JP3938296B2 - 積層板用不織布用水性バインダー及びそれにより形成されてなる積層板用不織布、プリント配線板及び絶縁板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層板用不織布用水性バインダー及びそれにより形成されてなる積層板用不織布、プリント配線板及び絶縁板に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層板用不織布用水性バインダーは、ガラス繊維やアラミド繊維等に含浸されて複合材料である積層板用不織布を形成し、これを積層することにより、例えば、プリント配線板や絶縁板等を形成することになり、電気絶縁分野において欠かすことができないものとなっている。このような用途では、エポキシ樹脂を水分散したものが、積層板用不織布用水性バインダーの1つとして広く好適に用いられている。
【0003】
このような積層板用不織布用水性バインダーとしては、特許第3136237号明細書や、特許第2058501号明細書、特許第2058502号明細書に記載のガラス繊維処理剤が挙げられる。これらを用いると、汎用的な性能を有するプリント配線板や絶縁板等を形成することができるが、特にエポキシエマルションとメラミン等のアミノ樹脂とを組み合わせたものが電気絶縁用途における基本性能が良好である。
【0004】
ところで、電気絶縁用途においては、高性能化による高電気特性が求められている。例えば、通常では、エポキシエマルションは水中における安定性を保つためにカルボキシル基を有することになるが、エポキシエマルションとカルボキシル基と反応する硬化剤とを組み合わせたものは、硬化物がカルボキシル基による耐水性への影響を受けにくくなり、それに起因して電気特性が向上することになる。
【0005】
特開2000−64167号公報には、カルボキシ変性エポキシ樹脂と、オキサゾリン系反応性ポリマーとを主成分として構成される積層板用不織布が開示され、特開2001−192957号公報には、カルボキシ変性エポキシ樹脂、オキサゾリン系反応性ポリマー及びブロックイソシアネート樹脂を主成分として構成される積層板用不織布が開示されている。これらは、繊維と繊維同士を結合する樹脂バインダーとからなる積層板用不織布であり、オキサゾリン系反応性ポリマーやブロックイソシアネート樹脂がカルボキシ変性エポキシ樹脂のカルボキシル基と反応して硬化することから、耐水性向上にともなって電気特性が向上することとなり、電気絶縁用途において有用なものである。しかしながら、電気絶縁用途における材料では、より優れた不織布強度を有することにより積層板を薄膜軽量化することが要求される場合があり、また、ハンダ耐熱性等の特性を向上する工夫の余地があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐水性向上にともなって優れた電気特性を与えると共に、優れた不織布強度や耐熱性等の基本性能を与える積層板用不織布用水性バインダー及びそれにより形成されてなる積層板用不織布、プリント配線板及び絶縁板を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、積層板用不織布用水性バインダーについて種々検討するうち、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂と、カルボキシル基と反応する硬化剤とを組み合わせたものが耐水性向上にともなって優れた電気特性を有することにまず着目した。そしてカルボキシル基と反応する硬化剤としてはオキサゾリン系樹脂が最も好適であり、また、このような積層板用不織布用水性バインダーが無機微粒子及び/又はアルコキシシラン化合物含有分散体を含むと、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。
【0008】
無機微粒子の作用効果としては、無機微粒子の補強作用により強度や耐熱性が向上すること等が挙げられるが、それに加えて、無機微粒子が有機無機複合微粒子であると、有機の樹脂との相溶性が向上すること、ガラスやアラミド等の繊維との密着性が向上すること等の作用効果が発揮され、これらの相乗効果が得られることとなる。また、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂及びオキサゾリン系樹脂との組み合わせによりこれらの作用効果がより充分に発揮され、更に、有機部に水酸基及び/又はカルボキシル基を有することによりオキサゾリン系樹脂と反応し、強度、耐水性等の物性が向上することを見いだした。
またアルコキシシラン化合物含有分散体の作用効果としては、ガラス繊維やアラミド繊維等との密着性を優れたものとし、更に、積層板用不織布用水性バインダーの中和剤や酸基により不織布製造時の熱乾燥時に硬化縮合反応により強靱な架橋バインダーを形成することが可能となる。なお、シランカップリング剤を添加して密着性の向上を図ることもできるが、分散体になっていないので、水分等の影響により経時変化を生じないように積層板用不織布の製造直前にバインダー中に添加することになるため、予めバインダー中に添加することができず、また、製造直前に添加したとしてもその後に経時変化を生じることとなる。本発明では、アルコキシシラン化合物が分散体になっていることから1液で安定であり、更に大量に使用することが可能となる。また、アルコキシシラン化合物の官能基がアルキル基の場合、反応性はないが、疎水性が強く、更にアルキル基が長い場合は、撥水性があることから、耐水性が向上し、電気特性が更に向上することも見いだした。
更に無機微粒子及びアルコキシシラン化合物含有分散体の両方を組み合わせることで、これらが反応し、より強固なネットワークが形成されることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂と、オキサゾリン系樹脂と、無機微粒子及び/又はアルコキシシラン化合物含有分散体とを含む積層板用不織布用水性バインダーである。
本発明はまた、上記積層板用不織布用水性バインダーにより形成されてなる積層板用不織布でもある。
本発明は更に、積層板用不織布を積層してなるプリント配線板又は絶縁板でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の積層板用不織布用水性バインダーは、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂と、オキサゾリン系樹脂と、無機微粒子及び/又はアルコキシシラン化合物含有分散体とを含む。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂の使用形態としては、水性媒体に分散させた分散体(エマルション)の形態で用いることが好ましいが、水溶液や水希釈液の形態で用いてもよい。
【0012】
上記カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂と、カルボキシル基含有樹脂との反応物(以下、カルボキシ変性エポキシ樹脂ともいう)等を用いることができる。このような樹脂としては特に限定されず、例えば、主鎖のエポキシ樹脂にアクリル系ビニル共重合体を導入し、このビニル共重合体にカルボキシル基が結合しているもの等が挙げられ、具体的には、アクルリ変性エポキシ樹脂、アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、カルボキシ変性ビスフェノールA型アクリレート樹脂等が挙げられる。
