JP3938468B2 - ドアグリップ及びグリップカバーの成形装置 - Google Patents

ドアグリップ及びグリップカバーの成形装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ドアトリムのアームレス部からウエスト部にかけて設けられ、ドアの開閉時に乗員が掴んで開閉操作できるドアグリップ及びドアグリップにおけるグリップカバーの成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、車両のドア開閉時、乗員が手で掴んで操作するドアグリップは、中空把手状に合成樹脂をブロー成形するか、あるいは、図9に示すように、ドアグリップ1の厚み方向に2分割したグリップカバー2とグリップベース3とを接合して製作するタイプのものがある。
【0003】
上記グリップカバー2及びグリップベース3は、合成樹脂の射出成形体からなり、グリップカバー2は、内部が肉抜きされた断面C字状に形成され、グリップカバー2とグリップベース3との接合手段としては、図10,図11に示すように、グリップベース3の両側縁に形成した係止爪4をグリップカバー2の対応位置に設けた係止部5に係止するとともに、グリップベース3の内面に立設した嵌合ピン6をグリップカバー2の内面に形成したピン嵌合用ボス7内に嵌合固定して、グリップカバー2とグリップベース3との接合を図っている。
【0004】
そして、図10,図11に示すように、グリップカバー2の係止部5は、係止爪4の係止スペースを確保するために、図10中斜線で示す増肉部5aを設定するか、あるいは図11に示すようにガスチャンネルによる中空部5bを形成しているのが実情である。
【0005】
また、図12に示すように、嵌合ピン6を受けるピン嵌合用ボス7設置箇所の両側フランジは、ガスチャンネルによる中空部5bや増肉部5aが形成されており、補強リブ8と連接している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、ドアグリップ1を製品厚み方向にグリップカバー2とグリップベース3との分割体として、爪固定により両者を接合固定してなるドアグリップ1においては、係止爪4の係止スペースを確保する目的でグリップカバー2対応箇所の両側フランジに増肉部5aを設定する関係で、グリップカバー2の製品表面にヒケ、艶ムラ等の外観不良が生じ易く、かつ増肉であるため、重量アップとなり、しかも、成形サイクルにおける冷却時間も長期化することから、生産性を低下させるという問題点が指摘されている。
【0007】
同様に、ガスチャンネル5bを形成して係止爪4の係止スペースを確保する構造のものでは、ガスインジェクション工法を採用する設備費用が嵩むため、ガスチャンネルによる中空部5bを設定する方法も実用的なものではない。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、製品の厚み方向に2分割されるグリップカバーとグリップベースとを接合固定してなるドアグリップであって、増肉部やガスチャンネル中空部を設定することなく、グリップカバーの両側フランジにアンダーカット部を形成するという簡易な構成で対応することにより、製品表面にヒケや艶ムラ等の外観不良がなく、廉価な設備で成形が可能となり、軽量化や成形サイクルを短縮化できるドアグリップ及びドアグリップにおけるグリップカバーの成形装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この出願の請求項1に記載の発明は、厚み方向に2分割されたグリップカバーとグリップベースとを爪係合により接合固定してなり、ドアトリムのアームレスト部からウエスト部にかけて設けられるドアグリップであって、グリップカバーは、両側縁に沿う両側フランジ内側に向けて湾曲状に成形することにより、アンダーカット部が形成され、このアンダーカット部によりグリップベースの両側縁に設けた係止爪と係止する係止スペースを確保するとともに、グリップカバーの両側フランジが撓み変形可能に設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、この出願の請求項2に記載の発明は、グリップカバーの内面には、グリップベースの嵌合ピンを嵌合固定するピン挿入用ボスが突設され、このピン挿入用ボスの両側縁に延びる補強リブには、グリップカバーの両側フランジの撓み変形をうながす切欠きが設けられていることを特徴とする。
【0011】
