JP5168802B2 - 焼結鉱の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、下方吸引構造のドワイトロイド式焼結機を用いて高炉用焼結鉱を製造する際に、焼結原料中の鉄鉱石の一部として、高微粉・高結晶水鉄鉱石のいずれかを用いて焼結する方法に関するものである。
高炉の操業を安定かつ高効率で行うには、冷間強度や被還元性、耐還元粉化性などの諸特性に優れた高品質の焼結鉱を使用することが不可欠である。しかし、このような焼結鉱はコスト高となる問題があり、そのために製造に当たっては成品の歩留りや生産性の向上を図ることが求められる。
このような課題を有する焼結鉱は、一般に、次のような方法で製造されている。すなわち、製造に当たっては、焼結原料をまず、10mm程度以下の大きさの粉鉄鉱石に対し、石灰石などのCaO含有副原料やニッケルスラグ等のSiO含有副原料、コークスなどの固体燃料を加えて混合し、さらにこれに適当な水分を加えて造粒する。得られた粒状の焼結原料は、ドワイトロイド式焼結機のパレット上に粉コークスと共に装入される。その装入によってパレット上には焼結原料層が形成される。次いで、その焼結原料層には表層部の固体燃料を介して着火が行われる。その焼結原料層は、下方に吸引される空気の作用により、該焼結原料層中の固体燃料が順次に燃焼し、その燃焼作用により焼結し、焼結ケーキとなる。その後、その焼結ケーキは、破砕され整粒されたのち、一定粒径以上のものが成品焼結鉱となる。なお、一定粒径未満(通常は−5mm)のものは、返鉱として焼結原料の一部とされる。
焼結機では一般に、前記焼結原料層(以下、単に「装入層」とも言う)の上層部は、中層部や下層部に比べて点火後の層内温度が低く、かつ高温に保持される時間が短い。従って、上層部で生成した焼結ケーキは、溶融結合度が弱いため焼結鉱の強度が低くなり、そのために、焼結鉱の歩留まりが低下するという問題があった。そこで、従来、こうした問題を解決するために、焼結原料の供給(装入)方法として、パレット上に堆積した前記装入層の高さ方向についての原料粒度分布やカーボン含有率を意識的に変えて装入する、所謂、偏析装入法が開発され、それなりの効果をあげてきた。例えば、特許文献1記載のワイヤー方式や特許文献2記載の磁気ブレーキ方式などでは、焼結原料の中で比較的粒径の小さい粉コークスのみを偏析装入させる装置を提案している。とくに、特許文献1記載のワイヤー装入装置では、偏析度−0.6に達する偏析装入技術を提案している。
ところで、焼結原料となる鉄鉱石は、近年、ヘマタイトあるいはマラマンバ鉱石のようなゲーサイトとマータイト(マグネタイト構造を有するFe)やマグネタイト(Fe)などの良質な鉄鉱石の産出量が減少し、それに代って、リモナイト鉱石のようなゲーサイト(Fe:・nHO)を多量に含有する鉄鉱石の使用量が増加する傾向がある。ただし、このゲーサイトは、一般に、多量の結晶水(約5mass%)を含有しており、常温および加熱後の気孔率が高いことが特徴であり、そのために、これを焼結原料として多量に使用すると、焼結鉱の成品冷間強度が低下するだけでなく、歩留りや生産性の低下を招くという問題があった。
このような問題が生じる理由は、ゲーサイトの場合、他の鉄鉱石と比較すると気孔率が高く反応性が高いため、焼結焼結過程において、CaOとFeとが反応してカルシウムフェライト系の融液を生成する。このとき、その融液中のFe濃度が高くなるために、液相温度が上がって気孔の再配列に必要な時間が不足し、その結果、気孔の再配列が阻害されて1〜5mm程度の粗大気孔の割合が増加し、焼結鉱強度や歩留りの低下を招くのである。
