JP3943734B2 - スピニングリールのロータ駆動機構 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動機構、特に、釣り竿に装着されるリール本体の前部に、スプールに釣り糸を巻き付けるために配置されたロータをハンドルの回転に連動して回転させるためのスピニングリールのロータ駆動機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、スピニングリールは、釣り竿に装着されハンドルを有するリール本体と、リール本体に回転自在に支持されたロータと、ロータの前方に設けられ外周に釣り糸が巻き付けられるスプールとを有している。
【0003】
リール本体には、ハンドルの回転に連動してロータを回転させるためのロータ駆動機構が設けられている。ロータ駆動機構は、ハンドルの回転に連動して回転するマスターギアと、ロータに回転不能に装着されマスターギアに噛み合うピニオンギアとを有している。
【0004】
マスターギアは、ハンドルの回転軸と同芯に配置され歯すじが湾曲しつつねじれた曲がり歯を外周端面に有する円盤状のフェースギア部を有している。ピニオンギアは、スプール軸の外周側にスプール軸回りに回転自在に装着されており、後方に配置されたオシレーティング機構に向けてスプール軸を通すためにハンドルの回転軸と食い違うように配置されている。ピニオンギアは、フェースギア部に噛み合う円筒形のはすば歯を有するギア部を後端に有し、ロータを装着するためのロータ装着部を前端に有している。
【0005】
一般に、フェースギア部の歯形状は、ホブ切りされたピニオンギアによって欠き取られた残りの部分として定義される。この歯形状は、オフセット量(両ギア部の回転軸芯間の距離)とピニオンギアのはすば歯の角度によって決定される。
【0006】
このような構成のロータ駆動機構では、フェースギア部とギア部との噛み合いにおいて、ハンドルを糸巻取方向に回転させると曲がり歯の凹面にギア部のはすば歯が接触して回転が食い違い軸方向に変換されてロータに伝えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来のロータ駆動機構では、糸巻取方向にロータを駆動する場合、マスターギアのフェースギア部の曲がり歯の凹面がピニオンギアのギア部のはすば歯に接触して回転が伝達される。曲がり歯の凹面は曲率が小さいため、凹面ではすば歯に接触すると、わずかな変動・変位によって歯面法線ベクトルの方向変位が大きくなる。ピニオンギアの歯面法線ベクトルの方向変位が大きくなると、リール本体の製作誤差によって生じるマスターギアやピニオンギアの取付誤差及びフェースギア部やギア部の歯形の製作誤差等による影響を受けやすくなり、巻き上げ時のフィーリングが不安定になりやすい。
【0008】
本発明の課題は、フェースギア部とギア部との噛み合いにより回転を伝達するロータ駆動機構において、両ギア部の製作誤差やリール本体の製作誤差の影響を受けにくくして巻き上げ時のフィーリングを安定させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明1に記載のスピニングリールのロータ駆動機構は、釣り竿に装着されるリール本体の前部に、スプールに釣り糸を巻き付けるために配置されたロータをハンドルの回転に連動して回転させるための機構であって、マスターギアと、ピニオンギアとを備えている。マスターギアは、ハンドルの回転軸と同芯に配置され歯すじが湾曲しつつねじれた曲がり歯を外周端面に有する円盤状のフェースギア部を有し、ハンドルの回転に連動して回転する。ピニオンギアは、ハンドルの回転軸と食い違うように配置されたスプール軸回りに回転しロータを糸巻取方向に回転させるときにフェースギア部の曲がり歯の凸面側に接触して噛み合う円筒形のはすば歯を有するギア部を有し、ロータに回転不能に装着されている。
【0010】
このロータ駆動機構では、ハンドルが糸巻取方向に回転すると、マスターギアが回転してその曲がり歯の凸面がピニオンギアのはすば歯に接触してピニオンギアが回転する。ピニオンギアが回転するとロータが回転してスプールに釣り糸が巻き付けられる。
【0011】
ここでは、曲率が凹面より大きい曲がり歯の凸面にピニオンギアのはすば歯が接触している。このため、両ギア部の接触状態が変動してもピニオンギアの歯面法線ベクトルの方向変位が小さくなる。したがって、両ギア部の製作誤差やリール本体の製作誤差の影響を受けにくくなり巻き上げ時のフィーリングが安定する。
