JP3826443B2 - 撹拌装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、層流域から乱流域における広範囲の撹拌操作において液−液混合、気−液混合、固−液混合、気−液−固混合、液−液系の反応、気−液系の反応、固−液系の反応、気−液−固系の反応などの処理を効率良く行う為の撹拌装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に撹拌槽操作に於いては攪拌すべき液体が層流域(高粘度領域)であるか乱流域(低粘度領域)であるかによって撹拌翼の選定がなされている。層流域(高粘度領域)の撹拌槽操作に於いてはダブルヘリカルリボン翼やアンカー翼等の大型な撹拌翼が採用され、乱流域(低粘度領域)の撹拌槽操作に於いてはパドル翼、傾斜パドル翼及びタービン翼を上下2段以上に組み合わせた多段撹拌翼が採用されている。
【0003】
一方、層流域から乱流域まで幅広く利用できる撹拌装置には、撹拌槽中心部に設けた撹拌軸に、撹拌槽底壁内面に沿って下端部を摺接させた平板状翼とこれに連続した格子状翼を設け、かつ、撹拌槽壁内面に軸方向に延在した邪魔板を設けた撹拌装置(攪拌翼A、図6、7)がある(特開平6−312122参照)。
また、複数のパドル翼を軸方向に対して多段に配置した撹拌装置において、上下で隣接するパドル翼間に交差角を持たせ、かつ、最下段のパドル翼の外端部を後退翼に形成した撹拌翼を有し、撹拌槽壁内面に軸方向に延在した邪魔板を設けた攪拌装置(攪拌翼B、図8、9)がある(特開平5−49890参照)。
【0004】
前記従来の多段のパドル翼の場合には、パドル翼周辺で巡回する小さな軸方向循環流が発生し、攪拌槽全体の混合効率の低下の原因となった。
また、前記従来の攪拌翼Aにおいては、液体の粘性が低い領域、すなわちレイノルズ数(流体の乱れ状態を表す無次元数、Re=n・d2・ρ/μ、ここで、 n:翼回転数(1/sec)、d:翼径(m)、ρ:液密度(kg/m3)、μ:液粘度(kg/m・sec))が100以上の領域においては混合特性が良いが、粘度が高くまたはレイノルズ数が100以下の領域においては攪拌槽の流体がバッフルが存在するにもかかわらず良好な上下流が発生しなくなる。また、攪拌翼Aにおいてはレイノルズ数が100以下の領域において液面と槽底面の間に軸方向の液の交換が起きない部分が生じた。このため、槽内液の混合時間が長くなり混合特性が悪くなることがあった。
【0005】
また、前記従来の攪拌翼Bにおいては、液体の粘性が高く、レイノルズ数が低い領域に於いても上下流が発生し混合特性は良いものの大型のパドル翼を上下に配置しているため所要動力が大きくなる。
【0006】
【発明が解決しようとしている課題】
本発明は高粘度液体であっても混合特性がよくかつ所要動力が小さくてすむ攪拌装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決しようとする手段】
上記課題は撹拌槽内中心部に設けられた撹拌軸に、攪拌槽の槽底部に配設される幅広平板からなるパドル翼を最下段に、くし状の翼を中段及び上段に装着すると共に、最下段に位置するパドル翼に対して、その上に隣接する中段のくし状の翼を90度未満の交差角で回転方向に対して先行させて配置し、かつ、最下段のパドル翼と上に隣接する中段のくし状の翼は軸方向に対して重なりを有し、かつ、中段に位置するくし状の翼に対して、その上に隣接する上段のくし状の翼を90度未満の交差角で回転方向に対して先行させて配置し、かつ、中段のくし状の翼と上に隣接する上段のくし状の翼は軸方向に対して重なりを有したことを特徴とする撹拌装置によって解決される。
