以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図8は本発明の第1実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図、図2はマスタシリンダ、液圧ブースタおよびストロークシミュレータの縦断面図、図3はマスタシリンダの拡大縦断面図、図4は液圧ブースタの拡大縦断面図、図5は図4の要部拡大図、図6はストロークシミュレータの拡大縦断面図、図7は反力特性図、図8はストロークシミュレータの作用特性図である。
先ず図1において、四輪車両のブレーキ装置は、タンデム型であるマスタシリンダMと、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル11から入力されるブレーキ操作力に応じて液圧発生源12の液圧を調圧して前記マスタシリンダMに作用せしめる液圧ブースタ13と、前記ブレーキペダル11および液圧ブースタ13間に介装されるストロークシミュレータ14とを備える。
図2を併せて参照して、前記マスタシリンダMおよび液圧ブースタ13に共通なケーシング15は、前端を閉じた有底円筒状の第1シリンダ体16と、内向き鍔部17aを後端に有して円筒状に形成されるとともに第1シリンダ体16の後部に同軸に結合される第2シリンダ体17と、第1および第2シリンダ体16,17間に挟持されるリング状のセパレータ18と、セパレータ18および第1シリンダ体16の後端間に挟まれる外向き鍔部19aを後端に有して第1シリンダ体16の後部に嵌入、固定される円筒状のスリーブ19とを備える。
このようなケーシング15には、その前端側から順に、第1シリンダ体16の前部内周で形成される第1シリンダ孔20と、第1シリンダ孔20よりも小径にしてスリーブ19の内周で形成される第2シリンダ孔21と、第2シリンダ孔21よりもわずかに小径にして前記セパレータ18の内周で形成される第3シリンダ孔22と、内向き鍔部17aを除く部分で第2シリンダ体17の内周で形成されて第2シリンダ孔21とほぼ同一径を有する第4シリンダ孔23と、第2シリンダ体17における内向き鍔部17aの内周で第4シリンダ孔23よりも小径に形成される第5シリンダ孔24とが、同軸に連なるようにして配設される。
図3を併せて参照して、マスタシリンダMは、倍力液圧室25に背面を臨ませるとともに後方側にばね付勢される後部マスタピストン26がケーシング15の第2シリンダ孔21に摺動可能に嵌合されるとともに、後方側にばね付勢されつつ後部マスタピストン26の前方に配置される前部マスタピストン27がケーシング15の第1シリンダ孔20に摺動可能に嵌合されて成り、後部マスタピストン26および前部マスタピストン27間には後部出力液圧室28が形成され、ケーシング15の前端部すなわち第1シリンダ体16の前端部に液密に嵌合される円盤状のシート保持部材30および前部マスタピストン27間に前部出力液圧室29が形成される。
前方側を開放した有底円筒状に形成された後部マスタピストン26と、スリーブ19との間の軸方向に間隔をあけた2箇所には環状のピストン側シール部材31およびスリーブ側シール部材32が介装されており、ピストン側シール部材31は、第2シリンダ孔21の内面に摺接するようにして後部マスタピストン26の後部外周に装着され、スリーブ側シール部材32は、後部マスタピストン26が後退限位置にあるときには後部マスタピストン26の前部外周に接触する位置でスリーブ19の内周に装着される。
一方、スリーブ19の外周および第1シリンダ体16間には環状開放室33が形成されており、この環状開放室33の軸方向両端部は、スリーブ19の前部外周に装着されて第1シリンダ体16の内周に弾発的に接触する環状のシール部材34と、スリーブ19の後部外周に装着されて第1シリンダ体16の内周に弾発的に接触する環状のシール部材35とでシールされる。しかもスリーブ19には、該スリーブ19および後部マスタピストン26間に介装される前記両シール部材31,32間に位置する複数の連通孔36…が、スリーブ19の内周および後部マスタピストン26の外周間のうち軸方向両端が前記両シール部材31,32でシールされる部分を前記環状開放室33に通じさせるようにして設けられる。
前部マスタピストン27の外周には、第1シリンダ体16の内周との間に後部環状室37を形成する環状凹部38が設けられており、後部環状室37に通じるとともに前記環状開放室33に通じる後部開放ポート39が第1シリンダ体16に設けられる。この後部開放ポート39は、図1で示すように、相互に独立してリザーバ40内に形成される第1〜第3油溜め室41,42,43のうち第2油溜め室42に連通される。
前部マスタピストン27の外周には、後部出力液圧室28および前記後部環状室37間に介在する後部リップシール44が後部出力液圧室28にブレーキ液を補充すべく後部環状室37から後部出力液圧室28側へのブレーキ液の流通を許容するようにして装着されるとともに、前部出力液圧室29および前記後部環状室37間に介在する前部リップシール45が装着される。而してスリーブ19の内周で形成される第2シリンダ孔21は、第1シリンダ孔20よりも小径であり、後部マスタピストン26の前記ピストン側シール部材31およびスリーブ側シール部材32によるシール径は、前部マスタピストン27の前記両リップシール44,45によるシール径よりも小径である。
前部マスタピストン27の後端中央部には、外周にゴムから成る環状のシート部材48が焼き付けられる弁孔形成部材49が圧入されており、この弁孔形成部材49が中央部に備える弁孔50を前記後部環状室37に通じさせる複数の連通路51…が前部マスタピストン27の後部に設けられる。
前記シート部材48に着座して前記弁孔50を塞ぎ得る円盤状の弁体52が、後部および前部マスタピストン26,27間の最大間隔を規制するようにして後部および前部マスタピストン26,27間に設けられる最大間隔規制手段53の一部を構成するロッド54の前端寄りに一体に設けられ、ロッド54の前端部は、前記シート部材48から前記弁体52が離座したときには弁孔50内をブレーキ液が流通するのを許容するようにして弁孔50に挿入される。
前記最大間隔規制手段53は、前端部を閉塞した有底円筒状に形成されて後部マスタピストン26に当接される後部リテーナ55と、後端部を閉塞した有底円筒状に形成されて前部マスタピストン27の後端に当接される前部リテーナ56と、後部および前部リテーナ55,56間に縮設されて後部マスタピストン26を後方側に付勢する後部戻しばね57と、後部リテーナ55の前端閉塞部および前部リテーナ56の後部閉塞端を移動自在に貫通する前記ロッド54とから成るものである。
ロッド54には、前記後部リテーナ55の前端閉塞部に後方から係合し得る係合鍔54aが後端に設けられるとともに、前記前部リテーナ56の後端閉塞部に前方側から係合し得る係合段部54bが前記弁体52の後方に位置するようにして設けられる。また後部リテーナ55内には、前記係合鍔54aの軸方向移動をガイドするガイド筒58が嵌合、固定される。
このような最大間隔規制手段53によれば、後部戻しばね57が発揮するばね力により後部リテーナ55が後部マスタピストン26に実質的には固定され、また後部戻しばね57が発揮するばね力により前部リテーナ56が前部マスタピストン27に実質的には固定されており、後部マスタピストン26が図3で示すように後退限位置にある状態で、係合鍔54aが後部リテーナ55の前部閉塞端に後方から係合し、係合段部54bが前部リテーナ56の後部閉塞端に前方から係合することで後部および前部マスタピストン26,27間の最大間隔が規制されることになり、この際、弁体52はシート部材48から離座して弁孔50を開放している。
