JP2005169761A - 酸化物膜付き基材、および酸化錫膜付き基材の製造方法 - Google Patents

酸化物膜付き基材、および酸化錫膜付き基材の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005169761A
JP2005169761A JP2003411354A JP2003411354A JP2005169761A JP 2005169761 A JP2005169761 A JP 2005169761A JP 2003411354 A JP2003411354 A JP 2003411354A JP 2003411354 A JP2003411354 A JP 2003411354A JP 2005169761 A JP2005169761 A JP 2005169761A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oxide film
tin oxide
film
base material
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003411354A
Other languages
English (en)
Inventor
Akira Fujisawa
章 藤沢
Kazutaka Kamiya
和孝 神谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Sheet Glass Co Ltd
Original Assignee
Nippon Sheet Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Sheet Glass Co Ltd filed Critical Nippon Sheet Glass Co Ltd
Priority to JP2003411354A priority Critical patent/JP2005169761A/ja
Publication of JP2005169761A publication Critical patent/JP2005169761A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】 超撥水性を得るのに好ましい形状効果を有する酸化錫膜付き基材、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 基材と、該基材上に酸化物よりなる皮膜が形成されており、該皮膜の表面には、多数の針状突起が前記皮膜と一体に形成されていることを特徴とする酸化物膜付き基材である。
基材上に酸化錫膜を形成する酸化錫膜付き基材の製造方法において、前記酸化錫膜は、錫塩化物と水に、さらに有機溶剤を含む原料を熱分解して形成したことを特徴とする酸化錫膜付き基材の製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、針状の突起を有する酸化錫膜付き基材、および酸化錫膜付き基材の製造方法に関する。
従来、表面に撥水性の皮膜が形成された撥水性基材については、多くの提案がなされている。また、基材の表面を凹凸形状として形状効果を利用し、その表面に撥水性の皮膜を設けることによって、表面にほとんど水滴の留まらないほどの超撥水性を示す基材が得られることが知られている。
例えば、特開平7−81979号公報には、酸化錫に代表される透明導電膜上に撥水性の皮膜を設けた防汚性ガラス物品が開示されている。
また、特開平11−286784号公報には、金属アルコキシドの重縮合物、金属酸化物微粒子、および、フルオロアルキル基を有するシラン化合物を含む処理液をガラス表面に塗布し乾燥させることによって、表面に凹凸を有するガラスを提供する方法が開示されている。
さらに、特開2001−17907号公報には、アルミニウム化合物の含まれる溶液を基体に塗布して皮膜を形成し、これを温水に浸漬することによって、表面に凹凸のある基材を提供する方法が開示されている。
また、基材の表面に形成された凹凸形状を有する金属酸化物膜については、多くの提案がなされている。
特開2002−252361号公報には、ジメチルジクロライド、酸素、水蒸気を含む原料ガスを基材に供給し、CVD法により、表面の凸部の高さ50〜350nmの個数が70%以上であり、高さ/幅の比0.25〜1.05の個数が90%以上である透明導電膜の形成方法が開示されている。
WO 03/080530 A1パンフレットには、「ガラス基板の表面に、互いに分離した金属酸化物の粒子の群と、シリカを主成分とする薄膜とがこの順で形成され、この薄膜上に、さらに透明導電膜が形成されている」ガラス基板が示され、この金属酸化物の粒子の外形がドーム状であるとしている。
特開平7−81979号公報 特開平11−286784号公報 特開2001−17907号公報 特開2002−252361号公報 WO 03/080530 A1パンフレット
しかし、前述した特開平7−81979号公報に開示されている物品は、水滴が表面に付着しないほどの超撥水性を示すものではない。また、前述の特開平11−286784号公報および特開2001−17907号公報に開示されている方法は、ガラス等の基体と凹凸を形成する粒子とが、直接固着していないで、高分子薄膜等を介して接着されていて、高分子薄膜等の耐久性が十分でないために、表面の凹凸形状の変化が大きく、安定的していない、という問題がある。
また、前述した特開2002−252361号公報や、WO 03/080530 A1パンフレットに開示されている技術では、表面の形状効果が小さいので、この表面に撥水性の皮膜を形成しても、超撥水性を示す基材とはならない。
本発明の目的は、超撥水性を得るのに好ましい形状効果を有する酸化物膜付き基材、および酸化錫膜付き基材の製造方法の提供することにある。