このように、結晶水を多く含有する鉄鉱石、例えばゲーサイトを多量に含有する高結晶水鉄鉱石は、これを焼結原料として使用すると、多くの問題が生じることが指摘されていた。このことから、従来、かかるゲーサイトを多く含む高結晶水鉄鉱石を焼結原料として多量に使用しても不都合が生じない焼結技術の開発について検討されてきた。例えば、特許文献3では、これらの高結晶水鉄鉱石のまわりに、MgO−SiOを含有する副原料を所定の割合で配置することにより、カルシウムフェライト系融液中にFeが多量に溶融するのを防止する方法を提案している。この提案技術は、MgO−SiOを含有する副原料を多く配合しなければならず、製造コストが高くなる。さらに、この技術では、MgO−SiOを含有する副原料の質に応じて多くの固体燃料を添加する必要が生じ、消費熱量の増大による製造コストの上昇を招くという問題もある。さらに、MgO−SiO含有副原料と高結晶水鉄鉱石とは所定の割合で配合しなければならないから、高結晶水鉄鉱石の配合率のみを、例えば30mass%以上にすることはできない。つまり、この場合は、MgO−SiOもその分だけ多く配合する必要があり、これでは、高炉でのスラグ比の上昇を招くという問題が生じる。
その他、特許文献4では、ゲーサイト(針鉄鉱)を多く含有する鉄鉱石を1200℃以上の温度で一定時間加熱し、この鉄鉱石を緻密化させることによって気孔率を低下させ、カルシウムフェライト系の融液中にFeが多量に溶融することを防止する方法を開示している。しかし、この方法では、原料を予め高温で加熱処理をしなければならないので、消費熱量の増大による製造コストの上昇を招くという問題がある。
一方、同じ高結晶水鉄鉱石の中でも、マラマンバ鉱石のような高微粉・高結晶水鉄鉱石の場合、(1)焼結時における結晶水離脱時の熱分解反応に対する熱補償が必要になるため、その分、配合する炭材(粉コークスなど)を増量する必要がある、(2)結晶水の離脱に起因して、溶融反応過程で生成する融液により局部的過溶融反応が引き起こされ、その下部では未焼結領域が発生する。(3)微粉鉱石(粒径0.25mm)の割合が多く造粒性が劣るため、焼結ベッド(焼結原料層)内の通気性の悪化に起因して成品強度が低下し、これに伴って生産率や成品歩留まりが低下するという問題がある。
従来、マラマンバ鉱石のような高微粉・高結晶水鉄鉱石を多量に使用する焼結鉱の製造方法としては、例えば、特許文献5では、マラマンバ鉱石の融液浸透性が大きい点に着目し、粗粒鉄鉱石の配合率を増量して擬似粒子の粒径を増加させ、成品歩留まり及び焼結鉱品質を改善させる方法を開示しており、また、特許文献6にも、粒径1.0mm以上の粗粒原料を併用して焼結する方法を開示している。
さらに、特許文献7には、混合撹拌による造粒を強化することを目指して、マラマンバ鉱石が配合された焼結原料を高速撹拌して混合・造粒する方法が開示されている。
特許第2714276号 特許第3201726号 特開平3−47927号公報 特開平3−10027号公報 特開2002−129246号公報 特開平6−228663号公報 特開平7−331342号公報
上述したように、焼結鉱の製造に当って、焼結原料として高結晶水鉄鉱石を多量に使用すると、焼結鉱の強度や生産性の低下を招くことが知られている。この点に関し、発明者らの研究によると、高結晶水鉄鉱石を焼結原料として多量に使用することによる問題は、上述した理由の他、さらに次のような現象によっても起ることがわかった。それは、高結晶水鉄鉱石のうち、比較的粗粒の多いリモナイト鉱石は、平均粒径が約2.8mm〜4.2mm程度で他の普通の鉄鉱石や副原料、粉コークスと比べると、5mm以上の粒径の割合が大きいため、これをパレット上に装入すると、該パレット上の下層側に堆積する割合が高くなる。その結果、粒径の細かい粉コークスや石灰石の粉は相対的にパレットの上層部に多く、下層部に少ない偏析状態となる。
一般に、パレット上に装入された焼結原料は、これを焼成する時に約400℃付近で結晶水の離脱が起るため、熱量の消費が激しくなる。しかし、上述したように、装入層のうちの下層部では粉コークスが少ないため、どうしても熱不足の状態となる。その結果、焼成に必要な温度や保持時間の確保ができず、不充分な焼結となって歩留の低下を招くのである。とくに、高結晶水鉄鉱石を含有する場合、結晶水が離脱した後は、該鉄鉱石内には多数の微細な気孔が生成する。しかも、マラマンバ鉱石の場合は、ヘマタイト鉱石などに比べると、気孔径が1μm以下の気孔が多いという特徴がある。その結果、焼結過程で生成するカルシウムフェライト等の融液が、これらの気孔内に吸引されてしまう。融液は本来、鉱石粒子間を繋ぐという役目があるが、この融液が気孔中に入ると、粒子間の結合という本来の役目を担うべき融液の量が不足することになる。その結果、粉コークス不足の場合と同様に、不充分な焼結を招いて歩留の低下を招くのである。
