JP3942411B2 - 攪拌機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ポリマーを製造する攪拌機に係り、特に、撹拌槽内に投入した溶液の攪拌を効率よく行なう技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の攪拌機として、特許公報第2704488号に示すようなものが提案・実施されている。
つまり、図9に示すように、底部が椀状をした撹拌槽2と、この攪拌槽2の中央に設けられた回転軸3と、この回転軸3の左右に取り付けられた一対の格子翼4cを備えるとともに、回転軸方向に延びる平板状の邪魔板5を攪拌槽2の内側壁に等間隔に2本備えたものが使用されている。
【0003】
特に格子翼4cは、その下部が格子翼4c平面を下方に延伸した大形の平板部分4dをともなった形状のものが使用されている。つまり、従来の格子翼とパドル翼とを一体形成したものである。この格子翼4cは、図9に示すように平板部分4dの径方向の幅(以下、単に「翼径」という)は、格子翼4cの径翼と同じに設定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来からの攪拌槽は、その底部が椀状をしているため、底部における溶液の単位面積当たりの熱伝達率が攪拌槽の側壁よりも高いといった傾向にある。しかし、攪拌槽内の場所によって熱伝達率が異なるにも関わらず、撹拌槽内での溶液の循環速度や溶液循環時に発生する滞留などが、さらに起因して熱伝達率の不均一を発生させている。
【0005】
具体的に、従来の攪拌機では以下のように点によって溶液への熱伝達率の不均一が発生している。
従来の攪拌機は、図9に示すように、格子翼4cの下部に、この格子翼4cと同一翼径の平板部分4dを備えているため、邪魔板5の下方に広い空間Hを形成してしまう。
【0006】
格子翼4cを回転させた際、格子翼4cの下端部と撹拌槽2の底部では、その隙間が比較的狭いので溶液に作用する平板部分4dの押圧力が大きくなり、その隙間を流通する溶液の流速が速くなる。しかし、この広い空間部分Hでは、溶液に作用する格子翼4cの押圧力が小さく、溶液の流速が遅くなる。そのため、この空間部分Hでは底部に比べて溶液への熱伝達率が低くなるといった問題がある。
【0007】
さらに、格子翼4cの下端部と撹拌槽2の底部を流通する溶液は、この空間部分Hに流入してから上昇流となる。したがって、流速の増した溶液は、一旦広い空間部分Hに流入することによって、その流速が減衰して上昇流となるので、攪拌槽2の底部と上部では溶液の熱伝達率が不均一になるといった問題がある。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、攪拌槽内に投入された溶液が円滑に循環するようにした攪拌機を提供することを主たる目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、溶液を投入する攪拌槽と、この攪拌槽の中心部に設けられた回転軸と、この回転軸に取り付けられた攪拌翼とを備えるとともに、この攪拌槽の外周に温度調節用流体を流通させる温度調節手段が付設された攪拌機であって、
前記攪拌翼は、前記回転軸の軸に沿って取り付けられた格子翼と、この回転軸の下部に取り付けられたパドル翼とからなり、
かつ、前記パドル翼は、前記格子翼の径方向の長さよりも長い翼径を有し、
前記パドル翼は、前記回転軸の上部側から見て格子翼と交差姿勢で取り付けられているものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の攪拌機において、前記パドル翼は、その下端部が攪拌槽の底部に向かって取り付けられており、かつ、その一方面が攪拌槽の斜め上方を向くように傾斜角を持っているものである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の攪拌機において、前記パドル翼は、その下端部と前記攪拌槽の底部との隙間が10mm以下となるように前記回転軸に取り付けられているものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の攪拌機において、前記攪拌槽は、投入された溶液の流れを規制する規制部材をその内側壁の上部から下部にわたって備えているものである。
【0014】
(作用) 請求項1に記載の発明の作用は次のとおりである。
