JP3937119B2 - アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの蒸留方法 - Google Patents

アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの蒸留方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シランカップリング剤や新規重合性モノマーなどとして産業上広く用いられているアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの工業的に有利な蒸留方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランは、重合性官能基のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基を構造中に有することから、シランカップリング剤や新規重合性モノマーなどとして産業上広く用いられている極めて有用な化合物である。
【0003】
このアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの工業的な大規模精製法としては、リボイラーに多段の蒸留塔を装備した蒸留装置を用いて、高温・長時間のいわゆる熱履歴の長い蒸留条件で単離精製する方法が一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、この精製方法で得られる製品は、従来より品質的な問題として、製品の容器のふたの開閉や容器からの移送作業等のハンドリングなどにより製品が空気と触れ合う機会が生ずると、保管中の製品が次第に白濁化してくるという現象があった(この現象は、製品を大気開放すると特に顕著に白濁化してくることから、以後の記述においては開放白濁と称する)。このため、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランにおいては、精製後のこのような現象による製品の外観異常により、予期せぬ品質クレームが発生してしまうという問題があった。
【0005】
なお、この開放白濁に対しては、活性炭やシリカゲルなどの吸着剤で処理する方法や、作業後の窒素置換を十分に行い空気と遮断して貯蔵することなどの二次的な解決手段で対処されてはいたが、これらの対処法は、十分な解決策とは言えない上、精製後の後処理作業も非常に繁雑になることから負担が大きく、これまでその本質的な解決法がないのが現状であった。それ故、上記開放白濁に対する有効な解決策の確立が長らく望まれていた。
【0006】
また、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランは、自己重合性を有する熱に不安定な化合物であることから、上記のような熱履歴の長い精製法では工程中における重合の発現率が高く、このため蒸留塔の閉塞やリボイラー中の液の増粘・ゲル化が生じる場合があった。
【0007】
そこで、これら問題を回避する目的で様々な重合禁止剤の開発がこれまでなされてはいるが、未だ十分に満足のいく効能を有するものは見出されていない上、これら重合禁止剤は、製品に混入すると応用面において品質的な問題を生じるもの(着色、重合性能の低下など)や毒性・危険性の高いものもあり、満足できる改善策ではなかった。従って、本質的に自己重合性を低下せしめることができる熱履歴の短い精製法の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、大気開放時の開放白濁及び自己重合の発現率を低く抑えて高純度のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを工業的に有利に得ることができるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの蒸留方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で表されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを含む反応原液を160℃以下、15mmHg以下の減圧度で薄膜式蒸留することにより、大気開放時の開放白濁及び自己重合の発現率を極めて低く抑えて、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを高純度に精製できることを見出した。
【0010】
【化2】
Figure 0003937119
(式中、Rは水素原子又はメチル基、 2素数1〜4のアルキル基ある。)
【0011】
即ち、本発明者は、アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシラン製品中の微量不純物をガスクロマトグラフィーで分離し、質量スペクトル分析により同定を行い、開放白濁前後の微量不純物の挙動を詳細に調べることにより、開放白濁の発現プロセスを検討した。その結果、開放白濁は、下記式(2)で示される原因物質aが長い熱履歴条件における蒸留中に微量副生して蒸留単離した製品中に混入し、この原因物質aを含む製品が空気と触れ合うと、原因物質aが空気中の水分と選択的に加水分解縮合反応して微細なゲル状になるために生ずることがわかった。また、この原因物質aは、蒸留時の熱履歴がより長い(より高温・より長時間)ほど副生量が多く、また副生量が多いほど開放白濁の程度も増すことをつかんだ。
