JP3941588B2 - アトリウムの防災システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部にアトリウムを備えた多層建築物に用いられるアトリウムの防災システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、多層建築物においては、開放感溢れる内部空間を演出するために、アトリウム(吹抜け)を設けることが多くなってきている。
この種の多層建築物に対応した従来の防災システムとしては、例えば特開2001−104499号公報に開示される内部竪穴空間加圧排煙システムが知られている。この排煙システムにおいては、火災発生時に、火災の発生した火災層の排気を行うと同時に、すべての階層に加圧空気を供給して、火災層を減圧状態、非火災層を加圧状態とすることにより、火災層で発生した煙や熱がアトリウムを通じて非火災層に伝わるのを防止するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の排煙システムにおいては、各層の居室空間とアトリウムとの間に仕切りがなく互いに連続した空間となっているので、非火災層を加圧状態とするにあたって、非火災層以外の全空間を加圧状態とする必要があり、このため、加圧空気の供給設備に過大な負荷がかかるという問題点があった。
【0004】
これに対して、各層の居室空間とアトリウムとの間にガラススクリーン等の仕切りを設けて両空間を遮断することにより、火災層から非火災層への煙や熱の伝搬を防止するようにした防災システムも提案されている。ところが、このような防災システムにおいては、各層の居室空間とアトリウムとを区画したことにより、加圧空気の供給設備にかかる負荷を軽減することができるものの、アトリウム本来の開放感が著しく損なわれてしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、火災層で発生した煙や熱がアトリウムを介して非火災層に侵入するのを防止することができ、しかもアトリウムの開放感を損なうことのないアトリウムの防災システムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、内部にアトリウムを備えた多層建築物に用いられる防災システムであって、上記多層建築物の各層の居室空間と上記アトリウムとの境界面にそれぞれ開口部を設けて互いに連続した空間とし、上記各層の居室空間に火災発生を検知するための火災検知器をそれぞれ設けるとともに、これら火災検知器の何れかによって火災発生が検知された場合に各層の上記開口部を閉鎖する閉鎖手段と、火災層における排気を行う排気設備と、非火災層に加圧空気を供給する給気設備とを設け、さらに、上記各層の居室空間に、上記アトリウムに沿ってそれぞれ腰壁を立設し、各腰壁の内部に、水圧によって昇降しその上昇位置で上記開口部を閉鎖する区画パネルを収納し、当該区画パネルによって上記閉鎖手段を構成したことを特徴とするものである。
ここで、上記各層の居室空間には、居住、執務、娯楽等の目的のために継続的に用いられる狭義の居室空間が含まれるのみならず、廊下、附室、階段、エレベータホールなど、人が継続的に使用することとなる、アトリウム以外の空間がすべて含まれるものとする。
【0007】
この請求項1に記載の本発明に係るアトリウムの防災システムによれば、火災検知器によって火災発生が検知された場合に、排気設備により火災層の排気が行われるとともに、給気設備により非火災層に加圧空気が供給され、これにより、火災層が減圧状態、非火災層が加圧状態とされるので、火災層で発生した煙や熱がアトリウムを介して非火災層に侵入するのを防止することができる。しかも、その際に、各層の開口部が閉鎖手段により閉鎖されることとなるので、非火災層を容易に加圧状態とすることができ、給気設備にかかる負荷を大幅に軽減することができる。
