JP3941780B2 - カーボンナノホーンの製造装置およびカーボンナノホーンの製造方法 - Google Patents

カーボンナノホーンの製造装置およびカーボンナノホーンの製造方法 Download PDF

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本発明は、カーボンナノホーンの製造装置およびカーボンナノホーンの製造方法に関する。
近年、ナノカーボンの工学的応用が盛んに検討されている。ナノカーボンとは、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン等に代表される、ナノスケールの微細構造を有する炭素物質のことをいう。このうち、カーボンナノホーンは、グラファイトのシートが円筒状に丸まったカーボンナノチューブの一端が円錐形状となった管状体の構造を有しており、その特異な性質から、様々な技術分野への応用が期待されている。カーボンナノホーンは、通常、各々の円錐部間に働くファンデルワールス力によって、チューブを中心にし円錐部が角(ホーン)のように表面に突き出る形態で集合し、カーボンナノホーン集合体を形成している。
カーボンナノホーンは、不活性ガス雰囲気中で原料の炭素物質(以下適宜グラファイトターゲットと呼ぶ)に対してレーザー光を照射するレーザー蒸発法によって製造されることが報告されている(特許文献1)。また、アーク放電によりカーボンナノチューブなどのナノカーボンを製造する際に得られるすすの一部にカーボンナノホーンが含まれることが報告されている(特許文献2)。
特開2001−64004号公報 特開2002−348108号公報
ところが、これら従来の製造方法について本発明者が検討したところ、すす状物質を効率よく生成させるという観点において、なお改善の余地があった。
また、すす状物質中に含まれるカーボンナノホーンの比率(以下、「カーボンナノホーンの純度」とも呼ぶ。)に関しても、改善の余地があった。たとえば、カーボンナノホーン以外にアモルファスカーボンや黒鉛が相当程度含まれている場合、得られたすす状物質を精製し、他の物質を除去する必要があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カーボンナノホーンを効率よく製造する技術を提供することにある。
本発明者は、すす状物質の収量およびカーボンナノホーンの収率を低下させる原因について検討を行った。すると、カーボンナノホーンを製造する際に、アーク放電やレーザー光照射を開始してから一定の間は、炭素の蒸発速度が遅く、また、この一定の間に生成するナノカーボン中に、アモルファスカーボンが比較的多く含まれることが見出された。
そこで、本発明者は、アーク放電やレーザー光照射を開始した直後から炭素の蒸発が迅速に生じるようにすることにより、すす状物質の生成量を増加させ、また、すす状物質中のカーボンナノホーンの収率を向上させることが可能であると考え、鋭意検討を行い、本発明の完成に至った。
本発明によれば、
グラファイト材を保持する原料保持手段と、
前記グラファイト材を予備加熱する予備加熱手段と、
前記グラファイト材にエネルギーを供給し、前記グラファイト材から炭素蒸気を蒸発させるエネルギー付与手段と、
を有し、
前記グラファイト材は、グラファイトからなる電極対を構成し、
前記原料保持手段は、前記電極対を保持する電極保持部を有し、
前記エネルギー付与手段は、前記電極対に電流を供給する電源を有し、
前記予備加熱手段は、前記電極対を構成する電極を互いに接触させた状態で通電させることにより、前記電極対が抵抗加熱されるように構成されたことを特徴とするカーボンナノホーンの製造装置が提供される。
また、本発明によれば、
グラファイト材を予備加熱するステップと、
予備加熱された前記グラファイト材にエネルギーを供給し、前記グラファイト材から炭素蒸気を蒸発させてカーボンナノホーンを得るステップと、
を含み、
前記グラファイト材が第一の炭素電極および第二の炭素電極を構成し、
前記第一の炭素電極と前記第二の炭素電極との間にアーク放電を発生させることにより、前記グラファイト材に前記エネルギーを供給し、
グラファイト材を予備加熱する前記ステップは、前記第一の炭素電極と前記第二の炭素電極とを互いに接触させた状態で通電させるステップを含むことを特徴とするカーボンナノホーンの製造方法が提供される。
本発明のカーボンナノホーンの製造装置は、予備加熱手段を有する。このため、グラファイト材にエネルギーを供給する前にこれを予め加熱して、炭素の蒸発温度に近づけることができる。また、本発明に係る製造方法は、グラファイト材を予備加熱するステップを含む。グラファイト材の予備加熱をすることにより、エネルギー供給開始時のグラファイト材の温度を上昇させることができる。このため、蒸発開始時から炭素の蒸発速度が大きくなる。よって、エネルギー供給開始直後から効率よく炭素蒸気を生じさせ、すす状物質の収量を増加させることができる。
また、蒸発開始時から炭素の蒸発速度が大きくなるため、蒸発開始時から蒸発した炭素の密度を高めることができる。したがって、本発明によれば、グラファイト材にエネルギーを開始した直後からアモルファスカーボンの生成を抑制し、カーボンナノホーンを製造することができる。このため、カーボンナノホーンを高純度で含むすす状物質を安定的に製造することができる。
なお、本発明において、グラファイト材は主として炭素から構成されるが、たとえば、微量の金属または金属酸化物等の金属化合物を含んでいてもよい。
本発明のカーボンナノホーンの製造装置において、前記グラファイト材は、グラファイトからなる電極対を構成し、前記原料保持手段は、前記電極対を保持する電極保持部を有し、前記エネルギー付与手段は、前記電極対に電流を供給する電源を有する構成とすることができる。
また、本発明のカーボンナノホーンの製造方法において、前記グラファイト材が第一の炭素電極および第二の炭素電極を構成し、前記第一の炭素電極と前記第二の炭素電極との間にアーク放電を発生させることにより、前記グラファイト材に前記エネルギーを供給することができる。
こうすることにより、所定の温度に予備加熱したグラファイト材を用いてアーク放電を行うことができる。このため、カーボンナノホーンを高純度で含むすす状物質を安定的に製造することができる。
本発明のカーボンナノホーンの製造装置において、前記予備加熱手段は、前記電極対を構成する電極を互いに接触させた状態で通電させることにより、前記電極対が抵抗加熱されるように構成されてもよい。
