JP3944462B2 - フィン付き舵、船舶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、船舶におけるプロペラの後流を利用して推進方向の力を発生させるフィンを備えた舵および該フィン付き舵を備えた船舶に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶においてプロペラの後方に設けられる舵には、推進効率向上の為に、フィンが設けられることがある。フィンは、プロペラ後流(回転流)を受けて揚力と抗力を発生し、この揚力と抗力との合力における推進方向成分が、船舶の推進効率を向上させる。また、フィンは、プロペラ回転流のエネルギー回収効率を向上させる為に、翼型の形状に形成されるとともに、その翼型の形状や取り付け位置等に種々の工夫が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
実公平6−35918号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フィンは、上述のように揚力と抗力との合力によって推進方向成分の力を発生させる一方で、他方、抗力の増加が顕著になる結果、推進効率の改善に寄与しない結果を招く場合もある。そこで、フィンの取り付けにおいては、個々の船体における航行時のプロペラ後流の状態に応じて、取り付け角や取り付け位置等の取り付け条件を精密に調整する必要がある。そうしないと、上述の様にフィンの取り付けによって推進効率をむしろ低下させてしまうからである。
【0005】
しかし、フィンの取り付け条件は、実際には許容範囲が極めて狭く、最も適切な条件を探すのが極めて困難なものとなっている。特に、プロペラが右回転の場合、舵の左舷側においては、プロペラの回転流に、航行時に船体から生じる渦流(ビルジ渦)が加わる結果、舵側面近傍ではランダムな遅い流場が形成され、プロペラ回転面の外周近傍では上向きの急な流場が発生する。従って、左舷側において充分な揚力を得るためには、フィンをプロペラ回転面の外周部にまで充分に延設する必要があるが、舵側面近傍では上述のようにランダムな遅い流場によって充分な揚力を得ることができず、抗力の影響が支配的となって結果的に全体として推進効率が低下する場合もある。
【0006】
加えて、フィンに捻りを加え、スパンに応じて翼の迎え角を変化させる方法も考えられるが、この場合はフィンの加工性が極めて悪く、顕著なコストアップを招くことにもなる。また、この様なフィンの取り付けは、上述した最適な条件を探すのがより一層困難なものとなる。
【0007】
更に加えて、フィンは揚力を発生させることによって舵取付部(舵軸)或いは舵本体に回転モーメントを付与する為、舵取付部或いは舵本体の強度を確保する必要があり、設計の自由度が損なわれるとともに強度向上によってコストアップを招く場合もある。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、フィンの取り付け作業が容易であるとともに推進効率を低下させることのないフィン付き舵を得ることにあり、加えて、舵取付部或いは舵本体に加わる回転モーメントを低減して設計の自由度が高く低コストなフィン付き舵を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、船舶におけるプロペラの後流を利用して推進方向の力を発生させるフィンを備えた舵であって、前記船舶の推進によって船体から発生する渦であり、前記プロペラの回転面においては、前記プロペラの回転軸芯の左右において前記回転面の外周部で上方に向かうとともに前記プロペラの回転軸芯に向けて下方に流れこむ渦と、前記プロペラによる回転流と、の相殺効果によって前記舵の一方側の側面近傍にランダムな緩流が発生するとともに、前記舵の他方側の側面近傍に、前記渦と前記回転流との相乗効果によって急流が発生する場合における、当該急流が発生する側の側面にのみ前記フィンが設けられていることを特徴とする。
【0010】
プロペラ後流は、プロペラのみによって生じる回転流に、船体から生じる渦流が合流することによって形成される。ここで、例えばプロペラが右回りの場合に、舵の右舷側においては、舵側面近傍に船体から生じる渦とプロペラ回転流との相乗効果によって下向きの急な流場(急流)が形成される。一方、舵の左舷側においては、舵側面近傍に船体から生じる渦とプロペラ回転流との相殺効果によってランダムな遅い流場(緩流)が形成され、プロペラ回転面における外周部には、船体から生じる渦とプロペラ回転流との相乗効果によって上向きの急な流場が形成される。
【0011】