また、平常時においては、各層の開口部が開放された状態となるので、アトリウムの開放感が損なわれる心配もない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、内部にアトリウムを備えた多層建築物に用いられる防災システムであって、上記多層建築物の各層の居室空間と上記アトリウムとの境界面にそれぞれ開口部を設けて互いに連続した空間とし、上記アトリウムに火災発生を検知するための火災検知器を設けるとともに、この火災検知器によって火災発生が検知された場合において、各層の上記開口部を閉鎖する閉鎖手段と、各層の居室空間に加圧空気を供給する給気設備と、上記アトリウムにおける排気を行うアトリウム排気設備とを設け、さらに、上記各層の居室空間に、上記アトリウムに沿ってそれぞれ腰壁を立設し、各腰壁の内部に、水圧によって昇降しその上昇位置で上記開口部を閉鎖する区画パネルを収納し、当該区画パネルによって上記閉鎖手段を構成したことを特徴とするものである。
【0009】
この請求項2に記載の本発明に係るアトリウムの防災システムによれば、火災検知器によりアトリウムで火災発生が検知された場合に、アトリウム排気設備によりアトリウム内の排気が行われるとともに、給気設備により各層の居室空間に加圧空気が供給され、これにより、アトリウムが減圧状態、各層の居室空間が加圧状態とされるので、アトリウム内で発生した煙や熱が各層の居室空間に伝搬することを防止することができる。しかも、その際に、各層の開口部が閉鎖手段により閉鎖されることとなるので、各層の居室空間を容易に加圧状態とすることができ、給気設備にかかる負荷を大幅に軽減することができる。また、平常時においては、各層の開口部が開放された状態となるので、アトリウムの開放感が損なわれる心配もない。
【0010】
請求項6に記載の発明は、内部にアトリウムを備えた多層建築物に用いられる防災システムであって、上記多層建築物の各層の居室空間と上記アトリウムとの境界面にそれぞれ開口部を設けて互いに連続した空間とし、上記各層の居室空間に火災発生を検知するための火災検知器をそれぞれ設けて、これら火災検知器の何れかによって火災発生が検知された場合に、各層の上記開口部を閉鎖する閉鎖手段を設けるとともに、上記各層の居室空間に、上記アトリウムに沿ってそれぞれ腰壁を立設し、各腰壁の内部に、水圧によって昇降しその上昇位置で上記開口部を閉鎖する区画パネルを収納し、当該区画パネルによって上記閉鎖手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7に記載の発明は、内部にアトリウムを備えた多層建築物に用いられる防災システムであって、上記多層建築物の各層の居室空間と上記アトリウムとの境界面にそれぞれ開口部を設けて互いに連続した空間とし、上記アトリウムに火災発生を検知するための火災検知器を設けて、この火災検知器によって火災発生が検知された場合に、各層の上記開口部を閉鎖する閉鎖手段を設けるとともに、上記各層の居室空間に、上記アトリウムに沿ってそれぞれ腰壁を立設し、各腰壁の内部に、水圧によって昇降しその上昇位置で上記開口部を閉鎖する区画パネルを収納し、当該区画パネルによって上記閉鎖手段を構成したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項1,2,6,7の何れかに記載の発明によれば、火災発生時に各層の開口部を区画パネルで閉鎖するようにしたので、シャッタで開口部を閉鎖する場合と比べて、煙等の漏れが少なくなり、防煙性能を高めることができる。また、平常時には区画パネルが腰壁の内部に収納されるので、区画パネルによってアトリウム周囲の美観が損なわれる心配もない。
また、従来のシャッタの降下による区画形成と異なり、区画パネルの上昇により開口部を閉鎖するようにしたので、区画パネルの移動経路上に万が一障害物が存在していたとしても、その障害物を突き落とすことができ、区画パネルと壁面との間に障害物が挟まって隙間が生じることを防止することができる。
また、区画パネルを水圧によって昇降させるようにしたので、区画パネルの駆動装置として、水噴霧の給水設備(スプリンクラー)を利用することが可能となり、これによってコスト低減を図ることができる。また、区画パネルの昇降に用いられる水が腰壁内に供給されることとなるので、腰壁の耐火性能を高めることもできる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記アトリウム側から上記区画パネルに向けて水噴霧を行う水噴霧装置を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