【0008】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明の攪拌装置は、最下段に攪拌槽の槽底部に配設される幅広平板からなるパドル翼、中段(中段の翼は複数もうける場合もある)と上段にくし状の翼を配置する。最下段に位置するパドル翼に対して、上に隣接する中段のくし状の翼を90度未満の交差角で回転方向に対して先行させて配置する。また、最下段のパドル翼と上に隣接する中段のくし状の翼は軸方向に対して重なりを有する。中段に位置するくし状の翼に対して、上に隣接する上段のくし状の翼を90度未満の交差角で回転方向に対して先行させて配置する。また、中段のくし状の翼と上に隣接する上段のくし状の翼は軸方向に対して重なりを有する。さらに、撹拌槽の側壁面に攪拌槽の底部から液面上部まで連続して攪拌軸方向に延びる邪魔板を配設してもよい。
【0009】
【作用】
上記構成を特徴とする攪拌装置によれば内容液の粘度が10ポイズ以上であっても攪拌槽内の液は攪拌槽内壁を伝わり、液表面付近で攪拌槽中心部へ流れを変え、攪拌槽中心より液を下降させる。これらにより、攪拌槽内の液を軸方向に循環させる。
【0010】
攪拌槽の槽底部に配設される幅広平板からなるパドル翼により吐出された液が、攪拌槽の内壁及び邪魔板に衝突し上昇する。このとき、上に隣接する中段のくし状の翼を90度未満の交差角で回転方向に対して先行させて配置されることによりこの中段のくし状翼より吐出される液がパドル翼から吐出された液の上昇を妨げない。また、くし状の翼とすることによりこのくし状の翼から吐出される液を少ないものとしている。すなわち、槽の中間高さの攪拌翼部分において、下段のパドル翼からの吐出された流れと中段のくし状翼からの吐出により発生する流れがお互いに干渉しあい、流れを打ち消すことがない。中段のくし状翼と最上段のくし状翼との間にも上記と同様な効果によりお互いの流れを打ち消さない。
【0011】
また、攪拌槽全域に攪拌効果を及ぼすため多段のパドル翼にした場合には、パドル翼周辺で巡回する小さな軸方向循環流が発生し、攪拌槽全体の混合効率の低下を招く。しかし、本発明のように最下段のパドル翼と中段のくし状翼及び中段のくし状と最上段のくし状の翼がお互いに軸方向に対して重なりを持つことにより上記の攪拌翼周辺を巡回する小さな軸方向の循環流の発生を妨ぎ、吐出作用を促進させて攪拌槽全域における軸方向循環流を発生させる効果がある。
【0012】
【実施例】
以下、その詳細を図1から図5に示す実施例により説明する。また、実施例の装置により得られる特性を図10から図17を用いて説明する。
(実施例1)図1、2、3は本発明の基本構成を示すもので、これらを本発明の実施例1とする。図1、2、3において、攪拌槽1内中心部には攪拌軸2が配設されている。3は2枚パドル翼で、攪拌軸2の下端部に装着されている。4は、最下段に位置するパドル翼3に対して、その上に隣接する中段のくし状の翼を示す。このくし状の翼4は、パドル翼3に対して45度の交差角で回転方向に対して先行させて配置し、かつ、最下段のパドル翼3とは、軸方向に対して最下段の撹拌翼の下端から最上段の翼の上端までの軸方向高さに対しての3.9%の重なりを有する(図2において、h/Hが0.039)。5は、中段のくし状の翼4と上に隣接する上段のくし状の翼である。この上段のくし状の翼は、中段のくし状の翼4に対して45度の交差角で回転方向に対して先行させて配置し、かつ、中段のくし状の翼4とは、軸方向に対して最下段の撹拌翼下端から最上段の翼の上端までの軸方向高さに対しての3.9%の重なりを有する。また、この最上段の翼5の形状は、中段のくし状翼4の形状とは異なり、この翼4を軸方向に対してその翼の中心で半分にした形状を有する。すなわち、図1の最上段翼5で示される形状を有する。
この翼の作用は、作用項の記載を援用する。
(実施例2)図4、5は本発明の実施例2を示す。図4、5において、攪拌槽1内中心部には攪拌軸2が配設されている。3は2枚パドル翼で、攪拌軸2の下端部に装着されている。4は、最下段に位置するパドル翼3に対して、その上に隣接する中段のくし状の翼を示す。このくし状の翼4は、パドル翼3に対して45度の交差角で回転方向に対して先行させて配置し、かつ、最下段のパドル翼3とは、軸方向に対して最下段の撹拌翼の下端から最上段の翼の(水平方向に伸びている部分の)上端までの軸方向高さに対しての3.9%の重なりを有する(図4において、h/Hが0.039)。5は、中段のくし状の翼4と上に隣接する上段のくし状の翼である。この上段のくし状の翼は、中段のくし状の翼4に対して45度の交差角で回転方向に対して先行させて配置し、かつ、中段のくし状の翼4とは、軸方向に対して最下段の撹拌翼下端から最上段の翼の(水平方向に伸びている部分の)上端までの軸方向高さに対しての3.9%の重なりを有する。また、この最上段の翼5の形状および寸法は、中段のくし状翼4の形状及び寸法と同じである。すなわち、図の最上段翼5で示される形状を有する。