ここで、上述した舵左舷側側面近傍に発生するランダムな遅い流場においては、充分な揚力が得られず、抗力が支配的となって推進効率を低下させる要因となり易い。そこで、上記第1の態様は、舵側面近傍に上記ランダムな遅い流場が形成される側面(上記プロペラ右回りの例では左舷側)を利用せずに、舵側面近傍に急流が発生する一方側の側面(上記プロペラ右回りの例では右舷側)にのみフィンを設けたことで、上記ランダムな遅い流場を確実に回避することができ、以て推進効率の低下を確実に防止することができる。加えて、舵側面近傍にランダムな遅い流場が存在する場合には、フィンの取付角や取付位置等の取付条件の調整が極めて困難であるが、上述した様にランダムな遅い流場を利用しないことで、フィンの取付作業を極めて容易にすることができる。更に、フィンの迎角をフィンのスパン位置毎に変化させる必要もないため、フィンの加工が容易となり、低コスト化を図ることができる。
【0012】
加えて、舵の両側面にフィンを取り付けた場合には、フィンに生じる揚力により、舵の取付部、或いは舵本体に回転モーメント(船の推進方向に平行な回転軸を持つモーメント力)が加わり、これにより、舵の取付部或いは舵本体の強度を確保する必要がある。しかし、フィンは舵の一側面側にのみ設けられることから、上記回転モーメントを著しく低減させることができ、設計の自由度が向上するとともに低コスト化を図ることができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記プロペラが、船尾側から船首側を視て右回転であり、前記急流が、船尾側から船首側を視て前記舵の右舷側の側面近傍に発生し、前記フィンが、右舷側の舵側面にのみ設けられていることを特徴とする。
【0016】
上記第2の態様によれば、プロペラが右回転であって、上記ランダムな遅い流場が舵側面近傍に発生する左舷側を利用せずに、急流が舵側面近傍に発生する右舷側にのみフィンを設けたことで、上記ランダムな遅い流場を確実に回避することができ、以て推進効率の低下を確実に防止することができる。また、フィンの取付作業を極めて容易にすることができるとともに、翼型における迎角をスパン位置毎に変化させた変形翼とする必要もないため、フィンの加工が容易となり、フィンの低コスト化を図ることができる。加えて、舵の取付部或いは舵本体に加わる回転モーメントを低減させることができ、設計の自由度を向上できるとともに、低コスト化を図ることができる。
【0017】
本発明の第3の態様は、上記第1のまたは第2の態様において、前記フィンのスパンが、プロペラ直径の20%乃至45%となる様に形成されていることを特徴とする。
上記第3の態様によれば、前記フィンのスパンが、プロペラ直径の20%乃至45%となる様に形成されていることから、プロペラ回転流の存在する範囲にフィンが設けられることにより、効率的にプロペラ回転流を回収することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、上記第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記フィンが下方又は上方に凸となるキャンバーラインを有する翼断面形状によって形成され、該翼断面形状において、最大厚が翼弦長の5%乃至25%であり、前記最大厚の位置が、翼前縁から翼弦長の45%乃至50%の任意の位置にあり、凸側とは反対側において、翼後縁と、該翼後縁から翼弦長の45%乃至55%における任意の位置との間が直線であるとともに、該直線の終端位置から翼前縁にかけてが、前記直線の延長線に対して翼厚増加方向側に位置する曲線であり、更に該曲線と、前記直線の延長線との間の最大距離が、翼弦長の5%未満であることを特徴とする。
【0019】
上記第4の態様によれば、フィンの翼断面形状における最大厚が翼舷長の5%乃至25%であるので、確実に揚力を得るべく一定のキャンバーを得ながら、抗力の増大を一定に抑えることができる。また、最大厚の位置が翼前縁から翼弦長の45%乃至50%の任意の位置にあるので、翼厚の分布が前後で均等となり、翼強度の低下を防止することができる。更に、凸側とは反対側において、翼後縁と、該翼後縁から翼弦長の45%乃至55%における任意の位置との間が直線であるので、フィンの工作性に優れ、フィンの低コスト化を図ることができる。加えて、前記直線の終端位置から翼前縁にかけてが、前記直線の延長線に対して翼厚増加方向側に位置する曲線であり、更に該曲線と、前記直線の延長線との間の最大距離が、翼弦長の5%未満であるので、翼効果が有効に得られる翼前半部でキャンバーを充分に得ることができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、上記第1から第4の態様のいずれかに記載された前記フィン付き舵を備えたことを特徴とする船舶であり、当該第5の態様によれば、上述した第1から第4の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図7を参照しながら詳説する。ここで、図1は本発明に係る船舶の船尾側面図、図2はプロペラ作動時(右回り)の舵周辺におけるプロペラ軸芯に垂直な面での流速分布図、図3(A)、(B)は舵の斜視図、図4はフィンを左舷のみ、右舷のみ、左舷と右舷の双方に設けた場合のそれぞれの自航要素を示す図、図5は右舷フィンのスパンと自航要素との関係を示す図、図6は船尾部の正面図、図7はフィンの断面形状(翼型)を示す図である。
