JP3940219B2 - 燃料供給装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は自動車エンジン等の燃料供給装置に係り、特に、燃料ポンプ、燃料フィルタ等を内蔵し燃料タンク内に配置される燃料供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジン等の燃料供給装置は燃料タンク内の燃料を燃料ポンプで吸引し燃料フィルタを通してエンジンに供給する。このような装置では、燃料フィルタ内を燃料が流れるときに摩擦により静電気が発生する。静電気が溜まりフィルタケースから放電すると、放電エネルギーにより火花が発生し燃料に引火する危険がある。また、フィルタケースが破壊される恐れもあった。
【0003】
放電エネルギーによる引火および破壊を防止するために特許第2612657号に提案された燃料フィルタはフィルタケースのポリマー材料に導電性材料を混入してフィルタケースを導電性とし、自動車のアース面とフィルタケース内の燃料との間に導電径路を形成している。フィルターで発生した静電気はフィルタケースから自動車のアース面に流れて放散される。
【0004】
また、特開平9−32678号公報に提案された燃料供給装置は、フィルタケースを導電性樹脂性とし燃料ポンプのハウジングと電気的に接触させている。フィルターで発生した静電気はフィルタケースから燃料ポンプのハウジングに流れ、フィルタケースおよびハウジングの表面から燃料中の水分に放散される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許第2612657号に提案された燃料フィルタのフィルタケースは導電性樹脂材料を使用しているので製造コストが高くなるという問題があった。また、フィルタケースを自動車のアース面に導電材料(アース線)で接続するが、アース通路部品の腐食、締付けの緩み、整備不良等何らかの理由でアースが不完全となったときに放電して燃料が着火する恐れがあった。後で説明するようにフィルタケースを導電材料としたときの放電エネルギーは非常に大きくなり、アース不良のときの危険性は大きい。さらに、アース通路を形成するための部品材料や製造工程の増加等による製造コスト増大の問題もあった。
【0006】
特開平9−32678号公報に提案された燃料供給装置はフィルタケースに導電性樹脂材料を使用しているので、特許第2612657号のものと同様に製造コストが高くなるという問題があった。また、燃料タンク内の燃料が少なくなったときに、燃料中への放電が不十分となり、放電による着火および破壊の恐れがあった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、製造コストを安くして、放電による燃料の着火およびフィルタケースの破壊を確実に防止できる燃料供給装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料供給装置は、燃料ポンプと燃料フィルタとを内蔵し燃料タンク内に配置される燃料供給装置において、燃料フィルタを収容するフィルタケースを非導電性樹脂により中空円筒形状に形成し、前記フィルタケースの中空部に導電材の底部を設けてリターン燃料を溜める燃料溜まりを形成し、この燃料溜まりに燃料ポンプを配置すると共に、燃料ポンプと前記フィルタケースとを前記底部に接触させたものである。本発明において非導電性樹脂とは1010Ω・cm以上の体積抵抗を有する樹脂をいう。
【0009】
また、前記燃料供給装置において、前記底部を導電ゴムにより形成したものである。
【0010】
また、前記各燃料供給装置において、前記燃料溜まりの底面近傍にリターン燃料を導くリターン燃料管を開口させたものである。
【0011】
また、前記各燃料供給装置において、前記燃料溜まりの壁面を形成する前記フィルタケースの表面に複数のリブを設けたものである。
【0012】
さらに、同各燃料供給装置において、前記フィルタケース内部を区画する内側円筒壁面と外側円筒壁面の一方である外側円筒壁面のフィルタケース内部側に複数のリブを設け、フィルタケースとフィルターとの間に燃料充満スペースを形成したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例である燃料供給装置を図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例である燃料供給装置を示す断面図である。図に示す蓋体3は燃料タンクの開口部を閉じるように燃料タンクに取付けられる。蓋体3には下方に延びる筒状部3aが一体に設けられており、筒状部3aの下部で容器体4を保持する。容器体4は非導電材のポリアセタール(POM)で作られている。
