JP3941618B2 - 運転時隔算出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の運転曲線作成技術に関し、運転曲線作成装置を用いた運行計画支援技術,運転整理支援技術,線形改修支援技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
運転時隔とは、相前後する列車が安定して走行できる最小間隔を駅における出発あるいは到着の時間間隔で表したものである。この運転時隔は、列車性能,路線条件(転てつ器による速度制限など)などから作成された先行・後続列車(折返しのある場合は、先行列車が後続列車の対向列車であることもある)の運転曲線と、駅構内情報と先行・後続列車の進行進路から求められる後続列車の進路の開通タイミングで決まる。
【0003】
従来、遅れている先行列車や対向列車の運転状態を示す情報から、計画通りの運転では保安装置により駅間停止や速度の大幅な低下による時間のロスを招いてしまう列車の運転制御において、未開通進路の開通を予測して運転制御し、時間のロスを減少させるシステムが、特開2001−158356号公報にある。
【0004】
また、計画された発着時間通りに、先行列車による速度制限にかからないように駅中間を走行する運転曲線を作成する方法が、特開平8−156794号公報にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
運行計画設計や運転整理,線形設計や線形改良には、運転曲線を用いた運転時隔の計算が必要である。
【0006】
駅構内が複雑な線形の場合、未開通進路が開通となるための条件が複数存在することがあるなど、未開通進路が開通となるタイミングを特定することが難しい。
【0007】
特に、折返し駅は、運行計画設計や運転整理においてボトルネックになりやすく、複雑な線形に対応でき、対向列車も考慮に入れた運転時隔計算は特に望まれる。
【0008】
本発明の目的は駅構内が複雑な線形でも自動的に運転時隔を出力することができる運転時隔算出装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも、駅構内情報入力装置から入力されるデータと列車情報入力装置から入力されるデータと先行列車の列車識別番号と後続列車の列車識別番号を用いて、先行列車が着点に着点目標速度で到達してから後続列車が進路完了するまでの最短時間である運転時隔を算出する基本運転時隔算出装置を有する構成とする。
【0010】
また、少なくとも、先行列車の運転曲線と後続列車の運転曲線を用いて、先行列車が進路完了してから後続列車が進路完了するまでの最短時間である運転時隔を算出する基本運転時隔算出装置を有する構成とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例は、基本運転時隔算出装置1,計画進路完了時間算出装置2,最密折返しパターン導出装置3,駅構内情報入力装置4,列車情報入力装置5,列車順序情報入力装置6,折返列車情報入力装置7とを備えた構成である。
【0012】
本発明の実施例を装置ごとに説明する。図1に基本運転時隔算出装置、図2に計画進路完了時間算出装置、図3に最密折返しパターン導出装置の構成を示す。
【0013】
基本運転時隔算出装置1は、運転曲線作成部11,後続列車の進路開通タイミング算出部12,運転時隔算出部13から構成され、駅構内情報入力装置4から入力されるデータ,列車情報入力装置5から入力されるデータ,先行列車の列車識別番号,後続列車の列車識別番号から、先行列車と後続列車の間の運転時隔
14を算出する。なお、基本運転時隔算出装置1は、図15に示す基本運転時隔算出装置B15ように、先行列車の運転曲線93と後続列車の運転曲線94から先行列車と後続列車の間の運転時隔14を算出する構成にしてもよい。この基本運転時隔算出装置B15は、後続列車の進路開通タイミング算出部12,運転時隔算出部13から構成される。
【0014】
計画進路完了時間算出装置2は、前記基本運転時隔算出装置1と進路完了時刻算出部21から構成され、駅構内情報入力装置4から入力されるデータ,列車情報入力装置5から入力されるデータ,列車順序情報入力装置6から入力されるデータから計画された最初の列車の進路完了時から最後の列車の進路完了時までの時間22を算出する。
【0015】
最密折返しパターン導出装置3は、列車順序作成部31,前記計画進路完了時間算出装置2,周期計算部32,最密折返しパターン算出部33から構成され、折返列車情報入力装置7から入力されるデータから最密折返しパターン34を導出し、最密折返しパターンの一周期時間35を算出する。
【0016】