しかも前部リテーナ56および弁体52間には、後部戻しばね57よりもばね荷重の小さな弁ばね59が縮設されており、後部マスタピストン26が後退限位置から前進するのに伴って弁体52は弁ばね59のばね力によりシート部材48に着座して弁孔50を閉じることになる。
第1シリンダ孔20の前端部内面およびシート保持部材30間には環状の前部環状室60が形成されており、前部環状室60に通じる前部開放ポート61が第1シリンダ体16の前部に設けられる。この前部開放ポート61は、図1で示すように、リザーバ40内に形成される第3油溜め室43に連通される。しかもシート保持部材30の外周には、前部出力液圧室29にブレーキ液を補充すべく前部環状室60から前部出力液圧室29側へのブレーキ液の流通を許容するリップシール62が、第1シリンダ体16の内周に弾発的に接触するようにして装着される。
シート保持部材30の中央部には、外周にゴムから成る環状のシート部材63が焼き付けられる弁孔形成部材64が圧入されており、この弁孔形成部材64が中央部に備える弁孔65を前記前部環状室60に通じさせる複数の連通溝66…がシート保持部材30の前面に設けられる。
前記シート部材63に着座して前記弁孔65を塞ぎ得る円盤状の弁体67が、シート保持部材30および前部マスタピストン27間の最大間隔を規制するようにしてシート保持部材30および前部マスタピストン27間に設けられる最大間隔規制手段68の一部を構成するロッド69の前端寄りに一体に設けられ、ロッド69の前端部は、前記シート部材63から前記弁体67が離座したときには弁孔65内をブレーキ液が流通するのを許容するようにして弁孔65に挿入される。
前記最大間隔規制手段68は、前端部を閉塞した有底円筒状に形成されて前部マスタピストン27に当接される後部リテーナ70と、後端部を閉塞した有底円筒状に形成されてシート保持部材30の後端に当接される前部リテーナ71と、後部および前部リテーナ70,71間に縮設されて前部マスタピストン27を後方側に向けて付勢する前部戻しばね72と、後部リテーナ70の前端閉塞部および前部リテーナ71の後部閉塞端を移動自在に貫通する前記ロッド69とから成り、前部戻しばね72のばね荷重は後部戻しばね57のばね荷重よりも低く設定される。
ロッド69には、前記後部リテーナ70の前端閉塞部に後方から係合し得る係合鍔69aが後端に設けられるとともに、前記前部リテーナ71の後端閉塞部に前方側から係合し得る係合段部69bが前記弁体67の後方に位置するようにして設けられる。また後部リテーナ70内には、前記係合鍔69aの軸方向移動をガイドするガイド筒73が嵌合、固定される。
このような最大間隔規制手段68によれば、前部戻しばね72が発揮するばね力により後部リテーナ70が前部マスタピストン27に実質的には固定され、また前部戻しばね72が発揮するばね力により前部リテーナ71がシート保持部材30に実質的には固定されており、前部マスタピストン27が図3で示すように後退限位置にある状態で、係合鍔69aが後部リテーナ70の前部閉塞端に後方から係合し、係合段部69bが前部リテーナ71の後部閉塞端に前方から係合することでシート保持部材30および前部マスタピストン27間の最大間隔が規制されることになり、この際、弁体67はシート部材63から離座して弁孔65を開放している。
しかも前部リテーナ71および弁体67間には、前部戻しばね72よりもばね荷重の小さな弁ばね74が縮設されており、前部マスタピストン27が後退限位置から前進するのに伴って、弁体67は弁ばね74のばね力によりシート部材63に着座して弁孔65を閉じることになる。
第1シリンダ体16には、後部マスタピストン26の前進作動に応じて高圧となる後部出力液圧室28の液圧を出力する後部出力ポート77と、前部マスタピストン27の前進作動に応じて高圧となる前部出力液液圧室29の液圧を出力する前部出力ポート78とが設けられる。しかも図1で示すように、後部出力ポート77は、第1液圧制御装置79Aを介して右前輪および左後輪用車輪ブレーキBA,BBに接続され、前部出力ポート78は、第2液圧制御装置79Bを介して左前輪および右後輪用車輪ブレーキBC,BDに接続される。
第1液圧制御装置79Aは、後部出力ポート77および右前輪用車輪ブレーキBA間に介設される常開型電磁弁80Aと、後部出力ポート77および左後輪用車輪ブレーキBB間に介設される常開型電磁弁80Bと、後部出力ポート77側へのブレーキ液の流通を許容して前記両常開型電磁弁80A,80Bにそれぞれ並列に接続される一方向弁81A,81Bと、右前輪用車輪ブレーキBAおよび第1リザーバ82A間に介設される常閉型電磁弁83Aと、左後輪用車輪ブレーキBBおよび第1リザーバ82A間に介設される常閉型電磁弁83Bと、第1リザーバ82Aから汲み上げたブレーキ液を後部出力ポート77側に戻す第1戻しポンプ84Aと、第1戻しポンプ84Aおよび後部出力ポート77間に設けられるオリフィス85Aとを備える。
また第2液圧制御装置79Bは、前部出力ポート78および左前輪用車輪ブレーキBC間に介設される常開型電磁弁80Cと、前部出力ポート78および右後輪用車輪ブレーキBD間に介設される常開型電磁弁80Dと、前部出力ポート78側へのブレーキ液の流通を許容して前記両常開型電磁弁80C,80Dにそれぞれ並列に接続される一方向弁81C,81Dと、左前輪用車輪ブレーキBCおよび第2リザーバ82B間に介設される常閉型電磁弁83Cと、右後輪用車輪ブレーキBDおよび第2リザーバ82B間に介設される常閉型電磁弁83Dと、第2リザーバ82Bから汲み上げたブレーキ液を前部出力ポート78側に戻す第2戻しポンプ84Bと、第2戻しポンプ84Bおよび前部出力ポート78間に設けられるオリフィス85Bとを備える。
第1および第2戻しポンプ84A,84Bは、単一の電動モータ86に共通に連結されており、両戻しポンプ84A,84Bは電動モータ86によって共通に作動せしめられる。
このような第1および第2液圧制御装置79A,79Bによれば、後部および前部出力ポート77,78から出力されるブレーキ液圧を自在に制御することができ、ブレーキ操作時のアンチロックブレーキ制御や、非ブレーキ操作状態でのトラクション制御等を第1および第2液圧制御装置79A,79Bの液圧制御によって実行することができる。
図4において、液圧ブースタ13は、前面を倍力液圧室25に臨ませてケーシング15に摺動可能に収容される段付き円筒状のバックアップピストン88と、該バックアップピストン88に内蔵される調圧弁手段89と、前記倍力液圧室25の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11からストロークシミュレータ14を介して入力されるブレーキ操作力が釣り合うように作動して前記調圧弁手段89を調圧作動せしめる制御ピストン90と、前記調圧弁手段89および制御ピストン90間に介装される反力ピストン92とを備える。
前記バックアップピストン88は、第4シリンダ孔23に摺動可能に嵌合されるピストン主部88aと、第3シリンダ孔22を摺動可能に貫通するようにしてピストン主部88aの前端に同軸にかつ一体に連なる円筒状の押圧部88bと、ピストン主部88aの後端に同軸にかつ一体に連なって第5シリンダ孔24を摺動自在に貫通するとともにケーシング15から後方に延出される円筒状の延長筒部88cとを一体に備え、押圧部88bは、後部マスタピストン26の後端に直接当接して該後部マスタピストン26を前進側に押圧することが可能である。
しかもピストン主部88aおよび延長筒部88c間でバックアップピストン88の外周には後方側に臨む規制段部88dが形成されており、この規制段部88dがケーシング15における第2シリンダ体17の後端の内向き鍔部17aに前方側から当接することにより、ケーシング15内でのバックアップピストン88の後退限位置が規制される。
