JP3944534B2 - リピドa類縁体及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有益な生理活性を有し、しかも低毒性であって、医薬品又は医薬品のリード化合物として有用な新規なリピドA類縁体及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンドトキシンは内毒素とも呼ばれ、バクテリアのつくり出す強力な毒素であるが、一方では免疫により体の抵抗力を高めるという生体にとって有益な働きをすることも判ってきている。この作用はエンドトキシンがマクロファージに刺激を与え、これによってインターロイキンや酸素ラジカル、プロスタグランジンなどのメディエーターがつくられることによって起こる。このメディエーターが過剰に生産されれば、例えば高熱、全身的血液凝固、ショック症状など、生体に致死的な悪影響を及ぼすが、適度な濃度で生産されたときはインターフェロン誘導作用、TNF誘導作用等の抗腫瘍作用や、マクロファージ活性化作用などの免疫賦活化作用が期待できる。
【0003】
エンドトキシンの主成分はリポ多糖(LPS )であって、その分子構造は多糖部分の「O−抗原多糖」、「Rコア」及び外膜部分に埋め込まれた脂質である「リピドA」の3つの部分から成るが、この中で活性中心としても重要な部分と考えられているのがリピドAである。リピドAの構造はバクテリアの種類による変化がなく、また、合成リピドAを用いた研究からもこの部分がエンドトキシン活性の本体であることが確かめられている。
【0004】
そこで、このリピドAの有益な生理活性を増強し、かつ、毒性を抑えて、医薬品や医薬品のリード化合物として応用することができるリピドA類縁体や誘導体の合成が種々試みられている。
【0005】
例えば、特開平1−121295号には、リピドAの還元サブユニット型に類似した2,3,4-トリアシル化グルコサミンが、特開平1−146891号にはモノホスホリルリピドA誘導体が、特開平3−264594号には1,5-アンヒドログルシトール類縁体が、また、特開平4−234895号、特開平5−59079号、特開平5−202082号、特開平7ー242692号には非還元サブユニット型のリピドA類縁体が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
リピドAは、下記化学式2で示される構造を有し、その基本骨格は、2-アミノ糖であるD-グルコサミンがβ1-6 結合で連なった2糖構造(4-O-2-amino-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl-amino-2-deoxy-D-glucopyranose )である。しかし、この2糖構造は、天然にはリピドAに見いだされる他は多量には存在しないため、リピドA類縁体の合成出発物質として充分量を得ることは困難であった。そのため、リピドA類縁体の合成方法として一般的には、単糖であるD-グルコサミンから2糖を合成する方法がとられていた。
【0007】
【化2】
【0008】
しかし、D-グルコサミンから2糖を合成するにあたっては、官能基の保護、グリコシル化、脱保護といった多段階の工程を経る必要があり、煩雑で高度のテクニックを要するという問題があった。
【0009】
また、代表的な工業的グリコシル化反応であるKoenigs-knorr 法においては、触媒としてシアン化水銀を用いるので、大量に製造するにあたっては、シアン化水銀の処理の問題等があった。
【0010】
更に、上記のこれまでに報告された各種リピドA類縁体や誘導体は、医薬品あるいは医薬品のリード化合物として実用化するに充分な薬理活性を有しているとはいい難いという問題があった。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、有益な生理活性を有し、かつ、毒性が低く、しかも安価に大量に製造可能な、医薬品又は医薬品のリード化合物として有用なリピドA類縁体及びその製造法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、キトビオース又はN-アセチルキトビオースを出発物質として化学合成することができる新規なリピドA類縁体が、有益な生理活性を有し、かつ、毒性が低く、しかも安価に大量に製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の一つは、キトビオース(4-O-2-amino-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl-2-amino-2-deoxy-D-glglopyranose )を基本骨格とする下記化学式3で示されるリピドA類縁体を提供するものである。
【0014】
【化3】
【0015】