【0013】
上記カルボキシ変性エポキシ樹脂は、例えば、(1)エチレン性不飽和カルボン酸単量体を必須とする単量体成分を重合してなるアクリル系樹脂とエポキシ樹脂とを塩基性化合物の存在下でエステル化反応させる方法、(2)エポキシ樹脂と1価のエチレン性不飽和カルボン酸単量体とを加熱下でエステル化反応させた二重結合を有する組成物の存在下で、上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、共重合可能な他の不飽和単量体とを含む単量体成分を重合する方法により得ることができる。
【0014】
上記カルボキシ変性エポキシ樹脂としてはまた、エポキシ樹脂と、カルボキシル基及びリン酸基含有樹脂との反応物等を用いることができる。このような反応物は、例えば、(3)リン酸基含有重合性単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体を必須とする単量体成分を共重合して得られるアクリル系樹脂とエポキシ樹脂とをエステル化反応する方法、(4)エポキシ樹脂とリン酸基含有重合性単量体とを反応させた二重結合を有する組成物の存在下で、上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、共重合可能な他の不飽和単量体とを含む単量体成分を重合する方法により得ることができる。このようなリン酸基含有重合性単量体を用いて形成される樹脂は、分散性が向上し、耐溶剤性、耐熱性、電気特性等に優れたものとなる。
【0015】
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。また、単量体成分は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の不飽和単量体や乳化剤1種又は2種以上を含んでもよい。他の不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチル−ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(商品名:プラクセルFシリーズ、ダイセル化学工業社製)等のヒドロキシル基含有単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体;アクリロニトリル等が挙げられる。
【0016】
上記単量体成分におけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体の存在量としては例えば、単量体成分を構成する単量体の総重量100重量%に対して5重量%以上とすることが好ましい。5重量%未満であると、水性媒体中におけるカルボキシル基含有水性エポキシ樹脂の分散安定性が悪くなったり、積層板用不織布用水性バインダー接着性が悪くなったりするおそれがある。
【0017】
上記(3)及び(4)の方法において用いられるリン酸基含有重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドフォスフェート類又はそのアルキレンオキシド付加物、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドフォスファイト類又はそのアルキレンオキシド付加物、グリシジル(メタ)アクリレートやメチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系モノマーとリン酸若しくは亜リン酸又はこれらの酸性エステル類とのエステル化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記リン酸基含有重合性単量体の使用量としては、生成するカルボキシ変性エポキシ樹脂100重量%に対して、0.1〜25重量%となるようにすることが好ましい。0.1重量%未満であると、ガラス繊維処理剤として使用したときの耐熱性、耐溶剤性、電気特性、樹脂の分散安定性及びガラス繊維処理を行い焼付硬化処理を行うときに揮発性低分子物による炉の汚染(ヒューム)、低温硬化性、硬化時間等が劣るおそれがある。25重量%を超えると、ガラス繊維紙の可とう性が減少したり、耐水性、電気特性等が劣るおそれがある。より好ましくは、0.5〜10重量%である。
【0019】
上記(1)、(2)、(3)及び(4)の方法において、単量体成分を重合する方法としては特に限定されず、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の通常のラジカル重合開始剤を用いて重合することによりアクリル系樹脂を得ることができる。
【0020】
上記アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、例えば、2000〜100000が好ましい。2000未満であると、乳化分散性が低下するおそれがあり、100000を超えると、エポキシ樹脂との反応時にゲル化を生じやすくなるおそれがある。
【0021】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールF型及びビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に平均1.1〜2.0個のエポキシ基を有し、数平均分子量が900以上のものが好ましい。このようなエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、A型としては、大日本インキ化学工業社製のエピクロン1050、エピクロン4050、エピクロン7050(いずれも商品名)、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010(いずれも商品名)等が挙げられる。F型としては、エピコート4004P、エピコート4007P、エピコート4010P、エピコート4110、エピコート4210(いずれも商品名、ジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。
【0022】
上記(1)の方法において、エステル化反応においては、アクリル系樹脂とエポキシ樹脂とを親水性有機溶剤中で塩基性化合物の存在下で反応させることによりカルボキシ変性エポキシ樹脂を得ることになる。塩基性化合物としては特に限定されず、例えば、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミン等が挙げられる。また、(3)の方法において、エステル化反応においては、アクリル系樹脂とエポキシ樹脂とを親水性有機溶剤中で反応させることによりカルボキシ変性エポキシ樹脂を得ることになる。これらのエステル化反応においては、必要に応じて加熱を行ってもよい。また、(4)の方法においては、エポキシ樹脂とリン酸基含有重合性単量体とを反応させて二重結合を有する組成物を得る際、必要に応じて加熱を行ってもよい。
【0023】
