JP3940703B2 - 加熱蒸散装置、加熱蒸散容器およびその製造方法 - Google Patents
加熱蒸散装置、加熱蒸散容器およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺虫、芳香、消臭、防虫等を目的とした薬剤を長時間安定して蒸散させるための加熱蒸散装置、これに使用するのに好適な加熱蒸散容器およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、害虫防除のための加熱蒸散方法としては、吸液芯を用いて殺虫剤を吸上げ加熱蒸散させる方法や、繊維板等の多孔質基材(固形マット)に吸着させた殺虫剤を加熱して蒸散させる方法等が知られている。
【0003】
前者の場合、殺虫剤を溶液形態で使用するため、水を加えた製剤では揮散安定性が悪く、薬剤を長時間蒸散させるのには向いていなかった。後者のマット方式の場合、無溶剤型ではあるが、繊維板に殺虫剤を含浸させているため薬剤の残存率が高く安定した長期の揮散は望めなかった。
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、先に、殺虫原体を加熱蒸散する加熱蒸散方法およびこれに使用する加熱蒸散容器を提案した。すなわち、殺虫原体を加熱すると、水を加えた殺虫液を使用するより、効率よく殺虫剤成分を蒸散させることができる。
【0005】
ここで、殺虫原体とは溶剤を含まない殺虫剤成分自体をいう。従って、加熱蒸散時間の長いもの、例えば1日12時間の揮散を30日間ないし60日間持続させるものであっても、使用する殺虫原体はせいぜい数ml程度とごく少量であり、使用する加熱蒸散容器も、縦横各20〜40mm程度のシートの中央部に深さ0.5〜10mm程度の凹部を設けた小型容器である。
【0006】
上記の殺虫原体をそのままヒータにて加熱蒸散させるだけでも長期にわたる蒸散は充分に可能であるが、蒸散量はできる限り安定していることが望まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、長期にわたって安定した蒸散が可能な加熱蒸散装置、これに使用するのに好適な加熱蒸散容器およびその製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明にかかる加熱蒸散装置は、蒸散液を収容した容器本体と、この容器本体の蒸散口を塞ぐガス透過性フィルムに前記蒸散液を接触させる手段と、前記容器本体を加熱するためのヒータとを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記ガス透過性フィルムに前記蒸散液を接触させる手段とは、例えば以下のようなものが挙げられる。以下の各手段は単独で使用するほか、2種以上の手段を組み合わせて使用してもよい。
(1)重ね合わされた少なくとも2枚のフィルム(一方または両方がガス透過性フィルムである)間に蒸散液を供給する。
(2)蒸散液の液面とガス透過性フィルムとが接触するように容器本体を薄くし、かつ容器本体を傾斜ないし直立させる。
(3)蒸散液の液面とガス透過性フィルムとが接触するように容器本体を薄くし、かつ蒸散により蒸散液が少なくなれば、陰圧もしくは自重によりガス透過性フィルムが容器本体内に下がるようにする。
(4)容器本体を傾斜ないし直立させて使用する場合において、容器本体に液溜り部を設けて、蒸散により蒸散液が少なくなっても蒸散液の液面とガス透過性フィルムとの接触が維持されるようにする。
【0010】
上記(1)の手段を備えた本発明の加熱蒸散装置は、蒸散液を収容した容器本体と、この容器本体の蒸散口を塞ぐ互いに重ね合わされた内側フィルムおよび外側フィルムと、この内側フィルムおよび外側フィルムの間に前記蒸散液を供給するための供給手段と、前記容器本体を加熱するためのヒータとを備え、前記内側フィルムおよび外側フィルムのうち少なくとも外側フィルムがガス透過性フィルムであることを特徴とする。
【0011】
この加熱蒸散装置では、内側フィルムと外側フィルム(ガス透過性フィルム)とを重ね合わせ、これらのフィルム間に供給手段により蒸散液を供給するようにしたので、毛管現象により蒸散液は内外フィルム間に広がって、蒸散液を外側フィルム内面の広い面積にわたって接触させることができる。これにより、長期の使用により容器本体内の蒸散液が減少しても外側フィルムと蒸散液との接触面積が減少しないので、長期にわたって安定した蒸散が可能となる。すなわち、前記内側フィルムと外側フィルムは毛管現象が生じるように重ね合わされる。
【0012】
本発明の加熱蒸散装置では、前記供給手段が、前記蒸散液が前記内側フィルムと接するような角度で容器本体を保持した状態において内側フィルムが蒸散液と接している部位に設けられた液導入孔であるのが好ましい。これにより、容器本体を傾斜させた際に、内外フィルム間に蒸散液を迅速に供給することができる。
【0013】
上記加熱蒸散装置に使用するのに適した本発明の加熱蒸散容器は、蒸散液を収容した容器本体と、この容器本体の蒸散口を塞ぐ互いに重ね合わされた内側フィルムおよび外側フィルムとを備え、前記内側フィルムおよび外側フィルムのうち少なくとも外側フィルムがガス透過性フィルムであることを特徴とする。本発明の加熱蒸散容器では、前記内側フィルムおよび外側フィルムのうち少なくとも一方に液補給用の隙間を形成するためのエンボス加工が施されていてもよい。
【0014】
本発明にかかる加熱蒸散容器の製造方法は、容器本体の蒸散口を内側フィルムで塞ぎ、蒸散液を供給するための供給ノズルで前記内側フィルムを貫通して供給ノズルを容器本体内に挿入し、この供給ノズルから容器本体内に蒸散液を供給した後、前記内側フィルムの外面に外側フィルムを重ね合わせて密封することを特徴とする。これにより、本発明の製造方法では、蒸散液を収容する際にこぼれた蒸散液が前記フランジ部に付着して接着不良が生じる等の不具合を防止することができる。