また、本発明のもう一つは、キトビオース又はN-アセチルキトビオース(4-O-2-acetamido-2-deoxy-β-D-glucopyrasysyl-2-acetamido-2-deoxy-D-glucopyranose )を出発物質として、水酸基をアセチル化後オキサゾリン誘導体を経てベンジルグルコシド体を得、次いで2位 N- アセチル基以外のアセチル基を脱離し、ベンジリデン基による保護、更には6位水酸基のトリチル化を行い、 N- アセチル基の脱アセチル化後、アミノ基と3位水酸基をアシル化及び脱保護することにより、上記化学式3で示されるリピドA類縁体を化学合成することを特徴とするリピドA類縁体の製造法を提供するものである。
【0017】
本発明のリピドA類縁体は、グリコシド結合がβ1-4 結合であって、天然のリピドAの有するβ1-6 結合とは異なるが、後述する実施例で示すように、NO産生能において高い活性を示し、また、MTT 法による細胞毒性も低い。したがって、優れた生理活性を有し、かつ低毒性であって、医薬品又は医薬品のリード化合物として有用である。
【0018】
また、本発明のリピドA類縁体は、安価で量的供給が容易なキトビオースあるいはN-アセチルキトビオースを出発物質として用いるため、経済的にも有利であり、また、化学合成により、β1-6 結合の2糖構造を得る困難さがないので、製造が容易である。
【0019】
【発明の実施の態様】
本発明において出発物質として用いるキトビオース及びN-アセチルキトビオースの原料は、カニやエビなどの甲殻類の外殻部分に多量に含まれる天然多糖類のキチンである。キチンは甲殻類の他貝類、キノコ類、昆虫、細菌の細胞壁など自然界に幅広く分布する有用なバイオマテリアルの一種であり、キチンの脱アセチル化体であるキトサンとともに、廃水凝集剤、食品素材、医療材料、化粧品素材など様々な分野で用途開発が進んでおり、国内での生産量は年間約1,000 トンにものぼっている。
【0020】
キトビオースは、キチンの脱アセチル化体であるキトサンをキトサナーゼなどの酵素で加水分解するか、又は、塩酸、硫酸等の酸で部分加水分解後、常法により分離・精製することにより、調製することができる。
【0021】
また、N-アセチルキトビオースは、キチンをキチナーゼなどの酵素で加水分解するか、又は、塩酸、硫酸等の酸で部分加水分解後、常法により分離、精製することにより、調製することができる。また、N-アセチルキトビオースは、キトビオースをアセチル化することによっても得ることができる。
【0022】
キトビオース及びN-アセチルキトビオースは、いずれも量産法が確立されており、研究用試薬や食品素材として市販されているので、それを用いてもよい。
【0023】
キトビオースもN-アセチルキトビオースも、そのグリコシド結合はβ1ー4 結合であり、したがって、これらを出発物質として得られる本発明のリピドA類縁体のグリコシド結合は、β1ー4 結合であって、天然のリピドAの有するβ1ー6 結合とは異なるものの、後述するように顕著な生理活性を示し、なおかつ毒性も低いという性質を示している。
【0024】
本発明のリピドA類縁体は、例えば、図1に示すような工程によって製造することができる。以下、この工程について詳細に説明する。
【0025】
まず、第一工程として、キトビオース又はN-アセチルキトビオースを、無水酢酸−ピリジン等の溶媒系に加え攪拌し、アセチル化反応を行う。反応終了後、シリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト操作により分離することにより化合物Aを得る。
【0026】
次に、第二工程として、化合物Aと、トリエチルアミン等の有機アミンとを、1,2-ジクロロエタン等の不活性溶媒中に溶解させた後、トリフルオロメタンスルホネートを加え、次いで、トリフルオロメタンフォスフォネートを加えて反応させる。その後、反応液をシリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト操作により分離して、オキサゾリン誘導体である化合物Bを得る。
【0027】
次に、第三工程として、化合物Bと、ベンジルアルコールとを、クロロホルム等の溶媒系に溶解し、アルゴン等の不活性ガスの気流下に、トリフルオロメタンスルホン酸を加えて反応させた後、反応液をシリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト操作により分離して、還元末端がベンジル化された化合物Cを得る。
【0028】
続いて、第四工程として、化合物Cをメタノール−クロロホルム等の溶媒系に溶解し、アルゴン等の不活性ガスの気流下に、ナトリウムメトキシド等を加えて加水分解し、2位のN-アセチル基以外のアセチル基を脱離する。その後、反応液をイオン交換樹脂等で脱塩し、シリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト操作により分離して化合物Dを得る。
【0029】
更に、第五工程として、化合物Dと、ベンズアルデヒドジメチルアセタールとを、ジメチルホルムアミド等の溶媒系に溶解した後、p-トルエンスルホン酸等を、アルゴン等の不活性ガスの気流下に反応させた後、イオン交換樹脂等により脱塩し、シリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト操作により分離して、ベンジリデン体として化合物Eを得る。
【0030】