これらの問題に対しては、焼結原料中への粉コークスの添加量や石灰石の添加量を増加させることが考えられる。しかし、この方法では、焼結の上層部から中層部にかけて粉コークスの量と石灰石の量が増加し、熱量の増加およびカルシウムフェライト発生量の増加により融液の発生量が過剰になり、焼結操業が不安定化するおそれがある。さらに、焼結鉱の成分は一般に、高炉で発生するスラグの成分を調整するため厳しく管理されており、その石灰石の添加量を単純に増加させることは困難がある。このことはとくに、結晶水の含有量が6mass%以上である高結晶水鉄鉱石を使用する場合に顕著に表れる。
本発明の目的は、高微粉・高結晶水鉄鉱石を焼結原料の一部として多量に用いて焼結鉱を製造するに際し、特別な手段や事前の処理をしなくとも、成品焼結鉱の強度の向上、成品歩留りの向上および生産性の向上を図ることができる技術を提案することにある。
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本発明は、焼結原料中の鉄鉱石の一部として、平均粒径が2.4〜3.0mmで微粉の割合が多くかつ結晶水を6mass%以上含有する高微粉・高結晶水鉄鉱石を配合して焼結鉱を製造する方法において、鉄鉱石中に占める該高微粉・鉄鉱石の配合割合が10mass%〜50mass%であるとき、焼結原料層を上層、中層、下層に3等分し、該焼結原料層中のコークスの偏析度Y(=(上層カーボンmass%−下層カーボンmass%)/平均カーボンmass%)が、−0.1≦Y≦0.25を満足するように、かつ焼結原料層中の石灰石の偏析度Z(=(上層酸化カルシウム%−下層酸化カルシウム%)/平均酸化カルシウム%)が、−0.1≦Z≦0.2を満足するように焼結原料の装入を行うと共に、コークスの偏析度Yおよび石灰石の偏析度Zを同程度にすることを特徴とする焼結鉱の製造方法を提案する。
そして、本発明の前記焼結鉱の製造方法については、
(1)焼結原料の装入に当たっては、鉄鉱石中に占める該高微粉・高結晶水鉄鉱石の配合割合Xmass%に応じて、焼結原料層中のコークスの偏析度Y(=(上層カーボンmass%−下層カーボンmass%)/平均カーボンmass%))が、−0.1≦Y≦0.25−(0.0025×X)を満足するように焼結原料の装入を行うこと、
(2)焼結原料の装入に当たっては、鉄鉱石中に占める該高微粉・高結晶水鉄鉱石の配合割合Xmass%に応じて、焼結原料層中の石灰石の偏析度Z=(上層酸化カルシウム%−下層酸化カルシウム%)/平均酸化カルシウム%)が、−0.1≦Z≦0.25−(0.0025×X)を満足するように焼結原料の装入を行うこと、
(3)焼結原料の装入に当たっては、鉄鉱石中に占める該高微粉・高結晶水鉄鉱石の配合割合Xmass%に応じて、焼結原料層中のコークスの偏析度Y(=(上層カーボンmass%−下層カーボンmass%)/平均カーボンmass%))が、−0.1≦Y≦0.25−(0.0025×X)を満足し、かつ石灰石の偏析度Z(=(上層酸化カルシウム%−下層酸化カルシウム%)/平均酸化カルシウム%))が、−0.1≦Z≦0.25−(0.0025×X)を満足するように焼結原料の装入を行うこと、
(4)前記高微粉・高結晶水鉄鉱石が、マラマンバ鉱石であること、
が好ましい解決手段と考えられる。
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本発明によれば、高微粉・高結晶水鉄鉱石を焼結原料中の鉄鉱石に対し10mass%以上50mass%に達するような多量の配合を行ったとしても、焼結鉱(成品)強度、成品焼結鉱の生産性(成品歩留り)を向上させることができる。しかも、本発明によれば、高微粉・高結晶水鉄鉱石の配合割合に対応した偏析度の制御を行うことにより、強度および生産性が安定した成品焼結鉱を低コストで製造することができる。