上記の方法等により製造されたカルボキシル基含有水性エポキシ樹脂は、必要に応じて、最終組成物のpHが4〜11となる量の塩基性化合物、好ましくはアンモニアやアミンを加え中和して、水性媒体中に分散して用いてもよい。水性媒体とは、水又は水と親水性有機溶剤との混合物を意味する。親水性有機溶剤としては水と混合可能なものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール等のアルキルアルコール類;エーテルアルコール類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル類;ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ダイアセトンアルコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明では、硬化剤としてオキサゾリン系樹脂を用いる。このような樹脂としては、下記一般式(1);
【0025】
【化1】
【0026】
(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を表す。)で表されるオキサゾリン基を有する重合体であれば特に限定されず、例えば、付加重合性オキサゾリンを必須とし、必要に応じてその他の不飽和単量体を含む単量体成分を、従来公知の重合法により水性媒体中で溶液重合することにより得ることができる。
【0027】
上記付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、下記一般式(2);
【0028】
【化2】
【0029】
(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、上記と同様である。R5 は、付加重合性不飽和結合をもつ非環状有機基を表す。)で表される化合物等が挙げられる。このような化合物として、具体的には、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手し易く好適である。
【0030】
このようなオキサゾリン系樹脂としては、水溶性タイプでは、エポクロスWS−500、WS−700、エマルションタイプでは、エポクロスK−2010、K−2020、K−2030(日本触媒社製)が挙げられる。特に、主剤との反応性の高い水溶性タイプが好ましい。
上記オキサゾリン系樹脂の使用量としては、例えば、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂が有するカルボキシル基と、オキサゾリン系樹脂が有するオキサゾリン基とのモル比(カルボキシル基のモル数/オキサゾリン基のモル数)が、100/20〜100/100となるようにすることが好ましい。カルボキシル基に対するオキサゾリン基のモル比が100/20未満であると、未反応のカルボキシル基が残るおそれがあり、100/100を超えると、余剰のオキサゾリン基が生じて親水基が増え、耐水性、電気特性が低下するおそれがあり、また経済的にも好ましくない。
【0031】
上記カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂とオキサゾリン系樹脂との反応においては、カルボキシル基が中和されている場合、オキサゾリン基とカルボン酸塩とが反応しにくいことから、中和に用いるアミンの種類(揮発性)を変えることで、反応性と貯蔵安定性をコントロールすることもできる。
【0032】
本発明ではまた、必要に応じて、オキサゾリン系樹脂以外の硬化剤1種又は2種以上を併用してもよい。他の硬化剤としては、例えば、エポキシ基と反応するアミン系化合物、水酸基と反応するメラミン系化合物、フェノール系化合物、(ブロック)イソシアネート系化合物、酸無水物等が挙げられる。特にブロックイソシアネート系化合物を併用するのが好ましい。これらの硬化剤の使用量としては、所望する物性や用途等に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
本発明における無機微粒子としては、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂等との親和性がよく、カップリング剤等によりこのような樹脂と化学的に結合でき、かつ電気絶縁性を有するものが好ましい。このような無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等が挙げられが、無機成分としてシリカ成分を含むものであることが好ましい。また、有機無機複合微粒子を用いることが好ましい。有機無機複合微粒子とは、有機部分(有機部)と無機部分(無機部)とから構成される微粒子を意味し、例えば、有機部分を構成する有機物と無機部分を構成する無機物とが縮合して形成されるものが好ましいが、有機部分を構成する有機物と無機部分を構成する無機物とを混合したもの等を有機無機微粒子として用いてもよい。また、このような有機無機微粒子の好ましい形態としては、有機部に水酸基及び/又はカルボキシル基を有することであり、これにより硬化剤と反応することができるため、強度や耐水性等の物性が向上する。
【0034】
上記有機物と無機物とが縮合して形成される有機無機複合微粒子としては、例えば、1分子当たりに少なくとも1個のポリシロキサン基が結合しており、かつ、上記ポリシロキサン基中に少なくとも1個のSi−OR6基(R6は、水素原子、アルキル基及びアシル基からなる群より選択される置換されていてもよい少なくとも一種の基を表す。R6が1分子中に複数ある場合、複数のR6は、同一であってもよく、異なってもよい。)を有する有機ポリマーを単独又は加水分解可能な金属化合物と共に加水分解・縮合する製造方法により得られるもの等が好適であり、このような製造方法により製造される有機無機複合微粒子を用いることは、本発明の最も好ましい形態の1つである。このような製造方法により製造される有機無機複合微粒子においては、無機微粒子が有機ポリマーで表面修飾されているためカルボキシル基含有水性エポキシ樹脂との親和性が良好であり、本発明の作用効果をより充分に発揮することができることになる。また、縮合前の有機ポリマーを、本発明における無機微粒子として用いることもできる。
【0035】
上記有機ポリマーを構成する有機鎖の構造としては特に限定されるものではない。また、有機ポリマーとしては、入手し易さ等の理由から、有機ポリマー中のポリシロキサン基と有機鎖とが、Si−C結合、Si−O−C結合等を介して化学結合している構造を有するものが好ましく、特に、結合部位が耐加水分解性に優れる点及び結合部位での交換反応等の好ましくない反応を受けにくいのが好ましいこと等から、ポリシロキサン基と有機鎖とが、Si−C結合を介して化学結合しているものがより好ましい。なお、ここで有機鎖とは、有機ポリマーにおいて、ポリシロキサン基以外の部分である。
【0036】
上記有機ポリマーの構造としては、後述する有機溶剤及び/又は水に溶解するものであれば特に限定されず、例えば、ポリシロキサン基が有機鎖にグラフトした重合体、ポリシロキサン基が有機鎖の片末端若しくは両末端に結合した重合体又はポリシロキサン基をコアとして複数の直鎖状若しくは分枝状の有機鎖(複数の有機鎖は同じであってもよく、異なってもよい)が結合した重合体等が挙げられる。有機鎖中の主鎖は、炭素を主体とするものであり、主鎖結合にあずかる炭素原子が50〜100モル%を占め、残部をN、O、S、Si、P等の元素からなるものが容易に得られるため好ましい。有機鎖を構成する重合体としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、フッ素樹脂、シリコン樹脂及びこれらの共重合体や一部変性した樹脂等が挙げられる。これらの中でも、本発明の作用効果を充分に発揮することができることから、(メタ)アクリル単位を必須として含む重合体が好ましい。更に、カルボキシル基及び/又は水酸基を含むことが更に好ましい。このような重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸単量体を必須とする単量体成分から形成される重合体が挙げられる。