なお、運転時隔とは、対象とする二列車が、保安装置の許容する最も短い間隔で走行した場合の進路完了時刻の差と定義する。進路完了とは、進路の着点に列車が着点目標速度で到達したこと、進路開始とは、進路の発点に列車が発点初期速度で進行し始めたことと定義する。
【0017】
本発明の実施例を説明する際に用いる、サンプル駅の配線略図の説明を図4に示す。
【0018】
図4の配線略図が示すサンプル駅は、番線数が3の折返し駅である。横軸はX座標、縦軸はY座標を示し、数字はともにメートルスケールである。()は軌道回路の名称、○は転てつ器の名称、信号機付近の1Lなどは信号機が現示する進路名称を示す。ホーム上の「1番線」などは番線名称を示す。
【0019】
ここで、図4の配線略図と図5,図6に示すデータベースの内容を例にとって各情報内のデータベースの説明を行う。
【0020】
図5に駅構内情報入力装置4から入力されるデータの内容を示す。駅構内情報入力装置4から入力されるデータは、駅構内の全軌道回路に関して、軌道回路識別番号・軌道回路名称・軌道回路の両端の座標を保持する軌道回路位置・制限速度の組を記憶する軌道回路データベース41と、駅構内の全転てつ器に関して、転てつ器識別番号・転てつ器名称・転てつ器がある軌道回路識別番号・定位の場合の制限速度・反位の場合の制限速度・転換時間の組を記憶する転てつ器データベース42と、番線識別番号・番線名称・出発する列車識別番号別の停車時間の組を記憶する番線データベース43と、駅構内の全進路に関して、進路識別番号・進路名称・発点座標・着点座標・通行する軌道回路識別番号・通行する転てつ器識別番号と通行する時の定位,反位の向き・使用する番線識別番号の組を記憶する進路データベース44と、駅から出発,駅に到着する列車が走行する駅構外の全線路に関して、線路の保安設備が許容する最短間隔を記憶する発着間隔データベース45を保持する。
【0021】
本発明の実施例では、軌道回路データベース41の軌道回路識別番号1に軌道回路1Tのデータを格納する。この時、格納されるデータは、軌道回路識別番号の1,軌道回路名称の1T,軌道回路位置として左端座標(0,15),右端座標(220,15),制限速度25km/hである。
【0022】
転てつ器データベース42の転てつ器識別番号1に転てつ器▲1▼のデータを格納する。この時、格納されるデータは、転てつ器識別番号の1,転てつ器名称の▲1▼,転てつ器がある軌道回路識別番号として軌道回路3Tの識別番号である3、定位の場合の制限速度45km/h,反位の場合の制限速度45km/h,転換時間
10sである。
【0023】
番線データベース43の番線識別番号1に1番線のデータを格納する。この時、格納されるデータは、番線識別番号の1、番線名称である1番線、出発する列車識別番号別の停車時間として1番線から出発する列車識別番号3の列車の停車時間を組にしたデータである。
【0024】
進路データベース44の進路識別番号1に進路1Lのデータを格納する。この時、格納されるデータは、進路識別番号の1,進路名称の1L,発点座標(380,10),着点座標(0,15),通行する軌道回路識別番号として軌道回路8T,7T,3T,2T,1Tの識別番号である8,7,3,2,1、通行する転てつ器識別番号とその方向として転てつ器▲5▼反位・▲1▼反位を組にした(5,反),(1,反)、使用する番線識別番号として1番線の識別番号である1である。
【0025】
発着間隔データベース45に、図4の配線略図右方をA方向とし、列車がA方向に進行する際に走行する駅構外の線路の保安設備が許容する最短間隔のデータを格納する。この時、格納されるデータは、A方向,発,最短発間隔60秒である。
【0026】
図6に列車情報入力装置5から入力されるデータと列車順序情報入力装置6から入力されるデータと折返列車情報入力装置7から入力されるデータの内容を示す。列車情報入力装置5から入力されるデータは、運行される全列車に関して、列車識別番号・列車名称・最高速度・速度−加速度データ・速度−減速度データ・列車長・進行する進路識別番号・発点初期速度・着点目標速度の組を記憶する列車性能データベース51を保持する。
【0027】
本発明の実施例では、列車性能データベース51の列車識別番号1に列車900Mのデータを格納する。この時、格納されるデータは、例えば列車識別番号の1,列車名称の900M,最高速度120km/h,速度−加速度データとして速度0から最高速度まで速度に対応する加速度3.0km/h/s ,速度−減速度データとして速度0から最高速度まで速度に対応する減速度3.0km/h/s ,列車長160m,進行する進路識別番号として進路1Lの識別番号である1,発点初期速度60km/h,着点目標速度0km/hである。
【0028】
列車順序情報入力装置6から入力されるデータは、順番・列車識別番号の組を記憶する列車順序データベース61を保持する。
【0029】