【0015】
また、本発明の他の加熱蒸散装置は、蒸散液を収容した容器本体と、この容器本体の蒸散口を塞ぐ互いに重ね合わされた内側フィルムおよび外側フィルムと、前記容器本体を加熱するためのヒータとを備え、前記内側フィルムが吸液性フィルムであり、前記外側フィルムがガス透過性フィルムであり、さらに前記内側フィルムの一部が前記蒸散液に接触していることを特徴とする。このように、吸液性フィルムである内側フィルムの一部が蒸散液に接触しているので、この接触部分から毛管現象により蒸散液が内側フィルムに吸収され、内側フィルムの広い面積にわたって蒸散液が浸透・拡散する。これにより、内側フィルムに重ね合わされた外側フィルム内面の広い面積にわたって蒸散液を接触させることができる。
【0016】
上記加熱蒸散装置に使用するのに適した本発明の他の加熱蒸散容器は、蒸散液を収容した容器本体と、この容器本体の蒸散口を塞ぐ互いに重ね合わされた内側フィルムおよび外側フィルムとを備え、前記内側フィルムが吸液性フィルムであり、前記外側フィルムがガス透過性フィルムであることを特徴とする。前記吸液性フィルムとしては不織布が例示される。
【0017】
なお、本発明における蒸散液には前記した殺虫原体の他、芳香剤、消臭剤、防虫剤等が例示される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、蒸散液として殺虫原体を使用した場合を例に挙げて、本発明の加熱蒸散装置、加熱蒸散容器およびその製造方法を説明する。
【0019】
使用する殺虫原体は、溶剤を含まない殺虫剤成分自体であって、2種以上の殺虫剤成分を混合したものであってもよい。また、殺虫原体に、添加剤として、通常使用される安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、着色剤などの1種または2種以上を添加してもよい。
【0020】
本発明において使用可能な殺虫原体としては、加熱により蒸散し、害虫に対して防除効果を示すものであればよい。このような殺虫原体としては、例えばトランスフルスリン、フラメトリン、d-T80-フラメトリン、エムペントリン、フェノトリン、レスメトリン、フタルスリン、d-T80-フタルスリン、S−1955(住友化学工業(株)製)、S−1264(住友化学工業(株)製)、およびこれらの異性体、さらにビフェントリン、フェンフェノクスロン、アミドフルメット、スタークル、S−1846(住友化学工業(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの殺虫原体の蒸気圧は4.8×10-6(25℃)mmHg以上、好ましくは4.8×10-6〜6.0×10-3(25℃)mmHgであるのがよい。殺虫原体は、これを加熱蒸散容器内に収容し、この容器を加熱することによって蒸散される。
【0021】
前記添加剤は必要最小限の添加量でよく、通常、殺虫原体を含む総量に対して安定剤が約5重量%以下、酸化防止剤が約5重量%以下、紫外線防止剤が約5重量%以下であればよい。また、これ以外にも、通常用いられている効力増強剤、揮散率向上剤、消臭剤、香料等の各種添加剤も任意に添加することができる。
【0022】
特に殺虫原体(蒸散液)に色素等の着色剤を添加すると、視認性が向上し、遠くからでも液面を容易に判別できるようになり、また終点の確認も容易になる。添加する着色剤としては、殺虫原体の蒸散性に影響せず、使用期間を通して加熱や光による退色がなく、遠くからの視認に優れて終点がわかりやすいものがよい。
【0023】
このような着色剤としては、例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、およびこれらの染料の2種以上の組み合わせから選ぶことができる。具体的には、例えば橙色403号、緑色202号、紫色201号、赤色225号、黄色204号等の色素が挙げられる。
【0024】
着色剤の添加量は、総量に対して0.001〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%の割合である。これにより、殺虫原体の蒸散性に影響せず、遠距離からの視認性および終点の視認性が向上する。
【0025】
図1は本実施形態にかかる加熱蒸散装置を示す概略図である。図1に示すように、加熱蒸散装置11は、殺虫原体6を収容した容器本体7、この容器本体7の蒸散口を塞ぐ互いに重ね合わされた内側フィルム8および外側フィルム12、これらのフィルム8,12間に殺虫原体6を供給するために内側フィルム8に設けられた液導入孔13(供給手段)を有する加熱蒸散容器2と、容器本体7を加熱するためのヒータ3とを備えている。
【0026】
ヒータ3は発熱体4と放熱板5とを備えている。この放熱板5は、加熱蒸散装置11の傾斜した器壁9よりも内方に取り付けられており、器壁9に形成された凹部10の底面を形成している。この凹部10内に加熱蒸散容器2を落とし込み、加熱蒸散容器2をヒータ面1上に保持させる。
【0027】
外側フィルム12としては、液体である殺虫原体6は透過しないが、殺虫原体6から揮散した薬剤成分を透過させることができるガス透過性フィルムであればいずれも使用可能である。このようなガス透過性の外側フィルム12を例示すると、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。これらのフィルムは単独で使用してもよく、あるいは2種以上を貼り合わせたものであってもよい。また、フィルムにレーザー光などにより微細な孔を多数あけた微多孔性フィルムも外側フィルム12として単独で、または他のガス透過性フィルムと貼り合わせるなどして好適に使用可能である。さらに、針などで孔をあけた多孔性フィルムも単独で、または他のガス透過性フィルムと貼り合わせるなどして使用することができる。レーザーや針などで孔をあけた微多孔性ないし多孔性のフィルムの材料としては、ポリプロピレン、ナイロンなどのフィルムも使用することができる。外側フィルム12の厚さは約10〜100μm、好ましくは30〜70μmであるのがよい。