すなわち、格子翼の下部に、この翼の径方向の長さよりも長い翼径を有するパドル翼を備えることによって、攪拌槽の底部とパドル翼の下端部との隙間が狭く設定される。パドル翼を回転させると、この隙間を流通する溶液の流速が上げられる。つまり、底部にある溶液への熱伝達率が高くなる。また、パドル翼の回転にともなって、溶液の流れは勢いの増した上昇流となる。この上昇流は、パドル翼の上側に取り付けられた格子翼によって攪拌される。
また、請求項1において、回転軸の上部側から見てパドル翼を格子翼に交差姿勢で取り付け、このときのパドル翼の回転を基準として見た場合、パドル翼の回転に追従するように格子翼が回転する。このパドル翼の回転によって上昇流となった溶液は、タイミングを遅れて通過する格子翼によって分散される。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、パドル翼の一方面を攪拌槽の斜め上方に向くように傾斜角を持たせることによって、攪拌槽内での溶液の上昇流が効率よく発生させられる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明によれば、攪拌槽の底部とパドル翼との隙間を10mm以下にすることによって、請求項1ないし請求項2に記載の攪拌機が好適に実現される。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、格子翼の回転にともなって発生する溶液の回転方向への流れが、規制部材に衝突して上昇流へと変えられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の一実施例を説明する。
図1および図2はこの発明の一実施例に係り、図1はこの実施例の攪拌機の内部構成を示した破断斜視図、図2は攪拌槽の底部を示した拡大図である。なお、図2については、説明の便宜上、温度調節手段であるジャケットの構成を省略している。
【0020】
攪拌機1は、図1に示すように、底部が椀状をした円筒形の攪拌槽2と、この攪拌槽2の中央に設けられた回転軸3と、この回転軸3の上部から下部にかけて取り付けられた左右一対からなる2組の攪拌翼4(4a、4b)と、攪拌槽2における円筒形部分の内壁の上部から下部にわたって取り付けられた規制部材としての邪魔板5と、攪拌槽2の外周に付設された温度調節用流体を循環させる温度調節用手段としてのジャケット6とから構成されている。
【0021】
回転軸3は、カップリングを介してその上部の図示しない駆動部と連接されている。本実施例の場合、図1に示すように、回転軸3は上方から片持ち支持されているが、回転軸3が底部を貫通して上下から支持されているものであってもよいし、駆動部が攪拌槽2の下部側にあってもよい。
【0022】
攪拌翼4は、図1に示すように、回転軸3の上部から下部(図1では撹拌槽の円筒部分)に沿って縦2列、横3行からなる格子板を回転軸3の左右に取り付けてなる一対の格子翼4aと、この格子翼4aの下方(図1では撹拌槽の椀状をした底部)、つまり回転軸3の下部から攪拌槽2の底部に向かって一対のパドル翼4bが取り付けられている。なお、格子翼4aは、本発明の主攪拌翼に相当する。
【0023】
パドル翼4bは、図2に示すように、その形状が扇形をしている。また、パドル翼4bは、格子翼4aの径方向の長さ(翼径)より長い翼径を有している。具体的には、パドル翼4bの径方向端部が、邪魔板5の下側まで延伸しているとともに、その下端部は椀状をした攪拌槽2の底部のアール(丸み)に沿った同一の曲率を持った形状をしている。つまり、パドル翼4bの下端部と撹拌槽2の底部との隙間Gが均一になっている。本実施例の場合、その隙間Gが10mm以下に設定されている。
【0024】
隙間Gを10mm以下に設定した状態でパドル翼4bを回転させることによって、この狭い隙間Gを流通する溶液は、その流速を増すようになっている。つまり、底部で沈着しがちな溶液は隙間Gを流通して流速が増すので、溶液への熱伝達率を高くすることができる。
【0025】
また、この左右一対のパドル翼4bは、その一方面が攪拌槽2の上方を向くように傾斜角を持って回転軸3の下部に取り付けられている。具体的には、図3(図1の矢印Xに示す斜め左方向から見た図)に示すように、回転軸3の下部に、仮名文字の「ハ」の字状となるように攪拌槽2の底部に向かって傾斜角を有した状態で取り付けられている。
【0026】
このパドル翼4bの回転軸3への取り付け角度θ1は、回転軸3の下部から延長した軸線(図3では一点鎖線で示す)に対して0〜60°の範囲に設定することが好ましい。
【0027】
なお、取り付け角度θ1は、攪拌翼4a,4bの回転速度、溶液の種類、および溶液の量によって適宜に設定変更される。
【0028】
