JP3944093B2 - パネル吊り上げ治具およびそのパネル取付施工方法 - Google Patents

パネル吊り上げ治具およびそのパネル取付施工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地上面などに水平に置かれたコンクリートパネルをその上側小口面に埋設された吊り具により引き起こして吊り上げ、さらにパネルを建物躯体に取付け固定する際に用いる吊り上げ治具およびそのパネル取付施工方法に関する。なお、上側小口面とは、パネルが吊り上げられた時に上側となるパネル小口面とする。
【0002】
【従来の技術】
水平に置かれたコンクリートパネル(以下、パネルという。)を引き起こして吊り上げるためのパネル吊り具および吊り上げ治具に関する技術が、特許文献1に開示されており、それらによるパネル吊り上げは、次の手順により行われる。すなわち、図6に示すようにパネル40内部に、その上側小口面40aに垂直な縦孔43と横側小口面40cに垂直な横孔44とを、それぞれを連通させて形成する。
そして、縦孔43へ上方から挿入した吊り部材42と横孔44から挿入した棒材45とを、その吊り部材42に設けられた挿通孔42aに棒材45を挿通させることにより係合させる。
【0003】
次に、L型部材46をパネル40の上側小口面40aと壁面40b(図中パネル裏側面)とに当接させるとともに、L型部材46の孔46aに吊り部材42の先端ネジ部42bを挿通させたのち、その先端ネジ部42bにナット部材41を螺合させてL型部材46をパネル40の上側小口面40aに固定する。
そして、ナット部材41に設けられた係止部41aにクレーンのフック(図示せず。)を係止させて、地上面などに水平に置かれた状態のパネルを垂直状になるまで引き起こし、さらに、建物躯体のパネル取付位置まで吊り上げて移送する。
ここで、L型部材46は、パネル40の引き起こしの際に、吊り部材42によりパネル40に発生する剪断力を周囲に分散させる働きをする。その結果、パネルの一部分に剪断力が集中することがなくなるため、パネル端部の破損が防止される。
【0004】
【特許文献1】
実開平4−56186号公報
【0005】
さらに、図7に示すように、吊り上げられたパネル40はアングル鋼材22および長尺金具19を介して、建物躯体である鉄骨梁21に取付固定される。
すなわち、長尺金具19の孔19aを挿通させたボルト20がパネル40の上方に埋設されたアンカー(図示せず。)に係合されて長尺金具19の下部がパネルに取付けられる。そして、長尺金具19の上部が、鉄骨梁21上面に水平片22bが溶接固定されたアングル鋼材22の立設片22aに溶接固定される。
また、図7に示す自重受け金具23は、アングル鋼材22の立設片22aに溶接固定して、上層のパネルの下側小口面を支持させる金具である。
【0006】
このパネル取付作業は、通常は次に示す手順により施工される。
(図7参照。)
1)吊り上げられたパネル40の下側小口面を自重受け金具23に載置する。
2)パネル下方壁面とイナズマプレート24との間にアングル鋼材22の立設片22aを狭持させ、そのイナズマプレート24をパネル40の下方に埋設されたアンカー(図示せず)にボルト20で仮固定することにより、パネル40の下方を仮止めする。
3)パネル40の上方を鉄骨梁21のアングル鋼材22に接近させる。
4)パネル40を吊り上げている吊りワイヤー18のフック18aをナット部41から取り外し、さらに吊り部材42およびL型部材46をパネル40から取り外す。
このときから下記6)の作業終了まで、パネル40が室外側に倒れないように手で押さえておく必要がある。
5)このパネル仮設の状態で、長尺金具19の孔19aに挿通させたボルト20を、パネル40の上方に埋設されたアンカーに螺合させて、長尺金具19の下方をパネル40の室内側壁面(図中パネル裏面)に取付ける。
6)そして、長尺金具19の上部をアングル鋼材22の立設片22aに溶接固定する。これにより、パネル40の上方が建物躯体に取付固定される。
7)先に、イナズマプレート24を仮止めしていたボルト20を締め込み、パネル40の下方を固定する。
