JP4786022B2 - 焼結鉱の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、マラマンバ鉱石を焼結原料の一部として用いる製銑用焼結鉱の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉製鉄法に用いられる主要原料である焼結鉱は、一般的に以下のようにして製造される。まず、焼結原料の主原料である約10mm以下の鉄鉱石粉に、石灰石、ドロマイト、転炉スラグなどの含CaO副原科、蛇蚊岩、珪石、かんらん岩などの含SiO2副原科、およびコークス粉、無煙炭などの炭材を配合し、さらにそれらに適量の水分を加えて混合、造粒する。このように焼結における通気性を阻害しないように擬似粒化した配合原料(擬似粒子)を火格子移動式の焼結パレット上に500mm前後の高さで充填し、この充填ベッド表層部の炭材に点火する。その後、充填層の下方に向けて空気を吸引しながら炭材を燃焼させ、そのときに発生する燃焼熱によって配合原料を焼結した後、生成された焼結ケーキを破砕、整粒することにより粒子径3〜5mm以上の成品焼結鉱が製造される。
【0003】
これらの焼結鉱のほとんどは、高炉用原料として使用されるが、高炉用原料として不適当な粒径が3〜5mm未満の焼結鉱粉は返鉱と呼ばれ、焼結鉱用の原料として戻される。
【0004】
高炉を安定かつ高効率で操業するには高品質の焼結鉱が要求され、冷間強度、被還元性、耐還元粉化性などの品質が厳しく管理されている。また、焼結鉱の製造コストの面から、歩留(成品焼結鉱/焼結ケーキ)が高いことが要望されている。
【0005】
世界には成分が多種多様な鉄鉱石が存在し、一般的にはこれらを混合して配合原料としている。世界の鉄鉱石資源をみると、これまでの良質なヘマタイト鉱石は枯渇の方向にあり、現状の生産が続くと主要鉱山は近年中にも掘り尽くしてしまうと予測されている。
【0006】
一方、焼結用原料として、日本で輸入・使用されている粉鉱石のうち、ピソライト鉱とペレットフィードは、良質なヘマタイト鉱石に比較して、焼結性は劣るものの、埋蔵量が多くかつ採掘費用が安いため比較的安価に安定して供給できる環境にあり、コスト低減など経済的効果ばかりでなく、資源の有効利用といった大きな意義がある。
【0007】
したがって、この数十年来、これらの安価な鉄鉱石を焼結性の悪さを克服しつつ如何に多く使用するかが、安価に焼結鉱を製造する第1の技術課題となっている。
【0008】
ピソライト鉱とは、魚卵状のヘマタイト(Fe23)粒子の隙間をゲーサイト(Fe23・H2O)が埋める構造を有する鉄鉱石であり、表1に示すように8%前後の高い結晶水を含有する豪州産の鉄鉱石の分類名称である。産地銘柄名(通称名)でローブリバー鉱、ヤンディー鉱などがピソライト鉱に相当する。
【0009】
ピソライト鉱は、加熱時に結晶水の分解によりゲーサイト部に選択的に大きな亀裂を生じ鉄鉱石を脆弱化するとともに、副原料との反応で生成した融液が亀裂侵入後、融液部に大きな気孔を生成し、製品歩留の低下や焼結鉱の強度低下を招く問題があり、劣質鉱石としてその使用量が制限されていた。この安価なピソライト鉱の多量使用を目的として、従来から数多くの検討がなされており、例えば、特開平3−47927号公報、特開平4−13818号公報などには、ピソライト鉱石の表面に特殊な組成の保護層を形成させて、亀裂部への融液浸入を防止する方法が開示され、特開平6−17152号公報、特開平4−269190号公報等には、ピソライト鉱の周りに粘性の高い融液を形成させ、亀裂部への融液浸入を防止する方法が開示され、特開平5−816203号公報などには、ピソライト鉱とSiO2含有量が1.5質量%以下の高品位鉄鉱石を組合せて用い、溶融部組織のカルシウムフェライト化を促進して結合相を形成する方法が開示されている。
【0010】