前記バックアップピストン88におけるピストン主部88aの外周には第4シリンダ孔23の内周に弾発的に摺接する環状のシール部材93,94が軸方向に間隔をあけて装着され、セパレータ18の内周には、バックアップピストン88における押圧部88bの外周に弾発的に摺接する環状のシール部材95が装着される。而して第3シリンダ孔22は、ほぼ同径である第2および第4シリンダ孔21,23よりもわずかに小径であり、前記押圧部88bは、後部マスタピストン26およびピストン主部88aのシール径よりも小径のシール径でケーシング15の第3シリンダ孔22に摺動自在に嵌合されることになる。
前記ケーシング15の第2シリンダ体17および前記バックアップピストン88間には、前記ピストン主部88aの外周に装着される一対のシール部材93,94のうち前方側のシール部材93と、セパレータ18の内周に装着されるシール部材95とで軸方向両端がシールされる環状の入力室96が形成され、この入力室96は、第2シリンダ体17に設けられた入力ポート97に連通される。
ところでバックアップピストン88の押圧部88bでマスタシリンダMにおける後部マスタピストン26を前進方向に押圧する際には、倍力液圧室25の容積が増大し、入力室96の容積が減少することになるが、倍力液圧室25の容積増大量は入力室96の容積減少量とほぼ同一に設定される。
前記入力ポート97は、図1で示すように液圧発生源12に連通される。而して液圧発生源12は、リザーバ40の第1油溜め室41からブレーキ液をくみ上げる液圧ポンプ98と、該液圧ポンプ98の吐出口に接続されるアキュムレータ99と、液圧ポンプ98の吐出口および第1油溜め室41間に設けられるリリーフ弁100と、液圧ポンプ98の作動を制御するためにアキュムレータ99の液圧を検出する液圧センサ101とを備えるものであり、常時一定に保持される高圧のブレーキ液が液圧発生源12から前記入力ポート97すなわち入力室96に供給されることになる。
ところでケーシング15内での後退限位置が規制されるバックアップピストン88および後部マスタピストン26間には、前記倍力液圧室25に収容されるばね102が縮設されており、このばね102のばね力により、バックアップピストン88および後部マスタピストン26は相互に離間する方向に付勢されることになる。
而して、非ブレーキ操作状態では、ケーシング15の前端閉塞部および後部マスタピストン26間の間隔は、最大間隔規制手段53,68の働きにより一定の最大間隔に規制されるものであり、その状態での後部マスタピストン26と、後退限位置にあるバックアップピストン88の前端との間には、後部マスタピストン26をバックアップピストン88に前方から近接対向させるようにして間隙91が形成される。而して前記ばね102のばね荷重は、後部戻しばね57および前部戻しばね72のばね荷重よりも小さく設定されるものであり、前記ばね102により、非ブレーキ操作状態で前記後部マスタピストン26およびバックアップピストン88間の間隙91が維持される。
また前記液圧発生源12の出力液圧が前記入力室96に作用するのに応じて前記バックアップピストン88には後退方向の液圧力が作用し、前記ばね102のばね力もバックアップピストン88に後退方向に作用するのであるが、前記後退方向の液圧力と、前記ばね102による後退方向のばね力との合力は、300〜1000Nに設定されることが望ましい。
ケーシング15において第2シリンダ体17、第1シリンダ体16およびスリーブ19には、前記倍力液圧室25に通じる倍力液圧入力ポート103が設けられており、この倍力液圧入力ポート103は、図1で示すように、常閉型の自動ブレーキ加圧用リニアソレノイド弁104を介して液圧発生源12に接続されるとともに、リザーバ40の第1油溜め室41に常閉型の回生協調用減圧リニアソレノイド弁105を介して接続される。すなわち倍力液圧室25および液圧発生源12間に常開型の自動ブレーキ加圧用リニアソレノイド弁104が介設され、倍力液圧室25およびリザーバ40間に常閉型の回生協調用減圧リニアソレノイド弁105が介設される。
バックアップピストン88におけるピストン主部88aおよびケーシング15の第2シリンダ体17間には、前記ピストン主部88aの外周に装着された一対のシール部材93,94で軸方向両端がシールされるようにして環状の出力室106が形成されており、該出力室106に通じる倍力液圧出力ポート107が第2シリンダ体17に設けられる。
前記倍力液圧出力ポート107は、直列に接続された常開型の自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108および常開型の回生協調用加圧リニアソレノイド弁109を介して前記倍力液圧入力ポート103に接続されており、第1の一方向弁110が、前記倍力液圧出力ポート107から前記倍力液圧入力ポート103側へのブレーキ液の流通を許容するようにして自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108に並列に接続され、第2の一方向弁111が、前記倍力液圧入力ポート103から前記倍力液圧出力ポート107側へのブレーキ液の流通を許容するようにして前記回生協調用加圧リニアソレノイド弁109に並列に接続される。
すなわち出力室106および倍力液圧室25間に、第1の一方向弁110が並列に接続された自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108が介設されるとともに、第2の一方向弁111が並列に接続された回生協調用加圧リニアソレノイド弁109が介設されることになる。
しかも倍力液圧出力ポート107および自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108間にはブレーキ操作量検出用液圧センサ112が接続され、回生協調用加圧リニアソレノイド弁109および倍力液圧入力ポート103間に自動ブレーキフィードバック制御用液圧センサ113が接続される。
図5を併せて参照して、調圧弁手段89は、増圧弁116および減圧弁117で構成されるものであり、液圧発生源12の出力液圧低下時には前記入力室96および前記出力室106間を連通させるとともに前記出力室106をリザーバ40の第1油溜め室41に連通させることを可能としてバックアップピストン88のピストン主部88aに内蔵される。
バックアップピストン88のピストン主部88aには、段付円筒状のハウジング主体119と、該ハウジング主体119の前端に液密に嵌合、固定される端壁部材120とから成る弁ハウジング118が同軸に嵌合、固定される。前記ピストン主部88aの内面には、マスタシリンダM側に臨む環状の段部121が設けられており、前記弁ハウジング118は、段部121に当接するまで前記ピストン主部88aに前方から嵌合され、段部121との間に弁ハウジング118を挟持する円盤状の押さえ部材122が、バックアップピストン88のピストン主部88aに螺合される。而して倍力液圧室25に収納されるばね102はマスタシリンダMの後部マスタピストン26および前記押さえ部材122間に縮設される。
前記弁ハウジング118よりも後方でバックアップピストン88におけるピストン主部88aの内面には、弁ハウジング118側に臨む環状の係合段部123と、該係合段部123および弁ハウジング118間に配置されて弁ハウジング側に臨む環状の係合段部124とが設けられる。前記係合段部123には、前記ピストン主部88a内に液密に嵌合される円筒状のスリーブ125の後端部外周が当接、係合され、このスリーブ125の前端は前記係合段部124に面一に連なるように配置される。
前記係合段部124およびスリーブ125の前端には、平板状のリテーナ126に一面を接触させたリング状の弾性部材127の他面外周部が当接され、弁ハウジング118およびリテーナ126の外周部一面との間には押さえばね128が縮設される。これにより前記弾性部材127の外周部は、係合段部124およびスリーブ125の前端と、リテーナ126の外周部との間に挟持される。
