JP3944340B2 - 焼結鉱の製造方法およびその焼結鉱 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製鉄用原料である焼結鉱の製造方法およびこの製造方法で製造した焼結鉱の技術分野に属し、詳しくは製品焼結鉱の強度を向上させる焼結鉱の製造方法およびこの製造方法で製造した焼結鉱の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
製鉄用原料として用いられる焼結鉱の製造は、一般に、図11に示す焼結鉱製造工程により行われる。この製造工程は、原料槽3とドラムミキサー4からなる混合、造粒工程と、給鉱ホッパー5、焼結機6からなる焼成工程で構成される。焼結鉱の焼結原料は、10mm程度以下の鉄鉱石粉、副原料(石灰石、生石灰、珪石、蛇紋岩等)およびコークス粉等の固体燃料であり、これらは原料槽3に貯蔵されている。これら焼結原料は所定量に配合されてドラムミキサー4に装入され、さらに適量の配合水が加えられて混合、造粒される。次に、この造粒物は、給鉱ホッパー5により、焼結機(例えば、ドワイトロイド式焼結機)6のパレット上に所定の高さに充填され、表層部原料中の固体燃料に着火される。着火後は、下方に向けて空気を吸引しながら固体燃料を燃焼させて、この燃焼熱により焼結原料を焼結させて焼結ケーキとする。この焼結ケーキは粉砕後に粒度調整し、粒径 3mm程度以上の製品焼結鉱を得る。
【0003】
製鉄用原料として、この製品焼結鉱は高い強度が要求される。これは、焼結鉱を高炉へ装入するハンドリング時の粉化による高炉装入物への粉の持ち込みと炉前篩分けによる製品歩留の低下や、高炉中で焼結鉱の粉化により高炉の通気度が低下することにともなう高炉操業の悪化を防止するためである。
【0004】
この製品焼結鉱の強度を改善するために、焼結機のパレットに装入された造粒物中の固体燃料の燃焼により高温を発生させ、この高温を維持することによって、鉄鉱石粉の焼結に十分な量の融液を均一に生成させることが重要である。この融液は、鉄鉱石粉と副原料とのスラグ反応により生成する融液(通常、多元系カルシュームフェライト)である。この融液により鉄鉱石粉の液相焼結が行われ、冷却後、この融液の凝固により鉄鉱石粉同士を結合するボンドが形成される。
【0005】
この形成されたボンドの幅が広い場合や、ボンドの網目状組織が均一の場合に、製品焼結鉱の強度が向上することが知られている。このため、前記ボンドの幅を広くするために鉄鉱石粉の焼結に十分な量の融液を生成させ、ボンドの網目状組織を均一にするために融液を均一に生成させることにより製品焼結鉱の強度を改善できるものと考えられている。
【0006】
上記の鉄鉱石粉の焼結に十分な量の融液を生成させるために、焼結機のパレット上に充填された造粒物層(ベッド)の通気抵抗を小さくして、ベッド中に多量の空気を流すことにより、固体燃料を効率よく、均一に燃焼させ、高強度の製品焼結鉱を製造(焼結)可能な高温を維持することが行われている。
【0007】
このベッドの通気抵抗を小さくするために、焼結原料の粗粒化や、焼結原料の造粒性を改善して焼結原料の擬似粒子化率を向上させて粗粒化させることが行われている。そして、この焼結原料の造粒性の改善のために、焼結原料にバインダー(生石灰、ベントナイト、消石灰、セメントクリンカ粉等)の添加が行われている。
【0008】
ところが、近年の良質鉄鉱石の産出量の減少に伴い、使用する鉄鉱石の銘柄が多くなり、焼結原料の造粒性はこれら銘柄によって大きく影響されている。すなわち、粗粒原料の配合比の低下や、造粒性の劣る銘柄の鉄鉱石や、同じく造粒性の劣る焼結返鉱の配合量の増加に伴い、焼結原料の造粒性の低下が生じることである。この結果、焼結原料の通気性が低下して、製品焼結鉱の強度が低下する問題がある。このため、焼結原料の造粒性の改善のために、焼結原料にバインダーを多量に添加する方法が行われている。
