JP3942440B2 - 加熱炉装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は加熱炉装置の技術分野に属し、特に、縦型の回転炉体とその上方に位置する固定炉体とを有し、両炉体が相対回転可能でシールされているシール装置を備えた加熱炉装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の装置としては、添付図面の図2に示されるごとくの装置が知られている。
【0003】
図において、縦型筒状体をなす回転炉体70は鉛直な回転軸線71まわりに回転可能となっている。この回転は、例えば、回転炉体70の外周に設けられたフランジ(図示せず)により支持された複数の車輪あるいはころが水平面上の環状レール体の面上を転動することにより可能となる。回転駆動は、例えばギア等を介してモータによりなされる。
【0004】
上記回転炉体70は上端部に水平面をなす環板状の炉床72を有している。
【0005】
上記回転炉体70の上方には、非回転で上記軸線71に中心をもつ円筒外周壁81と断面が「凹」字状の蓋部82とを有する固定炉体80が配設されている。上記外周壁81の下端縁は回転炉体70の炉床72の外周縁と隙間を形成するように位置しており、該隙間は水シール装置84によって両炉体70,80を回転可能状態でシールしている。水シール装置84は、炉床72の外周(端面)に設けられた環状溝73へ満たされた水の中に、固定炉体80の外周に設けられた筒状体83の下縁が没入していることにより形成されている。かくして、水を介して炉内外は両炉体が回転可能状態で外部からシールされる。
【0006】
かかる固定炉体80には周方向の複数位置で炉床72上の空間へ供給管85から供給された原料Mをバーナ等の加熱ガス供給装置86からの火焔によって予熱する。予熱された原料Mはプッシャー87の往復動により炉床72の中央開口72Aから順次落下し、回転炉体70内で熟成され、その下端から冷却後製品として排出される。回転炉体70の原料内を通過上昇する冷却空気は熟成中の高温原料により昇温され、固定炉体80内での燃焼に寄与した後、炉床72上の原料Mを通過して、周方向複数位置に設けられた排気管88から排出される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の公知装置にあっては、水シール装置84により両炉体70,80が相対回転していてもシールされる。しかしながら、この水シール装置にあっては、長期使用による部材の劣化、さらには、蒸発等により水が少なくなったときのシール不良といった問題を生ずることがある。
【0008】
上記水シール装置84の環状溝73そして筒状体83は、多くの場合、金属で作られている。したがって、両者は水と接触していることにより酸化して錆を発生する。まして、両者は炉内の熱により昇温せられるので、上記酸化の進行が早い。
【0009】
又、上記水シール装置では、環状溝73内の水と筒状体83との接触によりシールするようになっているので、固定炉体80の外周壁81の下端縁と炉床72との隙間は比較的大きくすることができ、それが故に、上記外周壁81の内周面沿いに落下する粉体が該隙間を経て環状溝73内の水に混入する傾向にある。この粉体の混入により、水は泥状になって筒状体83との間の摩擦力を増大したり、あるいは乾燥して固化すると回転自体に支障をきたすこととなる。
【0010】
次に、炉内外の圧力差により、特に環状溝73内の水が蒸発等により少なくなっているときには、ガスの洩れが生じてシールの機能が低下する。そして、炉内で落下する粉体が水に混入して泥状となり、さらには固化して既述した支障を惹起する。又、炉体はかなり大径のものが多いので、環状溝73そしてその中の水へ進入する筒状体83は、軸方向寸法が周方向位置にて不均一となりがちであり、その場合、周方向の一つの位置では筒状体83が十分に水の中に入っていても、それと反対の周方向位置ではほとんど入っていないということもあり、そのような部位でシール不良を発生し易い。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑み、周方向のどの位置でも均一にそして確実にシールできるシール装置を有する加熱炉装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る加熱炉装置は、回転炉体と非回転の固定炉体とを有し、上記回転炉体と固定炉体の一方の炉体で外部から原料の供給を受けて該原料を予熱し、予熱後の原料を他方の炉体へ送り込んで所定の加熱を行うようになっており、回転炉体と固定炉体とが両者の相対回転を許容するシール装置によってシールされた状態で接続されている。
【0013】