以下、微粉が多く平均粒径の小さい(2.4mm〜3.0mm)マラマンバ鉱石(銘柄名;ウエストアンジェラス鉱石、MAC鉱石など)等の高微粉・高結晶水鉄鉱石を多量に使う本発明に係る方法の好適実施形態を、発明者らが行った実験の内容に併せて説明する。なお、以下の説明において、これらの高微粉・高結晶水鉄鉱石の配合割合は、焼結原料中の鉄鉱石及び返鉱の合計に対する高結晶水鉄鉱石が占める割合を意味するものである。
なお、平均粒径は算術平均粒径で示した。また、高微粉・高結晶水鉄鉱石とは粒径0.25mm以下の微粉部分が15mass%以上のマラマンバ鉱石等をさす。MAC鉱石などは20mass%以上である。
発明者らは、まず、焼結原料として、マラマンバ鉱石のような高微粉・高結晶水鉄鉱石を用いて製造した焼結鉱の見掛比重と強度との関係を明らかにする実験を行った。この実験においては、見掛比重の測定を、水銀浸漬法により行い、また、強度の測定は、回転強度試験(JIS−M8712)により行った。その結果を表1に示す。
この表に示す結果より、高結晶水鉄鉱石を使用した場合でも、見掛比重の大きい焼結鉱の方が好ましいことがわかる。
Figure 0005168802
なお、上記の実験において使用した焼結機はパレット上の原料装入部に、装入装置としてワイヤーまたは丸棒を用いたスクリーン状シュートを配置したものである。そのスクリーン状シュートは、図1に示すように、上位部分の間隔を細かく(狭く)、下位部分の間隔を大きくしたシュートである。このシュートでは、それぞれの間隙を通過した焼結原料は、上層部に細粒が、そして下層部に粗粒が堆積する偏析装入がなされる。
次に、この図1に示す装入装置を使って、パレット上に装入した焼結原料の高さ方向(原料の層厚方向)の成分偏析の状況を調査した。その結果を図2(a)〜(c)に示す。この図は、焼結原料の高さ方向を上層、中層、下層と3分割し、各層毎(すなわち、上層、中層、下層の3ヶ所)に試料を採取し、原料中のカーボン、酸化カルシウム(CaO)および結晶水について調べたものである。この図に示す結果からわかるように、カーボンおよび酸化カルシウム、すなわち焼結原料の粉コークスと石灰石は、上層部に多く分布し、中層と下層部には少ないという偏析状態となっていることが判明した。一方、高結晶水鉄鉱石由来の結晶水は、上層に少なく、中層部、下層部に多く分布した偏析状態になっており、結晶水の多い部分にはカーボン及び酸化カルシウム、すなわち焼結原料の粉コークスと石灰石は存在しにくい傾向となることがわかった。また、この図から判明したことは、高さ方向の最大の濃度差は、マラマンバ鉱石では、カーボンで0.mass%、酸化カルシウムで1.mass%、原料中結晶水の差は0.5mass%であった。
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次に、比較的微粉の多い高微粉・高結晶水鉄鉱石についての代表的なマラマンバ鉱石を配合したときの、焼結鉱強度に与える装入層高さ方向の偏析の影響について、径300mm、高さ400mmの試験鍋を用いて実験した。この実験に用いた原料配合を表、焼結原料の化学成分を表に示す。高微粉・高結晶水鉄鉱石であるマラマンバ鉄鉱石は、M鉱石として示した。この実験では、前記偏析装入層を再現すべく、試験鍋内を、粉コークスの高さ方向の濃度差を0.7%とするため、原料充填層(装入層に相当)を3等分し、中層を基準として、粉コークスを上層では中層より0.35%増加させ、下層では中層より0.35%減少させる配合を行った。