【0028】
また、外側フィルム12としては、特に、使用中にフィルムの状態が変化しないもの(例えば膨潤、破れ、フィルム表面での有効成分の結晶化(粉ふき)などが生じないもの)であるのが好ましい。このようなフィルムとしては、例えば2種以上のフィルムを貼り合わせた複合フィルムを挙げることができる。具体的には、例えば前記ポリエチレンまたは無延伸ポリプロピレンの外面に延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、穴あきフィルム(例えば穴あきポリエチレンテレフタレートフィルム等)等を貼り合わせた複合フィルムが挙げられる。
【0029】
一方、内側フィルム8としては、外側フィルム12と同様な前記ガス透過性フィルムを使用することができる他、液体である殺虫原体6およびこれから揮散した薬剤成分を透過しないガス不透過性フィルムを使用することもできる。内側フィルム8の厚さは約10〜100μm、好ましくは30〜70μmであるのがよい。また、内側フィルム8も外側フィルム12と同様に、使用中にフィルムの状態が変化しないものが好ましい。
【0030】
また、内側フィルム8には、図1に示すように、内外フィルム8,12間に殺虫原体6を供給するための液導入孔13(供給手段)が設けられている。この液導入孔13の形成部位は、殺虫原体6が内側フィルム8と接するような角度で容器本体7を保持した状態において内側フィルム8が殺虫原体6と接している部位である。この液導入孔13の孔径は、特に限定されるものではないが、0.5〜2mm程度であるのがよい。
【0031】
容器本体7は、アルミニウムなどの金属、耐熱性樹脂などの耐熱性素材から作られ、中央部に殺虫原体6を収容する凹部7aが設けられ、この凹部7aの蒸散口周縁にフランジ部7bが設けられている。このフランジ部7b上に内側フィルム8の周縁部を重ね合わせ、熱接着などにより一体に接着し、さらにこの接着部分上に外側フィルム12の周縁部を重ね合わせ、熱接着などにより一体に接着する。
【0032】
一方、内外フィルム8,12間における上記周縁部以外の部分は、殺虫原体6の毛管現象が生じるように重ね合わされているだけであり接着されていない。この内外フィルム8,12間において殺虫原体6の毛管現象が生じるようにするには、内外フィルム8,12をしわやたるみが生じないように周縁部でそれぞれ接着し、内外フィルム8,12間の隙間が過度に広がらないようにすればよい。この隙間が過度に広がると、毛管現象が生じにくくなり、殺虫原体6を外側フィルム12の内面の広い面積にわたって接触させることができなくなるおそれがある。
【0033】
また、内側フィルム8および外側フィルム12を重ね合わせる際には、毛管現象が生じやすいように、例えばそれらの周縁にフィルム状のスペーサ等を介在させたりして、内外フィルム8,12間に所定の隙間を形成させてもよい。
【0034】
また、内側フィルム8および外側フィルム12のうち少なくとも一方に液補給用の隙間を形成するためのエンボス加工により凹凸パターンが形成されていてもよい。図2は、内側フィルム8に設けられたエンボス加工を示す斜視図である。同図に示すようなエンボス加工により、内外フィルム8,12間に所定間隔の隙間を形成するための凹部32と凸部33ができるので、毛管現象にて殺虫原体6を安定供給できる。また、殺虫原体6と外側フィルム12との接触面積をも調節することができるので、殺虫原体6の蒸散量を調節することができる。また、上記凹凸パターンは、殺虫原体6が外側フィルム12内面に広がるのを妨げないものであれば特に限定されず、例えば格子状、スリット状等にすることができる。このようにして形成される隙間は1mm以下とするのが好ましい。
【0035】
さらに、内側フィルム8および外側フィルム12は透明ないし半透明であるのが好ましく、これにより、加熱蒸散容器2内の殺虫原体6の液面を容易に判別でき、加熱蒸散に伴う殺虫原体6の残量を容易に確認することができる。この液面の視認性は、前記した着色剤の添加によりさらに向上する。
【0036】
図1に示すヒータ面1の水平面に対する傾斜角度θは、蒸散液が内側フィルム8と接するような角度であるのが好ましく、具体的には約10〜90°、好ましくは40〜60°、より好ましくは45〜55°であるのがよい。傾斜角度θが前記範囲にあるときには、殺虫原体6の液量が減少した際にでも、殺虫原体6が液導入孔13から内外フィルム8,12間に供給され、毛管現象により殺虫原体6を外側フィルム12の内面の広い面積にわたって接触させることができる。これにより、長期の使用により容器本体中の蒸散液が減少しても外側フィルムと蒸散液との接触面積が減少しないので、長期にわたって安定した蒸散が可能となる。一方、傾斜角度θが前記範囲より小さいと、殺虫原体6の液量が減少した際に、殺虫原体6が液導入孔13から内外フィルム8,12間に供給され難くなる。
【0037】
加熱蒸散容器2に収容する殺虫原体6の量は、使用する薬剤の蒸散性、単位時間当りの蒸散量、目標とする蒸散持続時間等に応じて適宜決定されるため、特に限定されるものではないが、通常、約0.05〜3ml、好ましくは0.1〜1ml程度であればよい。また、凹部7aの深さは、これに収容する殺虫原体6の種類に応じて、0.5〜5mmの範囲から決定するのが好ましい。
【0038】
殺虫原体の加熱温度は、殺虫剤成分の単位時間当りの揮散量を考慮して適宜決定され、通常、ヒータ温度(すなわちヒータ面1の表面温度)は約50〜170℃、好ましくは70〜130℃の範囲から適切な温度が設定される。
