JP3943403B2 - エンジンのカムシャフトピン取付構造 - Google Patents

エンジンのカムシャフトピン取付構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの動弁用カムシャフトを回転自在に支持するカムシャフトピンに関し、特に、カムシャフトピンの潤滑性や組付性を改善し得るカムシャフトピン取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
草刈機や動力噴霧機、発電機等の動力源として、OHV(頭上弁)型やOHC(頭上カム軸)型の汎用エンジンが広く用いられている。このうちOHCエンジンでは、動弁用のカムシャフトはシリンダヘッド側に配設され、チェーンやコグベルト等によりクランクシャフトと同期して駆動される。カムシャフトには動弁カムが設けられており、シリンダヘッドに取り付けられたカムシャフトピンに回転自在に支持されている。動弁カムにはロッカーシャフトを中心に揺動自在に設けられたロッカーアームが摺接しており、動弁カムの回転に伴ってロッカーアームが揺動して吸排気バルブの開閉が行われる。
【0003】
このようなOHCエンジンでは、特開平8-177416号公報に示されているように、カムシャフトピンはシリンダヘッドに設けられた軸受孔に挿通・支持される。シリンダヘッド内にはチェーン等を装着したカムシャフトが収容されており、カムシャフトピンはシリンダヘッド外部からカムシャフトの軸孔に挿入される。この際、カムシャフトはシリンダヘッド内側面と直接又は前記公報のように当金を介して当接され、動弁カムの軸方向の位置決めがなされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のようなカムシャフトピン取付構造では、カムシャフト端面とシリンダヘッド内側面との間に間隙がなく、しかもカムシャフトピンが軸受孔やカムシャフトに隙間なく挿入される構成となっているため、カムシャフト内部に挿通されているカムシャフトピンに対し潤滑油を十分に供給できないという問題があった。また、シリンダヘッドにカムシャフトピンを組み付ける際、カムシャフトとシリンダヘッド内側面との間に隙間がないため、カムシャフトピン挿入時にカムシャフトの軸孔が見えず、軸孔を探り当てるようにしてカムシャフトピンを装着しなければならず組付作業性が良くないという問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、カムシャフトピンの潤滑性および組付性を改善することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のエンジンのカムシャフトピン取付構造は、エンジンのシリンダヘッドに形成された取付孔に装着され、前記シリンダヘッドのチェーン室内に収容される動弁用のカムシャフトの軸孔に挿入されて前記カムシャフトを回転自在に支持するカムシャフトピンの取付構造であって、前記シリンダヘッドの内側面に前記取付孔に臨んで突設された凸部と、前記凸部に前記取付孔と連通して形成され、前記カムシャフトピンの外径より大径の内径を有し、前記カムシャフトピン挿通時に前記カムシャフトピンとの間に間隙を形成するピン収容部と、前記凸部の前記ピン収容部上部に形成され、前記ピン収容部内と前記チェーン室内との間を連通する開放部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、開放部を備えたピン収容部を有する凸部をシリンダヘッド内側面に設けたので、開放部を介してカムシャフトピンに対しオイルが供給されると共に、ピン収容部内にもオイルが流入して間隙に溜まりオイル溜まりが形成される。これによりカムシャフトピンに対し十分に潤滑油を供給することができ、カムシャフトピンの潤滑性向上を図ることが可能となる。
【0008】
