JP3942731B2 - 床用目地カバー装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、隣接する建造物間の目地を覆う床用目地カバー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
緩衝機能を備えた免震装置によって下部が支持された建物にあっては、地震時における水平方向の揺れが大きくなる傾向がある。このような免震構造の建物の周囲には、隣接する人工地盤との間に、前記揺れを吸収し得る比較的広幅の目地が形成されており、かかる免震構造の建物の目地に好適に使用し得る目地カバー装置が、本願出願人によって、例えば特願平9ー143246号等として既に提案されている。
【0003】
かかる目地カバー装置は、図7イに示すように、建物Aの床fと、該床fに目地sを介して隣接する人工地盤Bとの間に差し渡されて前記目地sを覆うカバー体Cの一端を、前記床fの側縁に連結手段aを介して揺動可能に連結し、該カバー体Cの他端を自由端として、該自由端にその下面から外端上面に向けて傾斜する傾斜端縁bを設けるとともに、該傾斜端縁bの上部からカバー体Cの上面dと略面一となるようにして端部カバー体cを人工地盤B側に向けて延出させる一方、前記人工地盤Bの側縁に、水平受縁eと、該水平受縁eの外端に前記傾斜端縁bと同方向に傾斜する傾斜受縁gとを備えた摺動受枠体hを配設し、該摺動受枠体hの水平受縁e上に、前記カバー体Cの自由端を乗載するとともに、前記端部カバー体cの外端を人工地盤Bの上面iに乗載し、該端部カバー体cによってカバー体Cの傾斜端縁bと摺動受枠体hの傾斜受縁g間に生じる作動空隙jの上方を遮蔽するように構成されている。
【0004】
そして、地震時において、建物Aと、隣接する人工地盤Bとが近接する方向に比較的小さく相対変位した場合には、カバー体Cの自由端が摺動受枠体hの水平受縁e上を作動空隙jの範囲内で水平に摺動してその相対変位に追従し、さらに大きく相対変位すると、図7ロに示すように、カバー体Cは、一端の連結手段aを支点として、自由端に形成された傾斜端縁bが摺動受枠体hの傾斜受縁gに沿ってずれ上がることにより、その相対変位から逃げることができるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、かかる構成の目地カバー装置にあっては、建物Aと、隣接する人工地盤Bとが近接する方向に相対変位した場合に、カバー体Cの自由端が人工地盤Bに乗上げるものであるため、この自由端の乗上げ幅に相当するスペ−スを人工地盤B上に確保しておく必要があり、目地近傍に壁,階段等の立上がり部が形成されて前記スペ−スが確保できない場所には適用できないという問題点がある。
また、カバー体Cの自由端が乗上げるスペ−ス内に歩行者がいると、該歩行者を傷つける恐れがあるという問題点がある。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点を解消し得る床用目地カバー装置の提供を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
目地を介して隣接する建造物の、その何れか一方の建造物の目地側傍に水平受面を設け、
他方の建造物に、前記水平受面より上位置で目地方向に所定間隔で並設され、その前端に係合縁を備えた複数の支持杆を突成し、
支承面を備え、かつその前端に前記係合縁と係合可能な連係縁を備えてなる可動支持体を、前記水平受面と支持杆とに支持させて目地幅方向に摺動可能に設けるとともに、
前端が前記可動支持体の支承面に摺動可能に乗載されて前記目地を覆う左右のカバー体を目地幅方向に移動不能保持し、その一方のカバー体の前端に、下面から前端上面に向けて傾斜する傾斜端縁を形成し、他方のカバー体の前端に、前記傾斜端縁と同方向に傾斜する傾斜受縁を形成して、前記傾斜端縁を形成したカバー体を他方のカバー体に乗上げ可能に設けたことを特徴とする床用目地カバー装置である。
【0008】