8)自重受け金具23を、アングル鋼材22の立設片22aに溶接固定する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記パネル取付作業において、次の問題点がある。
すなわち、上記4)において、パネル40に長尺金具19を取付けるときに、パネル40から吊り部材42およびL型部材46を予め取り外しておく必要がある。これは、L型部材46がパネル40に装着されていると、L型部材46と長尺金具19とが干渉してしまい、パネル壁面に長尺金具19を当接させて取付けられないからである。
しかし、吊り部材42およびL型部材46を取り外してしまうと、パネル40の上部が完全に取付けられるまで、パネル40が室外側に倒れないように手または他の治具でパネル40の上部を押さえておく必要がある。
このような作業は、作業効率が悪いとともに安全面からも好ましくない。
そこで、本発明の目的は上記問題点を解決して、パネル取付時においても作業効率および安全性の高い吊り上げ治具およびそのパネル取付施工方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、
第1発明は、水平に置かれたコンクリートパネルをその上側小口面に埋設された吊り具により垂直状に引き起こして吊り上げるためのパネル吊り上げ用治具であって、
前記パネル吊り上げ用治具は平板部材と壁面支持部材とからなり、前記平板部材はコンクリートパネルの上側小口面に当接され、また前記壁面支持部材は建物躯体側のパネル取付側壁面に当接される支持片を有し、その支持片がパネル壁面と平行に回動するとともにパネル厚さ方向に摺動するように前記壁面支持部材が前記平板部材に連結されているパネル吊り上げ用治具とした。
【0009】
参考発明は、水平に置かれたコンクリートパネルをその上側小口面に埋設された吊り具により垂直状に引き起こして吊り上げるためのパネル吊り上げ用治具であって、
前記パネル吊り上げ用治具は平板部材と壁面支持部材とからなり、前記平板部材はコンクリートパネルの上側小口面に当接され、また前記壁面支持部材は建物躯体側のパネル取付側壁面に当接される支持片を有する断面略L字状の部材であり、その壁面支持部材が着脱可能に前記平板部材に連結されているパネル吊り上げ用治具とした。
【0010】
さらに、第発明は、第発明において、壁面支持部材が平板部材の長さ方向中央から対象位置に1つずつ設けられている吊り上げ用治具とした。
【0011】
また、第の発明は、前記第1又は2発明のパネル吊り上げ用治具を用いて、
1)水平に置かれたコンクリートパネルの吊り具が埋設されているパネル上端部に前記パネル吊り上げ治具を取付ける工程、
2)その吊り具によりコンクリートパネルを垂直状に引き起こすとともにパネルを吊り上げる工程、
3)パネル吊り上げ治具の壁面支持片をパネル壁面と平行に回動させるとともにパネル厚さ方向に摺動させる、または壁面支持部材を取り外す工程、
4)取付金物を介してパネル上部を建物躯体に取付ける工程、
5)パネルからパネル吊り上げ用治具を取り外す工程、
から成るパネル取付施工方法を採用した。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。なお、符号は従来例と同一のものはその符号を付した。
本発明におけるパネル吊り上げ用治具1の実施形態を図1および図2に示す。図3はパネル吊り上げ用治具1がパネル10の小口面に装着される状況、図4はパネルが建物駆体に取付固定される状況をそれぞれ示す。また、図5はパネル10の上側小口面に吊り具12が埋設されている状態を示す。
【0013】
本発明は、図3および図4に示すように、パネル10の上側小口面10aに装着して使用されるパネル吊り上げ用治具1である。
具体的には、水平に置かれたパネル10の上側小口面10aに埋設された吊り具12と係止具11とを係合させたのち、その係止具11に吊りワイヤーのフックを係合させて、パネル10を垂直状に引き起して、さらに吊り上げてパネル取付位置まで移送させて、パネル10を建物駆体に取付固定する施工作業において使用される。
【0014】
このパネル吊り上げ用治具1は、図1および図2に示すように、パネル10の上側小口面に当接される平板部材2と、建物躯体側のパネル取付側壁面10bに当接される支持片4を有する壁面支持部材3とから構成される。