また、本発明のカーボンナノホーンの製造方法において、グラファイト材を予備加熱する前記ステップは、前記第一の炭素電極と前記第二の炭素電極とを互いに接触させた状態で通電させるステップを含んでもよい。
こうすることにより、簡素な装置構成でグラファイト材を確実に予備加熱することができる。このため、すす状物質中のカーボンナノホーンの純度を容易に向上させることができる。
本発明のカーボンナノホーンの製造装置において、前記カーボンナノホーンを生成し、前記電極対が収容される生成室と、前記生成室に酸素を含むガスを供給する酸素供給部と、を備える構成とすることができる。こうすることにより、酸素を含む雰囲気中でアーク放電を行うことができる。たとえば、生成室内が所定の酸素分圧の範囲となるように酸素を含むガスを供給しながら、アーク放電を行うことができる。
また、発明のカーボンナノホーンの製造方法において、酸素を含む雰囲気中で前記アーク放電を発生させてもよい。
酸素を含む雰囲気中でアーク放電を行うことにより、カーボンナノホーンの純度をより一層向上させることができる。
本発明によれば、
グラファイト材を保持する原料保持手段と、
前記グラファイト材を予備加熱する予備加熱手段と、
前記グラファイト材にエネルギーを供給し、前記グラファイト材から炭素蒸気を蒸発させるエネルギー付与手段と、
を有し、
前記エネルギー付与手段は、前記グラファイト材に光を照射する光源を有することを特徴とするカーボンナノホーンの製造装置が提供される
また、本発明によれば、
グラファイト材を予備加熱するステップと、
予備加熱された前記グラファイト材にエネルギーを供給し、前記グラファイト材から炭素蒸気を蒸発させてカーボンナノホーンを得るステップと、
を含み、
前記グラファイト材の表面に光を照射することにより、前記エネルギーを供給することを特徴とするカーボンナノホーンの製造方法が提供される。
さらに、本発明のカーボンナノホーンの製造装置において、前記原料保持手段がグラファイトターゲットを保持するターゲット保持部を有し、前記エネルギー付与手段は、前記グラファイトターゲットに光を照射する光源を有する構成とすることができる。
また、本発明のカーボンナノホーンの製造方法において、前記グラファイト材がグラファイトターゲットであって、前記グラファイトターゲットの表面に光を照射することにより、前記エネルギーを供給してもよい。
こうすることにより、所定の温度に予備加熱したグラファイト材に対してレーザーアブレーションを行うことができる。このため、カーボンナノホーンを高純度で含むすす状物質を安定的に製造することができる。
本発明のカーボンナノホーンの製造方法において、前記グラファイト材を800℃以上1400℃以下の温度に予備加熱することができる。こうすることにより、グラファイト材へのエネルギーの供給を開始した直後から炭素蒸気をさらに効率よく生じさせることができる。このため、エネルギー供給開始直後からすす状物質をさらに効率よく製造することができる。また、すす状物質中のカーボンナノホーンの純度を確実に向上させることができる。
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
以上説明したように、本発明によれば、グラファイト材を予備加熱することにより、カーボンナノホーンを効率よく製造することができる。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、すべての図面において、共通の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図1および他の製造装置の説明に用いる図は概略図であり、各構成部材の大きさは実際の寸法比に必ずしも対応していない。
(第一の実施形態)
本実施形態では、アーク放電法によるカーボンナノホーンの製造について説明する。図1は、本実施形態に係るカーボンナノホーンの製造装置の構成を模式的に示す断面図である。
図1のナノカーボン製造装置301は、アーク放電法によってカーボンナノホーンを製造する装置であって、製造チャンバー303および電源305を備える。
製造チャンバー303は、陰極保持部309、載置台311、陽極保持部313、位置調節部315、ガス供給管317、バルブ319、および排気管321を有する。
製造チャンバー303中の載置台311の上に陽極保持部313が設けられる。陽極325は、陽極保持部313に保持される。また、製造チャンバー303中に陰極保持部309が設けられ、陰極323が保持される。陰極323および陽極325には、予備加熱に用いる電流およびアーク放電に必要な電流が電源305から供給される。
陰極323および陽極325は、それぞれ陰極保持部309および陽極保持部313に保持されていない端部において互いに対向している。陰極保持部309に保持される陰極323の位置は、位置調節部315にて調節可能となっている。このため、陰極323と陽極325の間隔を調節することができる。位置調節部315は、陰極323および陽極325を互いに接触させることができる。このため、陰極323と陽極325とを接触させた状態で、電源305から電流を供給することができる。すると、陰極323および陽極325が閉回路中の抵抗体となり、これらが加熱される。ナノカーボン製造装置301においては、陰極323および陽極325を接触抵抗により効率よく予備加熱することができる。
また、ナノカーボン製造装置301において、ガス供給管317および排気管321は、製造チャンバー303の内部に連通している。そして、ガス供給管317および排気管321にそれぞれ設けられたバルブ319の開閉により、製造チャンバー303へのガスの供給および排出がそれぞれ行われる。このため、所望の雰囲気中でアーク放電を行うことができる。
なお、ナノカーボン製造装置301において、載置台311の高さについても、移動可能な構成とすることができる。こうすれば、陰極323と陽極325との間隔をさらに精密に調節することができる。
次に、ナノカーボン製造装置301を用いたカーボンナノホーンの製造方法について説明する。電源305は、直流電源または交流電源のいずれとすることもできる。直流電源を用いることにより、カーボンナノホーンを安定的に製造することができる。以下、本実施形態において、電源305が直流電源である場合を中心に説明する。