ペレットフィードとは、粒度が0.25mm以下と非常に小さいため、焼結用原料としては適さず、本来焼成ペレット用の微粉鉄鉱石として使用されているものであるが、需給状況に応じて焼結用原料の一部として転用・流通している鉄鉱石である。一般的に、ペレットフィードの鉄分品位は高いが、粒度が0.25mm以下であるため、焼結工程における通気性阻害の原因となり、通常10質量%程度が使用限度と考えられている。従来、このようなペレットフィードの問題を改善するために、例えば、特開昭55−125240号公報等には、事前にベントナイト等のバインダーを加えて擬似粒化する方法が開示され、特開平1−312036号公報、特開平3−166321号公報および特開昭59−232238号公報には、それぞれ、高速攪拌機能を有する造粒機、振動造粒機または成型機を導入して造粒工程を強化する方法が開示され、焼結用原料としての安価なペレットフィードの使用拡大が一部で実施されている(CAMP−ISIJ,7(1994),p.1036)。
【0011】
近年、上記のピソライト鉱やペレットフィードに加えて、マラマンバ鉱石が安価原料として注目されている。
【0012】
マラマンバ鉱石とは、豪州のマラマンバ鉄鉱床から産出する鉄鉱石の総称であり、ゲーサイト(Fe23・H2O)とマータイト(マグネタイト構造を有するFe23)を主要鉄鉱物とし、表1に示す産地銘柄名(通称名)でウエストアンジェラス鉱がその代表的な鉄鉱石である。その化学組成は、表1に示すように、例えば、豪州のブロックマン鉄鉱床から産出される主要鉱石である良質なヘマタイト主要鉱石と比較して結晶水含有量が5%程度と高く、ピソライト鉱と比較してSiO2等の脈石成分が3%程度と低いこと、また粒度0.25mm以下の微粉鉄鉱石が多いことを特徴とする。
【0013】
現状では、豪州のマラマンバ鉄鉱床の一部はすでに開発されているが、その性状から焼結工程での製品歩留や生産性を低下させるおそれがあるため、10%程度をブロックマン鉄鉱床から産出する良質なヘマタイト主要鉱石にブレンドして使用している。
【0014】
豪州では、ブロックマン鉱床の良質なヘマタイト主要鉱石の枯渇に伴い、ピソライト鉱床のみならず、マラマンバ鉱床に生産が移行するとされ、マラマンバ鉱石が今後の豪州産鉄鉱石の主力となることが予想される。
【0015】
従来のマラマンバ鉱石の使用例としては、日本鋼管(株)福山製鉄所において、HPS法(鉄と鋼,73(1987),p.62)の適用により多量のマラマンバ鉱石を使用した実績はあるが、特開昭63−14933号公報、特開昭63−149334号公報および特開昭63−149336号公報等で開示されるHPS法は、造粒工程に特殊な皿型造粒設備を導入することで単に粒径の小さい微粉鉱石の多量使用を可能とした技術であり、マラマンバ鉱石特有の性質を考慮した既存設備による造粒方法ではない。また、既設焼結機への皿型造粒設備の導入には莫大な設備投資を要するものである。
【0016】
従って、従来、よく知られていなかったマラマンバ鉱石の焼結特性を明らかとし、安価なピソライト鉱やペレットフィードと同様に、マラマンバ鉱石の効果的な利用技術を確立することは、目下の焼結製造コストおよび焼結鉱品質に関する緊急かつ最重要課題と認識される。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安価でかつ資源的にも豊富なマラマンバ鉱石を焼結原料として使用する際に、特殊な設備を用いた事前造粒等を必要とせずに良好な製品歩留および焼結鉱の品質を維持できるマラマンバ鉱石を使用する焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
【0020】
(1)新原料の全質量に対して5質量%以上の配合率でマラマンバ鉱石を新原料中に配合する製鉄用焼結鉱の製造方法において、マラマンバ鉱石を用いない場合の焼結原料の配合を基準とし、前記新原料の内で、ブラジル産ペレットフィードの配合率を、前記基準の焼結原料の配合に対する前記マラマンバ鉱石の配合率の増加率に対して30%上減少することを特徴とする製鉄用焼結鉱の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について詳述する。
