JP3936121B2 - 体外循環回路用成形型フィルター及びドリップチャンバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、体外循環回路用フィルター及びこれを組み込んだドリップチャンバーに関するもので、更に詳しくは本発明は、従来のような熱接着法ではなく、血流がよく、更に底部の血溜まりによる血液凝固のない体外循環回路用フィルター及びこれを組み込んだドリップチャンバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、腎不全等の治療時において血液を浄化する際、体外循環させる血液中の異物や血液凝固物等を除去するために、ドリップチャンバー内にフィルターが設置されるが、このフィルターは通常、ドリップチャンバー内筒部の下部側に設けられている。このドリップチャンバー内に設置されるフィルターは、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維製の袋状フィルターをドリップチャンバーの塩ビチューブと高周波ウェルダーによって熱接着している。また血液回路を治療する際、回路内を生理食塩液で満たす作業を行うことが必要となる。
(特許文献1) 特開平9−140788(図1)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のごときドリップチャンバーには、フィルターを高周波ウェルダーによって熱接着しているので、熱接着不足がしばしば起こり、これにより血液漏れ等の事故が起こり問題となっていた。またフィルター自身、袋状フィルターからなるので、十分な血流が得られない。その結果フィルターとの熱接着部に血溜まりが生じ、血液凝固の原因となる等の欠点があった。更に血液回路を治療する際、回路内を生理食塩液で満たす作業を行うが、この生理食塩液内に溶け込んでいる、いわゆる溶存空気が、微小空気となり袋状フィルターの内壁に着くので、この微小空気(空気泡)を除去するのが非常に煩わしいという問題があった。
【0004】そこで、本発明者等は、これらの問題点乃至欠点について種々検討した結果、フィルターを成形型フィルターとし、その際、メッシュの窓をスパイラル状とし、かつフィルター下部をスカート状に形成することによって血流を良好にし、血液凝固の原因となる血溜まりを防止することができ、更にフィルター上部の内側の天井部に突起を垂下することによって空気泡を突起を通して外部へ誘導することができ、フィルター内壁への付着が防止されることを見出した。更にまたフィルターのスカート状部の端部をドリップチャンバーの下端とキャップの底部とで狭接固定することにより設置することができ、極めて簡単に取り付けられ、かつ熱接着をしないので、それによる不都合を解消することができることを見出した。
【0005】したがって、本発明が解決しようとする第1の課題は、血流を良好にし、血液凝固の原因となる血溜まりを防止することができると共にフィルター内壁への空気泡の付着が防止される体外循環回路用フィルターを提供することにある。また本発明が解決しようとする第2の課題は、極めて簡単に取り付けられ、かつ熱接着をしないので、それによる不都合を解消することができる体外循環回路用フィルター及びこれを組み込んだドリップチャンバーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の本発明の各課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
【0007】
〔請求項1〕支柱間にメッシュを有する鐘形成形型フィルターにおいて、該鐘形成形型フィルターは、該フィルターの下方の周囲に環状部を設け、該環状部から外側方向に傾斜角度が5°〜25°未満であるスカート状のフィルター下部と、前記環状部より上側の鐘形成形型フィルターの直線状外周面の角度は、該外周面と接する垂直軸に対して0〜10°未満であるフィルター中部と、フィルター上方の曲面状のフィルター上部からなり、前記メッシュが形成する窓の少なくともフィルター中部の窓がスパイラル方向に形成され、更にフィルター上部の内側の天井部には、突起が垂下していることを特徴とする体外循環回路用成形型フィルター。
〔請求項2〕鐘形成形型フィルターは、コロナ放電処理あるいは低温プラズマ処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の体外循環回路用成形型フィルター。
〔請求項3〕請求項1または請求項2に記載の体外循環回路用成形型フィルターが、チャンバー筒下端とキャップの底部とで挟接固定されていることを特徴とするドリップチャンバー。
〔請求項4〕請求項3に記載のドリップチャンバーの体外循環回路用成形型フィルターが、該フィルター下部のスカート状の外周部にフランジ部を設け、該フランジ部がチャンバー筒下端とキャップの底部とで挟接固定されていることを特徴とするドリップチャンバー。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【0009】