もしくは、外側フィルム12(ガス透過性フィルム)の表面温度が約40〜130℃、好ましくは約60〜120℃に設定されるか、加熱蒸散容器2内の加熱時における殺虫原体または添加剤を添加した殺虫原体の温度が約45〜165℃、好ましくは約65〜125℃に設定されるのがよい。具体的には、蚊などの害虫駆除に必要とされる個々の殺虫剤の有効揮発量を目安にして、蒸散温度を決定することができる(なお、フィルム温度、液温はガス透過性フィルム一層だけの場合にも適用可能である)。
【0039】
上記実施形態では、加熱蒸散容器2をヒータ面1の周囲に形成した器壁9の凹部10にて保持したが、この保持手段としては加熱蒸散容器2をヒータ面1上に載置または保持できる手段であればよく、例えば傾斜したヒータ面上またはヒータ面の端部に突起等のストッパーを設けて加熱蒸散容器を載置または保持する方法などを用いることができる。
【0040】
図3は、直立したヒータ面1上に加熱蒸散容器2を保持した例を示している。このような使用形態であっても、前記のように傾斜した場合と同様に、殺虫原体6が液導入孔13から内外フィルム8,12間に供給され、毛管現象により殺虫原体6を外側フィルム12の内面のほぼ全域に接触させることができる。その他は図1に示した形態と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
図4は、本発明の加熱蒸散容器の他の実施形態を示す平面図である。なお、図4には、説明の便宜上、外側フィルム12は図示せず、内側フィルム8’のみを示している。図4に示すように、この加熱蒸散容器2’の内側フィルム8’には、内外フィルム8’,12間に殺虫原体6を供給するための2つの液導入孔13a,13b(供給手段)が、容器本体7の相対する壁面の近傍にそれぞれ設けられている。これにより、加熱蒸散容器2’の液導入孔13a,13bのうち、どちらが下になっても対応することができる。また、上になった液導入孔は容器本体7内のガス抜きの役割を果たすことができる。
【0042】
なお、加熱蒸散装置11に使用する液導入孔は、図1,図3,図4に示した形態に限定されることはなく、例えば図5(a)〜(d)に示すようなものであってもよい。なお、図5(a)〜(d)は、図4と同様に外側フィルムは図示していない。図5(a)に示す液導入孔23a,23bは、加熱蒸散装置11に配置する際における内側フィルム8aの上下にそれぞれ設けられた横方向の切り込みからなるものである。図5(b)に示す液導入孔24a,24bは、内側フィルム8bの左右にそれぞれ設けられた縦方向の切り込みからなるものである。図5(c)に示す液導入孔25は、内側フィルム8cの中央に設けられた縦方向の切り込みからなるものである。図5(d)に示す液導入孔26は、内側フィルム8dに設けられた多数の穴からなるものである。
【0043】
また、殺虫原体6の加熱方法としては、上記実施形態で示したように加熱蒸散容器7を放熱板5上に載置する他、必要なら加熱蒸散容器7と放熱板5との間に空隙あるいはその他の介在物を設けて加熱することもできる。
【0044】
以下、加熱蒸散容器2の製造方法について説明する。図6(a)〜(d)は、加熱蒸散容器2の製造方法を示す概略図である。
まず、中央部に凹部7aが設けられた容器本体7と、内側フィルム8とを準備し、容器本体7のフランジ部7b上に内側フィルム8の周縁部を重ね合わせ、熱接着などにより一体に接着し、容器本体7の蒸散口を内側フィルム8で塞ぐ(図6(a))。ついで、殺虫原体6を供給するための供給ノズル31で内側フィルム8を貫通して供給ノズル31を容器本体7内に挿入し、この供給ノズル31の先端から容器本体7内に殺虫原体6を供給する(図6(b))。所定量の殺虫原体6を供給した後、供給ノズル31を容器本体7から引き抜く。この供給ノズル31を容器本体7から引き抜いた後の貫通孔を液導入孔13(供給手段)とすることができる(図6(c))。ついで内側フィルム8の外面にガス透過性の外側フィルム12を重ね合わせ、その周縁部と内側フィルム8の周縁部とを熱接着などにより一体に接着して容器本体7を密封する(図6(d))。このようにして加熱蒸散容器2を得ることができる。前記供給ノズル31の先端の口径は、液導入孔13の大きさに応じて決定すればよい。なお、上記のように供給ノズル31の貫通孔を液導入孔13として利用せずに、容器本体7に内側フィルム8を接着する前または接着した後に、図1,図3〜5に示すように液導入孔13,13a,13b,23a,23b,24a,24b,25,26を内側フィルム8に設けておくこともできる。
【0045】
なお、上記実施形態では、供給手段が液導入孔13である場合について説明したが、例えば、互いに重ね合わされた状態で殺虫原体中に浸漬された内側フィルムおよび外側フィルムの端部を、内外フィルム間に殺虫原体を供給するための供給手段とすることもできる。すなわち、内側フィルムおよび外側フィルムの端部を殺虫原体中に浸漬させることによって、この浸漬した部分から毛管現象により殺虫原体が内外フィルム間に広がるので、殺虫原体を外側フィルム内面の広い面積にわたって接触させることができる。これにより、容器本体7を水平に置いた状態で使用することもできる。
【0046】
また、本発明では、内側フィルム8として例えば不織布、織布などの高吸油性ポリマー、吸いとり紙などの吸液性フィルムを使用してもよい。すなわち、これらの吸液性フィルムは殺虫原体6を吸収するので、容器本体7を傾斜させるなどして殺虫原体6を内側フィルム8の一部に接触するようにすることで内側フィルム8の広い面積に殺虫原体6が浸透して行き渡る。これにより、内側フィルム8に重ね合わされた外側フィルム12内面の広い面積にわたって殺虫原体6を接触させることができる。
【0047】