そして、平板部材2には、係止具11を挿通させて吊り具12を係合させる挿通孔2aが設けられている。なお、平板部材2は平板鋼材が取り扱い易く最も好ましいが、四角状または管状の鋼材であっても良い。
【0015】
先ず、第1発明に係るパネル吊り上げ用治具1の実施形態を、図1に基づいて説明する。
このパネル吊り上げ用治具1は、壁面支持部材3の支持片4がパネル取付側壁面10bと平行に回動するとともにパネル10の厚さ方向に摺動するように、連結部5により壁面支持部材3が平板部材2に連結されている。
この壁面支持部材3は、図1に示すように、支持片4とその端部付近に先端が溶接固定されたボルト状の棒状体7、および、棒状体7が挿通されて螺合されるナット状の筒状体6とから成なっている。
また、連結部5が平板部材2の表面に溶接固定されているとともに、その連結部5には棒状体7が挿通されて摺動可能な貫通孔5aが設けられている。
【0016】
そして、図3に示すように、上記構成のパネル吊り上げ用治具1は、吊り具12が埋設されたパネル10の上側小口面10aおよび取付側壁面10bへ当接させて、次の手順により装着される。
先ず、平板部材2の挿通孔2aを挿通した係止具11が吊り具12に係合されることにより、パネルの上側小口面10aに平板部材2が取付けられる。
このとき、壁面支持部材3の支持片4はパネル10と干渉しないようにパネル10と反対側に回動させておく。
連結部5の貫通孔5aは棒状体7の直径より大きく設定してあるため、棒状体7が容易に貫通孔5aに挿通できるとともに、棒状体7がパネルの厚さ方向(図3中の矢印A)に摺動可能な状態となる。
これにより、棒状体7に溶接固定されている支持片4は、パネルの厚さ方向の摺動、およびパネル取付側壁面10bと平行な回動が可能となる。
また、筒状体6を棒状体7から取り外すことにより、壁面支持部材3を平板部材2から容易に取り外すことができる。
【0017】
次に、図3に示すように、パネル10の小口面または壁面に沿って支持片4を摺動(図中矢印A)および回動(図中矢印B)させて、パネル取付側壁面10b(図中パネルの下側面)に当接させる。その後、パネル取付側壁面10bに支持片4が確実に当接して固定されるまで、棒状体7に螺合している筒状体6を回転させる。
これにより、パネル吊り上げ用治具1が、パネル10の上側小口面およびにパネル取付側壁面10bに当接して固定される。
このとき、パネル10の厚さ方向に支持片4が摺動可能となっているため、平板部材2を小口面に取付けて固定した後であっても、そのパネル10の厚さに関係なく支持片4を壁面10bに当接させることができる。
【0018】
この状態で、係止具11にクレーンのフックを係合させて、水平に置かれたパネル10を垂直状に引き起こす。
このとき、パネル取付壁面10bがパネル吊り上げ用治具1の支持片4により支えられているため、パネル10の引き起こし時に吊り具12により発生するパネル剪断力に対する強度が向上する。これにより、パネル端部の破損が防止される。
【0019】
さらに、パネル10は垂直状に吊り上げられた状態で、建物駆体のパネル取付位置へ移送される。
そして、図4に示すように、吊り上げられたパネル10は長尺金具19とアングル鋼材22とを介して、建物躯体である鉄骨梁21に取付固定される。
なお、建物駆体(鉄骨梁21)にパネル10が取付固定された状態は、図4に示すように、従来技術(図7に示す)と同じ取付構造である。
このとき、図1に示すパネル吊り上げ用治具1を使用して、パネル取付作業をするとその効率および安全性が向上する。
【0020】
すなわち、本発明のパネル吊り上げ用治具1を採用することにより、パネルの上方を鉄骨梁21に固定する際に、従来と違って、クレーンのフック、係止具11およびパネル吊り上げ用治具1をパネル10から取り外す必要がない。
それは、図4に示すように、パネル吊り上げ用治具1の筒状体6を回転させて(緩めて)パネル10の厚さ方向に棒状体7が摺動可能とすることにより、パネル取付壁面10bから支持片4を離間させ、さらに、その支持片4をパネル取付壁面10bと反対側に回動(図中矢印B)させる。
【0021】
これにより、パネル吊り上げ用治具1(支持片4)と長尺金具19とは互いに干渉することがなくなるため、係止具11によりパネル10が吊り上げられた状態であっても、パネル壁面に長尺金具19を当接させて取付固定できるようになる。