本発明の実施例では、列車順序データベース61の順番1に列車900Mのデータを格納する。この時、格納されるデータは、順番の1、列車識別番号として列車900Mの識別番号である1である。
【0030】
折返列車情報入力装置7から入力されるデータは、番線識別番号・発着の区別・列車識別番号の組を記憶する折返列車データベース71を保持する。折返列車データベース71には、折返し駅に存在する番線の発着分のデータが記憶される。
【0031】
本発明の実施例では、折返列車データベース71に列車900Mが1番線に到着するというデータを格納する。この時、格納されるデータは、番線識別番号として1番線の識別番号である1,着,列車識別番号として900Mの識別番号である1である。
【0032】
次に、上記データを用いて基本運転時隔算出装置1の動作を説明する。前記基本運転時隔算出装置1は、運転曲線作成部11,後続列車の進路開通タイミング算出部12,運転時隔算出部13からなり、運転曲線を作成する運転曲線作成部11の動作から順に説明する。
【0033】
列車情報入力装置5から入力されるデータ内の列車性能データベース51から、先行列車の列車識別番号91を用いて、前記先行列車の最高速度513・速度−加速度データ514・速度−減速度データ515・列車長516・進行する進路識別番号517・発点初期速度518・着点目標速度519を取得する。
【0034】
さらに、駅構内情報入力装置4から入力されるデータ内の進路データベース
44から、前記工程で取得した先行列車が進行する進路の進路識別番号を用いて、先行列車の進行する進路の発点座標443・着点座標444・通行する軌道回路識別番号445・通行する転てつ器識別番号と定位反位の方向446・使用する番線識別番号447を取得する。
【0035】
その上さらに、駅構内情報入力装置4から入力されるデータ内の軌道回路データベース41から、前記工程で取得した先行列車が通行する軌道回路識別番号を用いて、先行列車の通行する軌道回路の軌道回路位置413・制限速度414を取得、駅構内情報入力装置4から入力されるデータ内の転てつ器データベース
42から、前記工程で取得した先行列車が通行する転てつ器識別番号と定位反位の方向を用いて、先行列車の通行する転てつ器の転てつ器がある軌道回路識別番号423,転換時間426,取得した情報が定位なら定位の場合の制限速度424、反位なら反位の場合の制限速度425を取得する。
【0036】
前記工程で取得したデータを元に、発点から着点までの距離を算出し、さらに、位置ごとの制限速度を整理する。列車の最高速度以下でかつ、着点目標速度と発点初期速度と、通行する軌道回路の制限速度,通行する転てつ器の制限速度、を満たすように、速度−加速度データ・速度−減速度データを用いて、可能な限り短時間で進路完了できる場合の運転曲線を作成する。
【0037】
運転曲線の作成に関して、列車の運転手法によって運転曲線の描き方を変えなければならないが、本実施例では、以下のように運転曲線を作成するとした。ちなみに、実際の運転曲線を元にデータを作成してもよいし、走行抵抗や運転士による操作のブレなどを考慮してデータを作成してもよい。前後の位置で制限速度が異なる地点において、制限速度の高い方向へ、制限速度の高い方向が進行と同方向なら速度−加速度データを用いて、進行と逆方向なら速度−減速度データを用いて、単位時間ごとに位置と速度を計算し運転曲線を描く。また、発点・着点も抽出し、発点からは初期速度を用いて進行方向へ単位時間ごとに位置と速度を計算し運転曲線を描き、着点からは目標速度を用いて進行方向の逆方向へ単位時間ごとに位置と速度を計算し運転曲線を描く。制限速度に到達した場合には、その速度で維持するとし、直線を描く。位置ごとに最も速度が低く描かれた曲線をつなげて運転曲線を完成する。
【0038】
図7に列車900Mの運転曲線の例を示す。前後の位置で制限速度が異なる地点、例えば0m地点,260m地点,320m地点,380m地点を抽出し、0m地点,260m地点,320m地点から進行方向の逆方向へ速度−減速度データを用いて、単位時間ごとに位置と速度を計算し運転曲線を描く。380m地点からは進行方向と同方向へ速度−加速度データを用いて、単位時間ごとに位置と速度を計算し運転曲線を描く。ちなみに、本例では、10Tの制限速度のために直線になる。
【0039】
後続列車の運転曲線も、後続列車の列車識別番号92を用いて同様に作成する。
【0040】
次に、運転曲線作成部11で作成した運転曲線を用いて、後続列車の進路開通タイミングを算出する、後続列車の進路開通タイミング算出部12の動作を説明する。
【0041】