上記の様に吸液性フィルムを使用する場合にも、内側フィルム8(吸液性フィルム)および外側フィルム12(ガス透過性フィルム)の周縁部は、熱接着などにより容器本体7のフランジ部7b上に一体に接着されるのであるが、好ましくは上記周縁部以外の部分(容器本体7の蒸散口を塞ぐ部分)においても内側フィルム8の一部または全面が熱接着などにより外側フィルム12と接着されているのがよく、より好ましくは内側フィルム8の全面が外側フィルム12と接着されているのがよい。これにより、内側フィルム8と外側フィルム12との間に隙間が生じにくくなるので、外側フィルム12内面のより広い面積にわたって安定して殺虫原体6を接触させることができる。このように内側フィルム8として吸液性フィルムを使用する場合には、内側フィルム8には液導入孔13を設けてもよく、設けなくてもよい。
【0048】
また、上記の様に吸液性フィルムを使用する場合には、容器本体7を水平に置いた状態で使用することもできる。水平状態で使用する場合の一例を図7に示す。図7に示すように、この加熱蒸散容器2eでは、内側フィルム81の一部を端から切り開いた切片8eを下に垂らして、この切片8eを殺虫原体6中に浸漬させている。このとき、内側フィルム81として上記した吸液性フィルムを用いることにより、容器本体7を傾斜させることなく、切片8eにて殺虫原体6を吸い上げて内側フィルム81の広い面積に殺虫原体6を浸透させることができる。これにより、内側フィルム81に重ね合わされた外側フィルム12内面の広い面積にわたって殺虫原体6を接触させることができる。なお、上記の切片8eを切り開く際に外側フィルム12の一部も同時に切り開き、これらの切片を重ね合わせた状態で下に垂らして殺虫原体6中に浸漬してもよい。
【0049】
また、内側フィルム81が吸液性フィルムでない場合であっても、内側フィルム81の切片8eと凹部7aの内壁面とが近接している場合には、この内壁面と切片8eとの間で毛管現象が生じて殺虫原体6を吸い上げて内外フィルム81,12間に供給することもできる。
【0050】
次に、ガス透過性フィルムに前記蒸散液を接触させる他の手段を有する加熱蒸散装置を図8に基づいて説明する。
【0051】
図8はこの実施形態にかかる加熱蒸散装置および加熱蒸散容器を示す概略断面図である。図8に示すように、加熱蒸散容器112は、上面が開口し内部に殺虫原体(蒸散液)116を収容した容器本体117と、この容器本体117の開口を塞ぐ透明ないし半透明のガス透過性フィルム118とを備え、容器本体117の一端には液溜り部120を形成するための拡張部117bが該容器本体117の深さ方向に突出して形成されている。
【0052】
蒸散開始前の容器本体117内における液溜り部120内の空気量と殺虫原体116の液量との割合は、容積比で空気量:液量=1:0.1〜10程度、好ましくは1:0.1〜7程度、より好ましくは1:0.2〜5程度であるのがよい。
【0053】
加熱蒸散容器112に収容する殺虫原体116の量は、使用する薬剤の蒸散性、単位時間当りの蒸散量、目標とする蒸散持続時間等に応じて適宜決定されるため、特に限定されるものではないが、通常、約0.05〜3ml、好ましくは0.1〜1ml程度であればよい。また、殺虫原体116の量は、重量では約75〜4500mg、好ましくは100〜1500mgであるのがよい。
【0054】
拡張部117bが形成された部分における開口から底面までの深さ、拡張部117bが形成された部分以外の部分における開口から底面までの深さ、拡張部117bの底面の大きさ、拡張部17bの形状等は特に限定されず、材料コスト、許容されるサイズ、成形の容易さ、上記した液溜り部120の空気量と殺虫原体16の液量との比などを考慮して決定すればよい。具体例を挙げると、拡張部117bが形成された部分における開口から底面までの深さt1は1〜10mm程度とするのが好ましく、拡張部117bが形成された部分以外の部分における開口から底面までの深さt2は0.5〜5mm程度とするのが好ましい。
【0055】
また、本発明の加熱蒸散装置は、前記拡張部117bを上にして加熱蒸散容器112を蒸散液116がガス透過性フィルム118と接するように傾斜させた状態でヒータ113のヒータ面111上に保持したものである。このように傾斜させた状態で配置したときに、拡張部117bの下面117cは、蒸散液116が拡張部117b内から容器本体117内の下端側に流下するように斜面状に形成されている。水平面Hと下面117cとのなす角度θ1は、0°よりも大きく90°よりも小さい、好ましくは2°〜45°であるのがよい。また、拡張部117bの下面117cと拡張部117bの底面117dとのなす角度θ2は90°より大きく180°より小さいのが好ましい。これにより、ヒータ113への設置時に蒸散液16を拡張部117bから流下させやすくなる。
【0056】
加熱蒸散容器112の水平面Hに対する傾斜角度θ3は10〜90°、好ましくは40〜60°であるのがよい。傾斜角度θ3が前記範囲にあると、殺虫原体116の液面116aをガス透過性フィルム118を通して目視にて容易に確認することができる。このため、加熱蒸散容器112内の殺虫原体116の残量を簡単に知ることができる。これに対して、傾斜角度θ3が前記範囲より小さいと、殺虫原体116の液量を判別しにくくなる。
【0057】
図9は、容器本体117を示す平面図である。図8および図9に示すように、容器本体117の開口は、該容器本体117を傾斜させた状態で容器本体117の下端が先細形状となっている。この先細形状は、容器本体117の下端面117eおよび117fにより形成されている。このような下端が先細形状になっている容器本体117を図1に示すようにヒータ面111上に保持することによって、液残量が最終間際になると収容された殺虫原体116の液面116aの低下速度が大きくなるので、加熱蒸散の終点がわかりやすくなる。下端面117e(または下端面117f)とフランジ部117gを含む平面とのなす角度θ4は70°以上90°以下であるのがよい。これにより、容器本体117の開口内縁への液残りを少なくすることができる。
【0058】
また、容器本体117の上端面117aとフランジ部117gを含む平面とのなす角度θ5は70°以上90°以下であるのがよい。これにより、容器本体117の開口内縁への液残りを少なくすることができる。