バックアップピストン88のピストン主部88a内で、弁ハウジング118と、前記弾性部材127およびリテーナ126との間には、前記弾性部材127の一面に液圧を及ぼすようにして倍力液圧制御室130が形成され、この倍力液圧制御室130は、前記ピストン主部88aに設けられた複数の連通孔129…を介して出力室106に連通する。
図6を併せて参照して、制御ピストン90は、前端を閉塞した段付きの有底円筒状に形成されるものであり、バックアップピストン88の延長筒部88cおよびピストン主部88aの後部に相対摺動可能に嵌合される。しかもバックアップピストン88の延長筒部88cの後端部内面には止め輪133が装着されており、制御ピストン90の後端が該止め輪133に当接することにより、制御ピストン90のバックアップピストン88からの離脱が阻止される。
前記制御ピストン90の前部外周にはバックアップピストン88におけるピストン主部88aの後部内周に弾発的に接触する環状のシール部材134が装着されており、前記ピストン主部88a内の後部には、前記シール部材134によって外部との間がシールされる解放室135が、制御ピストン90の前端を臨ませるようにして形成される。一方、ケーシング15における第2シリンダ体17には、リザーバ40における第1油溜め室41に通じる解放ポート136ならびに解放ポート136に通じる解放通路137が設けられるとともに、第4シリンダ孔23の内面に開口する環状凹部138が前記解放通路137に通じるようにして設けられる。しかもバックアップピストン88には、前記解放室135を前記環状凹部138に常時連通させる複数の連通孔139…が設けられており、前記環状凹部138の前方でバックアップピストン88の外周に装着された環状のシール部材94と、第5シリンダ孔24の内面に装着されてバックアップピストン88における延長筒部88cの外周に摺接する環状のシール部材141とで、前記環状凹部138が前後からシールされる。このようにして解放室135はリザーバ40の第1油溜め室41に常時連通される。
反力ピストン92は、前記倍力液圧制御室130に前端を臨ませる小径ピストン部92aと、前記倍力液圧制御室130側に臨む環状段部92cを小径ピストン部92aとの間に形成して小径ピストン部92aの後端に同軸に連なる大径ピストン部92bとを一体に有する。小径ピストン部92aは、前記弾性部材127を液密にかつ摺動自在に貫通するとともに前記リテーナ126を軸方向移動可能に貫通し、大径ピストン部92bはスリーブ125に摺動自在に嵌合される。
而して倍力液圧制御室130の液圧が一面に作用する弾性部材127の内周部は、倍力液圧制御室130の液圧が所定圧以上となったときには変形して反力ピストン92の前記環状段部92cに押しつけられるものであり、弾性部材127の他面内周部は、前記環状段部92cに対向して配置されている。
また反力ピストン92の後端は、前記制御ピストン90の前端に同軸に当接するものでり、該反力ピストン92の後端に設けられた鍔部92dと、バックアップピストン88との間には、反力ピストン92を制御ピストン90の前端に当接させるばね力を発揮するばね142が縮設されており、該ばね142のばね荷重は、制御ピストン90に反力ピストン92を追随させる程度の小さな値に設定されている。
反力ピストン92には、前記倍力液圧制御室130に前端を連通させて同軸に延びる挿入孔143と、該挿入孔143と同軸の軸孔部144aを有して前記解放室135に通じる通孔144とが設けられるとともに、挿入孔143および軸孔部144a間で半径方向内方に張り出す鍔状の減圧用弁座146が前記挿入孔143および前記軸孔部144と同軸の減圧用弁孔145を形成するようにして設けられる。
減圧弁117は、前記減圧用弁座146と、後端を前記弁座146に着座させることを可能として反力ピストン92の前方に配置されるとともに後退限を規制されつつ後方にばね付勢されるポペット型の減圧用弁体147とで構成されるものであり、減圧用弁体147の後部は、減圧用弁座146の前方で反力ピストン92との間に環状オリフィス148を形成するようにして前記挿入孔143に同軸に挿入される。
弁ハウジング118におけるハウジング主体119の後部には、倍力液圧制御室130内で後方に延びる円筒状のガイド筒119aが一体に設けられており、倍力液圧制御室130内に収容される前記減圧用弁体147は、倍力液圧制御室130内で前記ガイド筒119aに軸方向スライド可能に保持される。
またガイド筒119aの後端部には、前記減圧用弁体147に後方から当接して該減圧用弁体147の後退限を規制する止め輪149が装着される。またガイド筒119a内には減圧用弁体147の前部を軸方向移動可能に貫通せしめる整流部材150が、前記ガイド筒119aの前端壁を形成するようにして弁ハウジング118のハウジング主体119に設けられる内向き鍔部119bに当接するようにして収容されており、該整流部材150および減圧用弁体147間に、減圧用弁体147を後方に向けてばね付勢する減圧用弁ばね151が縮設される。
前記反力ピストン92と、後端部を解放室135に臨ませた前記スリーブ125との間には、ブレーキペダル11の非操作状態での反力ピストン92の非作動時には通孔144から解放室135に全開状態でブレーキ液を流通させるもののブレーキペダル11の操作に伴う反力ピストン92の作動時には通孔144から解放室135へのブレーキ液の流通を絞る可変絞り機構154が設けられる。
前記通孔144は、前記減圧用弁孔145に前端を通じさせるとともに後端が制御ピストン90の前端で閉じられるようにして反力ピストン92に設けられる軸孔部144aと、該軸孔部144aの中間部に連なって反力ピストン92の外面に開口する複数の横孔部144b…とから成るものであり、可変絞り機構154は、スリーブ125の後端部と、横孔部144b…とで構成される。
しかもスリーブ125の後端部内周には、後方に向かうにつれて大径となるテーパ状の拡径部125aが形成される。
弁ハウジング118内において、前記内向き鍔部119bおよび端壁部材120間には弁室155が形成される。また弁ハウジング118におけるハウジング主体119の外周には環状凹部156が設けられており、ハウジング主体119には前記弁室155を環状凹部156に通じさせる複数の連通孔157…が設けられる。またバックアップピストン88のピストン主部88には、前記環状凹部156に内端を通じさせるようにして第2シリンダ体17の半径方向に延びる複数の連通路158…が、外端を入力室96に通じさせるようにして設けられており、前記弁室155は液圧発生源12に通じることになる。しかも弁ハウジング118におけるハウジング主体119の外周には、前記環状凹部156を相互間に挟む一対の環状であるシール部材159,160が、前記ピストン主部88aの内周に弾発的に接触するようにして装着される。
増圧弁116は、前記弁ハウジング118における内向き鍔部119bの内周で形成されて弁室155側に臨む増圧用弁座161と、該増圧用弁座161に着座することを可能として弁室155に収容されるポペット型の増圧用弁体162とで構成される。前記増圧用弁座161は、減圧用弁体147の前端を挿通させ得る増圧用弁孔163を形成するものであり、弁ハウジング118との間に縮設される弁ばね177によって後方にばね付勢された増圧用弁体162は、前記増圧用弁孔163に挿通された減圧用弁体147の前端で前方に押されることを可能として弁室155に収容される。