【0037】
上記Si−OR6基中のR6O基は、加水分解及び/又は縮合可能な官能基であって、有機ポリマー1分子当たり少なくとも1個あり、平均5個以上あるのが好ましく、20個以上あるのがより好ましい。R6O基の個数が多いほど、加水分解・縮合する反応点が増加し、より強固な骨格を形成する微粒子が得られる。ここでR6としては、R6O基の加水分解・縮合速度が更に速くなることから、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0038】
上記R6O基がSi原子と結合したSi−OR6基を1個以上有するポリシロキサン基とは、2個以上のSi原子がポリシロキサン結合(Si−O−Si結合)により直鎖状又は分枝状に連結してなる基である。このポリシロキサン基の有するSi原子の個数は、特に限定されるものではないが、上述したR6O基を多く含有できることから、ポリシロキサン基1個当たりの平均で、4個以上が好ましく、11個以上がより好ましい。このようなポリシロキサン基としては、例えば、ポリメチルメトキシシロキサン基、ポリエチルメトキシシロキサン基、ポリメチルエトキシシロキサン基、ポリエチルエトキシシロキサン基、ポリフェニルメトキシシロキサン基、ポリフェニルエトキシシロキサン基等が挙げられる。
【0039】
更に、ポリシロキサン基中のすべてのSi原子は、有機鎖との結合及びポリシロキサン結合(Si−O−Si結合)の他はR6O基とのみ結合していることが好ましい。このようなポリシロキサン基としては、例えば、ポリジメトキシシロキサン基、ポリジエトキシシロキサン基、ポリジイソプロポキシシロキサン基、ポリn−ブトキシシロキサン基等が挙げられる。
【0040】
上記有機ポリマーの分子量としては特に限定されず、例えば、数平均分子量が200000以下であることが好ましい。200000を超えると、後述する有機溶剤に溶解しない場合があり、好ましくない。より好ましくは、50000以下である。
【0041】
上記有機ポリマーの製造方法としては、従来公知の方法により製造することができ、特に限定されず、例えば、以下に示す(1)〜(4)の方法等により製造することができる。
【0042】
(1)二重結合基やメルカプト基を有するようなシランカップリング剤の存在下、ラジカル重合性単量体をラジカル(共)重合した後、得られた(共)重合体とシラン化合物及び/又はその誘導体を共加水分解・縮合する方法。(2)二重結合基やメルカプト基を有するようなシランカップリング剤とシラン化合物及び/又はその誘導体とを共加水分解・縮合した後、得られた共加水分解・縮合物(以下、重合性ポリシロキサンともいう)の存在下ラジカル重合性単量体をラジカル(共)重合する方法。
【0043】
(3)二重結合基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等の反応性基を有するようなシランカップリング剤と上記反応性基と反応するような基を有する重合体とを反応させた後、得られた重合体とシラン化合物及び/又はその誘導体を共加水分解・縮合する方法。(4)二重結合基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等の反応性基を有するようなシランカップリング剤とシラン化合物及び/又はその誘導体とを共加水分解・縮合した後、得られた上記反応性基を有するような共加水分解・縮合によって得られたものと上記反応性基と反応するような基を有する重合体を反応させる方法。
これらの方法の中でも、より容易に有機ポリマーを得ることができる点から(2)の方法が好ましい。
【0044】
上記加水分解可能な金属化合物は、加水分解、更に縮合することにより3次元的にネットワークを形成することができるものである。このような金属化合物としては、例えば、金属ハロゲン化物、硝酸金属塩、硫酸金属塩、金属アンモニウム塩、有機金属化合物、アルコキシ金属化合物又はこれらの金属化合物の誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記金属化合物としては、金属化合物を構成する金属元素が元素周期律表のIII 族、IV族、V族の各元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素であるものが好ましい。中でも、金属化合物を構成する金属元素がSi、Al、Ti及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素によって構成される金属化合物がより好ましい。また、金属化合物の加水分解速度と有機ポリマー中のポリシロキサン基が有するR6O基との加水分解速度が同等であれば、共加水分解・縮合反応を制御し易いため、金属化合物を構成する金属元素としては、Siが最も好ましい。
【0046】
上記金属化合物として、上記金属化合物の誘導体も使用することができる。金属化合物の誘導体とは、例えば、ハロゲン、NO3、SO4、アルコキシ基、アシロキシ基等の加水分解性基の一部をジカルボン酸基、オキシカルボン酸基、β−ジケトン基、β−ケトエステル基、β−ジエステル基、アルカノールアミン基等のキレート化合物を形成しうる基で置換した金属化合物又は金属化合物及び/若しくはキレート置換金属化合物を部分的に加水分解及び/又は縮合して得られるオリゴマー及びポリマー等である。
【0047】
上記のキレート置換化合物としては、例えば、ジイソプロポキシチタンジアセチルアセトネート、オキシチタンジアセチルアセトネート、ジブトキシチタンビストリエタノールアミネート、ジヒドロキシチタンジラクテート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブトキシド、トリエタノールアミンジルコニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0048】
上記金属化合物としては、例えば、下記一般式(3);
(R7O)mMR8 n-m (3)
(式中、Mは、Si、Al、Ti及びZrからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を表す。R7は、水素原子、アルキル基及びアシル基からなる群より選択される置換されていてもよい少なくとも一種の基を表す。R8は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選択される置換されていてもよい少なくとも1種の基を表す。nは、金属元素Mの価数を表す。mは、1〜nの整数を表す。R7及び/又はR8が1分子中に複数ある場合、複数のR7及び/又はR8は互いに同一であってもよく、異なってもよい。)で表される化合物及び/又は誘導体を用いることが好ましい。
【0049】