陰極323および陽極325として、たとえばグラファイト電極を用いる。なお、電源305として直流電源を用いる場合には、主として陽極325から炭素が蒸発するため、少なくとも陽極325としてグラファイト電極を用いる。また、交流電源を用いる場合には、陰極323と陽極325のいずれからも炭素が蒸発するため、陰極323と陽極325をいずれもグラファイト電極とする。
また、陰極323および陽極325の形状に特に制限はないが、これらが端面を有する形状とすれば、端面同士を接触させて、以下の方法で簡便に効率よく電極を加熱することができる。
まず、陰極323および陽極325を、それぞれ陰極保持部309および陽極保持部313に保持させる。そして、陰極323と陽極325の予備加熱を行う。このとき、位置調節部315を調節し、陰極323と陽極325とを互いに接触させる。これらを接触させた状態で、電源305から電流を供給する。陰極323と陽極325を接触させた状態で通電を行うと、接触抵抗によりこれらが加熱される。
加熱は、たとえば陰極323および陽極325が500℃以上、好ましくは800℃以上、さらに好ましくは1000℃以上となるまで行うことができる。また、加熱は、アーク放電中の電極温度程度まで上昇させることが好ましいが、たとえば陰極323および陽極325が1800℃以下、好ましくは1400℃以下となるまで行うことができる。こうすることにより、アーク放電開始直後から陰極323から炭素を効率よく蒸発させることができる。また、蒸発した炭素が製造チャンバー303内で冷却されて生成するすす状物質中のカーボンナノホーンの割合を増加させることができる。
また、このときの通電の条件は、たとえば、5〜30秒、好ましくは10〜20秒の時間で所定の温度まで昇温される条件に設定することができる。また、所定の温度まで上昇後、その温度で10秒〜2分程度電極を保持してもよい。こうすることにより、放電直後から多くのすす状物質を安定的に得ることができる。また、カーボンナノホーンの純度を安定的に向上させることができる。
また、予備加熱は、製造チャンバー303が外気に連通した状態で行うことができる。また、ガス供給管317から製造チャンバー303に所定のガスを供給してもよい。製造チャンバー303に供給されるガスを、たとえば、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスとすることができる。なお、製造チャンバー303内を、空気または酸素を含む雰囲気中として予備加熱を行ってもよい。この態様については、第二の実施形態においてさらに説明する。
予備加熱後、アーク放電を行う。放電中の製造チャンバー303の雰囲気は、たとえば窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることができる。また、第二の実施形態において後述するように、空気または酸素の存在する系としてもよい。排気管321から製造チャンバー303の排気を行い、また、ガス供給管317から所定のガスを供給することができるため、製造チャンバー303内を所定の雰囲気に調節することができる。また、アーク放電中は、ガス供給管317に設けられたバルブ319を開き、ガス供給管317から所定のガスを供給しながら放電を行ってもよい。また、所定の雰囲気に調節した後バルブ319を閉じて放電を行ってもよい。
また、接触させていた陰極323と陽極325とを離間させて、放電を行う。このとき、通電状態のまま電極を離し、放電を行っても同様の結果が得られる。陰極323と陽極325との間隔は、たとえば、0.1mm以上2mm以下とすることができる。また、アーク電流は、たとえば、50A以上、好ましくは100A以上とすることができる。こうすることにより、電極から炭素を確実に蒸発させることができる。また、アーク電流は、たとえば、300A以下、好ましくは200A以下とすることができる。こうすることにより、カーボンナノホーンを安定的に製造することができる。また、アーク放電の際の電圧は、たとえば、10〜20V程度とすることができる。
放電時間は、たとえば0.5秒以上、好ましくは1秒以上とすることができる。こうすることにより、電極から確実に炭素を蒸発させ、すす状物質として回収することができる。また、放電時間は、たとえば1分以下、好ましくは30秒以下とすることができる。こうすることにより、すす状物質の収量を確実に向上させることができる。また、これらの放電時間を所定のサイクル繰り返すパルス放電としてもよい。パルス放電とすることにより、すす状物質の収量およびすす状物質中のカーボンナノホーンの純度を確実に向上させることができる。なお、パルス放電とする場合、パルスの休止時間はたとえば1秒以下とすることができる。
放電後、製造チャンバー303内で生成したすす状物質を回収して、カーボンナノホーンを得る。ここで、カーボンナノホーンは、通常、円錐部間に働くファンデルワールス力によって、チューブを中心にして円錐部がホーンのように表面に突き出る形態で集合し、カーボンナノホーン集合体を形成している。本実施形態において、たとえば平均粒径が30〜100nm程度、より具体的には、たとえば平均粒径が50nm程度のカーボンナノホーン集合体を高い純度で効率よく製造することができる。
また、カーボンナノホーン集合体は、主としてその複数が連結した構造体の状態で存在する。複数のカーボンナノホーン集合体が連結した連結体において、カーボンナノホーン集合体の連結部分では、複数のカーボンナノホーン集合体がカーボンナノホーンを共有している。このため、カーボンナノホーン集合体が単独で存在している場合と比較して、連結体中ではカーボンナノホーンを高密度に近接させた状態で存在させることができる。よって、この連結体は比表面積が大きく、たとえば燃料電池の触媒担持体として好適に用いることができる。
本実施形態においては、アーク放電の前に電極の予備加熱を行うことにより、放電初期のすす状物質の生成量を増加させることができる。また、放電初期のアモルファスカーボンの生成を好適に抑制することができる。このため、すす状物質におけるカーボンナノホーンの純度を向上させることができる。したがって、カーボンナノホーンを安定的に効率よく生産することが可能である。
なお、図1のナノカーボン製造装置301では、予備加熱用の電源およびアーク放電用の電源が共通の電源305である場合を例に説明したが、これらは別個の電源とすることもできる。