【0012】
発明2に係るスピニングリールのロータ駆動機構は、発明1に記載の機構において、ハンドルをその回転軸芯より釣り竿装着側からロータ側に向けて回転させたとき、ロータが糸巻取方向に回転するようにフェースギア部とギア部とが噛み合っている。この場合には、糸巻取時のハンドルの回転方向が従来のスピニングリールと同方向になるので、ハンドル操作時に違和感が生じにくい。
【0013】
発明3に係るスピニングリールのロータ駆動機構は、発明1又は2に記載の機構において、ギア部は、ハンドルの回転軸芯よりロータ側かつ釣り竿装着側でフェースギア部に噛み合っている。この場合には、噛み合い位置がマスターギアの前側に位置するので、後方に突出するスプール軸にオシレーティング機構を装着しても、全体をコンパクトな構成に維持できる。
【0014】
発明4に係るスピニングリールのロータ駆動機構は、発明3に記載の機構において、フェースギア部の曲がり歯は、リール後方から見て右側に歯面が向いて配置されており、ピニオンギアのはすば歯は右方向にねじれている。この場合には、ハンドルの回転方向に対してロータが前方から見て時計回りに回転するので、ロータの回転も従来と同様になり違和感が生じにくい。
【0015】
発明5に係るスピニングリールのロータ駆動機構は、発明3に記載の機構において、フェースギア部の曲がり歯は、リール後方から見て左側に歯面が向いて配置されており、ピニオンギアのはすば歯は左方向にねじれている。この場合には、ハンドルの回転方向に対してロータが前方から見て反時計回りに回転するので、ロータの回転が従来と逆方向になり、左利きの人が左手で釣り竿とともにリールを操作しても釣り糸が左手で引っ掛かりやすくなり操作性が向上する。
【0016】
発明6に係るスピニングリールのロータ駆動機構は、発明1又は2に記載の機構において、ギア部は、ハンドルの回転軸芯よりロータ側と逆側かつ釣り竿装着側と逆側でフェースギア部に噛み合っている。この場合には、ハンドルの回転軸がピニオンギアより上方に配置されるので、上下方向の寸法がコンパクトになる。
【0017】
発明7に係るスピニングリールのロータ駆動機構は、発明6に記載の機構において、フェースギア部の曲がり歯は、リール後方から見て右側に歯面が向いて配置されており、ピニオンギアのはすば歯は右方向にねじれている。この場合には、ハンドルの回転方向に対してロータが前方から見て反時計回りに回転するので、ロータの回転が従来と逆方向になり、左利きの人が左手で釣り竿とともにリールを操作しても釣り糸が左手で引っ掛かりやすくなり操作性が向上する。
【0018】
発明8に係るスピニングリールのロータ駆動機構は、発明6に記載の機構において、フェースギア部の曲がり歯は、リール後方から見て左側に歯面が向いて配置されており、ピニオンギアのはすば歯は左方向にねじれている。この場合には、ハンドルの回転方向に対してロータが前方から見て時計回りに回転するので、ロータの回転も従来と同様になり違和感が生じにくい。
【0019】
【発明の実施の形態】
〔全体構成〕
図1及び図2において、本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、たとえば、8号の釣り糸を200m程度巻き付け可能な大型のスピニングリールである。スピニングリールは、ハンドル組立体1と、ハンドル組立体1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。
【0020】
〔ハンドル組立体の構成〕
ハンドル組立体1は、図3に示すように、マスターギア軸10に螺合する部材であり、T字状の把手部1aと、先端に把手部1aが回転自在に装着されたL字状のクランクアーム1bとを有している。クランクアーム1bは、アーム部7aと、アーム部7aの基端を揺動自在に装着した軸部7bと、軸部7bをマスターギア軸10にネジ込むための取付部7cとを有している。軸部7bは、断面が棒状の部材であり、先端(図3右端)には、右ネジ(時計回りに回すと閉まるネジ)の第1雄ネジ部8aと、第1雄ネジ部8aより大径の左ネジ(反時計回りに回すと閉まるネジ)の第2雄ネジ部8bとが軸方向に並べて同芯に形成されている。これによりハンドル組立体1は、図1及び図2に示すリール本体2の右位置と図3に示す左位置とのいずれにも装着可能である。
【0021】
軸部7bの基端には、互いに平行に切りかかれた面取り部8cが形成されており、面取り部8cには、アーム部7aを揺動自在に支持するための揺動ピン8e装着用のピン孔8dが形成されている。アーム部7aは、揺動ピン8eにより軸部7bに揺動自在に装着されている。