さらに、パネル10が吊り上げられた状態であっても、パネル吊り上げ用治具1(支持片4)とアングル鋼材22とは互いに干渉することがないため、長尺金具19をアングル鋼材22の立設片22aに当接させて、容易に溶接固定ことができる。
この結果、パネルの上部を取付ける際に、パネル10が倒れないように手または他の治具でパネルを押さえておく必要が全く無くなる。
さらに、建物駆体に完全にパネルが取付固定されてから、吊り上げ用治具1を取り外すことができるようになるため、パネル取付作業を安全に実施して完了することが可能となる。
【0022】
なお、1)パネル10を自重受け金具23に載置する。2)パネル下部をイナズマプレートで仮止めする。3)パネル40の上方を鉄骨梁21に接近させる。5)長尺金具19の下方をパネル取付側壁面へ取付ける。6)長尺金具19の上部をアングル鋼材22の立設片22aに溶接固定する。
および、7)ボルト20を本締めしてイナズマプレート24をパネル下方を取付固定する。8)自重受け金具23をアングル鋼材22に溶接固定する。等のパネル取付における作業手順は、従来と同じである。
また、図1または図4に示すように、本実施形態におけるパネル吊り上げ用治具1は、パネル10に長尺金具19を取付ける際に、支持片4が自由に回動するため、平板部材2から壁面支持部材3を取り外す必要も無くなる。
これにより、さらに、取り外した部材が落下するなどの危険を回避することができるようになる。
【0023】
次に、参考発明に係るパネル吊り上げ用治具1の他の実施形態を、図2に基づいて説明する。
このパネル吊り上げ用治具1は、パネル10の上側小口面10aに当接される平板部材2と断面略L字状の壁面支持部材3とから構成される。
さらに、その壁面支持部材3は、建物躯体側のパネル取付側壁面10bに当接される支持片4と、平板部材2に取付けられる連結片8とから成る。
平板部材2の挿通孔2aを挿通した係止具11が吊り具12に係合されることにより、パネルの上側小口面10aに平板部材2が取付けられる。
また、壁面支持部材3は、その連結片8の取付部8aを挿通させたボルト9が平板部材2のネジ孔2bに螺合されることにより、着脱可能に平板部材2に連結して固定される。
【0024】
図2に示すパネル吊り上げ用治具1をパネル10の上側小口面10aに装着させたのち、係止具11にクレーンのフックを係合させて、水平に置かれたパネル10を垂直状に引き起こす。
このとき、パネル取付壁面10bがパネル吊り上げ用治具1の支持片4により支えられているため、パネル10の引き起こし時に吊り具12により発生するパネル剪断力に対する強度が向上する。これにより、パネル端部の破損が防止される。
【0025】
さらに、図2に示すパネル吊り上げ用治具1が装着されて垂直状に吊り上げられたパネル10は、建物駆体の取付位置へ移送される。
そして、パネル取付側壁面10bに長尺金具19を取付けるときに、平板部材2から壁面支持部材3を取り外すことにより、パネル吊り上げ用治具1(支持片4)と長尺金具19とが互いに干渉することがなくなる。
これにより、係止具11によりパネル10が吊り上げられた状態であっても、パネル壁面に長尺金具19を当接させて取付固定できようになる。
さらに、パネル10が吊り上げられた状態であっても、パネル吊り上げ用治具1(支持片4)とアングル鋼材22とは互いに干渉することがないため、長尺金具19をアングル鋼材22の立設片22aに当接させて、容易に溶接固定ことができる。
【0026】
壁面支持部材3の連結片8の取付部8aは、孔または溝形状にすることができる。図2に示すように、取付部8aが溝形状であると、ボルト9を緩めることにより壁面支持部材3を容易に取り外すことができるため、より好ましい。
【0027】
さらに、図1または図2に示すように、平板部材2の長さ方向中央から対象位置に壁面支持部材3が1つずつ設けられていると、吊り具12を中心とした左右同寸法が離れた位置へ、吊り具12による剪断力が均等に分散されるようになる。