本発明の体外循環回路用成形型フィルターは、支柱間にメッシュを有する鐘形成形型フィルターにおいて、該鐘形成形型フィルターは、該フィルターの下方の周囲に環状部を設け、該環状部から外側方向に傾斜角度が5°〜25°未満であるスカート状のフィルター下部と、前記環状部より上側の鐘形成形型フィルターの直線状外周面の角度は、該外周面と接する垂直軸に対して0〜10°未満であるフィルター中部と、フィルター上方の曲面状のフィルター上部からなり、前記メッシュが形成する窓の少なくともフィルター中部の窓がスパイラル方向に形成され、更にフィルター上部の内側の天井部には、突起が垂下していることいることを特徴とする。これにより血流を良好にし、血液凝固の原因となる血溜まりを防止することができると共にフィルター内壁への空気泡の付着が防止されるという優れた効果を奏するものである。特に本発明では、少なくともフィルター中部のメッシュを形成する窓がスパイラル方向に形成されていることにより血液の流れが層流となり円滑に行われる。ここで、「スカート状に傾斜」とは、裾の広がった形状を意味し、この傾斜の角度は水平に対する角度である。
【0010】
本願の請求項2に記載の発明において、請求項1に記載の体外循環回路用成形型フィルターは、コロナ放電処理あるいは低温プラズマ処理が施されていることを特徴とすることにより、血液凝固を防止することができる。また本願の請求項1または請求項2に記載の体外循環回路用成形型フィルターが、チャンバー筒下端とキャップの底部とで挟接固定されていることにより、簡単に取り付けられ経済的であり、また熱接着する必要がないので、接着不足による事故がないという優れた効果を奏するものである。また請求項4に記載の発明において、請求項3のフィルター下部のスカート状部の端部にフランジ部を設け、該フランジがチャンバー筒下端とキャップの底部とで挟接固定されていることを特徴とすることにより、請求項3の発明よりも、更に挟接固定が簡単となり、挟接固定が奏する効果は更に高くなるものである。
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を更に詳しく説明する。図1は、本発明の、フィルターを内接したドリップチャンバーを示す断面図である。図2は、本発明の体外循環回路用成形型フィルターの部分断面側面図である。図3は、図2の体外循環回路用成形型フィルターの平面図である。図1において、本発明の体外循環回路用成形型フィルター10は、ドリップチャンバー1の底部に設置されており、その取り付けは、該フィルター10の下部103の水平環状枠16からスカート状の傾斜部が伸び、その端部のフランジ17がドリップチャンバー1の筒3の下端31とそのキャップ2の底部21とで接して挟まれることにより固定されている(挟接固定)。これにより熱接着をする必要がなく、簡単に取り付けられ、経済的である。
【0012】
また図2乃至図3において、体外循環回路用成形型フィルター10は、鐘形状をしており、その下部103はスカート状14に傾斜して形成されており、メッシュ18は、放射状に形成されている。このスカート状14の傾斜角は、5°〜25°未満であり、好ましくは10°〜25°未満である。この傾斜角が25°以上の場合には、ドリップチャンバーの壁面とフィルター面との間隔が狭く成り過ぎ、スカート状部からの血液の流れが不十分となる。したがって、上記の傾斜角が5°〜25°未満のとき、血液の流れが円滑に行われ、血溜まりが生じることがない。したがって、血液の凝固が防止される。
【0013】
また本発明の体外循環回路用成形型フィルター10は、鐘形状をしており、この鐘形成形型フィルターの中部102の外周面の角度は、該外周面と接する垂直軸に対して0〜10°未満であり、好ましくは4°〜6°である。この角度が10°以上の場合は、フィルター内体積が小さくなり、したがって十分な血液の流入が阻害される。上記の0〜10°未満で血流が良好となる。更にこのフィルター上部101の内側の天井部には気泡溜防止部である突起11を有しており、その形状は、つらら状が好ましい。このように突起11を有することにより血液のろ過時や生理食塩液で満たす作業を行う時に生じる空気泡の流れを円滑にし、突起11の表面15に付着した空気泡を周囲に設けられているメッシュの窓19から容易に逃がすことができる。
【0014】
更に、本発明の体外循環回路用成形型フィルター10は、フィルターの骨組みである支柱13を有し、これにより鐘形に保持されると共にこれらの支柱間にメッシュが形成されている。このメッシュは、好ましくはスパイラル方向に少なくともフィルター中部の窓12が設けられている。これにより窓12は水平ではなく、スパイラル方向に傾斜して形成されている。このように窓12をスパイラル方向に傾斜して設けたことにより血液の流れは、従来は乱流となる傾向があったが、このフィルターでは層流となり円滑に流れ、したがって臨界レイノルズ数が少ないため血球等のダメージが少ないという優れた効果を奏するものである。
【0015】