つまり、左右のパドル翼4bにおける平面部分のそれぞれが、格子翼4aの平面によって攪拌槽2を区分する2つの空間のいずれか異なった空間の上方を向くようになっている。この状態でパドル翼4bを図4の矢印に示す方向に回転させると、溶液は、図5に示すように、パドル翼4bの上面によって掻き揚げられて上昇流となる。
【0029】
なお、図5および後述する図7については、説明の便宜上、格子翼4a、邪魔板5、およびジャケット6の構成を省略する。
【0030】
また、図6に示すように、パドル翼4bの下面を回転方向にすると、溶液はパドル翼4bの下面部分によって回転方向へと勢いよく押出される。この押出された溶液は、図7に示すように、攪拌槽2の底部に沿って流通し、円運動から上昇流へと変えられるようになっている。
【0031】
なお、取り付け角度θ1が60°を超えると、溶液の掻き揚げ効率および押出し力が低下してしまう。
【0032】
また、このパドル翼4bは、図4(図1の矢印Yに示す攪拌槽の上方から見た図)に示すように、格子翼4aと交差姿勢で取り付けられている。このときの図4に示す対頂角θ2は、格子翼4bの翼径を基準軸線とし、この基準軸線に対してパドル翼4bの翼先端を回転方向の前方に変位させたとき、パドル翼4bの回転方向とは逆の後方側に形成される角度である。この対頂角θ2は、90°以下にすることが好ましい。
【0033】
なお、この対頂角θ2は、攪拌翼4a,4bの回転速度、溶液の種類、および溶液の量によって適宜に設定変更される。
【0034】
対頂角θ2を90°の範囲内にすることによって、パドル翼4bの回転にともなって上昇流となった溶液が、タイミングを遅れて通過する格子翼4aによって分散・細分化されるようになっている。
【0035】
なお、対頂角θ2が、90°を超えるとパドル翼4bの後方から追従する格子翼4aのタイミングの遅れが大きくなる。そのため、流速の速い上昇流となった溶液の分散・細分化するタイミングも遅れ、攪拌槽2の上部での溶液への熱伝達率を低下させてしまう。
【0036】
邪魔板5は、攪拌槽2の円筒部分の内壁における上部から下部にわたって平板状のものが取り付けられている。本実施例の場合、その数が2本であって、内壁に等間隔に取り付けられている。この邪魔板5は、格子翼4aの回転にともなって溶液が回転方向に流れるのを規制している。つまり、格子翼4aの回転方向に流れる溶液は、邪魔板5に衝突して上昇流に変えられるようになっている。なお邪魔板5の数は、2本に限定されるものではなく、無くてもよいし、2本以上であってもよい。
【0037】
ジャケット6は、攪拌槽2の外周と底部を包み込むように付設されている。このジャケット6の内部には、温度調節用流体としての温水や冷却水が流通するように流路7が設けられている。つまり、ポリマーを製造する過程で、重合反応を促進させるためにジャケット6に温水を循環させたり、逆に重合反応の開始にともなって発生する熱量を除去するために冷却水を循環させたりして攪拌槽2内の重合温度を一定に保つようになっている。
【0038】
以上のように、攪拌翼4として格子翼4aと、パドル翼4bとを備えるとともに、パドル翼4bの翼径を格子翼4aの翼径よりも長くする。つまり、パドル翼4bの径方向の端部を邪魔板5の下方まで延伸し、このときのパドル翼4bの下端部と攪拌槽2の底部との隙間Gを10mm以下に設定することによって、攪拌槽2の底部での溶液の流速を増大させて勢いのある上昇流を発生させることができる。
【0039】
また、攪拌槽2の底部に向かって取り付けたパドル翼4bの一方面が攪拌槽2の斜め上方を向くようにすることによって、溶液の掻き揚げ、または溶液を押圧して勢いのある上昇流を発生させることができる。
【0040】
また、パドル翼4bを格子翼4aに交差姿勢で取り付けることによって、パドル翼4bによって上昇流となった溶液を、タイミングを遅れて通過する格子翼4aで効率よく分散・細分化することができる。
【0041】
次に、上述の構成を有する攪拌機を用いて、一括重合する場合の攪拌槽2内のモノマーにおける攪拌動作について図4および図5を参照して説明する。なお、この実施例では、重合反応が開始して、攪拌槽2の冷却を行なっている状態で説明する。
【0042】
重合反応が開始すると、ジャケット6に冷却水を循環して攪拌槽2の冷却を開始する。このとき、攪拌槽2内では、パドル翼4bと格子翼4aとが回転し、モノマーを攪拌している。
【0043】
攪拌槽2の底部にあるモノマーは、パドル翼4bの回転にともなってパドル翼4bの上面で掻き揚げられて上昇流になる。このとき、パドル翼4bの下端部と攪拌槽2の底部との隙間Gを流通するモノマーは、その流速が増して循環している。