【0023】
前述したように、一般に焼結鉱を製造する際には、焼結原料を混合、造粒して、擬似粒化した配合原科(擬似粒子)を製造する。擬似粒子は粒径が1mm以上の粗大粒径の核粒子に粒径が1mm未満の微粉が付着した構造となっており、焼成過程で核粒子に付着している微粉が溶融し、その後、融液が粗大粒径の核粒子の一部または全部を溶融することで一体化していく。このとき、焼結過程において1mm未満の微粉は全て溶融すると考えられるので、1mm以上の粗大粒径の核粒子の溶融時の挙動、すなわち溶融量や溶融によって生成する融液の流動性などが焼成体の冷間強度等の品質特性に大きく影響を与える。また、焼結原料の粒径は焼結工程での通気性に影響し、粒径1mm未満の微粉が多くなるほど、焼結時の通気性が悪化する傾向にある。したがって、焼結における製品歩留、焼結鉱品質、生産性を適正に維持するためには、焼結原料の主要原料である鉄鉱石の焼結特性(同化反応特性)、粒度および造粒性を知ることが重要である。
【0024】
先ず、発明者らは、従来よく知られていなかったマラマンバ鉱石の特徴を詳細に調査した。表1にマラマンバ鉱石および日本で一般に使用されている鉄鉱石銘柄の化学成分と粒度、表2に代表的な鉄鉱石の造粒性と焼結反応性に関する指数をそれぞれ示す。鉄鉱石の焼結特性は、表1に示す化学成分だけでは十分に表し切れず、鉄鉱石の鉱物構成や結晶度、その配置も大きな影響をもつ。しかし、現在のところ、それらを指標化する技術は完成しておらず、表2に示す吸水率、造粒性、加熱後気孔率、融液浸透性などの中間指標を鉄鉱石ごとに測定、評価するに留まっている。吸水率とは、80Gの遠心力下で保持している水分量(質量%)であり、造粒時の適正水分値に概ね対応する数値を示す。造粒性とは、疑似粒子を乾燥した後にも核粒子の周囲に保持されて残っている微粉の付着量の乾燥前の全微粉に対する比率(質量%)であり、粒径2〜3mmの核粒子60%と粒径0.25mm以下の粉粒子40%を造粒後、乾燥させてロータップで篩い分けして測定して求めた。加熱後気孔率は、疑似粒子充填層の1300℃加熱後の気孔率(%)を画像処理で測定したものである。融液浸透性は、1300℃における鉄鉱石のペレット(粒径0.25mm以下の微粉を圧縮成型したペレット)中へのCaFe23融液の浸透距離(mm)を表している。
【0025】
【表1】
Figure 0004786022
【0026】
【表2】
Figure 0004786022
【0027】
表1の化学成分および表2の指標と焼結特性との関係については、一般に以下のような関係があると考えられている。表1の鉄鉱石中のAl23成分は、一般に融液の流動性を低下させて、焼結歩留や焼結鉱のRDI(還元粉化性)を悪化させる。しかしながら、融液の流動性は、単にAl23成分だけでは整理できず、この融液の流動性を直接測定した結果が表2中の融液流動性の値である。表1の鉄鉱石中の結晶水(CW)は、エネルギー的に焼成時の所要熱量を増加させて粉コークス原単位を悪化させるだけでなく、加熱後の焼結鉱中の気孔率を増加させてその強度を低下させる。表2中の焼結鉱中の加熱後気孔率は、実際は加熱前の気孔率の影響も受けるため、試験により直接測定したものである。表1の鉄鉱石の粒度が低下すると、焼成時に原料ベッドの通気性を阻害して、生産性の低下を招く。焼成時の通気性は、鉄鉱石の粒度以外にも、造粒時における鉄鉱石表面の濡れ性等の鉄鉱石本来の特性が深く関与しており、表2の吸水率と造粒性はそれを表す中間指標である。
【0028】
表1および表2に示すようなマラマンバ鉱石と代表的な鉄鉱石との特性の比較検討から以下のことが明らかになった。
【0029】
マラマンバ鉱石は、ハマスレー、ニューマン鉱等の同じ豪州産のブロックマン鉱石と比較して、▲1▼粒径0.25mm以下の微粉部分の含有比率が多いこと、▲2▼吸水率は大きいにもかかわらず造粒性は悪いこと、▲3▼結晶水(CW)の含有量が多いことに起因して加熱後の鉄鉱石の気孔率が高いこと、▲4▼SiO2、Al23の脈石成分が少ないことを反映して融液の流動性が良好であることなど、従来の焼結原料に用いる代表的な鉄鉱石にはない特徴をもつことが判った。