上記一般式(3)で表される金属化合物としては、具体的には、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラ(2−エチルヘキシロキシ)チタン、ジエキトシジブトキシチタン、イソプロポキシチタントリオクタレート、ジイソプロポキシチタンジアクリレート、トリブトキシチタンステアレート、ジルコニウムアセテート、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等が挙げられる。
【0050】
上記一般式(3)で示される金属化合物の誘導体としては、具体的には、ジイソプロポキシチタンジアセチルアセトネート、オキシチタンジアセチルアセトネート、ジブトキシチタンビストリエタノールアミネート、ジヒドロキシチタンジラクテート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブトキシド、トリエタノールアミンジルコニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0051】
上記金属化合物としてはまた、工業的に入手し易く、製造装置及び最終製品の諸物性に悪影響を及ぼすハロゲン等を含んでいない等の理由から、一般式(3)においてMがSiであるシラン化合物及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。シラン化合物としては、例えば、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられる。また、シラン化合物の誘導体としては、例えば、シラン化合物の加水分解・縮合物等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシシラン化合物が原料として入手し易く特に好ましい。また、シラン化合物及びその誘導体が、Si(OR7)4及びその誘導体であると、加水分解・縮合速度が速く、より強固な骨格を形成した有機無機複合微粒子が得られる点で好ましい。
【0052】
上記有機複合無機微粒子の製造において、有機ポリマーを単独又は金属化合物とともに加水分解・縮合する際、加水分解・縮合の方法としては特に限定されないが、反応を容易に行えるという理由から、溶液中で行うのが好ましい。溶液とは、有機溶剤及び/又は水を含む溶液であり、溶液の組成としては特に限定されるものではない。
【0053】
上記有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、水と溶解可能なアルコール類、ケトン類、エーテル類を必須として用いることが好ましい。
【0054】
上記有機ポリマー単独又は有機ポリマーと金属化合物の加水分解・縮合は無触媒で行うことができるが、酸性触媒又は塩基性触媒の1種又は2種以上を用いることができる。酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸類;酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類;酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基性触媒としては、例えば、アンモニア;トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;塩基性イオン交換樹脂等が挙げられる。これらの中でも、塩基性触媒を用いると、加水分解・縮合によって得られる無機成分が、より強固な骨格を形成するため、好ましい。触媒の使用方法としては特に限定されず、例えば、あらかじめ水、有機溶剤、有機ポリマー、金属化合物に混合して使用することができる。
【0055】
上記加水分解・縮合の際の原料組成としては特に限定されず、例えば、有機ポリマー、金属化合物、有機溶剤、触媒及び水等よりなる原料組成物全量に対して、有機ポリマーの量は、0.1〜80重量%が好ましく、0.5〜30重量%がより好ましい。金属化合物の量は、0〜80重量%が好ましく、0〜50重量%がより好ましい。有機溶剤の量は、0〜99.9重量%が好ましく、20〜99重量%がより好ましい。触媒の量は、0〜20重量%が好ましく、0〜10重量%がより好ましい。
【0056】
上記加水分解・縮合に用いる水の量としては、有機ポリマー単独又は有機ポリマーと金属化合物が、加水分解・縮合によって粒子化する量であれば特に限定されるものではないが、加水分解・縮合をより充分に行い、粒子の骨格をより強固にするには、使用する水の量は多ければ多いほどよい。具体的には、加水分解・縮合する加水分解性基に対する水のモル比が、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは、0.5以上、更に好ましくは、1以上の条件で加水分解・縮合を行うことである。
【0057】
上記加水分解・縮合の操作方法としては特に限定されず、例えば、有機ポリマー又はその溶液を、また、金属化合物も用いる場合は、金属化合物又はその溶液を、水を含む溶液に添加し、反応温度が0〜100℃で、好ましくは0〜70℃の範囲で、5分間〜100時間攪拌することによって行われる。この際、有機ポリマー又はその溶液、金属化合物やその溶液を混合して、又は、それぞれ別々に、一括、分割、連続等の任意の添加方法で反応できる。また、添加を逆にして、水を含む溶液を、有機ポリマー又はその溶液や金属化合物又はその溶液中に添加してもよい。
【0058】
上記加水分解・縮合の方法としては、より狭い(シャープな)粒子径分布を有する有機無機複合微粒子を製造できる点で、以下の方法が好ましい。すなわち、反応容器中に下記原料液(A)及び原料液(B)を、個別にかつ同時に供給して加水分解・縮合を行う方法が好適に適用される。
【0059】
原料液(A): 有機ポリマー又は有機ポリマーと加水分解可能な金属化合物とを含む液
原料液(B): 水を必須成分とする液
また、反応容器中に原料液(A)及び原料液(B)とともに、個別にかつ同時に、下記原料液(C)を供給する方法も好ましい。
【0060】
原料液(C): 加水分解可能な金属化合物を含む液
また、原料液(A)中に少なくとも1種の加水分解可能な金属化合物を含有させておいて上記の加水分解・縮合する方法も好ましい。このような方法で加水分解・縮合を行うと、加水分解・縮合に伴う有機無機複合微粒子の析出過程をより制御しやすくなり、よりシャープな粒子径分布を有する有機無機複合微粒子が得られる。
【0061】
上記方法において、原料液(A)〜原料液(C)の、反応容器中への個別の供給とは、各原料液が反応容器中に供給される以前に、各原料液が混合することなく供給が行われることである。また、原料液(A)〜原料液(C)の、反応容器中への同時の供給とは、下記の式で定義される任意の時間tにおける原料液(A)及び原料液(C)の原料液(B)に対する供給比Xa、Xcが、好ましくは0.1〜10で、より好ましくは0.3〜3で、特に好ましくは0.5〜2で供給されることである。
【0062】
Xa=(a/A)/(c/C)
Xc=(b/B)/( b/B)
上記式中、Aは、原料液(A)の全量を表し、Bは、原料液(B)の全量を表し、Cは、原料液(C)の全量を表す。aは、任意の時間tにおいて、既に供給された原料液(A)の量を表し、bは、任意の時間tにおいて、既に供給された原料液(B)の量を表し、cは、任意の時間tにおいて、既に供給された原料液(C)の量を表す。
【0063】