【0009】
しかし、焼結原料にバインダーを多量に添加する方法は、焼結鉱の製造コストの増加につながる問題がある。さらに、焼結原料へのバインダーの多量添加は、製鉄用原料としての鉄分含有量の低下を招くことになり、生産性の面から高炉操業に悪影響を及ぼすことになる。そこで、本発明者らは、既に、特願平11-141669 号に鉄鉱石粉と副原料とを混練する際に使用する配合水に水溶性化合物のアクマイト系化合物、珪酸ナトリウムなどのバインダー(焼結助剤)を少量添加することによって、バインダーとしての役割を果たす副原料(CaO) の添加量を増加させることなく、製品焼結鉱の強度を向上させると共に、製鉄用原料として悪影響を及ぼさない焼結鉱の製造方法を提案している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の配合水に添加する水溶性化合物のアクマイト系化合物、珪酸ナトリウムなどの焼結助剤は、使用する鉄鉱石銘柄および鉄鉱石粉の表面性状によって、その効果が大きく変動することがある。すなわち、結晶水を多く含む鉄鉱石粉は、保水率が高くなる傾向にあり、この保水率が高いということは、鉄鉱石粉表面に開気孔が多く存在していることを意味する。また、鉄鉱石粉の表面性状すなわち比表面積が大きい鉄鉱石粉は、結晶水を多く含む鉄鉱石粉と同様に、鉄鉱石粉表面に開気孔が多く存在していることを意味する。従って、結晶水を多く含む鉄鉱石粉および比表面積が大きい鉄鉱石粉は、鉄鉱石粉に存在する開気孔が水溶性化合物を含有する配合水を吸収して、配合水が他の鉄鉱石粉(低結晶水鉱石粉、小比表面積鉄鉱石粉)の表面を均一に覆うことができなくなり、その結果、アクマイト系化合物、珪酸ナトリウムなどの焼結助剤の効果が小さくなり製品焼結鉱全体の焼結強度の向上が望めなくなる。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、主原料である鉄鉱石粉を結晶水含有量および比表面積で分別して、それぞれについて鉄鉱石粉と副原料とに水溶性化合物を含有する配合水を添加して、混練し、造粒することによって、バインダーとしての役割を果たす副原料(CaO) の添加量を増加させることなく、焼結鉱の強度を向上させると共に、製鉄用原料として高炉操業に悪影響を及ぼさない製品焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の発明は、複数銘柄の鉄鉱石粉と副原料とに配合水を添加して混練し、次いで造粒を行った後、この造粒物を焼結する焼結鉱の製造方法において、前記複数銘柄の鉄鉱石粉を結晶水含有量が 3.0 質量%未満の銘柄の粉鉱石のみからなる低結晶水グループと残りの銘柄の粉鉱石からなる高結晶水グループとに分別し、前記低結晶水グループには、アクマイト系化合物を含有する配合水を添加して混練し、次いで造粒を行って第1の造粒物を作製するいっぽう、前記高結晶水グループには、アクマイト系化合物を含有しない配合水を添加して混練し、次いで造粒して別途第2の造粒物を作製し、これら第1および第2の造粒物を均一に混合した後、焼結することを特徴とする焼結鉱の製造方法である。
【0013】
請求項2記載の発明は、複数銘柄の鉄鉱石粉と副原料とに配合水を添加して混練し、次いで造粒を行った後、この造粒物を焼結する焼結鉱の製造方法において、前記複数銘柄の鉄鉱石粉を比表面積が 6.0m2/g未満の銘柄の鉄鉱石粉のみからなる小比表面積グループと残りの銘柄の粉鉱石からなる大比表面積グループとに分別し、前記小比表面積グループには、アクマイト系化合物を含有する配合水を添加して混練し、次いで造粒を行って第1の造粒物を作製するいっぽう、前記大比表面積グループには、アクマイト系化合物を含有しない配合水を添加して混練し、次いで造粒して別途第2の造粒物を作製し、これら第1および第2の造粒物を均一に混合した後、焼結することを特徴とする焼結鉱の製造方法である。