【0030】
通常、焼結用原料は、表1および表2に示すような産地により粒度、化学成分、造粒性および焼結反応性が異なる10〜20種の鉄鉱石を所定量ずつ配合して使用されるが、各鉄鉱石銘柄の特性の違いによる焼結鉱の生産性や製品歩留への影響度は、各鉄鉱石の加成性が成り立たないことから、理論的な予測は難しく、実験的検討を行わなければならないのが現状である。
【0031】
上記の知見から、発明者らはマラマンバ鉱石を単純に焼結原料として使用して焼結鉱を生産する場合、主に、1)鉄鉱石の多量の微粉部分に起因した焼成時の通気性悪化(むら焼け増加)、2)加熱後の結晶水の分解により多量発生した鉱石中の気孔が融液部に残存することによる焼結組織の脆弱化(冷間強度の低下)の理由により、製品歩留および焼結鉱の品質の低下を招くおそれがあると考え、マラマンバ鉱石を焼結原料として使用する際の焼結原料の配合条件等を検討した。
【0035】
本発明者らの検討の結果、新原料の全質量に対して5質量%以上の配合率でマラマンバ
鉱石を新原料中に配合して焼結鉱を製造する際に、マラマンバ鉱石を用いない場合の焼結原料の配合を基準とし、前記新原料の内で、ブラジル産ペレットフィードの配合率を、前記基準の焼結原料の配合に対する前記マラマンバ鉱石の配合率の増加に対して30%上減少することにより、焼結原料の造粒性が向上し、マラマンバ鉱石を焼結原料として使用した際の焼結時の通気性が向上して生産性と焼結製品歩留が向上できることが判った。
【0036】
本発明で、マラマンバ鉱石の配合率の増加量に応じて配合率を減少するペレットフィードの銘柄をブラジル産ペレットフィードに限定した理由は、それ以外のペレットフィードの銘柄は、ブラジル産ペレットフィードやマラマンバ鉱石に比べて造粒性が良好であるために、それらの配合率を減少することにより充分な造粒性向上の効果が得られなかったためである。図2に、ブラジル産ペレットフィード(MBR.PF)とインド産ペレットフィード(クドレムクPF)のそれぞれをウエストアンジェラス鉱(マラマンバ鉱石の産地銘柄)の配合率増加量に対して減少させた場合の配合率減少量とその時の焼結鉱の生産率の増加量との関係を示す。なお、ウエストアンジェラス鉱の配合率の増加量は、15質量%一定とした。
【0037】
点線Dで示すインド産ペレットフィード(本発明範囲から外れる鉄鉱石)の場合では、上記効果が認められないが、実線Cで示すブラジル産ペレットフィード(本発明範囲内の鉄鉱石)の場合では、マラマンバ鉱石の配合率の増加量に対するブラジル産ペレットフィードの配合率の減少量を30%以上にすると通常の場合に比べて充分に通気性および生産率を改善する効果が認められた。したがって、本発明では、このような効果を得るために、マラマンバ鉱石の配合率の増加量に応じて、配合率を減少するペレットフィードの銘柄をブラジル産ペレットフィードに限定し、且つその配合率の減少量をマラマンバ鉱石の配合率の増加に対して30%以上と限定した。
【0042】
上記の本発明の方法を用いることにより、従来のペレットフィード等の微粉鉄鉱石を焼結用原料として用いる際に、ドラムミキサー以外の高速攪拌型造粒機やディスク型造粒機、または複数のドラムミキサーを並列に配した造粒ライン等の特段の造粒強化設備を用いることなく、通常の焼結工程で用いるような例えば1〜3台のドラムミキサーを直列に配する造粒ラインによる造粒で、良好な製品歩留り、焼結鉱品質、生産性を維持した焼結鉱の製造を実現できる。
【0043】
また、本発明でマラマンバ鉱石の使用量を新原料に対して5質量%以上に限定した理由は、5質量%未満の場合、マラマンバ鉱石の使用による焼結工程での製品歩留り、焼結鉱品質、生産性への悪影響が顕著な問題にならないためである。
以下、本発明の参考例について説明する。