また、本実施形態において、陰極323または陽極325の予備加熱は、これらを接触させて通電することによる接触加熱以外の方法で行ってもよい。図2は、図1の変形例に係るカーボンナノホーンの製造装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2のナノカーボン製造装置329の基本構成は、図1のナノカーボン製造装置301と同様であるが、製造チャンバー303に窓327が設けられ、さらにランプ307を備える点が異なる。
窓327は、製造チャンバー303の壁面に設けられている。窓327は対向する陰極323および陽極325の側面に平行に配置される。窓327の材料は、たとえば石英、ZnSe等とすることができる。
製造チャンバー303の外に設けられたランプ307は、窓327の側方に配設される。ランプ307は、赤外線ランプ加熱装置などとすることができる。こうすれば、ランプ307から窓327を経由して製造チャンバー303内の陰極323および陽極325に確実に光照射し、予備加熱することができる。
ナノカーボン製造装置329は、ランプ307を備え、また、製造チャンバー303に窓327が設けられているため、陰極323および陽極325を効率よく予備加熱することができる。
ナノカーボン製造装置329は、製造チャンバー303の外部に設けられたランプ307を用いて陰極323および陽極325を予備加熱する構成であるが、ランプ307が製造チャンバー303の内部に設けられた構成とすることもできる。また、予備加熱の方法はこれに限られず、ランプ307以外のヒーターを用いたりその他の方法を用いたりすることもできる。たとえば、RF(高周波)加熱等を用いて電極の加熱を行ってもよい。この場合、たとえば陰極323および陽極325の近傍に配設した金属に高周波電流を流すことにより、陰極323および陽極325加熱を行うことができる。
(第二の実施形態)
第一の実施形態において、酸素を含む雰囲気中でアーク放電を行ってもよい。
本実施形態において、たとえば、製造チャンバー303の気圧を500〜1000Torr程度としてアーク放電を行う場合、アーク放電中の製造チャンバー303中の気体中の酸素の割合を、たとえば5体積%以上、好ましくは10体積%以上とすることができる。こうすることにより、アモルファスカーボンの生成を確実に抑制することができる。また、このとき、たとえば、製造チャンバー303中の気体中の酸素の割合を、たとえば40体積%以下、好ましくは30体積%以下とすることができる。こうすることにより、カーボンナノホーンを安定的に製造することができる。
たとえば、空気中でアーク放電を行うことができる。ガス供給管317に設けられたバルブ319を開き、チャンバ外部の空気が製造チャンバー303に供給されるようにしてもよい。こうすれば、製造チャンバー303中に常に酸素が補充されるため、アモルファスカーボンの生成を抑制し、カーボンナノホーンを高純度で製造することができる。
また、たとえば所定の濃度の酸素を含む不活性ガスをガス供給管317から製造チャンバー303に充填し、バルブ319を閉じてアーク放電を行ってもよい。また、ガス供給管317から所定の濃度の酸素を含む不活性ガスを供給しながらアーク放電を行うこともできる。酸素を含む不活性ガスを供給しながら放電を行うことにより、製造チャンバー303中の酸素濃度を所定の濃度以上に維持することができるため、カーボンナノホーンの純度をさらに確実に向上させることができる。不活性ガスとして、たとえば第一の実施形態にて例示したガスを用いることができる。
また、製造チャンバー303に、チャンバー内の酸素濃度を測定する濃度センサが設けられ、ナノカーボン製造装置301に、ガスの供給を制御する制御部が設けられていてもよい。こうすれば、濃度センサで測定された酸素濃度に基づき、ガス供給管317から供給する供給ガスの量を制御することができる。このため、製造チャンバー303内の酸素濃度を所望の濃度に調節し、カーボンナノホーンをより一層効率よく安定的に生産することができる。
本実施形態では、酸素を含む雰囲気中でアーク放電を行うことにより、電極からの炭素の蒸発を促進することができる。また、アモルファスカーボンの生成をより一層抑制することができる。このため、カーボンナノホーンの純度をさらに向上させることができる。また、酸素を含む雰囲気中でアーク放電を行うことにより、カーボンナノホーン集合体の粒径のばらつきを抑制することができる。
なお、本実施形態において、予備加熱時の製造チャンバー303の雰囲気は適宜選択することができるが、予備加熱時から製造チャンバー303に酸素が存在する系とすることにより、予備加熱後、さらに効率よくカーボンナノホーン集合体を製造することができる。
(第三の実施の形態)
本実施形態では、レーザーアブレーション法によるカーボンナノホーンの製造について説明する。図3は、本実施形態に係るカーボンナノホーンの製造装置の構成を模式的に示す断面図である。
図3のナノカーボン製造装置331は、製造チャンバー107、ナノカーボン回収チャンバー119、搬送管141、レーザー光源111、ZnSe平凸レンズ131、ZnSeウインドウ133、回転装置115、窓327およびランプ307を備える。さらに、ナノカーボン製造装置331は、不活性ガス供給部127、流量計129、真空ポンプ143、および圧力計145を備える。
レーザー光源111から出射するレーザー光103は、ZnSe平凸レンズ131にて集光され、ZnSeウインドウ133を通じて製造チャンバー107内のグラファイトロッド101に照射される。グラファイトロッド101は、レーザー光103照射のターゲットとなる固体炭素単体物質として用いられる。
レーザー光103は、照射角が一定となるようにグラファイトロッド101に照射される。レーザー光103の照射角を一定に保ちながら、グラファイトロッド101をその中心軸に対して所定の速度で回転させることにより、グラファイトロッド101の側面の円周方向にレーザー光103を一定のパワー密度で連続的に照射することができる。また、グラファイトロッド101をその長さ方向にスライドさせることにより、グラファイトロッド101の長さ方向にレーザー光103を一定のパワー密度で連続的に照射することができる。
回転装置115は、グラファイトロッド101を保持し、その中心軸周りに回転させる。グラファイトロッド101は回転装置115に固定することにより、中心軸周りに回転可能である。またグラファイトロッド101はたとえば中心軸に沿った方向に位置移動可能な構成とすることができる。