【0014】
上記のように、主原料である粉鉱石粉を結晶水含有量と比表面積で分別して造粒した造粒物と別途造粒した造粒物とを均一に混合して、焼結することによって、製品焼結鉱の強度の高い焼結鉱を得ることができる。このときの混合割合は特に限定するものではなく、結晶水含有量が 3.0質量%未満の鉄鉱石粉と副原料との造粒物と比表面積が 6.0m2/g未満の鉄鉱石粉と副原料との造粒物とを均一に混合して焼結しても、本発明の目的を達成することができる。
【0015】
主原料である鉄鉱石粉を結晶水含有量および比表面積とで分別しているため、水溶性化合物であるアクマイト系化合物を含有する配合水は鉄鉱石粉の表面を均一に覆うので、焼成工程の焼結前の乾燥時に前記アクマイト系化合物が確実に鉄鉱石粉をコーティングする状態にすることができる。この結果、前述したアクマイト系化合物と鉄鉱石粉との反応を効率よく行うことができる。配合水に含有するアクマイト系化合物は鉄鉱石粉と反応して1200℃以下、好ましくは1150℃以下の融点を有する反応物を生成するので、従来の焼結鉱の焼結温度 (1150℃〜1200℃) で鉄鉱石粉と効率よく反応して融液を生成し、この生成した融液により、鉄鉱石粉と副原料とのスラグ反応による融液の生成を促進して、鉄鉱石粉の焼結に十分な量の融液を生じ、製品焼結鉱の強度を向上することができる。そして、前述したように、アクマイト系化合物を含有する配合水は、鉄鉱石粉の表面を均一に覆い、鉄鉱石粉を確実にコーティングするので、この配合水に含有させるアクマイト系化合物を少量(例えば、 0.1質量%)にすることができるため、アクマイト系化合物を形成する元素による高炉操業に悪影響を及ぼさない製品焼結鉱を製造することができる。
【0016】
ここで、主原料である鉄鉱石粉を結晶水含有量 3.0質量%未満および比表面積 6.0m2/g未満とに分別する理由について説明する。調査に使用した鉄鉱石銘柄と結晶水含有量および比表面積を表1に示す。図7は鉄鉱石の銘柄別の強熱減量と保水率との関係を示す図で、強熱減量の大きい高結晶水鉄鉱石ほど保水率が高いことを示している(保水率については下記を参照)。このことは保水率の高い高結晶水鉄鉱石粉ほど、鉄鉱石粉の表面に開気孔が多く存在していることを意味する(図9参照)。従って、高結晶水鉄鉱石粉と低結晶水鉄鉱石粉とが混在していれば、配合水は高結晶水鉄鉱石粉の開気孔に吸収され、開気孔の少ない低結晶水鉄鉱石の表面を均一に覆うことができなくなる。このため、本発明では、配合水に含有させるアクマイト系化合物の効果を最大ならしめるために、結晶水含有量 3.0質量%未満の鉄鉱石粉と、それ以上の鉄鉱石粉とを分別して、混練し、造粒する。
【0017】
ここで、保水率は次の方法によって求めた。保水率の測定方法は、図10に示すように、 100℃で24時間乾燥した各鉄鉱石粉から試料7を採取し質量Yを測定した後、篩上にうつし、篩8と共に試料の質量X1 を測定する。篩と試料の質量X1 を測定後、篩8と共に水9中に24時間浸漬する。24時間経過後、各試料を篩ごと水中から引き上げ、大気中で 2時間保持して表面の付着水を除去する。その後、篩と共に試料の質量X2 を測定する。そして、保水率WH は、WH =(X2-X1)/Y×100 の式で求める。
【0018】
