されていた。アセトアルデヒドの分解率は98%であった。
【0076】
No.10 ( 欠番 )
No.11
焼成温度を200 ℃に下げた以外は、試験No.2と同様の方法で、酸化チタン薄膜による被覆を施したシリカクロスを作成した。得られた複合材の繊維 (フィラメント) 表面には酸化チタン膜が観察され、SEM観察では連続膜であった。しかし、この酸化チタンは、以上のものとは異なり、ほとんど結晶化していなかった。
【0077】
No.12 :湿式法 (比較例)
試験No.1と同じシリカウールを試験材とし、これをチタンイソプロキシド10 gと有機樹脂10 gとの混合物を、エタノール200 g 、硝酸1g 、H2O 1.5 g からなる混合液に溶解した溶液に30秒間浸漬した。この試験材を60℃で1時間乾燥した後、450 ℃で5時間焼成し、シリカウールの繊維表面に酸化チタン薄膜を形成した。
【0078】
この複合材のSEM観察を行ったところ、繊維の表面には、剥離した面や被膜が重なり合ったような面、粉化した酸化チタンが付着した面、といった不連続面が多数観測され、連続膜ではなかった。このような被膜の粉化や剥離により、膜の耐久性が低下し、特にこすれなどが起こり易い使用状況下では、光触媒活性が急速に失われることが予測される。
【0079】
上記の本発明の光触媒複合材 (試験No.1〜11) および比較用のための複合材 (試験No.12)について、下記の要領でアセトアルデヒドの分解試験を行ってその光触媒性能を評価した。
【0080】
アセトアルデヒド分解試験
各複合材を約50 mm 角の正方形に切り出した評価用サンプルを、石英製反応セルに入れて、閉鎖循環ラインに接続した (合計内体積約3.0 L)。なお、試験No.7の試験材 (ヤーン) は、内面積50×50mmのガラス皿に入れ、試験に供した。空気で稀釈したアセトアルデヒド (約240 ppm)を系内に導入し、循環させながら250 W 高圧水銀から、UVフィルター (東芝製UV-31)を通して光照射を行った。このとき評価用サンプルの表面の366 nmにおける紫外線強度は0.8 mW/cm2であった。光照射を行いながら、アセトアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフを用いて定量した。光触媒性能は1時間後のアセトアルデヒドの除去率から評価した。
【0081】
製造条件およびSEMによる膜の連続性の観察結果とともに、上記試験結果を表1に示す。
また、試験No.2で得られた光触媒複合材のSEM写真を図2に、試験No.12 の湿式法で得られた光触媒複合材のSEM写真を図3に示す。図2から、本発明に従って蒸着法により製造された光触媒複合材では、独立した繊維の一本一本の表面が確認できる状態で各繊維 (フィラメント) の表面に連続膜が形成されていることが明らかにみてとれる。本発明に従った他の光触媒複合材についても、これと同様の連続膜が形成されていた。なお、図2のSEM写真では、繊維端部に不可避的な乱れが見られるが、連続膜形成の確認のために繊維端部をわざわざ拡大したものであり、この乱れは連続膜を否定するものではない。端部以外は完全な連続膜になっている。一方、湿式法により形成した被膜は、図3からわかるように、被膜の部分的な剥がれがあちこちに見られ、連続膜になっていない。
【0082】
【表1】
Figure 0003945255
【0083】
表1に示すように、蒸留精製した四塩化チタンを用いて繊維表面の酸化チタンの連続膜を形成した本発明の光触媒複合材によれば、いずれもアセトアルデヒドの分解率は 80 %以上と高いものも得られる。特に、四塩化チタンとの混合空気との接触時間を長くして膜厚を厚くしたり、シリカを酸化チタン中に含有させることで、活性は向上した。
【0084】
四塩化チタンを蒸留精製しなかった試験 No.では、連続膜は形成できたが、四塩化チタンに含まれていた不純物が酸化チタンにそのまま残留したため、光触媒活性が低下した。また、焼成温度が低い試験No.11 では、連続膜は形成できたが、非晶質性の高い被膜となったため、光触媒活性は低下した。しかし、この程度の光触媒活性でも、用途によっては有効である。
【0085】
ヤーンに酸化チタンの連続膜を被覆したNo.7では、分解率は低かった。分解反応ではヤーンを5cm角の皿に凝集させて光を照射したが、空隙部分が多く漏光し、クロスやウールに比べ光吸収量が少なかったからである。しかし、この繊維集合体を用いてさらにクロス等に加工すれば同等の活性が得られると考えられる。
【0086】
一方、比較例の湿式法により形成した試験No.12 の光触媒複合材では、繊維表面に形成された酸化チタン被膜が、図3に示すように不連続であるため、最初から光触媒活性が低い上、被膜の耐久性が低く、使用中にさらに剥がれていくことが予想されるので、光触媒活性は使用中に急激に低下するものと推測される。
【0087】
[実施例2]
本発明の光触媒複合材 (試験No.13 および14) を以下の条件で作製した。