この攪拌翼の作用は、作用項の記載に加えて液表面7から上部に最上段翼5の上端が気相部に暴露されており、この翼5が回転することにより液表面がより攪乱され気相部から液相部への物質移動(気相中の可溶性物質が液相部へ移動すること)を促進させる効果が得られる。
【0013】
本発明の実施例1の攪拌翼と従来翼を用いた場合の単位体積当たりの所要動力と完全混合時間の関係(θm-Pv 線図)を図10に示す。同図中のθm は完全混合時間(sec)、Pvは単位体積当たりの所要動力(Kw/m3)を示す。また、攪拌槽での翼の動力性能を表すものとして図11にNp-Re線図を示す。同図中Npは翼による液の動力性能を示す指標で、動力数と言われ、P・gc/ ρ・n3・d5で表される。ここで、P:動力(kgm/sec)、gc:単位換算係数、ρ:液密度(kg/m3)、n:翼回転数(1/sec)、d:翼径(m)を示す。前記θm-Pv 線図とNp-Re線図は、D(槽径)=0.29m、d=0.156m、ρ=1291-1326Kg/m3のときに得られたのもである。また、この時の液深は、0.29mである。まず、θm-Pv線図よりPv=0.1において流体の粘度が10ポイズの場合には、混合時間が本発明は40秒に対して、前記攪拌翼A(特開平6−312122号公報に示されている攪拌翼)は267秒、又は前記攪拌翼B(特開平5−49890号公報に示されている攪拌翼)は54秒であった。本発明は流体の粘度が高い場合には従来の翼に比して完全混合時間が短いことがわかる。また、図11のNp-Re線図より本発明の攪拌効率は、前記攪拌翼Aと同等であり、前記攪拌翼Bに比してレイノルズ数に対してNpの値が約1.6倍であり、本発明の攪拌効率が良いことを示している。
【0014】
本発明の実施例1の攪拌翼と前記攪拌翼Aを用いた場合の半径方向に対する軸方向速度の時間的変化を図12から図17にそれぞれ示す。図12から図17における横軸は時間を示し、縦軸は軸方向速度を示す。
前記軸方向速度の変化を表した図12から図17は、 D(槽径)=0.29m、d=0.203m、ρ=1326Kg/m3、流体粘度が32ポイズのニュートン流体にて本発明の攪拌翼及び前記攪拌翼Aを92rpmにて回転させた場合において、レーザードップラー流速計を用いて得られたものである。図12から図14及び図15から図17はそれぞれ攪拌槽内の半径方向位置r=0.09m、0.11m、0.13m及び高さ方向位置0.145mにおける軸方向速度の時間的変化を示している。また、このときの液深は0.29mとした。図12から図14には本発明の攪拌翼を用いた場合の軸方向速度の時間的変化を示す。図15から図17には前期攪拌翼を用いた場合の軸方向速度の時間的変化を示す。
【0015】
前記図12から図17より、本発明の攪拌翼は、前記攪拌翼Aに比して槽内半径方向位置r=0.09m、0.11m、0.13mのどの位置においても軸方向の速度変化及びその変化の上限値は大きく及び下限値は小さい。すなわち、本発明の攪拌翼は、流体の粘度が32ポイズにおいても前記攪拌翼Aに比して軸方向に対して流体の運動が大きく、軸方向の混合に優れていることを示している。
【0016】
【発明の効果】
本発明は以上の構成よりなり、次に示す効果を奏するものである。
(1)流体の粘度が、10ポイズ以上の流体においても完全混合状態になるまでの時間(混合時間)が短くできる。
(2)従来の攪拌翼と同等な又はそれ以上の攪拌効率を有し、尚かつ混合時間を短くできる。
(3)槽内の軸方向混合性能が優れており、攪拌槽全体の流体を循環させることができ、且つ、自由表面からの物質移動を促進させることができる。