製造チャンバー107とナノカーボン回収チャンバー119とは、搬送管141によって接続されている。グラファイトロッド101の側面にレーザー光源111からレーザー光103が照射され、その際のプルーム109の発生方向に搬送管141を介してナノカーボン回収チャンバー119が設けられており、生成したカーボンナノホーン集合体117はナノカーボン回収チャンバー119に回収される。
ランプ307は、製造チャンバー107の外側に設けられており、製造チャンバー107の壁面に設けられた窓327を通してグラファイトロッド101を加熱することができるように構成されている。
ランプ307および窓327の材料や構成は、たとえば第一の実施形態と同様とすることができる。具体的には、たとえば、窓327の材料として石英を用い、ランプ307として赤外線ランプ加熱装置を用いることができる。
ナノカーボン製造装置331には、窓327およびランプ307が設けられているため、グラファイトロッド101の予備加熱を安定的に行うことができる。このため、すす状物質を効率よく製造することができる。また、すす状物質中のカーボンナノホーンの純度を向上させることができる。
次に、ナノカーボン製造装置331を用いたレーザーアブレーション法によるカーボンナノホーン集合体117の製造方法について説明する。
グラファイトロッド101として、高純度グラファイト、たとえば丸棒状焼結炭素や圧縮成形炭素等を用いることができる。グラファイトロッド101を予備加熱した後、その側面にレーザー光103を照射する。
予備加熱の条件は、たとえば、第一の実施形態と同様の条件とすることができる。具体的には、たとえば、グラファイトロッド101を800℃以上1400℃以下の温度に予備加熱することができる。グラファイトロッド101が予め加熱された状態でレーザー光103の照射を開始することにより、照射直後の炭素の蒸発速度を増加させることができる。また、アモルファスカーボンの生成を抑制することができる。このため、カーボンナノホーン集合体117を効率よく安定的に製造することができる。また、すす状物質中のカーボンナノホーンの純度を向上させることができる。
次に、予備加熱したグラファイトロッド101に対するレーザーアブレーションを行う。レーザー光103として、たとえば、高出力CO2ガスレーザーを用いる。レーザー光103のグラファイトロッド101への照射は、Ar、He等の希ガスをはじめとする反応不活性ガス雰囲気、たとえば103Pa以上105Pa以下の雰囲気中で行う。また、製造チャンバー107内を予めたとえば10-2Pa以下に減圧排気した後、不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。
また、グラファイトロッド101の側面におけるレーザー光103のパワー密度がほぼ一定、たとえば5kW/cm2以上25kW/cm2以下となるようにレーザー光103の出力、スポット径、および照射角を調節することが好ましい。
レーザー光103の出力はたとえば1kW以上50kW以下とする。また、レーザー光103のパルス幅はたとえば0.5秒以上とし、好ましくは0.75秒以上とする。こうすることにより、グラファイトロッド101の表面に照射されるレーザー光103の累積エネルギーを充分確保することができる。このため、カーボンナノホーン集合体117を効率よく製造することができる。また、レーザー光103のパルス幅はたとえば1.5秒以下とし、好ましくは1.25秒以下とする。こうすることにより、グラファイトロッド101の表面が過剰に加熱されることにより表面のエネルギー密度が変動し、カーボンナノホーン集合体の収率が低下するのを抑制することができる。レーザー光103のパルス幅は、0.75秒以上1秒以下とすることがさらに好ましい。こうすれば、カーボンナノホーン集合体117の生成率および収率をともに向上させることができる。
また、レーザー光103照射における休止幅は、たとえば0.1秒以上とすることができ、0.25秒以上とすることが好ましい。こうすることにより、グラファイトロッド101表面の過加熱をより一層確実に抑制することができる。
レーザー光103は、照射角が一定となるように照射される。レーザー光103の照射角を一定に保ちながら、グラファイトロッド101をその中心軸に対して所定の速度で回転させることにより、グラファイトロッド101の側面の円周方向にレーザー光103を一定のパワー密度で連続的に照射することができる。また、グラファイトロッド101をその長さ方向にスライドさせることにより、グラファイトロッド101の長さ方向にレーザー光103を一定のパワー密度で連続的に照射することができる。
このときの照射角は30°以上60°以下とすることが好ましい。なお、本明細書において、照射角とは、レーザー光103の照射位置におけるグラファイトターゲットの表面に対する垂線とレーザー光103とのなす角のことである。円筒形のグラファイトターゲットを用いる場合、照射角は、グラファイトロッド101の長さ方向に垂直な断面において、照射位置と円の中心とを結ぶ線分と、水平面とのなす角となる。
この照射角を30°以上とすることにより、照射するレーザー光103の反射して戻り光が発生することの抑制が図られる。また、発生するプルーム109がZnSeウインドウ133を通じてZnSe平凸レンズ131へ直撃することが防止される。このため、ZnSe平凸レンズ131を保護し、またカーボンナノホーン集合体117のZnSeウインドウ133への付着防止に有効である。よって、グラファイトロッド101に照射される光のパワー密度を安定化し、カーボンナノホーンを高い収率で安定的に製造することができる。また、レーザー光103を60°以下で照射することにより、アモルファスカーボンの生成を抑制し、生成物中のカーボンナノホーン集合体117の割合、すなわちカーボンナノホーン集合体117の収率を向上させることができる。また、照射角は45°±5°とすることが特に好ましい。約45°の角度で照射することにより、生成物中のカーボンナノホーン集合体117の割合をより一層向上させることができる。
また、照射時のレーザー光103のグラファイトロッド101側面へのスポット径は、たとえば0.5mm以上5mm以下とすることができる。