【0022】
取付部7cは、アーム部7aの端面で構成された当接部9aと、軸部7bの外周側に配置された有底筒状の軸カバー9bと、軸部7bと軸カバー9bとの間で軸部7bに装着された押圧部材9cとを有している。軸カバー9bの底部は、軸部7bの面取り部8cに回転不能に係止されている。これにより軸カバー9bを回すことで軸部7bを回転させることができる。軸カバー9bの先端は、リール本体2に設けられた孔あきカバー19bに対向する位置に配置される。押圧部材9cは、軸部7bに回転自在かつ軸方向移動自在に装着された筒状部材である。この先端は、ハンドル組立体1取付時にマスターギア軸10に当接する。押圧部材9cと軸カバー9bの底部との間には、外周側が当接する2枚2組合計4枚の皿ばね9dとワッシャ9eとが軸部7bの外周側に並べて配置されている。皿ばね9dは、ハンドル組立体1取付時に押圧部材9cの基端部とワッシャ9eとの間で圧縮状態で位置され、押圧部材9cをマスターギア軸10側に押圧して圧縮反力によりネジが緩むのを防止している。 このような構造のハンドル組立体1では、軸カバー9bを回してハンドル組立体1をゆるめると、当接部9aが軸カバー9bから離反し、クランクアーム1bは揺動ピン8e部分おいてワンタッチで折れ曲がり可能である。逆に軸カバー9bを回してハンドル組立体1を締め込むと、当接部9aが軸カバー9bに密着してワンタッチで元に戻る。このとき、皿ばね9dにより押圧部材9cがマスターギア軸10側に押圧されるので、ハンドル組立体1が緩みにくくなる。
【0023】
〔リール本体の構成〕
リール本体2は、側部に開口2cを有するリールボディ2aと、リールボディ2aから斜め上前方に一体で延びるT字状の竿取付脚2bとを有している。開口2cは、蓋部材2dにより塞がれている。
【0024】
リールボディ2aは、図2に示すように、内部に開口2cに連なる機構装着用の空間を有しており、その空間内には、ロータ3をハンドル組立体1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。
【0025】
図3及び図4に示すように、リールボディ2aの右側面には、筒状のボス部17aが形成されている。ボス部17aは、マスターギア軸10の右端を支持する軸受16aを収納するためにリールボディ2aの内方に突出して形成されている。蓋部材2dのボス部17aに対向する位置には、ボス部17bが形成されている。ボス部17bはマスターギア軸10の左端を支持する軸受16bを収納するためにリールボディ2aの内外方に突出して形成されている。ハンドル組立体1が装着された側と逆側のボス部(図3ではボス部17a)は、軸カバー19aにより閉塞されている。ハンドル組立体1が装着された側のボス部(図3ではボス部17b)は、孔あきカバー19bにより水の侵入が防止されている。軸カバー19a及び孔あきカバー19bは、図1に示すように、楕円形の部材であり、それぞれ2本のビス19cによりボス部に取り付けられる。なお、外方に突出していないボス部17aには、軸カバー19a及び孔あきカバー19bを面一に装着するための楕円形の窪み17cが形成されている。
【0026】
〔ロータ駆動機構の構成〕
ロータ駆動機構5は、図2及び図3に示すように、ハンドル組立体1が回転不能に装着されたマスターギア11と、このマスターギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。
【0027】
マスターギア11は、図4に示すように、マスターギア軸10と、マスターギア軸10と一体形成されたギア取付部11aと、ギア取付部11aに着脱自在に装着されたギア部材11bとを有している。
【0028】
マスターギア軸10はステンレス製の中空の部材であり、その両端は、軸受16a,16bを介してリールボディ2a及び蓋部材2dに回転自在に支持されている。軸受16a,16bは、内輪と外輪とボールとを有する転がり軸受であり、その軸方向外側には、軸受16a,16bの内輪及び外輪とマスターギア軸10の外周面とに接触した、たとえばNBR等の弾性体製のシールリング18a,18bがそれぞれ装着されている。
【0029】