かかる構成にあって、地震時に、隣接する建造物が近接する方向に相対変位すると、一方のカバー体の傾斜端縁が、他方のカバー体の傾斜受縁の案内作用を介してずれ上がり、一方のカバー体が他方のカバー体に乗上げることによって、その相対変位に追従する。これにより、建造物上にカバー体が乗上げることがないため、目地近傍に壁,階段等の立上がり部が形成される場所に適用することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の第一の実施例を図1〜図4について説明する。
図面において、Aは緩衝機能を備えた免震装置によって下部が支持された免震構造の建造物、Bは該建造物Aの周囲に形成された人工地盤としての建造物であって、目地sを介して隣接している。目地sは、建造物Aの周囲に沿って所定幅で形成され、地震時における建造物Aと周囲の建造物Bとの水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。また、建造物A,Bには、目地sの近傍に壁,階段等の立上がり部1,1が形成されている。
【0010】
前記建造物Aの側端には、支持縁2が目地s内に水平状に突成されており、該支持縁2上に受枠3が配設されている。該受枠3は、目地幅方向(目地sに直交する方向)に延在する比較的長い水平縁部3aと、建造物Aの側端に沿って立上がる垂直縁部3bとにより断面L形に形成されており、前記水平縁部3aの上面を水平受面4としている。これにより、建造物Aの目地側傍に水平受面4が設けられている。該水平受面4には、上面にテフロンコーティング等の滑性面を形成したパッキン5が被着されており、該パッキン5の滑性面によって、後述の可動支持体17の摺動が容易となるようにしている。また、水平縁部3aの後端近傍には、係止突縁6が上方突成されており、該係止突縁6と前記垂直縁部3bとの間に嵌挿間隙7が生じるようにしている。また、前記水平縁部3aの前端には、その前端縁を上方に曲成したストッパー縁4’が設けられている。
【0011】
一方、前記建造物Bの側端には、支持縁8が前記支持縁2の下位置に段違い状に突成されており、該支持縁8上に受枠9が配設されている。該受枠9は、目地幅方向に延在する短い水平縁部10aと、建造物Bの側端に沿って立上がる垂直縁部10bとにより断面L形に形成されている。そして、該受枠9の垂直縁部10bから複数の支持杆11が夫々同一高さで目地s内に水平状に突成されている。各支持杆11は前記水平受面4より上位置で目地方向に所定間隔で並設されており、その後端が受枠9に固着された固定片12によって夫々片持ち状に支持されている。また、各支持杆11は、L形アングル杆からなり、その上面にテフロンコーティング等の滑性面を形成したパッキン13が被着され、該パッキン13の滑性面によって、後述の可動支持体17の摺動が容易となるようにしている。
さらに、各支持杆11の前端には係合縁14が上方突成されている。また、各支持杆11の後端近傍には、係止突縁15が上方突成されており、該係止突縁15と前記垂直縁部10bとの間に嵌挿間隙16が生じるようにしている。
【0012】
17は可動支持体であって、該可動支持体17は、前記水平受面4に乗載されて目地幅方向に延在するように配設された複数の脚部板18と、各脚部板18の上部に固着された天板19とからなり、該天板19の上面を支承面20としている。該支承面20には、その上面にテフロンコーティング等の滑性面を形成したパッキン21が被着されており、該パッキン21の滑性面によって、後述のカバー体25a,25bの摺動が容易となるようにしている。また、各脚部板18は、図2に示すように、前記各支持杆11の略中間位置に対応させて所定間隔で並設されており、可動支持体17と各支持杆11との目地方向の相対変位を許容し得るようになっている。この可動支持体17の前端には、天板19の前端縁を下方に曲成することにより、前記各支持杆11に支持され、かつ該支持杆11の係合縁14と係合可能な連係縁22が設けられている。また、可動支持体17の後端には、天板19の後端縁を下方に曲成することにより、前記受枠3のストッパー縁4’に当接可能な突縁23が設けられている。