は、このような装入条件の下で、焼結鍋実験を行ったときの風速、排ガス組成および排ガス温度の経時変化を示す。この図からわかるように、高微粉・高結晶水鉄鉱石であるマラマンバ鉱石を50mass%配合したときは、マラマンバ鉱石を0mass%配合したときに比べて、中層および下層を焼成しているときの風速が低く、この部分の原料充填層の通気性が低いことを示した。しかし、表に示すように、上層、中層、下層の各層のシャッター強度は、高微粉・高結晶水鉄鉱石の配合量0mass%に対して、50mass%配合したものでは、上層で4.6mass%の減少であったが、中層では6.5mass%も減少し、下層では8.8mass%も減少し、中層および下層で強度が大きく低下することがわかった。従って、これらの実験結果からは、焼結原料中の鉄鉱石の一部としてマラマンバ鉱石を使用する場合、上層部だけでなく、冷間強度を左右する中層、下層の焼結性にも配慮することが必要である。
Figure 0005168802
Figure 0005168802
Figure 0005168802
また、発明者らは、マラマンバ鉱石の配合量に対する粉コークスおよび石灰石の適正な偏析がどのような形態になるのかを調査するために、焼結鍋による実験を行った。すなわち、粉コークスおよび石灰石の偏析が及ぼす焼結鉱の冷問強度および生産率への影響を評価するため、装入層を上層、中層、下層と3等分し、各層毎に粉コークスおよび石灰石の配合量とその偏析度を変化させる実験を行った。この実験に用いた原料の配合は、表に示すとおりであり、焼結原料中のマラマンバ鉱石の配合割合を10mass%、30mass%および50mass%の3通りとした。なお、各原料の成分は表に示すものと同じであり、使用した試験鍋は、径300mm、高さ400mmのものを用いた。
Figure 0005168802
は、粉コークスの偏析度を変えた場合の鍋焼成試験の結果を示すものである。このうち(a)は、焼結鉱の落下強度とコークス偏析度との関係を、図(b)は、焼結生産率とコークス偏析度との関係をそれぞれ求めたものである。
(a)おいて、マラマンバ鉱石を10〜50mass%配合した試験では、ークス偏析度−0.1から落下強度の改善が見られ、コークス偏析度0.25超で落下強度の低下が見られた。したがって、マラマンバ鉱石の配合割合が、焼結原料中の鉄鉱石に対し10mass%〜50mass%の場合には、上述したように定義されるコークスの偏析度Yは、−0.1以上0.25以下を満足するような範囲に制御して焼結原料の装入を行うことが有効であると考えられる。また、図(b)に示すとおり、焼結生産率とコークス偏析度Yとの関係においてもまた、粉コークスの偏析度Yは、−0.1以上0.25以下の範囲が好適であり、同じ結果を示した。つまり、本発明では、焼結原料中の鉄鉱石の一部としてマラマンバ鉱石を配合して焼結鉱を製造する方法において、鉄鉱石中に占める前記マラマンバ鉱石の配合割合が10mass%〜50mass%であるときは、焼結原料層中のコークスの偏析度Yが、−0.1≦Y≦0.25を満足するように焼結原料の装入を行うことが効果的である。
次に、図から、前記マラマンバ鉱石の配合割合に基づき焼結鉱の落下強度、生産率を制御する場合は、下記のようなコークスの偏析度Yとすることが有効であることがわかった。すなわち、マラマンバ鉱石を10mass%および30mass%配合した場合は落下強度、生産率ともにコークスの偏析度Yは、0.1で最大を示し、−0.1以上0.2以下で良好な結果となった。好ましくは0以上0.2以下であった。一方、マラマンバ鉱石の配合割合を50mass%配合した場合、焼結鉱の落下強度、生産率は、コークス偏析度Yが0.1で最大を示し、−0以上0.2以下で効果的があることがわかった。
従って、鉄鉱石中のマラマンバ鉱石の配合割合が10mass%〜50mass%では、コークスの偏析度Yは、マラマンバ鉱石の配合量X%に対して、
−0.1≦Y≦0.25−(0.0025×X)
が適正の範囲になる。なお、この場合のコークスの偏析度Yは、より好ましくは、0≦Y≦0.25−(0.0025×X)である。
なお、コークスの偏析度Yは、下記式に示すように定義した。
Y=(Ctop−Cbottom)/Cavc
top :上層カーボン%
bottom :下層カーボン%
avc :平均カーボン%
次に、石灰石について説明する。石灰石の偏析度Zを変えた場合の鍋焼成試験の結果を図に示す。
