JP3944283B2 - 1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンの精製法 - Google Patents

1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンの精製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの精製に関する。
【0002】
【従来の技術】
1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(以下「THPE」と呼ぶ)はポリカーボネート用の枝分れ剤として有用である。かかる目的のため、ビスフェノールAのようなジヒドロキシ芳香族化合物とホスゲン又は炭酸ジフェニルのようなカーボネート源とを含む反応混合物中にこれらの化合物を配合し得る。これらの化合物は共通して4−ヒドロキシアセトフェノン及びその同族体とフェノールとの反応によって合成されるが、この反応はフェノールとアセトンから「ビスフェノールA」としても知られる2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを生成させる反応に類似している。米国における係属中の予備出願第08/583264号及び完全出願第08/718287号に開示されている通り、THPEの第二の合成法(THPEはビスフェノールAとの混合物として回収される)は、酸性条件下でのフェノールと2,4−ペンタンジオンとの反応によるものである。上記米国特許出願の開示内容は文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0003】
米国特許第4992598号によれば、4−ヒドロキシアセトフェノンとフェノールとの反応で生じたTHPEは、THPE及び水素化ホウ素ナトリウムの少なくとも1種類を種々異なる割合で含有するメタノール−水混液での一連の洗浄によって精製することができる。一般に、このタイプの洗浄段階を何度も繰り返す必要がある。それほど多くの段階を必要としない別の精製法が望まれている。
【0004】
【発明の概要】
本願発明は、そうした精製法を提供する。この方法は、約90重量%以上のTHPEを含む粗生成物からAPHA色数200未満の生成物を生じさせるのに使用できる。
本発明は、純度約90重量%以上のトリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンをさらに精製するための方法であって、
上記トリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンをモル過剰のC1-4 第一アルキル第三アミンと接触させて付加物を形成する段階、及び
熱又は酸水溶液促進分解によって上記付加物から精製トリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンを回収する段階
を含んでなる方法に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の方法で精製し得るトリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンとしては、4−ヒドロキシアセトフェノン及びその高級同族体(対応プロピオフェノンやブチロフェノンなど)とフェノールとの反応で合成することのできる化合物が含まれる。好ましい化合物はTHPEである。
【0006】
本発明によれば、最初に純度約90重量%以上のTHPEを得る。4−ヒドロキシアセトフェノン合成法の場合には、所要純度のTHPEは、上記米国特許第4992598号に開示されているように、水分量の調節後に副生物のフェノールを濾過により除去して得ることができる。2,4−ペンタンジオン合成法の場合には、塩化メチレンのような塩素化アルカン中でスラリー化した後濾過することで、所要純度の固体生成物を得ることができる。
【0007】
最も重要な精製段階は、THPEとC1-4 第一アルキル第三アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミンなど)との間での付加物の形成である。トリエチルアミンが好ましく、これ以降トリエチルアミンを引き合いに出すことが多いが、上記したような他の第三アミントリエチルアミンで代替し得ると理解すべきである。
【0008】
付加物はTHPEをモル過剰のアミンとブレンドすることによって形成される。アミンとTHPEのモル比は典型的には約1.5:1以上であり、好ましくは約2:1以上であり、最も好ましくは約2.4〜2.8:1である。このようにして形成される付加物は等モル比のアミンとTHPEを含んでいる。
付加物の正確な正体は明らかでない。それは塩であるかも知れないし、或いは錯体であるかも知れない。いずれにせよ、付加物は後述の通り難なく簡便に分解して、高純度のTHPEを生ずる。
【0009】
単にTHPEとアミンの2種類の試薬をアミンが溶媒としての役に立つような割合でブレンドすることも可能である。ただし、そうした場合、混合物から付加物が突如塊を形成することがあり、そうした塊はそれ以上処理するのが難しい。したがって、通常は別個の溶媒を用いるのが好ましく、大抵はC1-4 アルカノールのような極性有機溶媒を使用する。C1-4 アルカノールとしてはメタノールが好ましく、これ以降概してメタノールを例に引く。アルカノールは脱色量(典型的には約0.01〜0.10重量%)の水素化ホウ素又は亜ジチオン酸のアルカリ金属塩(MBH4又はM223、ただしMはアルカリ金属)を脱色剤として含んでいてもよい。脱色剤としては、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
【0010】