また、前記カムシャフトピン取付構造において、前記開放部を前記凸部の前記カムシャフト側に位置する端部に設けるようにしても良い。これにより、開放部を介して前記カムシャフトピンおよび前記カムシャフトの前記軸孔が外部から視認できるようになり、カムシャフトをシリンダヘッド内に組み込む際に、開放部からカムシャフトピンとカムシャフトの軸孔を見ながらカムシャフトピンを取り付けることができる。従って、軸孔を探しつつカムシャフトピンを取り付けるような無駄な労力を費やすことなく、簡単かつ迅速にカムシャフトの軸孔にカムシャフトピンを挿入することができ、組付作業性の改善を図ることが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態であるカムシャフトピン取付構造を適用したOHCエンジンの構成を示す説明図、図2は図1のエンジンの外観図、図3は図1のエンジンのロッカーカバーを外した状態を示す斜視図、図4は図1のエンジンのロッカーカバーを外した状態をシリンダ軸線方向から見た平面図、図5は図4のA−A線に沿った断面図、図6は図4のB−B線に沿った断面図である。なお、図5ではロッカーカバーを付して示し、図6ではカムシャフト等の内部構成部品を略して示している。
【0010】
図1のエンジンは、単気筒4サイクルガソリンエンジンであり、図2に示すように、シリンダ軸線が天地方向に対し傾斜したいわゆる傾斜型のOHCエンジンとなっている。当該エンジンでは、エンジン本体1は、シリンダ2の下側にクランクケース3を一体に成形した構成となっており、鉄や、アルミニウム合金等の軽合金によって形成される。シリンダ2の上側にはアルミニウム合金等のシリンダヘッド4が取り付けられている。また、シリンダヘッド4の上側には、ガスケット68を介して板金製若しくは合成樹脂製のロッカーカバー5が載置されている。
【0011】
クランクケース3は、図1において右側の側面が大きく開口しており、メインベアリングケース取付面6となっている。メインベアリングケース取付面6には、アルミニウム合金等のメインベアリングケース7が取り付けられる。これにより、クランクケース3内にクランク室8が形成されると共に、その下部に潤滑オイル9(以下、オイル9と略記する)が貯留されるオイルパン10が形成される。
【0012】
ベアリングケース7には、メインベアリング11aが圧入固定され、このベアリング11aによりクランクシャフト12の一端側が支持される。また、メインベアリング11aの外側にはオイルシール13aが圧入固定されている。
【0013】
クランクケース3のメインベアリングケース取付面6と反対側の壁面14には、メインベアリング11bが圧入固定されている。そして、このメインベアリング11bによってクランクシャフト12の他端側が支持される。また、メインベアリング11bの外側にもオイルシール13bが配されており、両オイルシール13a,13bにより、オイルパン10に貯留されたオイル9がクランクシャフト12部分からクランクケース3外に漏出しないようになっている。
【0014】
壁面14からクランクケース3の外部に延伸したクランクシャフト12の端部には、フライホイール15および冷却ファン16が取り付けられている。この冷却ファン16は、クランクケース3の外側、筐体57の内側に配置され、クランクシャフト12と共に回転して筐体57外部から冷却風を導入する。そして、この導入した冷却風によりエンジン本体1やシリンダヘッド4等の冷却を行う。さらに、筐体57の外側には、リコイル装置17が配設されており、リコイルレバー17aを手動にて引っ張ることによりクランクシャフト12が回転され、エンジンが始動するようになっている。
【0015】
シリンダ2の内部にはシリンダボア18が形成されている。シリンダボア18内には、ピストン19が摺動自在に嵌合されている。シリンダボア18の上端側はシリンダヘッド4によって閉塞されており、ピストン19の頂面とシリンダヘッド4の底壁面20とにより燃焼室21が形成されている。なお、燃焼室21の上部には、吸気バルブ22や、図示しない排気バルブ、点火プラグ69等が臨まされている。
【0016】