この請求項3に記載の発明によれば、アトリウム側から区画パネルに向けて水噴霧が行われるので、区画パネルが熱で変形することを防止することができ、区画パネルの耐火性能を高めることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、上記開口部を閉鎖した状態で上記区画パネルを保持するパネル保持手段を設けたことを特徴とするものである。
ここで、パネル保持手段としては、例えば腰壁および区画パネルの一方に設けた凹部と、他方に設けた爪部との係合により、腰壁に対する区画パネルの移動を規制する形式のものを用いることが可能である。この場合、爪部を上記係合方向に付勢する付勢手段を設けることによって、爪部と凹部との係合状態を安定した状態で保持することができる。
【0015】
この請求項4に記載の発明によれば、開口部を閉鎖した状態で区画パネルがパネル保持手段により保持されるので、火災時に開口部が開放してしまうことを極力防止することができる。また、平常時においても、例えば居室空間の一部を改装するときなどに、区画パネルを仕切壁として利用することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、上記火災検知器によって火災発生が検知された場合に、上記多層建築物のエレベータ機械室に加圧空気を供給する加圧給気手段を設けたことを特徴とするものである。
【0017】
この請求項5に記載の発明によれば、火災検知器によって火災発生が検知された場合に、エレベータ機械室に加圧空気が供給されるので、エレベータ機械室やエレベータシャフト内に煙が侵入するのを抑制することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1〜図5は、本発明に係るアトリウムの防災システムの一実施形態を示すもので、図中符号1が建築物(多層建築物)である。この建築物1には、図1に示すように、各層に跨る状態でアトリウム2が設けられ、このアトリウム2と各層の居室空間3との境界面にはそれぞれ開口部10が設けられて各々の空間が互いに連続した状態となっている。アトリウム2内には、エレベータシャフト6がガラススクリーン等の区画壁6aによって区画された状態で設けられ、エレベータシャフト6の上方には、エレベータかご8aを昇降するためのモータやプーリ8b等を設置したエレベータ機械室7が配置されている。また、エレベータシャフト6の他端側には、避難経路となる階段室5が上下層に連続する状態で設けられ、この階段室5と各層の居室空間3との間にはそれぞれ廊下4が設けられている。
【0019】
そして、アトリウム2には、その下端部に給気口2aが設けられる一方、上端部には自然排煙口2bまたは排煙通路2cが設けられ、排煙通路2cには、アトリウム2内の空気を吸引して屋外に導くための排煙ファン(アトリウム排気設備)11が設置されている。また、エレベータ機械室7には、室内に加圧空気を供給するための加圧給気ファン(加圧給気手段)12が設けられるとともに、室内の余剰空気を排出するための差圧ダンパ13が設けられている。同様に、階段室5には、加圧給気ファン14や差圧ダンパ15が設けられる他、加圧給気ファン14から吐出される加圧空気を、上層部、中層部および下層部の各々に分配して供給するための給気ダクト16が設けられている。ただし、給気方法は階段室下部1カ所の場合もありうるため、必ずしも給気ダクトが必要とは限定されない。
【0020】
そして、各居室の天井面3aには多数の通気口3bが設けられ、各天井面3aと直上の床スラブとの間には、排気口17aと給気口18aがそれぞれ設けられている。
各排気口17aは、平常時は閉状態とされた排気ダンパ(図示省略)を介して排気ダクト17bにそれぞれ接続されている。この排気ダクト17bは屋外へと延び、その吐出側に排煙ファン17cが取り付けられている。これら排煙ファン17c、排気ダクト17b、各排気ダンパおよび各排気口17aによって、火災層の排気を行う排気設備17が構成されている。