また、レーザー光103のスポットを、たとえば0.01mm/sec以上55mm/sec以下の速度(周速度)で移動させることが好ましい。たとえば、直径100mmのグラファイトターゲットの表面にレーザー光103を照射する場合には、回転装置115によって直径100mmのグラファイトロッド101を円周方向に一定速度で回転させ、回転数をたとえば0.01rpm以上10rpm以下とすると、上述の周速度を実現できる。なお、グラファイトロッド101の回転方向に特に制限はないが、照射位置がレーザー光103から遠ざかる方向、すなわち図3においては図中に矢印で示したようにレーザー光103から搬送管141に向かう方向、に回転させることが好ましい。こうすることにより、カーボンナノホーン集合体117をより一層確実に回収することができる。
ナノカーボン回収チャンバー119に回収されたすす状物質は、カーボンナノホーンを主として含み、たとえば、カーボンナノホーンが90wt%以上含まれる物質として回収される。カーボンナノホーンは、主としてカーボンナノホーン集合体117として回収される。また、カーボンナノホーン集合体117は、主に1個1個が独立した状態で存在している。
なお、プルーム109は、レーザー光103の照射位置におけるグラファイトロッド101の接線に垂直方向に発生するため、この方向に搬送管141を設ければ、効率よく炭素蒸気をナノカーボン回収チャンバー119に導き、カーボンナノホーン集合体117を回収することができる。
なお、本実施形態において、ナノカーボン回収チャンバー119の底部に堆積したカーボンナノホーン集合体117をかきとるためのかきとり手段をさらに設けてもよい。
また、本実施形態においても、予備加熱の方法はランプ307を用いる方法に限られず、上述したRF加熱など、他の方法を用いたりすることもできる。
また、以上の実施形態においては、グラファイトロッドを用いた場合を例に説明をしたが、グラファイトターゲットの形状は円筒形には限定されず、シート状、棒状等とすることもできる。
また、カーボンナノホーン集合体117を構成するカーボンナノホーンの形状、径の大きさ、長さ、先端部の形状、炭素分子やカーボンナノホーン間の間隔等は、アーク放電の条件やレーザー光103の照射条件などによって様々に制御することが可能である。
以上、本発明を実施形態に基づき説明した。これらの実施形態は例示であり様々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
まず、第一および第二の実施形態に記載の方法を利用して、パルスアーク放電法によるカーボンナノホーンの製造を行った。図1のナノカーボン製造装置301において、陰極323および陽極325にグラファイト電極を用い、これらを接触させて通電加熱を行った。加熱温度を、800℃、1000℃、1200℃、および1400℃とした。昇温は、10〜20秒程度の時間をかけて行い、所定の温度になった後、1分間その温度を保持した。なお、予備加熱時の電極温度は放射温度計で測定した。
予備加熱後、電極間の間隔を1〜2mm程度としてアーク放電を行った。製造チャンバー303内に所定のガスを導入し、760Torrとした。ガスとして、ヘリウム、アルゴン、または空気を用いた。そして、バルブ319を閉じて、放電を開始した。放電は、120A、10〜20V直流のパルス放電とした。放電時間は1秒または30秒とした。なお、予備加熱を行わなかった電極対を用いた場合についても同様にしてアーク放電を行った。
得られたすす状物質を、TEM(透過型電子顕微鏡)観察およびラマン分光分析により評価した。図9は、ヘリウム中でアーク放電を行った場合に得られたすす状物質のラマンスペクトルを示す図である。図9において、「RT」とあるのは予備加熱を行わずに放電して得られた試料の結果である。また、「1000」および「1400」とあるのは、それぞれ1000℃および1400℃に予備加熱した後、放電して得られた試料の結果である。また、ラマン分光分析の励起波長は1064nmである。
図9に示したように、いずれの試料についても、炭素の格子欠陥に起因する1270cm-1付近のDバンドのピークおよび炭素原子の六員環構造の格子振動に起因する1590cm-1付近のGバンドのピークが存在した。そして、予備加熱を行った試料では、行わなかった試料に比べて1270cm-1付近のピークがさらにシャープになっている。これより、予備加熱を行うことにより、アモルファスカーボンの生成を抑止し、カーボンナノホーンの純度が向上することが示唆された。
また、図10は、He中、1000℃に予備加熱した後、30秒放電して得られたすす状物質のTEM像を示す図である。図10より、すす状物質は主にカーボンナノホーン集合体であることがわかる。
なお、図10において、カーボンナノホーン集合体は、数%のダリア状のカーボンナノホーン集合体を含み、残りはつぼみ状のカーボンナノホーン集合体であった。ただし、本明細書において、「ダリア状」は、多数のカーボンナノホーンが円錐状の先端部を外側にして集合した球状体が、まるでダリアの花のように見えることを表現しているものである。また、本明細書において、「つぼみ状」は、ダリア状と比較して、集合体の表面に角状の突起は見られず滑らかであって、まるでダリアの花びらの突起が形成される前のつぼみともとれることからそのように表現しているものである。
以上の結果より、予備加熱をした後アーク放電を行うことにより、アモルファスカーボンの生成を抑制し、カーボンナノホーンを安定的に得ることができた。
また、表1および表2は、空気中で予備加熱後、放電を行った場合の予備加熱条件、すす状物質の収量および収率をまとめた図である。表1は、アーク放電の放電時間を1秒とした場合の結果を示す。また、表2は、放電時間を30秒とした場合の結果を示す。
Figure 0003941780
Figure 0003941780
さらに、各条件で得られたすす状物質の透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。図4は、予備加熱温度を1400℃とし、1秒間放電することにより得られたすす状物質のTEM像を示す図である。また、図5は、予備加熱を行わずに1秒間放電することにより得られたすす状物質のTEM像を示す図である。また、図6は、予備加熱温度を1000℃とし、30秒間放電することにより得られたすす状物質のTEM像を示す図である。また、図7は、予備加熱を行わずに30秒間放電することにより得られたすす状物質のTEM像を示す図である。