図8は鉄鉱石粉の平均比表面積と保水率との関係を示す図で、比表面積が大きい鉄鉱石粉ほど保水率が高いことを示している。このことは、比表面積が大きい鉄鉱石粉ほど、鉄鉱石粉の表面に開気孔が多く存在していることを意味する。従って、比表面積の大きい鉄鉱石粉と比表面積の小さい鉄鉱石粉とが混在していれば、配合水は比表面積の大きい鉄鉱石粉表面の開気孔に吸収され、比表面積の小さい(開気孔が少ない)鉄鉱石粉の表面を均一に覆うことができなくなる。このため、本発明では、配合水に含有させるアクマイト系化合物の効果を最大ならしめるために、比表面積 6.0m2/g未満の鉄鉱石粉と、それ以上の鉄鉱石粉とを分別して、混練し、造粒する。
【0019】
図9は、開気孔の少ない鉄鉱石粉と開気孔の多い鉄鉱石粉の場合の鉄鉱石粉同士の間の配合水の吸収状態と低融点融液の生成状態を示す模式図で、開気孔の少ない鉄鉱石粉の場合は、鉄鉱石粉同士の間に水溶性化合物(アクマイト系化合物)が集まり、その結果、焼結時には、鉄鉱石粉同士の間に低融点融液が多く生成され焼結強度が向上する。一方、開気孔の多い鉄鉱石粉の場合は、開気孔に配合水が吸収され、鉄鉱石粉同士の間の水溶性化合物(アクマイト系化合物)が少なくなり、その結果、焼結時に生成される鉄鉱石粉同士の間の低融点融液が少なくなり焼結強度の向上が望めなくなる。
【0020】
【表1】
【0021】
請求項3記載の発明は、前記アクマイト系化合物が 760 〜 900 ℃の範囲の融点を有するものである請求項1または請求項2に記載の焼結鉱の製造方法である。このように、融点が 900 ℃以下のアクマイト系化合物を配合水に含有させることで、アクマイト系化合物が、鉄鉱石粉と反応して、 500〜900 ℃の範囲の融点を有する反応物を生成することによって、従来の焼結鉱の焼結温度(1150℃〜1200℃)より、さらに低い温度から融液を生成させることができるので、この生成した融液により、鉄鉱石粉と副原料とのスラグ反応による融液の生成をさらに促進して、鉄鉱石粉の焼結に十分な量の融液を生じ、製品焼結鉱の強度をさらに向上することができる。
【0022】
ここで、配合水に含有させる水溶性化合物としてアクマイト系化合物(Fe2O3-Na2O-SiO2系化合物、Na2O-SiO2系化合物等)を用いる理由について Fe 2 O 3 -Na 2 O-SiO 2 系化合物を例に挙げて説明する。Fe2O3-Na2O-SiO2系化合物は鉄鉱石粉の鉄酸化物(Fe2O3、FeO 等)と容易に反応し、このFe2O3-Na2O-SiO2系化合物中に鉄酸化物を固溶することができ、この鉄酸化物の固溶範囲が広い。Fe2O3-Na2O-SiO2系化合物の融点は、成分組成により 760℃から1200℃近傍までの範囲にあり、しかも、 900℃以下の融点を有する成分組成範囲が広い。
【0023】
このとき、Fe2O3-Na2O-SiO2系化合物を本発明の焼結鉱の製造方法に用いることにより、この化合物は従来の焼結鉱の焼結温度(1150〜1200℃)より低い温度で溶融して融液が生成し、この融液と鉄鉱石粉の鉄酸化物と反応する。そして、この鉄酸化物がFe2O3-Na2O-SiO2系化合物の融液に固溶して融液の生成を促進する(900℃以下の融点の成分組成範囲が広いので融液の生成を促進) 。この融液により、前述したように、鉄鉱石粉と副原料とのスラグ反応による融液の生成をさらに促進することができ、鉄鉱石粉の焼結に十分な量の融液を生じさせ、製品焼結鉱の強度を向上することができる。すなわち、 900℃以下の融点の成分組成のFe2O3-Na2O-SiO2系化合物を本発明の焼結鉱の製造方法に用いることにより、前記焼結温度より、さらに低い温度、 500〜900℃の範囲で融液を生成させることができ、上述したように、製品焼結鉱の強度をさらに向上することができる。以上のような理由により、本発明では、配合水に含有させる水溶性化合物としてアクマイト系化合物を用い、特に融点が 760 〜 900 ℃の範囲( 900 ℃以下)のものを用いるのが好ましい。