超撥水性を得るのに好ましい形状効果を有する皮膜を得るために、本発明者が鋭意検討した結果、熱分解法による酸化錫膜を形成する方法において、原料ガスを工夫することによって、形状効果に優れた酸化錫膜が得られること見いだした。すなわち、酸化錫膜を形成する方法において、原料ガス中に錫塩化物および水に、さらに有機溶剤を加えることによって、酸化錫膜が形成において基材表面上に形成された結晶が優先的に成長して突起となり、それが優先的に成長する結果、針状突起となることを見いだしたのである。
また、基材上に多数の針状突起一体に形成されている酸化物よりなる皮膜であれば、超撥水性を得るのに好ましい形状効果を発揮する。
すなわち、本発明の第1形態である酸化物膜付き基材は、請求項1に記載の発明として、
基材と、該基材上に酸化物よりなる皮膜が形成されており、該皮膜の表面には、多数の針状突起が前記皮膜と一体に形成されていることを特徴とする酸化物膜付き基材である。
請求項2に記載の発明として、
前記酸化物が酸化錫である請求項1記載の酸化物膜付き基材である。
請求項3に記載の発明として、
前記針状突起の少なくとも一部の突起が、前記基材表面の略法線方向に突出している請求項1または2に記載の酸化物膜付き基材である。
なお、多数形成されている針状突起のうち、少なくとも半分以上の突起が前記基材表面の略法線方向に突出していることが好ましい。さらに、前記針状突起のうち、70%以上の突起が前記基材表面の略法線方向に突出していることが、より好ましい。
請求項4に記載の発明として、
前記皮膜の表面に、さらに撥水性皮膜が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物膜付き基材である。
本発明の第2形態である酸化錫膜付き基材の製造方法は、請求項5に記載の発明として、
基材上に酸化錫膜を形成する酸化錫膜付き基材の製造方法において、
前記酸化錫膜は、錫塩化物と水に、さらに有機溶剤を含む原料を熱分解して形成したことを特徴とする酸化錫膜付き基材の製造方法である。
請求項6に記載の発明として、
前記酸化錫膜は、さらに塩化水素を含む原料とする熱分解法により形成した請求項5に記載の酸化錫膜付き基材の製造方法である。
請求項7に記載の発明として、
前記有機溶剤が、Cn2n+1OHで表されるアルコールであって、n≧3である請求項5に記載の酸化錫膜付き基材の製造方法である。
請求項8に記載の発明として、
前記有機溶剤が、芳香族炭化水素である請求項5に記載の酸化錫膜付き基材の製造方法である。
請求項9に記載の発明として、
前記酸化錫膜の表面に、さらに撥水性皮膜を形成した請求項5〜8いずれかに1項に記載の酸化錫膜付き基材の製造方法である。
なお、本発明における針状突起は、そのアスペクト比が少なくとも2であると定義する。その針状突起の少なくとも一部の突起は、アスペクト比が少なくとも4であり、高さが少なくとも50nmであることが好ましい。
針状突起のアスペクト比が4未満の場合、あるいは、針状突起の高さが50nm未満の場合には、その表面に撥水皮膜を形成しても、水滴が窪みの中に浸入しやすくなる。このため、水の静的接触角が150°以上であるような超撥水性能までは得られない虞がある。
なお、本明細書において、針状突起のアスペクト比とは、以下のように定義するものとする。図5に示したように、まず、針状突起部分の長さLは、連続膜部分31と針状突起部分32の境界から針状突起部分の先端までと定義する。さらに、この長さ方向に直交し、針状突起部分の1/2長さにおける幅を、針状突起部分の幅Wと定義する。針状突起のアスペクト比は、長さL/幅Wと定義する。
本明細書において、基材表面の略法線方向とは、針状突起部分の長さL方向と基材表面の法線方向nとのなす角度θが、45°以内であることと定義する(図5参照)。
本明細書において、針状突起の高さHとは、以下のように定義する(図5参照)。
H=L×cosθ
本発明による酸化物膜付き基材は、多数の針状突起を有する皮膜が基材上に形成されている。また、その針状突起の少なくとも一部は、基材表面の略法線方向に突出しているので、形状効果を有している。この針状突起を有する皮膜の表面に、さらに撥水性皮膜を形成すると、形状効果と相まって、超撥水性を示すようになる、という効果を奏する。
また、酸化物膜は、導電性を有する酸化錫膜とすることができる。水がほとんど付着しない超撥水膜とした場合でも、水蒸気が凝結して発生する曇りなどは防ぐことができない。しかし、通電加熱することで、曇りの原因となる小さな水滴の付着も防ぐことができる。
また、酸化錫膜は導電性を有しているので、基材の帯電を防ぎ、埃等の付着も防止できる。したがって、汚れによって超撥水性が失われることを防止できる。
本発明の製造方法で得られる酸化錫膜付き基材は、熱分解法によって酸化錫膜が形成されているので、基材との密着性に優れている。また、針状突起は、酸化錫粒子が結晶性を有し、緻密に成長し形成されているので、針状という脆い形状にもかかわらず、耐摩耗性も有している。
また、CVD法に代表される熱分解法は、緻密な皮膜を大面積に均一に形成するのに有利な成膜法であり、この膜を耐摩耗性などの耐久性に優れたものとすることができる。さらに、大面積にわたり均一な膜付き基材や超撥水膜を得ることが可能となる。
また、熱分解法として、原料を霧状にして基板に吹き付けるミスト法でもよい。
本発明の製造方法において、錫原料には、無機塩化物である四塩化錫を用いるのが好ましい。酸化錫膜のCVD原料としては、一般的な有機錫化合物であるジメチルスズジクロライドまたはモノブチルスズトリクロライドではなく、より反応性の高い四塩化錫を用いることが好ましい。
さらに、酸化剤として水を用いると同時に、有機溶剤を用いると、気相中の四塩化錫と水の加水分解反応および基板表面上の結晶成長が制御されることで、皮膜が基材表面の面内方向へ成長するより垂直方向に選択的に成長することが見いだされた。
この結果、酸化錫膜は、基材表面上に形成された結晶が優先的に成長する核となり、しかも、基材表面の略法線方向に成長しやすい傾向を持つため、針状あるいは錐状の突起となる。
このため、この針状突起を有する皮膜が形成される。さらに、その表面の形状効果が顕著であるという特徴を有する。