新原料(返鉱、粉コークスを除く焼結原料)の全質量に対して5質量%以上の配合率でマラマンバ鉱石を新原料中に配合して焼結鉱を製造する際に、前記新原料の内で、粒度2mm以上の粗粒部分を35質量%以上含む銘柄の鉄鉱石の配合率を、前記マラマンバ鉱石の配合率の増加量に対して50質量%以上だけ増加することにより、マラマンバ鉱石を焼結原料として使用した際の焼結時の通気性が向上して生産性が向上し、かつムラ焼けが減少して焼結鉱の製品歩留が向上できることが判った。
この通気性の改善および生産性向上効果は、粒度2mm以上の粗粒部分の増加により、マラマンバ鉱石中に多く含有される微粉部分が、粗粒部分の核に付着して擬似粒化が促進されたことによって得られたものである。本発明において、マラマンバ鉱石の配合率の増加量に応じて、配合率を増加する鉄鉱石銘柄を粒度2mm以上の粗粒部分を35質量%以上含む銘柄の鉄鉱石に限定し、且つその配合率の増加量をマラマンバ鉱石の配合率の増加量に対して50質量%以上と限定した理由は、マラマンバ鉱石中に多量に含有する微粉部分に対して、擬似粒子の核となり得る粒度2mm以上の粗粒部分を十分に供給して、マラマンバ鉱石の擬似粒子化を促進させるためである。図1に、粒度2mm以上の粗粒部分を35質量%未満含むハマスレー鉱(本発明範囲から外れる鉄鉱石)とそれを35質量%以上含むカラジャス鉱(本発明範囲内の鉄鉱石)のそれぞれをウエストアンジェラス鉱(マラマンバ鉱石の産地銘柄)の配合率増加量に対して増加させた場合の配合率増加量とその時の焼結鉱の生産率の増加量との関係を示す。なお、ウエストアンジェラス鉱の配合率の増加量は、10質量%一定とした。点線Bで示すハマスレー鉱の場合では、上記効果が認められないが、実線Aで示すカラジャス鉱の場合では、マラマンバ鉱石の配合率の増加量に対するカラジャス鉱の配合率の増加量を50質量%以上にすると通常の場合に比べて充分に通気性および生産率を改善する効果が認められた。したがって、本発明では、このような効果を得るために、マラマンバ鉱石の配合率の増加量に応じて配合率を増加する鉄鉱石銘柄を粒度2mm以上の粗粒部分を35質量%以上含む銘柄の鉄鉱石に限定し、且つその配合率の増加量をマラマンバ鉱石の配合率の増加量に対して50質量%以上と限定した。
なお、上記の粒度2mm以上である粗粒部分が35質量%以上の鉄鉱石としては、上記カラジャス鉱以外に、表1および表2に示すローブリバー鉱、ヤンディー鉱およびそれらの篩下粉等を用いることができる。
また、本発明者らの検討の結果、新原料の全質量に対して5質量%以上の配合率でマラマンバ鉱石を新原料中に配合して焼結鉱を製造する際に、粒度が2mm以上の祖粒部分を35質量%以上含む銘柄の鉄鉱石として安価なピソライト鉱石を用い、その配合率を前記マラマンバ鉱石の配合率の増加量に対して50質量%以上だけ増加することにより、マラマンバ鉱石を焼結原料として使用した際の焼結時の通気性が向上して生産性が向上できるだけでなく、さらに、製品歩留が著しく向上でき、安価原料の使用量増加による製造コストの低減も可能になることが判った。
図3にローブリバー鉱(ピソライト鉱の産地銘柄)単独、ウエストアンジェラス鉱(マラマンバ鉱石の産地銘柄)単独、ウエストアンジェラス鉱とローブリバー鉱をそれらの配合率の比率が50質量%で配合した場合のそれぞれにおける配合率増加量と焼結製品歩留との関係を示す。
図3に示すように、ローブリバー鉱はウエストアンジェラス鉱と同様に劣質な鉱石であり、単独で増加させた場合はマラマンバ鉱石以上に製品歩留が低下するが、ピソライト鉱石をマラマンバ鉱石の配合率の増加量に対して50質量%以上の配合率の増加量で配合させることにより両者の特有な相乗効果により生産性の他に製品歩留も改善される。この特有な相乗効果は、生産性および製品歩留だけでなく焼結鉱の強度にも発現することを発明者らは確認している。また、図3のローブリバー鉱と同様に、同じピソライト鉱であるヤンディー鉱においても、同様な効果が得られた。