ピストン19には、図示しないピストンピンを介してコンロッド24の小端部が回転自在に連結されている。また、コンロッド24の大端部26には、クランクシャフト12のクランクピン27が回転自在に連結されている。これにより、ピストン19の上下動に伴って、クランクシャフト12が回転する。一方、シリンダヘッド4内には、シリンダ軸線上に、クランクシャフト12と平行にカムシャフト28が配設されている。カムシャフト28には、動弁カム29とスプロケット31とが一体に形成されており、カムシャフトピン61に回転自在に支持されている。そして、スプロケット31,32およびチェーン33からなる調時動弁系30により、動弁カム29はクランクシャフト12と同期して駆動される。
【0017】
カムシャフトピン61は、シリンダヘッド4に設けられたカムシャフトピン取付孔66aにシリンダヘッド4の外部から挿通される。シリンダヘッド4内に挿入されたカムシャフトピン61は、カムシャフト28を軸支しつつ動弁カム29に近い奥側のカムシャフトピン取付孔66bに挿入される。カムシャフトピン61の外部側(図4,5において右側)寄りには、Oリング70が装着されており、カムシャフトピン61は、油密な状態でカムシャフトピン取付孔66a,66bによってシリンダヘッド4内に支持される。
【0018】
シリンダヘッド4の内側面には、図4に示すように、カムシャフトピン取付孔66aに臨んで凸部71が設けられている。凸部71は、図5,6に示すように、シリンダヘッド4の下端側からカムシャフトピン取付孔66aに向かってリブ状に突設されており、その先端面71aはカムシャフト28をシリンダヘッド4内に組み付けたとき、カムシャフト28の端面に近接するようになっている。
【0019】
凸部71の上面71bには、カムシャフトピン取付孔66aと連通して形成されたピン収容部72が形成されている。この場合、凸部71は、その上端がピン収容部72の中心を通る平面にて切断され、円形断面を有するピン収容部72の上半分が除去された形態となっている。つまり、ピン収容部72は凸部上面71bに半円筒状の溝として形成されており、その上側はシリンダヘッド4のチェーン室51と連通した開放部73となっている。また、ピン収容部72の内径は、カムシャフトピン61の外径より大径となっており、カムシャフトピン61が挿通されるとその下側に間隙74が形成される。
【0020】
このようなピン収容部72では、エンジンの運転を行うとオイル9がチェーン33によってシリンダヘッド4側に運ばれ、スプロケット31の潤滑も行われるが、この際、開放部73からカムシャフトピン61にオイル9が降りかかると共に、ピン収容部72内にもオイル9が流入する。そして、ピン収容部72に流入したオイル9は間隙74に溜まり、これによりカムシャフトピン61はあたかもオイル溜まりに浸漬されたような状態となる。従って、カムシャフトピン61に対し十分に潤滑油を供給することができ、その潤滑性の向上を図ることが可能となる。
【0021】
また、カムシャフト28をシリンダヘッド4内に組み込む際には、まずスプロケット31にチェーン33を掛け渡し、それらと共にカムシャフト28をシリンダヘッド4の上部から挿入する。そして、シリンダヘッド4の外部よりカムシャフトピン取付孔66aにカムシャフトピン61を挿入し、その先端をカムシャフト28の軸孔28aに挿入する。前述のように、この際、従来のエンジンではカムシャフト28とシリンダヘッド4の内側面との間に隙間がないため、カムシャフト28の軸孔28aやカムシャフトピン61が見えず、軸孔28aを探るようにカムシャフトピン61を取り付けなければならない。
【0022】
これに対し当該エンジンでは、ピン収容部72の上方がカムシャフト28取付側の端部まで開放部73となっているため、開放部73を介してカムシャフト28の軸孔28aやカムシャフトピン61を視認することができる。従って、軸孔28aを見ながらカムシャフトピン61を取り付けることが可能となり、無駄な労力を費やすことなく、簡単かつ迅速にカムシャフト28の軸孔28aにカムシャフトピン61を挿入することができる。このため、カムシャフト28に対するカムシャフトピン61の組付作業性を大幅に改善することができ、組付工数の削減を図ることが可能となる。
【0023】