この実施形態において使用する殺虫原体116、容器本体117、ガス透過性フィルム118、ヒ−タ113としては、前記したものと同様のものが使用可能である。
【0059】
以上のように、この実施形態では、容器本体117に液溜り部120が形成されているので、殺虫原体116の蒸散による殺虫原体116の液面116aが低下する速度は遅いので、殺虫原体116とガス透過性フィルム18との間で充分な接触面積を長時間にわたって確保することができる。このため、殺虫原体116を長期にわたって安定して蒸散させることができる。
【0060】
図10は、直立したヒータ面111上に加熱蒸散容器122を垂直に保持した例を示している。この使用形態においても、前記のように傾斜した場合と同様に、加熱蒸散容器22内には殺虫原体116とともに液溜り部120を有しているので、殺虫原体116とガス透過性フィルム18との間で充分な接触面積を長時間にわたって確保することができる。このため、殺虫原体116を長期にわたって安定して蒸散させることができる。その他は図8に示した形態と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
上記実施形態では、ヒータ113により、加熱蒸散容器112のうち、特に拡張部117b以外の部分を加熱する場合について説明したが、拡張部117bの部分にもヒータを配置して加熱蒸散容器112,122の底面の全面を加熱するようにしてもよい。特に、前記した水平面Hと下面117cとのなす角度θ1が0°よりも小さい場合、すなわち蒸散液116が拡張部117b内から容器本体117内の下端側に流下しにくい状態である場合には、ヒータ113を拡張部117bの部分にも延長して配置し、拡張部117bを加熱できるようにすることによって、仮に蒸散液116が拡張部117bから流下せず、拡張部117bに残留した場合であっても、この残留した蒸散液116を加熱して蒸散させることができる。
【0062】
上記実施形態では、拡張部を有した加熱蒸散容器について説明したが、本発明の加熱蒸散容器は、図11に示すように拡張部を有していないものであってもよい。図11は、容器本体32に拡張部を有していない加熱蒸散容器31を傾斜させて配置した状態を示す概略断面図である。この加熱蒸散容器131は、傾斜しているので、水平に載置して使用する場合に比して、殺虫原体116とガス透過性フィルム18との間で充分な接触面積を確保することができる。このため、殺虫原体116を長期にわたって安定して蒸散させることができる。その他は図8,9に示した形態と同じであるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
本発明の加熱蒸散装置およびこれに使用する加熱蒸散容器は、防除が要求される様々な害虫、例えばゴキブリ、ハエ、蚊、ヌカカ、アブ、ノミ、ナンキンムシなどの衛生害虫ないし吸血害虫、イガ、コイガなどの衣類害虫、コクヌストモドキ、コクゾウムシなどの貯穀害虫、イエダニ、ツメダニ、コナダニなどのダニ類、アリ、シロアリ、ナメクジなどの防除に適用可能である。従って、本発明の加熱蒸散装置および加熱蒸散容器は、様々な場所で使用可能であり、例えば家庭内の居室、台所、食堂;畜舎、犬小屋、農園芸ハウス;押入れ、タンス等の衣類等収納庫、食物収納庫などで好適に使用することができる。
【0064】
本発明では、蒸散液としては上記実施形態で説明した殺虫原体だけでなく、例えば芳香剤、消臭剤、防虫剤などを使用することができる。また、本発明で使用する蒸散液は、毛管現象が生じる程度に流動性があればよい。
【0065】
以上の説明では、蒸散液を加熱して蒸散させる場合について記載したが、蒸散液が常温で揮散性を有する場合には、蒸散液を加熱せず、必要に応じて風を当て、常温で蒸散させるようにしてもよい。
【0066】
なお、本発明は請求項の範囲に記載の範囲内で各種の変更や改善を行いうるものであり、例えば下記のような手段を好適に採用することができる(なお、これらの手段はガス透過性フィルム一層だけの場合にも適用可能である)。
(a)ヒータ3、113と加熱蒸散容器2、112(カートリッジ)との間にスペースを設けて間接加熱を行う。これにより、上昇気流による薬剤揮散物の器具および壁面への付着防止が図れる。
(b)加熱蒸散容器2、112の取っ手に断熱シートを設けたり、トレイの一部を延長及び/又は凹凸を設けて、器体側面から装填するようにする。これにより、加熱蒸散容器2、112による火傷防止が図れる。
(c)加熱蒸散容器2、112中の気層部加熱による揮散安定化を図る。これにより、間接加熱による揮散が安定化する。
(d)加熱蒸散容器2、112表面の内外フィルム(ガス透過性フィルム)の一部にアルミニウムや薬剤非透過性の印刷(インキ)を設けて揮散面積を調節する。これにより、使用時間に合わせて揮散性コントロールが図れる。
(e)殺虫原体6、116又は揮散性フィルムを特定温度で加熱する。これにより、薬剤の分解がなく、拡散性に優れ適度の揮散量を示す。
(f)殺虫原体6、116に添加剤として粒子径調整剤(例えば脂肪族炭化水素など)を添加する。これにより、拡散性向上が図れる。
(g)蒸散に熱風を利用する。これにより、拡散性向上が図れる。
(h)殺虫原体6、116に添加剤として揮散性調整剤(例えばメチレン基を有する化合物など)を添加する。これにより、効率よく揮散調整が図れる。
【0067】
上記脂肪族炭化水素としては、例えば加熱により蒸散する脂肪族炭化水素などから選択される粒子径調整作用を有するものも本発明の実施に支障のないかぎり使用可能である。
メチレン基を有する化合物としては、3個以上のメチレン基からなる一般式CnH2n(但しnは3〜20)の脂環式化合物を主成分とする揮散調整作用を有するもので本発明の実施に支障のないかぎり揮散性調整剤(例えば沸点270〜300℃/760mmHg,沸点300〜350℃/760mmHg、沸点210〜240℃/760mmHgまたは沸点240〜270℃/760mmHgの脂環式化合物など)として使用可能である。