上記加水分解・縮合の反応終了後、得られた有機無機複合微粒子を反応混合物から単離する方法としては特に限定されず、常法により行うことができ、例えば、溶媒の留去、遠心分離、再沈、限外ろ過等により単離、精製することができる。上記製造方法で得られた有機無機複合微粒子は、そのまま添加してもよく、分散体として添加してもよい。有機無機複合微粒子の分散体は、有機無機複合微粒子を種々の溶媒に分散させることにより得ることができる。
上記有機無機複合微粒子を分散させる溶媒としては、有機無機複合微粒子中の有機鎖が溶解する有機溶剤又は水を用いることが好ましい。
【0064】
上記無機微粒子の平均粒径としては、本発明の作用効果を奏する限り特に限定されるものではないが、例えば、10nm〜1μmであることが好ましい。1μmを超えると、積層板用不織布用水性バインダーの分散安定性が劣ったり、不織布の強度が低下するおそれがある。また、10nm以下では、積層板用不織布用水性バインダーの分散安定性が低下するおそれがある。
【0065】
上記無機微粒子の使用量としては、無機微粒子の種類等により適宜設定することになるが、例えば、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂100重量部に対して、1〜30重量部となるようにすることが好ましい。1重量部未満であると、強度や耐熱性が充分得られないおそれがあり、30重量部を超えると、もろくなり強度低下、耐水性、電気特性が低下するおそれがある。より好ましくは、5〜20重量部である。
【0066】
本発明におけるアルコキシシラン化合物分散体とは、アルコキシシラン化合物が媒体中に分散されたものである。好ましい形態としては、水性媒体中に分散された形態であり、より好ましくは、乳化分散された形態である。このようなアルコキシシラン化合物分散体の好ましい製造方法としては、例えば、水と乳化剤とを含む混合液を攪拌しながら、この混合液に、アルコキシシラン化合物と乳化剤とを含む混合液を徐々に添加、混合して乳化、分散を行う方法等が挙げられる。
【0067】
上記アルコキシシラン化合物分散体に含まれるアルコキシシラン化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよいが、トリアルコキシシラン化合物を含むことが好ましい。トリアルコキシシラン化合物としては、例えば、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。上記トリアルコキシシラン化合物以外のアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
【0068】
上記アルコキシシラン化合物分散体の製造に用いられる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩等が好適であり、また、アルコキシシラン化合物を含む乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンジエトキシメチルシリルプロピルグリシジルノニルフェニルエーテル等が好適である。
【0069】
上記アルコキシシラン化合物分散体の使用量としては、例えば、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂100重量部に対して、アルコキシシラン化合物が1〜30重量部となるようにすることが好ましい。1重量部未満であると、密着性、強度、耐熱性向上の効果が得られないおそれがあり、30重量部を超えると、積層板用不織布用水性バインダー液の安定性が低下、電気特性の低下となるおそれがある。より好ましくは、5〜20重量部である。
【0070】
本発明の積層板用不織布用水性バインダーには、上述した必須成分以外に、必要に応じてカップリング剤、硬化促進剤等を適量添加することができる。特にガラス繊維を用いる不織布の場合は、シランカップリング剤が効果的であり、耐熱性及び電気絶縁性が向上することになる。
【0071】
本発明の積層板用不織布用水性バインダーにはまた、本発明の作用効果を奏する限り、必要に応じて、アクリルエマルション、ウレタンエマルション等のバインダー、溶剤、可塑剤、無機又は有機の充填剤、着色顔料、染料、増粘剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、防腐防カビ剤、防錆剤等を適宜添加してもよい。
【0072】
本発明の積層板用不織布用水性バインダーにおける固形分濃度としては特に限定されず、例えば、積層板用不織布用水性バインダー100重量%に対して、固形分が5〜40重量%となるようにすることが好ましい。より好ましくは、5〜20重量%である。
【0073】
本発明の積層板用不織布用水性バインダーを製造する方法としては特に限定されず、例えば、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂の水溶液、水希釈液又は水分散液に、オキサゾリン系樹脂、無機微粒子及び/又はアルコキシシラン化合物分散体、並びに、必要に応じて添加されるその他の成分を適宜添加、混合することにより行うことができる。
【0074】
本発明の積層板用不織布用水性バインダーは、ガラス繊維やアラミド繊維等の繊維に含浸されることにより積層板用不織布を形成することができるものである。このような、本発明の積層板用不織布用水性バインダーにより形成されてなる積層板用不織布もまた、本発明の1つである。
【0075】
上記繊維としては、例えば、有機系であっても無機系であってもよく、例えば、チョップドストランド、カットファイバー、パルプ、ステープル等が用いられる。また、これらの繊維は1種類でもよく、多種類のブレンドであってもよい。繊維の成分としては、各種ガラス繊維、各種合成高分子繊維、無機繊維等が挙げられるが、電気絶縁材料に用いられる絶縁性を有し、かつその融点はハンダ耐熱温度の260℃以上であることが必要である。このような繊維として、具体的には、電器絶縁用Eガラス、セラミック、パラ系アラミド、メタ系アラミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPO(ポリフェニレンオキサイド)、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、PPS(ポリパラフェニレンサルファイド)、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)、液晶ポリエステル等の繊維が挙げられる。
【0076】
本発明の積層板用不織布において、積層板用不織布用水性バインダー及び繊維の存在割合としては、積層板用不織布の総重量100重量%に対して、積層板用不織布用水性バインダーが20〜3重量%、繊維が80〜97重量%となるように配合することが好ましい。積層板用不織布用水性バインダーが3重量%未満であると、不織布の強度が低下し、エポキシワニスを含浸してプリプレグとする工程で紙切れ等の不都合を生じたり、不織布表面にケバが発生したりして好ましくない。また、積層板用不織布用水性バインダーが20重量%を超えると、不織布のしなやかさが失われる等工程上の不都合が生じるおそれがある。
【0077】