また、カムシャフトピン61は、シリンダヘッド4の側面に取り付けられたフランジボルト62によって抜け止めおよび回り止めされている。図2に示すように、カムシャフトピン61の端部には、ピンの一部を切り欠いて係合部63が形成されている。この係合部63は、断面がD字形に形成されたDカット形状となっており、弦状に形成され軸方向に延在する平面部64と、平面部64の最奥部に形成され径方向に延在する断面部65とから構成されている。また、係合部63は、カムシャフトピン取付孔66aからシリンダヘッド4の側面に突出して配設され、このとき断面部65は、カムシャフトピン取付孔66aの開口面と面一若しくは若干内側に位置するよう設定されている。
【0024】
これに対し、シリンダヘッド4の側面には、カムシャフトピン61から偏心した位置にフランジボルト62が取り付けられている。このフランジボルト62にはフランジ部67が形成されており、フランジボルト62をシリンダヘッド4に取り付けると、フランジ部67がカムシャフトピン取付孔66aにかかるようになっている。従って、フランジ部67は、その下面側が係合部63の断面部65に当接し、フランジ部67と係合部63が係合する形となり、カムシャフトピン61は、フランジ部67によって係止されて軸方向の動きが規制され、シリンダヘッド4から抜け出ないよう抜け止めされる。また、フランジ部67は、カムシャフトピン61が回転すると、係合部63の平面部64と当接し係合する位置関係にあり、カムシャフトピン61は、フランジ部67によって係止されて回転方向の動きも規制され、カムシャフト28と共に連れ回りしないよう回り止めされる。
【0025】
一方、クランクシャフト12には、スプロケット32が固着されている。また、シリンダ2とシリンダヘッド4には、チェーン室50,51が形成されており、両スプロケット31,32の間は、これらのチェーン室50,51内に配設されたチェーン33にて連結されている。そして、これらのスプロケット31,32およびチェーン33により調時動弁系30が形成される。なお、スプロケット31の歯数は、スプロケット32の歯数の2倍となっており、クランクシャフト12が2回転すると動弁カム29が1回転するようになっている。また、チェーン33は、図示しないチェーンテンショナによって適宜張力が付与されている。
【0026】
動弁カム29にはカム面29aが形成されており、このカム面29aにはロッカーアーム34の一端側に形成されたスリッパ35が摺接している。ロッカーアーム34は、揺動式のものが吸気用と排気用に2個設けられている。これらのロッカーアーム34は、それぞれロッカーサポート59に支持されたロッカーシャフト36を中心として揺動自在に取り付けられている。ロッカーアーム34の他端側は、吸気バルブ22や図示しない排気バルブの先端部とアジャストスクリュウを介して接続されている。そして、動弁カム29によりロッカーアーム34が揺動すると、吸気バルブ22や排気バルブが駆動される。また、吸気バルブ22や排気バルブは、バルブスプリングにより閉弁方向に付勢されており、これにより、吸気バルブ22等が動弁カム29の回転に伴って開閉される。
【0027】
次に、調時動弁系30は、コンロッド24の大端部26に設けられたスクレーパ38によって潤滑される。スクレーパ38は、図3に示すように、大端部26の下側部材39から下方、すなわち、クランクシャフト12の径方向に延伸形成され、図3に一点鎖線にて示すような軌跡を描きつつ、クランクシャフト12の回転に伴って揺動運動する。そしてこれにより、オイルパン10に溜まったオイル9が掻き上げられ、スクレーパ38が油面40から出る際にオイル9がチェーン33に跳ねかけられ、調時動弁系30の潤滑が行われる。
【0028】
スクレーパ38は、略L字形の断面を有しており、底壁41と、底壁41の一端側に底壁41と一体に立設された側壁42とから構成されている。なお、本実施の形態では、底壁41と側壁42との間の角度は90°に形成されているが、両者の角度は直角には限定されず、60°〜90°程度の間で適宜選択し得る。
【0029】