【0068】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明の加熱蒸散方法を説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
実施例1
図1に示す加熱蒸散装置11を用いて以下の試験を行うことにより、加熱蒸散容器2内の殺虫原体6の液量変化が蒸散量に及ぼす影響について調べた。
1.加熱蒸散容器の作製
まず、表1に示す各試料に用いるフィルム(1枚のフィルムまたは2〜3種のフィルムを貼り合わせた複合フィルム)を準備した。ここで、表1中のCPP,OPP,PE,PETは、下記材質のフィルムを示す。
CPP:無延伸ポリプロピレン
OPP:ニ軸延伸ポリプロピレン
PE :低密度ポリエチレン
PET:ポリエチレンテレフタレート
また、例えば試料No.3の外側フィルムの「CPP/PET/CPP」とは、CPP,PET,CPPの順で貼り合わせた複合フィルムであることを示しており、他の試料も同様である。内側フィルムには、図4に示すような2つの液導入孔13a,13bを設けた。
【0070】
容器本体7としては、凹部7aの寸法が縦26mm×横17mm×深さ3mmで、フランジ部7bの寸法が縦33mm×横25mmであるアルミニウム容器を用いた。この容器本体7の蒸散口を内側フィルム8で塞いだ。ついで、蒸散初期および蒸散終期を想定して、容器本体7内に図6に示すような供給ノズル31を用いて所定量の殺虫原体6(トランスフルスリン)を収容した。さらに、内側フィルム8の外面に外側フィルム12を重ね合わせて密封し、加熱蒸散容器2をそれぞれ得た。なお、フランジ部7bと内側フィルム8の周縁部、内側フィルム8の周縁部と外側フィルム12の周縁部は、それぞれ熱接着により接着した。
【0071】
2.試験方法
図1に示す加熱蒸散装置11を用いて、ヒータ3の温度(放熱板5の表面温度)を約100℃に設定し、加熱蒸散容器2を水平面に対して45°傾斜させた状態で加熱蒸散容器2の底部を全面加熱し、殺虫原体6を加熱して、加熱から24〜36時間目の殺虫原体6の蒸散量を測定した(n=5)。測定結果(平均値)を表1に示す。なお、表1に示す低下率は、殺虫原体6の充填量を1200mg(蒸散初期を想定)および150mg(蒸散終期を想定)とした場合のそれらの蒸散量を用いて、下式により求めた。また、蒸散量の測定は、以下のようにして行った。
【0072】
【数1】
<蒸散量の測定方法>
加熱蒸散容器2から揮散した殺虫剤成分をシリカゲルカラムに吸引捕集し、このシリカゲルをクロロホルムで抽出し、濃縮後、ガスクロマトグラフにて定量した。この定量結果から12時間あたりの蒸散量を算出した。
【表1】
表1から、毛管現象を利用して殺虫原体6と外側フィルムとの接触面積を大きくした試料1〜3は、殺虫原体6が少なくなっても蒸散量の低下率が小さく、蒸散量が蒸散初期から蒸散終期まで安定していることがわかる。
【0073】
実施例2
内側フィルム8および外側フィルム12として、表2に示す材質および厚みで、かつ内側フィルム8における外側フィルム12との接触面に図2に示すような格子状の凹凸パターンのエンボス加工を施したものを用い、容器本体7として、凹部7aの寸法が縦25mm×横17mm×深さ3mmで、フランジ部7bの寸法が縦33mm×横25mmであるアルミニウム容器を用い、さらに蒸散初期および蒸散終期を想定して、各容器本体7内の殺虫原体6の充填量を1200mgおよび200mgとした他は、実施例1と同様にして殺虫原体6の蒸散量および低下率を測定した。
【0074】
なお、殺虫原体6の加熱は連続して36時間行い、加熱開始後24〜36時間の間における殺虫原体6の蒸散量を測定し(n=3)、実施例1と同様にして低下率を求めた。測定結果(平均値)を表2に示す。なお、内側フィルム8に設けたエンボス加工は図2に示すような縦1.5mm×横1.5mmの凸部33と、複数の凸部33の間に形成されている幅0.5mm、深さ0.5mmの凹部32とで構成されたものである。また、表2中のOPP,PEは、下記材質のフィルムを示す。
OPP:ニ軸延伸ポリプロピレン
PE :低密度ポリエチレン
【表2】
表2から、エンボス加工した内側フィルム8を設けた試料4は、蒸散初期から蒸散終期まで蒸散量が安定していることがわかる。
【0075】
実施例3
内側フィルム8として不織布を用い、外側フィルム12として表3に示す材質のフィルムを用い、容器本体7として凹部7aの寸法が縦25mm×横17mm×深さ3mmで、フランジ部7bの寸法が縦33mm×横25mmであるアルミニウム容器を用い、さらに蒸散初期および蒸散終期を想定して、各容器本体7内の殺虫原体6の充填量を1200mgおよび200mgとした他は、実施例1と同様にして殺虫原体6の蒸散量を測定した。
【0076】
なお、試料5では、内側フィルム8(不織布)を外側フィルム12のPE面側にヒートプレスにて熱接着した後、内側フィルム8の周縁部を容器本体7のフランジ部7bに熱接着した。試料6では、フランジ部7bと内側フィルム8(不織布)の周縁部、内側フィルム8の周縁部と外側フィルム12の周縁部をそれぞれ熱接着し、周縁部以外の部分(容器本体7の蒸散口を塞ぐ部分)においては内側フィルム8と外側フィルム12とは接着しなかった。また、殺虫原体6の加熱は連続して36時間行い、加熱開始後24〜36時間の間における殺虫原体6の蒸散量を測定し(試料5はn=4、試料6はn=3)、実施例1と同様にして低下率を求めた。測定結果(平均値)を表3に示す。なお、不織布としては、出光石油化学(株)製STRATEC RW2030(ポリプロピレン、目付:30g/m2)を用いた。また、表3中のOPP,PEは、下記材質のフィルムを示す。
OPP:ニ軸延伸ポリプロピレン
PE :低密度ポリエチレン
【表3】