No.13
試験No.6で用いたのと同一のT−ガラス繊維よりなるガラスクロスに、市販の無機顔料を含んだセラミック系塗料 (薄い青色) 、次いでセラミック系の光沢塗料をスプレー塗布した。その後400 ℃で30分間熱処理し、着色被膜を硬化させた。その後、焼成温度を450 ℃とする以外は、試験No.2と同様の方法で酸化チタンの連続膜による被覆を形成し、本発明の光沢のある青色に着色した光触媒複合材を作成した。
【0088】
No.14
試験No.6と同一の方法で、T−ガラス繊維よりなるガラスクロスに酸化チタン連続膜を被覆した複合材を作成した。その後、試験No.13 で使用した無機顔料を含んだセラミック系塗料をスプレー塗布した。室温で24時間乾燥し、着色被膜を硬化させることによって、本発明の青色に着色した光触媒複合材を作成した。
【0089】
上記の本発明の光触媒複合材 (No.13 および14) から光触媒活性評価用のサンプルを切り出し、実施例1と同様の方法でアセトアルデヒドの分解試験を行い、その触媒性能を評価した。
【0090】
その結果、アセトアルデヒドの分解率は、試験No.13 では65%、試験No.14 では37%であった。このことから、本発明の着色した光触媒複合材も、光触媒機能を有することが確認された。なお、No.14 の分解率がNo.13 に比べて低いのは、酸化チタン連続被膜の触媒活性点が、その上に形成した着色塗膜によって覆われたためである。ただし、着色塗膜の硬化条件、その膜厚等を適正化する事によって、光触媒性能は十分維持できる。
【0091】
なお、実施例1および2における試験No.1〜7 および 9〜14の製造工程において、噴霧蒸着装置と焼成炉から酸性ガスおよびチタン化合物が発生したので、吸引型の除去・処理装置を接続してこれらを処理した。処理装置内では、アルカリ液で前記酸性ガスとチタン化合物を中和・洗浄した。チタン化合物は、液中で沈殿物となったので、これをデカンデーション後、除去した。
【0092】
【発明の効果】
本発明の光触媒複合材は、ガラス繊維から構成された繊維集合体において、そのフィラメント単位の繊維表面を、バインダーを含まない実質的に酸化チタンからなる連続膜で被覆した光触媒複合材である。この複合材の光触媒の薄膜は、実質剥離や欠落がなく、膜強度に優れているいるので、繊維タイプの光触媒としての耐久性が良好である。この光触媒複合材は、酸化チタンのバンドギャップより高いエネルギーの光が照射されると、様々な有害物質、付着物質を分解・除去する優れた光触媒作用を長期間にわたって発揮することができ、本発明の方法により容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光触媒複合材の製造方法に使用できる装置構成の概要を示す説明図である。
【図2】実施例で製造された本発明に係る光触媒複合材のSEM写真 (上段が500 倍、下段が2000倍の倍率) であり、酸化チタン薄膜が連続膜であることを示す。
【図3】湿式法で製造された比較用の光触媒複合材のSEM写真 (上段が500 倍、下段が2000倍の倍率) であり、酸化チタン薄膜が連続膜になっていないことを示す。

Claims (7)

  1. 無機繊維から構成される繊維集合体から成り、該繊維集合体の各繊維の表面が、酸化チタン系光触媒の連続膜で被覆されていることを特徴とする光触媒複合材の製造方法であって、無機繊維から構成される繊維集合体を50〜200℃の温度に予熱した後に四塩化チタンを含む気体と水蒸気の存在下で接触させて、酸化チタン前駆体の被膜を繊維集合体の各繊維表面に形成する第一工程、及びこの繊維集合体を300〜650℃で焼成して、各繊維の表面に酸化チタン系光触媒の連続膜を形成する第二工程を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記四塩化チタンが蒸留精製されているものである請求項1記載の方法。
  3. 第一工程において、四塩化チタンを含む気体中に含まれる水蒸気の濃度が、モル比で四塩化チタン濃度の4倍以下である請求項1又は2記載の方法。
  4. 第一工程の前及び/又は第二工程から発生する酸性ガス及び/又はチタン化合物を除去する工程をさらに含む請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  5. 第二工程の焼成温度が400〜500℃である請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  6. 繊維集合体が着色顔料で第一工程の前に予め着色されている請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  7. 第二工程の後に、無機顔料で繊維集合体を着色する工程をさらに含む請求項1〜のいずれかに記載の方法。
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