【0022】
図1において、船体1の船尾部に設けられたプロペラ3の後方に、舵軸11を介して舵9が設けられている。プロペラ3は回転軸芯線Cを中心に回転駆動される様に設けられ、プロペラ3の回転中心部を構成するプロペラボス5の先端(舵9と対向する側)には、プロペラキャップ7が取り付けられている。また、舵9においてプロペラ3と対向し且つプロペラ3の回転軸芯線Cと交差する位置にはバルブ12が設けられている。バルブ12は、プロペラへ流れ込む後流をいわば堰止めることによってプロペラ3の回転面内に伴流係数の大きい流域を形成し、以てプロペラ3における伴流利得を向上させる為のものである。尚、符号APで示す線は舵9の回動軸芯線を示すものである。
【0023】
プロペラキャップ7は、バルブ12に向かって順次径が大となる様な形状(本実施形態では円錐体形状)に形成され、これによって推進効率を向上させる様に構成されている。即ち、プロペラボス5の後方においては船体1が航行する際に所謂ハブ渦が発生し、流れを乱すが、プロペラキャップ7を上述した様な円錐体形状とすることにより、プロペラボス5の後方においては上記ハブ渦をバルブ12の外側に拡散させ、もって上記ハブ渦による流れの乱れを整流することが可能となる。
【0024】
舵9には、フィン15aが取り付けられている。舵9にフィン15aを取り付けることで、プロペラ後流によってフィン15aによる揚力と抗力を発生させ、該揚力と抗力の合力における推進方向成分により、プロペラ3の回転流を回収して推進効率(以下符号ηPで表す)を向上させることができる。以下、当該フィン15aの具体的な実施形態について説明する。
【0025】
先ず、図2は、舵9の断面におけるプロペラ後流の流れ方向を示すベクトル図(船体後方から前方を視た図)である。プロペラ3は船体後方から視て右回転する為、プロペラ3のみによって発生する後流は、舵9の左舷側では上向きの流れとなり、右舷側では下向きの流れとなる。しかし、プロペラ3には、船体1から舵9の左舷側で図2の時計回り方向、右舷側で反時計回り方向の渦、つまり、船体1の推進によって船体1から発生する渦であり、プロペラ3のプロペラ回転面PDにおいては、プロペラ3の回転軸芯の左右においてプロペラ回転面PDの外周部で上方に向かうとともに前記プロペラの回転軸芯に向けて下方に流れこむ渦(所謂ビルジ渦)、が流れ込んでくる。従って当該ビルジ渦と、プロペラ3の回転流との相殺効果と相乗効果とにより、図2に示す様に左舷側においては舵側面近傍に遅いランダムな流場(緩流)が発生し、プロペラ回転面PDの外周部では、急な上向きの流場が発生する。また、右舷側においては、舵側面近傍に急な下向きの流場(急流)が発生する。
【0026】
以上により、舵9にフィンを取り付ける場合には、左舷側に取り付けるフィンは上述した急な上向きの流場に届く様に、プロペラ回転面PDの外周部まで充分に延設する必要がある。しかしこの場合、フィンは、舵9の左側面近傍における遅いランダムな流場を通る必要がある。
【0027】
ここで、舵9の左側面近傍における遅いランダムな流場においては、フィンは充分な揚力を発揮することができず、抗力が支配的となり、むしろ推進効率ηPを低下させる要因となり易い。また、推進効率ηPを向上させることができるフィン取付位置或いは取付角度等の、フィン取付条件の許容範囲が極めて狭く、調整作業が極めて困難となり易い。そして殆どの場合、船の全ての航行条件において最適なフィン取付条件が結果として得ることができず、フィンを取り付けたことによって、逆に推進効率ηPを低下させてしまうことになる。
【0028】
そこで、上述した舵9における左舷側の側面近傍に生じる遅いランダムな流場を確実に避けるべく、フィンを舵9の右舷側のみに設けることで、推進効率ηPの低下要因を確実に排除して、推進効率ηPを効率的に向上させることが可能となる。
【0029】