本発明の体外循環回路用成形型フィルター10は、射出成形法で形成される。このフィルター10は、必要に応じてコロナ放電処理あるいは低温プラズマ処理が施されていてもよい。コロナ放電処理の場合には、処理条件が処理電力600W〜1200W(処理強度100〜150W/m2 /min)、周波数10〜20KHZ、電極との距離0.2mm〜1.5mmとして常温下で両面に加工処理することにより行われる。この結果その表面に空気中の酸素が反応して水酸基やカルボキシル基等が生成され、親水性となり、したがってこの成形フィルター10は優れた抗血栓性が得られる。また低温プラズマ処理は、プラズマは低気圧下でのグロー放電によって得られるもので、プラズマ処理条件は、周波数5KHz〜6GHz、高周波電力25W〜150W、減圧度0.001mmHg〜0.5mmHgが好ましい。メッシュフィルターをグロー放電により低温プラズマ処理した後、空気中に取り出すことにより、その表面には空気中の酸素と反応して水酸基やカルボキシル基等が生成され、親水性となり、したがってこの成形フィルター10は優れた抗血栓性が得られる。
【0016】
本発明のフィルター10の用途は、輸液等の注入時や注射液アンプルのカット時に混入するガラス微小片等のいわゆる異物、また透析器(ダイアライザー)、動脈側回路部等で発生した血液凝固塊等を体内に混入する前に除去するために用いるものである。したがって、腎不全治療用の体外循環方式の人工透析、ならびに血漿交換や血液吸着等の血液浄化療法で使用する血液回路のドリップチャンバー、その他に使用されるものである。
【0017】
【発明の効果】
本発明の体外循環回路用成形型フィルターは、支柱間にメッシュを有する鐘形成形型フィルターにおいて、該鐘形成形型フィルターの下部は、スカート状に傾斜しており、該傾斜角度が5°〜25°未満であり、また鐘形成形型フィルターの中部の直線状外周面の角度は、該外周面と接する垂直軸に対して0°〜10°未満であり、更にフィルター上部の内側の天井部には、突起が垂下していることにより、血流を良好にし、血液凝固の原因となる血溜まりを防止することができると共にフィルター内壁への空気泡の付着が防止されるという優れた効果を奏するものである。特に本発明では、少なくともフィルター中部のメッシュを形成する窓がスパイラル方向に形成されていることにより血液の流れが層流となり円滑に行われる。
【0018】
また本発明において、請求項1に記載の体外循環回路用成形フィルターは、コロナ放電処理あるいは低温プラズマ処理が施されていることを特徴とすることにより、いっそう血液凝固を防止することができる。また本願の請求項1または請求項2に記載の体外循環回路用成形型フィルターが、チャンバー筒下端とキャップの底部とで挟接固定されていることにより、簡単に取り付けられ経済的であり、また熱接着する必要がないので、接着不足による事故がないという優れた効果を奏するものである。そして請求項3に記載のドリップチャンバーは、体外循環回路用成形型フィルターの下部のスカート状の外周部にフランジ部を設け、該フランジがチャンバー筒下端とキャップの底部とで挟接固定されていることにより、挟接固定がより簡単となり、挟接固定が奏する効果は更に高くなるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、フィルターを内接したドリップチャンバーを示す断面図である。
【図2】本発明の体外循環回路用成形型フィルターの部分断面側面図である。
【図3】図2の体外循環回路用成形型フィルターの平面図である。
【符号の説明】
1 ドリップチャンバー
2 キャップ
3 筒
10 体外循環回路用成形型フィルター
11 気泡溜防止部(突起)
12、19 窓
13 支柱
14 スカート状部
15 突起
16 水平環状枠
17 フランジ
18 メッシュ
21 底部
31 筒下端
101 フィルター上部
102 フィルター中部
103 フィルター下部
Claims (4)
- 支柱間にメッシュを有する鐘形成形型フィルターにおいて、該鐘形成形型フィルターは、該フィルターの下方の周囲に環状部を設け、該環状部から外側方向に傾斜角度が5°〜25°未満であるスカート状のフィルター下部と、前記環状部より上側の鐘形成形型フィルターの直線状外周面の角度は、該外周面と接する垂直軸に対して0〜10°未満であるフィルター中部と、フィルター上方の曲面状のフィルター上部からなり、前記メッシュが形成する窓の少なくともフィルター中部の窓がスパイラル方向に形成され、更にフィルター上部の内側の天井部には、突起が垂下していることを特徴とする体外循環回路用成形型フィルター。
- 体外循環回路用成形型フィルターは、コロナ放電処理あるいは低温プラズマ処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の体外循環回路用成形型フィルター。
- 請求項1または請求項2に記載の体外循環回路用成形型フィルターが、チャンバー筒下端とキャップの底部とで挟接固定されていることを特徴とするドリップチャンバー。
- 請求項3に記載のドリップチャンバーの体外循環回路用成形型フィルターが、該フィルター下部のスカート状の外周部にフランジ部を設け、該フランジ部がチャンバー筒下端とキャップの底部とで挟接固定されていることを特徴とするドリップチャンバー。
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