【0014】
すなわち、筒状部3aに設けられた穴3b、3b…に容器体4に設けられた結合用突起4bが係止される。穴3b、3b…は筒状部3aの周囲に4箇所等間隔に設けられているが、穴3bの両側に図示していないスリットが設けられており、弾性変形により係合が容易に行われるようになっている。
【0015】
容器体4には環状の燃料フィルタ2を収容するフィルタケース4aが形成されている。フィルタケース4aの内側に燃料ポンプ1が配置され、フィルタケース4aに固定されたポンプホルダ5に支持されている。ストレーナ6は燃料ポンプ1の吸入口に回動自在に取り付けられ、燃料タンクの深さに応じて図示の実線で示す位置と2点鎖線で示す位置との間を回動し燃料タンク底面近傍に位置する。
【0016】
燃料ポンプ1の吐出口1aはガスケット7を介して容器体4に形成された燃料流入口4cに嵌合している。そして、燃料流入口4cはフィルタケース4aの上部空間に連通しており、ストレーナ6を通して吸引され燃料ポンプ1から吐出された燃料を燃料フィルタ2の上部に導く。フィルタケース4aの下部は容器体4に設けられた燃料吐出パイプ4gに連通している。燃料吐出パイプ4gは高圧ホース12を介して蓋体3に形成された燃料吐出口3cに連通される。なお、蓋体3には図示していない窓が設けられており、この窓から高圧ホース12の連結が行われる。
【0017】
燃料吐出口3cにはエンジンに燃料を供給する燃料供給配管8が連結される。このようにフィルタ2を下方向に流れる燃料は燃料供給配管8を通りエンジンに供給されるが、燃料供給配管の途中にプレッシャーレギュレータが設けられている。燃料供給配管内の圧力が高くなると、プレッシャーレギュレータから燃料戻配管9に燃料が流れエンジンへの燃料供給圧力は一定に保たれる。
【0018】
この燃料戻配管9は蓋体3に形成された燃料流入口3dに連結されている。また、燃料流入口3dには戻りホース10が連結される。戻りホース10の端はフィルタケース4aの内側に形成された燃料溜まり4hの上部に延びている。なお、燃料ポンプ1とフィルタケース4aの下部との間に介装されたリング状の導電ゴム11は燃料溜まり4hの底を形成している。
【0019】
プレッシャーレギュレータから戻った燃料は燃料溜まり4hに流れ込み、燃料溜まり4hは常時燃料で満たされる。燃料溜まり4hから溢れた燃料はフィルタケース4aの上部を通り、蓋体3に設けられた燃料流出穴3eから燃料タンク内に戻る。なお、戻りホース10を燃料溜まり4hの底まで延ばすようにしてもよい。この場合は燃料溜まり4h内の燃料が新しいものに速く入れ替わり電荷の放散が促進される。また、プレシャーレギュレータを燃料供給装置内に設け、そのプレシャーレギュレータからの戻りを燃料溜まり4hに導くようにしてもよい。
【0020】
上記の構成において、フィルタケース4aに帯電した電荷は導電ゴム11を通り徐々に燃料ポンプ1の金属製のケーシングに流れる。そしてフィルタケースおよびケーシングから燃料溜まり4h内に存在する燃料中の水分に発散される。
【0021】
導電ゴム11の内周および外周は全面に亘って夫々燃料ポンプ1およびフィルタケース4aに圧接されているので、フィルタケース4aと燃料ポンプ1との導通が損なわれる恐れはない。このように、フィルタケース4aに帯電した電荷は常時放電されるので、フィルタケース4aが高電圧に帯電することはない。また、非導電樹脂に帯電した電荷が放電するときは樹脂内での電荷の移動速度が遅いので放電エネルギーは小さく燃料への着火およびフィルタケース破壊の恐れがない。
【0022】
非導電樹脂が放電するときの放電エネルギーが小さいことを図4に示す測定装置で測定した。導電ゴム11を除いた以外は実施例と同様の構造でフィルタケース4aを導電材料を混入した導電性樹脂で製作したものと非導電性樹脂で製作したものについて、スイッチにより放電させ、その電流を電流プローブで検出し、電流プローブアンプで増幅し、ディジタルオシロスコープで測定した。
【0023】
各帯電電圧毎の放電エネルギーが図5に示されている。測定データを導電材(フィルタケース)については四角印で、また、非導電材(フィルタケース)については黒丸印で示している。図5に示すように導電材では帯電電圧0.7kVでガソリン着火最小エネルギーの0.2mJを越えるのに対して、非導電材では帯電電圧14kVでもガソリン着火最小エネルギーを越えない。
【0024】
図6に導電材のA点での放電電流の時間経過を示し、図7に非導電材のB点での放電電流の時間経過を示している。各グラフの横軸の1目盛りは500nsである。放電電荷Q(クーロン)は放電の最初の1山について電流を時間で積分することにより算出された。放電エネルギーE(J)はE=1/2QVの式より算出された。図5から明らかなように、非導電材では帯電電圧が高くても放電エネルギーが小さいことが分かる。実施例のように非導電樹脂でフィルタケースを構成し、フィルタケースの電荷を常時確実に放散させることにより、フィルタケースからの放電による燃料の着火およびフィルタケースの破壊を確実に防止することができる。