マスターギア軸10の中心部には、右端(図4右側)から順に第1貫通孔10a、第1雌ネジ部10b、第2貫通孔10c及び左端に開口する第2雌ネジ部10dが軸方向に並べて同芯に形成されている。第1貫通孔10aの軸方向長さは、第2雌ネジ部10dの軸方向長さとほぼ同一長さで形成されている。第1貫通孔10a直径は、第2雌ネジ部10dより大径であり軸部7bの第2雄ネジ部8bが挿通可能なように形成されている。第1雌ネジ部10bは、軸部7bの第1雄ネジ部8aに螺合する右ネジである。その軸方向長さは、第1雄ネジ部8aよりわずかに長い。第2貫通孔10cの軸方向長さは、第1雌ネジ部10bの軸方向長さとほぼ同一長さで形成されている。第2貫通孔10cの直径は、第1雌ネジ部10bより大径であり第1雄ネジ部8aが挿通可能なように形成されている。第2雌ネジ部10dは、軸部7bの第2雄ネジ部8bに螺合する左ネジである。
【0030】
マスターギア軸10の外周面においてギア取付部11a形成位置には、対向して形成された平行な面取り部10gが形成されている。この面取り部10gに、ギア取付部11aがアウトサート成形により一体に形成されている。ギア取付部11aは、ステンレス合金に一体成形しやすい亜鉛合金製となっている。ギア取付部11aは、マスターギア軸10に固着されたボス部11cと、ボス部11cの外周側に形成されたフランジ部11dとを有している。このフランジ部11dにギア部材11bが複数本のボルト13により着脱自在に装着されている。
【0031】
ギア部材11bは、軽量化を図るためにアルミニウム鍛造合金を用いた円板状の部材である。ギア部材11bは、フランジ部11dに回転不能に取り付けられた円板部11eと、円板部11eの外周側に設けられピニオンギア12に噛み合うフェースギア部11fとを有している。フェースギア部11fは、図5に示すように、正面から見てマスターギア軸10と同芯に配置され歯すじが湾曲しつつねじれた曲がり歯11gを外周端面に有する円盤状のギア部である。フェースギア部11fの曲がり歯は、リール後方から見て右側に歯面が向いて配置されている。
【0032】
ピニオンギア12は、図2に示すように、筒状の部材であり前後方向に沿って配置されリールボディ2aにスプール軸15回りに回転自在に装着されている。ピニオンギア12の前部12aはロータ3の中心部を貫通しており、この貫通部分でナット33によりロータ3と固定されている。
【0033】
ピニオンギア12の後部には、ギア部12bが設けられている。ギア部12bは、図5に示すように、ロータ3を糸巻取方向に回転させるときにフェースギア部11fの曲がり歯11gの凸面側に接触して噛み合う円筒形のはすば歯12cを有している。ギア部12bは、ハンドル組立体1の回転軸芯(マスターギア軸10の回転軸芯)より前方かつ上方でフェースギア部11fと噛み合っている。つまり、マスターギア軸10は、スプール軸15の下方に配置されており、ギア部12bは、フェースギア部11fの前部でフェースギア部11fに噛み合っている。ギア部12bのはすば歯12cは右方向にねじれており、ギア部12bは、ハンドル組立体1をその回転軸芯より上方から前方に向けて回転させたとき、つまり図1において時計回りに回したとき、ロータ3が糸巻取方向(リール前方からみて時計回りの回転方向)に回転するようにフェースギア部11fと噛み合っている。
【0034】
ピニオンギア12は、軸方向の中間部と後端部とでそれぞれ軸受14a,14bを介してリールボディ2aに回転自在に支持されている。このピニオンギア12の内部をマスターギア軸10と上方で食い違うように前後に配置されたスプール軸15が貫通している。ピニオンギア12は、マスターギア11に噛み合うとともにオシレーティング機構6にも噛み合っている。
【0035】
このような構成のロータ駆動機構5では、ハンドル組立体1が糸巻取方向に回転したとき、フェースギア部11fの曲がり歯11gの曲率が大きな凸面にピニオンギア12のギア部12bが接触して回転が伝達される。このため、両ギア部11f,12bの接触状態が変動してもピニオンギア12の歯面法線ベクトルの方向変位が小さくなる。したがって、両ギア部11f,12bの製作誤差やリール本体2の製作誤差の影響を受けにくくなり巻き上げ時のフィーリングが安定する。
【0036】
〔ロータの構成〕
ロータ3は、図2に示すように、ピニオンギア12に固定された円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1及び第2ロータアーム31,32と、釣り糸をスプール4に案内するための釣り糸案内機構としてのベールアーム40とを有している。円筒部30と両ロータアーム31,32とは、たとえばアルミニウム合金製であり一体成形されている。円筒部30の先端中心部分が前述のようにナット33によりピニオンギア12の先端部に回転不能に固定されている。