放電時間を1秒とした場合、表1に示したように、予備加熱温度が高いほど、すす状物質の収量および収率が増加する傾向にあった。また、カーボンナノホーンは、直径50nm程度のカーボンナノホーン集合体として存在していた。通電による予備加熱を行ったすべての条件において、ダリア型カーボンナノホーン集合体を確認した。そして、ほとんどのダリア型カーボンナノホーン集合体の表面はアモルファスカーボンに覆われてはいなかった。
たとえば、図4より、1400℃にて予備加熱することにより、ダリア型カーボンナノホーン集合体が生成していることがわかる。また、隣接するカーボンナノホーン集合体同士が連結した連結体が生成していることがわかる。また、予備加熱温度が高いほど、カーボンナノホーン特有のチューブ状構造の発達が顕著になっていた。また、すす状物質中のカーボンナノホーンの割合は高くなり、カーボンナノホーンを覆っているアモルファスカーボン量は減少した。
これに対し、予備加熱を行わずに1秒放電した場合、表1に示したように、すす状物質はほとんど生成しなかった。また、図5に示したように、ごくわずかに生成したすす状物質中には、ダリア型のカーボンナノホーンが確認されず、ほとんどがアモルファスカーボンまたはアモルファスカーボンに分厚く覆われているカーボンナノホーンであった。
また、放電時間を30秒とした場合、表2、図6、および図7より、通電による予備加熱を行った場合および予備加熱を行わなかった場合のいずれについても、平均粒径が50nm程度のダリア状カーボンナノホーン集合体が得られた。カーボンナノホーン集合体は主として単層カーボンナノホーンから構成されていた。
また、表2より、予備加熱の有無によるすす状物質の収量の差異は小さかった。一方、熱重量分析の結果、800℃以上の予備加熱を行い30秒間アーク放電して得た単層カーボンナノホーンの純度は90%以上であったが、予備加熱を行わなかった場合には、純度は約50%であり、その主な不純物はアモルファス炭素であることがわかった。
以上の結果より、1秒放電においてより一層顕著な予備加熱効果が得られることがわかった。これより、本実施例において、電極の予備加熱を行うことにより、アーク放電開始直後の原料炭素(陰極)の蒸発を促進する効果があることがわかる。
また、炭素の蒸発を促進することにより、アーク内および近傍の2000℃以上の高温領域における炭素密度を増加させることができる。そして、炭素がこの高温度領域内にとどまっているたとえば数100ミリ秒以内の間に、クラスター状の炭素からナノホーンを構成するグラファイト構造への構造変化が完了することを可能にしていると考えられる。
なお、1秒放電する条件では、予備加熱を1000℃または1200℃で行った試料が最もカーボンナノホーンの純度が高く、好ましかった。
さらに、同じ温度で予備加熱した試料について、空気中で放電を開始した試料とヘリウム中で放電した試料とを比較した。すると、酸素を含む空気中で放電を行うことにより、すす状物質に含まれるカーボンナノホーンの割合をさらに向上させることができた。また、カーボンナノホーン集合体の形状に関して、たとえば図6および図10に示したように、空気中で放電することにより、ダリア状カーボンナノホーン集合体の割合を増加させることができることがわかった。また、このことから、予備加熱に加えてさらに空気中での放電を行うことにより、これらの相乗効果を発揮させ、カーボンナノホーン集合体の純度をより一層向上させることができることがわかった。
また、これに対し、予備加熱を行わない場合、放電を開始してから炭素の蒸発速度がある程度高くなるまでの10〜20秒間は、アモルファスカーボンが不純物として生成するものと考えられる。
さらに、チャンバー内の酸素がカーボンナノホーンの形成に与える影響について詳細に確認するため、放電時の雰囲気を異にする条件でカーボンナノホーンの作製を行った。
アーク放電の雰囲気を、空気、Ar、およびHeとし、チャンバー内の圧力をいずれも760Torrとした。放電時間を30秒とした。なお、ここでは、予備加熱を行わなかった。得られたカーボンナノホーン集合体のTEM像を図8に示す。図8において、上段の3つの像は、空気中で放電を行って得られたすす状物質を示す(図8(a))。また、中段の3つの像は、Ar中で放電を行って得られたすす状物質を示す(図8(b))。また、下段の3つの像は、He中で放電を行って得られたすす状物質を示す(図8(c))。
図8(a)〜図8(c)より、次のことがわかる。まず、空気中で放電を行い得られたカーボンナノホーン集合体は、粒子の先端が突起形状をしていて、アモルファスカーボンなどの物質が付着していなかった。これより、粒子は綺麗なカーボンナノホーンを構成物質とするカーボンナノホーン集合体であることが確認された(図8(a))。一方、Ar中で放電を行ったものは、粒子の表面全体がアモルファスカーボンに覆われており、その表面からカーボンナノホーンの突起形状が突出していた(図8(b))。また、He中で放電を行ったものは、カーボンナノホーンの突起形状が、粒子の表面からほとんど突出していなかった(図8(c))。
これより、アーク放電の雰囲気を、空気、Ar、およびHeのいずれとした場合にも、複数のカーボンナノホーン集合体が連結した連結体を選択的に得ることができた。これらの雰囲気中で合成したすす状物質をTEM観察により比較すると、空気中で合成したものが最も高純度であった。そして、レーザーアブレーション法で合成したカーボンナノホーン集合体に匹敵する程度の純度を得ることができた。
また、ArおよびHe中で放電を行って得られたすす状物質は、空気中で放電を行った場合に比べて多くのアモルファスカーボンを含んでいた。なお、これらについては、作製後、300〜500℃程度の温度に加熱する熱処理を施すことにより、アモルファスカーボンの割合をある程度減少させ、品質を改善させることが可能であることが、ラマン分光測定および質量変化の測定の結果明らかになった。
さらに、ArおよびHe中に20v/v%O2を添加した雰囲気において、アーク放電を行った。得られたカーボンナノホーン集合体のTEM観察およびラマン分光測定を行った。その結果、ArおよびHeのいずれの場合においても、O2を含まない雰囲気の場合と比較して、アモルファスカーボンの生成量が減少し、カーボンナノホーンの純度が増加していた。
以上より、カーボンナノホーン集合体をアーク放電で合成する際に、チャンバー内に酸素が存在することにより、予備加熱の効果に加えて、さらにすす状物質の収量およびカーボンナノホーンの純度を向上させることできると考えられる。