本発明の製造方法において、特徴的に用いられる有機溶剤としては、アルコールである場合、Cn2n+1OHで表され、n≧3であるアルコールが好ましく用いられる。具体的には、プロピルアルコール(C37OH)、ブチルアルコール(C49OH)などが好適である。なお、この場合のアルコールは、常温で液体であることが好ましい。常温で液体のアルコールであれば、CVD法において、アルコールを原料ガスとして供給することが容易となる。
有機溶剤が、芳香族炭化水素である場合、トルエン、キシレンなどが好ましく用いられる。
また、有機溶剤と同時に塩化水素を混合してもかまわない。有機溶剤と塩化水素を混合すると、選択的な成長を助長することが見いだされた。
本発明において、錫塩化物を原料とする熱分解法は、錫塩化物や酸化剤などの原料溶液をミストにして、加熱した基板に供給するスプレー法であってもかまわないが、錫塩化物や酸化剤などの原料をガスにして、加熱した基板に供給する熱CVD法が、皮膜の均一性を高めるために好ましい。
また、フロート法によるガラス板の製造工程において、熔融状態のガラスリボンを板状に成形するフロートバス内で行うCVD法(以下、「オンラインCVD法」と称する)を用いれば、原料ガスの熱分解反応に必要なエネルギーをガラスリボンから得られるので、ガラス基板の製造に必要なトータルエネルギーコストを抑制できる。さらに、オンラインCVD法は、ガラスリボンの表面温度が560〜750℃の範囲と高温となり、オンラインCVD法以外の熱分解法における成膜速度より、高速で成膜することができる。このため、オンラインCVD法は、工業的な大量生産に適した方法であるといえる。
本発明における基材としては、耐熱性を有する材料であれば、特に限定されない。例えば、ガラスやアルミナなどの透明基材、金属材料、セラミックスなどの不透明基材が挙げられる。
また、基材にソーダライムガラス板を使った場合、基板からのアルカリ成分の酸化錫膜への拡散を抑制するために、シリカを主成分とする薄膜を形成してもよい。
この薄膜の平均厚さは、アルカリバリア機能を担保するために、この薄膜の平均厚さは、10nm以上であることが好ましい。
この薄膜をCVD法により成形する場合は、その原料としてモノシラン、ジシラン、トリシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、1,2-ジメチルシラン、1,1,2-トリメチルジシラン、1,1,2,2-テトラメチルジシラン、テトラメチルオルソシリケートまたはテトラエチルオルソシリケートを利用することができる。
また、この場合の酸化原料としては、酸素、水蒸気、乾燥空気、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素またはオゾンなどが挙げられる。なお、シランを使用した場合にガラス表面に到達するまでにシランの反応を防止する目的で、エチレン、アセチレンまたはトルエンなどの不飽和炭化水素ガスを併用してもかまわない。
本発明において、基材表面に撥水性を付与するために、針状突起を有する皮膜上に、フルオロアルキル基およびアルキル基から選ばれた少なくとも一方の基を含むシラン化合物を主成分とする有機皮膜を形成することが好ましい。アルキル基としては、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれた少なくと一種であることが好ましい。
フルオロアルキル基を含むシラン化合物は、例えば、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2SiCl3、CF3(CF2)5(CH2)2SiCl3、等が挙げられる。これらは、単独で、または複数を組み合わせて使用することができる。特に、反応性と撥水性の高い、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン CF3(CF2)7(CH2)2SiCl3、またはこれらの混合物が好ましい。
本発明において、撥水性の評価は、水の接触角にて行った。測定は、評価対象の表面に、2mgの水滴を滴下して水の接触角を測定した。ここで、水の接触角が、少なくとも140°以上であることが好ましく、特に150°以上の超撥水性であることが、さらに好ましい。
本発明において、基材表面に撥水性を付与する方法としては、撥水性皮膜形成材料を含有する溶液を、凹凸膜が形成された基材の上に塗布して形成するのがよい。
塗布方法としては、フローコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、バーコーティング法、浸漬吸着法などが挙げられる。これらの中で、フローコーティング法、またはスプレーコーティング法が好ましい。
撥水性皮膜を強固に付着するために、プライマー皮膜を形成してもよい。なお、プライマー皮膜の形成によって、既に形成されている表面の凹凸の形状が影響を受けるので、特にその厚さは必要最小限に留めることが好ましい。
以下、実施例により、この発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるるものではない。
先ず、本実施例において、評価に使用する測定方法を説明する。
(表面観察)
電解放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM、日立製作所製、S−4500、加速電圧:10kV、照射電流:10μA)を用いて、試料の表面形状を観察した。
(水の接触角)
接触角計(協和界面科学社製、CA−DT)を用い、2mgの質量の蒸留水の水滴を、評価対象の水平な表面に滴下して、静的接触角を測定した。
(実施例1)
150×150mmに切断した厚さ1mmのアルミノシリケートガラス板を、メッシュベルトに載せて加熱炉を通過させ、約630℃にまで加熱した。この加熱したガラス板をさらに搬送しながら、搬送路上方に設置したコータから、塩化第二錫(蒸気)、水蒸気、トルエンおよび窒素からなる混合ガスを供給し、ガラス基板上に酸化物として酸化錫(SnO2)からなる皮膜を形成した。コータとガラス板の間隔を10mmにし、さらに排気部の横に窒素ガスをカーテン状に供給して、透明導電膜の成膜中にコータ内部に外気が混入しないようにした。