かかる加熱炉装置において、本発明では、シール装置は、回転炉体と固定炉体のそれぞれの外周を包囲するように炉体外周部に取りつけられた金属製の環状体と、両環状体の少なくとも一方に対してその位置そして姿勢の調整を可能とする調整装置を有し、該調整装置によって、両環状体同士が全周にわたりほぼ均一に接面もしくは近接する対向面を、相対回転を許容しつつ調整可能としていることを特徴としている。
【0014】
このような構成の本発明にあっては、二つの環状体の対向面同士が接面しもしくは近接しているので相対回転可能状態でシールがなされる。炉内外で圧力差があっても両環状体は金属なので、そのシール性は変らない。対向面同士が接面するときには、相対回転中の摩擦があまり大きくならないように低い接圧に設定することが好ましい。又、一方の環状体の材料を他方の環状体に比して軟らかいものとしておくことも一策である。
【0015】
本発明装置で、周方向の位置で対向面同士の接面状態あるいは隙間が不均一であるときには、調整装置により環状体の姿勢すなわち傾斜を調整することにより均一化される。又、均一でも接圧あるいは隙間が適正でないときには軸線方向に移動調整することにより適正化される。
【0016】
本発明において、両環状体のうちの一方は回転軸線に対して直角な環状平面を有し、他方は回転軸線に対して平行な円筒体に端面を有し、上記環状平面と上記端面が対向面を形成しているようにすることができる。
【0017】
上記一方の環状体の環状平面は、水平面として形成される場合、水平な環状溝の底面とすることができ、該環状溝に若干の水を張ることによって、水平面の調整そしてその確認を目視で行うことを容易とする。
【0018】
本発明の調整装置は、回転炉体とその環状体との間、そして固定炉体とその環状体との間のそれぞれで、環状体を回転軸線方向、任意の半径方向に平行移動、そして任意の半径線まわりに傾斜移動させることを可能とする駆動体とすることができ、その際、駆動体は環状体もしくは該環状体を支持する部材を移動せしめるねじ体とすることができる。駆動体は弾性部材を介して調整装置を調整可能とすることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面の図1にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、加熱炉装置の回転炉体と固定炉体の間に設けられたシール装置を炉体の周部において、炉体の軸線を含む面で断面した縦断面図である。
【0021】
図1にて、回転炉体10の上方位置に非回転の固定炉体30が配設されている。上記回転炉体10は鉛直な回転軸線11を中心とする縦型の耐熱性の筒状体をなし、該回転軸線11まわりに回転可能に支持されて、駆動装置(図示せず)により回転駆動を受けるようになっている。
【0022】
上記回転炉体10の上部の外周囲には該回転炉体10と同心の筒状支持体12が、環状板13そしてリブ14等を介して溶接等によって上記回転炉体10に固着されている。上記筒状支持体12の上端外周面にはやはり筒状をなす側体14が溶接により取りつけられていて、上記筒状支持体12の上端面に段状部を形成している。さらに、この筒状の側体14の外周面には周方向の複数位置で、ねじ体15が溶接により取付けられている。該ねじ体15の頭部にはナット16が螺着されている。このねじ体15には、環状の押え板17がその孔18にねじ体15を受入れるようにして上記側体14上に配置されており、上記筒状支持体12の上端面で形成された上記段状部に配された二つのパッキン19,20を押えている。
【0023】
回転炉体10と筒状支持体12との間の環状の空間には、上記環状板13の上方に、回転炉体10と同心で環状のシール体21が配設されている。該シール体21は、本例の場合、断面がH型をなす部材22の上部及び下部に、環状板をなすシール板23そして受板24がそれぞれ溶接により固定されている。該受板24には、周方向の複数位置に、半径方向内外に位置する一対の孔部24Aが穿設されていて、該孔部24Aが位置する下面にナット25が溶接により固定されている。
【0024】
既述した回転炉体10に固定された環状板13には、上記孔部24Aに対応した位置に同じく孔部13Aが穿設されていてここにボルト26が通されている。該ボルト26は上記受板24のナット25に螺合し孔部24Aを貫通している。環状板13には、一対の孔部13Aの間に、他の孔部13Bが穿設されていて、該孔部14Aが位置する下面にナット27が螺合している。該ナット27のねじ部先端は上記受板24の下面に当接している。
【0025】
さらに、上記回転炉体10に環状板13そしてリブ14を介して固着されている筒状支持体12には、周方向の複数位置に、孔部12Aが穿設されていて、該孔部12Aが位置する外面にナット28が溶接により固着されている。該ナット28にはねじ体29が螺合しており、このねじ体の先端が上記H型断面の部材22の外周面に当接している。