なお、以上においては、アーク放電法によりカーボンナノホーン集合体を製造した場合について説明をしたが、CO2レーザーを用いたレーザーアブレーション法においても、グラファイトターゲットを予め加熱することにより、すす状物質およびカーボンナノホーンの収量が増加した。また、蒸発炭素密度が低いほど、カーボンナノホーンが生成しにくく、アモルファス炭素が生成しやすかった。
アーク放電法により得られるカーボンナノホーン集合体の平均粒径は、前述のように50nm程度であった。これに対し、レーザーアブレーション法により得られるカーボンナノホーン集合体の平均粒径は、100nm程度であって、アーク放電法により作製したカーボンナノホーン集合体よりも大きかった。また、予備加熱を行い、酸素が存在する系で作製した場合、いずれの方法を用いた方法においても、カーボンナノホーン集合体のばらつきは小さかった。
また、レーザーアブレーション法により得られるカーボンナノホーン集合体は、主としてつぼみ状のカーボンナノホーン集合体であり、1個1個の粒子が独立して存在していたが、アーク放電法より得られるカーボンナノホーン集合体は、1個1個が独立して存在するのではなく、隣り合うカーボンナノホーン集合体と一部分を共有していた。これらの方法で得られたカーボンナノホーン集合体のTEM像を目視で評価したところ、アーク放電法で得られたカーボンナノホーン集合体は、ばらつきはあるものの、40〜90%程度が連結体として存在していた。一方、レーザーアブレーション法により得られたカーボンナノホーン集合体は連結体を形成していなかった。
アーク放電法により得られるカーボンナノホーン集合体は粒子径が小さく、粒子の充填率を向上させることができるため、比表面積が大きく、たとえば燃料電池の触媒担持体として好適に用いることができる。
本実施形態に係るナノカーボン製造装置の構成を模式的に示す断面図である。 本実施形態に係るナノカーボン製造装置の構成を模式的に示す断面図である。 本実施形態に係るナノカーボン製造装置の構成を模式的に示す斜視図である。 実施例に係るナノカーボンのTEM像を示す図である。 実施例に係るナノカーボンのTEM像を示す図である。 実施例に係るナノカーボンのTEM像を示す図である。 実施例に係るナノカーボンのTEM像を示す図である。 実施例に係るナノカーボンのTEM像を示す図である。 実施例に係るナノカーボンのラマンスペクトルを示す図である。 実施例に係るナノカーボンのTEM像を示す図である。
符号の説明
101 グラファイトロッド
103 レーザー光
107 製造チャンバー
109 プルーム
111 レーザー光源
115 回転装置
117 カーボンナノホーン集合体
119 ナノカーボン回収チャンバー
127 不活性ガス供給部
129 流量計
131 平凸レンズ
133 ウインドウ
141 搬送管
143 真空ポンプ
145 圧力計
301 ナノカーボン製造装置
303 製造チャンバー
305 電源
307 ランプ
309 陰極保持部
311 載置台
313 陽極保持部
315 位置調節部
317 ガス供給管
319 バルブ
321 排気管
323 陰極
325 陽極
327 窓
329 ナノカーボン製造装置
331 ナノカーボン製造装置

Claims (7)

  1. グラファイト材を保持する原料保持手段と、
    前記グラファイト材を予備加熱する予備加熱手段と、
    前記グラファイト材にエネルギーを供給し、前記グラファイト材から炭素蒸気を蒸発させるエネルギー付与手段と、
    を有し、
    前記グラファイト材は、グラファイトからなる電極対を構成し、
    前記原料保持手段は、前記電極対を保持する電極保持部を有し、
    前記エネルギー付与手段は、前記電極対に電流を供給する電源を有し、
    前記予備加熱手段は、前記電極対を構成する電極を互いに接触させた状態で通電させることにより、前記電極対が抵抗加熱されるように構成されたことを特徴とするカーボンナノホーンの製造装置。
  2. 請求項に記載のカーボンナノホーンの製造装置において、
    前記カーボンナノホーンを生成し、前記電極対が収容される生成室と、
    前記生成室に酸素を含むガスを供給する酸素供給部と、
    を備えることを特徴とするカーボンナノホーンの製造装置。
  3. グラファイト材を保持する原料保持手段と、
    前記グラファイト材を予備加熱する予備加熱手段と、
    前記グラファイト材にエネルギーを供給し、前記グラファイト材から炭素蒸気を蒸発させるエネルギー付与手段と、
    を有し、
    前記エネルギー付与手段は、前記グラファイト材に光を照射する光源を有することを特徴とするカーボンナノホーンの製造装置。
  4. グラファイト材を予備加熱するステップと、
    予備加熱された前記グラファイト材にエネルギーを供給し、前記グラファイト材から炭素蒸気を蒸発させてカーボンナノホーンを得るステップと、
    を含み、
    前記グラファイト材が第一の炭素電極および第二の炭素電極を構成し、
    前記第一の炭素電極と前記第二の炭素電極との間にアーク放電を発生させることにより、前記グラファイト材に前記エネルギーを供給し、
    グラファイト材を予備加熱する前記ステップは、前記第一の炭素電極と前記第二の炭素電極とを互いに接触させた状態で通電させるステップを含むことを特徴とするカーボンナノホーンの製造方法。
  5. 請求項に記載のカーボンナノホーンの製造方法において、酸素を含む雰囲気中で前記アーク放電を発生させることを特徴とするカーボンナノホーンの製造方法。
  6. グラファイト材を予備加熱するステップと、
    予備加熱された前記グラファイト材にエネルギーを供給し、前記グラファイト材から炭素蒸気を蒸発させてカーボンナノホーンを得るステップと、
    を含み、
    前記グラファイト材の表面に光を照射することにより、前記エネルギーを供給することを特徴とするカーボンナノホーンの製造方法。
  7. 請求項乃至いずれかに記載のカーボンナノホーンの製造方法において、前記グラファイト材を800℃以上1400℃以下の温度に予備加熱することを特徴とするカーボンナノホーンの製造方法。
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