ところで前記増圧用弁体162には、弁ハウジング118における端壁部材120の中央部を液密にかつ軸方向移動可能に貫通するロッド部162aが一体に設けられており、このロッド部162aの前端は、前記端壁部材120および押さえ部材122間に形成される液圧室164に臨む。また押さえ部材122には、前記液圧室164を倍力液圧室25に通じさせる連通孔165が設けられており、増圧用弁体162の前端には倍力液圧室25の液圧が後方に向けて作用することになる。しかも倍力液圧室25の液圧を受ける前記増圧用弁体162の前端受圧面積と、該増圧用弁体162が増圧用弁座161に着座したときのシール面積とはほぼ等しく設定される。すなわちロッド部162aの直径と、増圧用弁体162の増圧用弁座161への着座部の直径とがほぼ等しくなるように設定される。
ところで増圧弁116の開弁時に、液圧発生源12に通じている前記弁室155内のブレーキ液は増圧用弁孔163から倍力液圧制御室130側に流入することになるが、減圧用弁体147が軸方向移動可能に貫通するとともに内向き鍔部119bに当接するように減圧用弁ばね151で付勢されている整流部材150が前記増圧用弁孔163の近傍で倍力液圧制御室130内に配置される。
而して前記整流部材150は、前記減圧用弁体147が中央部を軸方向移動可能に貫通するようにして前記内向き鍔部119bに対向する円盤部150aと、前記内向き鍔部119bに当接するようにして前記円盤部150aに突設される複数の突部150b…とから成るものであり、前記増圧用弁孔163から倍力液圧制御室130側に流れるブレーキ液は、前記円盤部150aに衝突して流れの向きを変え、円盤部150aおよび内向き鍔部119b間を放射状に流れるように整流されて倍力液圧制御室130に流れ込むことになる。
このような液圧ブースタ13では、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力がストロークシミュレータ14を介して制御ピストン90に入力され、制御ピストン90から反力ピストン92に前方に向けての押圧力が作用する。而して反力ピストン92の前進に応じて減圧用弁座146に減圧用弁体147が着座することで減圧弁117が閉弁して倍力液圧制御室130およびリザーバ40間が遮断され、制御ピストン90、反力ピストン92および減圧用弁体147がさらに前進することで、増圧用弁体162が増圧用弁座161から離座することにより増圧弁116が開弁して液圧発生源12の出力液圧が倍力液圧制御室130に作用する。また減圧弁117の閉弁状態では反力ピストン92の前部に倍力液圧制御室130すなわち倍力液圧室25の液圧が作用しており、ブレーキペダル11からのブレーキ操作入力と、倍力液圧制御室130の液圧に基づく液圧力とが釣り合うように反力ピストン92および制御ピストン90が後退することで減圧弁117が開弁するとともに増圧弁116が閉弁し、そのような増圧弁116および減圧弁117の開閉を繰り返すことで、液圧発生源12の出力液圧がブレーキペダル11からのブレーキ操作入力に応じた倍力液圧に調圧されて倍力液圧制御室130すなわち倍力液圧室25に作用することになる。
ストロークシミュレータ14は、制御ピストン90に軸方向スライド可能に収容される入力部材としての入力ピストン166と、該入力ピストン166および前記制御ピストン90間に直列に介装される弾性体167およびコイルばね168とを有するものであり、制御ピストン90内を大気に開放しつつ制御ピストン90内に収容される。
入力ピストン166は、制御ピストン90の後端部に装着される止め輪169によって後退限位置が規制されるようにして、制御ピストン90の後部に摺動可能に嵌合され、ブレーキペダル11に連なる入力ロッド170の前端部が入力ピストン166に首振り可能に連接される。すなわち入力ピストン166には、ブレーキペダル11の操作に応じたブレーキ操作力が入力ロッド170を介して入力され、そのブレーキ操作力の入力に応じて入力ピストン166は前進作動する。
弾性体167は、ゴム等の弾性材料によって筒状に形成されるものであり、この弾性体167と、弾性体167よりもばね荷重を小さく設定した金属製のコイルばね168とは、入力ピストン166および前記制御ピストン90間に中間伝達部材171を介して直列に介装され、中間伝達部材171は、制御ピストン90に摺動可能に嵌合される円盤部171aと、コイルばね168内に延びるようにして前記円盤部171aに一体に連設される有底円筒部171bとを有する。
入力ピストン166の中央部には、ガイド軸172の後部が同軸に圧入、固定されており、このガイド軸172の前部は、前記中間伝達部材171における円盤部171aの中央部を軸方向移動可能に貫通し、該中間伝達部材171における有底円筒部171bに摺動可能に嵌合される。
弾性体167は、ガイド軸172を嵌合せしめることで内周側に撓むことを規制された状態で中間伝達部材171の円盤部171aおよび入力ピストン166間に介装されるものであり、入力ピストン166の前進動作に伴う軸方向圧縮力の作用に応じて拡径するように撓むことで制御ピストン90の内周に弾発的に接触することが可能である。
コイルばね168は、前記中間伝達部材171の円盤部171aおよび制御ピストン90の前端閉塞部との間に設けられるものであり、入力ピストン166が後退限にある状態で前記コイルばね168は外力を加えない自然な状態からわずかに収縮した状態にある。すなわち弾性体167は、コイルばね168からの荷重が予め作用した状態にある。
ところで、中間伝達部材171における有底円筒部171bの前端閉塞部には、ガイド軸172の前進、後退に応じて有底円筒部171b内の加、減圧が生じることがないようにするための透孔173が設けられる。また制御ピストン90内を大気に開放するために、中間伝達部材171における円盤部171aの外周には開放溝174が設けられ、入力ピストン166の外周にも開放溝175が設けられる。さらに制御ピストン90の外周に装着されてバックアップピストン88における延長筒部88cの内面に摺接するシール部材134よりも後方側で、制御ピストン90およびバックアップピストン88間に密閉空間が生じることがないようにするための透孔176が制御ピストン90に設けられる。
次にこの第1実施例の作用について説明すると、タンデム型のマスタシリンダMは、倍力液圧室25に背面を臨ませた後部マスタピストン26と、該後部マスタピストン26との間に後部出力液圧室28を形成するとともに前面を前部出力液圧室29に臨ませた前部マスタピストン27とがケーシング15に摺動可能に収容されて成り、前記ケーシング15には、倍力液圧室25に前面を臨ませつつ後退限を規制されるバックアップピストン88が、倍力液圧室25の液圧低下時にはブレーキペダル11の操作に応じて後部マスタピストン26を後方から直接押圧し得るようにして摺動可能に収容され、前記倍力液圧室25の液圧は、液圧発生源12の出力液圧がブレーキペダル11のブレーキ操作に応じた液圧ブースタ13の作動によってブレーキ操作入力に対応した倍力液圧に調圧されるものであり、後部マスタピストン26のケーシング15へのシール径が、前部マスタピストン27のケーシング17へのシール径よりも小径に設定されている。
したがって後部マスタピストン26のストロークに対する後部出力液圧室28の容積変化量を比較的大きく設定することが可能であり、倍力液圧室25の液圧低下時に、バックアップピストン88で後部マスタピストン26を直接押圧する際に、ブレーキペダル11の操作量すなわちバックアップピストン88および後部マスタピストン26のストロークに対する後部出力液圧室28の液圧変化量を比較的大きくし、ブレーキ効力を高めることができる。