【0026】
固定炉体30は上記の回転炉体10の上方に位置して設けられている。該固定炉体30は縦型の筒状をなし、その軸線は、本実施形態では、回転炉体10の回転軸線11と一致して位置している。この固定炉体30の下端縁は軸線方向にて上記回転炉体10の上端縁と近接しているものの離れており、固定炉体30に対しての回転炉体10の相対回転を可能としている。
【0027】
上記固定炉体30の下部外周面には、環状板のフランジ部31が溶接により取りつけられている。このフランジ部31には周方向の複数位置に孔部32が穿設されていて、溶接されて断面逆L字状をなす筒状支持体33が上記孔部32にてボルト34によって上記フランジ部31へ取りつけられている。上記筒状支持体33は、環状板35と筒状体36とを溶接して形成されており、環状体35には上記孔部32に対応する位置に35Aが穿設されてここに上記ボルト34が通されており、又、筒状体36には孔部36Aが周方向の複数位置に穿設されていると共に下縁外面に筒状の側体37が溶接され、さらにこの側体37にはねじ体38が溶接により取りつけられている。上記筒状体36の孔部36A位置の外面にはナット39が溶接取付けされており、ここにボルト40が螺合している。又、上記ねじ体38には、ナット41が螺合しており、このナットにより押え板42が支持されている。上記側体37の内側には、筒状体36の下端面と上記押え板42との間に二つのパッキン43,44が保持されている。
【0028】
上記固定炉体30と筒状体36との間には、シール体45が配設されている。該シール体45は同心の内筒状体46と外筒状体47を上板48と下板49で溶接で結合してなる本体の該下板49に、断面が逆L字状をなすシール環50がボルト51により取りつけられている。外筒状体47には上記パッキン43,44が接面し、又上記ボルト40の先端が当接している。上記下板49には孔部が形成されていて、この孔部位置でナット52が溶接によって固定されており、上記ボルト51はこのナット52に螺合することにより上記シール環50を保持している。このシール環50の下端縁は、上記回転炉体10側のシール板23の上面と接面している。
【0029】
上記固定炉体30のフランジ部31には、固定炉体30の外面に近い側に、周方向の複数位置で、孔部53が穿設されており、この孔部53位置にナット54が溶接により固定されている。該ナット54にはボルト55が螺合している。
【0030】
一方、既述のシール体45の上板48には、上記ボルト55の位置に対応して周方向の複数位置に短筒体56が溶接固定されており、該短筒体56内にばね57が収められていると共に、該ばね57上に押え板58が配置されている。該押え板58は上記ボルト55の下端で押されている。
【0031】
かくして、回転炉体10側のシール体21のシール板23の上面に対して固定炉体30のシール体45のシール環50の下端面が接面し、互いの回転を許容しつつ摺接シールする。シール体45そしてシール環50は金属製であり、シール用として水等の液体を用いないので酸化の度合も低く、又、隙間寸法が変化しないので内外圧力差によるシール不良の心配もない。好ましくは、一方、例えばシール環50が他方たるシール板23よりも軟材とすれば、摩擦抵抗を小さく抑えられ、又長期使用にもとづく摩耗には、位置修正でもって対応でき、その摩耗が適度になったときには簡単に交換が可能となる。
【0032】
シール板23とシール環50とは、周方向で均一に接面することが好ましく、そのためには次のようにして、調整がなされる。
【0033】
調整はシール板23とシール環50との間で相対的になされるが、主として軸線11の方向(図にて上下方向)、任意の半径方向、任意の半径線まわりの回転(傾斜)の調整として行われる。
【0034】
先ず、軸線方向での調整は、回転炉体10側のシール板23に対しては、ボルト27の上方へのねじ込みにより上方へ、ボルト26の下方への引き戻しにより下方へ、それぞれシール体21を移動して、そのシール板23を上下方向で調整する。一方、固定炉体30側のシール環50に対しては、ボルト55の下方へのねじ込みによりシール体45を下方を移動させてシール板23との間の接圧を調整する。その際、ばね57等の弾性部材の弾性力により、摺接時の緩衝作用を得る。上記シール環50をシール板23に対して接触せしめることなく両者間に僅かな隙間を残したいときには、シール体45の下方への位置を所定位置で停止するストッパを設け、かかるシール環に対して下方のシール体21を調整して上記隙間を形成することもできる。この軸線方向での調整は、周方向の複数箇所に設けられた各ボルトをそれぞれ適宜量回転してねじ込むことによりなされる。
【0035】