(a)は、焼結鉱の落下強度と石灰石の偏析度Zとの関係を、図(b)は、焼結生産率と石灰石の偏析度Zとの関係をそれぞれ求めたものである。この図から、マラマンバ鉱石10〜50mass%の配合において、石灰石の偏析度Zは−0.1から落下強度、生産率の改善が見られ、石灰石の偏析度Zは0.2超では落下強度が低下する。したがって、焼結原料中の鉄鉱石に対し、前記マラマンバ鉱石の配合割合が10mass%〜50mass%の場合に、石灰石の偏析度Zは、−0.1〜0.2に制御して装入することが有効である。
さらに、この図から、前記マラマンバ鉱石の配合割合に基づき焼結鉱の落下強度、生産率を制御する場合は、石灰石の偏析度Zは下記の範囲にすることが有効である。すなわち、マラマンバ鉱石を10mass%配合した場合は、落下強度、生産率ともに石灰石の偏析度Zは0.1で最大を示し、0.1以上0.2以下で良好な結果を示した。そして、マラマンバ鉱石を30mass%以上50mass%以下配合した場合はともに、焼結鉱の落下強度、生産率ともに石灰石の偏析度Zが0.1で最大を示し、0以上0.2以下で効果があることがわかった。
従って、マラマンバ鉱石が30mass%以上50mass%以下では、石灰石の偏析度Zは、−0.1≦Z≦0.1で落下強度、生産率はともに良好になる。
また、マラマンバ鉱石が10mass%では0.2以下、30mass%未満では0.1以下がとくに良好であることから、この場合、石灰石の偏析度Zは、マラマンバ鉱石の配合量X%に対して、
−0.1≦Z≦0.25−(0.0025×X)
が適正の範囲になることがわかる。なお、この場合のより好ましい石灰石の偏析度は0≦Z≦0.25−(0.0025×X)である。
上記コークス偏析度Yおよび石灰石偏析度Zについて、マラマンバ鉱石の配合割合X%に対して適性な領域をまとめると図6に示すとおりである。
なお、石灰石の偏析度Zは、下記式に示すように定義した。
Z=Ltop−Lbottom)/Lavc
top :上層酸化カルシウム%
bottom :下層酸化カルシウム%
avc :平均酸化カルシウム%
以上説明したように、これらの実験結果に基づいて開発した本発明によれば、マラマンバ鉱石のような高微粉・高結晶水鉄鉱石を焼結原料として使用する際に、焼結原料中の化学成分を変えることなく、これらの鉱石の配合量に応じて、単に焼結原料装入時の粉コークスや石灰石の偏析度を制御することにより、焼結鉱の生産性および強度を十分に高めることが可能になることがわかる。
本発明においては、平均粒径が2.4mm〜3.0mmと比較的小さいマラマンバ鉱石に代表される高微粉・高結晶水鉄鉱石とを用い、高結晶水鉄鉱石(リモナイト鉱石)と高微粉・高結晶水鉄鉱石(マラマンバ鉱石)とは、使い分けて使用することができ、もちろん、この両者を混合状態で使用してもよく、この場合のコークスおよび石灰石の偏析度は、これらの配合割合に応じて中間の値となるように制御することが好ましい。
なお、焼結機に供給される焼結原料中には、予めコークス、石灰石が装入されているため、焼結機上でコークス偏析度と石灰石偏析度とを個別には制御することはできない。そのため、本発明にかかる焼結鉱の製造方法においては、コークス、石灰石の適正な偏析度の制御に際し、共通の偏析度範囲を用いて前記コークス、石灰石の混在した焼結原料を前記共通の偏析度範囲になるように焼結機パレット上に装入することにより、中層、下層へのコークス、石灰石の適正配分を実現するようにする。すなわち、これらの偏析度Y、Zの範囲が略同じになるように、粉コークス、石灰石をパレット上に装入し、その後、焼結することにより、焼結時の生産率が良好で、落下強度の高い焼結鉱を、高結晶水鉄鉱石を焼結原料として使用する際にも、確実に製造することができる。
また、本発明方法の実施に当って、偏析の制御を実際の焼結焼結機で行うには、例えば、以下の手段を用いることができる。コークスや石灰石の偏析度の制御手段としては、上述した特許文献1、2に係わるワイヤー方式やシュート形式の装入装置を設置している場合には、焼結副原料として使用する粉コークスおよび石灰石の粗粒の割合を増やす方法がある。この方法は、粉コークスおよび石灰石の粗粒部分を増加させることにより、その粗粒部分を焼結原料装入層の下層部に装入する技術である。すなわち、同一装入装置を使用していても、粉コークス及び石灰石の粗粒の割合を増加させることにより、見掛け上の偏析度を変化させることができるからである。具体的には、粉コークスおよび石灰石では、2〜5mm径を増加させ、2〜5mm径の粉コークス及び石灰石を中層、下層に位置させること効果的である。