本発明における積層板用不織布の形成方法は特に限定せず、湿式法、乾式法のいずれの方法を用いてもよいが、より高密度の基材とするためには湿式法を適用することが好ましい。シート化した不織布に積層板用不織布用水性バインダーを添加する方法としては、例えば、スプレーして散布する方法、シート化した不織布をバインダー液に含浸する方法、シート化した不織布にバインダー液をコートする方法等があり、これらの方法を適宜組み合わせてもよい。バインダーを添加後、熱風やドラムドライヤー等により乾燥、硬化させることにより、積層板用不織布を得ることができる。
【0078】
上記積層板用不織布を積層することにより、例えば、プリント配線板や絶縁板等を形成することができ、電気絶縁分野に用いることができる。本発明の積層板用不織布を積層してなるプリント配線板又は絶縁板もまた、本発明の1つである。
【0079】
上記積層板用不織布を積層してプリント配線板又は絶縁板を形成する方法としては特に限定されず、例えば、以下の方法等が好適である。
上記積層板用不織布を、マトリックスの樹脂ワニスに含浸する。樹脂としては、エポキシ樹脂を用いるのが通常であるが、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂を使用することもできる。ワニス濃度は適宜調製し、含浸で付着した余剰分はローラーで挟んで落とすか、又は、ワニス粘度が低い場合には不織布ごと縦に吊るして重力で落とし、必要量を不織布中に残すようにする。ワニスを含浸した不織布を130〜160℃程度の条件下で乾燥キュアーし、Bステージにしてプリプレグとする。このプリプレグを数枚積層し(プリント配線板の場合は表面に銅箔を重ねる)、150〜190℃程度で加圧しながら熱成形することによりプリント配線板又は絶縁板が形成される。
【0080】
本発明の積層板用不織布用水性バインダーは、耐水性向上にともなって優れた電気特性を与えると共に、優れた不織布強度や耐熱性等の基本性能を与えることができるものである。また、本発明の積層板用不織布用水性バインダーにより形成されてなる積層板用不織布は、強度や耐熱性等の基本性能に優れるため、プリント配線板や絶縁板に好適に適用されるものである。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は、「重量部」を意味するものとする。
【0082】
参考例1
(カルボキシル基含有エポキシエマルションの合成)
攪拌機、還流冷却機、滴下ロート、温度計及び窒素吹き込み管を備えた反応機に、ブチルセロソルブ33部を仕込み、窒素置換を行い、105℃に昇温後、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート(ライトエステルPM、共栄社化学社製)10部、メチルメタクリレート(MMA)20部、ブチルアクリレート20部、スチレン(St)20部、メタクリル酸20部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)10部及び2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2部の混合液を2時間かけて滴下した。その後105℃で2時間保持を行い、カルボキシル基含有アクリル樹脂を得た。次いで、予め調整していたエポキシ樹脂のブチルセロソルブ溶液(エピコート♯1009、油化シェルエポキシ社製、75重量%ブチルセロソルブ溶液)133部を加え、120℃で、グラフト反応を行い、冷却を行った後、トリエチルアミン12部を添加し、強攪拌化に脱イオン水388部を30分滴下し、不揮発分30.0%、pH8.8のカルボキシル基含有エポキシエマルション(A−1)を得た。
なお、以下も同様に、実施例1を参考例1とする。
【0083】
合成例1
(有機無機複合微粒子の合成)
攪拌機、還流冷却機、滴下ロート、温度計及び窒素吹き込み管を備えた反応機に、テトラメトキシシラン144.5g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6g、水19g、メタノール30g、アンバーリスト15(ロームアンドハースジャパン社製の陽イオン交換樹脂)5gを入れ、65℃で2時間攪拌し、反応させた。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却管にかえて、蒸留塔、これに接続させた冷却管及び流出口を設け、1.96kPaの圧力の減圧下、90℃の温度で、メタノールが流出しなくなるまで保持し、反応を更に進行させた。その後、室温まで冷却した後、アンバーリスト15を濾別し、数平均分子量が1800の重合性ポリシロキサン(B−1)を得た。
【0084】
次に、攪拌機、還流冷却管、滴下ロート、温度計及び窒素吹き込み管を備えた反応機に、有機溶剤としてトルエン200gを入れ、窒素ガスを導入し、フラスコ内温を110℃まで昇温した。次いで、先に合成したB−1を20g、MMA60g、St30g、HEMA30g、アクリル酸(AA)60g及びAIBN6gを混合した溶液を2時間滴下した。更に2時間保持を行い、不揮発分49.5%、数平均分子量が12000の有機ポリマートルエン溶液(C−1)を得た。
【0085】
攪拌機、2つの滴下口、温度計を備えたフラスコに、酢酸ブチル200g、メタノール50gを入れておき、内温を20℃に調整した。次にフラスコ内を攪拌し、有機ポリマー(C−1)20g、テトラメトキシシラン30g、酢酸ブチルの混合液と25%アンモニア水20g、メタノール20gの混合液をそれぞれ1時間で滴下した。更に2時間熟成を行い、溶剤系有機無機複合微粒子(D−1)を得た。
【0086】
更に攪拌機、温度計、冷却管及び流出口が接続した蒸留塔を備えたフラスコに溶剤系有機無機複合微粒子(D−1)250g、水100gを入れ、1.47Paの圧力下でフラスコ内温を100℃まで昇温し、アンモニア、メタノール、イソプロピルアルコール、水を固形分濃度が30%となるまで留去し、水分散有機無機複合微粒子(D−2)を得た。不揮発分30.0%、粒子中の有機含有量38.6g、平均粒子形57mm、変動係数17.4%であった。
【0087】
カルボキシル基含有エポキシエマルション(A−1)50g、水分散有機無機複合微粒子(D−2)20g、水溶性オキサゾリン樹脂(エポクロスWS−500、日本触媒社製)5g及びジアミノシランカップリング剤を0.2gを混合し、積層板用不織布用水性バインダーを得た。
【0088】
Eガラス製ガラス繊維チョップストランド(日本電気ガラス社製、繊維直径9μm、繊維長13mm)を95重量%(対不織布)湿式法でシート化した。このシートに対不織布有効固形分5重量%となるようにスプレー法で上記バインダーを塗布し、160℃で15分間乾燥、キュアして目付80g/m2の不織布を得た。この不織布にエポキシ樹脂ワニスを含浸して余剰分を取り除き、140℃で5分間乾燥、熱硬化してプリプレグとした。次に、このプリプレグを4枚積層して180℃で1時間熱プレスにより硬化し、厚さ0.6mmの積層板を得た。この積層板についてハンダ耐熱性の評価を行った。不織布の紙質を表1に、積層板のハンダ耐熱性の評価結果を表2に示す。
【0089】
参考例2
(トリアルコキシシラン化合物含有分散体の製造)
水70gにオキシエチレンの繰り返し単位数22であるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩(HLB45.8)0.075gを溶解した混合液をホモミキサーを用いて高速攪拌しながら、この混合液に、ヘキシルトリエトキシシラン30gにポリオキシエチレンジエトキシメチルシリルプロピルグリシジルノニルフェニルエーテル(HLB9.7)0.125gを溶解した混合液を徐々に添加、混合して乳化、分散を行い、30分高速攪拌を続けてトリアルコキシシラン化合物含有分散体(E−1)を得た。平均粒子径は、1.9μmであった。