またバックアップピストン88は、後部マスタピストン26のシール径とほぼ同一のシール径でケーシング15に摺動自在に嵌合されるピストン主部88aと、後部マスタピストン26およびピストン主部88aのシール径よりも小径のシール径でケーシング15に摺動自在に嵌合されるとともに後部マスタピストン26の後端に当接して押圧することを可能としてピストン主部88aの前端に同軸に連なる押圧部88bとを備えるものであり、ピストン主部88aおよび押圧部88bとケーシング15との間にそれぞれ介装されるシール部材93,95で軸方向両端がシールされる環状の入力室96が液圧発生源12に通じるようにしてバックアップピストン88およびケーシング15間に形成され、液圧発生源12の出力液圧低下時には入力室96と倍力液圧室25に接続される出力室106との間を連通させるとともに出力室106をリザーバ40に連通させるようにして前記入力室96および出力室106間に介在して液圧ブースタ13の一部を構成する調圧弁手段89が、バックアップピストン88に内蔵され、押圧部88bで後部マスタピストン26を前進方向に押圧する際の倍力液圧室25の容積増大量が入力室96の容積減少量とほぼ同一に設定されている。
したがって入力室96の液圧すなわち液圧発生源12の液圧が低下すると、バックアップピストン88を後退限側に押しつける液圧力が低下するので、ブレーキペダル11の操作に応じてバックアップピストン88を前進させることができ、バックアップピストン88の前部の押圧部88bを、ケーシング15への後部マスタピストン26の摺接部内面との間に隙間を持たせつつ後部マスタピストン26に当接させ、後部マスタピストン26を前進させることにより、マスタシリンダMから倍力されたブレーキ液圧を出力することが可能となる。このようなバックアップピストン88および後部マスタピストン26の前進時に、バックアップピストン88のピストン主部88aおよび後部マスタピストン26のシール径はほぼ同一であり、バックアップピストン88が備える押圧部88bで後部マスタピストン26を前進方向に押圧する際の倍力液圧室25の容積増大量が入力室96の容積減少量とほぼ同一に設定されており、倍力液圧室25および入力室96間は調圧弁手段89を介して連通しているので、バックアップピストン88および後部マスタピストン26の前進時に倍力液圧室25の液圧が増圧されることはない。すなわち部品点数を低減した単純な構成で、バックアップピストン88の前進時に倍力液圧室25の液圧が増大することを回避することができる。
またケーシング15内での後退限位置が規制されるバックアップピストン88および後部マスタピストン26間に、それらのピストン88,26を離間させる方向に付勢するばね102が設けられるので、液圧発生源12の液圧低下に応じて、ブレーキペダル11によりバックアップピストン88を前進させる際に、無効ストロークを確保することができる。
しかも液圧発生源12の出力液圧が入力室96に作用するのに応じてバックアップピストン88に作用する後退方向の液圧力と、前記ばね102によってバックアップピストン88を後退方向に付勢するばね付勢力との合力が、300〜1000Nに設定されているので、液圧発生源12が正常に作動している状態では、バックアップピストン88を後退限位置に安定的に保持することができる。すなわちバックアップピストンを後退方向に付勢する力が300N以上であることにより、液圧発生源12の出力液圧およびバックアップピストン88の摺動抵抗を考慮した上でバックアップピストン88を確実に後退方向に付勢することが可能であり、またバックアップピストン88を後退方向に付勢する力を1000N以下とすることにより、マスタシリンダMの後部マスタピストン26を押し込んでしまうことがないようにすることができる。
ところで、液圧発生源12および倍力液圧室25間には、常閉型の自動ブレーキ加圧用リニアソレノイド弁104が介設され、出力室106および倍力液圧室25間には、常開型の自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108と、出力室106から倍力液圧室25側へのブレーキ液の流通を許容するようにして自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108に並列に接続される第1の一方向弁110とが介設されており、ブレーキペダル11の非操作時、すなわち調圧弁手段89の非作動時にも、自動ブレーキ加圧用リニアソレノイド弁104および自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108を開閉制御して倍力液圧室25の液圧を調圧することにより、非ブレーキ操作状態で車輪ブレーキBA〜BDにブレーキ液圧を作用せしめるようにした自動ブレーキ制御を行うことができる。しかも自動ブレーキ時に自動ブレーキ減圧用リニアソレノイド弁108が閉弁している状態でブレーキペダル11を操作することで調圧弁手段89が作動して、倍力液圧室25の液圧よりも高い液圧が出力室106に生じたときには、第1の一方向弁110を介して出力室106の液圧を倍力液圧室25に作用せしめることができ、通常のブレーキ操作時と同様にマスタシリンダMを作動せしめることができる。
また倍力液圧室25およびリザーバ40間に、常閉型の回生協調用減圧リニアソレノイド弁105が介設され、出力室106および倍力液圧室25間には、常開型の回生協調用加圧リニアソレノイド弁109と、倍力液圧室25から出力室106側へのブレーキ液の流通を許容するようにして回生協調用加圧リニアソレノイド弁109に並列に接続される第2の一方向弁111とが介設されているので、ブレーキ操作状態での回生時に、回生協調用加圧リニアソレノイド弁109および回生協調用減圧リニアソレノイド弁105を開閉制御して倍力液圧室25の液圧を調圧することにより、通常のブレーキ時とはオフセットした状態のブレーキ液圧をマスタシリンダMから出力することができ、回生協調用加圧リニアソレノイド弁109の閉弁時にブレーキペダル11を戻したときには、第2の一方向弁111を介して倍力液圧室25の液圧をリザーバ40側に逃がすことが可能となる。
またケーシング15は、前部マスタピストン27を摺動自在に嵌合させる第1シリンダ体16と、後部マスタピストン26を摺動可能に嵌合させるようにして第1シリンダ体16内に嵌入、固定されるとともにリザーバ40に通じる環状開放室33を第1シリンダ体16との間に形成する円筒状のスリーブ19とを備えるものであり、スリーブ19に摺動可能に嵌合される後部マスタピストン26およびスリーブ19間の軸方向に間隔をあけた2箇所に、環状のピストン側シール部材31およびスリーブ側シール部材32が介装され、後部マスタピストン26の外周およびスリーブ19の内周間のうち前記両シール部材31,32で軸方向両端がシールされる部分を環状開放室33に通じさせる連通孔36がスリーブ19に設けられている。
このため、ケーシング15の一部を構成するスリーブ19および後部マスタピストン26間に介装される一対の前記シール部材31,32のうち倍力液圧室25側にあるピストン側シール部材31がシール機能を発揮し得なくなった場合には、倍力液圧室25のブレーキ液が後部マスタピストン26およびスリーブ19間、連通孔36および環状開放室33を経てリザーバ40に戻されることになり、この際、倍力液圧室25の液圧低下に応じてバックアップピストン88が後部マスタピストン26を直接押圧するので、倍力液圧を得ることはできなくなるが、タンデム型のマスタシリンダMに接続される2系統のブレーキ液圧系統で車輪ブレーキBA〜BDをブレーキ作動せしめるようになる。
また両シール部材31,32のうち後部出力液圧室28側にあるスリーブ側シール部材32がシール機能を発揮し得なくなった場合には、後部出力液圧室28のブレーキ液が後部マスタピストン26およびスリーブ19間、連通孔36および環状開放室33を経てリザーバ40に戻されることになり、この際、後部出力液圧室28に連なるブレーキ液圧系統の車輪ブレーキBA,BBではブレーキ液圧を得ることはできなくなるが、倍力液圧室25の液圧が後部マスタピストン26に作用するのに応じて前部マスタピストン27を倍力作動せしめ、前部出力液圧室29に連なるブレーキ液圧系統で倍力されたブレーキ液圧を車輪ブレーキBC,BDに作用せしめることができる。