【0037】
円筒部30の前部には前壁41が形成されており、前壁41の中心部には、ボス部42が形成されている。このボス部42の中心部にはピニオンギア12に回転不能に係止される貫通孔が形成されており、この貫通孔をピニオンギア12の前部12a及びスプール軸15が貫通している。
【0038】
ボス部42に隣接して円筒部30の内部には、逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、ピニオンギア12に回転不能に装着された内輪が遊転するローラ形のワンウェイクラッチ51と、ワンウェイクラッチ51を作動状態(逆転禁止状態)と非作動状態(逆転許可状態)とに切り換える切換機構52とを有している。
【0039】
〔オシレーティング機構の構成〕
オシレーティング機構6は、図2及び図3に示すように、スプール軸15の略直上方に平行に配置された螺軸21と、螺軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、螺軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。スライダ22は、螺軸21と平行に配置された2本のガイド軸24に移動自在に支持されている。スライダ22にはスプール軸15の後端が回転不能に固定されている。中間ギア23は、ピニオンギア12に噛み合っている。
〔スプールの構成〕
スプール4は、図2に示すように、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端部にスプール4の中心部がドラグ機構60を介して連結されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの後部に一体で形成されたスカート部4bと、糸巻き胴部4aの前端に固定されたフランジ板4cとを有している。糸巻き胴部4aは、円筒状の部材であり、外周面はスプール軸15と平行な周面で構成されている。
【0040】
〔リールの操作及び動作〕
このスピニングリールでは、キャスティング時等の糸繰り出し時にはベールアーム40を糸開放姿勢に倒す。この結果、釣り糸は仕掛けの自重によりスプール4の先端側から順に繰り出される。
【0041】
糸巻取時には、ベールアームを糸巻取姿勢側に戻す。これは、ハンドル組立体1を糸巻取方向に回転させると、図示しないベール反転機構の働きにより自動的に行われる。ハンドル組立体1の回転力は、マスターギア軸10及びマスターギア11を介してピニオンギア12に伝達される。このとき、フェースギア部11fの曲がり歯11gの曲率が大きな凸面にピニオンギア12のギア部12bが接触して回転が伝達される。このため、両ギア部11f,12bの接触状態が変動してもピニオンギア12の歯面法線ベクトルの方向変位が小さくなる。したがって、両ギア部11f,12bの製作誤差やリール本体2の製作誤差の影響を受けにくくなり巻き上げ時のフィーリングが安定する。
【0042】
ピニオンギア12に伝達された回転力は、その前部からロータ3に伝達されるとともにピニオンギア12に噛み合う中間ギア23によりオシレーティング機構6に伝達される。この結果、ロータ3が糸巻取方向に回転するとともにスプール4が前後に往復移動する。
【0043】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、マスターギア11のフェースギア部11fがリール後方から見て右側に向いていたが、図6に示すように、左側に向けてもよい。この場合、ピニオンギア12のギア部12bのはすば歯12cは左方向にねじれている。このため、ハンドル組立体1を矢印で示す上方から前方への糸巻取方向に回転させると、ロータ3は、リール前方から見て反時計回りに回る。従って、リール全体の構成を前記実施形態と鏡像の関係の構成にすることで、左利き用のスピニングリールを構成できる。
【0044】
(b) 前記2つの実施形態では、ピニオンギア12のギア部12bをマスターギア軸10の回転軸芯より上方かつ前方でマスターギア11のフェースギア部11fと噛み合わせていたが、図7及び図8に示すように、回転軸芯より下方かつ後方で噛み合わせてもよい。
【0045】