表3から、不織布(吸液性フィルム)を用いて殺虫原体6と外側フィルム12との接触面積を大きくした試料5および6は、殺虫原体6が少なくなっても蒸散量の低下率が小さく、蒸散量が蒸散初期から蒸散終期まで安定していることがわかる。また、不織布が外側フィルム12と熱接着されている試料5は、試料6と比較すると、蒸散量がより安定していることがわかる。
【0077】
参考例
(ガス透過性フィルムの表面温度と液温との関係)
蒸散口が1枚のガス透過性フィルムにより密封された、図12に示すような形状のアルミニウム製の加熱蒸散容器を、加熱蒸散器具にセットし、加熱開始後、30分以上経過した後、フィルム表面温度及び容器内の殺虫原体の液温を熱電対を用いて測定した。
<試験条件>
加熱蒸散容器:アルミニウム製加熱蒸散容器(深さ:2mm)
ヒータ温度:器具組込時109.5℃(単体温度:105.7℃)
環境温度:25℃±1℃
<試験結果>
上端のアルミニウム温度:81.7℃
気相部フィルム温度:68.4℃
液相部フィルム表面温度:81.0℃
(但し、液温:84.1℃)
【0078】
この試験結果から、本発明における蒸散時のガス透過性フィルムの表面温度並びに液温が前記した温度範囲、すなわちガス透過性フィルムの表面温度が約40〜130℃、好ましくは約60〜120℃の範囲内、および加熱蒸散容器内の加熱時における殺虫原体または添加剤を添加した殺虫原体(添加原体)の温度が約45〜165℃、好ましくは約65〜125℃の範囲内にあることが確認された(上記温度範囲は、特願2002−141087にて本発明者が明らかにした温度である)。
よって、ガス透過性フィルムの表面温度が約40〜130℃、好ましくは約60〜120℃の範囲内、または加熱蒸散容器内の加熱時における殺虫原体または添加剤を添加した殺虫原体の温度が約45〜165℃、好ましくは約65〜125℃の範囲内になるようにヒータにて加熱蒸散容器内の殺虫原体または添加原体を加熱すればよい。これにより、長期間安定した蒸散が可能となる。
【0079】
【発明の効果】
本発明方法によれば、蒸散液を長期にわたって安定して蒸散させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である加熱蒸散装置を示す概略図である。
【図2】本発明の加熱蒸散容器に用いる内側フィルムに設けられたエンボス加工を示す斜視図である。
【図3】直立したヒータ面上に本発明の加熱蒸散容器を保持した一例を示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態である加熱蒸散容器を示す平面図である。
【図5】 (a)〜(d)は、本発明のさらに他の実施形態である加熱蒸散容器を示す平面図である。
【図6】本発明の加熱蒸散容器の製造方法を示した概略図である。
【図7】本発明の加熱蒸散容器を水平状態で使用する場合の一例を示す断面図である。
【図8】ガス透過性フィルムに前記蒸散液を接触させる他の手段を有する加熱蒸散装置をおよび加熱蒸散容器を示す概略断面図である
【図9】図8に示す加熱蒸散容器の平面図である
【図10】直立したヒータ面上に加熱蒸散容器を保持した例を示す概略断面図である。
【図11】本発明にかかる加熱蒸散容器を傾斜させて配置した状態を示す概略断面図である。
【図12】参考例で使用した30日用加熱蒸散容器を示す正面図である。
【符号の説明】
1 ヒータ面
2 加熱蒸散容器
3 ヒータ
6 殺虫原体(蒸散液)
7 容器本体
8 内側フィルム
11 加熱蒸散装置
12 外側フィルム
13 液導入孔(供給手段)
Claims (9)
- 蒸散液を収容した容器本体と、この容器本体の蒸散口を塞ぐ互いに重ね合わされた内側フィルムおよび外側フィルムと、この内側フィルムおよび外側フィルムの間に前記蒸散液を供給するための供給手段と、前記容器本体を加熱するためのヒータとを備え、前記内側フィルムおよび外側フィルムのうち少なくとも外側フィルムがガス透過性フィルムであることを特徴とする加熱蒸散装置。
- 前記供給手段が、前記蒸散液が前記内側フィルムと接するような角度で容器本体を保持した状態において内側フィルムが蒸散液と接している部位に設けられた液導入孔である請求項1記載の加熱蒸散装置。
- 蒸散液を収容した容器本体と、この容器本体の蒸散口を塞ぐ互いに重ね合わされた内側フィルムおよび外側フィルムとを備え、前記内側フィルムおよび外側フィルムのうち少なくとも外側フィルムがガス透過性フィルムであることを特徴とする加熱蒸散容器。
- 前記内側フィルムおよび外側フィルムのうち少なくとも一方に液補給用の隙間を形成するためのエンボス加工が施されている請求項3記載の加熱蒸散容器。
- 容器本体の蒸散口を内側フィルムで塞ぎ、蒸散液を供給するための供給ノズルで前記内側フィルムを貫通して供給ノズルを容器本体内に挿入し、この供給ノズルから容器本体内に蒸散液を供給した後、前記内側フィルムの外面に外側フィルムを重ね合わせて密封することを特徴とする加熱蒸散容器の製造方法。
- 前記供給ノズルを容器本体から引き抜いた後の貫通孔を請求項2記載の液導入孔とする請求項5記載の加熱蒸散容器の製造方法。
- 蒸散液を収容した容器本体と、この容器本体の蒸散口を塞ぐ互いに重ね合わされた内側フィルムおよび外側フィルムと、前記容器本体を加熱するためのヒータとを備え、前記内側フィルムが吸液性フィルムであり、前記外側フィルムがガス透過性フィルムであり、さらに前記内側フィルムの一部が前記蒸散液に接触していることを特徴とする加熱蒸散装置。
- 蒸散液を収容した容器本体と、この容器本体の蒸散口を塞ぐ互いに重ね合わされた内側フィルムおよび外側フィルムとを備え、前記内側フィルムが吸液性フィルムであり、前記外側フィルムがガス透過性フィルムであることを特徴とする加熱蒸散容器。
- 前記吸液性フィルムが不織布である請求項8記載の加熱蒸散容器。
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