【0012】
【化3】
Figure 0003937119
(式中、R2は上記一般式(1)と同じ意味を示す。)
【0013】
更に、本発明者は、上記原因物質aに着目し、この成分をいかに副生させないようにするかを鋭意検討した結果、上記したように薄膜式蒸留装置を用いて蒸留条件を上記範囲に限定して蒸留することにより、驚くべきことに上記原因物質aが何ら副生せず、結果として開放白濁を生じない製品を得ることができ、しかも上記手段によれば、自己重合性をも大きく回避できること、それ故、面倒な後処理作業等を行うことなく簡単な工程で、高純度に精製でき、更に、連続的蒸留が可能であることから時間当たりの生産性が向上するという効果も得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0014】
従って、本発明は、一般式(1)
【化6】
Figure 0003937119
(式中、Rは水素原子又はメチル基、R 2 は炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを含む反応原液を、薄膜式蒸留装置にて温度90〜160℃、減圧度1〜15mmHgの条件で蒸留することにより、下記一般式(2)
【化7】
Figure 0003937119
(式中、R 2 は上記一般式(1)と同じ意味を示す。)
で表される物質の副生を低減することを特徴とするアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの蒸留方法を提供する。
【0015】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの蒸留方法においては、下記一般式(1)で示されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを含む反応原液が用いられる。
【0016】
【化4】
Figure 0003937119
【0017】
ここで、上記式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。また、 2素数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる
【0018】
このような上記式(1)のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの具体的な例としては、下記化合物を例示することができる。
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラ
【0019】
なお、上記式(1)のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを含む反応原液としては、その合成方法に別に制限はなく、種々の常法により合成され、次いで/もしくは濃縮された全てのものを用いることができるが、式(1)のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの濃度が70重量%以上で、かつ目的物より低沸点の不純物が1重量%以下のものが好適である。また、一度蒸留したものを再度蒸留してもかまわない。
【0020】
本発明で使用する薄膜式蒸留装置としては、反応原液を薄膜状に形成させる攪拌駆動装置部と、前記薄膜状反応原液を減圧下で加熱し、蒸発・凝縮させる蒸発・凝縮部及び加熱部とを備えた一般的に知られている仕様のものを使用可能であり、いずれの場合も蒸留操作は、通常一般的にこれらを操作している方法により実施することができる。このような薄膜式蒸留装置としては、公知のものを使用することができるが、中でもフィードされた原液を内部で撹拌する羽根により加熱部に遠心力で押し広げて薄膜を作るタイプ(遠心式)が好ましく、同タイプであるならば横型でも立型でもかまわない。また、加熱部は円筒型でもテーパー型でもかまわず、その伝熱面積も特に限定されるものではない。より好ましくは、立型流下式で円筒型の加熱部を有し、撹拌羽根がワイパー式で遠心力により撹拌羽根先端が加熱部面に押しつけられて、その面を掻き取るタイプのものが、高濃度の蒸発ができるために好ましい。
【0021】
本発明方法は、上記薄膜式蒸留装置を使用して、減圧度を〜15mmHg、かつ加熱部温度を90〜160℃範囲で薄膜式蒸留の操作を行うことを特徴とする。減圧度が15mmHgより高かったり、加熱部の温度が160℃を超えると、上記した原因物質aの副生量が次第に増してきて、得られた製品が開放白濁するだけでなく、熱による重合の発現率も増してしまい、本発明の目的を達成することができない。なお、蒸留時間はフィード量により適宜調整することができるが、フィード量は使用する薄膜蒸留装置の仕様により、形成される薄膜が液切れしない量以上で、蒸発率が飽和になって頭打ちする量以下の範囲が好ましい。
【0022】