また、パネル吊り具12の埋設位置から壁面支持部材3の位置をより離すことができ、長尺金具19などの取付金物との干渉をより避けることが可能となる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図1、図3、図4および図5に基づいて説明する。
図1に示すように、パネル10(長さ:3000mm、幅:600mm、厚さ:100mm)の上側小口面10aに当接される平板部材2(長さ:300mm、高さ:50mm、厚板:6mm)と、建物躯体側のパネル取付側壁面10bに当接される支持片4(長さ:70mm、幅:65mm)を有する壁面支持部材3とから成るパネル吊り上げ用治具1とした。
そして、図1に示すように、壁面支持部材3のボルト状の棒状体7(長さ:120mm、直径:12mm)の先端が、支持片4の端部付近に溶接固定されている。さらに、ナット状の筒状体6(長さ:20mm、内径:25mm)に棒状体7が挿通して螺合されている。
また、連結部5は平板部材2の表面に溶接固定されているとともに、その連結部5に設けられた方形の貫通孔5a(長さ:12mm、幅:16mm)に棒状体7が挿通されている。貫通孔5aを方形状にすると、パネル吊り上げ用治具1をパネル10へ装着する時に、棒状体12bをその幅方向に多少動かして調整すことができてより取付けが容易となる。
【0029】
このパネル吊り上げ用治具1をパネル10の上側小口面10aに装着させたのち、係止具11にクレーンのフックを係合させて、水平に置かれたパネル10を垂直状に引き起こして吊り上げたのち、パネル10をパネル取付位置まで移送させて建物駆体に取付固定した。
この結果、パネル吊り上げ用治具1が装着されパネル10が吊り上げた状態であっても、パネル取付側壁面に長尺金具19が容易に取付固定でき、さらに、アングル鋼材22の立設片22aに長尺金具19が支障なく溶接固定できて、建物駆体へ容易にパネル10を取付けることができた。
また、パネル10を水平に置いた状態で拘束し、係止具11を吊り具12に係合させ、さらに、その係止具を上方に引き上げてパネル10の引き起こし時に発生する剪断試験を行った。
その結果、本発明のパネル吊り上げ用治具1が装着されたパネル10は、装着されていないパネル1と比べて、2倍の荷重を係止具11にかけてもパネルのひびまたは破損が発生することはなかった。
このように、本発明のパネル吊り上げ用治具1により、2倍以上のパネル剪断強度が得られるようになる。
【0030】
なお、本実施例では、以下に示す吊り具12を埋設したパネル10を使用した。
すなわち、図5に示すように、パネル10(長さ:1800mm、幅:600mm、厚さ:100mm)は、上側小口面1aに縦孔13(直径:30mm、長さ:300mm)とパネル壁面10bに縦孔13へ連通する横孔14とが形成されている。
縦孔13は、パネル厚さの中心であってパネル幅方向の中心に穿設されている。さらに、縦孔13の開口部の直径を35mmとする円錐状の拡径部13aが、上側小口面10aから100mmの深さ位置まで設けられている。
横孔14(直径:14mm、長さ:95mm)は、それぞれの縦孔13へ連通するように上側小口面10aから280mmの位置の壁面10bに穿設されている。
【0031】
そして、図5に示すように、縦孔13から挿通された棒状体12bの挿通孔12cに、横孔14から挿通された挿通部材15が係合されている。
棒状体12bは直径:28mm、長さ:300mm、厚み:3mmの鋼管とした。棒状体2bの下端から200mmまでの外周面にローレット加工による凹凸部2bb(種類:あや目、ピッチt:1.27mm、深さ:0.15mm)を設けた。
そして、棒状体12bの上端には上側小口面10aに当接させる鍔部12a(直径:50mm、板厚3mm)が設けられている。
さらに、パネル吊り具12は、図5に示すように、係止具11を係合させる吊り上げ用係合部12baがパネル10の上側小口面1a側の棒状体2b内部に設けられている。
また、挿通部材15は直径:12mm、長さ:80mmの棒鋼鉄とした。
【0032】
さらに、接着材17の注入孔16(直径:13mm、長さ:95mm)は、上側小口面10aから200mmの位置で縦孔13へ連通して穿設されている。