先行列車の通行する全軌道回路の内、後続列車の通行する軌道回路と重複する軌道回路について、先行列車の最後尾が前記軌道回路を抜けた時点を算出する。また、先行列車の通行する全転てつ器の内、後続列車の通行する転てつ器と重複している転てつ器について、先行列車の最後尾が前記転てつ器のある軌道回路を抜けた時点、さらに、転換の必要のある場合(先行列車と後続列車の進行する進路で、転てつ器の通行する方向が異なる場合)は転換時間を足した時点を算出する。以上算出した時点の内、最も遅い時点が後続列車の進路開通タイミングであり、後続列車の進路開通タイミング算出部12はこの時点を出力する。なお、先行列車が軌道回路もしくは転てつ器を通過した事象が、後続列車の未開通進路が開通となるトリガである。
【0042】
なお、先行列車と後続列車がともに同方向への出発、もしくは同方向からの到着の場合、発着間隔データベース45の該当する方向451・発着区別452の最短間隔453に格納されている時間を取得し、出発の場合は先行列車と後続列車の進路完了時刻の差が最短間隔未満である時、到着の場合は先行列車と後続列車の進路開始時刻の差が最短間隔未満である時、最短間隔を満たすように後続列車の進路開通タイミングを遅らせる。
【0043】
図4の駅において、進路1Lを進行する(1番線に入線する)列車を先行列車、進路2Rを進行する(2番線から出線する)列車を後続列車とした場合の後続列車の進路開通タイミング算出部12の動作を説明する。図8に示すように、先行列車の通行する全軌道回路の内、後続列車の通行する軌道回路と重複する軌道回路は、3T(軌道回路識別番号3),7T(軌道回路識別番号7)である。先行列車の最後尾が前記軌道回路を抜けた時点は、運転曲線作成部11で作成した先行列車の運転曲線から、それぞれ、先行列車が発点に発点初期速度で存在した状態から43.61秒,39.29秒と算出される。また、先行列車の通行する全転てつ器の内、後続列車の通行する転てつ器と重複している転てつ器はないので、転てつ器に関して処理はない。前記二数値の内、大きい43.61 秒を進路開通タイミングとし、出力する。なお、先行列車と後続列車がともに同方向への出発、もしくは同方向からの到着の場合ではないので、後続列車の進路開通タイミングを発着最短間隔によって遅らせることはしない。
【0044】
次に、運転曲線作成部11で作成した運転曲線と後続列車の進路開通タイミング算出部12で作成された後続列車の進路開通タイミングを用いて、先行列車と後続列車の間の運転時隔を算出する、運転時隔算出部13の動作を説明する。
【0045】
運転曲線作成部11で作成した先行列車の運転曲線から、先行列車が発点に発点初期速度で存在した状態を時刻0とし、先行列車の進路完了時刻を算出する。また、後続列車の進路開通タイミングに、後続列車は発点に発点初期速度で存在するとし、後続列車の運転曲線を用いて、後続列車の進路完了時刻を算出する。算出した先行列車の進路完了時刻と後続列車の進路完了時刻の差が先行列車と後続列車の間の運転時隔14であり、運転時隔算出部13はこの差を出力する。
【0046】
図4の駅において、進路1Lを進行する列車を先行列車、進路2Rを進行する列車を後続列車とした場合の運転時隔算出部13の動作を説明する。図9に示すように、先行列車が発点に発点初期速度で存在した状態を時刻0とすると、運転曲線作成部11で作成した先行列車の運転曲線から先行列車の進路完了時刻が
52.18 秒、後続列車の進路開通タイミング算出部12で作成した後続列車の進路開通タイミングが43.61 秒となる。さらに43.61 秒時点で後続列車は発点に発点初期速度で存在すると後続列車の運転曲線から後続列車の進路完了時刻が95.79秒(43.61秒+52.18秒)となる。したがって、先行列車と後続列車の間の運転時隔は43.61秒(95.79秒−52.18秒)となり、これを出力する。
【0047】
以上が基本運転時隔算出装置1の動作の説明である。
【0048】
次に、列車順序情報入力装置6から入力されるデータと基本運転時隔算出装置1を用いて計画された最初の列車の進路完了時から最後の列車の進路完了時までの最短時間を算出する、計画進路完了時間算出装置2の動作を説明する。まず、1番目の列車の進路完了時刻を0とする。
【0049】
進路完了時刻算出部21は、列車順序情報入力装置6から入力されるデータの列車順序データベース61に格納されている全ての列車の進路完了時刻を算出する。進路完了時刻算出部21が2番目の列車の進路完了時刻を算出する方法を説明する。列車順序情報入力装置6から入力されるデータ内の列車順序データベース61から、1番目の列車識別番号601を取得し、これを先行列車の列車識別番号91とする。また、2番目の列車識別番号603も取得し、これを後続列車の列車識別番号92とする。前記先行列車の列車識別番号,前記後続列車の列車識別番号,駅構内情報入力装置4から入力されるデータ,列車情報入力装置5から入力されるデータから、基本運転時隔算出装置1を用いて運転時隔を算出する。1番目の列車の進路完了時刻(0)602に算出した運転時隔を合算したものが2番目の列車の進路完了時刻604である。