さらに、上記偏析度制御手段としては、装入装置機能を変更する方法がある。例えば、特許文献1等に開示されたワイヤー方式の装入装置を使用する偏析度制御では、偏析効果を抑制する方法が可能である。つまり、ワイヤー間の間隙を無くすことにより、装入部での篩い効果を低下させ、粒径の細かい原料が上層に偏析するのを抑制すること、すなわち偏析強化機能部分の作用の抑制を図ることで実現される。一方、特許文献2等に開示された装入装置では、磁力部分を取り外すこと、および/またはシュート傾斜角度を強めるなどの操作で偏析度調整が可能である。
例えば、図13(a)は、強偏析型(湾曲型)であり、図13(b)が偏析抑制型(ストレート型)の例であり、コークスの偏析度Yで示すと、前者はY=1.2、後者はY=0.3であり、湾曲抑制型でY=0.8程度に制御することができる。
以下、この発明の好適実施例を挙げて本発明をさらに説明する。そして、焼結鉱の製造方法として、ワイヤー方式の装入装置を具える焼結機に適用した例を示したが、本発明は、この例にのみ限られるものではない。
(実施例1)
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(実施例)
この実施例は、高結晶水鉱石として、とくに高微粉・高結晶水鉄鉱石の例であるマラマンバ鉱石を鉄鉱石中の重量割合で40mass%配合した操業を行った後、このマラマンバ鉱石を20mass%の配合に変更した操業を行ったものである。使用した装入装置は、図1に示す高偏析型のワイヤー配置としたものであり、それぞれの操業条件での粉コークスの偏析度Yおよび石灰石の偏析度Zを測定した。偏析度測定の結果を図21に示し、1日平均の代表的な生産率およびタンブラー強度を図22に示す。図よりマラマンバ鉱石を40mass%配合したときはコークス偏析度Yが0.16、石灰石偏析度Zが0.14でY、Zともに本発明の適合範囲外の操業になった。そして、図に示すように、生産率は1.37t/hr/m、タンブラー強度は66.3%だった。これに対し、マラマンバ鉱石を20mass%配合したときは、図よりコークス偏析度Yが0.14、石灰石偏析度Zが0.11で、いずれも本発明に適合する範囲内の操業になった。このときは、図に示すとおり、生産率は8.7%改善され、タンブラー強度は2.4%も改善された。
(実施例)
この実施例は、高微粉・高結晶水鉱石(マラマンバ鉱石)を鉄鉱石中の重量割合で、40mass%一定とし、装入装置のワイヤー配置を、図1に示す強偏析型(図13(a))から、図13(b)に示す偏析抑制型に変更して操業を行った。このときの前記マラマンバ鉱石の配合割合は40mass%±2mass%とし、それぞれの操業条件での粉コークスおよび石灰石の偏析度Y、Zを測定した。その結果を図10に示し、1日平均の代表的な生産率およびタンブラー強度を図11に示す。図10より強偏析型の装入形態では、コークスの偏析度Yおよび石灰石の偏析度Zはそれぞれ0.15および0.12で本発明に適合しない操業になったが、偏析抑制型とすることでYおよびZはそれぞれ0.09および0.08で本発明に適合する操業になった。また、図11より、装人形態を偏析抑制型のものとすることにより、生産率は8.6%改善され、タンブラー強度は2.5%も改善した。また、図12はそれぞれの操業時の焼結鉱を採取し、見掛比重を測定した結果であるが、見掛比重は3.25t/mから3.38t/mに増加し、4%向上し、焼結鉱の強度が改善されていることを支持する結果が得られた。
この発明に係る技術は、各種の高微粉・高結晶水鉱石を多量に用いた焼結鉱の製造技術の他、例えば、通常の焼結原料を用いる方法として、あるいは破砕粒径が大きく異なる鉱石を焼結原料に使用する焼結方法などにも利用できる。