(4)攪拌翼が多段翼から構成されており、各翼の設置角度が異なることにより、攪拌する際に攪拌軸を偏心させることなく円滑に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の略示斜視図。
【図2】同上略示縦断側面図。
【図3】同上略示横断平面図。
【図4】本発明の実施例2の略示縦断側面図。
【図5】同上略示横断平面図。
【図6】特開平6−312122の攪拌翼(攪拌翼A)の略示縦断側面図。
【図7】特開平6−312122の攪拌翼(攪拌翼A)の略示横断平面図。
【図8】特開平5−49890の攪拌翼(攪拌翼B)の略示縦断側面図。
【図9】特開平5−49890の攪拌翼(攪拌翼B)の略示横断平面図。
【図10】θm-Re線図
【図11】Np - Re 線図
【図12】本発明の攪拌翼における軸方向速度の時系列データ
(半径=0.09m、軸方向高さ=0.145m)
【図13】本発明の攪拌翼における軸方向速度の時系列データ
(半径=0.11m、軸方向高さ=0.145m)
【図14】本発明の攪拌翼における軸方向速度の時系列データ
(半径=0.13m、軸方向高さ=0.145m)
【図15】攪拌翼Aにおける軸方向速度の時系列データ
(半径=0.09m、軸方向高さ=0.145m)
【図16】攪拌翼Aにおける軸方向速度の時系列データ
(半径=0.11m、軸方向高さ=0.145m)
【図17】攪拌翼Aにおける軸方向速度の時系列データ
(半径=0.13m、軸方向高さ=0.145m)
【符号の説明】
1 攪拌槽
2 攪拌軸
3 下段のパドル翼
4 中段のくし状の翼
5 上段のくし状の翼
6 邪魔板
7 液面

Claims (10)

  1. 撹拌槽内中心部に設けられた撹拌軸に、攪拌槽の槽底部に配設される幅広平板からなるパドル翼を最下段に、くし状の翼を中段及び上段に装着すると共に、最下段に位置するパドル翼に対して、その上に隣接する中段のくし状の翼を90度未満の交差角で回転方向に対して先行させて配置し、かつ、最下段のパドル翼と上に隣接する中段のくし状の翼は軸方向に対して重なりを有し、かつ、中段に位置するくし状の翼に対して、その上に隣接する上段のくし状の翼を90度未満の交差角で回転方向に対して先行させて配置し、かつ、中段のくし状の翼と上に隣接する上段のくし状の翼は軸方向に対して重なりを有したことを特徴とする撹拌装置。
  2. 上記の2つの交差角を45度としたことを特徴とする請求項1記載の撹拌装置。
  3. 最下段のパドル翼と中段のくし状の翼及び中段のくし状の翼と上段のくし状の翼は、軸方向に少なくとも最下段の攪拌翼の下端から上段の翼の上端までの軸方向高さに対してのそれぞれ3%以上の重なりを持つことを特徴とする請求項1あるいは2記載の攪拌装置。
  4. 上段のくし状の翼はその下半分のみがくし状になっていることを特徴とする請求項1あるいは2記載の撹拌装置。
  5. 上段及び中段のくし状の翼は上下がくし状の同様な形をしていることを特徴とする請求項1あるいは2記載の撹拌装置。
  6. 上段のくし状の翼の上端が、攪拌時において攪拌槽内の液表面から気相部に暴露される位置に設けられていることを特徴とする請求項5記載の攪拌装置。
  7. 最下段のパドル翼と中段のくし状の翼の重なり寸法と中段のくし状の翼と上段のくし状の翼の重なり寸法が異なることを特徴とする請求項1あるいは2記載の攪拌装置。
  8. 最下段のパドル翼の幅と中段のくし状の翼の幅、最上段のくし状の翼の幅の寸法がすべて同じであることを特徴とする請求項1あるいは2記載の攪拌装置。
  9. 最下段のパドル翼の幅と中段のくし状の翼の幅、最上段のくし状の翼の幅の寸法が異なることを特徴とする請求項1あるいは2記載の攪拌装置。
  10. 最下段に幅広のパドル翼を配置し、それより上部に配置されるくし状の翼がそれぞれ45度の交差角を有し、それらのくし状の翼が3段以上配置されることを特徴とする請求項1あるいは2記載の攪拌装置。
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