【0050】
次に、進路完了時刻算出部21が3番目の列車の進路完了時刻を算出する方法を説明する。列車順序情報入力装置6から入力されるデータ内の列車順序データベース61から、1番目の列車識別番号601を取得し、これを先行列車の列車識別番号91とする。また、3番目の列車識別番号605も取得し、これを後続列車の列車識別番号92とする。前記先行列車の列車識別番号,前記後続列車の列車識別番号,駅構内情報入力装置4から入力されるデータ,列車情報入力装置5から入力されるデータから、基本運転時隔算出装置1を用いて運転時隔を算出し、1番の列車の進路完了時刻(0)602に合算した時刻を算出する。同様に、2番目の列車識別番号を先行列車の列車識別番号とし、3番目の列車識別番号を後続列車の列車識別番号とし、基本運転時隔算出装置を用いて運転時隔を算出し、2番の列車の進路完了時刻に合算した時刻を算出する。算出した時刻の内、最も遅い時刻が3番目の列車の進路完了時刻606となる。
【0051】
なお、列車が出発する進路の場合(列車の発点初期速度が0の場合)は、同番線へ入線した直前の列車の進路完了時刻から番線データベース43の列車識別番号別の停車時間433に格納されている時間を経過した後、進路開始した場合の進路完了時刻も算出し、最も遅い時刻を3番目の列車の進路完了時刻606とする。
【0052】
4番目の列車以降も同様に、進路完了時刻算出部21は、若い順番の全列車との運転時隔を求め、最も遅い時刻を進路完了時刻とする。これは、運転時刻は必ずしも直前の列車だけに影響を受けるわけではないからである。
【0053】
計画された最後の列車の進路完了時刻609が算出された後、計画された最初の列車の進路完了時刻602から最後の列車の進路完了時刻609までの時間を算出し、計画された最初の列車の進路完了時から最後の列車の進路完了時までの時間22として出力する。
【0054】
図4の駅において、列車900Mが進路1Lを進行、次に列車901Mが進路2Rを進行、最後に列車902Mが進路1Rを進行する場合の計画進路完了時間算出装置2の動作を説明する。図10に結果を示す。1番目の列車である900Mの進路完了時刻を0秒とする。901Mは出発進路であるが、同番線へ入線した直前の列車はこの例では考慮外であるので、同番線へ入線した直前の列車の進路完了時刻は考慮しない。基本運転時隔算出装置1から900Mと901Mの間の運転時隔が43.61 秒と算出され、進路完了時刻算出部21は、43.61 秒を2番目の列車である901Mの進路完了時刻とする。次に、最後の列車である902Mは1番線から出発するので同番線へ入線した直前の列車の進路完了時刻から番線データベース43の列車識別番号別の停車時間433に格納されている番線識別番号1における列車識別番号3の停車時間である60秒を経過した後、進路開始した場合の進路完了時刻が112.18 秒と算出される。また、基本運転時隔算出装置1から901Mと902Mの間の運転時隔が57.83 秒と算出される。1番目の列車である900Mの進路完了時刻を0秒とすると、前者は112.18秒、後者は101.44(43.61+57.83)秒となり、最も遅い時刻である112.18 秒が最後の列車の進路完了時刻と算出され、これを計画された最初の列車の進路完了時から最後の列車の進路完了時までの時間22として出力する。
【0055】
以上が計画進路完了時間算出装置2の動作の説明である。
【0056】
最後に、折返列車情報入力装置7から入力されるデータと、前記計画進路完了時間算出装置2を用いて、折返し駅の全ての番線を均等かつ周期的に使用した場合の、最密な折返しパターンと前記折返しパターンが必要とする時間を算出する最密折返しパターン導出装置3の動作を説明する。
【0057】
まず、列車順序情報作成部31では、折返列車情報入力装置7から入力されるデータ内の折返列車データベース71から番線発着別の列車識別番号713を取得し、このデータを用いて列車順序情報を新たに作成する。後の計画進路完了時間算出装置2における重複計算を避けるため、番線識別番号1の着の列車識別番号を順番1の列車識別番号とし、残りの順番には折返列車データベース71に格納されている残りの列車識別番号を対応させて列車順序データベースに格納する。これを全順序パターンで行う。つまり列車順序データベースは、「番線数×2(発着)−1(順番1固定)」の順列組み合わせの数、作成される。さらに、作成した列車順序データベースの順番を3倍+1に増やし、増やした順番には格納されていた列車識別番号を順番どおり2回繰り返し、最後に順番1の列車識別番号を格納したもの(以後、3倍+1の列車順序データベースと呼ぶ。)、順番を2倍+1に増やし、増やした順番には格納されていた列車識別番号を順番どおり1回繰り返し、最後に順番1の列車識別番号を格納したもの(以後、2倍+1の列車順序データベースと呼ぶ。)を作成する。列車順序情報作成部31は上記のように作成した列車順序データベースを出力する。