次に、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン CF3(CF2)7(CH2)2SiCl3 2gを、デカメチルシクロペンタシロキサン 98gに撹拌しながら添加して撥水処理剤溶液を得た。この処理液を、前記工程で得た皮膜付き基板の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布した。1分間静置した後、エタノールで表面を洗い流し、自然乾燥させて、撥水処理したガラス板を得た。
得られた撥水処理ガラスの水の接触角は151.5°であり、良好な超撥水性を示した。
また、この酸化錫膜は、基板上に直接形成し成長させているので、基板との密着性にも優れている。例えば、100gの荷重で乾布による摩耗を行っても、接触角の低下は認められず、表面に触れただけで超撥水性が失われてしまうような脆い膜ではなかった。
この実施例1による酸化錫膜付き基材の表面の観察結果を図1に示す。これは、上述した走査電子顕微鏡により、基材の表面を俯瞰し撮影した写真である。
図1から分かるように、ガラス基板表面に形成された酸化錫膜は、針状突起が多数形成されていることが分かる。また、この針状突起は、おおむね基板の法線方向に成長していることが分かる。
また、本発明の酸化物膜付き基材における特徴的形状である針状突起は、皮膜の表面に隙間なく成長していることが分かる。
さらに、この酸化錫膜付き基材の断面を撮影したSEM写真を図2に示す。また、この写真の断面における様子を模式的に表したのが、図3である。図2および図3から分かるように、酸化錫膜3は、基板2上に形成され、この酸化錫膜3は、連続膜部分31と針状突起部分32に分かれている。
この連続膜部分31は、基板2上に一体的に形成されており、十分な密着力を有している。この酸化錫膜が、基板の法線方向に優先的に成長することから、針状突起部分32が形成されるようになる。針状突起部分の長さL方向と基材表面の法線方向nとのなす角度θは、図3の場合最大で約18°であった。また、針状突起部分の長さLは700nm程度であり、高さHもほぼ同じ程度であった。
(実施例2)
実施例1において、混合ガスを塩化第二錫(蒸気)、水蒸気、ブタノールおよび窒素からなるものに代えた以外は、同様にして、ガラス上に酸化物として酸化錫(SnO2)からなる薄膜を形成した。
次に、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3 0.05gを、エタノール 97.95gに撹拌しながら添加し、さらに、濃塩酸(塩酸濃度36%) 2gを添加して撥水処理剤溶液を得た。この処理液を、前記の工程で得た凹凸膜付を基材の表面上に、相対湿度30%、室温下でフローコート法にて塗布した。自然乾燥させて、撥水処理ガラス板を得た。
得られた撥水処理ガラスの水の接触角は152.0°であり、良好な超撥水性を示した。
また、この酸化錫膜は、100gの荷重で乾布による摩耗を行っても、接触角の低下は認められず、基板との密着性や膜強度に優れていた。
(実施例3)
実施例1において、混合ガスを塩化第二錫(蒸気)、水蒸気、メタノール、塩化水素および窒素からなるものに代えた以外は、同様にして、ガラス上に酸化錫(SnO2)からなる薄膜を形成した。
次に、実施例1と同様の方法で、撥水処理ガラス板を得た。
得られた撥水処理ガラスの水の接触角は150.1°であり、良好な超撥水性を示した。
また、この酸化錫膜は、100gの荷重で乾布による摩耗を行っても、接触角の低下は認められず、基板との密着性や膜強度に優れていた。
(比較例)
実施例1において、混合ガスを塩化第二錫(蒸気)、水蒸気、塩化水素および窒素からなるからなるものに代えた以外は、同様にして、ガラス上に酸化物として酸化錫(SnO2)からなる薄膜を形成した。この比較例のSEM観察結果を図4に示す。
次に、実施例1と同様の方法で、撥水処理ガラス板を得た。
得られた撥水処理ガラスの水の接触角は116.9°であり、超撥水性能は示さなかった。
上述した実施例および比較例の結果から、原料ガス中に錫塩化物および水に、さらにトルエン、ブチルアルコールなどの有機溶剤またはメチルアルコールと塩化水素を加えた成膜によって、針状突起の表面形状を有する酸化錫皮膜が形成され、この皮膜上に撥水処理を行うことで、超撥水性能を示すガラスが得られることが示された。
上述した実施例および比較例で得られた酸化錫膜の断面形状をSEMで撮影し、撮影時の伏角を考慮して、針状突起のアスペクト比および突起の高さ、さらに基材表面の法線とのなす角度を、実施例1に述べたようにして求めた。
その結果、実施例については図1で示すような針状突起が認められた。この針状突起は、アスペクト比が少なくとも4で、高さが少なくとも50nmであり、基材表面の法線とのなす角度が45°以内であることが示された。
これに対して、比較例で得られた酸化錫膜には、針状突起は全く認められなかった。
本発明による酸化物膜付き基材は、表面の形状効果を利用した超撥水性や超親水性材料の基材として有用である。さらに、酸化物を酸化錫で構成すると、導電性も有する超撥水性や超親水性材料の基材を得ることが可能になる。
特に、本発明による酸化物膜付き基材は、超撥水性材料の基材として有用であり、水滴が付着しない窓ガラスや鏡、またカメラレンズや太陽電池等の保護カバーなど、広範な用途に使用できる基材を提供できる。また、酸化錫で構成した酸化物膜付き基材は、導電性があるので、埃等が付着しにくい基材を提供できる。
また、導電性を有する酸化錫膜に通電加熱することで、曇りの原因となる小さな水滴の付着も防ぐことができる防曇基材を構成することもできる。
実施例1による酸化錫膜を俯瞰したSEM写真である。 実施例1による酸化錫膜の断面写真である。 実施例1による酸化錫膜の断面を模式的に表した図である。 比較例による酸化錫膜をを俯瞰したSEM写真である。 本発明における針状突起の形状の定義を模式的に説明する図である。
符号の説明
1:酸化物膜付き機材
2:ガラス基板
3:酸化錫膜
31:連続膜部分
32:針状突起部分
n:基板の法線方向
θ:基板の法線方向と針状突起のなす角度