次に、第六工程として、化合物Eと、ジメチルアミノピリジン等とを、ジメチルホルムアミド−クロロホルム等の溶媒系に溶解し、アルゴン等の不活性ガスの気流下に、トリメチルクロライド等を加えて反応させる。その後、反応液をシリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト操作により分離して、トリチル体として化合物Fを得る。
【0031】
続いて、第七工程として、化合物Fを、エタノール等の溶媒系に溶解し、水酸化カリウム等のアルカリを加え、アルゴン等の不活性ガス気流下に、脱アセチル化反応を行う。次いで、イオン交換樹脂等により脱塩した後、シリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト操作により分離して化合物Gを得る。
【0032】
更に、第八工程として、化合物Gと、ジメチルアミノピリジン等とを、ジメチルホルムアミド−ピリジン等の溶媒系に溶解し、アルゴン等の不活性ガスの気流下に、テトラデカノイルクロライド、ドデカノイルクロライド等のC8〜14のハロゲン化アルキルを加えてアシル化反応を行う。その後、反応液をシリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト操作により分離してアシル体である化合物Hを得る。
【0033】
最後に、第九工程として、化合物Hを酢酸エチル等の溶媒系に溶解させた後、加熱反応させ、反応液を減圧濃縮する。次いで、得られた濃縮残渣を、メタノール−テトラヒドロフラン等の溶媒系に溶解し、パラジウムブラック等を加えて、水素気流下に反応させて保護基を脱離する。その後、パラジウムブラック等を吸引濾過により除去し、濾液をシリカゲルクロマトグラフィー等のクロマト操作により分離し、ジオキサン等を用いて凍結乾燥して、目的とするリピドA類縁体である、前記化学式3で示した化合物Iを得る。
【0034】
本発明のリピドA類縁体は、リピドAと類似の生理活性を有し、免疫賦活剤や抗腫瘍剤などの医薬品又は医薬品のリード化合物として有用である。
【0035】
本発明のリピドA類縁体の形態は、粉剤、錠剤、カプセル剤等の経口投与剤、軟膏、スプレー等の外用薬、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、皮肉等への注射剤などのいずれであってもよく、その形態に応じて通常の医薬品の調製に使用される希釈剤、賦形剤等を用いることができる。また、希釈剤、賦形剤等としては、医薬品の形態に応じて粉剤、溶剤、懸濁剤等を用いることができる。具体的には、例えば粉剤としては乳糖、セルロース、カルボシシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が用いられ、溶剤としては水、エチルアルコール、プロピレングリコール、植物油などが用いられ、懸濁剤としてはポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル等が用いられる。
【0036】
本発明のリピドA類縁体の投与量は、年齢、性別、症状等により異なるが成人一人当たり0.01〜100mg を、一日一回又は数回に分割して経口あるいは非経口投与するのが好ましい。
【0037】
【実施例】
実施例1(リピドA類縁体の合成(1))
(化合物Aの合成)
キトビオース1.56g (3.6mmol )を無水酢酸- ピリジン(1:2 )30mlに、氷冷下に加え、室温で2 日間攪拌した。反応終了後、反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール=50:1→10:1)で溶出分離し、収率88%で化合物A2.14g を得た。
【0038】
(化合物Bの合成)
化合物A 1.01g(1.5mmol )と、トリエチルアミン0.70mlとを、1,2-ジクロロメタン25mlに溶解させ、アルゴン気流下に、トリフルオロメタンスルホネート0.37g (1.65mmol)を加え、50℃で17時間反応させ、更に同量のトリフルオロメタンフォスフォネートを追加した。反応の終了をTLC (薄層クロマトグラフィー、以下TLC と記す。)(塩化メチル−メタノール=9:1 )で確認し、反応液を半量まで濃縮してから、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−トルエン−トリエチルアミン=12:6:0.1)で溶出分離し、収率74%で化合物B0.70g を得た。
【0039】
(化合物Cの合成)
化合物B0.59g (0.93mmol)と、ベンジルアルコール1.0g(9.3mmol )とを、クロロホロム20mlに溶解させ、モレキュラーシーブス(4オングストローム)0.5gの存在下、アルゴン気流下に、トリフルオロメタンスルホン酸14mg(0.093mm ol)を室温で加え、30分間攪拌した後、80〜90℃で15時間反応させ、更に同量のトリフルオロメタンスルホン酸を追加して更に24時間反応させた。原料の消失をTLC (酢酸エチル−アセトン=9:1 )で確認し、反応液を濃縮してから濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール=50:1→10:1)で溶出分離し、収率51%で化合物C0.35g を得た。