更に、この出願の請求項3に記載の発明は、グリップカバーの両側フランジの湾曲形状は、成形後の変形を見越した形状に設定されていることを特徴とする。
【0012】
そして、この出願の請求項4に記載の発明は、ドアグリップにおけるグリップカバーの成形装置であって、相互に型締め、型開き可能でグリップカバーを形成する製品キャビティを画成できるキャビティ型並びにコア型と、コア型の可動時、グリップカバー全体を突き上げる直上げコマと、直上げコマの突き上げ後、更に直上げコマからグリップカバーを強制的に脱型できるように突き上げるエジェクタピンとを備えたことを特徴とする。
【0013】
ここで、グリップカバー両側のフランジに設けるアンダーカット部の寸法は4mm程度が適切である。
【0014】
そして、以上の構成から明らかなように、グリップカバーの両側フランジを内側に向けて湾曲状に成形することにより、アンダーカット部が形成され、このアンダーカット部を利用してグリップベースの係止爪を係止する係止スペースを確保するというものであるから、従来の増肉部を設定する必要がないため、製品表面にヒケや艶ムラ等の表面不良が生じることがなく、かつ重量アップを防止でき、冷却時間を短縮化することができる。
【0015】
また、ガスチャンネル工法による中空部を形成する構造のものに比べ、成形設備が簡素化できる。
【0016】
更に、本発明に係るグリップカバーの成形装置によれば、コア型の可動による型開き時に直上げコマによりグリップカバーを突き上げた後、直上げコマから更に上方に突出するエジェクタピンにより、直上げコマからグリップカバーを脱型する際、アンダーカット構造であるため、フランジ両側が拡開方向に撓み変形するため、グリップカバーの円滑な脱型が期待できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るドアグリップ及びドアグリップにおけるグリップカバーの成形装置の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明に係るドアグリップを取り付けた自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は本発明に係るドアグリップの分解斜視図、図3,図4は同ドアグリップの構成を示す各断面図、図5乃至図7は同ドアグリップにおけるグリップカバーの成形装置の概要並びに同成形装置における突上げ機構の動作を示す各断面図である。また、図8は本発明に係るドアグリップにおけるグリップカバーの変形例を示す断面図である。
【0019】
図1において、図示しないドアパネルの室内面に装着される自動車用ドアトリム10には、表面略中央部に室内側に膨出形成されるアームレスト11のフロント縁部11aからドアトリム10のウエスト部12にかけて、乗員が手で掴んでドアの開閉操作を行なえるようにドアグリップ20が把手状に設けられている。
【0020】
このドアグリップ20は、図2乃至図4に示すように、ドアグリップ20の製品厚み方向に2分割されたグリップカバー30とグリップベース40とから構成されており、製品表面側に位置するグリップカバー30並びに裏面側に位置するグリップベース40は、それぞれPP樹脂、ABS樹脂等、汎用の合成樹脂の射出成形体から構成されている。
【0021】
そして、ドアグリップ20は、掴んだ時の良好な感触を確保するために、グリップカバー30に肉抜き凹部31が形成される一方、製品長手方向両側縁に沿って延びる両側フランジ32が内側に向けて湾曲状に成形されている。また、両側フランジ32が湾曲状に成形されることにより、アンダーカット部33が肉抜き凹部31の両側に沿って形成されている。
【0022】
更に、肉抜き凹部31の凹部面には、その複数箇所にピン挿入用ボス34が立設され、このピン挿入用ボス34の両側に補強リブ35が一体化され、この補強リブ35における両側フランジ32接合箇所には切欠き36が形成されている。
【0023】
一方、グリップベース40は、上記グリップカバー30の肉抜き凹部31を閉鎖するように肉抜き凹部31の外形状に合致した形状に成形されており、両側縁に係止爪41が上下2箇所、あるいは3箇所に形成されており、グリップカバー30のピン挿入用ボス34に嵌合する嵌合ピン42が内面側に突設形成されている。
【0024】
そして、ドアグリップ20を接合するには、グリップベース40の内面に立設した嵌合ピン42をグリップカバー30の内面に立設されているピン挿入用ボス34のボス孔34aに位置させることにより、グリップカバー30とグリップベース40との位置決めを行なった後、嵌合ピン42をボス孔34a内に押し込めば、グリップベース40の両側縁に設けた係止爪41がグリップカバー30の両側フランジ32のアンダーカット部33に嵌まり込んで係止ポイント毎で係止され、グリップカバー30とグリップベース40とが接合固定される。