【0021】
一方、各給気口18aは、空調機18cから吐出される加圧空気を移送する給気ダクト18bに、給気ダンパ(図示省略)を介して接続されている。空調機18cは、空調機械室等に設置され、平常時においては通常の空調機として機能する一方、火災発生時においては、加圧空気の供給手段として機能するようになっている。これら空調機18c、給気ダクト18b、各給気ダンパおよび各給気口18aによって、非火災層に加圧空気を供給する給気設備18が構成されている。
【0022】
また、各層の居室空間3には、アトリウム2に沿ってそれぞれ腰壁(手摺り)20が立設され、各腰壁20の内部には、図2に示すように、水圧によって昇降しその上昇位置で上記開口部10を閉鎖する区画パネル(閉鎖手段)30が収納されている。
腰壁20は、区画パネル30を収納可能な収納空間21を内部に有し、上面に区画パネル30の出入口となる開口22を有している。また、腰壁20は、上記収納空間21の底部に給水孔23を有し、この給水孔23を介して、水噴霧装置29に給水を行う給水ライン28が接続されている。また、腰壁20の内壁上部には、区画パネル30の爪部32と係合可能な凹部25が設けられ、この凹部25の上方には、区画パネル30を上下方向に案内するための一対のローラ24が取り付けられている。
【0023】
区画パネル30は、軽量なアルミ製のパネル等によって構成されている。この区画パネル30の上下両端にはそれぞれフランジ31a、31bが設けられ、下端のフランジ31bには、給水孔23から流入した水を封入するためのシール部材34が取り付けられている。すなわち、シール部材34と上記収納空間21の底部との間隙Sに封入された水の圧力によって、区画パネル30が昇降するようになっている。
【0024】
また、下端フランジ31bには、図2および図3に示すように、腰壁20の凹部25と係合可能な一対の爪部32が、区画パネル30の厚み方向に進退自在な状態で取り付けられるとともに、これら爪部32を上記係合方向に付勢するバネ材33が取り付けられている。すなわち、上記開口部10を閉鎖する位置まで区画パネル30が上昇すると、区画パネル30の爪部32が腰壁20の凹部25と出会い、その出会った時点で、バネ材33の付勢力により爪部32が凹部25に入り込んで両者が互いに係合した状態となる。この係合状態においては、区画パネル30が上下方向に移動不能な状態となり、例えば上記間隙Sに封入されていた水が抜けたとしても、バネ材33による付勢によってその状態がそのまま維持されるようになっている。つまり、爪部32、凹部25およびバネ材33によって、上記開口部10を閉鎖した状態で区画パネル30を保持するパネル保持手段が構成されている。
【0025】
一方、上記腰壁20上方の天井部には、区画パネル30が上記開口部10を閉鎖した状態(爪部32と凹部25が係合した状態)において、区画パネル30の上端フランジ31aが挿入される溝部36が設けられている。この溝部36の近傍には、アトリウム2側から区画パネル30に向けて水噴霧を行う水噴霧装置29が設置されている。
【0026】
そして、各層の居室空間3やアトリウム2内には、熱や煙を感知して火災発生を検知するための火災検知器(図示省略)がそれぞれ設けられている。それら火災検知器の検知信号は、信号線または無線機を介して、防災センタ等に設置された制御装置(図示省略)に送信され、制御装置は、それら検知信号等に基づいて、給水ライン28の各バルブ27、各排煙ファン17c、11、各排気ダンパ、空調機18c、各給気ダンパ、各加圧給気ファン12、14等の機器を制御するようになっている。なお、各排煙ファン17c、11、各加圧給気ファン12、14、空調機18cの各々には、その吐出風量を調整可能とするインバータが設けられ、各インバータの制御が上記制御装置によって実行されるようになっている。
【0027】
上記構成からなる防災システムによれば、平常時には、図1に示すように、区画パネル30が腰壁20の内部に収納されて、各層の開口部10が開放された状態となっている。