上記シール環50とシール板23との間に若干の隙間を残しておく場合、通常炉内の気体はブロワー等により外部へ引かれていて負圧となっているので、上記隙間を通して外気が炉内へ流入し、その流れにより炉内の粉体の炉外への流出そして上記隙間への侵入を防止できる。
【0036】
次に、半径方向での調整は周方向の複数箇所に設けられたボルト29そしてボルト40のうち、必要箇所のものをねじ込みそして直径線方向で対向位置にあるものを緩めて、それぞれシール体21そしてシール体45の半径方向位置を調整する。
【0037】
さらに、傾斜に関しては、ボルト27もしくはボルト26、そしてボルト55を、直径線方向で反対側に位置するもの同士を逆方向にねじ込みそして緩めることによって、シール体23そしてシール体45を傾斜させることができる。
【0038】
かくして、各種方向の調整が可能であり、大径のシール体が周方向でその製作精度そして組立精度が当初得られていなくとも、上記の調整を適宜選択して行うことにより、シール圧の加減そして周方向での均一化を行うこともできる。
【0039】
上記調整は、調整そしてその確認を容易とするために、上記シール板23を底面とする環状溝内に水を張って水面のレベルを目視しながら行ってもよい。
【0040】
本発明は、図示された実施形態には限定されず、種々変形が可能である。図示の例では、固定炉体そして回転炉体共に鉛直な軸線をもつようになっていて原料は前者で予熱そして後者で所定温度までの加熱を受けるようになっていたが、両炉体ともに水平あるいはいずれか一方が水平で他方が鉛直の軸線をもっていてもよく、要は両炉体の接続部分において相対回転を許容するように共通軸線をもっていれば良い。又、固定炉体そして回転炉体のどちらで予熱を行ってどちらでその後の所定の加熱を行うようにしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明は、金属製の環状体をシール体として回転炉体及び固定炉体に取りつけ、両シール体を接面もしくは近接して相対回転を許容しながらシール機能をもつようにしたので、従来の水シールのごとく水分による酸化を受けず、耐熱性にもすぐれ、その結果、シール状態が変動しないので炉内外の圧力差によってもシール性の低下という問題もなく、長期にわたり安定して良好なシールを得る。又、両シール体は、調整装置を有しているために、大径の炉体であっても、シール状態を適正に保て、さらには周方向で均一なシールを得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の加熱炉装置のシール装置についての縦断面図である。
【図2】従来装置の縦断面図である。
【符号の説明】
10 回転炉体
11 回転軸線
21 シール装置(シール体)
23 環状体(シール板)
26 調整装置(ボルト)
27 調整装置(ボルト)
29 調整装置(ボルト)
30 固定炉体
40 調整装置(ボルト)
45 シール装置(シール体)
50 環状体(シール環)
55 調整装置(ボルト)

Claims (6)

  1. 回転炉体と非回転の固定炉体とを有し、上記回転炉体と固定炉体の一方の炉体で外部から原料の供給を受けて該原料を予熱し、予熱後の原料を他方の炉体へ送り込んで所定の加熱を行うようになっており、回転炉体と固定炉体とが両者の相対回転を許容するシール装置によってシールされた状態で接続されている加熱炉装置において、シール装置は、回転炉体と固定炉体のそれぞれの外周を包囲するように炉体外周部に取りつけられた金属製の環状体と、両環状体の少なくとも一方に対してその位置そして姿勢の調整を可能とする調整装置を有し、該調整装置によって、両環状体同士が全周にわたりほぼ均一に接面もしくは近接する対向面を、相対回転を許容しつつ調整可能としていることを特徴とする加熱炉装置。
  2. 両環状体のうちの一方は回転軸線に対して直角な環状平面を有し、他方は回転軸線に対して平行な円筒体に端面を有し、上記環状平面と上記端面が対向面を形成していることとする請求項1に記載の加熱炉装置。
  3. 一方の環状体の環状平面は、水平な環状溝の底面であることとする請求項2に記載の加熱炉装置。
  4. 調整装置は、回転炉体と該回転炉体に取りつけられた環状体との間、そして固定炉体と該固定炉体に取りつけられた環状体との間のそれぞれで、環状体を回転軸線方向、任意の半径方向に平行移動、そして任意の半径線まわりに傾斜移動させることを可能とする駆動体であることとする請求項1に記載の加熱炉装置。
  5. 駆動体は環状体もしくは該環状体を支持する部材を移動せしめるねじ体であることとする請求項4に記載の加熱炉装置。
  6. 駆動体は弾性部材を介して調整装置を調整可能となっていることとする請求項4又は請求項5に記載の加熱炉装置。
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