【0025】
従って、本発明に係るドアグリップ20においては、グリップベース40の係止爪41の係止スペースとしてグリップカバー30の両側フランジ32にアンダーカット部33を設けるという構成であるため、両側フランジ32を増肉する必要がないことから、増肉による製品表面のヒケや艶ムラ等が発生する恐れがなく、美麗な製品表面を確保できる。
【0026】
また、増肉する必要がないため、軽量化にも貢献でき、成形時における冷却時間の短縮化に繋がり、生産性を高めることができる。
【0027】
同様に、ガスインジェクション工法によるガスチャンネル中空部を形成することがないため、ガスインジェクション工法のような高価な設備を必要としないことから、廉価に成形できる。尚、アンダーカット部33の寸法(図3中dで示す)は、4mm程度が適切である。
【0028】
そして、図3,図4中矢印方向に両側フランジ32が撓み変形することにより、図5以下の成形方法で簡単に脱型操作ができる。
【0029】
図5はグリップカバー30を成形するための成形装置50の要部を示すもので、この成形装置50は、固定側のキャビティ型51と可動側のコア型52とグリップカバー30を突き上げる直上げコマ60、エジェクタピン70とから構成されている。
【0030】
そして、本発明に係る成形装置50においては、直上げコマ60とエジェクタピン70とを2段階で動作できるように、直上げコマ60はシャフト61がエジェクタプレート62に接続しており、エジェクタプレート62の上下動作に連繋して所定ストローク上下動作を行なう。尚、この直上げコマ60は、グリップカバー30の内面にアンダーカット部33やピン嵌合用ボス34等を形成できる表面形状を備えている。
【0031】
次いで、直上げコマ60に内挿されているエジェクタピン70は、直上げコマ60の上下動作時にはこれと一体に上下動作を行なうが、直上げコマ60の上昇が停止した後、更に上昇して、グリップカバー30を突き上げる動作を行なうために、別途動作用シリンダ71と連結している。
【0032】
従って、グリップカバー30の脱型工程について、図6,図7を基に説明すると、図5に示すキャビティ型51とコア型52の型締め時、両金型間の製品キャビティ内に射出充填されてグリップカバー30が成形された後、図6に示すようにコア型52が可動して、エジェクタプレート62の動作により、直上げコマ60がグリップカバー30を突き上げる。この第1の突上げ工程で、グリップカバー30はキャビティ型51、コア型52から脱型される。
【0033】
次いで、図7に示すように、エジェクタプレート62が停止して直上げコマ60も停止した後、動作用シリンダ71が動作して、エジェクタピン70が上昇し、直上げコマ60からグリップカバーを脱型させる。このとき、グリップカバー30の両側フランジ32は、アンダーカット部33により容易に撓み変形するため、この撓み変形を利用して、グリップカバー30は直上げコマ60から容易に脱型することができる。
【0034】
従って、上記構成の成形装置50を使用することにより、ガスチャンネル工法に比べ金型設備を削減でき、増肉部を設定する必要がないため冷却時間も短縮化できるとともに、アンダーカット部33による両側フランジ32の撓み変形を有効に利用すれば、円滑に脱型作業を行なえる。
【0035】
更に、従来の係止構造においてはスライド型の段差が発生するものの、本発明では、係止部としてアンダーカット部33を利用するものであるから、スライド部の段差が発生することがなく、このことも製品見栄えを向上させる要因となる。
【0036】
また、図8に示すように、ドアグリップ30の成形時、点線で示す成形品形状に対して実線で示す変形見込み形状に設定しておけば、脱型操作上有利であり、アンダーカット量を大きく設定することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係るドアグリップ及びグリップカバーの成形装置によれば、グリップカバーの両側フランジにアンダーカット部を形成し、このアンダーカット部でグリップベースの係止爪との爪固定を行なうというものであるから、従来の増肉部により係止スペースを確保する構成のものに比べ、ヒケや艶ムラ等の表面不良が発生することがなく、しかも軽量化に貢献できるとともに、冷却時間を短縮化でき、加えて、係止部設定用のスライド型を廃止でき、金型コストを低減化できるという種々の効果を有する。