【0040】
(化合物Dの合成)
化合物C0.54g (0.75mmol)をメタノール−塩化メチレン(4:1 )50mlに溶解させて、アルゴン気流下、氷冷下に、ナトリウムメトキシド(メタノール10ml中にナトリウム18mg)をゆっくりと滴下し、室温で4 時間攪拌した。原料の消失をTLC (塩化メチレン−メタノール−水=65:35:5 )で確認し、反応液を陽イオン交換樹脂「アンバーライトIRC-50」(商品名、オルガノ株式会社製)1.0gで処理した後、吸引濾過してアンバーライトIRC-50を除き、濾過液を減圧濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール−水=12:6:0.5)で溶出分離し、収率96%で化合物D0.37g を得た。この化合物Dの理化学的性質を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(化合物Eの合成)
化合物D0.40g (0.78mmol)と、ベンツアルデヒドジメチルアセタール0.42g (2.3mmol )とを、ジメチルフォルムアミド10mlに溶解させた後、p-トルエンスルホン酸を追加して24時間反応させ、原料の消失をTLC (塩化メチル−メタノール=4:1 )で確認した。次いで、反応液を陰イオン交換樹脂「アンバーライトA-21」(商品名、オルガノ株式会社製)0.5gで処理し、吸引濾過した後、濾液を減圧濃縮した。続いて、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール=50:1→10:1)で溶出分離し、収率94%で化合物E0.44g を得た。この化合物Eの理化学的性質を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
(化合物Fの合成)
化合物E0.72g (1.2mmol )と、ジメチルアミノピリジン0.15g (0.15mmol)とを、ジメチルフォルムアミド−ピリジン(1:9 )12mlに溶解させ、アルゴン気流下に、トリチルクロライド0.84g (3.0mmol )を加え、50〜60℃に加温して7 日間攪拌した。原料の消失をTLC (塩化メチル−メタノール=9:1 )で確認した後、反応液を減圧濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール=50:1→10:1)で溶出分離し、収率49%で化合物F0.50g を得た。この化合物Fの理化学的性質を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
(化合物Gの合成)
化合物F185mg (0.22mmol)をエタノール5ml に溶解させ、水酸化カリウム0.2gを加えて、アルゴン気流下に、110 〜120 ℃で12時間反応させた。更に、水酸化カリウム0.6gを、2 日間にわたり3 回に分けて加え、原料の消失をTLC (アセトン−酢酸エチル=2:1 )で確認した後、反応液を陽イオン交換樹脂「アンバーライトIRC-50」(商品名、オルガノ株式会社製)で処理し、吸引濾過後の濾液を減圧濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2-MeOH=10:1)で溶出分離し、収率73%で化合物G0.122gを得た。この化合物Gの理化学的性質を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
(化合物H−aの合成)
化合物G46mg(0.06mmol)と、ジメチルアミノピリジン58mg(0.48mmol)とを、ジメチルフォルムアミド−ピリジン(1:1 )3.0ml に溶解させ、アルゴン気流下に、テトラデカノイルクロライド 119mg(0.48mmol)を加え、40〜50℃で20時間反応させた。反応液を減圧濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルクロマログラフィー(塩化メチレン−メタノール=50:1)で溶出分離して、収率43%で化合物H−a41mgを得た。この化合物H−aの理化学的性質を表5に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
(化合物I−aの合成)
化合物H−a45mg(0.028mmol )を、80%酢酸5ml に溶解し、60〜70℃で24時間反応させた後、反応液を減圧濃縮し、濃縮残渣をメタノール−テトラヒドロフラン(1:1 )2.0ml に溶解させ、パラジウムブラック41mgを加えて、水素気流下に、室温で17時間反応させた。原料の消失をTLC (塩化メチル−メタノール=9:1 )で確認した後、パラジウムブラックを吸引濾過により除去し、濾液を減圧濃縮して濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール=50:1)で溶出分離し、ジオキサンから凍結乾燥して、収率41%で白色粉末の化合物I−a27mgを得た。この化合物I−aの理化学的性質を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