本発明においては、上記原料を薄膜式蒸留装置を用いて上記特定条件で蒸留するものであり、その他の条件は適宜調整することができる。
【0023】
まず、本発明では、必要ならば薄膜式蒸留装置に原液からのミストをカットするためのミストセパレーターを装備させても良い。具体的には、市販の蒸留用充填剤を詰めた任意の高さの塔を薄膜式蒸発装置から冷却器に至るベーパーラインの中間に挿入するか、あるいは立型蒸留器内部の上部蒸気排出部の手前にミストセパレーターを装着するなどが好適である。
【0024】
また、蒸留すべき原液中に主成分よりも低沸点の原料、不純物、溶媒などが存在する場合は、主成分の単離精製の前に濃縮工程を実施して、1重量%以下にすることが好ましい。この濃縮工程は、蒸留時に使用する薄膜式蒸留装置を使用して行うことができる。この場合、濃縮条件は特に制限はないものの、内温160℃以下が望ましく、減圧度は50mmHg以下が望ましい。但し、あまり減圧度を上げすぎると冷却器の捕集能力を超えて、真空ポンプの不具合を引き起こしたり、系外へのパージとなってしまったり、目的物の留出量が大となってロスが大きくなるため、10〜50mmHgの範囲が好適である。本発明では、この濃縮工程を薄膜式蒸留装置を使って行うことにより、短時間に大量の反応液を濃縮することが可能となり、また、濃縮工程における重合の危険性をも軽減することができる。
【0025】
本発明では、蒸留すべき反応原液を薄膜式蒸留装置に導入する前に、必要であるならば事前に加熱して予熱を与えていても良い。反応原液の熱温度は、120℃以下であれば特に制限はない。
【0026】
本発明では、上記蒸留工程においてワンパスで高濃度の蒸発ができない場合は、排出された濃縮残分を再度薄膜式蒸留装置にフィードしてリサイクル蒸留することが好ましく、この操作により高回収率を達成することができる。
【0027】
本発明では、フィードする原液の流量は、使用する薄膜式蒸留装置の規模・仕様によって任意であり、特に制限はないが、蒸発率が最高になる最適範囲が個々にあり、多すぎても少なすぎても好ましくないため、蒸発率とフィード速度については事前に個々に最適化することが望ましい。
【0028】
また、本発明では、蒸留時の自己重合を抑制するため、単離精製されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランに新たな品質的な問題を与えない範囲で、反応原液に従来公知の重合禁止剤を添加してもかまわない。
【0029】
重合禁止剤として具体的には、ハイドロキノンやハイドロキノンモノメチルエーテルといったフェノール性化合物、4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト、2,2−チオ−ジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)モノアクリレート等のヒンダードフェノール系化合物、塩化第一銅、塩化第二銅、酸化第一銅、酸化第二銅、硫酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅等の銅化合物、フェノチアジン等のイオウ原子含有化合物、オクチル化ジフェニルアミン等の窒素原子含有化合物やリン原子含有化合物などが一般的な例として挙げられる。
【0030】
これら重合禁止剤は、単独でも2種以上を組み合わせても使用でき、また、その添加量は特に制限されないが、反応原液中に含まれる一般式(1)で示される化合物に対して0.01〜10重量%、特に0.1〜1重量%の範囲で添加することが好ましい。
【0031】
上記重合禁止剤は、薄膜式蒸留装置にフィードする液中に溶解させておくのが一般的であるが、製品への混入が品質的な問題を生じさせなければ、ベーパーロードの途中ないしは冷却器からの凝縮後のストリーム中に当該製品ないしは溶剤などに溶解させた溶液として導入させても良い。
【0032】
また、必要に応じて、重合の禁止目的のために、系内に分子状の酸素を含有した不活性な気体、例えば窒素で希釈された空気などを導入しても良く、その量は爆発限界の下限値を下回る量であれば特に制限はない。また、導入する部位にも特に制約はないが、ベーパーロードに導入すれば、より効果的である。
【0033】
更に、本発明では、薄膜式蒸留装置にフィードする液中にアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランよりも高沸点の液体を本発明の効果を妨げない範囲で存在させても良く、これにより高濃縮した後の残渣(重合禁止剤、触媒や高沸不純物など)が蒸留装置の加熱部内壁や流出ラインなどに析出・蓄積するなどの問題が軽減され、長時間の運転が可能となりうる。高沸点の液体としては、例えばタービン油、流動パラフィン、シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0034】
【発明の効果】