焼結機のワイヤー型装入装置の強偏析型のワイヤー配置例を示す側面図である。 焼結機のパレット上の焼結原料を、高さ方向に採取して分析したカーボンおよび酸化カルシウム、結晶水の測定結果を示す図である。 高微粉・高結晶水鉄鉱石配合時の焼結鍋実験中の吸引ガス風速および排ガス成分、排ガス温度の経時変化を示すグラフである。 マラマンバ鉱石配合時の粉コークスの偏析度を変更したときの鍋焼成試験の結果(強度・生産率)を示すグラフである マラマンバ鉱石配合時の石灰石の偏析度を変更したときの鍋焼成試験の結果(強度・生産率)を示すグラフである。 マラマンバ鉱石配合割合に対する、粉コークス及び石灰の偏析度の適正領域を示すグラフである。 実施例の操業における原料中フリーカーボンおよび酸化カルシウムの高さ方向の分布を示すグラフである。 実施例の操業における生産率およびタンブラー強度を示すグラフである 実施例で用いた偏析抑制型のワイヤー配置を示すグラフである。 実施例の操業における原料中フリーカーボンおよび酸化カルシウムの高さ方向の分布を示すグラフである。 実施例の操業例における生産率およびタンブラー強度を示すグラフである。 実施例の操業例における焼結鉱見掛比重の比較グラフである。 強偏析型と偏析抑制型のワイヤ配置例を示す略線図である。

Claims (5)

  1. 焼結原料中の鉄鉱石の一部として、平均粒径が2.4〜3.0mmで微粉の割合が多くかつ結晶水を6mass%以上含有する高微粉・高結晶水鉄鉱石を配合して焼結鉱を製造する方法において、鉄鉱石中に占める該高微粉・鉄鉱石の配合割合が10mass%〜50mass%であるとき、焼結原料層を上層、中層、下層に3等分し、該焼結原料層中のコークスの偏析度Y(=(上層カーボンmass%−下層カーボンmass%)/平均カーボンmass%)が、−0.1≦Y≦0.25を満足するように、かつ焼結原料層中の石灰石の偏析度Z(=(上層酸化カルシウム%−下層酸化カルシウム%)/平均酸化カルシウム%)が、−0.1≦Z≦0.2を満足するように焼結原料の装入を行うと共に、コークスの偏析度Yおよび石灰石の偏析度Zを同程度にすることを特徴とする焼結鉱の製造方法。
  2. 焼結原料の装入に当たっては、鉄鉱石中に占める該高微粉・高結晶水鉄鉱石の配合割合Xmass%に応じて、焼結原料層中のコークスの偏析度Y(=(上層カーボンmass%−下層カーボンmass%)/平均カーボンmass%))が、−0.1≦Y≦0.25−(0.0025×X)を満足するように焼結原料の装入を行うことを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
  3. 焼結原料の装入に当たっては、鉄鉱石中に占める該高微粉・高結晶水鉄鉱石の配合割合Xmass%に応じて、焼結原料層中の石灰石の偏析度Z=(上層酸化カルシウム%−下層酸化カルシウム%)/平均酸化カルシウム%)が、−0.1≦Z≦0.25−(0.0025×X)を満足するように焼結原料の装入を行うことを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
  4. 焼結原料の装入に当たっては、鉄鉱石中に占める該高微粉・高結晶水鉄鉱石の配合割合Xmass%に応じて、焼結原料層中のコークスの偏析度Y(=(上層カーボンmass%−下層カーボンmass%)/平均カーボンmass%))が、−0.1≦Y≦0.25−(0.0025×X)を満足し、かつ石灰石の偏析度Z(=(上層酸化カルシウム%−下層酸化カルシウム%)/平均酸化カルシウム%))が、−0.1≦Z≦0.25−(0.0025×X)を満足するように焼結原料の装入を行うことを特徴とする請求項1に記載焼結鉱の製造方法。
  5. 前記高微粉・高結晶水鉄鉱石が、マラマンバ鉱石であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の焼結鉱の製造方法。
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