ここで、マラマンバ鉱石の配合率の増加量に応じて、配合率を増加する粒度が2mm以上である粗粒部分を35質量%以上含む銘柄の鉄鉱石としてピソライト鉱石を用いることにより、生産性向上だけでなく、著しい歩留改善効果も得られる理由は、上述の焼結原料の造粒性の向上に起因する通気性向上の効果の他に、マラマンバ鉱石がピソライト鉱石に比較して融液の流動性悪化原因であるSiO2、Al23の脈石成分が少ないため、全体の初期融液の流動性を向上させ、ピソライト鉱石の加熱後に結晶水分解に起因して生じた亀裂中に融液が容易に浸透して結合相を形成し、結果的に焼結鉱組織を緻密なものとしたためと考えられる。
【0044】
【実施例】
以下に実施例にて本発明の効果についてさらに詳細に説明する。
【0045】
現状ではマラマンバ鉱石は大量に入手できないため、焼結鍋試験を用いてマラマンバ鉱石を配合した焼結原料を焼成しその焼結鉱の評価を行った。表3に、本発明例および比較例のマラマンバ鉱石およびその他の焼結原料の配合条件と焼結試験結果を示す。
【0046】
【表3】
Figure 0004786022
【0047】
マラマンバ鉱石には、表1および表2に示す特性を有するウエストアンジェラス鉱を使用し、焼結原料中の硅石の配合率は、焼結鉱のSiO2の含有量が5.1質量%となるように調整した。焼結鍋試験は、直径300mm×高さ600mmの大きさの試験鍋を用い、吸引負圧12kPaにて実施した。
【0048】
基準1は、従来のマラマンバ鉱石を用いない平均的な焼結原料の配合の場合であり、比較例1は基準1の焼結原料の配合に対して、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱を15質量%配合させた場合であるが、ウエストアンジェラス鉱の配合により焼結鉱の生産性および製品歩留とも低下した。
【0049】
参考例1は、基準1の焼結原料の配合に対して、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱を10質量%配合するとともに、粒度2mm以上の粗粒部分を37質量%含むカラジャス鉱の配合率を基準1の13質量%に対して5質量%増加し、18質量%としたものである。その結果、基準1と比較して同等以上の焼結鉱の生産性および製品歩留を確保することができた。
【0050】
比較例2は、基準1の焼結原料の配合に対して、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱を12質量%配合するとともに、粒度2mm以上の粗粒部分を37質量%含むカラジャス鉱の配合率を基準1の13質量%に対して3質量%増加し、16質量%としたものである。しかしながら、比較例2は、カラジャス鉱の配合率の増加分3質量%が、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱の12質量%の配合率に対して25質量%と、本発明の参考例の知見よりも、カラジャス鉱の配合率の増加による造粒性向上の十分な効果が得られず、基準1と比較して焼結鉱の生産性および製品歩留が低下した。
【0051】
発明例3は、請求項に係る発明の実施例であり、基準1の焼結原料の配合に対して、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱を15質量%配合するとともに、ブラジル産ペレットフィードであるMBR.PFの配合率を基準1の5質量%に対して5質量%減少し、0質量%としたものである。その結果、基準1と比較して同等以上の焼結鉱の生産性および製品歩留を確保することができた。
【0052】
比較例3は、基準1の焼結原料の配合に対して、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱を15質量%配合するとともに、ブラジル産のペレットフィードであるMBR.PFの配合率を基準1の5質量%に対して3質量%減少し、2質量%としたものである。しかしながら、比較例3は、MBR.PFの配合率の減少分3質量%が、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱の15質量%の配合率に対して20質量%と、本発明の範囲より低いため、 MBR.PFの配合率の減少による造粒性向上の十分な効果が得られず、基準1と比較して焼結鉱の生産性および製品歩留が低下した。
