JP3937969B2 - 床組構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、天井裏の空間をダクトスペース等として自由に活用でき、しかも振動性状が非常に高く、かつ耐火被覆の不要な床組構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
RCや鉄骨などからなるラーメン構造の建物の場合、床組は大ばりと小ばりで構成されているため、天井裏に設備ダクトを配置するには梁を貫通させる必要があり、このためダクトの形状や容量に制約を受け、これらの制約は空調効率を低下させる原因となっている。また、鉄骨構造の場合、梁などの鉄骨を耐火被覆する必要があった。
【0003】
一方、RC系のフラットスラブ構造の場合、梁がないため天井裏に設備ダクトを自由に配置できるものの、スパンが大きくなるにつれて重量が増し、構造設計上不利になる等の課題があった。
【0004】
本願発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、天井裏に設備ダクトを梁に邪魔されることなく自由に配置することができ、かつロングスパンを効率的に実現でき、しかもメンテナンスが容易で、振動性状も向上し、さらに鉄骨部材の耐火被覆を省略できる床組構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の床組構造は、複数のPC板と、当該PC板の上側に配置された上弦材と、当該上弦材と前記PC板との間に配置されたラチス部材とからなる床組構造において、前記上弦材とラチス部材は、前記PC板の主応力方向と配力方向の二方向に配置され、前記上弦材は帯鋼から形成され、前記ラチス部材の上端は上弦材として配置された帯鋼に、前記ラチス部材の下端は前記PC板内に配置された補強鉄筋または鉄骨部材にそれぞれ連結されてなることを特徴とするものである。
【0006】
この場合、PCスラブは複数のPC板を互いに互いに接合して同一平面状に配置することにより形成することができる。なお、PCスラブの主応力方向には接合部のない連続するPC板を用いるのがよい。また、鉄骨部材として帯鋼またはH形鋼や溝形鋼などの形鋼を用いることができ、またラチス部材として鉄筋や帯鋼などを用いることができる。
【0007】
請求項2記載の床組構造は、請求項1記載の床組構造において、PC板の主応力方向と配力方向に緊張材を挿通することによりプレストレスが導入されてなることを特徴とするものである。これにより振動性状を向上させることができる。
【0008】
この場合、プレストレスは床組の主応力方向(短辺方向)または配力方向(長辺方向)、あるいは主応力方向と配力方向の両方向に導入してもよい。 また、プレストレスを導入する方法としては、プレキャストコンクリートスラブ内にPC鋼線などの緊張材を挿通してプレストレス構造とする方法、プレキャストコンクリートスラブに沿わせてPC鋼線などの緊弦材を架け渡す方法がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜図4はともに、本願発明に係る床組構造の一例を示し、図において、PCスラブ1の上側に上弦材として鉄骨部材2がPCスラブ1の主応力方向と配力方向の二方向に互いに直交させて配置されている。
【0013】
また、PCスラブ1と鉄骨部材2との間にラチス部材3と4がPCスラブ1の主応力方向と配力方向の二方向に互いに直交させてそれぞれ配置されている。
【0014】
PCスラブ1は複数のPC板5から形成され、PC板5は互いに隣接させて同一平面状に配置されている。この場合、各PC板5には主応力方向および配力方向ともに補強筋を配筋して形成されたPC板(図2(b),(c)参照)、または主応力方向に補強筋を配筋し、配力方向には補強筋とともに鉄骨部材を埋設して形成されたPC板(図4(b),(c)参照)が用いられている。
【0015】
また、隣接する各PC板5,5どうしは、主応力方向にあっては各PC板5内に配筋された主筋5a,5aどうしを、配力方向にあっては各PC板5内に配筋された配力筋5b,5bどうしおよび各PC板5内に埋設された鉄骨部材5c,5cどうしをそれぞれ、各PC板5,5どうしの突合せ部ハに形成された凹部5d内において互いに連結することにより前後および左右に連続する平板状に接合されている。
【0016】
さらに、互いに隣接して設置されたPC板5,5のコンクリート内にPC鋼線などの緊張材11が主応力方向と配力方向の両方向に通して挿通することにより主応力方向と配力方向の二方向にプレストレスが導入されている。
【0017】