そして、例えば図4に示すように、何れかの居室空間3において火災が発生し、この火災発生が火災検知器によって検知されると、その検知信号に基づいて、制御装置が給水ライン28の各バルブ27を操作して、各腰壁20の収納空間21に水を供給する制御を行う。これにより、各腰壁20に収納されていた区画パネル30がそれぞれ水圧で押し上げられて、すべての開口部10が区画パネル30で閉鎖される。
【0028】
さらに、制御装置は、上記検知信号に基づいて、排煙ファン17c、空調機18cおよび加圧給気ファン14の各々を作動させるとともに、火災層Xの排気口17aに通じる排気ダンパ、非火災層の給気口18aに通じる給気ダンパをそれぞれ開状態に変換する制御を行う。これにより、火災層Xで発生した煙が排気ダクト17bから屋外に導かれるとともに、空調機18cおよび加圧給気ファン14から吐出された加圧空気が給気ダクト18b、16を介して非火災層および階段室5に供給される。
その結果、火災層Xが減圧状態、非火災層および階段室5が加圧状態となるので、火災層Xで発生した煙や熱がアトリウム2や階段室5を通じて非火災層に侵入するのを防止することができる。
【0029】
一方、図5に示すように、アトリウム2内において火災が発生し、この火災発生が火災検知器によって検知されると、その検知信号に基づき、制御装置が給水ライン28の各バルブ27を操作して、上記居室火災の場合と同様に、各層の開口部10を区画パネル30で閉鎖する制御を行う。
また、制御装置は、上記検知信号に基づいて、排煙ファン11を作動させるとともに、自然排煙口2bまたは給気口2aを開放する制御を行う。これにより、給気口2aから排煙通路2cや自然排煙口2bへと向かう上昇気流が形成され、この上昇気流に沿って、アトリウム2内で発生した煙が屋外へと効率良く排出されることとなる。
【0030】
さらに、制御装置は、上記検知信号に基づいて、空調機18cおよび加圧給気ファン12、14の各々を作動させるとともに、各層の給気口18aに通じる給気ダンパをそれぞれ開状態に変換する制御を行う。これにより、空調機18cや加圧給気ファン12、14から吐出された加圧空気が、各層の居室空間3、階段室5およびエレベータ機械室7の各々に供給される。
その結果、各層の居室空間3、階段室5、エレベータ機械室7およびエレベータシャフト6の各々が加圧状態、アトリウム2が減圧状態となるので、アトリウム2内で発生した煙や熱が各層の居室空間3やエレベータシャフト6等に侵入するのを防止することができる。
また、火災の拡大時には、制御装置が給水ライン28の各バルブ27を操作して、各水噴霧装置29に水を供給する制御を行う。これにより、アトリウム2側の水噴霧装置29から区画パネル30に向けて水噴霧が行われる。
【0031】
以上のように、上記構成からなるアトリウムの防災システムによれば、火災検知器によって火災発生が検知された場合に、排気設備17により火災層Xの排気が行われるとともに、給気設備18により非火災層に加圧空気が供給され、これにより、火災層Xが減圧状態、非火災層が加圧状態とされるので、火災層Xで発生した煙や熱がアトリウム2を介して非火災層に侵入するのを防止することができる。
一方、火災検知器によりアトリウム2で火災発生が検知された場合には、排煙ファン11によりアトリウム2内の排気が行われるとともに、給気設備18により各層の居室空間3に加圧空気が供給され、これにより、アトリウム2が減圧状態、各層の居室空間3が加圧状態とされるので、アトリウム2内で発生した煙や熱が各層の居室空間3に伝搬するのを防止することができる。
しかも、上記各火災の発生時には、すべての開口部10が区画パネル30により閉鎖されることとなるので、非火災層の居室空間3を容易に加圧状態とすることができ、給気設備18にかかる負荷を大幅に軽減することができる。
【0032】
また、平常時においては、すべての開口部10が開放された状態となるので、アトリウム2の開放感が損なわれる心配もない。また、その際に、各区画パネル30が腰壁20の内部に収納されることとなるので、区画パネル30によってアトリウム2周囲の美観が損なわれる心配もない。
また、区画パネル30の上昇により開口部10を閉鎖するようにしたので、区画パネル30の移動経路上に万が一障害物が存在していたとしても、その障害物を突き落とすことができ、区画パネル30と壁面との間に障害物が挟まって隙間が生じるのを防止することができる。