【0013】
そして、可動支持体17は、各脚部板18が受枠3の水平受面4に乗載され、かつ連係縁22が各支持杆11に乗載されることにより、水平受面4と支持杆11とに支持されており、この状態で目地幅方向に摺動可能となっている。
【0014】
前記可動支持体17の支承面20には、目地sを覆う左右のカバー体25a,25bの前端が夫々乗載されている。両カバー体25a,25bの後端には、該カバー体25a,25bを夫々水平に保持し得る所定長さの保持縁26a,26bが下方突成されており、一方のカバー体25aに設けられた保持縁26aの下端を前記受枠3の嵌挿間隙7に嵌挿し、他方のカバー体25bに設けられた保持縁26bの下端を前記受枠9の嵌挿間隙16に嵌挿することによって、両カバー体25a,25bを目地幅方向に夫々移動不能保持するようにしている。
【0015】
また、一方のカバー体25aの前端には、その下面から前端上面に向けて傾斜する傾斜端縁27aが形成が形成されており、他方のカバー体25bの前端には、前記傾斜端縁27aと同方向に傾斜する傾斜受縁27bが形成されている。これにより、建造物A,Bが近接する方向に相対変位した場合に、カバー体25aの傾斜端縁27aが、他方のカバー体25bの傾斜受縁27bの案内作用を介してずれ上がるようになっている。
【0016】
また、前記両カバー体25a,25bには、上方に開放する凹部28a,28bがその略全面に亘って夫々形成されており、該凹部28a,28bに、モルタル及びタイル等からなる舗装材29を夫々充填するようにしている。
【0017】
かかる構成からなる床用目地カバー装置にあって、両カバー体25a,25bは、常時は図1に示す定常位置で目地sを覆っている。そして、地震時において、建造物A,Bが近接する方向に相対変位すると、まず、カバー体25aの傾斜端縁27aが、他方のカバー体25bの傾斜受縁27bの案内作用を介してずれ上がることとなる。ここで、カバー体25aは、嵌挿間隙7に嵌挿された保持縁26aによって目地幅方向に移動不能保持されているが、上方向には移動可能であるため、さらに大きく相対変位すると、図3に示すように、カバー体25aが他方のカバー体25b上に重なるようにして乗上げて、その相対変位に追従する。そして、この追従状態にあって、カバー体25a,25bの何れもが建造物A,B上に乗上げることがないため、目地近傍に壁,階段等の立上がり部1,1が形成されている場所に適用し得るものとなっている。
【0018】
この追従状態から、建造物A,Bが定常位置に戻ると、これに伴なってカバー体25a,25bが引き戻され、図1に示す定常状態に復帰する。
【0019】
一方、建造物A,Bが離れる方向に相対変位すると、図4に示すように、各支持杆11の前端の係合縁14が、可動支持体17の前端の連係縁22に係合され、該可動支持体17が水平受面4上を摺動して建造物B側に引出される。この時、両カバー体25a,25bは、その後端の保持縁26a,26bが嵌挿間隙7,16に夫々嵌挿されていることにより、建造物A,Bの変位に伴なって離間するが、この離間部分に可動支持体17が上記のように引出されることにより、該可動支持体17の天板19によって目地sを覆うことができる。尚、水平受面4の前方に配設されたストッパー縁4’は、可動支持体17が必要以上に引出された場合に後端の突縁23に当接し、該可動支持体17の水平受面4からの脱落を防止し得るようになっている。
【0020】
また、建造物A,Bが前後方向(目地sに沿う方向)に相対変位した場合には、可動支持体17の連係縁22が各支持杆11上を前後方向に摺動し、かつ、可動支持体17の支承面20に乗載されたカバー体25bの前端が、可動支持体17の前後移動に伴なって支承面20上を前後方向に摺動して、その相対変位に追従する。
【0021】
図5,図6は、カバー体25aを目地幅方向に移動不能保持するための他の構成を備えた床用目地カバー装置の第二の実施例を示すものであって、上記第一実施例と同一構成部分には、同一符合を付してその詳細な説明を省略する。
【0022】