【0058】
出力された3倍+1の列車順序データベース,2倍+1の列車順序データベースと計画進路完了時間算出装置2を用いて、1番目の列車の進路完了時からそれぞれの列車順序データベースの最後の列車の進路完了時までの時間を算出する。
【0059】
周期計算部32では、3倍+1の列車順序データベースで算出した1番目の列車の進路完了時から最後の列車の進路完了時までの時間から、2倍+1の列車順序データベースで算出した1番目の列車の進路完了時から最後の列車の進路完了時までの時間を引き、3周期目の1番目の列車の進路完了時から4周期目の1番目の列車の進路完了時までの時間を算出し、これを計画されたパターンの一周期時間321として出力する。
【0060】
これは、前記計画進路完了時間算出装置2では、1番目より前の列車の通行を考慮せず、1番目以降の列車の通行に影響しないとしたが、最密折返しパターン導出するためには、パターンを繰り返した場合を計算し、一周期にかかる時間を出力することが好ましいからである。よって、最密折返しパターン導出装置3は、1周期目は、前周期の列車の進路完了時刻を全て0として計画進路完了時間算出装置2を用いて計算し、2周期目から前周期の計算結果の影響を加味して進路完了時刻を求め、3周期目の1番目の列車の進路完了時から4周期目の1番目の列車の進路完了時までの時間を計画されたパターンの一周期時間として出力する。本実施例では、3周期目の1番目の列車の進路完了時から4周期目の1番目の列車の進路完了時までの時間を計画されたパターンの一周期時間としたが、これ以上の周期で計算してもよい。
【0061】
最密折返しパターン導出部33では、計算した全パターンの内、最も短い時間のパターン、およびその時間を、折返し駅の全ての番線を均等かつ周期的に使用した場合の最密折返しパターン34、および最密折返しパターンの一周期時間
35として出力する。
【0062】
もちろん、折返しパターン以外の場合でも、計画したパターンを格納した列車順序データと前記計画進路完了時間算出装置2と周期計算部32を用いて、計画されたパターンの一周期時間を算出することができる。
【0063】
図4の駅において、最密折返しパターン導出装置3の動作を説明する。用いる折返列車データベース1101を図11に示す。番線数が3の場合、データは6組(1番線着,1番線発,2番線着,2番線発,3番線着,3番線発)となる。列車順序情報作成部31は、ひとつ目の列車順序データベースを作成する。折返列車データベースから番線識別番号1の着の列車識別番号1を順番1の列車識別番号とし、残りの順番に列車識別番号順に2,3,4,5,6と格納した図12に示す列車順序データベース1201を作成する。これを元に、3倍+1の列車順序データベース1203,2倍+1の列車順序データベース1202を作成する。さらに、全順序パターン作成する。つまり、列車順序データベース,3倍+1の列車順序データベース,2倍+1の列車順序データベースともに、5(=6−1)の順列組み合わせの数である120個作成される。
【0064】
作成されたひとつ目の3倍+1の列車順序データベース1203,2倍+1の列車順序データベース1202と計画進路完了時間算出装置2を用いて各々の1番目の列車の進路完了時から最後の列車の進路完了時までの時間を算出する。図13に示すとおり、3倍+1の列車順序データベースの1番目の列車の進路完了時刻は0秒、最後(19番目)の列車の進路完了時刻は919.92 秒で、2倍+1の列車順序データベースの1番目の列車の進路完了時刻は0秒、最後(13番目)の列車の進路完了時刻は632.57 秒である。周期計算部32では、上記算出結果を引き、3周期目の1番目の列車の進路完了時から4周期目の1番目の列車の進路完了時までの時間、つまり、計画されたパターンの一周期時間321を、287.35(=919.92−632.57)と算出する。これも全パターンで行う。
【0065】
最密折返しパターン導出部33では、上記算出結果のうちもっとも短い時間のパターン、およびその時間を出力する。図14に出力結果を示す。折返し駅の全ての番線を均等かつ周期的に使用した場合の最密折返しパターンは2通りあり、列車識別番号順で(1,2,4,5,6,3)と(1,5,6,2,4,3)のパターンで最密折返しパターンの一周期時間は263.32秒である。
【0066】
以上が最密折返しパターン導出装置3の動作の説明である。
【0067】
また、算出されたパターンと、そのパターンが必要とする時間と各列車の運転曲線に基づいて、列車の挙動を配線略図上にアニメーション表示するアニメーション結果出力装置、さらには、その列車の挙動をダイヤグラム表示するダイヤグラム結果出力装置を備えても良い。
【0068】