【0044】
上昇流は、攪拌翼4の回転による回転方向の流れをともなう。この2方向の流れをともなうモノマーは、邪魔板5に衝突して上昇流へと再度変えられて攪拌槽2の上部に到達する。
【0045】
上部に到達したモノマーは、格子翼4aの回転中心方向に引き寄せられ、回転軸3に沿った下降流となる。この下降流が攪拌槽2の下部に到達すると、パドル翼4bの上面によって掻き揚げられ再度上昇流になる。つまり、攪拌槽2内でモノマーの上下方向の循環が繰り返される。
【0046】
モノマーが上下方向の循環をしているとき、この循環の中央領域にあるモノマーは、格子翼4aによって分散・細分化される。
【0047】
次に、上述の図1に示す攪拌機1と図9に示す従来の攪拌機を用いてエマルジョン重合によるポリマーを製造する場合についての比較実験を本発明者は行なった。以下に説明する。
なお、使用するモノマーは、粘度40mPa・s、密度958kg/m3、熱伝導率0.43W/m2・K、比熱3360J/kg・Kのものである。
【0048】
また、使用する攪拌槽は共通形状のものであって、直径1400mm、高さ2042mmである。使用する攪拌翼については次の通りである。
従来の攪拌機に使用する攪拌翼は、翼径896mm(翼径は、一対の攪拌翼の径方向端部を結んだ線である)、高さ1903mmの格子翼である。
本発明の攪拌翼は、翼径が1096mm、高さ1903mmの格子翼と、翼径が1200mm、回転軸への取り付け角度θ1が30°、対頂角θ2が90°であるパドル翼の2組である。また、本発明の攪拌機の場合、パドル翼の下端と攪拌槽の底部との隙間が10mmに設定してある。
【0049】
そして、上述の両攪拌槽にモノマーを投入し、攪拌翼の回転数を24rpmに設定して攪拌を行なったところと、以下の表1に示す結果を得ることができた。
【0050】
【表1】
【0051】
先ず、表1に示す液境膜伝熱係数について見ると、従来の攪拌機の500W/m2・Kに対して本発明の攪拌機では3倍の1500W/m2・Kとなっている。通常、伝熱量については、伝熱量=伝熱係数(液境膜伝熱係数)×伝熱面積×温度差(モノマーと攪拌槽の内壁との温度差)の関係式で表すことができる。つまり、液境膜伝熱係数の値が大きくなると伝熱量が増すことから、本発明の攪拌機では、従来よりも攪拌槽内のモノマーの伝熱量が多く、熱伝達率が高いことが分かる。
【0052】
次に熱伝達によって移動する熱量を示す指数であるヌッセルト数について見ると、従来の攪拌機では1.04E+03であるのに対して、本発明の攪拌機では3.82E+03となっている。このヌッセルト数(Nu)は、Nu=hD/λの関係式で表される。ここで、hは伝熱係数、Dは攪拌翼の径、λは熱伝導率である。
【0053】
つまり、この関係式からヌッセルト数の値に起因する変化量は、伝熱係数(h)であることが分かる。このことから、本発明の攪拌機が従来の攪拌機に比べて伝熱係数が大きいこと、つまり熱伝達率が高いことが分かる。
【0054】
また、液の乱れ状態を示す指数であるレイノズル数について見ると、この値は従来の攪拌機が7.69E+03であるのに対し、本発明の攪拌機では1.15E+04となっている。このレイノズル数(Re)は、Re=duρ/μの関係式で表される。ここでdは翼径、uは溶液の流速、ρは溶液の密度、μは粘度である。
【0055】
つまり、この関係式からレイノズル数の値に起因する変化量は、溶液の流速(u)であることが分かる。このことから、本発明の攪拌機におけるレイノズル数の値が従来の攪拌機よりも大きいこと、つまり攪拌槽内のモノマーの循環速度が従来に比べて速いことが分かる。したがって、攪拌槽内でのモノマーの循環速度が速いということは、モノマーへの熱伝達率が高いことを示す。
【0056】
以上の実験より、本発明の攪拌機は、従来の攪拌機に比べて熱伝達率が高いので、分子量分布が一層均一なポリマーを製造することができるという知見を本発明者は得ることができた。
【0057】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上記実施例では、パドル翼4bを回転軸3の下部から攪拌槽2の底部に向かって傾斜角を有するとともに、格子翼4aとパドル翼4bとが交差姿勢で取り付けられていたが、図8に示すように、格子翼4a平面の下方に延伸した位置であって対頂角θ2が0°となるようにパドル翼4bを取り付けた構成であってもよい。また、図示しないが、角度θ1と対頂角θ2とが0°の構成であってもよい。
【0058】
(2)上記実施例では、攪拌翼4の組み合わせをパドル翼4bと格子翼4aにしていたが、例えばパドル翼と平板翼との組み合わせであってもよい。