すなわちスリーブ19および後部マスタピストン26間に介装される一対のシール部材31,32の一方がシール機能を発揮しなくなった場合には、各車輪ブレーキBA〜BDの作動状態が変化するので、両シール部材31,32のどちらが損傷したかを明確に検知することが可能となる。
また両シール部材31,32の一方であるピストン側シール部材31は、後部マスタピストン26の後部外周に装着され、両シール部材31,32の他方であるスリーブ側シール部材32は、後退限にある後部マスタピストン26の前部外周に接触するようにしてスリーブ19の内周に装着されるので、後部マスタピストン26のストロークにかかわらず、スリーブ19の軸方向長さすなわちケーシング15の軸方向長さが延びるのを回避しつつ、後部マスタピストン26およびスリーブ19間に一対のシール部材31,32を介装することができる。
さらに後部マスタピストン26は、非ブレーキ操作状態において、最大間隔規制手段53,68の働きによりケーシング15の前端閉塞部との間の間隔を一定の最大間隔に規制されつつ後部戻しばね57で後方側に向けて付勢されており、その状態での後部マスタピストン26の後端と、後退限位置にあるバックアップピストン88の前端との間には、後部マスタピストン26をバックアップピストン88に前方から近接対向させるようにして間隙91が形成されている。このような間隙91で、マスタシリンダM側およびバックアップピストン88側の軸方向公差を吸収することができ、前部マスタピストン27を後方側に付勢する前部戻しばね74ならびに後部マスタピストン26を後方側に付勢する後部戻しばね57を、そのセット荷重以上のばね荷重となるように圧縮することを回避し、ブレーキペダル11の無効ストロークが増大することを回避することができる。
しかもバックアップピストン88および後部マスタピストン26間には、後部戻しばね57よりもばね荷重の小さなばね102が、後部マスタピストン26を前方側に付勢するようにして縮設されるので、ブレーキペダル11の非操作状態で、後部および前部マスタピストン26,27がバックアップピストン88に当接する側に移動しないようにして後部マスタピストン26およびバックアップピストン88間の間隙91を維持することができる。
液圧ブースタ13は、前記バックアップピストン88と、該バックアップピストン88に内蔵される前記調圧弁手段89と、倍力液圧室25の液圧に基づく反力ならびにブレーキペダル11からストロークシミュレータ14を介して入力されるブレーキ操作力が釣り合うように作動して調圧弁手段89を調圧作動せしめる制御ピストン90と、前記調圧弁手段89および制御ピストン90間に介装される反力ピストン92とを備えるものであり、調圧弁手段89は、制御ピストン90の前進時に開弁するとともに制御ピストン90の後退時に閉弁するようにして倍力液圧室25に接続された倍力液圧制御室130および液圧発生源12間に介設される増圧弁116と、制御ピストン90の前進時に閉弁するとともに制御ピストン90の後退時に開弁するようにして倍力液圧制御室130およびリザーバ40間に介設される減圧弁117とで構成される。しかも制御ピストン90がバックアップピストン88に相対摺動可能に嵌合され、該バックアップピストン88内に形成される倍力液圧制御室130に前端を臨ませる反力ピストン92の後端に制御ピストン90が同軸に連接され、反力ピストン92の前方でバックアップピストン88内には弁ハウジング118が嵌合、固定され、減圧弁117は、後退時にはリザーバ40に通じる減圧用弁孔145を形成して反力ピストン92に設けられる減圧用弁座146と、後退限を規制されつつ後方にばね付勢されて弁ハウジング118に収容されるポペット型の減圧用弁体147とで構成され、増圧弁116は、減圧用弁体147の前端を挿通させ得るようにして倍力液圧制御室130に連通する増圧用弁孔163を形成して弁ハウジング118に設けられる増圧用弁座161と、減圧用弁体147の前端によって前方に押されることを可能として弁ハウジング118内に収容されるとともに後方側にばね付勢されるポペット型の増圧用弁体162とで構成される。
したがってケーシング15に摺動可能に収容されるバックアップピストン88に、制御ピストン90、反力ピストン92、減圧弁116および増圧弁117で構成される調圧弁手段89を予め組み込んでおくことが可能であり、制御ピストン90、反力ピストン92、調圧弁手段89のケーシング15への組付けが容易となる。
しかも増圧用弁体162が増圧用弁座161に着座したときのシール面積と、倍力液圧室25の液圧を受ける増圧用弁体162の前端受圧面積がほぼ等しく設定されるので、増圧弁116が備えるポペット型の増圧用弁体162の両端に作用する液圧力はほぼ等しく、減圧弁117が備える減圧用弁体147の前端から増圧用弁体162に作用する開弁方向の力と、増圧用弁体162を後方に付勢するばね力とが釣り合うように増圧用弁体162が作動するので、増圧弁116の作動性を向上せしめることができる。また増圧用弁体162を後方に付勢するばね付勢力は増圧用弁体162を減圧用弁体147に追随させるだけの弱いばね力であればよく、また減圧用弁体147を後方に付勢するばね付勢力も減圧用弁体147を反力ピストン92に追随させるだけの弱いばね力であればよいので、反力ピストン92に作用するばね力はごく弱いものとなり、反力ピストン92に作用する反力のほとんどを倍力液圧室25の液圧に基づくものとして反力フィーリングの向上を図ることができる。
また弁ハウジング118は、前方に臨んでバックアップピストン88に設けられる段部121と、バックアップピストン88に螺合される押さえ部材122との間に挟持されるようにしてバックアップピストン88に嵌合、固定され、押さえ部材122には、増圧用弁体162の前端を臨ませるようにして該押さえ部材122および弁ハウジング118間に形成される液圧室164を倍力液圧室25に通じさせる連通孔165が設けられるので、増圧用弁体162の前端に倍力液圧室25の液圧を作用せしめる液圧路を簡単に構成することができる。
前記反力ピストン92は、倍力液圧制御室130に前端を臨ませる小径ピストン部92aと、倍力液圧制御室130側に臨む環状段部92cを介して小径ピストン部92aの後端に同軸にかつ一体に連なる大径ピストン部92bとを備えるものであり、この反力ピストン92に、リザーバ40に通じる減圧用弁孔145を中央部に臨ませる減圧用弁座146が同軸に設けられ、後退限を規制されつつ減圧用弁座146側にばね付勢される減圧用弁体147が倍力液圧制御室130に収納され、倍力液圧制御室130の液圧を一面に作用せしめるように配置されるとともに反力ピストン92の小径ピストン部92aを液密にかつ摺動自在に貫通せしめる弾性部材127の他面内周部が、倍力液圧制御室130の液圧が所定圧以上となったときに変形して反力ピストン92の前進時に前記環状段部92cに押しつけられるべく、環状段部92cに対向して配置されている。
したがって制御ピストン90に連接される反力ピストン92に設けられる減圧用弁座146と、反力ピストン92の前端を臨ませる倍力液圧制御室130に収容される減圧用弁体147とで減圧弁117を構成するようにして減圧弁117の構造を単純化することが可能である。しかも反力ピストン92に作用する反力は、該反力ピストン92が備える小径ピストン部92aの狭い受圧面に倍力液圧制御室130の液圧が作用する低負荷段階と、倍力液圧制御室130の液圧が小径ピストン部92aの狭い受圧面だけでなく変形した弾性部材127を介して環状段部92cにも作用する高負荷段階とで変化することになり、図7で示すように、ブレーキペダル11の操作入力に応じて倍力液圧室25で生じる倍力液圧を2段階に変化させて理想的なブレーキ特性を得ることができる。