本発明のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの蒸留方法によれば、空気(本質的には、空気中の水分)との接触により保管時に次第に白濁化するといった品質的な問題が発生しない製品が得られる。また、自己重合性の発現が抑制され、ゲル発生によるラインの閉塞や収率の低下も防止でき、生産性も向上する。従って、本発明方法によれば、高純度のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを工業的に有利に得ることができる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
[実施例1]
薄膜式蒸留装置としては、立型掻き取り羽根タイプの回転薄膜式蒸留装置(柴田科学器械工業社製)を使用した。
【0037】
常法により合成・濃縮された3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(97.8重量%含有)の反応液900gと、重合禁止剤として4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール0.9g及びジメチルジチオカルバミン酸銅0.45gを混合した。この溶液を上記装置を用いて、減圧度5〜10mmHg及び加熱部温度150℃の条件で、一般的な方法に従い、3.2時間にわたって前記反応液をフィードして薄膜式蒸留を連続的に実施した。その結果、792gの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが蒸留精製された。また、105gの不揮発分が残渣として集められた。
【0038】
ガスクロマトグラフィーによる分析では、上記精製3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの純度は99.1%であり、上記式(1)の原因物質aはゼロであった。この精製品は、一晩大気開放しても、開放白濁は発生せず、透明のままだった。また、蒸留装置内には重合物の発生は認められなかった。
【0039】
[比較例1〜4]
蒸留装置としては、1Lのガラス製の蒸留用フラスコを蒸留釜とし、それに外径20mm×高さ500mmで内部にSUS−304製のマクマホンを充填した蒸留塔、及び塔頂部に分留塔及びコンデンサーを装備したものを使用した。
【0040】
常法により合成・濃縮された3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(97.8重量%含有)の反応液900gと、重合禁止剤として4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール0.9g及びジメチルジチオカルバミン酸銅0.45gを混合した。この溶液を上記装置に仕込み、下記に示す減圧度及び釜温度で、一般的な方法に従い、回分式にて精密蒸留した。なお、蒸留時間はいずれも約10時間で実施した。次いで、以下の蒸留条件と得られた精製品の組成及び精製品を一晩大気開放した際の外観変化挙動の関係を調べた。また、原因物質aの量変化との関係も調べた。結果を下記に示す。
比較例1:減圧度6mmHg、釜温度130℃、主成分99.5%、原因物質a含有率0.0376%、開放により白濁した。
比較例2:減圧度9mmHg、釜温度140℃、主成分99.4%、原因物質a含有率0.0562%、開放により白濁した。
比較例3:減圧度14mmHg、釜温度150℃、主成分99.1%、原因物質a含有率0.0978%、開放により濃く白濁した。
比較例4:減圧度23mmHg、釜温度155℃、主成分98.9%、原因物質a含有率0.2154%、開放により更に濃く白濁した。なお、白濁の一部は凝集してゲル状となり、放置により沈降して下部に堆積した。
【0041】
いずれも、開放後の放置において、白濁の進行と共に原因物質aの減少が見られ、原因物質aが消失すると、白濁の進行は止まった。次いで、原因物質aが消失し、白濁の進行が止まったものを濾過した後の透明な上澄みを再度大気開放すると、もはや白濁しなかった。
【0042】
上記結果より、熱履歴が長い従来の一般的な蒸留形式では、原因物質aが微量副生し、開放白濁がそれにより発生し、その副生量が多いほど白濁の度合いも増すことがわかった(副生量がなければ白濁しないこともわかった)。また、蒸留時の温度が高くなるほど、原因物質aの副生量が増すこともわかった。
【0043】
[実施例2]
薄膜式蒸留装置としては、実施例1と同様の立型掻き取り羽根タイプの回転薄膜式蒸留装置を使用した。
【0044】
常法により合成・濃縮された3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(87重量%含有)の反応液692.3g及び重合禁止剤として4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール0.69gを混合溶解した。この溶液を上記装置を用いて、減圧度5mmHg及び加熱部温度134℃の条件で、一般的な方法に従い、4.1時間にわたって前記反応液をフィードして薄膜式蒸留を連続的に実施した。その結果、448gの3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが蒸留精製された。また、244gの不揮発分が残渣として集められた。
【0045】