【0024】
請求項4記載の発明は、前記アクマイト系化合物が珪酸ナトリウムである請求項1または請求項2に記載の焼結鉱の製造方法である。前記 Fe 2 O 3 -Na 2 O-SiO 2 系化合物に加えて、Na2O-SiO2系化合物も本発明の焼結鉱の製造方法に用いることができる。Na2O-SiO2系化合物は融点が約1020〜1090℃の範囲にある。このNa2O-SiO2系化合物も、上述したと同様に、鉄鉱石粉の鉄酸化物と容易に反応して、この鉄酸化物がNa2O-SiO2系化合物中に固溶してFe2O3-Na2O-SiO2系化合物の融液を生成する。その後、 500℃以上の温度で鉄鉱石粉と副原料とのスラグ反応による融液の生成を促進し、鉄鉱石粉の焼結に十分な量の融液が生じ、製品焼結鉱の強度を向上することができる。
【0025】
また、珪酸ナトリウムは水に易溶であるので、所望の濃度の化合物の水溶液を調整することができる。本発明で使用する珪酸ナトリウムは、メタ珪酸ナトリウム (Na2SiO3)だけでなく、オルト珪酸ナトリウム (Na4SiO4)等の無水塩を用いることができ、さらに、これらの無水塩の水溶液が加水分解して得られるNa2Si2O5、Na2Si4O9等の各種のポリ珪酸ナトリウムを用いることができる。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4に記載のいずれかの焼結鉱の製造方法によって製造された焼結鉱である。上述のように、本発明の焼結鉱の製造方法は、強度が高く、高炉操業に悪影響を及ぼさない製品焼結鉱の製造が可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、以下に実施例を挙げて具体的に説明する。
【0028】
【実施例1】
本発明による焼結鉱の製造試験を焼結鍋を用いて行った。使用鉄鉱石粉は高結晶水グループと低結晶水グループで、これら二つのグループは別々に造粒した。これらの原料配合条件を表2に示す。なお、比較例として、二つのグループを一つにまとめて一括して造粒した例も加えた。配合水にはJIS3号珪酸ナトリウム溶液を 1.0質量%(配合水中の珪酸ナトリウム濃度に換算すると、約 0.1質量%になる。)含有させている。配合水の添加量は、造粒後目標値で 7.0質量%である。さらに、ブリーズを 5.5質量%(外挿)、返鉱を25質量%(外挿)配合している。造粒手順を図1に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
造粒手順は図1に示すように、(a) は通常の造粒方法で、原料鉄鉱石粉を結晶水含有量で分別せずに一括して造粒した。配合水には珪酸ナトリウムを含有していない。(b) は(a) の造粒方法と同じであるが、配合水には珪酸ナトリウムを含有している。(c) は高結晶水グループに珪酸ナトリウムを含有する配合水を添加し、(d) は低結晶水グループに珪酸ナトリウムを含有する配合水を添加し造粒した。本発明は(d) の造粒方法に該当する。(c) と(d) の造粒方法で造粒した造粒物は、焼結製造試験に先立って、高結晶水グループ2に対して低結晶水グループ3の質量割合で、ドラムミキサーで1分間均一に混合した。
【0031】
造粒した造粒物は直径:100mm、高さ:300mmの焼結鍋に充填し、続いて層頂面に着火し、吸引圧力:3.53kPa一定で吸引しながら焼結を行った。このとき、焼結鍋での充填層内各部位における温度変化、排ガス中のCO、CO2 、O2の濃度変化および吸引ガス風量変化を測定し、各焼結製造試験条件が同じであることを確認した。
【0032】