粗THPEをアルカノールに溶解した後で、トリエチルアミンを約20〜40℃の温度で導入すればよい。トリエチルアミンが比較的大過剰(例えばトリエチルアミンとTHPEのモル比が約2:1以上)であれば、付加物はゆっくりと結晶化する。混合物を室温に放置すること及び/又は水の添加(通例、メタノールに対して1:1のモル比)によって、付加物をさらに収穫することができる。より少量のトリエチルアミンでも付加物は形成するが、水の添加により沈殿させるまでは溶液中に残留する。一回の付加物の形成及び結晶化が完了したら、付加物を濾過により回収し得る。
【0011】
その単離に続いて、付加物を減圧下80℃以上の温度、好ましくは約85〜100℃に加熱することによって分解することができ、その際トリエチルアミンが揮発して容易に除去される。或いは、別法として、分解は、約20〜50℃の範囲、好ましくは約20〜30℃の温度で酸水溶液と接触させることによって達成することもできる。使用し得る典型的な酸は約1〜2Mの濃度の普通の鉱酸及び酢酸である。遊離THPEが酸性溶液から沈殿するが、これを慣用手段で回収すればよい。その純度は概して約99重量%以上であり、そのAPHA色数は通常は約200以下である。
【0012】
以下の実施例で本発明を例示する。
【0013】
【実施例】
実施例1
撹拌機を取り付けた500mlの丸底フラスコに、フェノール94g(1モル)、3−メルカプトプロピオン酸1.50g(14ミリモル)及び内部標準としてのp−テルフェニル100mgを投入した。この反応混合物を60℃に暖めたところ、フェノールが融解した。この混合物中に塩化水素ガスを30分間吹き込んだ後、室温に冷却し、2,4−ペンタンジオン8.33g(83ミリモル)を30分間にわたって滴下した。随時塩化水素ガスを添加しながら混合物を40℃に加熱した。その間に、混合物は非常に粘稠になり、沈殿がゆっくりと生成した。撹拌を室温で一晩続けた。
【0014】
混合物の一部を濾過してオレンジ色の固体を得たが、これは分析の結果THPEとビスフェノールAの混合物であることが分かった。残りの混合物に塩化メチレン300mlを加えたところ、ピンク色の固体が沈殿した。これを濾過により回収した。液体クロマトグラフィーによる分析の結果、この固体が約92重量%のTHPE、6.1重量%のビスフェノールA及び1%のフェノールを含んでいることが分かった。
【0015】
この粗THPE試料63.5g(191ミリモルのTHPE)を250mlのメタノールに溶解して淡い琥珀色の液体を得た。トリエチルアミン62.5ml(449ミリモル)を加えたところ、溶液の色がほのかなピンク色に変化した。混合物を45分間にわたって撹拌したところ、白色の固体がゆっくりと沈殿した。この固体を濾過して回収し、分析したところ、所望通りTHPEとトリエチルアミンの付加物であることが判明した。さらに2時間放置したところ、濾液から2度目の収穫物が沈殿した。これを同様に濾過により回収した。
【0016】
付加物を1.5Mの酢酸水溶液中で1時間スラリー化した。濾過したところ、THPEが純白の固体として単離された。
実施例2
実施例1の手順を繰り返し、2度目に収穫した結晶から分離した母液に250mlの水をゆっくりと添加して、さらに追加の白色固体の沈殿を得、これを濾過により回収した。各収穫物を水で洗浄し、乾燥し、一つにまとめた。
【0017】
実施例3
メタノールが0.05重量%の水素化ホウ素ナトリウムを含んでいた点を除けば、実施例1の手順を繰り返した。
実施例4
フェノールと4−ヒドロキシアセトフェノンの反応で調製した粗THPEを用いて、実施例3の手順を繰り返した。
【0018】
実施例5
メタノールを用いずに、何も加えていないトリエチルアミンで粗THPEを処理した点以外は、実施例1の手順を繰り返した。混合物から突如付加物の塊ができた。
実施例1〜5の結果を以下の表に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0003944283
【0020】
本発明の方法により、極めて純粋なTHPEが高い収率で得られることが分かる。色は水素化ホウ素ナトリウムを用いることで実質的に改善される。

Claims (9)

  1. 純度約90重量%以上のトリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンをさらに精製するための方法であって、
    上記トリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンをモル過剰のC1-4 第一アルキル第三アミンと接触させて付加物を形成する段階、及び
    熱又は酸水溶液促進分解によって上記付加物から精製トリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンを回収する段階
    を含んでなる方法。
  2. 前記トリス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンが1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンである、請求項1記載の方法。
  3. 前記第三アミンがトリエチルアミンである、請求項2記載の方法。
  4. 前記付加物の形成がメタノール溶媒中で実施される、請求項3記載の方法。
  5. 前記メタノールが脱色量の水素化ホウ素ナトリウムを含有する、請求項4記載の方法。
  6. トリエチルアミンと1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのモル比が約2.4〜2.8:1の範囲にある、請求項4記載の方法。
  7. 付加物の多段収穫物を沈殿せしめる、請求項4記載の方法。
  8. 前記付加物の分解を減圧下80℃以上の温度に加熱することによって実施し、それによりトリエチルアミンを揮発させて除去する、請求項3記載の方法。
  9. 前記付加物の分解を酸水溶液との約20〜50℃の範囲内の温度での接触によって実施する、請求項3記載の方法。
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