ところで、増圧弁116は、倍力液圧制御室130に通じる増圧用弁孔163を形成する増圧用弁座161と、制御ピストン90の前進時に前方に押されることを可能としつつ後方の前記増圧用弁座161に着座する側にばね付勢される増圧用弁体162とで構成されるのであるが、増圧用弁孔163の近傍で倍力液圧制御室130内には、増圧用弁孔163から倍力液圧制御室130側に流入するブレーキ液を整流する整流部材150が配置されるので、増圧弁116の開弁に伴って液圧発生源12からの高圧のブレーキ液が増圧用弁孔163から倍力液圧制御室130に流入する際に、整流部材150によってブレーキ液が整流され、増圧弁116の作動に伴う作動音や脈動音の発生を抑制することができる。
また反力ピストン92には、倍力液圧制御室130に前端を連通させて同軸に延びる挿入孔143と、該挿入孔143と同軸の軸孔部144aを有して解放室135に通じる通孔144とが設けられるとともに、挿入孔143および軸孔部144a間で半径方向内方に張り出す鍔状の減圧用弁座146が設けられており、減圧用弁座146と協働して減圧弁117を構成する減圧用弁体147の後部は、減圧用弁座146の前方で反力ピストン92との間に環状オリフィス148を形成するようにして挿入孔143に挿入される。このため、減圧弁117の開弁に伴って倍力液圧制御室130の高圧が解放室135に逃がされるときには、減圧弁117における減圧用弁体147および反力ピストン92間に形成されている環状オリフィス148で予備的に絞られた後、減圧用弁体147および減圧用弁座146間の狭い流路を流通することになるので、ブレーキ液の流速変化を比較的緩やかとし、流速の急激な変化に起因した減圧弁117での作動音の発生を抑制することができる。
さらに反力ピストン92には、減圧弁117の開弁時に倍力液圧制御室130を解放室135に通じさせる通孔144が設けられており、反力ピストン92を摺動可能に嵌合せしめるようにしてバックアップピストン88に固定されているスリーブ125および反力ピストン92間に、ブレーキペダル11の非操作状態での反力ピストン92の非作動時には通孔144から解放室135に全開状態でブレーキ液を流通させるもののブレーキペダル11の操作に伴う反力ピストン92の作動時には通孔144から解放室135へのブレーキ液の流通を絞る可変絞り機構154が設けられている。
したがって減圧弁117の開弁に伴って倍力液圧制御室130の高圧が解放室135に逃がされるときには、反力ピストン92に設けられる通孔144から解放室135へのブレーキ液の流通が絞られるので、高圧の液圧を解放室135側に緩やかに解放して作動音の発生を抑制することができる。
またスリーブ125が、その後端部を解放室135に臨ませて配置され、通孔144は、減圧用弁孔145に前端を通じさせるようにして反力ピストン92に設けられる軸孔部144aと、該軸孔部144aに連なって反力ピストン92の外面に開口する横孔部144bとから成り、可変絞り機構154は、スリーブ125の後端部と、横孔部144bとで構成されるので、可変絞り機構154をごく簡単に構成することができる。
しかもスリーブ125の後端部内周には、後方に向かうにつれて大径となるテーパ状の拡径部125aが形成されるので、反力ピストン92の作動に応じて絞り量を変化させるようにして、適切な絞り量を得ることができる。
制御ピストン90は前端を閉塞端とした有底円筒状に形成されており、ブレーキペダル11に入力ロッド170を介して連なって制御ピストン90に軸方向スライド可能に収容されるとともに制御ピストン90の後端部に着脱可能に装着される止め輪169でで後退限が規制される入力ピストン166と、直列に接続されて入力ピストン166および制御ピストン90間に介装される弾性体167およびコイルばね168とを有するストロークシミュレータ14が、制御ピストン90内を大気に開放しつつ制御ピストン90に収容されている。
すなわち液圧ブースタ13が備える制御ピストン90に、ストロークシミュレータ14が収容されることになり、液圧ブースタ13およびストロークシミュレータ14の軸方向全体長さを抑えるとともに、ストロークシミュレータ14の作動不良が生じても、ブレーキペダル11からストロークシミュレータ14を介して制御ピストン90にブレーキ操作力を入力可能である。しかもストロークシミュレータ14は、作動液を用いることなく、弾性体167およびコイルばね168が発揮するばね力でブレーキペダル11の操作ストローク感を得るように構成されており、制御ピストン90への組付けが容易である。
ところで、ブレーキペダル11から入力ピストン166に作用するブレーキ操作力は、中間伝達部材171を介して直列に接続される弾性体167およびコイルばね168を介して制御ピストン90に伝達されるものであり、コイルばね168のばね定数は弾性体167のばね定数よりも小さく設定されている。したがって図8で示すように、ブレーキ操作荷重が小さい領域ではコイルばね168が発揮するばね力に対抗してブレーキペダル11を踏み込むので、ブレーキペダル11の操作ストローク量の変化に対する操作荷重の変化は緩やかとなり、次いでブレーキ操作荷重が大きくなると、弾性体167が発揮するばね力に対抗してブレーキペダル1を踏み込むのでブレーキペダル11の操作ストローク量の変化に対する操作荷重の変化は比較的大きく変化することになる。
しかも弾性体167は、入力ピストン166の前進動作に伴う軸方向圧縮力の作用に応じて拡径するように撓むことで制御ピストン90の内周に弾発的に接触するようにして筒状に形成されるものであるので、ブレーキペダル11の踏み込み時には、弾性体167の弾発力ならびに弾性体167および制御ピストン90間に生じる摩擦力の和に打ち勝つ操作力でブレーキペダル11を操作する必要があるのに対し、ブレーキ操作力を緩めるときには、弾性体167が制御ピストン90の内周に摺接している間は前記摩擦力がブレーキペダル11にその戻し方向とは逆方向に作用するので、ストロークシミュレータ14でのブレーキ操作ストロークおよび操作荷重の関係でのヒステリシス幅を、図8で示すように大きくすることができ、ドライバの操作負担を軽減することができる。
さらに弾性体167には、コイルばね168からの荷重が予め作用した状態にあるので、弾性体167にへたりが生じたとしても、コイルばね168でそのへたりを吸収するようにして、通常ブレーキ時の無効ストローク感をなくし、弾性体167のへたりには関係なく、コイルばね168および弾性体167による2段階の操作シミュレート特性を得ることができる。
図9は本発明の第2実施例を示すものであり、ストロークシミュレータ14′は、制御ピストン90に軸方向スライド可能に収容される入力ピストン166と、該入力ピストン166および前記制御ピストン90間に直列に介装される弾性体167′およびコイルばね168とを有するものであり、制御ピストン90内を大気に開放しつつ制御ピストン90内に収容される。
弾性体167′は、ゴム等の弾性材料によって筒状に形成されるものであり、この弾性体167′と、弾性体167′よりもばね荷重を小さく設定した金属製のコイルばね168とは、入力ピストン166および前記制御ピストン90間に中間伝達部材171を介して直列に介装される。
しかも弾性体167′は、軸方向一端を大径端としたテーパ状の外周を有し、入力ピストン166の前進動作に伴う圧縮力の作用に応じて拡径するように撓むことで制御ピストン90の内周に弾発的に接触するようにして筒状に形成される。
この第2実施例によれば、上記第1実施例の効果を奏した上に、ブレーキペダル11の操作ストロークに応じた弾性体167′の制御ピストン90への摺接面積変化量を調整可能として、ヒステリシス幅の調整が可能となる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
たとえば上記実施例ではタンデム型のマスタシリンダMを備える車両用ブレーキ装置について説明したが、単一のマスタピストンがケーシングに摺動可能に収容されるマスタシリンダを備える車両用ブレーキ装置に本発明を適用することも可能である。