ガスクロマトグラフィーによる分析では、上記精製3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランの純度は98.6%であり、原因物質aは痕跡量であった。次いで、この精製品を大気開放しても、開放白濁は発生せず、透明のままだった。また、蒸留装置内には重合物の発生は認められなかった。
【0046】
[比較例5]
蒸留装置としては、1Lのガラス製の蒸留用フラスコを蒸留釜とし、それに外径20mm×高さ500mmで内部にSUS−304製のマクマホンを充填した蒸留塔、及び塔頂部に分留塔及びコンデンサーを装備したものを使用した。
【0047】
常法により合成・濃縮された3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(82重量%含有)の反応液1000gと、重合禁止剤として4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール1g及びジメチルジチオカルバミン酸銅3gを混合した。この溶液を上記装置に仕込み、減圧度5〜10mmHg及び釜温度130〜145℃の条件で、一般的な方法に従い、約10時間にわたって回分式にて精密蒸留を実施した。その結果、670gの3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが蒸留精製された。また、88gの前留分と221gの不揮発分が残渣として集められた。
【0048】
ガスクロマトグラフィーによる分析では、上記精製3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランの純度は97.9%であり、原因物質aは0.98%であった。次いで、この精製品を大気開放すると、わずか30分で開放白濁が発生し、一晩開放後では白色のゲル物が大量に析出し、底部に凝集して沈降していた。なお、上記条件において、重合禁止剤のジメチルジチオカルバミン酸銅が無い場合には、蒸留中途で蒸留釜中の液がゲル化した。
【0049】
[比較例6]
薄膜式蒸留装置としては、実施例1と同様の立型掻き取り羽根タイプの回転薄膜式蒸留装置を使用した。
【0050】
常法により合成・濃縮された3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(87重量%含有)の反応液692.3g及び重合禁止剤として4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール0.69gを混合した。この溶液を上記装置を用いて、減圧度20mmHg及び加熱部温度160〜165℃の条件で、一般的な方法に従い、4.5時間にわたって前記反応液をフィードして薄膜式蒸留を連続的に実施した。その結果、473gの3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが蒸留精製された。また、213gの不揮発分が残渣として集められた。
【0051】
ガスクロマトグラフィーによる分析では、上記精製3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランの純度は96.3%であり、原因物質aは0.16%であった。次いで、この精製品を大気開放すると、一晩後には開放白濁が発生していた。
【0052】
[実施例3]
薄膜式蒸留装置としては、横型回転薄膜式蒸留装置で、伝熱面積1m2のものを使用した。
【0053】
常法により合成された3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(63.8重量%含有)の反応液及び重合禁止剤として4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノールを500ppm及びジメチルジチオカルバミン酸銅を1000ppm混合した。この溶液を上記装置を用いて、減圧度20mmHg及び加熱部温度155℃の条件で、一般的な方法に従い、58kg/hrのフィード速度により、39時間にわたって薄膜式蒸留(濃縮)を連続的に実施した。その結果、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン98.5%を含む濃縮液が約1400kg得られた。
【0054】
次いで、この濃縮液を上記蒸留装置を用いて、減圧度12mmHg及び加熱部温度155℃の条件で、一般的な方法に従い、95kg/hrのフィード速度により、15時間にわたって薄膜式蒸留(単離精製)を連続的に実施した。その結果、約1100kgの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが蒸留精製された。また、約300kgの不揮発分が残渣として集められた。
【0055】
ガスクロマトグラフィーによる分析では、上記単離精製3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの純度は99.3%であり、原因物質aはゼロであった。この精製品を一晩大気開放しても、開放白濁は発生せず、透明のままだった。また、蒸留装置内には重合物の発生は認められなかった。
【0056】