実施例2(リピドA類縁体の合成(2))
(化合物H−bの合成)
実施例1で調製した化合物G49mg(0.065mmol )をピリジン 1.5ml及びジメチルアミノピリジン63mg(0.52mmol)をジメチルホルムアミド1.5ml に溶解させ、アルゴン気流下に、ドデカノイルクロライド114mg (0.52mmol)を加え、40〜50℃で17時間反応させた。反応液を減圧濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール=50:1)で溶出分離して、収率30%で化合物H−b29mgを得た。この化合物H−bの理化学的性質を表7に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
(化合物I−bの合成)
化合物H−b45mg(0.028mmol )を、80%酢酸5ml に溶解し、60〜70℃で24時間反応させた後、反応液を減圧濃縮し、濃縮残査をメタノール−テトラヒドロフラン(1:1 )2.0ml に溶解させ、パラジウムブラック41mgを加えて、水素気流下に、室温で17時間反応させた。原料の消失をTLC (塩化メチル−メタノール=9:1 )で確認した後、パラジウムブラックを吸引濾過により除去し、濾液を減圧濃縮し、濃縮残査をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン−メタノール=50:1)で溶出分離し、ジオキサンから凍結乾燥して、収率37%で白色粉末の目的化合物I−b18mgを得た。この化合物I−bの理化学的性質を表8に示す。
【0055】
【表8】
【0056】
実験例1(NO産生活性試験及び細胞毒性試験)
実施例1、2で得られた化合物I−a、I−bについて、免疫活性の指標としてのNO産生活性試験と、細胞毒性試験とを行った。
【0057】
細胞毒性試験は、MTT 法により行った。MTT 法は対照を0.5 として数値が1.0 を上限として大きいほど毒性が低く、数値が0.5 よりも低い場合には毒性が高いと判断される。
【0058】
なお、NO産生活性試験、細胞毒性試験は、それぞれ単独に投与した場合と、インターフェロンγを同時に投与した場合の2つの系で行った。また、対照としては、下記化学式4に示す化合物を標準物質として用いた。なお、化学式4で示す化合物は、リピドAの非還元末端側の骨格構造であり、リピドAのモデル構造として新規化合物の特定、生理機能の判定などのメルクマークとして広く用いられているものである。
【0059】
【化4】
【0060】
更に、比較例としてEscherichia coli由来のLPS (リポ多糖)を用い、濃度を10μgとして単独に投与した場合のNO産生活性試験及び細胞毒性試験を行い、実施例2の濃度を40μgとした場合との比較を行った。
【0061】
各試験物質を単独で投与した場合のNO産生活性試験及び細胞毒性試験の結果を表9に、各試験物質とインターフェロンγとを同時に投与した場合のNO産生活性試験及び細胞毒性試験の結果を表10に示した。また、比較例と、実施例2との比較試験の結果を、表11に示した。
【0062】
【表9】
【0063】
【表10】
【0064】
【表11】
【0065】
表9、10の結果から、実施例1、2とも、NO産生能試験において有意なNO産生能が認められることがわかる。特に実施例2は、40μg 濃度で対照と比較しても顕著に強いNO産生活性を示していることがわかる。また、実施例2の細胞毒性は0.661 であり、対照の細胞毒性0.554 に対して有意に低毒性であることがわかる。更に、インターフェロンγ投与下のNO産生能は、濃度40μg で対照が2.3nmol であるのに対して実施例2は8.1nmol であり、やはり強い活性を示すことがわかる。更にまた、この場合の細胞毒性も対照に比べて有意に低いものであることがわかる。
【0066】
また、表11の結果から、実施例2のNO産生能は、比較例よりも低かったが、細胞毒性において、比較例が0.406 で強い毒性を示すのに対し、実施例2は0.661 で低毒性であることがわかる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のリピドA類縁体は、リピドAと類似の優れた生理活性を有し、かつ低毒性であるので、医薬品や医薬品のリード化合物として有用である。また、安価で量的供給が容易なキトビオースあるいはN-アセチルキトビオースを出発物質とするため、経済的に有利であるとともに、β1-6 結合の2糖構造を化学合成する困難さがなく、製造も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリピドA類縁体の製造工程の一例を示す説明図である。
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JPH09227585A (ja) | 1997-09-02 |
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