このようなスクレーパ38の揺動運動に伴い、底壁41によってオイル9が掻き上げられると共に、底壁41によって掻き上げられたオイル9が、側壁42に案内されて側壁42とは反対側に跳ね上げられる。すなわち、スクレーパ38の側方にもオイル9の飛沫が3次元的に斜めに跳ね上げられ、チェーンテンショナの根本部分近傍方向へ飛ばされる。また、その一部はクランクケース3の内壁に当たってチェーン33方向に跳ね返る。従って、スクレーパ38に対し、メインベアリングケース7側にオフセットして配置されたチェーン33にオイル9の飛沫をかけることができ、チェーン33にオイル9を確実に供給できる。
【0030】
このようにしてチェーン33に跳ねかけられたオイル9は、チェーン33の移動と共にシリンダヘッド4側に運ばれ、スプロケット31の潤滑も行われる。また、スプロケット32もチェーン33に付着したオイル9によって潤滑される。なお、前述のように、この際カムシャフトピン61にもオイル9が降りかかると共に、ピン収容部72の間隙74内にもオイル9が流入し、カムシャフトピン61の潤滑も行われる。
【0031】
ところで、チェーン33に付着したオイル9は、その一部がシリンダヘッド4側にて遠心力によって振り飛ばされる。すなわち、チェーン33がスプロケット31に巻き付く際に、その一部がスプロケット31の円周方向に飛ばされチェーン33から分離する。当該エンジンでは、スプロケット31の上方にはロッカーカバー5が配設されており、オイル9の飛沫はロッカーカバー5の天井面53に当たる。そして、天井面53に付着したオイル9は、天井面53に沿って下方に流れ、チェーン室51,50を伝ってオイルパン10に戻される。
【0032】
また、ロッカーカバー5の天井面53の一部には、図1に示すように、凸部54が形成されており、天井面53に付着したオイル9がこの凸部54から滴下するようにもなっている。この凸部54は、動弁カム29とスリッパ35との摺接部の上方に位置しており、ここから滴下するオイル9によって前記摺接部が潤滑されるようになっている。
【0033】
シリンダヘッド4の内部にはさらに、チェーン室51とは別に気液分離室43が設けられている。また、ロッカーカバー5内には、この気液分離室43とリードバルブ44を介して連通した気液分離室45が形成されている。さらに、気液分離室45は、ブローバイ通路46を介してエアクリーナ47に接続されている。なお、エアクリーナ47は、気化器48を介してシリンダヘッド4内の吸気ポート49に接続されている。
【0034】
これらの気液分離室43,45は、クランク室8内に貯留されるブローバイガスをエアクリーナ47に還流させる際に、ブローバイガスに含まれるオイル9のミスト分を分離させるためのものである。当該エンジンでは、気液分離室43は、シリンダボア18とは別に形成されたチェーン室50に開口している。すなわち、シリンダ2のチェーン室50上端部には、ガス導入口52が設けられており、チェーン室50に流入したブローバイガスは、ガス導入口52を介して気液分離室43内に流入する。そして、気液分離室43内を流通することにより、その中のオイルミスト分が気液分離室43の壁面に付着し、ブローバイガスとオイルミストの分離が行われる。この際、気液分離室43内にて分離されたオイル分は、気液分離室43およびチェーン室50の壁面を伝ってオイルパン10に戻される。
【0035】
また、リードバルブ44を経てロッカーカバー5内に流入したブローバイガスは、さらに、気液分離室45内にてオイルミスト分の分離が行われる。つまり、気液分離室45に入ったブローバイガス中のオイルミスト分が、気液分離室45の壁面に付着し、さらに気液分離が行われる。なお、ロッカーカバー5の下面側には、図示しないオイルリターン孔が設けられており、気液分離室45の壁面に付着したオイル分は、そこからチェーン室51,50に流出し、チェーン室51,50の壁面を伝ってオイルパン10に戻される。