【0033】
また、水噴霧の給水ライン28を利用して、区画パネル30を昇降させるようにしたので、区画パネル30を駆動するための設備を別途設ける必要がなくなり、その分コスト低減を図ることができる。また、区画パネル30の昇降に用いられる水が腰壁20内に供給されることとなるので、腰壁20の耐火性能を高めることもできる。
さらに、火災の拡大時には、アトリウム2側から区画パネル30に向けて水噴霧が行われるので、区画パネル30が熱で変形することを防止することができ、区画パネル30の耐火性能を高めることができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、開口部10を閉鎖する閉鎖手段を区画パネル30によって構成するようにしたが、例えば、防火シャッタや防煙シャッタによって閉鎖手段を構成することも可能である。この場合には、シャッタのリーク量を予め考慮して加圧空気の供給量を設定することにより、上記区画パネル30の場合と同様に非火災層を加圧状態で維持することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るアトリウムの防災システムによれば、火災検知器によって火災発生が検知された場合に、火災層が減圧状態、非火災層が加圧状態とされるので、火災層で発生した煙や熱がアトリウムを介して非火災層に侵入するのを防止することができる。しかも、その際に、各層の開口部が閉鎖手段により閉鎖されることとなるので、給気設備にかかる負荷を大幅に軽減することができる。
また、平常時においては、各層の開口部が開放された状態となるので、アトリウムの開放感が損なわれる心配もない。
【0036】
請求項2に記載の本発明に係るアトリウムの防災システムによれば、火災検知器によりアトリウムで火災発生が検知された場合に、アトリウムが減圧状態、各層の居室空間が加圧状態とされるので、アトリウム内で発生した煙や熱が各層の居室空間に侵入するのを防止することができる。しかも、その際に、各層の開口部が閉鎖手段により閉鎖されることとなるので、給気設備にかかる負荷を大幅に軽減することができる。また、平常時においては、各層の開口部が開放された状態となるので、アトリウムの開放感が損なわれる心配もない。
【0037】
請求項1,2,6,7の何れかに記載の発明によれば、シャッタで開口部を閉鎖する場合と比べて、煙等の漏れが少なくなり、防煙性能を高めることができる。また、平常時には区画パネルが腰壁の内部に収納されるので、区画パネルによってアトリウム周囲の美観が損なわれる心配もない。
また、区画パネルを水圧によって昇降させるようにしたので、区画パネルの駆動装置として、水噴霧の給水設備を利用することが可能となり、これによってコスト低減を図ることができる。また、区画パネルの昇降に用いられる水が腰壁内に供給されることとなるので、腰壁の耐火性能を高めることもできる。
【0038】
請求項3に記載の発明によれば、区画パネルが熱で変形するのを防止することができ、区画パネルの耐火性能を高めることができる。
請求項4に記載の発明によれば、火災時に開口部が開放されてしまうことを極力防止することができる。また、平常時においても、例えば居室空間の一部を改装するときなどに、区画パネルを仕切壁として利用することができる。
請求項5に記載の発明によれば、エレベータ機械室やエレベータシャフト内に煙が侵入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアトリウムの防災システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の開口部周辺を示す断面図で、(a)は開口部を開放した状態、(b)は開口部を閉鎖した状態を示している。
【図3】図2(b)の要部を拡大した断面図である。
【図4】図1の居室で火災が発生したときの状態を示す図である。
【図5】図1のアトリウムで火災が発生したときの状態を示す図である。
【符号の説明】
1 建築物(多層建築物)
2 アトリウム
3 居室空間
7 エレベータ機械室