Claims (9)

  1. 基材と、該基材上に酸化物よりなる皮膜が形成されており、該皮膜の表面には、多数の針状突起が前記皮膜と一体に形成されていることを特徴とする酸化物膜付き基材。
  2. 前記酸化物が酸化錫である請求項1記載の酸化物膜付き基材。
  3. 前記針状突起の少なくとも一部の突起が、前記基材表面の略法線方向に突出している請求項1または2に記載の酸化物膜付き基材。
  4. 前記皮膜の表面に、さらに撥水性皮膜が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物膜付き基材。
  5. 基材上に酸化錫膜を形成する酸化錫膜付き基材の製造方法において、
    前記酸化錫膜は、錫塩化物と水に、さらに有機溶剤を含む原料を熱分解して形成したことを特徴とする酸化錫膜付き基材の製造方法。
  6. 前記酸化錫膜は、さらに塩化水素を含む原料とする熱分解法により形成した請求項5に記載の酸化錫膜付き基材の製造方法。
  7. 前記有機溶剤が、Cn2n+1OHで表されるアルコールであって、n≧3である請求項5に記載の酸化錫膜付き基材の製造方法。
  8. 前記有機溶剤が、芳香族炭化水素である請求項5に記載の酸化錫膜付き基材の製造方法。
  9. 前記酸化錫膜の表面に、さらに撥水性皮膜を形成した請求項5〜8いずれかに1項に記載の酸化錫膜付き基材の製造方法。
JP2003411354A 2003-12-10 2003-12-10 酸化物膜付き基材、および酸化錫膜付き基材の製造方法 Pending JP2005169761A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003411354A JP2005169761A (ja) 2003-12-10 2003-12-10 酸化物膜付き基材、および酸化錫膜付き基材の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003411354A JP2005169761A (ja) 2003-12-10 2003-12-10 酸化物膜付き基材、および酸化錫膜付き基材の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005169761A true JP2005169761A (ja) 2005-06-30