【0036】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、前述の実施の形態では、開放部73をピン収容部72の上半分をカットする形で設けたが、これをピン収容部72の上部にスリットを形成する形で設けても良い。この際、開放部73は、組付性の観点から言えば、軸孔28aやカムシャフトピン61が視認できる程度の溝であれば良いが、潤滑性の観点からすると、ピン収容部72の直径の1/3以上の幅があることが望ましい。また、スリット(開放部)は、組付性の観点から少なくとも凸部71の先端部に形成されていることが望ましいが、必ずしもシリンダヘッド4の内側面まで形成する必要はない。つまり、前述の実施の形態における開放部73も、必ずしもシリンダヘッド4の内側面まで形成する必要はなく、ピン収容部72の半分をトンネル状に形成しても良い。
【0037】
一方、前述の実施の形態では、傾斜型エンジンに本発明を適用したものを示したが、シリンダ軸線が天地方向に沿って配置された通常のエンジンに本発明を適用することも勿論可能である。また、単気筒の空冷エンジンを例として示したが、本発明を多気筒の空冷エンジンや、単気筒または多気筒の水冷エンジンに適用することも可能である。
【0038】
さらに、シリンダ2とクランクケース3を一体に形成した例を示したがこれらを分離形成することも可能であり、シリンダヘッド4とシリンダ2とを一体に形成するようにしても良い。加えて、調時動弁系30を、スプロケット31,32とチェーン33にて構成した例を示したが、これをコグプーリとコグベルトやタイミングプーリとタイミングベルトなど、他の公知の調時動弁系を適用することも可能である。
【0039】
【発明の効果】
本発明のカムシャフトピン取付構造によれば、開放部を備えたピン収容部を有する凸部をシリンダヘッド内側面に設けたので、開放部を介してカムシャフトピンに対しオイルが供給されると共に、ピン収容部内にもオイルが流入して間隙に溜まりオイル溜まりが形成される。これによりカムシャフトピンに対し十分に潤滑油を供給することができ、カムシャフトピンの潤滑性向上を図ることが可能となる。
【0040】
また、開放部を凸部のカムシャフト側端部に設けたことにより、カムシャフトピンおよびカムシャフトの軸孔が外部から視認できるようになり、カムシャフトをシリンダヘッド内に組み込む際に、開放部からカムシャフトピンとカムシャフトの軸孔を見ながらカムシャフトピンを取り付けることができる。従って、軸孔を探しつつカムシャフトピンを取り付けるような無駄な労力を費やすことなく、簡単かつ迅速にカムシャフトの軸孔にカムシャフトピンを挿入することができ、組付作業性の改善を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であるカムシャフトピン取付構造を適用したOHCエンジンの構成を示す説明図である。
【図2】図1のエンジンの外観図である。
【図3】図1のエンジンのロッカーカバーを外した状態を示す斜視図である。
【図4】図1のエンジンのロッカーカバーを外した状態をシリンダ軸線方向から見た平面図である。
【図5】図4のA−A線に沿った断面図である。
【図6】図4のB−B線に沿った断面図である。
【符号の説明】
4 シリンダヘッド
28 カムシャフト
28a 軸孔
29 動弁カム
51 チェーン室
61 カムシャフトピン
66a カムシャフトピン取付孔
71 凸部
72 ピン収容部
73 開放部
74 間隙

Claims (2)

  1. エンジンのシリンダヘッドに形成された取付孔に装着され、前記シリンダヘッドのチェーン室内に収容される動弁用のカムシャフトの軸孔に挿入されて前記カムシャフトを回転自在に支持するカムシャフトピンの取付構造であって、
    前記シリンダヘッドの内側面に前記取付孔に臨んで突設された凸部と、
    前記凸部に前記取付孔と連通して形成され、前記カムシャフトピンの外径より大径の内径を有し、前記カムシャフトピン挿通時に前記カムシャフトピンとの間に間隙を形成するピン収容部と、
    前記凸部の前記ピン収容部上部に形成され、前記ピン収容部内と前記チェーン室内との間を連通する開放部とを有することを特徴とするエンジンのカムシャフトピン取付構造。
  2. 請求項1記載のエンジンのカムシャフトピン取付構造において、前記開放部は前記凸部の前記カムシャフト側端部に設けられることを特徴とするエンジンのカムシャフトピン取付構造。
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