図4は、フィンを左舷のみ、右舷のみ、左舷と右舷の双方に設けた場合のそれぞれの自航要素を比較する図である(フィンスパンは右舷及び左舷双方ともにプロペラ直径Dpの35%)。ここで、図4においてηRはプロペラ効率比、1−tは推進減少係数tに基づく1−t、1−wSは模型船の伴流係数に基づいて推定した実船の伴流係数wSに基づく1−wS、△ηはフィン無しを基準とした場合の推進効率ηP(=((1−wS)/(1−t))×ηR×ηO:ηOはプロペラ単独効率)の向上率を示している。
【0030】
図示する様に、両舷にフィンを設けた場合の推進効率ηPに比して右舷のみにフィンを設けた場合の推進効率ηPが向上していることが判る(特に、1−tが顕著に向上)。つまり、左舷フィンが推進効率ηPを低下させる要因となっていることが判る。
【0031】
次に、図5は、右舷フィンのスパン(プロペラ直径Dpに対する割合)を0%(フィン無し)から20%、28%、35%と変化させた場合の自航要素の変化を示すものであり、図示する様に、フィンのスパンを大きくするに従って、少なくとも35%までは、推進効率ηPがフィンのスパンに比例して向上することが判る(特に、1−tが顕著に向上)。
【0032】
一方、フィンがプロペラ回転面より外側に張り出すと、プロペラ回転流の存在しない範囲にまでフィンが存在することとなり、抗力が支配的となって推進効率ηPが低下することが考えられるとともに、プロペラ後流はプロペラによって加速される為に縮流され、プロペラ回転流が存在する範囲は、実際にはプロペラ回転面よりも狭い範囲となる。
【0033】
以上により、右舷フィンのスパンをプロペラ直径に対して20%乃至45%程度とすることにより、右舷側の側面に生じる下向きの急な流場のみを利用して、右舷フィンの機能を効果的に発揮することが可能となる。
【0034】
次に、図3は右舷フィンの一実施例を示すものであり、図3(A)、(B)に示す舵9のいずれにおいても、左舷側にフィンは設けられておらず、右舷側の側面9aにのみフィン15aが設けられている。図3(A)は、側面9aに直接フィン15aを取り付けた実施例を示すものであり、図3(B)は、バルブ12にフィン15aを取り付けた実施例を示すものである。バルブ12にフィン15aを取り付けることで、より一層推進効率ηPを向上させることができるが、バルブ12を設けない場合でも、上述した右舷側のみのフィン15aの作用効果は得ることができる。
【0035】
加えて、以下の様な作用効果を得ることもできる。図6(A)は舵9の左右両舷にフィンを取り付けた状態を示す模式図(符号15bは左舷側フィン)であり、図6(B)は右舷のみにフィン15aを取り付けた状態を示す模式図である。左右両舷にフィンを取り付けた場合には、それぞれのフィンには図の矢印で示す方向の揚力が発生する。ここで、それぞれの揚力は、舵9の舵軸11或いは舵9本体に図の時計方向回りの回転モーメントを付与することとなり、舵軸11或いは舵9の強度設計にこれを考慮する必要が生じる。しかし、右舷のみにフィン15aを取り付けたことにより、上記回転モーメントを顕著に低減させることができ、これにより、舵軸11或いは舵9の設計に考慮する強度を低く設定することができ、設計の自由度が向上するとともに、構造の簡素化等によって舵軸11或いは舵9の低コスト化を図ることが可能となる。
【0036】
次に、本実施形態におけるフィン15aの翼型について詳説する。図1に示す様に、フィン15aを翼型の形状によって形成することができ、この場合右舷側のフィン15aは、キャンバーラインが下に凸となる様に設けられる。図7は説明の便宜上、キャンバーラインが上に凸となる様にフィン15aの翼型を示した図であり、符号CBはキャンバーラインを示している。図7において、本実施形態においては翼断面形状における最大厚dが、翼舷長a+bの5%乃至25%となる様に設定されている。従って確実に揚力を得るべく一定のキャンバーを得ながら、抗力の増大を一定に抑えることができる。また、最大厚dの位置Qが翼前縁から翼弦長の45%乃至50%の任意の位置(符号eで示す距離)に設定されている。従って翼厚の分布が前後で均等となり、翼強度の低下を防止することができる。
【0037】
更に、凸側とは反対側(翼底面)において、翼後縁と、該翼後縁から翼弦長の45%乃至55%における任意の位置Pとの間(符号bで示す区間)が直線(平坦面)となる様に形成されている(直線G)。従って、フィンの工作性に優れ、フィンの低コスト化を図ることができる。加えて、前記直線の終端位置から翼前縁にかけて(符号aで示す区間)が、前記直線の延長線に対して翼厚増加方向側に位置する曲線(曲線F)であり、更に該曲線と、前記直線の延長線との間の最大距離(符号cで示す距離)が、翼弦長a+bの5%未満となる様に形成されている。従って、翼効果が有効に得られる翼前半部でキャンバーを充分に得ることができる。
【0038】