以上本実施例によれば、駅構内情報,列車情報から先行列車と後続列車の間の運転時隔が、作成した運転曲線に基づき正確かつ自動的に出力されるので、概算した運転時隔を用いて運行計画を設計していた従来に比べ、運行計画を高密度に設計することが可能となる。さらに、運行が乱れた後の運転整理時にも即座に運転時隔を出力できるので、従来より高度な運転整理が可能となる。
【0069】
また、列車順序情報を加えることにより、計画された最初の列車の進路完了時から最後の列車の進路完了時まで時間を求めることができ、運行計画設計・運転整理時では設計したダイヤの可不可判断,線形設計・線形改良では想定したダイヤの可不可判断が容易になる。
【0070】
さらに、折返列車情報を加えることにより、最密な折返しパターンと必要な時間を求めることができ、運行計画設計・運転整理時では最密・最適ダイヤの設計,線形設計・線形改良では、線形評価が自動的に行える。
【0071】
【発明の効果】
本発明は、駅構内が複雑な線形でも自動的に運転時隔を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本運転時隔算出装置の一実施例を示す図である。
【図2】本発明の計画進路完了時間算出装置の一実施例を示す図である。
【図3】本発明の最密折返しパターン導出装置の一実施例を示す図である。
【図4】本発明の実施例で使用した駅の一配線図である。
【図5】本発明の駅構内情報入力装置が入力するデータ構造を示す図である。
【図6】本発明の列車情報入力装置・列車順序情報入力装置・折返列車情報入力装置が入力するデータ構造を示す図である。
【図7】本発明の実施例により作成された進路1Lを進行する列車900Mの運転曲線を示す図である。
【図8】本発明の後続列車の進路開通タイミング算出部で作成された中間データの一構成例を示す図である。
【図9】本発明の運転時隔算出部で作成されたデータの一構成例を示す図である。
【図10】本発明の計画進路完了時間算出装置で作成されたデータの一構成例を示す図である。
【図11】本発明の折返列車データベースの一構成例を示す図である。
【図12】本発明の列車順序情報作成部で作成された列車順序データベースの一構成例を示す図である。
【図13】図12の列車順序データベースを入力とした計画進路完了時間算出装置の出力結果を示す図である。
【図14】本発明の最密折返しパターン導出装置で導出した最密折返しパターンと最密折返しパターンの一周期時間を示す図である。
【図15】本発明の基本運転時隔算出装置Bの一構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…基本運転時隔算出装置、2…計画進路完了時間算出装置、3…細密折返しパターン導出装置、4…駅構内情報入力装置、5…列車情報入力装置、6…列車順序情報入力装置、7…折返列車情報入力装置、11…運転曲線作成部、12…後続列車の進路開通タイミング算出部、13…運転時隔算出部、14…先行列車と後続列車の間の運転時隔。

Claims (12)

  1. 少なくとも、駅構内情報入力装置から入力されるデータと列車情報入力装置から入力されるデータと先行列車の列車識別番号と後続列車の列車識別番号を用いて、先行列車が着点に着点目標速度で到達してから後続列車が進路完了するまでの最短時間である運転時隔を算出する基本運転時隔算出装置と
    少なくとも、前記駅構内情報入力装置から入力されるデータと前記列車情報入力装置から入力されるデータと列車順序情報入力装置から入力されるデータを用いて、計画された最初の列車が進路完了してから最終の列車が進路完了するまでの最短時間を算出する計画進路完了時間算出装置と、を有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  2. 請求項1において、
    前記基本運転時隔算出装置は、前記駅構内情報入力装置から入力されるデータと前記列車情報入力装置から入力されるデータと前記先行列車の列車識別番号と前記後続列車の列車識別番号から先行列車と後続列車の運転曲線を作成する運転曲線作成部と、前記運転曲線作成部において作成された運転曲線に基づき後続列車の進路開通タイミングを算出する後続列車の進路開通タイミング算出部と、前記後続列車の進路開通タイミング算出部において算出された後続列車の進路開通タイミングに基づき先行列車が進路完了してから後続列車が進路完了するまでの最短時間である運転時隔を算出する運転時隔算出部とを有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  3. 請求項1において、