【0090】
実施例1で合成したカルボキシル基含有エポキシエマルション(A−1)50gと上記トリアルコキシシラン化合物含有分散体20g、水溶性オキサゾリン樹脂(エポクロスWS−500、日本触媒社製)5g及びジアミノシランカップリング剤0.2gを混合し、積層板用不織布用水性バインダーを得た。
Eガラス製ガラス繊維チョップドストランド(日本電気ガラス社製、繊維直径9μm、繊維長13mm)を95重量%(対不織布)湿式法でシート化した。このシートに対不織布有効固形分5重量%となるようにスプレー法で上記バインダーに塗布し、160℃で15分間乾燥、キュアして目付80g/m2の不織布を得た。更に、実施例1と同様に積層板を作製し、ハンダ耐熱性の評価を行った。不織布の紙質を表1に、積層板のハンダ耐熱性の評価結果を表2に示す。
【0091】
実施例3
実施例1で合成したカルボキシル基含有エポキシエマルション(A−1)50gと有機無機複合微粒子(D−2)20gと上記トリアルコキシシラン化合物含有分散体20g、水溶性オキサゾリン樹脂(エポクロスWS−500、日本触媒社製)5g及びジアミノシランカップリング剤0.2gを混合し、積層板用不織布用水性バインダーを得た。
【0092】
Eガラス製ガラス繊維チョップドストランド(日本電気ガラス社製、繊維直径9μm、繊維長13mm)を95重量%(対不織布)湿式法でシート化した。このシートに対不織布有効固形分5重量%となるようにスプレー法で上記バインダーに塗布し、160℃で15分間乾燥、キュアして目付80g/m2の不織布を得た。更に、実施例1と同様に積層板を作製し、ハンダ耐熱性の評価を行った。不織布の紙質を表1に、積層板のハンダ耐熱性の評価結果を表2に示す。
【0093】
参考例4
攪拌機、還流冷却機、滴下ロート、温度計及び窒素吹き込み管を備えた反応機に、ブチルセロソルブ33部を仕込み、窒素置換を行い、105℃に昇温後、スチレン30部、メチルメタクリレート20部、ブチルアクリレート20部、メタクリル酸20部、ヒドロキシエチルメタクリレート10部及び2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3部の混合液を2時間かけて滴下した。その後105℃で2時間保持を行い、カルボキシル基含有アクリル樹脂を得た。ついで、予め調整していたエポキシ樹脂のブチルセロソルブ溶液(エピコート1010、油化シェルエポキシ社製、75重量%ブチルセロソルブ溶液)133部を加え、ジメチルエタノールアミン13部を添加し、105℃、2時間グラフト反応を行い、強攪拌下に脱イオン水388部を30分で滴下し、不揮発分29.8%、pH8.5のカルボキシル基含有エポキシエマルション(A−2)を得た。
【0094】
実施例1のカルボキシル基含有エポキシエマルション(A−2)をA−1の代わりに使用した以外は実施例1と同様に、積層板用不織布用水性バインダー、積層板用不織布及び積層板を作製した。また、実施例1と同様に評価を行った。不織布の紙質を表1に、積層板のハンダ耐熱性の評価結果を表2に示す。
【0095】
参考例5
実施例1で作製した積層板用不織布用水性バインダーに更に硬化剤として水分散ブロックイソシアネート樹脂(タケネートWB−720、武田薬品工業社製)を10gを添加して、積層板用不織布用水性バインダーを作製した。また、実施例1と同様に積層板用不織布及び積層板を作製し、積層板のハンダ耐熱性の評価を行った。不織布の紙質を表1に、積層板のハンダ耐熱性の評価結果を表2に示す。
【0096】
参考例6
コポリパラフェニレン−3,4′オキシジフェニレン−テレフタラミド(パラ系アラミド樹脂)チョップドストランド(帝人社製、繊維径φ12μm、繊維長3mm)を85重量%(対不織布)湿式法でシート化した。この不織布に実施例1で作製した積層板用不織布用水性バインダーを対不織布有効固形分15重量%と成るようスプレーでこのシートに散布し、160℃で15分間乾燥、キュアして目付け80g/m2の不織布を得た。以下、実施例1と同様にして積層板を作製した。
【0097】
比較例1
実施例1の有機無機複合微粒子(D−2)を使用しない以外は実施例1と同様に、積層板用不織布用水性バインダー、積層板用不織布及び積層板を作製成した。また、実施例1と同様に積層板のハンダ耐熱性の評価を行った。不織布の紙質を表1に、積層板のハンダ耐熱性の評価結果を表2に示す。
【0098】
比較例2
実施例1の水溶性オキサゾリン樹脂(エポクロスWS−500、日本触媒社製)5gの代わりに、水溶性メラミン樹脂(サイメル303、三井サイテック社製)を使用した以外は実施例1と同様に、積層板用不織布用水性バインダー、積層板用不織布及び積層板を作製した。また、実施例1と同様に積層板のハンダ耐熱性の評価を行った。不織布の紙質を表1に、積層板のハンダ耐熱性の評価結果を表2に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【発明の効果】
本発明の積層板用不織布用水性バインダーは、上述のような構成からなり、耐水性向上にともなって優れた電気特性を与えると共に、優れた不織布強度や耐熱性等の基本性能を与えることができるものである。また、本発明の積層板用不織布用水性バインダーにより形成されてなる積層板用不織布は、強度や耐熱性等の基本性能に優れるため、プリント配線板や絶縁板に好適に適用される。
Claims (4)
- カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂と、オキサゾリン系樹脂と、無機微粒子及びアルコキシシラン化合物含有分散体とを含み、
該無機微粒子は、有機無機複合微粒子であり、ポリシロキサン基が重合体に結合した有機ポリマーで有機部が構成されたものであり、
該カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂は、リン酸基含有重合性単量体を用いて形成される樹脂であり、
該リン酸基含有重合性単量体の使用量は、カルボキシ変性エポキシ樹脂100重量%に対して、0.1〜25重量%であり、
該オキサゾリン系樹脂の使用量は、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂が有するカルボキシル基と、オキサゾリン系樹脂が有するオキサゾリン基とのモル比が、100/20〜100/100となる量であり、
該無機微粒子及びアルコキシシラン化合物含有分散体の使用量は、カルボキシル基含有水性エポキシ樹脂100重量部に対して、1〜30重量部となる量である
ことを特徴とする積層板用不織布用水性バインダー。 - 前記有機無機複合微粒子は、有機部に水酸基及び/又はカルボキシル基を有するものである
ことを特徴とする請求項1記載の積層板用不織布用水性バインダー。 - 1又は2記載の積層板用不織布用水性バインダーにより形成されてなることを特徴とする積層板用不織布。
- 請求項3の積層板用不織布を積層してなる
ことを特徴とするプリント配線板又は絶縁板。
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