Family

ID=34732115

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003411354A Pending JP2005169761A (ja) 2003-12-10 2003-12-10 酸化物膜付き基材、および酸化錫膜付き基材の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005169761A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008072707A1 (ja) 2006-12-15 2008-06-19 Asahi Glass Company, Limited 撥水性表面を有する物品
WO2009075040A1 (en) * 2007-12-12 2009-06-18 Kazufumi Ogawa Solar energy utilization device and method for manufacturing the same
WO2009084119A1 (en) * 2007-12-27 2009-07-09 Kazufumi Ogawa Solar energy utilizing apparatus and method of manufacturing the same
JP2011032159A (ja) * 2009-07-29 2011-02-17 Korea Inst Of Machinery & Materials 機能性表面の製造方法
JP2012219004A (ja) * 2011-04-14 2012-11-12 Kagawa Univ 耐摩耗性超撥水撥油防汚性ガラスとその製造方法並びにそれらを用いたガラス窓、太陽エネルギー利用装置、光学機器および表示装置
JP5626441B1 (ja) * 2013-07-30 2014-11-19 大日本印刷株式会社 撥水撥油性部材の製造方法及び撥水撥油性部材
US9447284B2 (en) 2007-05-01 2016-09-20 Empire Technology Development Llc Water repellent glass plates