なお、この場合の主筋5a,5aどうしおよび配力筋5b,5bどうしはカプラー等のジョイント金具6によって連結され、鉄骨部材5c,5cどうしは接合プレート7aと接合ボルト7bを用いてプレート接合されている。
【0018】
また、各凹部5dには、主筋5a,5aどうし、配力筋5b,5bどうしおよび鉄骨部材5c,5cどうしをそれぞれ連結した後、モルタルまたはコンクリート8が充填されている。
【0019】
鉄骨部材2と鉄骨部材5cには帯鋼が用いられ、鉄骨部材2はPCスラブ1の主応力方向および配力方向の二方向に格子状に配置され、かつ各交差する部分において互いに溶接することにより接合されている。また、同一方向に連続する鉄骨部材2,2どうしは接合プレート7aと接合ボルト7bを用いてプレート接合されている。
【0020】
鉄骨部材5cはPCスラブ1の配力方向、すなわち配力筋5bの配筋方向に連続し、かつ主筋5aの配筋方向に所定間隔おきに配置されている。
【0021】
ラチス部材3はPCスラブ1の主応力方向、すなわち主筋5aの連続方向に連続し、かつPCスラブ1の配力方向に所定間隔おきに配筋されている。また、ラチス部材3の上端は鉄骨部材2に、下端は主筋5aにそれぞれ溶接することにより連結されている。
【0022】
ラチス部材4はPCスラブ1の配力方向、すなわち配力筋5bの配筋方向に連続し、かつ主筋5aの配筋方向に所定間隔おきに配筋されている。また、ラチス部材4の上端は鉄骨部材2に、下端は配力筋5bまたは鉄骨部材5cに溶接することによりそれぞれ連結されている。また、ラチス部材3と4はともに二重に配筋されている。
【0023】
こうして床組9が構成され、この床組9の上に床パネル10aとパネル受け10bとからなるフリーアクセスフロア10が構成されている。なお、この場合、パネル受け10bは鉄骨部材2の上に突設されている。
【0024】
床組9がこのように構成されていることで、天井裏、すなわちPCスラブ1とフリーアクセスフロア10との間には梁のない、充分に広い空間が確保されるため、設備ダクトなどを自由に配置することができる。
【0025】
また、上弦材としての鉄骨部材2、およびラチス部材3と4がともに二方向に配置されているので、剛性の非常に高い床組とすることができて振動性状を向上させることができる。さらに、天井面はPCスラブで形成されているので、天井裏の鉄骨部材2、ラチス部材3、4ともにあえて耐火被覆する必要はない。
【0026】
【発明の効果】
本願発明は以上説明したとおりであり、特にPCスラブとその上側に上弦材として配置された鉄骨部材と、前記PCスラブと鉄骨部材との間に配置されたラチス部材とから構成されているので、天井裏に梁の無い広い空間を確保することができる。したがって、天井裏に設備ダクト等を梁に邪魔されることなく自由に配置することができ、またダクトの形状や容量に制約を受けることもなく、空調効率を低下させる心配もない。
【0027】
鉄骨部材とラチス部材は、PCスラブの主応力方向と配力方向の二方向に配置されていることにより剛性の非常に高い床組とすることができるため、床組の振動性状を著しく向上させることができ、高い居住性を確保することができる。
【0028】
さらに、天井面はPCスラブで形成されているので、天井裏の鉄骨部材などをあえて耐火被覆する必要がなく、施工の省力化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】床組構造の一例を示す平面図である。
【図2】床組構造の一例を示し、(a),(b)はそれぞれ、図1におけるイ−イ線断面図、ロ−ロ線断面図である。
【図3】床組構造の一例を示す平面図である。
【図4】床組構造の一例を示し、(a),(b)はそれぞれ、図3におけるイ−イ線断面図、ロ−ロ線断面図である。
【符号の説明】
1 PCスラブ
2 鉄骨部材
3 ラチス部材
4 ラチス部材
5 PC板
6 ジョイント金具
7a 接合プレート
7b 接合ボルト
8 モルタルまたはコンクリート
9 床組
10 フリーアクセスフロア
10a 床パネル
10b パネル受け
11 緊張材
Claims (2)
- 複数のPC板と、当該PC板の上側に配置された上弦材と、当該上弦材と前記PC板との間に配置されたラチス部材とからなる床組構造において、前記上弦材とラチス部材は、前記PC板の主応力方向と配力方向の二方向に配置され、前記上弦材は帯鋼から形成され、前記ラチス部材の上端は上弦材として配置された帯鋼に、前記ラチス部材の下端は前記PC板内に配置された補強鉄筋または鉄骨部材にそれぞれ連結されてなることを特徴とする床組構造。
- PC板の主応力方向と配力方向に緊張材を挿通することによりプレストレスが導入されてなることを特徴とする請求項1記載の床組構造。
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