10 開口部
11 排煙ファン(アトリウム排気設備)
12 加圧給気ファン(加圧給気手段)
17 排気設備
18 給気設備
20 腰壁
25 凹部(パネル保持手段)
29 水噴霧装置
30 区画パネル(閉鎖手段)
32 爪部(パネル保持手段)
33 バネ材(パネル保持手段)
Claims (7)
- 内部にアトリウムを備えた多層建築物に用いられる防災システムであって、
上記多層建築物の各層の居室空間と上記アトリウムとの境界面にそれぞれ開口部を設けて互いに連続した空間とし、
上記各層の居室空間に火災発生を検知するための火災検知器をそれぞれ設けるとともに、これら火災検知器の何れかによって火災発生が検知された場合に、各層の上記開口部を閉鎖する閉鎖手段と、火災層における排気を行う排気設備と、非火災層に加圧空気を供給する給気設備とを設け、さらに、
上記各層の居室空間に、上記アトリウムに沿ってそれぞれ腰壁を立設し、各腰壁の内部に、水圧によって昇降しその上昇位置で上記開口部を閉鎖する区画パネルを収納し、当該区画パネルによって上記閉鎖手段を構成したことを特徴とするアトリウムの防災システム。 - 内部にアトリウムを備えた多層建築物に用いられる防災システムであって、
上記多層建築物の各層の居室空間と上記アトリウムとの境界面にそれぞれ開口部を設けて互いに連続した空間とし、
上記アトリウムに火災発生を検知するための火災検知器を設けるとともに、この火災検知器によって火災発生が検知された場合に、各層の上記開口部を閉鎖する閉鎖手段と、各層の居室空間に加圧空気を供給する給気設備と、上記アトリウムにおける排気を行うアトリウム排気設備とを設け、さらに、
上記各層の居室空間に、上記アトリウムに沿ってそれぞれ腰壁を立設し、各腰壁の内部に、水圧によって昇降しその上昇位置で上記開口部を閉鎖する区画パネルを収納し、当該区画パネルによって上記閉鎖手段を構成したことを特徴とするアトリウムの防災システム。 - 上記アトリウム側から上記区画パネルに向けて水噴霧を行う水噴霧装置を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のアトリウムの防災システム。
- 上記開口部を閉鎖した状態で上記区画パネルを保持するパネル保持手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアトリウムの防災システム。
- 上記火災検知器によって火災発生が検知された場合に、上記多層建築物のエレベータ機械室に加圧空気を供給する加圧給気手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のアトリウムの防災システム。
- 内部にアトリウムを備えた多層建築物に用いられる防災システムであって、
上記多層建築物の各層の居室空間と上記アトリウムとの境界面にそれぞれ開口部を設けて互いに連続した空間とし、
上記各層の居室空間に火災発生を検知するための火災検知器をそれぞれ設けて、これら火災検知器の何れかによって火災発生が検知された場合に、各層の上記開口部を閉鎖する閉鎖手段を設けるとともに、
上記各層の居室空間に、上記アトリウムに沿ってそれぞれ腰壁を立設し、各腰壁の内部に、水圧によって昇降しその上昇位置で上記開口部を閉鎖する区画パネルを収納し、当該区画パネルによって上記閉鎖手段を構成したことを特徴とするアトリウムの防災システム。 - 内部にアトリウムを備えた多層建築物に用いられる防災システムであって、
上記多層建築物の各層の居室空間と上記アトリウムとの境界面にそれぞれ開口部を設けて互いに連続した空間とし、
上記アトリウムに火災発生を検知するための火災検知器を設けて、この火災検知器によって火災発生が検知された場合に、各層の上記開口部を閉鎖する閉鎖手段を設けるとともに、
上記各層の居室空間に、上記アトリウムに沿ってそれぞれ腰壁を立設し、各腰壁の内部に、水圧によって昇降しその上昇位置で上記開口部を閉鎖する区画パネルを収納し、当該区画パネルによって上記閉鎖手段を構成したことを特徴とするアトリウムの防災システム。
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