接着材17は、変成シリコーン系の1液カートリッジタイプ(粘度25:Pa・s/20℃、硬さ(ショア−A):20)の弾性接着剤を使用した。そして、横孔14の開口に接着材7の上昇が確認されるまで注入孔16から接着材17を圧入し続けた。このとき、棒状体12bの凹凸部12bbの全域(すなわち、200mm/300mm=66% > 1/2 )にわたって接着材17が固着されていた。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、水平に置かれたパネルを垂直状に引き起こす際に、吊り具が発生する剪断力によるパネル端部の破損が防止される。
さらに、パネルがクレーンなどで吊り上げられた状態であっても、パネルを建物駆体へ容易にかつ安全に取付けることができる。
また、本発明によれば、パネルの外装壁面に意匠あるいはタイルが貼着されたパネルに適用することにより、その意匠面に損傷を与えることなくパネルを吊り上げて建物躯体に取付固定することが可能となり、その効果がより発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパネル吊り上げ用治具の一実施形態を示す斜視図。
【図2】本発明の他のパネル吊り上げ用治具の他の実施形態を示す斜視図。
【図3】本発明におけるパネル吊り上げ用治具をパネル小口面に装着する状態を示す斜視説明図。
【図4】本発明におけるパネル吊り上げ用治具を用いて、パネル上方が建物駆体に取付固定される状態を示す斜視説明図。
【図5】パネル吊り具の一例を示す斜視図。
【図6】従来例における吊り上げ用治具(L型部材)がパネル上小口面に装着される状態を示す斜視説明図。
【図7】従来例における吊り上げ用治具(L型部材)を用いて、パネル上方が建物駆体に取付固定される状態を示す斜視説明図。
【符号の説明】
1 吊り上げ用治具
2 平板部材
2a 挿通孔
2b ネジ孔
3 壁面支持部材
4 支持片
5 連結部
5a 貫通孔
6 筒状体
7 棒状体
8 連結片
8a 取付部
9 ボルト
10 コンクリートパネル(ALCパネル)
10a 上側小口面
10b パネル取付側壁面
11 係止具
12 パネル吊り具
12a 鍔部
12b 棒状体
12ba 吊り上げ用係合部
12bb 凹凸部
12c 挿通孔
13 縦孔
13a 拡径部
14 横孔
15 挿通部材
16 注入孔
17 接着材
18 吊りワイヤー
19 長尺金具
19a 孔
20 ボルト
21 鉄骨梁
22 アングル鋼材
22a 立設片
22b 水平片
23 自重受け金具
24 イナズマプレート
40 パネル(コンクリートパネル)
40a 上側小口面
40b 壁面
40c 横側小口面
41 ナット部材
41a 係止部
42 吊り部材
42a 挿通孔
42b 先端ネジ部
43 縦孔
44 横孔
45 棒材
46 L型部材
46a 孔

Claims (3)

  1. 水平に置かれたコンクリートパネルをその上側小口面に埋設された吊り具により垂直状に引き起こして吊り上げるためのパネル吊り上げ用治具であって、
    前記パネル吊り上げ用治具は平板部材と壁面支持部材とからなり、前記平板部材はコンクリートパネルの上側小口面に当接され、また前記壁面支持部材は建物躯体側のパネル取付側壁面に当接される支持片を有し、その支持片がパネル壁面と平行に回動するとともにパネル厚さ方向に摺動するように前記壁面支持部材が前記平板部材に連結されていることを特徴とするパネル吊り上げ用治具。
  2. 前記壁面支持部材が、平板部材の長さ方向中央から対象位置に1つずつ設けられている請求項記載の吊り上げ用治具。
  3. 請求項1又は2記載のパネル吊り上げ用治具を用いて、
    1)水平に置かれたコンクリートパネルの吊り具が埋設されているパネル上端部に前記パネル吊り上げ治具を取付ける工程、
    2)その吊り具によりコンクリートパネルを垂直状に引き起こすとともにパネルを吊り上げる工程、
    3)パネル吊り上げ治具の壁面支持片をパネル壁面と平行に回動させるとともにパネル厚さ方向に摺動させる、または壁面支持部材を取り外す工程、
    4)取付金物を介してパネル上部を建物躯体に取付ける工程、
    5)パネルからパネル吊り上げ用治具を取り外す工程、
    から成るパネル取付施工方法。
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