    駅構内の軌道回路や転てつ器や番線や進路、および駅構外の保安設備が許容する列車間隔に関するデータを基本運転時隔算出装置へ入力する駅構内情報入力装置は、軌道回路の位置及び制限速度に関するデータを持つ軌道回路データベースと、転てつ器の位置,制限速度,転換時間に関するデータを持つ転てつ器データベースと、番線における列車の停車時間に関するデータを持つ番線データベースと、進路の発点,着点,通行する軌道回路,通行する転てつ器と転てつ器の方向,使用する番線に関するデータを持つ進路データベースと、駅構外における最短列車間隔に関するデータを持つ発着間隔データベースとを有し、列車の性能に関するデータを基本運転時隔算出装置へ入力する列車情報入力装置は、列車の最高速度,加速度,減速度,列車長,進路,発点初期速度,着点目標速度に関するデータを持つ列車性能データベースを有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  4. 請求項において、
    前記計画進路完了時間算出装置は、前記基本運転時隔算出装置と、前記基本運転時隔算出装置において算出された運転時隔から計画された列車の進路完了時刻を算出する進路完了時刻算出部を有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  5. 請求項において、
    列車の順序に関するデータを計画進路完了時間算出装置に入力する列車順序情報入力装置は、計画された列車順序に関するデータを持つ列車順序データベースを有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  6. 請求項乃至請求項のいずれか1項において、
    少なくとも駅構内情報入力装置から入力されるデータと列車情報入力装置から入力されるデータと折返列車情報入力装置から入力されるデータを用いて、折返し駅の全ての番線を均等かつ周期的に使用した場合の最密な折返しパターンと前記折返しパターンが必要とする時間を算出する最密折返しパターン導出装置を有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  7. 請求項において、
    最密折返しパターン導出装置は、折返列車情報入力装置から入力されるデータを用いて全順序パターンの列車順序情報を作成する列車順序情報作成部と、前記計画進路完了時間算出装置と、前期計画進路完了時間算出装置において算出された計画された最初の列車が進路完了してから最終の列車が進路完了するまでの最短時間から計画されたパターンの一周期時間を算出する周期計算部と、全パターンの一周期時間から最密なパターンと前記パターンが必要とする時間を導出する最密折返しパターン導出部を有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  8. 請求項乃至請求項のいずれか1項において、
    少なくとも駅構内情報入力装置から入力されるデータと列車情報入力装置から入力されるデータと列車順序情報入力装置から入力されるデータを用いて、計画されたパターンで列車を周期的に進行させる場合の前記パターンが必要とする時間を算出するパターン時間算出装置を有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  9. 請求項において、
    前記パターン時間算出装置は、前記計画進路完了時間算出装置と、前期計画進路完了時間算出装置において算出された計画された最初の列車が進路完了してから最終の列車が進路完了するまでの最短時間から計画されたパターンの一周期時間を算出する周期計算部を有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  10. 請求項または請求項において、
    算出されたパターンと前記パターンが必要とする時間と各列車の運転曲線に基づいて、列車の挙動を配線略図上にアニメーション表示するアニメーション結果出力装置を有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  11. 請求項または請求項において、
    算出されたパターンと前記パターンが必要とする時間と各列車の運転曲線に基づいて、列車の挙動をダイヤグラム表示するダイヤグラム結果出力装置を有することを特徴とする運転時隔算出装置。
  12. 請求項2において、
    後続列車の進路開通タイミング算出部は、先行列車の通行する全軌道回路のうち後続列車の通行する軌道回路と重複する軌道回路を先行列車の最後尾が前記軌道回路を抜けた時点と、先行列車の通行する全転てつ器のうち後続列車の通行する転てつ器と重複している転てつ器のある軌道回路を先行列車の最後尾が抜けた時点(転換の必要のある場合は転換時間を足した時点)のうち、最も遅い時点を後続列車の進路開通タイミングとして出力する運転時隔算出装置。
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