尚、この様な翼型の形状は、舵9の右舷側にのみフィンを取り付ける本発明の実施形態に限られず、舵9の両舷にフィンを取り付ける従来の実施形態においても、上記作用効果を得ることができることは言うまでもない。
【0039】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、舵側面近傍に上記ランダムな遅い流場が形成される側面(上記プロペラ右回りの例では左舷側)を利用せずに、舵側面近傍に急流が発生する一方側の側面(上記プロペラ右回りの例では右舷側)にのみフィンを設けたことで、上記ランダムな遅い流場を確実に回避することができ、以て推進効率の低下を確実に防止することができる。加えて、舵側面近傍にランダムな遅い流場が存在する場合には、フィンの取付角や取付位置等の取付条件の調整が極めて困難であるが、上述した様にランダムな遅い流場を利用しないことで、フィンの取付作業を極めて容易にすることができる。更に、フィンの迎角をフィンのスパン位置毎に変化させる必要もないため、フィンの加工が容易となり、低コスト化を図ることができる。加えて、舵の両側面にフィンを取り付けた場合には、フィンに生じる揚力により、舵の取付部、或いは舵本体に回転モーメント(船の推進方向に平行な回転軸を持つモーメント力)が加わり、これにより、舵の取付部或いは舵本体の強度を確保する必要がある。しかし、フィンは舵の一側面側にのみ設けられることから、上記回転モーメントを著しく低減させることができ、設計の自由度が向上するとともに低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る船舶の船尾側面図である。
【図2】プロペラ作動時(右回り)の舵周辺におけるプロペラ軸芯に垂直な面での流速分布図である。
【図3】(A)は舵の外観斜視図、(B)は他の実施形態に係る舵の外観斜視図である。
【図4】フィンを左舷のみ、右舷のみ、両舷に設けた場合のそれぞれの自航要素を示す図である。
【図5】右舷フィンのスパンと自航要素との関係を示す図である。
【図6】船尾部の正面図である。
【図7】フィンの断面形状(翼断面)を示す図である。
【符号の説明】
1 船体
3 プロペラ
5 プロペラボス
7 プロペラ
7a プロペラキャップ
9 舵
11 舵軸
15a フィン(右舷側)
Claims (5)
- 船舶におけるプロペラの後流を利用して推進方向の力を発生させるフィンを備えた舵であって、
前記船舶の推進によって船体から発生する渦であり、前記プロペラの回転面においては、前記プロペラの回転軸芯の左右において前記回転面の外周部で上方に向かうとともに前記プロペラの回転軸芯に向けて下方に流れこむ渦と、
前記プロペラによる回転流と、
の相殺効果によって前記舵の一方側の側面近傍にランダムな緩流が発生するとともに、前記舵の他方側の側面近傍に、前記渦と前記回転流との相乗効果によって急流が発生する場合における、当該急流が発生する側の側面にのみ前記フィンが設けられている、
ことを特徴とするフィン付き舵。 - 請求項1において、前記プロペラが、船尾側から船首側を視て右回転であり、
前記急流が、船尾側から船首側を視て前記舵の右舷側の側面近傍に発生し、
前記フィンが、右舷側の舵側面にのみ設けられている、
ことを特徴とするフィン付き舵。 - 請求項1または2において、前記フィンのスパンが、プロペラ直径の20%乃至45%となる様に形成されている、
ことを特徴とするフィン付き舵。 - 請求項1から3のいずれか1項において、前記フィンが下方又は上方に凸となるキャンバーラインを有する翼断面形状によって形成され、
該翼断面形状において、最大厚が翼弦長の5%乃至25%であり、
前記最大厚の位置が、翼前縁から翼弦長の45%乃至50%の任意の位置にあり、
凸側とは反対側において、翼後縁と、該翼後縁から翼弦長の45%乃至55%における任意の位置との間が直線であるとともに、該直線の終端位置から翼前縁にかけてが、前記直線の延長線に対して翼厚増加方向側に位置する曲線であり、更に該曲線と、前記直線の延長線との間の最大距離が、翼弦長の5%未満である、
ことを特徴とするフィン付き舵。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載された前記フィン付き舵を備えたことを特徴とする船舶。
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CN101898631A (zh) * | 2010-07-23 | 2010-12-01 | 哈尔滨工程大学 | 基于舵球式推力鳍的船舵装置 |
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