【0038】
また、ガスチャンネル工法により係止スペースを確保する構成のものに比べ、設備費用を大幅に低減できるという効果を有する。
【0039】
また、グリップカバーの成形装置によれば、直上げコマとエジェクタピンとの2段駆動方式の成形装置を使用すれば、グリップカバーの両側フランジのアンダーカット部による撓み変形を利用して、グリップカバーを簡単に脱型操作することができ、生産性を高めることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るドアグリップを装備した自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】本発明に係るドアグリップの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】図2に示すドアグリップにおけるグリップカバーとグリップベースの係止部を示す断面図である。
【図4】図2に示すドアグリップにおけるグリップカバーとグリップベースとのピン嵌合部を示す断面図である。
【図5】図2に示すドアグリップにおけるグリップカバーの成形装置の構成を示す概要図である。
【図6】図5に示す成形装置における第1突上げ時の状態を示す説明図である。
【図7】図5に示す成形装置における第2突上げ時の状態を示す説明図である。
【図8】本発明に係るドアグリップにおけるグリップカバーの別実施形態を示す断面図である。
【図9】従来のドアグリップを示す斜視図である。
【図10】従来のドアグリップにおけるグリップカバーとグリップベースの係止部を示す断面図である。
【図11】従来のドアグリップにおけるグリップカバーとグリップベースの係止部を示す断面図である。
【図12】従来のドアグリップにおけるグリップカバーとグリップベースとのピン嵌合部を示す断面図である。
【符号の説明】
10 自動車用ドアトリム
11 アームレスト
12 ウエスト部
20 ドアグリップ
30 グリップカバー
31 肉抜き凹部
32 両側フランジ
33 アンダーカット部
34 ピン挿入用ボス
34a ボス孔
35 補強リブ
36 切欠き
40 グリップベース
41 係止爪
42 嵌合ピン
50 成形装置
51 キャビティ型
52 コア型
60 直上げコマ
61 シャフト
62 エジェクタプレート
70 エジェクタピン
71 動作用シリンダ

Claims (4)

  1. 厚み方向に2分割されたグリップカバー(30)とグリップベース(40)とを爪係合により接合固定してなり、ドアトリム(10)のアームレスト部(11)からウエスト部(12)にかけて設けられるドアグリップ(20)であって、
    グリップカバー(30)は、両側縁に沿う両側フランジ(32)内側に向けて湾曲状に成形することにより、アンダーカット部(33)が形成され、このアンダーカット部(33)によりグリップベース(40)の両側縁に設けた係止爪(41)と係止する係止スペースを確保するとともに、グリップカバー(30)の両側フランジ(32)が撓み変形可能に設定されていることを特徴とするドアグリップ。
  2. グリップカバー(30)の内面には、グリップベース(40)の嵌合ピン(42)を嵌合固定するピン挿入用ボス(34)が突設され、このピン挿入用ボス(34)の両側縁に延びる補強リブ(35)には、グリップカバー(30)の両側フランジ(32)の撓み変形をうながす切欠き(36)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドアグリップ。
  3. グリップカバー(30)の両側フランジ(32)の湾曲形状は、成形後の変形を見越した形状に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドアグリップ。
  4. ドアグリップ(20)におけるグリップカバー(30)の成形装置(50)であって、相互に型締め、型開き可能でグリップカバー(30)を形成する製品キャビティを画成できるキャビティ型(51)並びにコア型(52)と、コア型(52)の可動時、グリップカバー(30)全体を突き上げる直上げコマ(60)と、直上げコマ(60)の突き上げ後、更に直上げコマ(60)からグリップカバー(30)を強制的に脱型できるように突き上げるエジェクタピン(70)とを備えたことを特徴とするドアグリップにおけるグリップカバーの成形装置。
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