【0059】
(3)上記実施例では、本発明の攪拌機を一括重合に使用する場合を例のとって説明したが、滴下重合や二段重合に使用してもよい。
【0060】
(4)上記実施例では、平板状の邪魔板5を使用していたが、角柱や円柱状のものであってもよい。
【0061】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、格子翼の下方に翼の径方向の長さよりも長い翼径を有するパドル翼を備えることによって、攪拌槽の底部とパドル翼の下端部との隙間を狭くすることができる。つまり、パドル翼を回転させて狭い隙間に溶液を流通させることによって、底部での溶液の流通速度を速くすることができる。また、大形の格子翼によって、攪拌槽の上方での溶液の攪拌が行なわれる。その結果、攪拌槽内の底部と上部での溶液に対する熱伝達率を略均一に保つことができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、パドル翼を回転軸の上部側から見て格子翼を交差姿勢で取り付けることによって、パドル翼の回転に追従するように格子翼が回転する。その結果、パドル翼の回転によって上昇流となった溶液が、タイミングを遅れて通過する格子翼によって分散され、攪拌槽の下部と上部で溶液の攪拌を円滑に行なうことができる。
【0062】
また、請求項2に記載の発明によれば、パドル翼の一方面が攪拌槽の斜め上方を向くように傾斜角を持たせて回転軸の下部に取り付けることによって、攪拌槽内での溶液の上昇流を効率よく発生させることができる。効率よく発生した上昇流は、攪拌槽内での溶液の上下方向の循環を安定させるので、溶液への熱伝達率を効率よく行なうことができる。
【0064】
また、請求項3に記載の発明によれば、攪拌槽の底部とパドル翼との隙間を10mm以下に設定することによって、その隙間を流通する溶液の流速を上げることができる。
【0065】
また、請求項4に記載の発明によれば、攪拌槽の内側壁に溶液の流れを規制する規制部材を設けることによって、攪拌翼の回転にともなって、その回転方向に発生する溶液の流れが、この規制部材に衝突する。この規制部材に衝突した溶液が上昇流となる。つまり、攪拌槽の上部での上昇流を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る攪拌機の内部構成を示した破断斜視図である。
【図2】実施例に係る攪拌機の底部を示した拡大図である。
【図3】図1の矢印X方向から見た破断図である。
【図4】図1の矢印Y方向から見た断面図であって、パドル翼の取り付け位置と、回転方向を示している。
【図5】攪拌槽内の溶液の流れを示した図である。
【図6】図4に示す変形例の断面図であって、パドル翼の取り付け位置と、回転方向を示している。
【図7】図6における攪拌槽内の溶液の流れを示した図である。
【図8】変形例の攪拌機の内部構成を示した破断斜視図である。
【図9】従来例の攪拌機の内部構成を示した破断斜視図である。
【符号の説明】
G … 隙間
1 … 攪拌機
2 … 攪拌槽
3 … 回転軸
4 … 攪拌翼
4a… 格子翼
4b… パドル翼
5 … 邪魔板
6 … ジャケット
Claims (4)
- 溶液を投入する攪拌槽と、この攪拌槽の中心部に設けられた回転軸と、この回転軸に取り付けられた攪拌翼とを備えるとともに、この攪拌槽の外周に温度調節用流体を流通させる温度調節手段が付設された攪拌機であって、
前記攪拌翼は、前記回転軸の軸に沿って取り付けられた格子翼と、この回転軸の下部に取り付けられたパドル翼とからなり、
かつ、前記パドル翼は、前記格子翼の径方向の長さよりも長い翼径を有し、
前記パドル翼は、前記回転軸の上部側から見て格子翼と交差姿勢で取り付けられている
ことを特徴とする攪拌機。 - 請求項1に記載の攪拌機において、
前記パドル翼は、その下端部が攪拌槽の底部に向かって取り付けられており、かつ、その一方面が攪拌槽の斜め上方を向くように傾斜角を持っていることを特徴とする攪拌機。 - 請求項1または請求項2に記載の攪拌機において、
前記パドル翼は、その下端部と前記攪拌槽の底部との隙間が10mm以下となるように前記回転軸に取り付けられていることを特徴とする攪拌機。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の攪拌機において、
前記攪拌槽は、投入された溶液の流れを規制する規制部材をその内側壁の上部から下部にわたって備えたことを特徴とする攪拌機。
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