この実施例にあって、カバー体25aの後端は、受枠3の垂直縁部3bにヒンジ30を介して枢結されている。これにより、カバー体25aは目地幅方向に移動不能保持されており、その前端が上方に回動可能となっている。
【0023】
かかる構成にあって、建造物A,Bが近接する方向に相対変位すると、まず、カバー体25aの傾斜端縁27aが、他方のカバー体25bの傾斜受縁27bの案内作用を介してずれ上がり、さらに大きく相対変位すると、図6に示すように、カバー体25aが他方のカバー体25bの傾斜受縁27bに乗上げて上方に回動し、その相対変位に追従するようになっている。
【0024】
尚、前記両実施例では、建造物Aを、免震装置によって下部が支持された免震構造の建造物とし、建造物Bを、人工地盤としているが、この配置関係を逆にしてもよい。また、傾斜端縁27aを備えたカバー体25aと、傾斜受縁27bを備えたカバー体25bの配置関係を逆にすることも可能である。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、上述のように、一方の建造物Aの目地側傍に設けた水平受面4と、他方の建造物Bに突成した複数の支持杆11とによって、可動支持体17を目地幅方向に摺動可能に支持するとともに、目地幅方向に移動不能保持され、かつ、前端が前記可動支持体17の支承面20に摺動可能に乗載されて目地sを覆う左右のカバー体25a,25bの、その一方のカバー体25aの前端に、下面から前端上面に向けて傾斜する傾斜端縁27aを形成し、他方のカバー体25bの前端に、前記傾斜端縁27aと同方向に傾斜する傾斜受縁27bを形成して、一方のカバー体25aを他方のカバー体25bに乗上げ可能に設けたものであるから、隣接する建造物A,Bが近接する方向に相対変位すると、カバー体25aの傾斜端縁27aが、他方のカバー体25bの傾斜受縁27bの案内作用を介してずれ上がり、カバー体25aが他方のカバー体25bに乗上げることによって、目地s内においてその相対変位に追従させることができる。これにより、建造物A,B上にカバー体25a,25bの何れも乗上げることがないため、目地近傍に壁,階段等の立上がり部1,1が形成されている場所に適用することができるとともに、近隣にいる歩行者等を傷つけることがなく、その安全性を向上し得る等の優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る床用目地カバー装置の第一実施例の施工状態を示す縦断側面図である。
【図2】カバー体を取り外した状態の第一実施例の平面図である。
【図3】カバー体の作用説明図である。
【図4】カバー体の他の作用説明図である。
【図5】第二実施例の施工状態を示す縦断側面図である。
【図6】第二実施例におけるカバー体の作用説明図である。
【図7】従来構成の概略側断面図である。
【符号の説明】
A 建造物
B 建造物
s 目地
4 水平受面
11 支持杆
14 係合縁
17 可動支持体
20 支承面
22 連係縁
25a カバー体
25b カバー体
27a 傾斜端縁
27b 傾斜受縁

Claims (1)

  1. 目地を介して隣接する建造物の、その何れか一方の建造物の目地側傍に水平受面を設け、
    他方の建造物に、前記水平受面より上位置で目地方向に所定間隔で並設され、
    その前端に係合縁を備えた複数の支持杆を突成し、
    支承面を備え、かつその前端に前記係合縁と係合可能な連係縁を備えてなる可動支持体を、前記水平受面と支持杆とに支持させて目地幅方向に摺動可能に設けるとともに、
    前端が前記可動支持体の支承面に摺動可能に乗載されて前記目地を覆う左右のカバー体を目地幅方向に移動不能保持し、その一方のカバー体の前端に、下面から前端上面に向けて傾斜する傾斜端縁を形成し、他方のカバー体の前端に、前記傾斜端縁と同方向に傾斜する傾斜受縁を形成して、前記傾斜端縁を形成したカバー体を他方のカバー体に乗上げ可能に設けたことを特徴とする床用目地カバー装置。
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