次いで、焼結鍋で焼結した焼結鉱について、落下強度を調査した。その結果を図2に示す。落下強度は、製品焼結鉱を2mの高さから鉄製台上に一度に落下させる操作を4回繰り返した後、全量を 5mmの篩でふるい分けて、 5mm以上の質量割合を求めたものである。
【0033】
図2に示すように、珪酸ナトリウムを含有している配合水を図1(b) のように一括添加した場合および(c) のように高結晶水グループに添加した場合は、大きな焼結強度の向上は認められず、(d) のように低結晶水グループに添加した場合のみ、大きな焼結強度の向上が認められる。また、このときの生産率変化を図3に示す。生産率に関しても落下強度と同様に、(d) のように低結晶水グループに珪酸ナトリウムを含有している配合水を添加した場合にのみ、明確な生産率の向上が認められる。
【0034】
【実施例2】
本発明による焼結鉱の製造試験を焼結鍋を用いて行った。使用鉄鉱石粉は大比表面積グループと小比表面積グループで、これら二つのグループは別々に造粒した。これらの原料配合条件を表3に示す。なお、比較例として、二つのグループを一つにまとめて一括して造粒した例も加えた。配合水にはJIS3号珪酸ナトリウム溶液を 1.0質量%(配合水中の珪酸ナトリウム濃度に換算すると、約 0.1質量%になる。)含有させている。配合水の添加量は、造粒後目標値で 7.0質量%である。さらに、ブリーズを 5.5質量%(外挿)、返鉱を25質量%(外挿)配合している。造粒手順を図4に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
造粒手順は図4に示すように、(a) は通常の造粒方法で、原料鉄鉱石粉を比表面積で分別せずに一括して造粒した。配合水には珪酸ナトリウムを含有していない。(b) は(a) の造粒方法と同じであるが、配合水には珪酸ナトリウムを含有している。(c) は大比表面積グループに珪酸ナトリウムを含有する配合水を添加し、(d) は小比表面積グループに珪酸ナトリウムを含有する配合水を添加し造粒した。本発明は(d) の造粒方法に該当する。(c) と(d) の造粒方法で造粒した造粒物は、焼結製造試験に先立って、大比表面積グループ2に対して小比表面積グループ3の質量割合で、ドラムミキサーで1分間均一に混合した。
【0037】
造粒した造粒物は直径:100mm、高さ:300mmの焼結鍋に充填し、続いて層頂面に着火し、吸引圧力:3.53kPa一定で吸引しながら焼結を行った。このとき、焼結鍋での充填層内各部位における温度変化、排ガス中のCO、CO2 、O2の濃度変化および吸引ガス風量変化を測定し、各焼結製造試験条件が同じであることを確認した。焼結鍋で焼結した焼結鉱については、実施例1と同じ方法で落下強度を調査した。その結果を図5に示す。
【0038】
図5に示すように、珪酸ナトリウムを含有している配合水を図4(b) のように一括添加した場合および(c) のように大比表面積グループに添加した場合は、大きな焼結強度の向上は認められず、(d) のように小比表面積グループに添加した場合のみ、大きな焼結強度の向上が認められる。また、このときの生産率変化を図6に示す。生産率に関しても落下強度と同様に、(d) のように小比表面積グループに珪酸ナトリウムを含有している配合水を添加した場合にのみ、明確な生産率の向上が認められる。
【0039】
実施例1および2においては、配合水の珪酸ナトリウム含有量は 0.1質量%であるが、焼結強度の向上および生産率の向上には、配合水の珪酸ナトリウム含有量は 0.005質量%以上が好ましいが、配合水に 0.3質量%を超えて珪酸ナトリウムを含有させると、配合水の粘度が上昇して、原料の造粒性が低下するので、配合水の珪酸ナトリウムの含有量は造粒性の面から 0.4質量%以下が望ましい。
【0040】