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2862174B2 (ja) * 1987-05-22 1999-02-24 グラステツク・ソーラー・インコーポレーテツド 太陽電池用基板
JP2000159599A (ja) * 1998-04-30 2000-06-13 Asahi Chem Ind Co Ltd 金属酸化物構造体及びその製造方法
JP2002252361A (ja) * 2000-11-21 2002-09-06 Nippon Sheet Glass Co Ltd 透明導電膜とその製造方法、およびそれを備えた光電変換装置
JP2003238947A (ja) * 2002-02-15 2003-08-27 Tokiaki Shiratori 超撥水性膜、及び、超撥水性膜の製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2862174B2 (ja) * 1987-05-22 1999-02-24 グラステツク・ソーラー・インコーポレーテツド 太陽電池用基板
JP2000159599A (ja) * 1998-04-30 2000-06-13 Asahi Chem Ind Co Ltd 金属酸化物構造体及びその製造方法
JP2002252361A (ja) * 2000-11-21 2002-09-06 Nippon Sheet Glass Co Ltd 透明導電膜とその製造方法、およびそれを備えた光電変換装置
JP2003238947A (ja) * 2002-02-15 2003-08-27 Tokiaki Shiratori 超撥水性膜、及び、超撥水性膜の製造方法

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2008072707A1 (ja) 2006-12-15 2008-06-19 Asahi Glass Company, Limited 撥水性表面を有する物品
US9447284B2 (en) 2007-05-01 2016-09-20 Empire Technology Development Llc Water repellent glass plates
WO2009075040A1 (en) * 2007-12-12 2009-06-18 Kazufumi Ogawa Solar energy utilization device and method for manufacturing the same
US8658888B2 (en) 2007-12-12 2014-02-25 Empire Technology Development Llc Solar energy utilization device and method for manufacturing the same
WO2009084119A1 (en) * 2007-12-27 2009-07-09 Kazufumi Ogawa Solar energy utilizing apparatus and method of manufacturing the same
JP2011032159A (ja) * 2009-07-29 2011-02-17 Korea Inst Of Machinery & Materials 機能性表面の製造方法
JP2012219004A (ja) * 2011-04-14 2012-11-12 Kagawa Univ 耐摩耗性超撥水撥油防汚性ガラスとその製造方法並びにそれらを用いたガラス窓、太陽エネルギー利用装置、光学機器および表示装置
JP5626441B1 (ja) * 2013-07-30 2014-11-19 大日本印刷株式会社 撥水撥油性部材の製造方法及び撥水撥油性部材

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4485606B2 (ja) 光触媒コーティングを備えた基材
US6156409A (en) Non-fogging article and process for the production thereof
KR100735763B1 (ko) 규소 유도체 층을 구비한 투명 기판과 상기 기판을 사용하는 방법
JP3700358B2 (ja) 防曇防汚ガラス物品
CN103958731B (zh) 通过常压化学气相沉积沉积氧化硅
JP4430402B2 (ja) ガラス基板およびその製造方法
JPH09231849A (ja) 碍子及びその汚れ防止方法
US5665424A (en) Method for making glass articles having a permanent protective coating
WO2016051750A1 (ja) 低反射コーティング、ガラス板、ガラス基板、及び光電変換装置
JP5660500B2 (ja) 耐摩耗性超撥水撥油防汚性ガラスとその製造方法並びにそれらを用いたガラス窓、太陽エネルギー利用装置、光学機器および表示装置
KR20190044249A (ko) 방오성이 우수한 하드코팅조성물 및 이를 이용한 하드코팅물
JP2021075455A (ja) コーティング膜付きガラス板及びその製造方法
KR19980042237A (ko) 분자막의 제조방법 및 제조장치
JP2005169761A (ja) 酸化物膜付き基材、および酸化錫膜付き基材の製造方法
JP2018535905A (ja) 堆積法
Jia et al. Graphite-like C3N4-coated transparent superhydrophilic glass with controllable superwettability and high stability
JP2004137137A (ja) 皮膜被覆物品、その製造方法、およびそれに用いる塗布溶液
JP2004136630A (ja) 機能性皮膜被覆物品、およびその製造方法
WO2005030664A1 (ja) 機能性ガラス物品およびその製造方法
ES2812613T3 (es) Sustrato provisto de un recubrimiento de baja reflexión, método para su producción y dispositivo de conversión fotoeléctrica que lo contiene
KR101808433B1 (ko) 방오성이 우수한 하드코팅조성물 및 이를 이용한 하드코팅물
Kawahara et al. A Large-Area Patterned TiO 2/SnO 2 Bilayer Type Photocatalyst Prepared by Gravure Printing
JP4315363B2 (ja) 薄膜形成方法
KR100572438B1 (ko) 광촉매 산화물이 코팅된 자동차 사이드 미러의 코팅방법
KR20180000704A (ko) 방오성이 우수한 하드코팅조성물 및 이를 이용한 하드코팅물

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060718

RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20080411

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090126

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090203

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090609