図7に示す実施形態では、マスターギア11のフェースギア部11fがリール後方から見て右側に向いており、図8に示す実施形態では、マスターギア11のフェースギア部11fがリール後方から見て左側に向いている。また、ピニオンギア12のギア部12bは、図7に示す実施形態では右方向にねじれており、図8に示す実施形態では左方向にねじれている。このため、ハンドル組立体1を矢印で示す糸巻取方向に回転させると、図7に示す実施形態では、ロータ3はリール前方から見て反時計回りに回転し、図8に示す実施形態では、ロータ3はリール前方から見て時計回りに回転する。これらの場合には、マスターギア軸10がスプール軸15の上方に配置されるので、上下方向の寸法がコンパクトになる。
【0046】
(c) 前記実施形態では、フロントドラグ型のスピニングリールを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、リアドラグ型のスピニングリールやレバーブレーキ型のスピニングリールにも適用できる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、フェースギア部の曲がり歯の曲率が大きな凸面にピニオンギアのギア部が接触して回転が伝達される。このため、両ギア部の接触状態が変動してもピニオンギアの歯面法線ベクトルの方向変位が小さくなる。したがって、両ギア部の製作誤差やリール本体の製作誤差の影響を受けにくくなり巻き上げ時のフィーリングが安定する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を採用したスピニングリールの右側面図。
【図2】その縦断面図。
【図3】その背面横断面図。
【図4】ロータ駆動機構の断面拡大図。
【図5】フェースギア部とギア部との位置関係を示す模式図。
【図6】他の実施形態の図5に相当する図。
【図7】他の実施形態の図5に相当する図。
【図8】他の実施形態の図5に相当する図。
【符号の説明】
1 ハンドル組立体
2 リール本体
5 ロータ駆動機構
10 マスターギア軸
11 マスターギア
11f フェースギア部
11g 曲がり歯
12 ピニオンギア
12b ギア部
12c はすば歯

Claims (8)

  1. 釣り竿に装着されるリール本体の前部に、スプールに釣り糸を巻き付けるために配置されたロータをハンドルの回転に連動して回転させるためのスピニングリールのロータ駆動機構であって、
    前記ハンドルの回転軸と同芯に配置され歯すじが湾曲しつつねじれた曲がり歯を外周端面に有する円盤状のフェースギア部を有し、前記ハンドルの回転に連動して回転するマスターギアと、
    前記ハンドルの回転軸と食い違うように配置されたスプール軸回りに回転し前記ロータを糸巻取方向に回転させるときに前記フェースギア部の曲がり歯の凸面側に接触して噛み合う円筒形のはすば歯を有するギア部を有し、前記ロータに回転不能に装着されたピニオンギアと、
    を備えたスピニングリールのロータ駆動機構。
  2. 前記ハンドルをその回転軸芯より前記釣り竿装着側から前記ロータ側に向けて回転させたとき、前記ロータが糸巻取方向に回転するように前記フェースギア部と前記ギア部とが噛み合っている、請求項1に記載のスピニングリールのロータ駆動機構。
  3. 前記ギア部は、前記ハンドルの回転軸芯より前記ロータ側かつ前記釣り竿装着側で前記フェースギア部に噛み合っている、請求項1又は2に記載のスピニングリールのロータ駆動機構。
  4. 前記フェースギア部の曲がり歯は、リール後方から見て右側に歯面が向いて配置されており、
    前記ピニオンギアのはすば歯は右方向にねじれている、請求項3に記載のスピニングリールのロータ駆動機構。
  5. 前記フェースギア部の曲がり歯は、リール後方から見て左側に歯面が向いて配置されており、
    前記ピニオンギアのはすば歯は左方向にねじれている、請求項3に記載のスピニングリールのロータ駆動機構。
  6. 前記ギア部は、前記ハンドルの回転軸芯より前記ロータ装着側と逆側かつ前記釣り竿装着側と逆側で前記フェースギア部に噛み合っている、請求項1又は2に記載のスピニングリールのロータ駆動機構。
  7. 前記フェースギア部の曲がり歯は、リール後方から見て右側に歯面が向いて配置されており、
    前記ピニオンギアのはすば歯は右方向にねじれている、請求項6に記載のスピニングリールのロータ駆動機構。
  8. 前記フェースギア部の曲がり歯は、リール後方から見て左側に歯面が向いて配置されており、
    前記ピニオンギアのはすば歯は左方向にねじれている、請求項6に記載のスピニングリールのロータ駆動機構。
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