【発明の効果】
以上述べたところから明らかなように、本発明によれば、主原料である鉄鉱石粉を結晶水含有量および比表面積で分別して、それぞれについて鉄鉱石粉と副原料とに、焼結温度より低い温度で前記鉄鉱石粉と反応して融液を生成する水溶性化合物であるアクマイト系化合物、珪酸ナトリウムを含有する配合水を添加して、混練し、造粒した造粒物を焼結するため、バインダーとしての役割を果たす副原料(CaO) の添加量を増加させることなく、焼結鉱の強度を向上させると共に、製鉄用原料として悪影響を及ぼさない製品焼結鉱の製造方法とそれによる焼結鉱を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における造粒手順を示す図である。
【図2】実施例1における落下強度を示す図である。
【図3】実施例1における生産率を示す図である。
【図4】実施例2における造粒手順を示す図である。
【図5】実施例2における落下強度を示す図である。
【図6】実施例2における生産率を示す図である。
【図7】鉄鉱石の銘柄別の強熱減量と保水率との関係を示す図である。
【図8】鉄鉱石粉の平均比表面積と保水率との関係を示す図である。
【図9】 (a) 開気孔の少ない鉄鉱石粉の場合と(b) 開気孔の多い鉄鉱石粉の場合の鉄鉱石粉同士の間の配合水の吸収状態と低融点融液の生成状態を示す模式図である。
【図10】保水率を求めるための説明図である。
【図11】焼結鉱製造工程の説明図である。
【符号の説明】
1…鉄鉱石粉、2…開気孔、3…原料槽、4…ドラムミキサー、5…給鉱ホッパー、6…焼結機、7…試料、8…篩、9…水。
Claims (5)
- 複数銘柄の鉄鉱石粉と副原料とに配合水を添加して混練し、次いで造粒を行った後、この造粒物を焼結する焼結鉱の製造方法において、前記複数銘柄の鉄鉱石粉を結晶水含有量が 3.0 質量%未満の銘柄の粉鉱石のみからなる低結晶水グループと残りの銘柄の粉鉱石からなる高結晶水グループとに分別し、前記低結晶水グループには、アクマイト系化合物を含有する配合水を添加して混練し、次いで造粒を行って第1の造粒物を作製するいっぽう、前記高結晶水グループには、アクマイト系化合物を含有しない配合水を添加して混練し、次いで造粒して別途第2の造粒物を作製し、これら第1および第2の造粒物を均一に混合した後、焼結することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
- 複数銘柄の鉄鉱石粉と副原料とに配合水を添加して混練し、次いで造粒を行った後、この造粒物を焼結する焼結鉱の製造方法において、前記複数銘柄の鉄鉱石粉を比表面積が 6.0m2/g未満の銘柄の鉄鉱石粉のみからなる小比表面積グループと残りの銘柄の粉鉱石からなる大比表面積グループとに分別し、前記小比表面積グループには、アクマイト系化合物を含有する配合水を添加して混練し、次いで造粒を行って第1の造粒物を作製するいっぽう、前記大比表面積グループには、アクマイト系化合物を含有しない配合水を添加して混練し、次いで造粒して別途第2の造粒物を作製し、これら第1および第2の造粒物を均一に混合した後、焼結することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
- 前記アクマイト系化合物が 760 〜 900 ℃の範囲の融点を有するものである請求項1または請求項2に記載の焼結鉱の製造方法。
- 前記アクマイト系化合物が珪酸ナトリウムである請求項1または請求項2に記載の焼結鉱の製造方法。
- 請求項1乃至請求項4に記載のいずれかの焼結鉱の製造方法によって製造された焼結鉱。
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