【0025】
図2に請求項4に対応する本発明の第2の実施例である燃料供給装置の容器体4に組み込まれた部分の平面図を示す。この例では容器体4のフィルタケースからリブ4d、4d…を内側に向けて突出形成している。他の構成は第1の実施例と同様である。このような構成によりフィルタケースの電荷はリブ4d、4d…を介して燃料溜まりの燃料へ放散されフィルタケースの帯電がさらに抑制される。
【0026】
図3に請求項5に対応する本発明の第3の実施例である燃料供給装置の燃料フィルター2とフィルタケース4aの断面を示す。この例ではフィルタケース4aの外側円筒壁面から内側に向けてリブ4e、4e…を突出形成している。他の構成は第1の実施例と同様である。このような構成によりフィルタケース4aと燃料フィルター2との間に燃料充満スペース4fが形成され、燃料充満スペース4f内の燃料に燃料フィルター2で発生した電荷が放散されフィルタケース4aの帯電がさらに抑制される。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の燃料供給装置によると、フィルタケースを安価な非導電樹脂で製作するので製造コストが安くなる。そして、非導電樹脂のフィルタケースの帯電電荷は導電材および燃料ポンプを介して燃料溜まりの燃料に確実に放散され、しかも、非導電樹脂の放電エネルギーは小さいので放電による燃料の着火およびフィルタケースの破壊を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例である燃料供給装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例である燃料供給装置を示す部分平面図である。
【図3】本発明の第3の実施例である燃料供給装置を示す部分断面図である。
【図4】本発明の燃料供給装置の効果を確認するための計測装置を示すブロック図である。
【図5】同計測装置による測定結果を示すグラフである。
【図6】同計測装置による測定結果を示すグラフである。
【図7】同計測装置による測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 燃料ポンプ、1a 吐出口
2 燃料フィルタ
3 蓋体、3a 筒状部、3b 穴、3c 燃料吐出口、3d 燃料流入口
3e 燃料流出穴
4 容器体、4a フィルタケース、4b 結合用突起、4c 燃料流入口
4d リブ、4e リブ、4f 燃料充満スペース、4g 燃料吐出パイプ
4h 燃料溜まり
5 ポンプホルダ
6 ストレーナ
7 ガスケット
8 燃料供給配管
9 燃料戻配管
10 燃料戻りホース
11 導電ゴム
12 高圧ホース
Claims (5)
- 燃料ポンプと燃料フィルタとを内蔵し燃料タンク内に配置される燃料供給装置において、燃料フィルタを収容するフィルタケースを非導電性樹脂により中空円筒形状に形成し、前記フィルタケースの中空部に導電材の底部を設けてリターン燃料を溜める燃料溜まりを形成し、この燃料溜まりに燃料ポンプを配置すると共に、燃料ポンプと前記フィルタケースとを前記底部に接触させたことを特徴とする燃料供給装置。
- 前記底部を導電ゴムにより形成した請求項1の燃料供給装置。
- 前記燃料溜まりの底面近傍にリターン燃料を導くリターン燃料管を開口させた請求項1または2の燃料供給装置。
- 前記燃料溜まりの壁面を形成する前記フィルタケースの表面に複数のリブを設けた請求項1から3に記載した燃料供給装置。
- 前記フィルタケース内部を区画する内側円筒壁面と外側円筒壁面の一方である外側円筒壁面のフィルタケース内部側に複数のリブ(4e)を設け、フィルタケースとフィルターとの間に燃料充満スペース(4f)を形成した請求項1から3のいずれかに記載した燃料供給装置。
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JP11600198A JP3940219B2 (ja) | 1998-04-10 | 1998-04-10 | 燃料供給装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11600198A JP3940219B2 (ja) | 1998-04-10 | 1998-04-10 | 燃料供給装置 |
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