【0053】
比較例4は、基準1の焼結原料の配合に対して、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱を15質量%配合するとともに、ブラジル産のペレットフィードではないクドレムクPFの配合率を基準1の5質量%に対して5質量%減少し、0質量%としたものである。しかしながら、比較例4は、ブラジル産のペレットフィードではないクドレムクPFの配合率を減少しているため、造粒性向上の効果が得られず、基準1と比較して焼結鉱の生産性および製品歩留が低下した。
【0054】
参考例3は、基準1の焼結原料の配合に対して、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱を10質量%配合するとともに、粒度2mm以上の祖粒部分を40質量%含むピソライト鉱石であるローブリバー鉱石の配合率を基準1の20質量%に対して5質量%増加し、25質量%としたものである。その結果、基準1と比較して焼結鉱の製品歩留は著しく増加し、焼結鉱の生産性は同等以上を確保することができた。
【0055】
比較例5は、基準1の焼結原料の配合に対して、マラマンバ鉱石であるウエストアンジェラス鉱を配合せずに、粒度2mm以上の粗粒部分を40質量%含むピソライト鉱石であるローブリバー鉱の配合率を基準1の20質量%に対して15質量%増加し、35質量%としたものであるが、基準1と比較して焼結鉱の生産性および製品歩留が低下した。
【0056】
基準1に対してマラマンバ鉱石とピソライト鉱石とを同時に増加させた参考例3では、マラマンバ鉱石のみを増加させた比較例1や、ピソライト鉱石のみを増加させた比較例5の焼結鉱の生産性および製品歩留の大幅な低下を抑制でき、基準1と比較して焼結鉱の製品歩留は著しく増加し、焼結鉱の生産性は同等以上を確保できることがわかる。これにより焼結鉱の製品歩留および焼結鉱の生産性を従来と同等以上に確保して安価なピソライト鉱石と安価なマラマンバ鉱石を使用することで焼結鉱のコストを低減することができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によると、焼結原料として、安価な難焼結性のマラマンバ鉱石を多量に配合した際、焼結鉱の生産性や製品歩留、製品品質を従来と同等以上に向上でき、さらに、マラマンバ鉱石とともに安価な難焼結性のピソライト鉱石を同時に多量に配合する場合には、従来の単独で使用した場合の焼結鉱の生産性や製品歩留、製品品質の低下はなく、それらを良好に維持できるため、焼結鉱の製造コストを格段に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウエストアンジェラス鉱(マラマンバ鉱石の産地銘柄)の配合率増加量に対するハマスレー鉱およびカラジャス鉱のそれぞれの配合率増加量と焼結鉱の生産率の増加量との関係を示す図である。
【図2】ウエストアンジェラス鉱(マラマンバ鉱石の産地銘柄)の配合率増加量に対するMBR.PFおよびクドレムクPFのそれぞれの配合率減少量と焼結鉱の生産率の増加量との関係を示す図である。
【図3】ローブリバー鉱(ピソライト鉱の産地銘柄)単独、ウエストアンジェラス鉱(マラマンバ鉱石の産地銘柄)単独、ウエストアンジェラス鉱とローブリバー鉱をそれらの配合率の比率が50質量%で配合した場合のそれぞれにおける配合率増加量と焼結製品歩留との関係を示す図である。

Claims (1)

  1. 新原料の全質量に対して5質量%以上の配合率でマラマンバ鉱石を新原料中に配合する製鉄用焼結鉱の製造方法において、マラマンバ鉱石を用いない場合の焼結原料の配合を基準とし、前記新原料の内で、ブラジル産ペレットフィードの配合率を、前記基準の焼結原料の配合に対する前記マラマンバ鉱石の配合率の増加率に対して30%上減少することを特徴とする製鉄用焼結鉱の製造方法。
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