なお、次いで、上記の薄膜式蒸留品(単離精製)の約300kgの不揮発分を上記蒸留装置を用いて、減圧度12mmHg及び加熱部温度155℃の条件で、一般的な方法に従い、95kg/hrのフィード速度により、3〜4時間にわたって再度薄膜式蒸留(回収精製)を連続的に実施した。その結果、約220kgの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが蒸留精製された。また、約80kgの不揮発分が残渣として集められた。
【0057】
ガスクロマトグラフィーによる分析では、上記回収精製3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの純度は99.1%であり、原因物質aはゼロであった。この精製品を一晩大気開放しても、開放白濁は発生せず、透明のままだった。また、蒸留装置内には重合物の発生は認められなかった。
【0058】
[実施例4]
薄膜式蒸留装置は、立型掻き取り羽根タイプの回転薄膜式蒸留装置で、伝熱面積0.3m2のものを使用した。
【0059】
常法により合成された3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(95重量%含有)の濃縮液及び重合禁止剤として4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノールを500ppm及びジメチルジチオカルバミン酸銅1000ppmを混合した。この濃縮液を上記蒸留装置を用いて、減圧度5mmHg及び加熱部温度150℃の条件で、一般的な方法に従い、45〜50kg/hrのフィード速度により、数時間にわたって薄膜式蒸留(単離精製)を連続的に実施した。その結果、約42〜47kg/hrの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが蒸留精製された。また、約3kg/hrの不揮発分が残渣として集められた。
【0060】
ガスクロマトグラフィーによる分析では、上記単離精製3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの純度は99%以上であり、原因物質aはゼロであった。この精製品は、一晩大気開放しても開放白濁は発生せず、透明のままだった。また、蒸留装置内には重合物の発生は認められなかった。
【0061】
[実施例5]
蒸留条件を減圧度10mmHgとした以外は、実施例4と同様の設備・方法にて、数時間にわたって薄膜式蒸留(単離精製)を連続的に実施した。その結果、約40〜44kg/hrの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが蒸留精製された。また、約5kg/hrの不揮発分が残渣として集められた。
【0062】
ガスクロマトグラフィーによる分析では、上記単離精製3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの純度は99%以上であり、原因物質aはゼロであった。この精製品は、一晩大気開放しても開放白濁は発生せず、透明のままだった。また、蒸留装置内には重合物の発生は認められなかった。
【0063】
[実施例6]
蒸留条件を減圧度10mmHg、加熱部温度160℃とした以外は、実施例4と同様の設備・方法にて、数時間にわたって薄膜式蒸留(単離精製)を連続的に実施した。その結果、約42〜47kg/hrの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが蒸留精製された。また、約3kg/hrの不揮発分が残渣として集められた。
【0064】
ガスクロマトグラフィーによる分析では、上記単離精製3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの純度は99%以上であり、原因物質aはゼロであった。この精製品は、一晩大気開放しても開放白濁は発生せず、透明のままだった。また、蒸留装置内には重合物の発生は認められなかった。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0003937119
    (式中、Rは水素原子又はメチル基、 2素数1〜4のアルキル基である。)
    で表されるアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランを含む反応原液を、薄膜式蒸留装置にて温度90〜160℃減圧度1〜15mmHg条件で蒸留することにより、下記一般式(2)
    Figure 0003937119
    (式中、R 2 は上記一般式(1)と同じ意味を示す。)
    で表される物質の副生を低減することを特徴とするアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの蒸留方法。
  2. アクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランとして、一般式(1)中の置換基 2チル基あるものを使用する請求項1記載のアクリロキシ基又はメタクリロキシ基含有アルコキシシランの蒸留方法。
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